JP5234727B2 - 温度応答性クロマトグラフィー担体製造方法、それより得られるクロマトグラフィー担体及びその利用方法 - Google Patents

温度応答性クロマトグラフィー担体製造方法、それより得られるクロマトグラフィー担体及びその利用方法 Download PDF

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Description

本発明は、水系移動相を含む特定の条件下で、生物学、医学、薬学等の分野において有用な高分子量の生理活性物質を分離できる、固体表面に0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化する荷電ポリマーを被覆した液体クロマトグラフィー用担体の製造方法に関する。
現在普及している高速液体クロマトグラフィー(HPLC)技術は、移動相液体と担体の組合せや、分離に係わる相互作用の様式が多種多様である。このため、試料に応じて種々選択できるので、近年、種々の物質の分離、精製に利用されている。このような技術革新により、制約はあるものの生化学分野の医薬品の分離精製、ペプチドや蛋白質、核酸などの分離が行えるようになってきた。そして、遺伝子工学手法により生産される組換え蛋白質などのバイオ医薬への応用が盛んになるにつれ、これらの分離精製技術のさらなる革新が強まりつつある。
従来使用されているクロマトグラフィーは担体の表面構造は変えずに、主に移動相中に含まれている溶質と担体表面との相互作用を移動相の溶媒を変えることで行われている。例えば、逆相クロマトグラフィーは、疎水性の担体と極性の移動相からなる方法である。溶質はその疎水性度に応じて移動相と担体との間で分配されることで分離される。この場合、移動相の溶媒の疎水性度を変化させ移動相と担体との間の分配を変化させ溶出させている。その際、移動相の溶媒として、メタノ−ル、アセトニトリルなどの有機溶媒を用いるために分離対象になる生体成分の活性を損なう問題点があった。
また、イオン交換クロマトグラフィーでは、担体表面に陰イオン交換体あるいは陽イオン交換体を固定し、移動相中に存在する対イオンイオン濃度あるいは種類を変化させて物質分離を行っている。保持担体にはシリカ、セルロースやデキストラン、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体などが良く用いられ、これら担体に通常、スルホン酸基、四級アンモニウム基などのイオン交換基を導入される。溶質は、移動相の水素イオン濃度に応じてカチオン、アニオン、両性イオンに解離し、この溶質をイオン交換カラムに流した時担体表面の逆荷電の交換基に移動相内のイオンと競合して結合し、移動相と担体表面の間に一定の割合で分配する。イオン交換クロマトグラフィーとは、この結合の強さによりカラム内を移動する速度が異なることを利用して分離するものである。この分配の割合は幾つかの方法により変化させることができる。例えば、移動相中の競合するイオン種の濃度を変える方法、或いは移動相の水素イオン濃度を変化させ、担体表面のイオン交換基のイオン化程度の割合を変化させる方法が挙げられる。すなわち、イオン交換クロマトグラフィーにおいては、移動相のイオン強度や水素イオン濃度を調節することで分離する方法が一般的に行われている。その際、移動相として酸や高塩濃度の緩衝液を用いるために分離対象になる生体成分の活性を損なう問題点があった。
生化学分野で有用な医薬品、ペプチド、蛋白質、核酸等の分離はイオン交換クロマトグラフィー技術や逆相クロマトグラフィー技術による方法が一般的である。しかしながら、現行の方法では上述のように分離対象の活性を損なうという問題点があり、近年遺伝子工学等の急速な進歩により、生理活性ペプチド、タンパク質、DNAなどが医薬品を含む様々な分野に広範囲にその利用が期待され、その分離・精製は極めて重要な課題となっている。特に、生理活性物質をその活性を損なうことなく分離・精製する技術の必要性が増大している。また、従来の移動相に用いられている有機溶媒、酸、アルカリ、界面活性剤は生理活性物質の活性を損なうと同時に夾雑物となるために、そのシステムの改良が期待されている。従って、このような物質の環境汚染の回避という面からもこれらの物質を用いない分離・精製システムが必要となっている。
このような背景のもと、特開平05−133947号公報ではクロマトグラフィー担体として通常使われるシリカゲルやポリマーゲルへポリマーを固定化する検討がなされた。しかしながら、実施例を見る限り、実際にその担体を使ったときの溶質の分離した結果(分離チャート)は示されておらず、この担体を用いてどのような物質を分離できるのか、また具体的な課題についても何ら示されておらず、詳細は不明であった。
一方、特開平07−318551号公報では、シリカゲル表面に温度応答性ポリマーを固定化し、その担体を用いての実際に各種ステロイド類、さらにはリンパ球の分離例が示されている。実際にシリカゲル担体表面に固定化された温度応答性ポリマーの特性で各種ステロイド類、さらにはリンパ球を分離させられていることが明確に示されている。しかしながら、ここで例示されている温度応答性ポリマーの固定化法ではポリマーの嵩高さのため基材表面に0.7mg/m程度までしか固定化できず、クロマトグラフィー担体の機能が限られていた。基材表面に対する温度応答性ポリマーの固定化を詳細に設計し、従来技術を改善する革新的な技術が望まれていた。
そのような中、特願2005−291719号公報では、原子移動ラジカル重合法を用いることでシリカゲル表面に温度応答性ポリマーを高密度に固定化され、そして、実際にその担体を用いたときの分離例も例示されている。しかしながら、何れの実施例においても分離ピーク幅は大きく、有用な生理活性物質の分離方法として利用するにはさらなる技術改善が求められていた。本公報にはその理由については全く記載されていないが、これは温度応答性ポリマーを高密度に固定化されているものの、反応溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を用いているために原子移動ラジカル重合法の反応速度が速すぎ、温度応答性ポリマーが担体表面に十分に均一に固定化されているためと考えられる。
