JP5233848B2 - 直接切削用非調質棒鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、直接切削用非調質棒鋼に関する。詳しくは、熱間圧延等の熱間加工によって製造した後、「焼きならし」や「焼入れ−焼戻し」等の熱処理を施さず、また、熱間鍛造等による所定形状への成形加工も行わずに、熱間加工後に冷却したままの状態から直接に切削加工を施して、あるいは、必要に応じて上記の切削加工後にさらに高周波焼入れを施して製造する部品の素材、特に、高い降伏強度と降伏比に加えて高い靱性を具備し、建設機械や産業機械のシャフト、自動車のピン等の素材として好適な安価な直接切削用非調質棒鋼に関する。
建設機械や産業機械のシャフトは棒状形状であるため、熱間加工後に冷却して製造した棒鋼を、熱間鍛造せずにそのまま切削し、耐摩耗性を付与するために表面に高周波焼入れと焼戻しの処理を施した状態で部品として組み込まれる場合がある。したがって、上述の方法で製造されるシャフトの素材となる棒鋼は、適度な被削性を有しつつ高周波焼入れ時の焼入れ性も具備していることが必要である。また、建設機械や産業機械のシャフトは、大きな衝撃荷重を受けて使用されるため、座屈抵抗が高く、かつ、靱性に優れることが要求される。
座屈抵抗を高めるためには、降伏強度を高くする必要があるが、引張強度も同時に高くなった場合には、被削性を犠牲にすることになる。したがって、過度に引張強度を高めることなく降伏強度を高める、すなわち、「降伏強度/引張強度」で表される降伏比を高めることも必要である。
特に、近年における建設機械や産業機械の大型化・高出力化にともなって、上述したシャフトにおいても、要求される降伏強度、降伏比および靱性のレベルはますます高くなっている。
なお、JIS G 4051(2005)に規定された機械構造用炭素鋼鋼材は、これに「焼入れ−焼戻し」のいわゆる調質処理を施せば、安定して高い降伏強度、降伏比および靱性を確保することができる。このため、従来のシャフトやピンは、機械構造用炭素鋼鋼材を調質処理して製造されてきた。
しかしながら、最近の厳しい経済情勢を反映して、各種部品の製造コスト低減の動きが活発化しており、この動きは建設機械部品、産業機械部品や自動車部品においても例外ではなくなってきている。
このため、製造コストが嵩む「焼入れ−焼戻し」の調質処理を行うことなく、安定して高い降伏強度、降伏比および靱性が得られる非調質鋼に対する要望が大きくなり、採用され始めている。
なお、非調質鋼においては、合金元素としてVを用いることが一般的であるが、近年のV等の合金元素の高騰から、非調質鋼においても素材コスト低減のニーズがますます大きくなってきている。
こうした状況の下にあって、特許文献1には、ステアリングラックのような高い靱性が要求される部品を想定して、V:0.05〜0.35%、Nb:0.010〜0.050%等を含有する鋼を、950℃以上に加熱後、仕上げ加工として850℃以下の温度における減面率10%以上の熱間加工を行って得た「直接切削用高靱性非調質鋼」が提案されている。
また、特許文献2には、V:0.08〜0.5%、Nb:0.02〜0.1%等を含有する鋼を1100〜1300℃に加熱した後、冷却を行って800〜1100℃に降温させてその温度域で鍛造加工を行い、しかる後に冷却によってフェライト+パーライト変態させる「高強度・高靱性フェライト+パーライト型非調質鋼鍛造品の製造方法」が提案されている。
さらに、特許文献3には、熱間鍛造によりホイールハブ、コンロッドやクランクシャフト等の部品を成形することを想定して、V:0.05〜0.3%等を含有し、B系介在物とC系介在物の清浄度の和が0.03%以下で、その組織がフェライト・パーライト組織、またはフェライト・パーライト・ベイナイト組織である「非調質鋼」が提案されている。
特開平4−180536号公報 特開平10−195530号公報 特開2003−147478号公報
前述の特許文献1で提案された技術は、単に靱性に優れた非調質鋼を得ることだけを目的としており、靱性と硬さのバランスを高めることを志向するものにすぎない。すなわち降伏比を高めるという意識は全くないものである。また、MnやCrの含有量が低く、このため、十分な降伏強度が得られるものではない。加えて、必要不可欠な元素としてVが含有されているとともに、いわゆる「強度−靱性バランス」を上げるために、NiやMoを任意元素として含有させてもよいものであり、昨今の強い素材コスト低減に配慮されたものではない。
