JP5227111B2 - ブレーキ操作装置および液圧ブレーキシステム - Google Patents
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Description
特許文献2には、バキュームブースタと、バキュームブースタの助勢限界後に、ブレーキシリンダ圧を、助勢限界前後で特性が同じになるように制御するブレーキ液圧制御装置とを備えたブレーキ装置が記載されている。このブレーキ装置においては、ブレーキ操作部材の操作状態がマスタシリンダ圧センサを利用して検出される。その結果、踏力センサやストロークセンサが不要となり、その分、コストダウンを図ることができる。
特許文献3には、バキュームブースタと、バキュームブースタの助勢限界後に、ブレーキシリンダ圧をマスタシリンダ圧より大きくするブレーキ液圧制御装置とを備えたブレーキ装置が記載されている。このブレーキ装置においては、マスタシリンダ圧センサのゲイン異常が発生した場合に、マスタシリンダ圧の増加勾配が減少してから設定時間が経過した場合に助勢限界に達したとされる。このように、マスタシリンダ圧の増加勾配が減少したことに基づけば、マスタシリンダ圧センサにゲイン異常が生じても、助勢限界に達したことを検出することができる。
バキュームブースタにおいて、ブレーキ操作部材の前進に伴ってパワーピストンが前進させられ、それによって、負圧室の容積が減少して、負圧室の負圧が大気圧に近づく。また、パワーピストンの前進に伴ってマスタシリンダの加圧ピストンが前進させられ、加圧室の液圧が増加させられる。しかし、加圧室の液圧の増加は、パワーピストンの前進に対して遅れて検出される。後述する理由により加圧室の液圧の増加が実際に遅れたり、加圧室の液圧を検出するマスタシリンダ液圧センサに起因して検出が遅れたりするのである。
したがって、負圧室の負圧の変化に基づけば、加圧室の液圧に基づく場合より、ブレーキ操作部材の操作開始を早期に検出することが可能となる。ブレーキ操作部材の操作ストロークを検出するストロークセンサを設けなくても、ブレーキ操作開始を、マスタシリンダの加圧室の液圧を検出するマスタシリンダ液圧センサによる検出値に基づくより、早期に検出することが可能となるのである。その結果、ストロークセンサが不要となり、ブレーキ操作装置のコストダウンを図ることができる。
加圧室の液圧がパワーピストンの前進に対して遅れて増加する理由は以下の通りである。
(理由1)加圧ピストンとパワーピストンとは、一体的に移動可能に連結されているのではなく、これらの間には機械的なクリアランスがある。そのため、パワーピストンが前進しても加圧ピストンが直ちに前進せず、その分、加圧室の液圧の増加が遅れる。
(理由2)ブレーキ回路の構造の影響がある。マスタシリンダの加圧室の作動液は、加圧室に接続された部材(液通路、ブレーキシリンダ等)に供給されるため、これら作動液供給対象装置の状態によっては、加圧室の液圧の増加が遅れることがある。
また、マスタシリンダ液圧センサによる検出値が加圧室の液圧の増加に遅れて増加する理由は以下の通りである。
(理由1)マスタシリンダ液圧センサが設けられた位置(例えば、マスタシリンダからの距離)等に起因して、加圧室に液圧が発生してから、その液圧がマスタシリンダ液圧センサに伝達されるまでに時間を要する場合がある。
(理由2)マスタシリンダ液圧センサの感度等に起因する遅れがある。マスタシリンダ液圧センサの感度が非常に良い場合には、遅れは非常に小さいが、感度が悪い場合には、遅れが大きくなる。
(理由3)マスタシリンダ液圧センサが検出部と処理部とを有する場合において、処理部におけるデータ処理態様、例えば、検出部の出力電圧と加圧室の液圧の検出値との関係が予め定められており、その関係と実際の出力電圧とから検出値が決定される場合において、その関係において、検出値0に対応する出力電圧が大きい場合は、遅れが大きくなるのである。