Macromolecules 38,5937−5943(2005)にはN−イソプロピルアクリルアミドの原子移動ラジカル重合を、イソプロピルアルコール(IPA)をはじめとして様々な溶媒下で行う技術が記載されており、反応溶媒の違いによる反応速度の比較も記載されている。しかしながら、ここでの技術は溶液中での重合反応に関するものであり、固体のクロマトグラフィー用担体に温度応答性ポリマーを固定化する記載はなく、また、そのことを示唆するような記載もなかった。さらに、温度応答性ポリマーの原料となるモノマーと荷電を呈する官能基を持つモノマーとの共重合における原子移動ラジカル重合反応に用いた記載もなく、また、そのことを示唆するような記載もなかった。
一方、特願平10−140722号公報では、荷電を有する温度応答性ポリマーを固定化した担体を用いたクロマトグラフィーによって分離する技術を提案している。この方法によれば、担体表面に被覆された0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマー鎖が温度変化により収縮、膨潤するが、ポリマー鎖が収縮した際にポリマー鎖内のイオン交換基が隠れ、ポリマー鎖が膨潤した際にポリマー鎖内のイオン交換基が露出することとなり、担体の温度を制御することにより、担体表面の荷電量を制御できるようになる。しかしながら、ここで例示されている荷電を有するポリマーの固定化法ではポリマーの嵩高さのため基材表面に0.7mg/m程度までしか固定化できず、クロマトグラフィー担体の機能が限られていた。担体表面に対する荷電を有するポリマーの固定化を詳細に設計し、従来技術を改善する革新的な技術が望まれていた。
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決することを意図してなされたものである。すなわち、本発明は従来技術と全く異なった発想から、生化学分野において有用な生理活性物質を効率良く分離できる、温度応答性クロマトグラフィー担体の製造方法、それより得られるクロマトグラフィー担体及びその利用方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて、研究開発を行った。その結果、担体表面に原子移動ラジカル重合開始剤を固定化し、イソプロピルアルコールを溶媒として、その開始剤から重合触媒下で原子移動ラジカル法により、荷電を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーを成長反応させることで、荷電を有するポリマーが担体表面に均一に固定化され、当該担体のタンパク質との有効結合容量が、そのポリマー鎖が膨潤する条件のもとで担体重量当たり6000〜80000μg/gとなるクロマトグラフィー用担体が得られることを見出した。本発明で示される技術は、従来技術からは全く予想し得なかったもので、従来技術には全くなかった新規なクロマトグラフィーシステムへの発展が期待される。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、基材表面に原子移動ラジカル重合開始剤を固定化し、その開始剤から触媒下、イソプロピルアルコール中で行う原子移動ラジカル法により0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化する荷電を有するポリマーを成長反応させることを特徴とした温度応答性クロマトグラフィー担体の製造方法を提供する。また、本発明は、荷電を有するポリマーが担体表面に均一に固定化され、当該担体のタンパク質との有効結合容量が、そのポリマー鎖が膨潤する条件のもとで担体重量当たり6000〜80000μg/gの温度応答性クロマトグラフィー担体を提供する。さらに、本発明はその温度応答性クロマトグラフィー担体を用い、アルブミンやグロブリン等の生理活性物質の分離、精製、分取方法を提供する。
本発明に記載される温度応答性クロマトグラフィー担体の製造方法により、新規な分離システムが提案される。このシステムを利用すれば、アルブミンやグロブリン等の有用な生理活性化合物を分離させられるようになる。
本発明者らは、上記の要望を満足すべく種々検討した結果、担体の表面構造を、例えば温度などの外的条件を変化させることによって、移動相を変化させることなく移動層に溶解、もしくは分散した特定物と担体表面との相互作用を変化させることにより分離・精製、濃縮する技術を開発し、本発明を完成したもので、本発明の目的は、特定の条件下で原子移動ラジカル法により、荷電を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーを成長反応させる温度応答性クロマトグラフィー担体製造方法、それより得られるクロマトグラフィー担体及びその利用方法を提供するものである。
本発明は、荷電を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーをクロマトグラフィー用担体に固定化する方法である。クロマトグラフィー担体に温度応答性ポリマーを固定化する場合において、その固定化量を制御することは、その担体性能を左右することに繋がるため、極めて重要な技術である。その固定化量が少ないと温度応答性がなくなるほか、標的化合物の保持が充分でなくなり、好ましくない。また、その固定化は均一な分子量のポリマーが、担体表面へ均等に行われていることが望ましい。本発明で使用する担体の形状は特に限定されるものではなく、例えば粒子状、平板状、管状のものがある。特に本発明の担体をクロマトグラフィー用の担体として用いる場合、担体としてはシリカゲル、ガラスが良い。その際、細孔径は特に制約されるものではないが、50〜5000Åが良く、好ましく100〜1000Å、さらに好ましくは120〜500Åである。50Å以下であると分離できる溶質の分子量のかなり低いものだけが対象となり、また5000Å以上であると担体表面積が少なくなり分離が著しく悪くなる。
