JP5238930B2 - 耐摩耗性レールおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄道等に使用される耐摩耗性レールとその製造方法に関し、特に、車輪との接触によって起こるレール頭部の塑性流動による微視割れの発生を低減すると共に、その微視割れが母材へ進展するのを抑制することによって、レール頭部の耐表面損傷性を向上させた耐摩耗性レールとその製造方法に関するものである。
鉄道輸送は、他の輸送機関と比較して輸送効率が高く、環境にも優しいことから、近年、運行速度の高速化や積載荷重の増大化、ダイヤの過密化などが積極的に進められている。その結果、レールに対する負荷が過酷になる傾向にある。特に、曲線軌道区間の外軌レールは、車輪フランジ部と接触するレール頭部のコーナー部(以降、ゲージコーナー(GC)部ともいう)の接触圧力が高いことから、耐摩耗性が重要視されてきた。
しかし、近年では、上記ゲージコーナー部の摩耗によるレール交換以前に、レール頭部の表面に剥離損傷が発生し、レール寿命を迎える場合が多く発生し問題となっている。したがって、曲線軌道区間に用いられるレールには、耐摩耗性を向上する観点から、従来から高強度レールが用いられているが、レール表面の耐損傷性にも優れたレールが求められるようになってきている。
レールの耐損傷性に着目した技術は、これまで多くの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、酸化物系介在物の量および組成を適正範囲に制御することによってレール頭部の内部に生じる転動疲労損傷(ヘビーシェリング損傷という)に対する耐損傷性を高めたレールが開示されている。また、特許文献2には、レール頭頂部に適切な硬度分布を付与することによって、レールと車輪との接触応力状態を緩和させ、レール頭頂部中央に発生する損傷(ヘッドチェック)を抑制する技術が開示されている。また、特許文献3には、レール頭部の硬さとコーナー部の硬さを制御することによって、頭頂部およびコーナー部に発生する車輪の走行、スリップに起因したマルテンサイト組織(ホワイトフェーズ)の生成を防止し、耐転がり疲労損傷を抑制する技術が開示されている。
また、特許文献4には、レールの化学成分を適正に制御することによって、電気アーク溶接の際、鋼材表面に生じるマルテンサイトの生成を防止し、耐折損性を向上する技術が開示されている。さらに、特許文献5には、パーライト組織の鋼レールにおいて、鋼の成分を適正に制御し、同時に熱処理を施すことにより、初期硬さを所定の範囲に納め、さらに、衝撃値を向上させることにより、直線区間や緩曲線区間に使用されるレールの耐表面損傷性と靭性の向上を図る技術が開示されている。
特開2001−220651号公報 特許第3317146号公報 特許第2620369号公報 特開2005−350723号公報 特許第3631712号公報
しかしながら、上述したように、鉄道の高速化や積載荷重の増大化、ダイヤの過密化が進行している近年においては、レールに対する負荷が従来にも増して過酷になり、特に、曲線軌道区間の外軌レールにおいては、上記従来技術が有するレールのゲージコーナー部の耐摩耗性やレール頭頂部表面の耐表面損傷性では不十分となってきている。
例えば、特許文献1の技術は、レール内部に存在する介在物を起点とする疲労破壊を防止しようとする技術であり、ゲージコーナー部の表面損傷に対しては十分な検討がなされていない。また、特許文献2の技術は、レール頭部中央に発生するヘッドチュックに対しては有効であるが、ゲージコーナー部の表面損傷に対しては不十分である。また、特許文献3の技術は、レール頭頂部とコーナー部に硬度差を設けて、耐転がり損傷を抑制する技術であるが、耐摩耗性については十分な検討がなされていない。また、特許文献4の技術は、レール表面に何らかの理由でマルテンサイトが形成されたときに発生するき裂や折損を防止する観点から、マルテンサイトの生成を抑制する技術であり、したがって、マルテンサイトのような異常組織が形成されない場合のゲージコーナー部表面の剥離損傷を抑制することに対しては十分な検討がなされていない。さらに、特許文献5の技術は、レール頭頂部と深さ20mmまでの硬さと硬度差を規制することによって、耐表面損傷性や靭性を向上して寒冷地での折損を防止する技術であり、耐摩耗性については十分な検討がなされていない。
