JP5220896B2 - 火入れ醤油を用いた加工食品の製造 - Google Patents

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Description

本発明は、火入れ醤油(加熱殺菌醤油)を用いた加工食品の製造技術に関し、さらに具体的には、本発明は、火入れ醤油を用いてタンパク質ゲル食品を熟成させることにより、柔らかく変化した新たな食感を有する加工食品およびその製造方法に関するものである。
食品を軟化させる方法としては、酵素を用いる技術が古くから存在する。生醤油を用いてセリンプロティナーゼにより牛肉の筋原線維とコラーゲンを分解する技術も知られているが(非特許文献1:J. Food Sci., Vol.52, No.5, p.1177-1179, 1185, 1987)、一般的に酵素は熱に弱く生の醤油を使用する必要性があることから、食品加工条件(特に温度条件)等に制限があり、利用範囲が限定される。また、有機酸塩などの添加物を用いてpHの上昇により大豆タンパク質食品を軟化させる方法もあるが(特開2003−159024号公報(特許文献1))、近年は自然、天然志向であり、大豆以外の風味等による官能面への影響も予想される。
特開2000−157215号公報(特許文献2)には、木材を不完全燃焼させて得られる薫液類を用いて食肉を処理することにより食肉を軟化させる方法が開示されている。また、特開2004−89181号公報(特許文献3)には、酵素を含む溶液中に食品素材を浸漬し、加圧処理して食品素材内部に酵素を浸透させ、酵素反応を起こさせることによる食品素材の改質方法が開示されている。これらの方法は、いずれも肉類等の生の食品を対象として処理を行うものである。
特開2003−261598号公報(特許文献4)には、大豆タンパク質をアルキレンオキサイド鎖の繰り返し単位を有する多官能エポキシ化合物で処理することにより変性させた柔軟性のある変性大豆蛋白質を製造する方法が開示されている。
上記のような食品を軟化させる方法は、対象とする食品が生であるか、添加物を用いて処理するものであるか、あるいは加熱工程を含むことのできない酵素処理によるものである。
J. Food Sci., Vol.52, No.5, p.1177-1179, 1185, 1987 特開2003−159024号公報 特開2000−157215号公報 特開2004−89181号公報 特開2003−261598号公報
本発明は従来の問題点、特に生醤油を用いた場合の食品加工における温度条件の制限、添加物の使用による食品の風味等官能面への影響等の問題を生じることなく、食品を簡便にあるいは更に殺菌や調理などの加熱工程を行いながらも軟化させ、これまでにない新たな食感を有する軟化された加工食品を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するため、本発明者等は、原料となる食品、および軟化のための処理剤について様々な条件で検討を行った結果、特定の条件の組合せ、すなわち種々の食品の中で特に蛋白質ゲル食品を原料とし、これを通常の加熱殺菌した醤油(火入れ醤油)を用いて熟成させることにより上記目的を達成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記の構成を要旨とする軟化された加工食品およびその製造方法に関するものである。
(1)タンパク質ゲル食品に火入れ醤油を含浸させた後、これを熟成させ軟化させることを特徴とする、加工食品の製造方法。
(2)熟成の温度が3〜65℃である、上記(1)に記載の方法。
(3)タンパク質ゲル食品が、豆腐、練り製品および加熱変性卵からなる群から選択されるものである、上記(1) または(2)に記載の方法。
(4)タンパク質ゲル食品に火入れ醤油を含浸させ、これを熟成させたことを特徴とする、軟化された加工食品。
(5)熟成の温度が3〜65℃である、上記(4)に記載の軟化された加工食品。