(理由4)ブースタの負圧室の圧力を検出するブースタ負圧センサとマスタシリンダの加圧室の液圧を検出するマスタシリンダ液圧センサとを比較すると、ブースタ負圧センサによって測定される圧力範囲は大気圧から真空までの間であるのに対し、マスタシリンダ液圧センサによって測定される圧力範囲は0から数MPaの間であり、マスタシリンダ液圧センサによる検出範囲の方が広い。そのため、マスタシリンダ液圧センサは、0近傍の値を精度よく検出できないものとされるのに対して、ブースタ負圧センサは、僅かな変化も検出可能な感度がよいものとすることができる。したがって、加圧室の液圧が僅かに増加した場合に、そのことが、マスタシリンダ液圧センサによって検出できなくても、負圧室の負圧が僅かに変化した場合に、そのことが、ブースタ負圧センサによって検出され得るのである。
請求項1に記載のブレーキ操作装置において、例えば、負圧室の負圧を常時監視し、予め定められた設定時間内に設定負圧以上大気圧に近づいたことが検出された場合に、パワーピストンが前進した、すなわち、ブレーキ操作部材の操作が開始されたと検出される。ブレーキ操作部材が操作されていない状態において、負圧室の負圧は、エンジンの作動状態の影響を受けて変動するが、その変化勾配はそれほど大きくない。負圧室の負圧がエンジンの作動状態に基づいて変化する状態を定常状態にあると称し、定常状態における負圧室の負圧を定常負圧と称する。それに対して、ブレーキ操作部材の前進に伴ってパワーピストンが前進させられると、負圧室の容積が減少させられて、負圧が定常負圧から大気圧に近づく。この場合の負圧の変化は、エンジンの作動状態に基づく変化より大きい。例えば、ブレーキ操作部材が通常の操作速度で操作される場合の負圧室の容積変化速度等に基づいて、設定時間、設定負圧を決定することができる。
設定負圧は、常に一定の固定値としても、定常負圧に基づいて決まる値としてもよい。
定常負圧が真空に近い場合は大気圧に近い場合より、パワーピストンの移動量が同じ(容積変化量が同じ)場合の負圧室の負圧の減少量(大気圧に近づく変化量)が小さくなるからである。定常負圧は、ブレーキ操作部材の非操作状態における負圧室の負圧の平均値としたり、ブレーキ操作部材の操作が行われた場合の、その操作が開始される直前あるいは設定時間前の負圧室の負圧としたりすることができる。定常負圧は、操作開始前負圧と称することもできる。
なお、ブレーキスイッチによっても、ブレーキ操作部材の操作の開始を検出することができる。ブレーキスイッチによれば、ブレーキ操作部材の操作ストロークが設定ストロークに達した場合にON・OFFの状態が切り換わるようにされており、設定ストロークが小さい場合は、早期に操作開始を検出することができる。しかし、上述の負圧室の負圧の変化に関する設定時間、設定負圧の大きさによっては、負圧室の負圧の変化に基づく場合の方が、ブレーキスイッチに基づく場合より、早期にブレーキ操作部材の操作開始を検出可能とすることができる。しかし、本願請求項1に記載のブレーキ操作装置において、ブレーキスイッチより早期に操作開始が検出されるようにすることは不可欠ではない。
なお、負圧室の圧力は大気圧より絶対真空側の圧力であり、本明細書において、負圧の低下、減少とは、負圧室の圧力が大気圧に近づくことをいう。
請求項2に記載のブレーキ操作装置においては、前記操作開始取得装置が、(i)前記負圧室の負圧が、前記設定時間前に取得された前記負圧室の負圧より前記設定負圧以上大気圧に近づいた場合に、前記ブレーキ操作部材が操作されたとする手段と、(ii)前記設定時間前に取得された前記負圧室の負圧を前記定常負圧として、その定常負圧が真空に近い場合は大気圧に近い場合より前記設定負圧を小さい値に決める手段とを含むものとされ、請求項3に記載のブレーキ操作装置においては、前記操作開始取得装置が、前記ブレーキ操作部材の非操作状態における前記負圧室の負圧の平均値を前記定常負圧として、その定常負圧が真空に近い場合は大気圧に近い場合より前記設定負圧を小さい値に決定する手段を含むものとされる。
請求項4に記載のブレーキ操作装置においては、前記操作開始取得装置が、さらに、前記マスタシリンダの加圧室の液圧が予め定められた設定液圧以上増加した場合に、前記ブレーキ操作部材の操作が開始されたと取得する手段を含む。