そこで、本発明の目的は、曲線軌道区間に用いて好適な、耐摩耗性と耐表面損傷性とに優れる耐摩耗性レールとその有利な製造方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題を解決するため、車輪との接触によりレール摩擦面直下のパーライト組織が塑性流動を起こすことによって生ずる微視割れと、この微視割れがレール母材のパーライト組織中に伝播する際のき裂伝播速度に着目し、これらとパーライト組織のラメラー間隔との関係について、鋭意研究を重ねた。その結果、摩擦面直下の塑性流動域に形成される微視割れを防止し、耐摩耗性を向上するためには、パーライト組織のラメラー間隔を0.25μm以下とする必要があること、一方、早期に剥離等の表面損傷を起こすことを防止するには、上記微視割れが母材中に伝播するき裂伝播速度を低減することが重要であり、そのためには、上記ラメラー間隔を0.08μm以上とする必要があることを見出し、本願発明を完成させた。
すなわち、本発明は、C:0.5〜1.0mass%、Si:0.1〜1.0mass%、Mn:0.1〜1.5mass%、P:0.030mass%以下、S:0.020mass%以下、Al:0.005mass%以下、Cr:0.25mass%超え1.5mass%以下、O:0.0020mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式;
固有抵抗値(ρμΩ・cm)=5.68×C+6.49×Mn+6.06×Cr+4.13×Mo+11.84 ・・・(1)
ここで、上記式中の元素記号は、各元素の質量(mass%)
で求められる固有抵抗値が21〜24ρμΩ・cmの範囲にあるレールであって、そのレール頭頂から深さ10mmの領域におけるミクロ組織がラメラー間隔0.08〜0.25μmのパーライト組織であり、応力拡大係数ΔKが15MPa√mのときの疲労き裂伝播速度が2.5×10−8m/cycle以下であることを特徴とする耐摩耗性レールである。
本発明の耐摩耗性レールは、レール頭頂から深さ10mmの領域における0.2%耐力が800MPa以上、ビッカース硬さHvが350〜470であることを特徴とする。
また、本発明の耐摩耗性レールは、上記成分組成に加えてさらに、Cu:0.05〜1.0mass%、Ni:0.05〜1.0mass%およびMo:0.05〜0.5mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
また、本発明の耐摩耗性レールは、曲線半径Rが1000m以下の曲線軌道区間に使用されるものであることを特徴とする。
また、本発明は、上記いずれかに記載の成分組成からなる鋼素材を1150〜1350℃に加熱後、レール形状に熱間圧延し、パーライト変態開始温度以上の温度からパーライト変態終了温度以下までを冷却速度1〜5℃/sで加速冷却することを特徴とする耐摩耗性レールの製造方法を提案する。
本発明によれば、車輪との接触によりレール摩擦面表層に形成される塑性流動域の微視割れを軽減し、かつ、その微視割れが母材中に進展するき裂伝播速度を遅延させることにより耐摩耗性と耐表面損傷性とに優れた耐摩耗性レールを提供することができる。したがって、本発明のレールは、軌道曲線半径Rが1000m以下の曲線軌道の外軌レールに用いて好適である。