特許文献2で提案された技術は、鍛造品を製造する技術であって、熱間加工後に冷却したままの状態で高い降伏強度が必要となる棒状形状の部品に使用されることを想定しているものではない。このため、靱性と硬さのバランスを高めることを志向するものにすぎず、降伏比を高めるという意識は全くないものであり、また、必要不可欠な元素としてVが含有されている。
特許文献3で提案された技術は、降伏比を高めるものではあるが、Vが必要不可欠な元素として含有されている。しかも、V含有量が低い場合には、それほど高い降伏強度と靱性のバランスが得られているわけではない。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、その目的は、コストが高いVを必ずしも含有せずとも、また含有する場合であっても極力使用することを制限したうえで、高い降伏強度、降伏比および靱性を熱間加工後に冷却したままで得ることができ、熱間加工後の冷却ままの状態から直接に切削加工して建設機械や産業機械のシャフト、自動車のピン等として用いることができる直接切削用非調質棒鋼を提供することである。
具体的には、本発明の目的は、Vを含有させる場合であっても、その含有量を0.15%未満に制限した非調質棒鋼であって、特に、質量%で、Vの含有量が0(ゼロ)から0.05%未満の場合には、降伏強度、降伏比および靱性がそれぞれ、500MPa以上、0.65以上および37J/cm2以上であり、また、特に、質量%で、Vの含有量が、0.05%以上0.15%未満の場合には、降伏強度、降伏比および靱性がそれぞれ、620MPa以上、0.65以上および37J/cm2以上である「直接切削用非調質棒鋼」を提供することである。
なお、上記の引張特性は室温における値であり、また、靱性は、JIS Z 2242(2005)に記載の幅10mmのUノッチ試験片を用いて室温でシャルピー衝撃試験を行った場合の値である。
本発明は、下記の(a)〜(c)を技術的思想の骨子とするものである。
(a)直接切削加工した後は、高周波焼入れすることが多いが、高周波焼入れによって必要なマルテンサイト硬さを確保するためには、0.37%以上のCを含有させる必要がある。
(b)高価なVの含有量を極力制限して高い降伏強度と降伏比を得るためには、適正量のMnおよびCrを含有させたうえで、Nbの炭窒化物を熱間加工後の冷却過程でフェライト中に析出させなければならない。特に、Nbの炭窒化物を熱間加工後の冷却過程でフェライト中に析出させることにより、引張強度を過度に高めることなく降伏強度を高めること、すなわち、降伏比を上げることができる。
(c)さらに、高い降伏強度、降伏比および靱性を得るためには、鋼の化学組成を特定の範囲に調整することに加えて、組織に占めるフェライトとパーライトとからなる混合組織(以下、「フェライト・パーライト組織」ともいう)の割合を特定の値以上とし、しかも、旧オーステナイト粒径を特定の値以下にする必要がある。
なお、上記(c)の組織は、例えば、鋼を1000〜1250℃に加熱して熱間圧延し、その熱間圧延のうちの仕上げ圧延について、断面減少率を5〜30%として900〜800℃の温度範囲で行った後、800〜500℃の間の冷却速度を0.05〜2℃/sで冷却する方法によって得ることができる。
上記の(a)〜(c)を技術的思想の骨子とする本発明の要旨は、下記(1)〜(3)に示す直接切削用非調質棒鋼にある。
(1)質量%で、C:0.37〜0.53%、Si:0.05%以上0.50%未満、Mn:1.55%〜1.90%、P:0.040%以下、S:0.010%以上0.030%未満、Cr:0.15〜0.80%、Al:0.06%以下、N:0.005〜0.025%およびNb:0.010〜0.050%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、MnおよびCrの含有量が下記の(1)式で表される関係を満足する化学組成を有し、しかも、フェライト・パーライト組織の割合が90%以上であり、かつ、旧オーステナイト粒径が150μm以下であるミクロ組織を有することを特徴とする直接切削用非調質棒鋼。
1.90<Mn+Cr≦2.50・・・(1)
ただし、(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