負圧室の負圧とマスタシリンダの加圧室の液圧とに基づけば、より確実にブレーキ操作部材の操作開始を検出することができる。
請求項5に記載の液圧ブレーキシステムは、ブレーキ操作装置、ブレーキシリンダ、ブレーキ液圧制御装置を含み、前記ブレーキ液圧制御装置が、前記操作開始取得装置によって前記ブレーキ操作部材の操作が開始されたことが検出された場合の、前記負圧室の負圧の操作開始前負圧からの変化量に基づいて前記目標液圧を決定する目標液圧決定部を含むものとされる。
前記ブレーキ操作部材の操作が開始された場合には、負圧室の負圧が設定時間内に設定負圧以上大気圧に近づくことになるが、その場合の操作開始前負圧からの負圧の減少量は、パワーピストンの前進ストロークが大きい場合は小さい場合より大きくなる。したがって、操作開始前負圧からの負圧の減少量に基づけば、ブレーキ操作部材の操作ストロークを推定することができる。
また、負圧室の負圧の減少量に基づいてブレーキシリンダの液圧が制御されるようにすれば、操作ストロークに基づいて制御される場合と同様に、ブレーキシリンダの液圧を運転者の意図する大きさに制御することが可能となる。ブレーキシリンダの液圧がマスタシリンダの液圧に基づいて制御される場合には、制御がブレーキ操作部材の操作開始に遅れて開始されるため、ブレーキシリンダ液圧の効き遅れが大きくなる。それに対して、負圧室の負圧の減少量に基づけば、早期にブレーキシリンダの液圧制御を開始できるため、効き遅れを小さくすることができ、速やかにブレーキシリンダ液圧を増加させることができる。
この液圧ブレーキシステムにおいては、図1に示すように、ブレーキ操作部材たるブレーキペダル10の踏力がバキュームブースタ12により倍力され、その倍力された踏力に応じた液圧が液圧源たるマスタシリンダ14に発生させられる。この液圧は、車輪に設けられたブレーキ16のブレーキシリンダ18に供給され、ブレーキシリンダ18が液圧により作動させられて車輪の回転が抑制される。また、ブレーキシリンダ18とマスタシリンダ14との間には、ブレーキシリンダ18の液圧を制御するアクチュエータである液圧制御ユニット20が設けられている。液圧制御ユニット20は、電子制御ユニット24(以下、ブレーキECU24と称する)により制御される。
バキュームブースタ12とインテークマニホルド32との間にはチェック弁36が設けられている。チェック弁36は、インテークマニホルド32からバキュームブースタ12への負圧の供給(バキュームブースタ12の空気がインテークマニホルド32側へ吸引されること)は許容するが、バキュームブースタ12からインテークマニホルド32への負圧の流出(インテークマニホルド32内の空気がバキュームブースタ12へ吸引されること)は阻止するように設けられている。そのため、バキュームブースタ12側の負圧は、インテークマニホルド32側の負圧より、チェック弁36の開弁圧分、低く、すなわち大気圧に近くなる。チェック弁36とバキュームブースタ12との間にはタンク38が設けられ、負圧が蓄えられる。タンク38は容量の小さいものとされている。
また、エンジン30において、電子制御式スロットルバルブ34の開度,インジェクタの燃料噴射量,タイミング等が、電子制御ユニット40(以下、EFI−ECU40と称する)により制御される。EFI−ECU40には、インテークマニホルド32の負圧を検出するインテークマニホルド負圧センサ42,電子制御式スロットルバルブ34の開度を検出するスロットルポジションセンサ44,回転数を検出するエンジン回転数センサ46等が接続されており、それらの検出値に基づいてエンジン30の作動状態が検出され、電子制御式スロットルバルブ34,インジェクタ等が制御される。
バキュームブースタ12は、中空のハウジング64と、ハウジング64内に設けられたパワーピストン66とを含み、パワーピストン66によりマスタシリンダ14の側の負圧室68とブレーキペダル10の側の変圧室70とに仕切られる。