西原式摩耗試験機によるすべり転動摩耗試験を説明する図である。 0.7mass%C−0.9mass%Mn−0.3mass%Cr鋼(ラメラー間隔:0.26μm)をすべり転動摩耗試験したときの、摩擦面断面のミクロ組織写真の一例である。 摩擦面に形成された塑性流動域の深さおよび微視割れの深さに及ぼすラメラー間隔の影響について示したグラフである。 疲労き裂伝播試験に用いた試験片の形状を説明する図である。 応力拡大係数が15MPa√mにおける、疲労き裂伝播速度(da/dN)とラメラー間隔との関係を示したグラフである。 疲労き裂伝播試験片を採取した位置を説明する図である。
本発明は、上述したように、レールのパーライト組織のラメラー間隔に着目したところに特徴がある。すなわち、パーライト組織のラメラー間隔は、耐摩耗性や転動疲労特性に影響を及ぼすことについては従来から知られている。しかし、本発明は、近年の曲線軌道区間におけるレールの使用環境の変化を考慮し、車輪との接触によって発生する摩擦面直下のパーライト組織の塑性流動に伴う微視割れの発生と、この微視割れが母材パーライト組織を伝播する過程でのき裂伝播速度に着目し、パーライト組織のラメラー間隔がそれらに及ぼす影響を精査したことに特徴がある。
まず、本発明を開発する契機となった実験について説明する。
0.7〜0.8mass%C−0.8〜1.1mass%Mn−0.3mass%Crの成分組成を有する数種類の鋼材に、パーライト組織のラメラー間隔を変化させるために熱処理および加工熱処理を施した。そして、この鋼材から、外径:30mmφ、厚さ:8mmのリング状試験片を採取し、図1に示した西原式摩耗試験機を用いてすべり転動摩耗試験を行い、摩擦面直下に形成される塑性流動域について調査した。この際の試験条件は、試験片回転速度:684rpm、相手材回転速度:760rpm、すべり率:−10%、接触圧力:684MPaで、試験時間は4時間とした。
すべり転動摩耗試験後、試験片の摩擦面断面を顕微鏡で観察し、塑性流動域の組織を調べた。図2は、一例として、0.7mass%C−0.9mass%Mn−0.3mass%Cr鋼(ラメラー間隔=0.26μm)における摩擦面断面のミクロ組織を示したものであり、摩耗面の表面直下には、すべり接触に伴って大きな塑性流動域が形成されており、その塑性流動域には微視割れが発生していることが確認できる。
図3は、上記塑性流動域の形成および微視割れの深さに及ぼすラメラー間隔の影響について調べた結果を示したものである。この図から、ラメラー間隔が粗い(大きい)場合には、塑性流動域がより深くまで形成されており、その塑性流動域では、塑性流動に沿って発生する微視割れの深さも大きくなっている。一方、ラメラー間隔が微細化する(小さくなる)ほど、塑性流動域の深さは軽減し、微視割れの深さも浅くなっている。これは、ラメラー間隔が微細化することで、レール母材の強度(0.2%耐力)が上昇し、すべり変形に対する抵抗力が増した結果、塑性変形深さが小さくなり、内部に生じる微視割れも軽減されたものと考えられる。
しかしながら、従来技術のレールでは、ラメラー間隔を微細化してもなお、剥離性の表面損傷を起こすことが問題となっている。発明者らは、この問題についてさらに検討した結果、上記表面損傷は、塑性流動域に発生した微視割れが、レールの母材組織中に進展して引き起こされるのではないかと考えるに至った。そこで、微視割れが剥離に至るまでの母材組織中におけるき裂の伝播特性を把握するため、上記鋼材から、図4に示した形状の試験片を採取し、鋼材板厚方向の疲労き裂伝播試験に供し、き裂伝播速度とラメラー間隔との関係について調査した。
図5は、応力拡大係数が15MPa√mのときの疲労き裂伝播速度(da/dN)とラメラー間隔との関係を示したグラフである。なお、上記応力拡大係数ΔKが15MPa√mのときのき裂伝播速度は、概ねレール摩擦面表層の塑性流動に伴う微視割れ先端におけるき裂伝播速度と同レベルである。この図から、ラメラー間隔が小さいほどき裂伝播速度は遅くなる傾向を示すが、0.08μm未満では、逆に、き裂伝播速度は大きく上昇すること、ラメラー間隔が0.08〜0.25μmの範囲では、ラメラー間隔が0.25μm以上と粗い普通レールの伝播速度(3.0E−8〜5.0E−8)と比べると、き裂伝播速度が約1/2以下に低下し、き裂が母材中へ進展し剥離を起こすまでの寿命を2倍以上に向上できる可能性があることがわかった。特に、ラメラー間隔が0.10〜0.22μmの範囲では、安定して低い疲労き裂伝播特性が得られている。上記理由については、まだ十分に明らかとなっていないが、単にラメラー間隔を微細化したのみでは、き裂が母材中を進展する速度をむしろ高めてしまうためと考えられる。