本発明では、上記担体に0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化する温度応答性ポリマーが固定化される。その固定化方法としては、基材表面に原子移動ラジカル重合開始剤を固定化し、その開始剤から触媒の存在下で原子移動ラジカル法により温度応答性ポリマーを成長反応させる方法が挙げられる。その際に使用する開始剤は特に限定されるものではないが、本発明のように基材がシリカやガラスの場合、例えば、1−トリクロロシリル−2−(m,p−クロロメチルフェニル)エタン、2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、(3−(2−ブロモイソブチリル)プロピル)ジメチルエトキシシランなどがあげられる。本発明では、この開始剤よりポリマー鎖を成長させる。その際の触媒としては特に限定されるものでないが、水和力が変わるポリマーとしてN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体を選んだ場合、ハロゲン化銅(CuX)としてCuCl、CuBr等があげられる。また、そのハロゲン化銅に対するリガンド錯体も特に限定されるものではないが、トリス(2−(ジメチルアミノ)エチル)アミン(MeTREN)、N,N,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン(HMTETA)、1,4,8,11−テトラメチル 1,4,8,11−アザシクロテトラデカン(MeCyclam)、ビピリジン等があげられる。
本発明で重合時に使用する溶媒としては、イソプロピルアルコール(IPA)が好適である。発明者らは種々の検討を行ったところ、まず、温度応答性ポリマーの原料としてN−イソプロピルアクリルアミドを選択し、原子移動ラジカル重合反応を室温で溶液中で行った場合では、反応溶媒としてジメチルホルムアルデヒド(DMF)、水、IPAのいずれを選択しても同程度に反応速度が大きいことが分かった。しかしながら、本発明のような固体のクロマトグラフィー用担体表面に対しN−イソプロピルアクリルアミドを固定化重合しようとする固相反応の場合では、反応溶媒をIPAとすると、他の2者を選んだときに比べ顕著に反応速度が遅くなることを見出した。また、上述のMacromolecules 38,5937−5943(2005)に示されるt−ブチルアルコールでは、室温で固化する場合があり、従って反応温度を室温以上にしなければならず、その結果、反応速度が上昇してしまうことが分かり、本発明には不適当であることが分かった。ここでの知見は、従来技術では全く知られていなかったことであり、本発明によれば、担体への固定化重合は、反応溶媒としてIPAを選択するとポリマー鎖の分子量は徐々に増加し、担体表面へのポリマー鎖の固定化量も徐々に増加することとなる。従って、本発明の方法に従えば、担体表面へのポリマー鎖を均一に固定化させることができるようになる。さらに、所定の時間で反応を中止することで、反応を中止した時点の固定化状態を有する担体を再現性良く製造できるようになる。
本発明は、担体表面に原子移動ラジカル重合開始剤を固定化し、イソプロピルアルコールを溶媒として、その開始剤から重合触媒下で原子移動ラジカル法により、荷電を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーを成長反応させる方法であるが、その他の重合時の開始剤濃度、ハロゲン化銅濃度、リガンド錯体濃度、反応温度、反応時間等は特に限定されるものではなく、目的に応じて変更して良い。さらに反応液の状態は静置させても攪拌しても良いが、担体表面に均一に固定化することを考えると後者の方が好ましい。
本発明において、クロマトグラフィー担体に固定化される、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化する荷電を有するポリマーは、特に限定されないが、該温度内で水和力が変化する温度応答性ポリマーに荷電官能基を導入することで得られる。このような0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーとしては、例えば、特開平2−211865号公報に記載されているポリマーが挙げられる。具体的には、例えば、以下のモノマーの単独重合または共重合によって得られる。使用し得るモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、またはビニルエーテル誘導体が挙げられ、コポリマーの場合は、これらの中で任意の2種以上を使用することができる。更には、上記モノマー以外のモノマー類との共重合、ポリマー同士のグラフトまたは共重合、あるいはポリマー、コポリマーの混合物を用いてもよい。また、ポリマー本来の性質を損なわない範囲で架橋することも可能である。
この中で、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)は32℃に下限臨界温度を有するので、このポリマーで化学修飾した担体表面はこの臨界温度で親水性/疎水性の表面物性を大きく変化させるため、これをクロマトグラフィーの充填剤の表面にグラフトもしくはコーティングして使用した場合、試料に対する保持力が温度によって変得られるようになる。その結果、溶出液の組成を変化させずに保持挙動を温度によって制御することができるようになる。下限臨界温度を32℃以上にするためには、イソプロピルアクリルアミドよりも親水性のモノマーであるアクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸、ジメチルアクリルアミド、ビニルピロリドンなどの親水性のコモノマーをN−イソプロピルアクリルアミドと共重合させることによって調整することが可能である。また、下限臨界温度を32℃以下にしたいときは、疎水性モノマーであるスチレン、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレートなどとの疎水性のコモノマーとの共重合によって調整することができる。