(2)Feの一部に代えて、さらに、質量%で、V:0.15%未満を含む化学組成を有することを特徴とする上記(1)に記載の直接切削用非調質棒鋼。
(3)Feの一部に代えて、さらに、質量%で、Ca:0.010%以下およびPb:0.35%以下の1種または2種を含む化学組成を有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の直接切削用非調質棒鋼。
なお、残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ等、その他種々の要因によって混入するものを指す。
また、「フェライト・パーライト組織」とは、フェライトとパーライトとからなる混合組織を指す。
本発明の直接切削用非調質棒鋼は、コストが高いVを必ずしも含有せずとも、また含有する場合であっても極力使用することを制限したうえで、高い降伏強度、降伏比および靱性を熱間加工後に冷却したままで得ることができるので、熱間加工後の冷却ままの状態から直接に切削加工して建設機械や産業機械のシャフト、自動車のピン等の素材として用いるのに好適である。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)鋼の化学組成
C:0.37〜0.53%
Cは、鋼の引張強度を高める作用を有し、0.37%以上含有させることで効果が得られる。しかも、「高周波焼入れ−焼戻し」の処理を施す場合には、高周波焼入れによって必要なマルテンサイト硬さを得るために0.37%以上のC含有量が必要となる。しかしながら、Cの含有量が0.53%を超えると、高い降伏比が得られず、また、靱性も低下する。さらに、降伏強度の割には引張強度が高くなりすぎて、被削性の低下が生じる。したがって、Cの含有量を0.37〜0.53%とした。なお、C含有量の好ましい上限は0.48%である。
Si:0.05%以上0.50%未満
Siは、鋼の脱酸に有効であるとともに固溶強化によって鋼の降伏強度を高める作用を有する。しかしながら、その含有量が0.05%未満では添加効果に乏しい。一方、Siを、0.50%以上含有させてもコストが嵩む上に、鋼の熱間加工性が低下する。したがって、Siの含有量を0.05%以上0.50%未満とした。
Mn:1.55%〜1.90%
Mnは、鋼の脱酸作用を有するとともに、フェライトの固溶強化に寄与し降伏強度を高める作用を有する。これらの効果を得るためにはMnの含有量を1.55%以上とする必要がある。しかしながら、Mnの含有量が1.90%を超えると、鋼の熱間加工性が低下し、さらに、焼入れ性が高くなりすぎてベイナイト組織を生じ、降伏比や靱性の低下をきたす。したがって、Mnの含有量を1.55%〜1.90%とした。
P:0.040%以下
Pは、結晶粒界に偏析して熱間加工性を低下させ、さらに、固溶強化によりフェライトが硬くなって靱性を低下させる場合がある。特に、その含有量が0.040%を超えると熱間加工性および靱性の低下が大きくなる。したがって、Pの含有量を0.040%以下とした。なお、Pの含有量は少なければ少ないほど好ましい。
S:0.010%以上0.030%未満
Sは、Mnとともに硫化物を形成して鋼の被削性を高める作用を有する。この効果を得るには、Sの含有量を0.010%以上とする必要がある。しかしながら、Sの含有量が0.030%以上になると、鋼の熱間加工性が低下し、さらに、靱性も低下する。したがって、Sの含有量を0.010%以上0.030%未満とした。
Cr:0.15〜0.80%
Crは、パーライト中のセメンタイトの強化に寄与し鋼の降伏強度を高める作用を有する。特に本発明は、ミクロ組織に占めるフェライト・パーライト組織の割合が90%以上の非調質棒鋼を対象とするものであり、さらには、高価なVの含有量を極力制限して高い降伏強度と降伏比を得ることを目的とするものである。このため、Crのパーライト中のセメンタイトの強化効果を十分に活用することが有効である。上記Crのパーライト中のセメンタイトの強化効果を得るには、0.15%以上のCr含有量とすることが必要である。しかしながら、Crの含有量が0.80%を超えるとベイナイト組織を生じ、降伏比および靱性の低下をきたす。したがって、Crの含有量を0.15〜0.80%とした。なお、Cr含有量の好ましい下限は0.20%であり、また、好ましい上限は0.45%である。