パワーピストン66は、ブレーキペダル10の側において、バルブオペレーティングロッド71を介してブレーキペダル10と連携させられ、マスタシリンダ14の側において、ゴム製のリアクションディスク72を介してブースタピストンロッド74と連携させられている。ブースタピストンロッド74はマスタシリンダ14の加圧ピストン60aに連携させられ、パワーピストン66の作動力を加圧ピストン60aに伝達する。
なお、加圧ピストン60aは、ストッパがマスタシリンダ14のハウジングに当接することによって後退端に達するが、その後退端位置において、加圧ピストン60aはパワーピストン66から離間している。そのため、加圧ピストン60aは、パワーピストン66の前進に遅れて前進することになる。
負圧室68の負圧は、ブースタ負圧センサ78によって検出され、マスタシリンダ14の加圧室61bの液圧はマスタシリンダ液圧センサ79によって検出される。
パワーピストン66の前進に伴って負圧室68の容積が減少するため、負圧室68の負圧であるブースタ負圧は減少する。また、マスタシリンダ液圧センサ79による検出値は、ブースタ負圧センサ78による検出値の減少に対して遅れて増加する。
本実施例における液圧ブレーキ回路はX配管とされており、マスタシリンダ14の一方の加圧室61bには右前輪FRおよび左後輪RL用の第1ブレーキ系統が接続され、他方の加圧室61aには左前輪FLおよび右後輪RR用の第2ブレーキ系統が接続されている。それらブレーキ系統は互いに構成が共通するため、以下、第1ブレーキ系統のみを代表的に説明し、第2ブレーキ系統については説明を省略する。
個別通路86の各々にはブレーキシリンダ18が接続されている。各個別通路86の途中には常開の電磁開閉弁である増圧弁90が設けられ、各増圧弁90と並列に作動液戻り用の逆止弁94が設けられる。各ブレーキシリンダ18にはリザーバ通路96を介してリザーバ98に接続され、リザーバ通路96の途中には、それぞれ常閉の電磁開閉弁である減圧弁100が設けられる。
また、リザーバ98は作動液収容部118aと、補給弁118bとを含む。作動液収容部118aは、ハウジングに摺動可能に設けられた可動部材118dと、可動部材118dの一方の側に設けられたスプリング118eと、可動部材118dの他方の側に設けられた収容室118fとを含み、補給弁118bは、弁子119aおよび弁座119bと、可動部材118aに設けられた弁駆動部材119cとを含む。補給弁118bには補給通路119dを介してマスタシリンダ14が接続される。
補給弁118bは、収容室118fに作動液が十分に収容されている場合には閉状態にあるが、収容室118fに収容される作動液量が設定量以下になると、可動部材118dが移動させられ、弁駆動部材119cにより開状態に切り換えられる。それによって、補給通路119dを経てマスタシリンダ14から収容室118fに作動液が供給されるのであり、リザーバ98において作動液不足が生じないようにされている。
この圧力制御弁120において、ソレノイド134が励磁されない非作用状態(OFF状態)では開状態にある。主通路80においてマスタシリンダ側とブレーキシリンダ側との間での双方向の作動液の流れが許容され、その結果、ブレーキ操作が行われれば、ブレーキシリンダ液圧はマスタシリンダ液圧と同じとなり、マスタシリンダ液圧の増加に伴って増加させられる。
これに対し、ソレノイド134が励磁される作用状態(ON状態)では、ソレノイド134の磁気力によりアーマチュア138が吸引される。弁子130には、ブレーキシリンダ液圧とマスタシリンダ液圧との差に基づく力F2 とスプリング136の弾性力F3 との和と、ソレノイド134の磁気力に基づく吸引力F1 とが互いに逆向きに作用する。力F2 の大きさは、ブレーキシリンダ液圧とマスタシリンダ液圧との差と、弁子130がブレーキシリンダ液圧を受ける実効受圧面積との積で表される。
F2 +F3 :F1
ブレーキシリンダ液圧とマスタシリンダ液圧との差圧F2 は、弾性力F3 が同じ場合に、吸引力F1 が大きい場合は小さい場合より大きくなるのであり、ソレノイド134への供給電流の制御によって、これらの差圧が制御される。