また、ポリジエチルアクリルアミドの下限臨界温度は、約30℃〜32℃であり、この温度を境として親水性/疎水性に表面物性が変化し、前述のポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)の場合と同様に、試料に対する保持力を温度によって調整することができる。本発明で利用される新規なクロマトグラフィー用担体は、化学修飾或いはポリマーの被覆によって作製される。
本発明において、担体表面に被覆されているポリマーは温度を変えることで水和、脱水和を起こすものであり、その温度域は0℃〜80℃、好ましくは10℃〜50℃、さらに好ましくは20℃〜45℃である。80℃を越えると移動相が水であるので蒸発等の作業性が悪くなり好ましくない。また、0℃より低いと移動相が凍結する場合があり、やはり好ましくない。
また、本発明において、担体表面に被覆されるポリマーは荷電されたものである。その荷電を与える方法は特に限定されないが、通常、担体表面に被覆される温度応答性ポリマー鎖を合成する際、電荷を生じる官能基を持ったイオン性モノマーも含めて共重合する方法があげられる。そのイオン性モノマーとして、例えばアミノ基を有するポリマーの構成単位としてジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノスチレン、アミノアルキルスチレン、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、アルキルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられ、また、カルボキシル基を有するポリマーの構成単位としてアクリル酸、メタクリル酸、スルホン酸を有するポリマーの構成単位として(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸等が挙げられるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
本発明では、上記ポリマーが高密度かつ均一に固定化されている。その固定化程度は、単位面積あたりの分子鎖数にして、0.08分子鎖/nm以上が良く、好ましくは0.1分子鎖/nm以上が良く、さらに好ましくは0.12分子鎖/nm以上が良い。基材表面へのポリマーの固定化程度が0.08分子鎖/nm以下であると、従来法による基材表面へのポリマー固定化と同様に個々のポリマー鎖の特性が発現するだけで本発明の担体として好ましくない。固定化程度を示す数値の算出方法は特に限定されるものではないが、例えば同様な反応条件で基材表面に固定化されていないポリマーを作製し、そのポリマー鎖を分析することで求めた分子量とポリマーが固定化された担体の元素分析などから求めたポリマー固定化量から算出できる。
被覆されるポリマーの分子量は0〜80℃の温度範囲内で水和力の変化が発現するに十分に大きな分子量であれば特に制約されるものではないが、ポリマー分子量は1000以上が良く、好ましくは2000以上、さらに好ましくは5000以上のものが良い。分子量が1000以下であると、分子量が低すぎるため、水和力の変化を発現できず好ましくない。また、分子量が5000以上であると、今度はポリマーの分子量が高すぎるため、分子そのものが嵩高くなり温度応答性が減少してしまうこととなり好ましくない。
また、本発明で示すところの基材上へのポリマーの固定化量は0.8〜10.0mg/mの範囲が良く、好ましくは0.9〜8.0mg/mの範囲、さらに好ましくは1.0〜6.0mg/mの範囲が良い。0.8mg/m以下であると温度応答性が認められなくなり、また10.0mg/mより高い値であってもポリマーの嵩高さのため温度応答性が減少してしまうこととなり好ましくない。固定化量の測定は常法に従えば良く、例えば元素分析、ESCAを量などが挙げられるがいずれの方法を用いても良い。本発明で固定化されるポリマーの状態は特に限定されるものではなく、直鎖状のものでも良く、架橋状態のものでも良いが、温度に対する応答性を高めること、基材表面に高密度に固定化することを達成するには全社の直鎖状のものが好ましい。
かくして、本発明に示される製造方法に従えば、従来技術では得られなかった高機能な液体クロマトグラフィー用担体を得られるようになる。その機能の一つとして、常法として用いられる前端クロマトグラフィー法による解析において、担体単位重量あたりのタンパク質の有効結合容量が、担体表面の温度応答性ポリマー鎖が膨潤する条件のもとで担体重量当たり6000〜80000μg/gのものが得られる。本発明では、ここで得られた担体はすべて液体クロマトグラフィーに利用できるが、担体単位重量あたりのタンパク質の有効結合容量が、担体表面の温度応答性ポリマー鎖が膨潤する条件のもとで担体重量当たり特に7000〜50000μg/gのものが良く、さらに好ましくは8000〜20000μg/gのものが良い。有効結合容量が6000μg/g以下であると、生理活性化合物を分析および分取するために必要な担体の量が大量に必要となり本発明の担体としては好ましくない。また、有効結合容量が80000μg/g以上であると担体表面あたりの荷電密度が高くなり、分離される生理活性物質の変性が懸念され、そのための対応策が必要となり必ずしも好適な担体とならない。本発明に示される方法であれば、液体クロマトグラフィー用担体として好適なものを提供できるようになる。
