JP5237879B2 - 山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造及び工法 - Google Patents
山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造及び工法 Download PDFInfo
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Description
(1)既設擁壁にコンクリートの大きな荷重をかけることになり、この負担が過度に大きいと、既設擁壁が崩壊する虞がある。
(2)鉄筋、単管、合板などの資材その他の長尺物を運搬する必要があり、現場に長尺物の運搬に障害があると、資材の運搬作業が困難にならざるを得ない。変電所の場合、作業者の頭上に高圧線が通っているため、この高圧線に長尺物が接触すると感電する危険があり、高圧線の位置、間隔に対する十分な配慮が必要で、その分だけ、作業効率は低下する。
(3)場所打ちコンクリート工法では多くの仮設材を必要とし、現場作業が煩雑で工期が長期化する。変電所の場合、作業時間が昼間だけに制限されるため、工期はさらに長くなる。
(4)(生)コンクリートの打設に、通常、圧送ポンプ車を使用するので、現場に圧送ポンプ車と生コン車(生コンクリート専用の運搬車)のセットスペースを確保する必要があり、このスペースの確保が難しいと、コンクリートの打設作業が困難にならざるを得ない。また、クレーンとバケットを使用することもあるが、この場合も、同様である。変電所の場合、圧送ポンプやクレーンによる作業は、既述のとおり、作業者の頭上に高圧線が通っていて、大変に危険であり、十分な注意が必要で、作業効率は低下する。
(5)配管などをして(生)コンクリートを打設していると、配管が詰まって、(配管の)ジョイントを外すことがあるが、この配管のジョイントを外す際に、河川を汚すことがあり、(生)コンクリートの使用は好ましくない。変電所の場合、この配管の取り扱いの際に、高圧線に近づきすぎると、感電の虞があり、十分な注意が必要で、作業効率は低下する。
(5)河川に隣り合わせの既設擁壁上でコンクリート打設が行われる場合、河川を所謂生コンのノロや残コンで汚すことがあり、(生)コンクリートの使用は好ましくない。
(1)分割柱材は型鋼、止水板、水切部材は鉄板が採用され、これら型鋼、鉄板が工場加工され、メッキが施されて、複数の分割柱材は上下方向にボルトにより連結されて既設擁壁の一方の面にアンカー止めにより固定され、複数の止水板は各柱間に溶接により接合され、複数の水切部材は既設擁壁の天端上にアンカー止めにより固定されて、前記各止水板の下端に溶接により接合される。
(2)河川側で各柱間に架設され、複数の断面楔形形状からなる流木防止部材を備える。
(3)流木防止部材にアングル材が採用され、複数のアングル材が工場加工され、メッキが施されて、各柱間に溶接により接合される。
(1)山岳地帯の河川に隣接して設置された各種施設の周囲に、河川の氾濫浸水を防止するために構築された既設擁壁において、当該擁壁の外側一方の面に沿って並列に、複数に分割した分割柱材を上下方向に連結し当該一方の面に固定して、複数の柱を既設擁壁の天端高さよりも上方所定の高さまで立ち上げ、これらの柱間に止水板を架設、接合して、複数の止水板を既設擁壁の上方に延設し、この既設擁壁と各止水板との間に水切部材を設けて、両者間の隙間を水密に塞ぐことにより、当該擁壁を嵩上げし、河川の氾濫の際に流水を止める構造としたので、流水を防止する材料のみの使用により、材料の運搬や組み立て作業を人力で行うことができ、作業スペースが少なく機械等の使用が困難な作業条件でも既設擁壁の嵩上げを確実に行うことができ、工期の短縮を図ることができる。この場合、分割柱材にH型鋼、止水板、水切部材に鉄板を採用し、H型鋼や鉄板を工場加工し、亜鉛メッキにより塗装を施して、これらの材料を現場でアンカー止めやボルト止め又は溶接により組み立てるので、作業スペースを十分に確保できない現場でも既設擁壁の嵩上げ作業を簡易に行うことができる。また、これらの材料が短尺物であることで、活線近接距離の作業に適する利点がある。変電所の工事の場合、変電所内の立ち入り期間が短期で済み、経済的である。
(2)H型鋼からなる柱、鉄板からなる止水板、鉄板からなる水切部材により組み立てられた構造物により、既設擁壁に最小限の荷重をかけるにとどめることができ、既設擁壁の崩壊を確実に防止することができる。
(3)コンクリートを使用することがないので、コンクリートによる河川の汚濁を防止することができ、環境対策としても好ましい。また、コンクリートを使用しないことで、コンクリート構造物に比べて経済的である。
(4)複数の柱(分割柱材)、複数の止水板、複数の水切部材を順次組み立てていくので、分割柱材を足場に利用することができ、仮設材を極力少なくし、仮設材を少なくする分だけ工期を短縮することができる。
(5)河川側で各柱間に断面楔形形状の流木防止部材を設けたので、この流木防止部材で、河川の流木を止めることができ、河川の氾濫時の流水とともに流木の流出を確実に防止することができる。
(6)流木防止部材にアングル材を採用し、このアングル材を工場加工し、亜鉛メッキを施して、現場で各柱間に溶接により取り付けるので、この流木防止部材を簡易に形成することができ、強度も十分に確保することができる。また、この流木防止部材を複数のアングル材を並列に並べて形成したことで、意匠的効果を有し、嵩上げ構造全体の外観を良好に維持することができる。