(6)タンパク質ゲル食品が、豆腐、練り製品および加熱変性卵からなる群から選択されるものである、上記(4)または(5)に記載の軟化された加工食品。
本発明は、タンパク質ゲル食品を、通常の加熱殺菌醤油(火入れ醤油)を用いて熟成させることにより、目的の食品を簡便に軟化させ、あるいは更に調味(調理)や殺菌などの加熱処理を行いながらも熟成・軟化させることができる加工食品の製造方法、およびこれまでにない新たな食感(粘性のある食感、クリーム様の食感等)を有する軟化された食品を提供することができる。
本発明において、牛肉等の生食品、加工食品等多くの食品について所期の目的を達成できなかった中で、しかも加熱処理された一般の火入れ醤油が特定の食品、すなわちタンパク質ゲル食品を軟化できること、更には殺菌や調理等の加熱加工処理を行ってもなお軟化作用を有することは思いがけなかったことと解される。
発明の具体的説明
本発明において加工食品の原料となる対象の食品は、タンパク質ゲル食品であることは前記したところである。ここで、タンパク質ゲル食品とは、加水加熱等によりゲル化したタンパク質を含有する食品を意味する。タンパク質ゲル食品(以下、タンパク質食品ともいう)の例としては、豆腐(木綿豆腐、絹ごし豆腐等)、練り製品、加熱変性した卵(ゆで卵、焼き卵等)等があげられる。上記練り製品は魚肉系、食肉系、植物性の蛋白質、あるいはそれらの混合物をすりつぶした原料を調味料で味付けして加熱凝固させた加工食品であり、具体例としては、蒲鉾、はんぺん、ちくわ、フィッシュソーセージ、フィッシュハム、つみれ、さつまあげ、サラミ、チキンナゲット等があげられる。従って、本発明において対象となる食品は、タンパク質ゲル食品であれば上記の具体例に限定されず使用することができる。また、本発明において、上記のようなタンパク質食品を更に処理したもの、例えば、加圧脱水した豆腐、あるいは豆腐をアルコール液(例えばエタノール、または任意に食塩、ショ糖等をさらに含むアルコール)に浸漬した後に乾燥させた加工豆腐(後記の実施例参照)等を原料として使用することも可能である。
本発明において、加工食品の原料となるタンパク質ゲル食品を処理する醤油は、大豆または脱脂大豆と小麦を原料とする麹を食塩の存在下で発酵・熟成させた生醤油を加熱殺菌(通常60〜80℃で30分程度)した通常の火入れ醤油であれば市販のもの、あるいは新たに製造したものが使用できる。醸造醤油の種類には、濃口醤油、淡口醤油、溜醤油、白醤油、再仕込み醤油等があり、製造方法により、本醸造方式、新式醸造方式、アミノ酸混合方式、酵素処理混合方式等があるが、いずれの醤油を使用することもできる。また、必要に応じてこれを再加熱殺菌(上記と同条件)したものを用いても食品に対する軟化効果は変わらない。ただし、通常のオートクレーブのような過酷な条件での処理では醤油の活性は低下または消失する。更に、粉末醤油あるいは凍結乾燥した醤油もそのままあるいは水に再溶解した形で使用することができる。本発明において、タンパク質食品の軟化に関与する醤油成分は、透析膜による分子量分画等の検討結果から、分子量12,000以上のものであると考えられ、その際、この分画により脱塩された醤油等も使用することができる。また、主に味付けの観点から、砂糖、味醂等をさらに添加した醤油調味液を用いてもよい。更に、醤油の軟化活性に関連し、必要に応じて活性の高いものを所望に希釈して使用することも可能である。
本発明におけるタンパク質ゲル食品の軟化は、通常の酵素が失活する加熱殺菌の影響を受けない(火入れ醤油の使用(任意に加熱工程下での使用)でも軟化効果を有する)こと、軟化前後の豆腐蛋白質についての電気泳動分析により多くの高分子蛋白質が低分子化していること、また、火入れ醤油への金属プロテアーゼ阻害剤の添加により軟化活性が低下または消失することから、醤油に残存する熱に耐性のある金属プロテアーゼ(中性プロテアーゼ)の酵素反応によるものと推測される(後記の実験例4参照)。本発明で使用する醤油(火入れ醤油)の中性プロテアーゼ(以下、プロテアーゼともいう)活性は、後記実験例に示すような測定方法によれば、通常0.01〜0.03(U/g)程度であった。火入れ醤油はそのまま使用することが一般的であり、また必要に応じて希釈して使用することも可能であるが、好ましくは活性が0.01(U/g)を超えるもの、より好ましくは0.015(U/g)以上のものを使用し、0.02(U/g)以上のものが更に好ましい。本発明において、醤油としては、火入れ醤油であればプロテアーゼ活性が0.03(U/g)を超えるものであっても有利に使用できることはいうまでもない。プロテアーゼ活性の測定は、後記実験例5に示す方法に準じて行うことができる。