なお、図3に示すように、圧力制御弁120と並列に逆止弁144、リリーフ弁146が設けられている。逆止弁144は、ブレーキシリンダ18からマスタシリンダ14への作動液の流れは阻止するが、逆向きの流れは許容するものであり、圧力制御弁120が異常であっても、マスタシリンダ14からブレーキシリンダ18へ向かう作動液の流れが許容される。リリーフ弁146は、ブレーキシリンダ側の液圧がマスタシリンダ側の液圧よりリリーフ圧以上高くなると、ブレーキシリンダ側からマスタシリンダ側への作動液の流れを許容するものであり、ポンプ106による吐出圧が過大となることを回避し得る。
本実施形態においては、圧力制御弁120,リザーバ98,ポンプ106等が液圧制御ユニット20を構成している。
ブレーキECU24の出力側には、前記ポンプ106を駆動するポンプモータ160が駆動回路162を介して接続されている。また、前記圧力制御弁120のソレノイド134の駆動回路164、増圧弁90および減圧弁100の各ソレノイド166の各駆動回路168(図には複数のソレノイド166,駆動回路168がそれぞれまとめて図示されている)も接続されている。ソレノイド134の駆動回路164には、ソレノイド134の磁気力をリニアに制御するための電流制御信号が出力され、一方、増圧弁90等の各ソレノイド166の各駆動回路168にはそれぞれ、ソレノイド166をON/OFF駆動するためのON/OFF駆動信号が出力される。図5においてブレーキECU24の出力側についての接続も、第1ブレーキ系統について代表的に図示されており、第2ブレーキ系統については図示を省略する。
ブレーキECU24とEFI−ECU40とは、CAN(Car Area Network)170を介して接続され、種々の情報の通信が行われる。
増圧弁90,減圧弁100は、アンチロック制御ルーチンに従って開閉制御されるが、アンチロック制御についての説明は省略する。
効き特性制御とは、バキュームブースタ12に助勢限界があること考慮し、車体減速度が、バキュームブースタ12の助勢限界の前後を問わず、ほぼ同じ勾配で増加するように行われるブレーキシリンダ18の液圧制御をいう。
バキュームブースタ12は、ブレーキ操作力がある値まで増加すると、変圧室70の圧力が大気圧まで上昇し切ってしまい、助勢限界に達する。助勢限界後は、バキュームブースタ12はブレーキ操作力を倍力することができないから、何ら対策を講じないと、図6(a)のグラフで表されているように、ブレーキの効き、すなわち、同じブレーキ操作力Fに対応するブレーキシリンダ液圧P Wの高さが助勢限界がないと仮定した場合におけるブレーキシリンダ液圧PWの高さより低下する。かかる事実に着目して効き特性制御が行われるのであり、具体的には、図6(b)のグラフで表されているように、バキュームブースタ12が助勢限界に達した後には、ポンプ106を作動させてマスタシリンダ液圧PM より差圧ΔPaだけ高い液圧をブレーキシリンダ18に発生させ、それにより、バキュームブースタ12の助勢限界の前後を問わず、ブレーキの効きを安定させる。ここに、差圧ΔPaとマスタシリンダ液圧PM との関係は例えば、図6(c)のグラフで表されるものとされる。
尚、図6(d)のグラフは、圧力制御弁120のソレノイド134への供給電流と差圧ΔPaとの関係を示す。
また、バキュームブースタ12が助勢限界に達した場合のマスタシリンダの圧PMB (以下、助勢限界標準値と称する)も予め求められてROMに記憶されており、マスタシリンダ液圧センサ79によって検出された実際のマスタシリンダ液圧が助勢限界標準値に達した場合に、助勢限界に達したとされて、ポンプ106が作動させられ、圧力制御弁120が制御される。
本実施例においては、ブレーキペダル10の操作ストロークを検出するストロークセンサが設けられていない。しかし、マスタシリンダ液圧センサ79による検出値に基づく場合には、ブレーキペダル10の操作が遅れて検出されるため、ブレーキ操作初期状態において、ブレーキシリンダ液圧PBの増加が遅れることがある。一方、ストロークセンサを設けなければ、その分、コストダウンを図ることができる。