(1)山岳地帯の河川に隣接して設置された変電所6の周囲に、河川の氾濫浸水を防止するために構築された既設擁壁7において、この擁壁7の外側一方の面71に沿って並列に、複数に分割した分割柱材21、22、23を上下方向に当板24及びボルト25により連結し、当該一方の面71にケミカル系のアンカー26により固定して、複数の柱2、…を既設擁壁7の天端高さよりも上方所定の高さまで立ち上げ、これらの柱2、…間にそれぞれ止水板3を架設、接合して、複数の止水板3、…を既設擁壁7の上方に延設し、この既設擁壁7と各止水板3、…との間に水切部材4、…を設けて、両者間の隙間を水密に塞ぐことによって、当該擁壁7を嵩上げし、河川の氾濫の際に流水を止める構造としたので、河川の流水を防止する材料のみの使用により、材料の運搬や組み立て作業を人力で行うことができ、作業スペースが少なく機械等の使用が困難な作業条件でも既設擁壁7の嵩上げを確実に行うことができ、工期の短縮を図ることができる。特に、分割柱材21、22、23にH型鋼、止水板3、水切部材4に鉄板を採用し、H型鋼や鉄板を工場加工し、亜鉛メッキにより塗装を施して、これらの材料を現場でアンカー止めやボルト止め又は溶接により組み立てるので、作業スペースを十分に確保できない現場でも既設擁壁の嵩上げ作業を簡易に行うことができる。また、これらの材料が短尺物であることで、活線近接距離の作業に適する利点がある。変電所6の工事の場合、変電所6内の立ち入り期間が短期で済み、経済的である。
(2)H型鋼からなる柱2、鉄板からなる止水板3、鉄板からなる水切部材4により組み立てられた構造物により、既設擁壁7に最小限の荷重をかけるにとどめることができ、既設擁壁7の崩壊を確実に防止することができる。
(3)コンクリートを使用することがないので、コンクリートによる河川の汚濁を防止することができ、環境対策として好ましい。また、コンクリートを使用しないことで、コンクリート構造物に比べて経済的である。
(4)複数の柱2(分割柱材21、22、23)、…、複数の止水板3、…、複数の水切部材4、…を順次組み立てていくので、分割柱材21、22、23を足場に利用することができ、仮設材を極力少なくして、仮設材を少なくする分だけ工期を短縮することができる。
(5)河川側で各柱2、…間に断面楔形形状の流木防止部材5、…を設けたので、この流木防止部材5で、河川の流木を止めることができ、河川の氾濫時の流水とともに流木の流出を確実に防止することができる。
(6)流木防止部材5にアングル材を採用し、このアングル材を工場加工し、亜鉛メッキを施して、複数のアングル材を現場で各柱2、…間に溶接により取り付けるので、この流木防止部材5を簡易に形成することができ、強度も十分に確保することができる。また、この流木防止部材5を複数のアングル材を並列に並べて形成したことで、意匠的効果を有し、嵩上げ構造1全体の外観を良好に維持することができる。
2 柱
21、22、23 分割柱材
24 当板
25 ボルト
26 ケミカル系のアンカー
3 止水板
4 水切部材
5 流木防止部材
6 変電所
60 変電設備
61 高圧線
7 既設擁壁
70 天端
71 一方の面
8 作業用通路
9 道路
Claims (6)
- 山岳地帯の河川に隣接して設置された各種施設の周囲に前記河川の氾濫浸水を防止するために構築された既設擁壁を嵩上げする、山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造において、
前記既設擁壁の一方の面に沿って並列に、複数に分割された分割柱材が上下方向に連結され前記一方の面に固定されて、前記既設擁壁の天端高さよりも上方所定の高さまで立ち上げられる複数の柱と、
前記各柱間に架設、接合されて、前記既設擁壁の上方に延設される複数の止水板と、
前記既設擁壁と前記各止水板との間に設けられて両者間の隙間を水密に塞ぐ水切部材とにより構成される、
ことを特徴とする山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造。 - 分割柱材は型鋼、止水板、水切部材は鉄板が採用され、これら型鋼、鉄板が工場加工され、メッキが施されて、複数の分割柱材は上下方向にボルトにより連結されて既設擁壁の一方の面にアンカー止めにより固定され、複数の止水板は各柱間に溶接により接合され、複数の水切部材は既設擁壁の天端上にアンカー止めにより固定されて、前記各止水板の下端に溶接により接合される請求項1に記載の山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造。
- 河川側で各柱間に架設され、複数の断面楔形形状からなる流木防止部材を備える請求項1又は2に記載の山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造。
- 流木防止部材にアングル材が採用され、複数のアングル材が工場加工され、メッキが施されて、各柱間に溶接により接合される請求項3に記載の山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ構造。
- 山岳地帯の河川に隣接して設置された各種施設の周囲に前記河川の氾濫浸水を防止するために構築された既設擁壁を嵩上げする、山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ工法において、
前記既設擁壁の一方の面に沿って並列に、複数に分割された分割柱材を上下方向に連結し前記一方の面に固定することにより、複数の柱を前記既設擁壁の天端高さよりも上方所定の高さまで立ち上げる工程と、
前記各柱間に止水板を架設、接合して、複数の止水板を前記既設擁壁の上方に延設する工程と、
前記既設擁壁と前記各止水板との間に水切部材を設けて両者間の隙間を水密に塞ぐ工程と、
を有する、
ことを特徴とする山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ工法。 - 河川側で各柱間に断面楔形形状の流木防止部材を架設する工程を有する請求項5に記載の山岳地帯における既設擁壁の嵩上げ工法。
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