Al:0.06%以下
Alは、鋼の脱酸剤として有効な元素である。しかしながら、Alを0.06%を超えて含有させてもその効果は飽和し、合金コストが嵩むばかりである。したがって、Alの含有量を0.06%以下とした。Alの含有量は、好ましくは、0.05%以下である。
なお、Alの含有量については、特に下限を設ける必要はないが、Al含有量の過度の低減は、脱酸効果が十分に得られず鋼の清浄性が低下するとともに、製造コストの増大を招く。そのため、Al含有量の好ましい下限は0.005%である。少なくともAlを0.005%含んでおれば、脱酸効果は十分である。
N:0.005〜0.025%
Nは、CとともにNbと炭窒化物を形成して、また、Vを含む場合には、CとともにVとも炭窒化物を形成して、鋼の析出強化に寄与する重要な元素である。この効果を得るには、0.005%以上のN含有量が必要である。しかしながら、Nを0.025%を超えて含有させても上記の効果は飽和する。したがって、Nの含有量を0.005〜0.025%とした。なお、N含有量の好ましい下限は0.007%であり、また、好ましい上限は0.020%である。
Nb:0.010〜0.050%
Nbは、本発明において重要な元素である。すなわち、Nbは、CおよびNと結合してフェライト中に炭窒化物として析出し、降伏強度を高める作用を有する。こうした効果を得るには、Nbの含有量を0.010%以上とする必要がある。しかしながら、Nbを0.050%を超えて含有させても、熱間加工時の加熱温度でマトリックスに固溶しきれなくなるため、前記した効果の増大はほとんど得られず、このため、Vほどではないもののコストが高くなってしまう。したがって、Nbの含有量を0.010〜0.050%とした。なお、Nb含有量の好ましい上限は0.035%である。
本発明の直接切削用非調質棒鋼の一つは、上記元素のほか、残部がFeおよび不純物からなるものであって、MnおよびCrの含有量がそれぞれ、上述した範囲にあって、かつ、これらの元素の含有量が前記した(1)式で表される関係、つまり、
1.90<Mn+Cr≦2.50・・・(1)
を満足する化学組成を有するものでなければならない。ただし、(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
以下、上記のことについて説明する。
Mn+Cr:1.90を超えて2.50以下
MnおよびCrの含有量が既に述べた範囲にあっても、〔Mn+Cr〕の値が1.90以下である場合には、既に述べた本発明の降伏強度についての目標を達成できないことがある。
すなわち、本発明の目標降伏強度の1つである500MPa以上という値を、Vの含有量を低減した状態で達成するためには、Nb炭窒化物による析出強化に加えて、MnやCrによって強化する必要があり、そのためには、MnおよびCrの含有量の和である〔Mn+Cr〕の値は、1.90%を超えなければならない。しかしながら、MnおよびCrを過度に含有して〔Mn+Cr〕の値が2.50を超えるとベイナイト組織を生じ、降伏比および靱性の低下をきたす。
このため、MnおよびCrの含有量が前記した(1)式で表される関係、つまり、
1.90<Mn+Cr≦2.50・・・(1)
を満たすこととした。
本発明の直接切削用非調質棒鋼の他のものは、前記残部としての「Feおよび不純物」におけるFeの一部に代えて、V、CaおよびPbのうちから選んだ1種以上の元素を含有する化学組成を有するものである。
以下、任意元素である上記V、CaおよびPbの作用効果と、含有量の限定理由について説明する。
V:0.15%未満
本発明は、高い降伏強度、降伏比および靱性を高価なVの含有量を極力制限して達成することを目的としている。したがって、Vは含有させなくともよい。
一方、V炭窒化物によるフェライト析出強化や結晶粒微細化は、降伏強度および降伏比を高めるのに有効である。このため、市況の合金コストによってはVを微量に含有させた方が課題達成に要する総コストが安くなる場合がある。しかしながら、たとえ高い降伏強度および降伏比が得られるとしても、Vを0.15%以上含有させるとコスト上昇が顕著になりすぎて、低廉材料の提供という本発明の本来の目的から逸脱してしまう。したがって、Vを含有させる場合の含有量を0.15%未満とした。
なお、Vを含有させる場合には、達成しようとする降伏強度、降伏比および靱性の目標レベルに応じてVの含有量を決定すればよい。