そこで、本実施例においては、ブースタ負圧センサ78による検出値に基づいて、ブレーキペダル10の操作初期における操作状態が取得されて、制動効果制御が行われる。効き特性制御も、広義には、制動効果制御といい得るが、本実施例における制動効果制御は、バキュームブースタ12の助勢限界前において行われる制御をいう。
一方、マスタシリンダ14において、加圧室61bの液圧の増加は、パワーピストン66の移動開始に遅れて検出される。図7(a)に示すように、ブレーキペダル10の操作が開始されて、ブースタ負圧が減少し、その後に、マスタシリンダ液圧センサ79による検出値が増加するのである。加圧ピストン60aとパワーピストン66との間のクリアランス、マスタシリンダ液圧センサ79の取り付け位置、マスタシリンダ液圧センサ79とブースタ負圧センサ78との特性の相違等に起因して、ブースタ負圧センサ78による負圧の減少に遅れてマスタシリンダ液圧センサ79による検出液圧が0より大きくなるのである。
なお、ブレーキペダル10の操作に起因する負圧の変化は、エンジン30の作動状態の変化に起因する変化に対して大きい。
また、ブースタ負圧の減少勾配は、図7(b)に示すように、ブレーキペダル10の操作が開始される前の負圧、すなわち、負圧室68と変圧室70とが連通状態にある場合の負圧(操作開始前負圧)PB0が真空に近い場合は大気圧に近い場合より緩やかになる。そのため、図8(a)に示すように、操作開始判定しきい値ΔPthが、操作開始前負圧PB0が大きい場合は小さい場合より小さい値に設定されている。
操作開始前負圧PB0は、常時監視している場合において、負圧変化が小さい場合(エンジン30の作動状態の変動とみなし得る範囲内の変化)の負圧の検出値の平均的な値としたり、インティークマニホールド32の負圧やエンジン30の作動状態に基づいて推定した値としたり、後述するように、操作開始が検出された時点において、負圧減少量ΔPBを求める際に使用されたN回前の検出値としたりすること等ができる。
さらに、負圧は、図7(a)、(b)に示すように、ブレーキペダル10のストロークが増加すると減少するが、操作開始前負圧からの負圧の減少量(以下、総負圧減少量と称する)ΔPB0と操作ストロークSとの関係は、予め実験等により取得される。その結果、総負圧減少量に基づけば、ストロークセンサによらなくても、ブレーキペダル10の操作ストロークを取得することができる。また、これらの関係は、前述のように、操作開始前負圧の大きさによって異なるのであり、その場合の一例を図8(b)に示す。
なお、図7,8(a)、(b)のグラフは、ブースタ負圧PBと負圧室68の容積との積が一定であるとして記載した。そのため、現実の変化とは異なることがある。
Pref=α・S+(1−α)・PM ・・・(a)
上式において、αは、図8(c)に示すように、制動初期において1とされ、その後漸減し、マスタシリンダ液圧が十分に大きくなった場合に0とされる。マスタシリンダ液圧に基づけば、ブレーキ操作力を正確に検出できるため、マスタシリンダ液圧センサ79による検出値に基づいてブレーキ操作力を検出できるまでの間、総負圧減少量ΔPB0に基づいて操作状態が取得されて、目標液圧Prefが取得されるのである。
その結果、ブレーキペダル12の操作早期にブレーキシリンダ18の液圧を速やかに増加させることができ、効き遅れを小さくすることができる。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、ブースタ負圧センサ78によってブースタ負圧が検出され、S2において、ブレーキONフラグがセット状態にあるか否かが判定されるが、最初にS2が実行される場合には、セット状態にないため、判定がNOとなり、S3以降が実行される。ブレーキONフラグは、後述するように、制動効果制御が開始されるとセットされ、ブレーキスイッチ156がOFF状態に切りかわるとリセットされるフラグである。