本発明で使用する醤油は、前記のように、大豆または脱脂大豆と小麦を原料とする麹を食塩の存在下で発酵・熟成させた通常の火入れ醤油であればよいが、製造ロット等により、一部に食品の軟化活性が弱いかあるいは効果のない場合がある。従って、本発明の軟化された加工食品をより効率的に製造するために、予め醤油の軟化活性の有無等を確認しておくことも可能である。醤油の軟化活性の評価は、本発明の方法に従って、実際に本発明の対象とするタンパク質ゲル食品に火入れ醤油を含浸させて熟成させた後に、その軟化状態を確認する等の方法により、醤油の軟化能力を判定することができるが、これをより簡便に行うために、例えば次のような評価方法も実用的に可能である。市販のはんぺん(有機酸等の酸味料を含まないもの)を適当な大きさの細片としたもの(例えば、円柱状に型抜きしたもの)および醤油を試験管に入れ、キャップをして50℃で24時間保持する。次いで試験管を取り出し、ミキサーで2秒間程度撹拌した後に食品の状態を観察する。軟化活性のある醤油の場合は、はんぺん片は外側から溶け、米粒状に小さくなって浮く。また、試験管の管壁や醤油液中に細かいはんぺん片が多数観察できる。一方、軟化活性がない醤油の場合は、はんぺん片はほぼ変わらない形状を保っており、試験管の管壁や醤油液中に崩れたはんぺん片はほとんど観察されない(後記の実験例1参照)。上記のような評価もしくは判定方法は、必要に応じて、その条件を一部変更したり、またタンパク質食品を別のものに変更することも可能である。火入れ醤油の軟化能力の判定に関しては、別の方法として、上記したようなプロテアーゼ活性の測定(後記の実験例5参照)により、好ましくは活性が0.01(U/g)を超えるもの、より好ましくは0.015(U/g)以上のもの、更に好ましくは0.02(U/g)以上の醤油を選択することも可能である。
本発明による加工食品の製造方法は、タンパク質ゲル食品に火入れ醤油を含浸(浸漬またはコーティング等による)させた後、これを熟成させることを特徴とするものであることは前記したところである。具体的には通常、まず、上記のようなタンパク質食品を必要に応じて適当な大きさにカットし、これを醤油に浸漬する。この場合の醤油の使用量は、タンパク質食品の全体を浸漬しうる量であればよく、実用上はタンパク質食品の重量と同程度(1:1)以上の量を使用すればよい。また、醤油を食品に含浸させる方法としては、液体または粉末状の醤油を食品に塗布あるいはまぶす等してコーティングすることも可能である。この際、必要分の醤油をコーティング後、食用油(例えばオリーブオイル、ガーリックオイル)等の調味料で適宜調味することもできる。
上記のように、醤油で含浸処理したタンパク質ゲル食品は、次いで、一定の温度条件下に長時間維持する熟成工程に付す。ここで、含浸工程の後もしくは熟成工程の前段階において、必要に応じて、加熱殺菌等の加熱もしくは調理処理(通常60〜95℃、好ましくは65〜90℃で達温〜30分程度)を施しておいてもよい。例えば、豆腐等のタンパク質食品を加熱殺菌すると、一旦硬い物性に変化するが、後の熟成工程により軟化するようになる。ただし、通常のオートクレーブのような過酷な条件下(例えば121℃、15分間等の加圧条件下)の処理では、醤油の軟化活性は低下または消失するので避けるべきである。上記のようにして処理したタンパク質食品は、その後恒温機等を用いてそのまま熟成工程に付す。熟成温度は、冷蔵(3〜10℃程度)でも常温(15〜25℃程度)あるいはそれを超える温度でも可能であるが、腐敗しない条件下で熟成を行うことが必要である。具体的な熟成温度は、通常3〜70℃未満程度であるが、熟成効率等の点から、3〜65℃程度が好ましく、5〜55℃程度がより好ましい。