すなわち、目標とする降伏強度、降伏比および靱性がそれぞれ、500MPa以上、0.65以上および37J/cm2以上であれば、Vを含有させる場合、その含有量は、0.05%未満とすればよい。
また、目標とする降伏強度、降伏比および靱性がそれぞれ、620MPa以上、0.65以上および37J/cm2以上であれば、Vを含有させる場合、その含有量は、0.05%以上0.15%未満とすればよい。なお、上記の機械的性質を目標とする場合のV含有量の好ましい上限は0.12%である。
CaおよびPbは、鋼の被削性を高める作用を有する。このため、より大きな被削性を確保したい場合には、これらの元素を含有させてもよい。以下、上記のCaおよびPbについて説明する。
Ca:0.010%以下
Caは、被削性を高める作用を有する。したがって、この効果を得るためにCaを含有してもよい。しかしながら、0.010%を超える量のCaを含有させても上記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Caを含有させる場合、その含有量を0.010%以下とした。なお、Caの含有量は0.005%以下とすることが好ましい。
一方、前記したCaの効果を確実に得るためには、Ca含有量の下限を0.0003%とすることが好ましく、0.0005%とすれば一層好ましい。
Pb:0.35%以下
Pbは、被削性を高める作用を有する。したがって、この効果を得るためにPbを含有してもよい。しかしながら、Pbの含有量が0.35%を超えると、熱間加工性の低下を招く。したがって、Pbを含有させる場合、その含有量を0.35%以下とした。なお、Pbの含有量は0.30%以下とすることが好ましい。
一方、前記したPbの効果を確実に得るためには、Pb含有量の下限を0.04%とすることが好ましい。
なお、上記のCaおよびPbは、そのうちのいずれか1種のみ、または2種の複合で含有させることができる。なお、これらの元素の合計含有量の上限はCaの含有量の上限値とPbの含有量の上限値の合計である0.360%であっても構わない。
(B)ミクロ組織
本発明の直接切削用非調質棒鋼は、そのミクロ組織がフェライト・パーライト組織の割合が90%以上であり、かつ、旧オーステナイト粒径が150μm以下であるものでなければならない。
これは、ミクロ組織におけるフェライト・パーライト組織の割合が90%未満の場合、熱間加工後に冷却したままの状態では本発明が目標とする高い降伏強度、降伏比および靱性を確保することができないからである。
すなわち、本発明の直接切削用非調質棒鋼においては、ミクロ組織における残部組織、つまり、上記のフェライト・パーライト組織以外はベイナイト組織もしくはマルテンサイト組織、またはベイナイト組織とマルテンサイト組織との混合組織であり、上記の残部組織の割合が大きくなって10%を超えると、降伏比や靱性が低下してしまう。
ミクロ組織に占めるフェライト・パーライト組織の割合は好ましくは95%以上であり、100%が最も好ましい。
さらに、旧オーステナイト粒径が150μmを超えると、ミクロ組織におけるフェライト・パーライト組織の割合が90%以上であっても、熱間加工後に冷却したままの状態では本発明が目標とする高い降伏強度、降伏比および靱性を確保することができない。つまり、本発明の直接切削用非調質棒鋼においては、化学組成およびミクロ組織に占めるフェライト・パーライト組織の調整に加えて、熱間加工後に冷却したままの状態での結晶粒を微細化することが必要であり、このため、旧オーステナイト粒径を150μm以下にする必要がある。
なお、旧オーステナイト粒径は50μm以下にすることが好ましいが、旧オーステナイト粒径は細かければ細かいほどよいので、その下限は特に設けるものではない。しかしながら、旧オーステナイト粒径を微細にするためには、例えば、棒鋼圧延温度を過度に低下させる等の製造上の制約が生じる。このため、工業的に製造する場合の現実的な旧オーステナイト粒径の下限は、10μm程度になる。
なお、上述したフェライト・パーライト組織の割合が90%以上であり、かつ、旧オーステナイト粒径が150μm以下であるミクロ組織を有する本発明に係る直接切削用非調質棒鋼を製造する方法については、特に限定する必要はないが、その好ましい態様の一例として、下記の製造方法を挙げることができる。