さらに、本発明によって得られる担体表面は温度応答性ポリマーが固定化されており、外部環境温度を変えることで温度応答性ポリマー鎖が収縮したり、膨潤したりする。その結果、上述の6000〜80000μg/gで示される担体単位重量あたりのタンパク質の有効結合容量が温度応答性ポリマー鎖の状態により変化する。その際、担体表面の温度応答性ポリマー鎖が膨潤する条件のもとで担体重量当たりのタンパク質の有効結合容量が所定量のものを選択すれば、タンパク質との有効結合容量が、温度を変えることで担体重量当たり500〜80000μg/gの範囲で変化するものが得られる。本発明では、ここで得られた担体はすべて液体クロマトグラフィーに利用できるが、担体単位重量あたりのタンパク質の有効結合容量が、担体表面の温度応答性ポリマー鎖が収縮した条件のもとで担体重量当たり特に500〜5000μg/gのものが良く、さらに好ましくは1000〜3000μg/gのものが良い。有効結合容量が5000μg/g以上であると、生理活性化合物を分析および分取するための分離が悪くなり本発明の単体としては好ましくない。
本発明によって得られた温度応答性クロマトグラフィー担体は、カラムに充填し、通常の液体クロマトグラフィー装置に取り付けて、液体クロマトグラフィーシステムとして利用される。その際、分離性能はカラム内に充填された担体の温度に影響される。その際、担体への温度の負荷方法は特に制約されないが、例えば担体を充填したカラムの全部、もしくは一部を所定の温度にしたアルミブロック、水浴、空気層、ジャケットなどに装着すること等が挙げられる。
その分離方法は特に限定されるものではないが、あらかじめ担体表面の特性が変わる温度を確認しておき、その温度を挟むようにして温度変化させながら溶質の分離を行う方法が挙げられる。この場合、温度変化だけで担体表面の特性が大きく変わるので、溶質によってはシグナルの出てくる時間(保持時間)に大きな差が生じることが期待される。本発明の場合、この担体表面の特性が大きく変わる温度を挟むようにして分離することが最も効果的な利用方法である。
或いは、別の分離方法の一例としては、得られた温度応答性液体クロマトグラフィー担体に溶質を一度吸着させ、その後、温度を変えて担体表面の特性を変化させることで吸着した溶質を遊離させるような、キャッチアンドリリース法に基づいて利用する方法が挙げられる。その際に吸着させる溶質量は担体に吸着しうる量を超えていても良く、超えていなくても良い。いずれにせよ一度吸着させ、その後、温度を変えて担体表面の特性を変化させること吸着した溶質を遊離させる利用法である。
本発明で示されるクロマトグラフィーは移動相として緩衝液を利用すれば良く、有機溶媒を必要としないものである。ここで、緩衝液とは無機塩類を含む水溶液であって、具体的には、リン酸緩衝液、トリスバッファ−、塩化アンモニウム緩衝液等が挙げられるが、通常利用される緩衝液であれば特に制約されるものではない。その無機塩類の濃度は5〜50mMが良く、好ましくは10〜40mMが良く、さらに好ましくは15〜35mMが良い。移動相の無機塩類の濃度が5mMより低いと、溶質である生理活性物質の活性を損ねる問題があり、またクラマトグラフィー担体表面のイオン交換基の解離度が高くなり、担体表面へ溶質が強固に吸着してしまい、その後の操作で担体表面から溶質を剥がすことが困難となり好ましくない。逆に、無機塩類の濃度が50mMより高くなるとクラマトグラフィー担体表面のイオン交換基の解離度が低くなり、担体表面への溶質の保持が困難となり、最終的に溶質を分離することが困難となり好ましくない。
さらに、本発明で用いられる中性の緩衝液とは、pHが6.5〜7.5が良く、好ましくは6.8〜7.2が良く、さらに好ましくは7.0が良い。担体表面に導入されるイオン交換基がカチオン性のものであるとき、緩衝液のpHが6.5より低くなるとイオン交換基の解離度が高くなり、担体表面へ溶質が強固に吸着してしまい、その後の操作で担体表面から溶質を剥がすことが困難となり好ましくない。逆に、pHが7.5より高くなるとクラマトグラフィー担体表面のイオン交換基の解離度が低くなり、担体表面への溶質の保持が困難となり、最終的に溶質を分離することが困難となり好ましくない。同様に、担体表面に導入されるイオン交換基がアニオン性のものであるとき、緩衝液のpHが7.5より高くなるとイオン交換基の解離度が高くなり、担体表面へ溶質が強固に吸着してしまい、その後の操作で担体表面から溶質を剥がすことが困難となり好ましくない。逆に、pHが6.5より低くなるとクラマトグラフィー担体表面のイオン交換基の解離度が低くなり、担体表面への溶質の保持が困難となり、最終的に溶質を分離することが困難となり好ましくない。ここでの対象となる物質は、生理活性を有する高分子物質であれば特に限定されるものではないが、例えば、ペプチド、蛋白質、核酸等が挙げられ、好ましくは分子量30000以上の生理活性高分子が挙げられる。その中で、特に蛋白質は3次元構造を有した高分子物質であるため本発明の対象物質として好適なものとなる。本発明において、その蛋白質は特に限定されないが、本発明が荷電を有する担体表面を利用した分離方法であるため、酸性蛋白質、もしくは塩基性蛋白質が好ましい。ここで示す酸性蛋白質、もしくは塩基性蛋白質とはそれぞれ一般的なもので良く、具体的には、酸性蛋白質として、アルブミン、ビメンチン、アンキリン3、アクチン、ミオシン等が挙げられ、塩基性蛋白質として、リゾチーム、ヘモグロビンβ鎖、カタラーゼ、アネキシン、エズリン等が挙げられるが特に限定されるものではない。
さらに、本発明によれば、pH6.5以下の上述したリン酸緩衝液を移動相とし、担体として、その表面が負荷電の温度応答性クロマトグラフィー担体を用いた場合、複数の生理活性高分子物質が溶解した水溶液の中からグロブリンを選択的に担体表面のポリマー鎖を収縮させることで保持させ、ポリマー鎖を膨潤させることでグロブリンを脱着させられることが判明した。その際、負荷電の温度応答性クロマトグラフィー担体は上述した方法で得られるものであれば特に限定されるものではなく、また、分離されるグロブリンも、γ−グロブリン、α−グロブリン、β−グロブリンの何れでも良く、特に限定されるものではない。本発明によって得られる担体を利用すれば、γ−グロブリンという極めて有用なタンパク質を有機溶媒による変性なく、低損傷の状態で回収できるようになる。