熟成期間は、原料としてのタンパク質ゲル食品の種類、熟成温度、目的とする食品の所望な熟成程度等の条件により異なりうる。一般に、上記温度範囲内で、冷蔵庫等の低温よりも高い温度(例えば常温から55℃程度)の方が熟成期間は短かくてよく、また、長期間熟成させてもよいが、軟化状態は一定期間後はそれ程変化しない。熟成工程終了の目安は、上記のようにタンパク質食品の種類および目的とする製品の所望の性状により異なりうるが、一般に、タンパク質ゲル食品の物性(破断応力等)を測定して、予め所望の範囲に設定しておいた所定の基準値に達する時点である。例えば、軟化による食品の破断応力は、通常原料食品(100%)に対して0<〜70%程度まで低下しうるが、好ましい態様における破断応力の低下は10〜60%程度であり、所望な程度を基準値とすることができる。また、軟化された食品は粘性のあるクリーム様の食感を有しており、このような食感を基準(あるいは補助的な基準)とすることもできる。実用的には、例えば常温の条件で通常14日〜21日間程度が熟成終了の目安である。
上記の破断応力の測定に関し、豆腐等のタンパク質食品の物性評価として一般に用いられている「硬さ」は、食品をプランジャーで押圧破壊したときの破断強度または破断応力(単位面積当りにかかる力)で表し、物体とプランジャーの接触面積で力を除して(応力=力/プランジャー断面積)、単位面積当りの力(応力)で物体の力学的性質を表している。破断強度または破断応力の単位としては、通常Pa(パスカル、=N/m)が使用されている。上記応力を測定する試験方法としては、一般にレオメーターを用いた貫入試験または圧縮試験があり、これらの試験はプランジャー形状(主として断面径)、試料の形状、圧縮速度、測定温度の条件に基づいて行われる。食品の物性試験については、例えば、「豆腐の物性測定に影響する諸因子の検討」(Nippon Shokuhin Kogyo Gakkaishi Vol.39, No.8, 715-721 (1992)(技術報告)等を参照することができる。
本発明において、上記のように熟成が終了して軟化されたタンパク質ゲル食品は、そのまま加工食品として製品とすることができるが、必要に応じて、さらに別の調味料、例えば砂糖、味醂、食用オイル等を単独で、または適宜組み合わせた調味料により処理(浸漬、コーティング等)して加工しなおし、さらに再加熱殺菌することもできる。このように再処理した加工食品は、再加熱殺菌の際に一旦硬くなるが、時間の経過に従って軟化した状態に戻る。
上記のようにして製造された本発明の加工食品は、醤油を用いた熟成・軟化により、元のタンパク質食品と比較して所望程度に軟化された加工食品である。本発明の軟化された加工食品は、前述のように、通常原料食品(100%)に対して0<〜70%程度まで低下しうるが、好ましい態様における破断応力の低下は10〜60%程度であり、粘性のあるクレーム様の食感に変化した加工食品である。また、軟化後の本発明の加工食品の特徴として、上記のような軟化による食感の変化の他に、熟成期間が長い場合には更に味のまとまり感もしくは一体感の付与があげられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これにより本発明が限定されるものではない。また、以下の実施例において、特に断りのない限り%表示は重量%を意味する。
市販の押し豆腐一丁300gを平板と重石を用いて加圧し脱水を行った。脱水は豆腐の重量が元重量の70%になるまで行った。脱水した豆腐はキャラメル状(およそ縦25mm×横20mm×厚さ15mm)にカットした。続いて、食塩8.4g、砂糖8.4g、95%エタノール66.3g(95度1級一般発酵アルコール)、水126.9gを混合し、アルコール溶液210g(塩分4%、糖分4%、アルコール30%)を調整した。プラスティック製タッパー容器にカットした加圧脱水豆腐210gとアルコール溶液210gを入れて密封し、アルコール溶液漬け豆腐を作成した。常温で2週間浸漬した後、豆腐をアルコール溶液から引き上げ、一晩自然乾燥させて豆腐加工食品原料を作成した。