S3において、予め定められた設定時間内におけるブースタ負圧の減少量ΔPBが求められる。例えば、設定時間をサイクルタイムのN回に相当する時間とし、N回前に検出されたブースタ負圧から今回検出されたブースタ負圧を引いた値がブースタ負圧の減少量ΔPBとされる。本実施例においては、N個のブースタ負圧検出値が記憶されているのである。Nは1以上の数である。
S4において、N回前のブースタ負圧センサ78による検出値が暫定操作開始前負圧PB0′とされ、暫定操作開始前負圧PB0′に基づいて操作開始判定しきい値ΔPthが図8(a)に示すテーブルに従って取得される。そして、S5において、負圧減少量ΔPBが操作開始判定しきい値ΔPth以上であるか否かが判定される。負圧減少量ΔPBが操作開始判定しきい値ΔPthより小さい間、判定はNOとなる。以下、S1〜5が繰り返し実行されるのであるが、ブレーキペダル10の操作が行われない場合は、エンジン30の作動状態に基づいて負圧が変化することがあっても変化量は小さいため、判定がYESとなることはない。
それに対して、ブレーキペダル10の操作が行われて、負圧減少量ΔPBが操作開始判定しきい値ΔPth以上となると、S5の判定がYESとなる。S6において、ブレーキONフラグがセットされ、S7において、N回前のブースタ負圧(暫定操作開始前負圧)PB0′が操作開始前負圧PB0として決定される。
ブレーキペダル10の操作が解除されていない場合には、S9において、操作開始前負圧PB0から今回値を引くことによって総負圧減少量ΔPB0が取得される。総負圧減少量ΔPB0は制動効果制御において利用される。以下、ブレーキペダル10が解除されるまでの間、S1,2,8,9が繰り返し実行される。
ブレーキ操作の解除が検出された場合には、S10において、ブレーキONフラグがリセットされる。
なお、本実施例においては、N回前の検出値から今回値を引いた値が減少量とされていたが、前回値から今回値を引いた値が減少量としてもよい。Nの値は、サイクルタイムと設定時間とに基づいて決まる。
S31において、ブレーキONフラグがセットされているか否かが判定される。セットされていない間は、S32以降が実行されることはない。
ブレーキONフラグがセット状態にある場合には、S32において、マスタシリンダ液圧が検出され、S33において、助勢限界標準値PMBより大きいか否かが判定される。助勢限界時標準値以下である場合には、制動効果制御が行われ、助勢限界標準値PMBより大きい場合には、効き特性制御が行われる。
制動効果制御において、S34において、総負圧減少量ΔPB0が読み込まれ、S35において、ブレーキシリンダ18の目標液圧Prefが前述の式(a)に従って決定される。図8(b)に従って、総負圧減少量ΔPB0に基づいて操作ストロークSが推定され、図8(c)に従って、ブレーキONフラグがセットされてからの経過時間に基づいて係数αが決定され、操作ストロークS,マスタシリンダ液圧PM、係数αに基づいて、目標液圧Prefが式(a)に従って求められるのである。S36において、目標液圧Prefとマスタシリンダ液圧PMとの差圧ΔPaが取得され、S37において、差圧ΔPaが0より大きいか否か、すなわち、目標液圧Prefがマスタシリンダ液圧PMより大きいか否かが判定される。制動初期状態においては、マスタシリンダ液圧PMより大きくなるが、所定時間が経過した後には、マスタシリンダ液圧PMと同じ大きさとなる。
差圧ΔPaが0より大きい場合には、S38において、図6(d)のテーブルに従って、圧力制御弁120のソレノイド134への供給電流が決定され、S39において、圧力制御弁120が制御され、ポンプ106が駆動される。
S31〜37が繰り返し実行され、ブレーキシリンダ18の目標液圧Prefがマスタシリンダ液圧PMと同じになると、S37の判定がNOとなり、S40において、圧力制御弁120のソレノイド134への供給電流量が0とされ、ポンプ106が非作動状態とされる。
ブレーキペダル10の操作ストロークSがある程度大きくなって、ファーストフィルが終了すると、マスタシリンダ14とブレーキシリンダ18とが連通させられ、ブレーキシリンダ18にはマスタシリンダ14の液圧が供給される。