以上の実験結果から、単に摩擦面の塑性流動を低減しようとした場合には、ラメラー間隔を0.25μm以下とし強度を高めればよいが、塑性流動域に発生した微視割れの母材中へ進展する伝播速度を考慮した場合には、ラメラー間隔は0.08μm以上とする必要があること、すなわち、ラメラー間隔を0.08〜0.25μmに調整することで、ゲージコーナー部の耐摩耗性と耐表面損傷性のいずれをも向上できることがわかった。本発明は、上記新規な知見に基づくものである。
次に、本発明に係る耐摩耗性レールの成分組成について説明する。
C:0.5〜1.0mass%
Cは、レールの高強度化およびパーライト組織形成のために必須の元素である。特に、耐摩耗性の向上に対して極めて有効であり、この観点から0.5mass%以上の添加を必要とする。一方、1.0mass%を超える添加は、レールの延性や靭性の低下を招く。よって、本発明では、Cは0.5〜1.0mass%の範囲とする。なお、延性や靭性をより重視する場合には、Cの上限は0.85mass%とするのが好ましい。
Si:0.1〜1.0mass%
Siは、脱酸材として添加される元素であり、その効果を得るためには0.1mass%以上の添加が必要である。一方、1.0mass%を超える添加は、Si酸化物が晶出して、介在物起因による内部割れを起こすようになる。よって、Siは0.1〜1.0mass%の範囲とする。
Mn:0.1〜1.5mass%
Mnは、オーステナイト形成元素でありパーライト変態温度を低下させることから、鋼の高強度化に有効な元素であり、また、脱酸材としても有効である。しかし、0.1mass%未満の添加では、上記効果が小さく、一方、1.5mass%を超える添加は、逆に焼入れ性が過度に高まってマルテンサイトが形成されやすくなる。よって、Mnは0.1〜1.5mass%の範囲とする。好ましくは、0.2〜1.2mass%の範囲である。
P:0.030mass%以下
Pは、鋼中に不可避的に混入してくる有害な不純物元素であり、偏析を起こして鋼を脆化させるので極力低減することが望ましい。しかし、本発明では、0.030%以下であれば許容することができる。
S:0.020mass%以下
Sは、鋼中に不可避的に混入してくる不純物元素であり、Mnと結合してMnSを形成し、レールの延性を低下させるので、極力低下することが望ましい。しかし、0.020mass%以下であればその影響は小さいので、上限を0.020mass%とする。
Al:0.005mass%以下
Alは、脱酸材として強力な効果を有する元素であるが、鋼中にアルミナクラスターを形成し、レールにとって致命的となる転動疲労特性の低下を引き起こす。したがって、本発明では、Al脱酸は極力避けて、鋼中のAlを低減することが望ましい。そこで、本発明では、Alは0.005mass%以下に制限する。
Cr:0.25mass%超え1.5mass%以下
Crは、過度に鋼の焼入れ性を上昇させることなく、過冷度を拡大して、ラメラー間隔を微細化する効果があり、レールのより内部まで高い硬度を得る場合などに有用な元素である。しかし、0.25mass%以下ではその効果が小さく、一方、1.5mass%を超える添加は、溶接性を損なう。よって、Crは、0.25mass%超え1.5mass%以下の範囲で添加する。
O:0.0020mass%以下
Oは、鋼中へ不可避的に混入し、硬質の酸化物系介在物を形成し、これが破壊の起点となって転動疲労特性を著しく低下させる有害元素である。しかし、Oが0.0020mass%以下であれば、その悪影響は小さい。よって、Oは0.0020mass%以下とする。