分析値:水分58.3%(w/w) アルコール0.6%(w/w)
物性測定値:破断応力33.0(kPa)
(試験サンプル:縦17mm×横15mm×厚さ11mm)
水分の測定は、常圧加熱乾燥法にて行った。アルコールの測定は、酵素法の紫外部吸光度測定法により行った。
破断応力の測定は、以降の実施例、比較例を含めて以下の方法で行った。
〈使用した測定装置〉
レオメーター(RHEOMETER CR-200D サン化学(社)社製)
〈使用条件〉
・プランジャー形状:直径15mmの円盤型
・圧縮速度:1mm/s
・測定温度:室温(20℃)
・試料の形状:原料豆腐=ほぼ(縦21mm×横15mm×厚さ11mm)
乾燥後の豆腐加工食品原料=ほぼ(縦17mm×横15mm×厚さ11mm)
・試験方法:試料にプランジャーを垂直に押し込み、同一条件で作成した試料の10回分の測定データ(最高荷重値)を平均し、これをプランジャーの接触面積で割り、破断応力を求めた。
実施例1の方法で作成した豆腐加工食品原料65gと、軟化活性のある火入れ醤油(実験例1に具体的な醤油の判定法を後述した)を用いた調味液65g(醤油32部、砂糖10部、ブドウ糖果糖液糖6部、食塩3部、アルコール1部、クエン酸0.1部、水48部)をガラス瓶に詰め、キャップをして豆腐の醤油調味加工食品を作成した。沸騰水中で加熱殺菌を行い、冷却後、常温(20〜25℃)で2週間の熟成を行ったところ、豆腐はねっとりとしたレバー様のこくのある食感になった。この間の豆腐の経時的な物性変化を破断応力の測定により調べ、表1に示した。豆腐は加熱殺菌により一旦ハム状に硬くなるが、熟成により軟化した。
また、原料豆腐についても上記と同じ方法で熟成させた加工食品を作成したところ、同様に軟化された食品が得られた(表1)。
Figure 0005220896
実施例2の方法で作成した豆腐の醤油調味加工食品を、殺菌することなく冷蔵で3週間の熟成を行った。豆腐は密な状態にはならないが、柔らかく変化した。調味直後からの豆腐の経時的な物性変化を破断応力の測定により調べ、表2に示した。
Figure 0005220896
比較例1
軟化活性のない醤油を用いる以外は実施例2と同様の方法で豆腐の醤油調味加工食品を作成した。殺菌・冷却後、常温2週間の熟成を行ったが、豆腐はハム様の硬い食感のままであった。この間の豆腐の経時的な物性変化を破断応力の測定により調べ、表3に示した。
Figure 0005220896
比較例2
醤油を使用せず同じ塩分、糖分、アルコール濃度とした調味液(砂糖10部、食塩9部、ブドウ糖果糖液糖6部、アルコール2部、クエン酸0.1部、水73部)を用いる以外は実施例2と同様の方法で豆腐の調味加工食品を作成した。殺菌・冷却後、常温で18日間の熟成を行ったが、豆腐は弾力のある食感のままであった。この間の豆腐の経時的な物性変化を破断応力の測定により調べ、表4に示した。
Figure 0005220896
鶏卵7個を卵白と卵黄に分離した。卵白と卵黄を別に静かにときほぐし、それぞれパウチに詰めて80℃の温水中で加熱変性させた。この加熱変性卵白及び卵黄、市販の蒲鉾、ポークソーセージを、キャラメル状(およそ縦21mm×横15mm×厚さ11mm)にカットした。これら4種のカット材料を豆腐の代わりに用いる以外は実施例2と同様の方法で4種の醤油調味加工食品を作成した。殺菌・冷却後、常温で14日間の熟成を行ったところ、卵白及び卵黄は弾力性がなくなり、舌で簡単に押しつぶせる程度のねっとりとした食感に変化した。蒲鉾も舌で簡単に押しつぶせる程度の柔らかい食感になり、ポークソーセージは原料より柔らかく軟化した。この間の経時的な物性変化を破断応力の測定により調べ、表5に示した。
Figure 0005220896
比較例3