すなわち、前記(A)項で述べた化学組成を有する鋼を用いて、これを1000〜1250℃に加熱して熱間圧延し、その熱間圧延のうちの仕上げ圧延について、断面減少率を5〜30%として900〜800℃の温度範囲で行った後、800〜500℃の間の冷却速度を0.05〜2℃/sで冷却する方法である。
以下、本発明に係る直接切削用非調質棒鋼を製造する方法の好ましい態様の一例としての上記製造方法について説明する。
先ず、Nb炭窒化物による析出強化を得るためには、熱間加工の加熱の段階でNbをマトリックスに十分固溶させておくのがよいので、熱間圧延における加熱温度は1000℃以上にすることが好ましい。
一方、圧延の仕上げ温度を低下させ、オーステナイト域での結晶粒径を微細化させる、つまり、旧オーステナイト粒径を微細化させることによって、フェライト・パーライト組織を微細化し、降伏強度、降伏比および靱性を高めるという観点から、さらには、過度の加熱は設備故障を招きやすくなることから、加熱温度の上限は、1250℃以下にすることが好ましい。
次に、本発明に係る直接切削用非調質棒鋼は、熱間加工後の冷却ままの状態から直接に切削加工して建設機械や産業機械のシャフト、自動車のピン等の部品を製造する素材として用いるものであるため、被削性の低下を極力避ける必要があり、そのためには降伏強度を高めつつ、引張強度の上昇を抑えるのがよい。そして、特に、降伏比を高くするためには、上記圧延における仕上げ温度を低下させるとともに仕上げ圧延の際に断面減少率を確保して、オーステナイト域での結晶粒径を微細化させるのがよく、このために、圧延の仕上げ温度は900℃以下にすることが好ましく、また、仕上げ圧延の断面減少率は5%以上とすることが好ましい。
一方、圧延の仕上げ温度が800℃を下回ると、熱間変形抵抗の増大により圧延機に過大な負荷がかかって設備故障を招くことがあるため、圧延の仕上げ温度は800℃以上とすることが好ましい。また、仕上げ圧延の断面減少率が大きくなって、特に30%を超える場合にも設備故障を招くことがあるため、仕上げ圧延の断面減少率は30%以下とすることが好ましい。
最後に、仕上げ圧延後、フェライト・パーライト変態すべき800〜500℃の間の冷却速度が2℃/sを超えると、ベイナイト組織もしくはマルテンサイト組織、またはベイナイト組織とマルテンサイト組織との混合組織が生成して降伏比および靱性の低下をきたす場合があるため、800〜500℃の間の冷却速度は2℃/s以下にすることが好ましい。一方、上記温度域における冷却速度は、生産性を高めるという観点から、0.05℃/s以上にすることが好ましい。
500℃未満の温度域における冷却については、生産性の向上という観点からは速いほうがよいので、水冷やミスト冷却等の加速冷却を行うのが好ましいが、特に限定されるものではない。大気中で放冷する等、製造設備に応じて、適宜の冷却手段を決定することで構わない。
なお、上述した方法によって、前記(A)項で述べた化学組成を有する鋼のうちで、Vの含有量が0(ゼロ)から0.05%未満の直接切削用非調質棒鋼を製造すれば、そのフェライト・パーライト組織の割合が90%以上であり、かつ、旧オーステナイト粒径が150μm以下であるミクロ組織を有し、降伏強度、降伏比および靱性がそれぞれ、500MPa以上、0.65以上および37J/cm2以上であるものを得ることができる。
また、上述した方法によって、前記(A)項で述べた化学組成を有する鋼のうちで、Vの含有量が0.05%以上0.15%未満の直接切削用非調質棒鋼を製造すれば、そのフェライト・パーライト組織の割合が90%以上であり、かつ、旧オーステナイト粒径が150μm以下であるミクロ組織を有し、降伏強度、降伏比および靱性がそれぞれ、620MPa以上、0.65以上および37J/cm2以上であるものを得ることができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する鋼1〜17を3トン電気炉を用いて溶製し、鋼塊を作製した。
なお、表1中の鋼1〜9は、化学組成が本発明で規定する範囲内にある本発明例の鋼である。一方、鋼10〜17は、成分のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲から外れた比較例の鋼である。
上記の比較例の鋼のうちで鋼17は、V含有量の高い一般的な従来型の非調質鋼に相当する鋼である。
Figure 0005233848