本発明のレールは、上記必須成分に加えてさらに、要求される強度に応じて、Cu,NiおよびMoのうちから選ばれる1種または2種以上を、下記の範囲で添加することができる。
Cu:0.05〜1.0mass%
Cuは、鋼中に固溶してマトリックスを強化する有用な元素であり、その効果は、0.05mass%以上の添加で得ることができる。しかし、1.0mass%を超えて添加すると、レールの脆化を促進する。よって、Cuを添加する場合は、0.05〜1.0mass%の範囲とするのが好ましい。
Ni:0.05〜1.0mass%
Niは、鋼の強度および靭性の向上に有効な元素であり、それらの効果は、0.05mass%以上の添加で得ることができる。しかし、1.0mass%を超えて添加しても、その効果が飽和するだけなので、上限は1.0mass%とする。よって、Niは、0.05〜1.0mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Mo:0.05〜0.5mass%
Moは、レールの強度向上に有効な元素であり、0.05mass%以上の添加でその効果を発現する。一方、0.5mass%を超える添加は、溶接性を低下したり、焼入れ性を上昇してマルテンサイト変態を促進させたりする。よって、Moは、0.05〜0.5mass%の範囲で添加するのが好ましい。
さらに、本発明のレールは、国内の鉄道に使用される場合、信号電流の送信手段としても使用される。レールを流れる信号電流は、レールの電気抵抗によって大きく変動することから、電気抵抗の変動は、信号の誤動作を起こす原因となる。したがって、レールの電気抵抗は、一定とする必要があり、本発明では、固有抵抗値を21〜24ρμΩ・cmの範囲に制御する。ここで、レールの固有抵抗値は、レールの化学組成で一義的に求まり、本発明の成分組成範囲内では、下記(1)式;
固有抵抗値(ρμΩ・cm)=5.68×C+6.49×Mn+6.06×Cr+4.13×Mo+11.84 ・・・(1)
ここで、上記式中の元素記号は、各元素の質量(mass%)である。
で求めることができる。
次に、本発明のレールが有する機械的特性について説明する。
本発明のレールは、レール頭頂から深さ10mmの領域における鋼の0.2%耐力が800MPa以上であることが好ましい。これは、曲線軌道区間における車輪との接触によるレール表層の塑性流動域の深さを浅くし、それに伴って発生する微視割れを軽減させるためであり、より好ましくは850MPa以上である。また、レールの延性を確保する観点からは、引張試験における伸びは10%以上であることが好ましい。
さらには、レール頭頂から深さ10mmの領域については、曲線軌道区間における過酷な条件下で使用されるレールの耐摩耗性を向上する観点から、ビッカース硬さHvが350以上であることが好ましい。しかし、Hvが470を超えると、レールの組織が一部マルテンサイト化するのに伴って、延性や靭性の低下だけでなく、耐疲労損傷性の低下を招く。よって、レール頭頂から深さ10mmの領域における硬さは、Hvで350〜470であることが好ましく、より好ましくはHv:370〜450の範囲である。
次に、本発明のレールの鋼組織について説明する。
本発明のレールは、パーライト組織を主体としたものであり、レール頭頂から深さ10mmの領域におけるパーライト組織のラメラー間隔は、0.08〜0.25μmの範囲に制限する必要がある。ラメラー間隔が0.25μmを超えると、鋼が軟質化し、耐摩耗性が大きく低下する。一方、ラメラー間隔が0.08μm未満になると、レール摩擦面に形成される塑性流動域に発生した微視割れの進展速度が高まり、却って耐剥離損傷性を低下させるからである。好ましくは、0.10〜0.22μmの範囲である。
次に、本発明のレールの製造方法について説明する。
本発明のレールは、上述した成分組成に調整した鋼を溶製後、常法により鋼素材とし、この鋼素材を加熱後、熱間圧延してレール形状にし、その後、パーライト変態開始温度P以上の温度からパーライト変態終了温度P以下までを加速冷却して製造する。