以上のように、本実施例においては、制動初期状態において、ブースタ負圧に基づいてブレーキペダル12が操作されたことが検出される。その結果、ブレーキペダル12が操作されたことを、マスタシリンダ液圧センサ79による場合より早期に検出することができる。また、ブースタ負圧に基づいてブレーキシリンダの液圧制御が行われる。その結果、図11に示すように、制動初期において、破線が示すように、ブレーキシリンダ18の液圧を速やかに増加させることが可能となり、ブレーキの効き遅れを小さくすることができる。さらに、ストロークセンサが不要となるため、その分、コストダウンを図ることができる。
その他、本発明は、上述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
Claims (5)
- 運転者によって操作可能なブレーキ操作部材と、
(a)マスタシリンダの加圧ピストンに連携させられたパワーピストンと、(b)そのパワーピストンの前方の負圧室および後方の変圧室と、(c)その変圧室を、前記パワーピストン
と前記ブレーキ操作部材との相対移動に伴って選択的に前記負圧室と大気とに連通させる制御弁とを備えたバキュームブースタと、
前記負圧室の負圧が、予め定められた設定時間内に、予め定められた設定負圧以上大気圧に近づいた場合に、前記ブレーキ操作部材の運転者による操作が開始されたとするとともに、前記設定負圧が、定常状態における前記負圧室の負圧である定常負圧が真空に近い場合は大気圧に近い場合より小さい値とされた操作開始取得装置と
を含むブレーキ操作装置。 - 前記操作開始取得装置が、(i)前記負圧室の負圧が、前記設定時間前に取得された前記負圧室の負圧より前記設定負圧以上大気圧に近づいた場合に、前記ブレーキ操作部材が操作されたとする手段と、(ii)前記設定時間前に取得された前記負圧室の負圧を前記定常負圧として、その定常負圧が真空に近い場合は大気圧に近い場合より前記設定負圧を小さい値に決める手段とを含む請求項1に記載のブレーキ操作装置。
- 前記操作開始取得装置が、前記ブレーキ操作部材の非操作状態における前記負圧室の負圧の平均値を前記定常負圧として、その定常負圧が真空に近い場合は大気圧に近い場合より前記設定負圧を小さい値に決定する手段を含む請求項1に記載のブレーキ操作装置。
- 前記操作開始取得装置が、さらに、前記マスタシリンダの加圧室の液圧が予め定められた設定液圧以上増加した場合に、前記ブレーキ操作部材の操作が開始されたと取得する手段を含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載のブレーキ操作装置。
- (1)運転者によって操作可能なブレーキ操作部材と、(2)(a)マスタシリンダの加圧ピストンに連携させられたパワーピストンと、(b)そのパワーピストンの前方の負圧室および後方の変圧室と、(c)その変圧室を、前記パワーピストンと前記ブレーキ操作部材との相対移動に伴って選択的に前記負圧室と大気とに連通させる制御弁とを備えたバキュームブースタとを含むブレーキ操作装置と、
前記マスタシリンダに接続されたブレーキシリンダと、
そのブレーキシリンダの液圧を、前記ブレーキ操作部材の操作状態で決まる目標液圧に達するように制御するブレーキ液圧制御装置と
を含む液圧ブレーキシステムであって、
前記ブレーキ操作装置が、前記負圧室の負圧が、予め定められた設定時間内に、予め定められた設定負圧以上大気圧に近づいた場合に、前記ブレーキ操作部材の運転者による操作が開始されたとする操作開始取得装置を含み、
前記ブレーキ液圧制御装置が、前記操作開始取得装置によって前記ブレーキ操作部材の操作が開始されたことが検出された場合の、前記負圧室の負圧の操作開始前負圧からの変化量に基づいて前記目標液圧を決定する目標液圧決定部を含むことを特徴する液圧ブレーキシステム。
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