上記各鋼の鋼塊を、通常の方法によって鋼片とした後、表2に示す条件で熱間圧延および冷却し、直径が70mmの棒鋼に仕上げた。なお、表2に記載の冷却速度で800〜500℃の温度域を冷却した後の冷却は大気中での放冷とした。
Figure 0005233848
上記のようにして作製した直径70mmの棒鋼から各種の試験片を採取して、ミクロ組織、引張特性および靱性を調査した。
すなわち、各試験番号について、直径70mmの棒鋼から鍛錬軸に垂直な面を観察面とするミクロ試験片を切り出し、鏡面研磨して硝酸アルコール溶液で腐食した後、倍率を100倍とした光学顕微鏡で観察して、ミクロ組織の判定を行った。
引張特性は、上記各棒鋼の中心と表面の中間の部位から、JIS Z 2201(1998)に記載の、平行部の直径が7mmの14A号引張試験片を切り出し、通常の方法により室温で引張試験を行って調査した。なお、引張強度および0.2%耐力を測定し、上記の0.2%耐力を降伏強度として、降伏比を算出した。
靱性は、上記各棒鋼の中心と表面の中間の部位から、JIS Z 2242(2005)に記載の幅10mmのUノッチ試験片を切り出し、通常の方法により室温でシャルピー衝撃試験を行い、衝撃値を測定した。この幅10mmのUノッチ試験片を用いた室温でのシャルピー衝撃値は、靱性を評価する指標となり得るもので、その値が大きいほど靱性が良好といえる。
表3に、上記の各試験結果をまとめて示す。なお、表3においては、降伏強度、降伏比および靱性についての本発明の目標をそれぞれ、500MPa以上、0.65以上および37J/cm2以上とし、これを下回るものに「#」を付した。
Figure 0005233848
表3から明らかなように、本発明で定める化学組成およびミクロ組織を有する本発明例の試験番号、つまり、試験番号1、2および5〜11の場合は、いずれも目標とする降伏強度、降伏比および靱性が得られている。
これに対して、少なくとも化学組成およびミクロ組織のいずれか一方が本発明で規定する条件から外れている比較例の試験番号のうちで試験番号3、4および12〜18については、降伏強度、降伏比および靱性のうちの2つ以上が目標に達していない。
なお、比較例の試験番号のうちで試験番号19については、目標とする降伏強度、降伏比および靱性が得られているものの、Vを0.18%も含む一般的な従来型の非調質鋼に相当する鋼17を用いているため、合金コストが高くなって、低廉材料の提供という本発明の本来の目的から逸脱してしまう。
本発明の直接切削用非調質棒鋼は、コストが高いVを必ずしも含有せずとも、また含有する場合であっても極力使用することを制限したうえで、高い降伏強度、降伏比および靱性を熱間加工後に冷却したままで得ることができるので、熱間加工後の冷却ままの状態から直接に切削加工して建設機械や産業機械のシャフト、自動車のピン等の素材として用いるのに好適である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.37〜0.53%、Si:0.05%以上0.50%未満、Mn:1.55%〜1.90%、P:0.040%以下、S:0.010%以上0.030%未満、Cr:0.15〜0.80%、Al:0.06%以下、N:0.005〜0.025%およびNb:0.010〜0.050%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、MnおよびCrの含有量が下記の(1)式で表される関係を満足する化学組成を有し、しかも、フェライト・パーライト組織の割合が90%以上であり、かつ、旧オーステナイト粒径が150μm以下であるミクロ組織を有することを特徴とする直接切削用非調質棒鋼。
    1.90<Mn+Cr≦2.50・・・(1)
    ただし、(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
  2. Feの一部に代えて、さらに、質量%で、V:0.15%未満を含む化学組成を有することを特徴とする請求項1に記載の直接切削用非調質棒鋼。
  3. Feの一部に代えて、さらに、質量%で、Ca:0.010%以下およびPb:0.35%以下の1種または2種を含む化学組成を有することを特徴とする請求項1または2に記載の直接切削用非調質棒鋼。
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