以上に示してきた本発明における温度応答性クロマトグラフィー担体を用いれば、医薬品等に利用できる極めて有用な生理活性物質を分離することができる。その際には、カラム内の温度を変化させるだけで簡便な操作だけで分離が達成でき、分離に有機溶媒を必要としないため分離された生理活性物質も変性なく得られる。
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
温度応答性正荷電担体表面を下記の2段階を経て作製した。
1−a)シリカゲルへ開始剤固定化表面を導入するために下記の化合物を使用した。
m,p−クロロメチルトリクロロシラン3.72ml(M.W.:288.1)、トルエン318mlに混合させ、水蒸気を含ませたシリカゲル16.0gを分散させた。室温で18時間反応させた。反応後、ろ過してからトルエン、アセトンで洗浄し、110度で乾燥させた。これにより、シリカゲル表面に原子移動ラジカル重合(ATRP)開始剤を導入した。
1−b)温度応答性正荷電固定化表面の形成のために下記の化合物を使用した。
1−a)で作製した開始剤固定化シリカゲル1.0g
IPAAm 3.89g
DMAPAAm(ジメチルアミノプロピルアクリルアミド) 0.971g
tBAAm(tertブチルアクリルアミド) 0.547g
CuCl 0.847g
CuCl 0.0115g
MeTREN(トリス(2−ジメチルアミノエチル)アミン) 20.221g
イソプロパノール 43ml
IPAAm、DMAPAAm、tBAAmを2−プロパノールに溶解させ、30分間、窒素バブリングした。その後、窒素雰囲気下で溶液にCuCl、CuCl、MeTRENを加えて、30分間攪拌しCuCl/CuCl/MeTRENの触媒を形成させた。この反応溶液をガラス容器中の開始剤導入シリカビーズに反応させ、室温で16時間のATRPをおこなった。反応後、アセトン、EDTA溶液でモノマー、ポリマー、銅触媒を洗浄し、50℃で3時間減圧乾燥をおこなった。得られた担体を、常法の前端クロマトグラフィー法で解析したところ、担体単位重量あたりのタンパク質の有効結合容量が、担体表面の温度応答性ポリマー鎖が膨潤する条件のもとで担体重量当たり15000μg/gのものが得られていることが分かった。次に、ポリマー修飾担体をステンレスカラムに充填し、以下の分析を行った。
正荷電コポリマー(ポリ(IPAAm−co−DMAPAAm−co−tBAAm))ブラシ修飾表面を用いたグロブリン、アルブミンの分離を以下のように行った。
(分離条件)カラムとしてポリ(IPAAm−co−DMAPAAm−co−tBAAm)ブラシ修飾シリカビーズを用いて、移動相としてNaPO/NaHPO緩衝液pH=7.0、イオン強度=16.7mMを用いた。
(結果)10℃ではグロブリン、アルブミンともに吸着せずに溶出してくる。40℃では、グロブリンが溶出し、コポリマー表面にアルブミンのみが吸着し、溶出しなかった。得られた結果を図1に示す。また、図2に示す通り、得られたクロマトグラムのピークエリアからも、温度を上昇するに従いグロブリンは溶出し続けるが、アルブミンは吸着を起すことが示された。このことから、カラム温度40℃でグロブリンのみを溶出させ、その後10℃に温度を下げることにより、アルブミンを溶出させられる。このように温度を変化させてシリカビーズ表面のコポリマーの状態を変化させることでグロブリン、アルブミンの二種類の血中タンパク質の分離することが可能であることが分かる。
正荷電コポリマー(ポリ(IPAAm−co−DMAPAAm−co−tBAAm))ブラシ修飾表面を用いたグロブリン、アルブミンの分離を以下のように行った。
(分離条件)カラムとして(ポリ(IPAAm−co−DMAPAAm−co−tBAAm))ブラシ修飾シリカビーズを用いて、移動相としてNaPO/NaHPO緩衝液pH=7.0、イオン強度=16.7mMを用いた。
(結果)10℃ではグロブリン、アルブミンともに吸着せずに溶出してくる。40℃では、グロブリンが溶出し、コポリマー表面にアルブミンのみが吸着する。この性質を利用して、カラム温度40℃でグロブリンのみを溶出させ、その後カラム温度を10℃に温度を下げることにより、アルブミンを溶出させることができた。結果を図3、4に示す。このように温度を変化させてシリカビーズ表面のコポリマーの状態を変化させることでグロブリン、アルブミンの二種類の血中タンパク質の分離が可能であり、血中からのγグロブリンの分離や、製薬中のγグロブリン中に存在する微量なアルブミンの除去が可能であることが分かる。
温度応答性負荷電担体表面を下記の2段階を経て作製した。
4−a)シリカゲル表面への開始剤の導入は、1−a)と同様の方法で行った。
4−b)温度応答性負荷電コポリマーの高密度グラフト表面の形成のために下記の化合物を使用した。
4−a)で作製した開始剤固定化シリカゲル1.0g
IPAAm 3.89g
tBA(tertブチルアクリレート) 0.551g
tBAAm(tertブチルアクリルアミド) 0.547g
CuCl 0.847g
CuCl 0.115g
MeTREN(トリス(2−ジメチルアミノエチル)アミン) 20.221g
イソプロパノール 43ml
IPAAm、tBA、tBAAmを2−プロパノールに溶解させ、30分間、窒素バブリングした。その後、窒素雰囲気下で溶液にCuCl、CuCl、MeTRENを加えて、30分間攪拌しCuCl/CuCl/MeTRENの触媒を形成させた。この反応溶液をガラス容器中の開始剤導入シリカビーズに反応させ、室温で16時間のATRPをおこなった。反応後、アセトン、EDTA溶液でモノマー、遊離ポリマー、銅触媒を洗浄し、50℃で3時間減圧乾燥をおこなった。回収したポリ(IPAAm−co−tBA−co−tBAAm)ブラシ修飾表面をクロロホルム中に分散させ、メタンスルホン酸で加水分解することでtBAのtertブチル基を加水分解し、ポリ(IPAAm−co−AAc(アクリル酸)−co−tBAAm)とすることで、アニオン性イオン交換基を大量に有する温度応答型負荷電コポリマー高密度グラフトシリカゲルを調製できた。得られた担体を、常法の前端クロマトグラフィー法で解析したところ、担体単位重量あたりのタンパク質の有効結合容量が、担体表面の温度応答性ポリマー鎖が膨潤する条件のもとで担体重量当たり13000μg/gのものが得られていることが分かった。次に、ポリマー修飾担体をステンレスカラムに充填し、以下の分析を行った。