上記製造方法において、熱間圧延前に行う鋼素材の加熱温度は、1150〜1350℃とする必要がある。加熱温度が1150℃未満では、圧延時の変形抵抗を十分に軽減することができず、一方、加熱温度が1350℃を超えると、鋼素材が部分的に溶融し、レール内部に欠陥を発生するおそれがあるからである。
続くレール形状への熱間圧延は、公知の条件で行えばよく、特に制限はない。しかし、熱間圧延後の冷却は、パーライト変態開始温度(P点)以上からパーライト変態終了温度(P点)以下までを冷却速度1〜5℃/sで加速冷却する必要がある。冷却開始温度がP点未満であると、十分な過冷度を確保することができないため、パーライト組織のラメラー間隔が拡大して0.25μm超えの粗いパーライト組織となり、レールと車輪との接触時の塑性流動が大きくなり、レール表面の微視割れも深くなる。一方、冷却停止温度は、パーライト変態が終了するP点以下の温度であればよい。加速冷却後の冷却は、特に制限はなく、放冷(空冷)でも構わない。
また、加速冷却における冷却速度を1〜5℃/sとする理由は、1℃/s未満では、パーライト組織のラメラー間隔が0.25μm超えの粗いパーライト組織となり、一方、冷却速度が大きいと、ミクロ組織がパーライト単相であっても、過冷度が増すためラメラー間隔が微細化するが、冷却速度が5℃/sを超えるような過度な冷却を行うと、過冷度が増大してラメラー間隔が0.08μm未満となり、その結果、疲労き裂伝播速度が上昇してしまうからである。よって、冷却速度は1〜5℃/sの範囲とする。好ましくは、1〜3℃/sである。
上記のようにして製造された本発明のレールは、耐摩耗性と耐表面損傷性に優れているため、曲線半径Rが1000m以下の曲線軌道区間に敷設される外軌レールのゲージコーナー部の表面損傷を抑制することに対して特に有効である。なお、Rが1000mを超える緩やかな曲線軌道区間や直線軌道区間では、車輪とレールとのゲージコーナー部の接触圧力が低下するため、本発明が対象としているようなゲージコーナー部特有の損傷が少なくなるので、汎用の普通レールや熱処理レールで十分に対応可能である。
表1に示した成分組成を有するA〜Kの鋼を、常用の製鋼プロセスを経て溶製し、連続鋳造法で鋼素材とし、表2に示した条件で熱間圧延し、冷却してレールを製造した。上記のようにして得たレールの頭頂下10mmの部分からJIS4号引張試験片と、組織調査用サンプルを採取し、引張試験とミクロ組織観察に供した。なお、ミクロ組織では、SEMを用いて1万倍でパーライト組織を観察し、緻密なラメラー間隔の部分を写真撮影し、単位長さ当たりに直交するセメンタイトの数をカウントして、そのセメンタイト数を単位長さで除することでラメラー間隔を算出し、この測定を7視野において行い、その平均値をラメラー間隔とした。
Figure 0005238930
Figure 0005238930
さらに、レールの頭頂下10mmの部分から、外径が30mmφで厚さが8mmのリング状摩耗試験片を採取し、先述した西原式摩耗試験機を用いて、すべり転動摩耗試験を行った。この時の試験条件は、試験片回転速度:684rpm、相手材回転速度:760rpm、すべり率:−10%、接触圧力:684MPaで試験時間は4時間とした。そして、試験後、試験片の摩耗量と、摩擦面断面に生じた塑性流動域の深さおよび微視割れの深さを、光学顕微鏡で測定した。また、ビッカース硬度計を用いて、レールの頭頂から深さ10mmまでの範囲の硬さを1mmピッチで10点測定し、その平均値をレールの硬さとした。
さらに、図6に示したようにレール頭頂部とゲージコーナー部の2箇所から、図4と同じ形状の疲労き裂伝播試験片を採取し、応力拡大係数ΔK=15MPa√mの条件で、疲労き裂伝播試験を行い、疲労き裂伝播速度da/dN(m/cycle)を測定し、耐表面損傷性を評価した。
上記測定の結果を表2に併記して示した。本発明に適合する鋼素材を、本発明の製造条件に適合する条件で製造した発明例のレール(No.1〜7)は、いずれもパーライト組織のラメラー間隔が0.08〜0.25μmの範囲にあり、すべり転動摩耗試験後の塑性流動域の深さや微視割れの深さも浅く、疲労き裂伝播速度も小さく抑制されている。また、レール表面下10mmまでの硬さはHv:370〜470の高い硬度を維持しており、0.2%耐力も800MPa以上を有している。
これに対して、鋼記号Gから製造したNo.8のレールは、耐摩耗性や耐表面損傷性については優れているものの、固有抵抗値が本発明の範囲を外れている。
また、C含有量が高い鋼Hから製造したNo.9のレールは、延性が十分ではなく、また、C含有量が低い鋼Iから製造したNo.10のレールは、ラメラー間隔が0.25μmを大きく超えており、摩耗量が多く、すべり転動摩耗試験後の塑性流動域におけるき裂伝播速度も大きい。
また、例え本願発明の成分組成を満たしている場合でも、製造条件が本発明の範囲を外れる場合には、ラメラー間隔が適合範囲(0.08〜0.25μm)から外れ、耐摩耗性と耐表面損傷性とを兼備したレールは得られない。例えば、No.11〜14のレールは、冷却条件が本発明範囲外であるため、ラメラー間隔が粗く、塑性流動域の深さが大きく、また、疲労き裂伝播速度も上昇したことから、耐摩耗性と耐表面損傷性がともに十分でない。また、No.15のレールは、冷却速度が速すぎたために、ラメラー間隔が0.08μm未満となり、その結果、塑性流動域が浅く、耐摩耗性は十分に優れるものの、塑性流動域に生じた微視割れのき裂伝播速度が大きく、耐表面損傷性が大きく低下している。また、Cr含有量が少ない鋼J,Kから製造したNo.16,17のレールは、ラメラー間隔が0.25μmを超えているため、摩耗量が多く、すべり転動摩耗試験後の塑性流動域におけるき裂伝播速度も大きい。

Claims (5)

  1. C:0.5〜1.0mass%、Si:0.1〜1.0mass%、Mn:0.1〜1.5mass%、P:0.030mass%以下、S:0.020mass%以下、Al:0.005mass%以下、Cr:0.25mass%超え1.5mass%以下、O:0.0020mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式で求められる固有抵抗値が21〜24ρμΩ・cmの範囲にあるレールであって、そのレール頭頂から深さ10mmの領域におけるミクロ組織がラメラー間隔0.08〜0.25μmのパーライト組織であり、応力拡大係数ΔKが15MPa√mのときの疲労き裂伝播速度が2.5×10−8m/cycle以下であることを特徴とする耐摩耗性レール。

    固有抵抗値(ρμΩ・cm)=5.68×C+6.49×Mn+6.06×Cr+4.13×Mo+11.84 ・・・(1)
    ここで、上記式中の元素記号は、各元素の質量(mass%)
  2. レール頭頂から深さ10mmの領域における0.2%耐力が800MPa以上、ビッカース硬さHvが350〜470であることを特徴とする請求項1に記載の耐摩耗性レール。
  3. 上記成分組成に加えてさらに、Cu:0.05〜1.0mass%、Ni:0.05〜1.0mass%およびMo:0.05〜0.5mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐摩耗性レール。
  4. 曲線半径Rが1000m以下の曲線軌道区間に使用されるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐摩耗性レール。
  5. 上記請求項1または3に記載の成分組成からなる鋼素材を1150〜1350℃に加熱後、レール形状に熱間圧延し、パーライト変態開始温度以上の温度からパーライト変態終了温度以下までを冷却速度1〜5℃/sで加速冷却することを特徴とする耐摩耗性レールの製造方法。
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