負荷電コポリマー(ポリ(IPAAm−co−AAc−co−tBAAm))ブラシ修飾シリカとグロブリン、アルブミンとの相互作用を以下のように測定した。
(分離条件)カラムとしてポリ(IPAAm−co−AAc−co−tBAAm)ブラシ修飾シリカビーズを用いて、移動相としてNaPO/NaHPO緩衝液pH=5.8、イオン強度=16.7mMを用いた。
(結果)温度を10℃から50℃に変化させてクロマトグラムを測定したところ、低温ではγグロブリンのピークが小さいが、温度を上昇させるに従い徐々にピークが大きくなり、溶出した。一方、アルブミンは温度変化にかかわらず溶出し続ける挙動が示された。得られた結果を図5に示す。また、図6に示すように、得られたクロマトグラムのピークエリアから、低温ではグロブリンを吸着し、温度を上昇するに従いグロブリンは溶出するという傾向が示された。一方、アルブミンは温度変化をおこしても溶出し続けた。このことから負荷電コポリマー(ポリ(IPAAm−co−AAc−co−tBAAm))ブラシ修飾表面とのグロブリン、アルブミンとの相互作用には大きな差異があり、温度を変化させてシリカビーズ表面のコポリマーの状態を変化させることでγグロブリンのみを選択的に吸着させることが可能であり、血中からのγグロブリンの選択的な吸着による分離、γグロブリンの濃縮が可能であるであることが分かった。
比較例1
イソプロパノール中での温度応答性ポリマーの重合速度を以下のように測定した。
IPAAm 3g
CuCl 0.013g
MeTREN 0.031g
イソプロパノール 3.83ml
IPAAmをイソプロパノールに溶解させ、30分間、窒素バブリングした。その後、窒素雰囲気下で溶液にCuCl、MeTRENを加えて、30分間攪拌しCuCl/MeTRENの触媒を形成させた。この反応溶液をガラス容器に入れ開始剤であるp−クロロ−キシレンを0.0176ml添加し、室温で0.5〜6時間のATRPを行った。反応後、溶液を透析して、モノマー、銅触媒を除去したものを凍結乾燥してポリマーを得た。得られたPIPAAm分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した。
比較例2
DMF中での温度応答性ポリマーの重合速度を以下のように測定した。
IPAAm 3g
CuCl 0.013g
MeTREN 0.031g
DMF 3.83ml
IPAAmをDMFに溶解させ、30分間、窒素バブリングした。その後、窒素雰囲気下で溶液にCuCl、MeTRENを加えて、30分間攪拌しCuCl/MeTRENの触媒を形成させた。この反応溶液をガラス容器に入れ開始剤であるp−クロロ−キシレンを0.0176ml添加し、室温で0.5〜6時間のATRPをおこなった。反応後、溶液を透析して、モノマー、銅触媒を除去したものを凍結乾燥してポリマーを得た。得られたPIPAAm分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した。
比較例1、比較例2で得られた結果を図7に示す。その結果、イソプロパノール(比較例1)とDMF(比較例2)は同程度の重合速度になった。これにより、溶液中でPIPAAmをATRPにより調製する場合は、両者の間で差が無いことが分かった。
温度応答性ポリマー固定表面をイソプロパノール中で作製した。
1−a)で作製した開始剤固定化シリカゲル1.0g
IPAAm 4.86g
CuCl 0.847g
CuCl 0.0115g
MeTREN 20.221g
イソプロパノール 43ml
IPAAmをイソプロパノールに溶解させ、30分間、窒素バブリングした。その後、窒素雰囲気下で溶液にCuCl、CuCl、MeTRENを加えて、30分間攪拌しCuCl/CuCl/MeTRENの触媒を形成させた。この反応溶液をガラス容器中の開始剤導入シリカビーズに反応させ、室温で0.5〜15時間のATRPをおこなった。反応後、アセトン、EDTA溶液でモノマー、遊離ポリマー、銅触媒を洗浄し、50℃で3時間減圧乾燥をおこなった。ポリマーグラフト量はCHN元素分析により算出した。
比較例3
温度応答性ポリマー固定表面をDMF中で作製した。
1−a)で作製した開始剤固定化シリカゲル1.0g
IPAAm 4.86g
CuCl 0.847g
CuCl 0.0115g
MeTREN 20.221g
DMF 43ml
IPAAmをDMFに溶解させ、30分間、窒素バブリングした。その後、窒素雰囲気下で溶液にCuCl、CuCl、MeTRENを加えて、30分間攪拌しCuCl/CuCl/MeTRENの触媒を形成させた。この反応溶液をガラス容器中の開始剤導入シリカビーズに反応させ、室温で0.5〜15時間のATRPをおこなった。反応後、アセトン、EDTA溶液でモノマー、遊離ポリマー、銅触媒を洗浄し、50℃で3時間減圧乾燥をおこなった。ポリマーグラフト量はCHN元素分析により算出した。
実施例6、比較例3で得られた結果を図8に示す。その結果、固定化されたPIPAAmの量から重合速度を推算すると、DMF(比較例3)よりもイソプロパノール(実施例6)を用いた方が、顕著に重合速度が遅いことが分かる。これによりATRPでPIPAAmを担体に固定化する際には、反応溶媒にイソプロパノールを用いる方が、担体表面へのPIPAAm固定化状態の制御が可能であり、反応時間によりPIPAAmグラフト量を調節することが可能であることが分かった。
本発明によれば、担体表面に0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化する荷電を有するポリマーが高密度に固定化された温度応答性クロマトグラフィー担体が得られる。この担体を利用すると温度変化に対する担体表面への生理活性物質の相互作用が著しく変化する。この分離対象としては、例えばタンパク質やペプチド等の分離、精製、分別への利用が強く期待される。したがって、本発明は医学、生物学等の分野における極めて有用な発明である。
実施例2に示す、分析温度を変えたときの、ポリ(IPAAm−co−DMAPAAm−co−tBAAm)ブラシ修飾シリカ担体を用いた、HSA(ヒト血清アルブミン)とグロブリンのクロマトグラムである。 実施例2に示す、ポリ(IPAAm−co−DMAPAAm−co−tBAAm)ブラシ修飾シリカ担体を用いた、HSAとグロブリンのクロマトグラムのピークエリアと分析温度との関係を示す図である。 実施例3に示す、ポリ(IPAAm−co−DMAPAAm−co−tBAAm)ブラシ修飾担体を用いたグロブリン、HSAの分離を示した図である。 実施例3に示す、ポリ(IPAAm−co−DMAPAAm−co−tBAAm)ブラシ修飾担体を用いて分離して得られたグロブリンとHSAのブロット図である。 実施例5に示す、分析温度を変えたときの、ポリ(IPAAm−co−AAc−co−tBAAm)ブラシ修飾シリカ担体を用いた、HSAとグロブリンのクロマトグラムである。 実施例5に示す、ポリ(IPAAm−co−AAc−co−tBAAm)ブラシ修飾シリカ担体を用いた、HSAとグロブリンのクロマトグラムのピークエリアと温度との関係を示した図である。 比較例1と比較例2に示す、溶媒の違いによる反応時間とPNIPAAmの分子量の関係を示す図である。 実施例6と比較例3に示す、溶媒の違いによる反応時間とシリカゲルに固定化したPNIPAAmの重量の関係を示す図である。

Claims (16)

  1. 担体表面に原子移動ラジカル重合開始剤を固定化し、イソプロピルアルコールを溶媒として、その開始剤から重合触媒下で原子移動ラジカル重合法により、荷電を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーを成長反応させる温度応答性クロマトグラフィー担体製造方法であって、当該荷電を有し、0〜80℃の温度範囲内で水和力が変化するポリマーは、担体表面に被覆される温度応答性ポリマー鎖を合成する際、少なくとも電荷を生じる官能基を持ったイオン性モノマーと共重合することによって得ることを特徴とする、前記方法
  2. 荷電を有するポリマーが、ポリアルキルアクリルアミドの共重合物である、請求項1記載の温度応答性クロマトグラフィー担体製造方法。
  3. ポリアルキルアクリルアミドが、ポリ−(N−イソプロピルアクリルアミド)、及び/またはポリ−(N,N−ジエチルアクリルアミド)である、請求項2記載の温度応答性クロマトグラフィー担体製造方法。
  4. 担体がシリカゲル粒子、ガラス板、ガラス粒子である、請求項1〜3のいずれか1項記載の温度応答性クロマトグラフィー担体製造方法。
  5. 原子移動ラジカル重合開始剤が、2−(m,p−クロロメチルフェニルエチル)エチルトリクロロシランである、請求項1〜4のいずれか1項記載の温度応答性クロマトグラフィー担体製造方法。
  6. 原子移動ラジカル重合開始剤が0.08分子鎖/nm以上の割合で高密度に固定化されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の温度応答性クロマトグラフィー担体製造方法。
  7. 重合触媒が、ハロゲン化銅として塩化銅、リガンド錯体としてトリス(2−(ジメチルアミノ)エチル)アミンである、請求項1〜6のいずれか1項記載の温度応答性クロマトグラフィー担体製造方法。
  8. 担体表面の荷電を有するポリマー固定化量が0.8〜10.0mg/mとなる、請求項1〜7のいずれか1項記載の温度応答性クロマトグラフィー担体製造方法。
  9. 荷電を有するポリマーが担体表面に均一に固定化され、当該担体のタンパク質との有効結合容量が、そのポリマー鎖が膨潤する条件のもとで担体重量当たり6000〜80000μg/gである、請求項1〜8のいずれか1項記載の温度応答性クロマトグラフィー担体製造方法から得られた温度応答性クロマトグラフィー担体。
  10. 担体表面のタンパク質との有効結合容量が、温度を変えることで担体重量当たり500〜80000μg/gの範囲で変化する、請求項9記載の温度応答性クロマトグラフィー担体。
  11. 中性で5〜50mMのリン酸緩衝液を移動相とし、担体として請求項9、10のいずれか1項記載の温度応答性クロマトグラフィー担体を用いた、複数の生理活性高分子物質が溶解した水溶液から分子量30000以上の生理活性高分子物質を分離する、生理活性物質の分離方法。
  12. 担体表面を正荷電とし、生理活性高分子物質が溶解した水溶液の中からアルブミンを当該担体表面のポリマー鎖を収縮させることで保持させ、ポリマー鎖を膨潤させることでアルブミンを脱着させることで生理活性高分子物質とアルブミンを分離する、請求項11記載の生理活性物質の分離方法。
  13. pH6.5以下の5〜50mMのリン酸緩衝液を移動相とし、担体として請求項9、10のいずれか1項記載の担体表面が負荷電の温度応答性クロマトグラフィー担体を用いた、複数の生理活性高分子物質が溶解した水溶液の中からグロブリンを当該担体表面のポリマー鎖を収縮させることで保持させ、ポリマー鎖を膨潤させることでグロブリンを脱着させることで生理活性高分子物質とグロブリンを分離する、生理活性物質の分離方法。
  14. グロブリンが、γ−グロブリンである、請求項13記載の生理活性物質の分離方法。
  15. 請求項11〜14のいずれか1項記載の生理活性物質の分離方法を利用した、生理活性物質の精製方法。
  16. 請求項11〜14のいずれか1項記載の生理活性物質の分離方法を利用した、生理活性物質の分取方法。
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