醤油を使用せず同じ塩分、糖分、アルコール濃度とした調味液(砂糖10部、食塩9部、ブドウ糖果糖液糖6部、アルコール2部、クエン酸0.1部、水73部)を用いる以外は実施例4と同様の方法で調味加工食品を作成した。殺菌・冷却後常温で14日間の熟成を行ったところ、卵白及び卵黄は殺菌後の食感のままであった。蒲鉾,ポークソーセージとも弾力のある各原料の食感のままであった。この間の経時的な物性変化を破断応力の測定により調べ、表6に示した。
Figure 0005220896
実施例2の方法で作成し、熟成によりねっとりとした物性に変化した豆腐の醤油調味加工食品を、調味液から取り出した。この豆腐の醤油調味加工食品65gとハーブオイル調味液65g(オリーブオイル94部、ガーリックオイル5部、乾燥ハーブミックス1部)をガラス瓶に詰め、キャップをして沸騰水中で再度加熱殺菌を行い、冷却後、常温で2週間の熟成を行った。豆腐は再殺菌後若干硬くなるが、熟成によりねっとりとした食感に戻った。この間の豆腐の経時的な物性変化を破断応力の測定により調べ、表7に示した。
Figure 0005220896
実施例1の方法で作成した豆腐加工食品原料65gに軟化活性のある醤油3gをからませたものと、ハーブオイル調味液62g(オリーブオイル94部、ガーリックオイル5部、乾燥ハーブミックス1部)をガラス瓶に詰め、キャップをして沸騰水中で加熱殺菌を行い、冷却後、常温で13日間の熟成を行った。豆腐は熟成によりねっとりとした食感に変化した。この間の豆腐の経時的な物性変化を破断応力の測定により調べ、表8に示した。
Figure 0005220896
実験例1
(醤油の判定方法)
本発明において、軟化処理用の醤油は、一部に軟化活性が弱いかあるいは効果のない場合があるが、タンパク質食品に対する醤油の軟化活性の程度の評価もしくは軟化活性の有無の判定は、以下の方法により可能であった。
市販のはんぺん(魚肉、卵白、澱粉、山芋を主原料とし、酸味料を含まないもの)を厚さ10mmにスライスし、直径7mmの円柱状に型抜きする(1個約0.25g)。試験管(直径18mm)に醤油10gと円柱状(直径7mm、高さ10mm)のはんぺん片2個(約0.5g)を入れ、キャップをして50℃で24時間保つ。24時間後に取り出し、試験管をミキサーで2秒間程度撹拌した後に観察する。軟化活性のある醤油の場合は、はんぺん片は外側から溶け、米粒状に小さくなって浮く。また、試験管の管壁や醤油液中に細かいはんぺん片が多数観察できる。軟化活性がない醤油の場合は、はんぺん片はほぼ変わらない形状を保っている。試験管の管壁や醤油液中に崩れたはんぺん片はほとんど観察されない。なお、はんぺんは市販6品で確認し、醤油は使用したもの全てで確認し、また、水では食品は軟化しないことを確認した。
実験例2
(軟化可能な熟成温度の検討)
5〜70℃の種々の温度に設定した恒温機を用いてタンパク質ゲル食品(豆腐)の軟化が可能な熟成温度の検討を行った。温度以外の条件は実施例2の方法に従った。その結果、表9に示すのように、低温から高温まで軟化は可能であったが、70℃では全く軟化されないことが分かった。従って、3〜65℃の熟成温度で軟化は可能であると推測される。
Figure 0005220896
実験例3
(軟化不可な醤油の処理条件の検討)
実験例2の条件において、軟化活性のある醤油でも、オートクレーブ処理(121℃、15分の加圧加熱処理)をすると、以下の表10のように軟化活性は失われた。
Figure 0005220896
実験例4
軟化活性のある火入れ醤油を1/2に希釈し、これにプロテアーゼ阻害剤を添加した醤油40gとキャラメル状(およそ縦21mm×横15mm×厚さ11mm)にカットした蒲鉾20gをガラス瓶に詰めて50℃24時間の熟成を行った。破断応力の測定によりその影響を調べたところ、金属プロテアーゼ阻害剤であるEDTAでのみ軟化活性が低下した。その結果を表11に示した。尚、各阻害剤は一般的な使用量およびそれを超える量を段階的に添加した。また、参考として軟化活性のある醤油をオートクレーブ処理した醤油を使用した時の結果も合わせて示した。その他市販の軟化活性のある火入れ醤油でもEDTAによる阻害を確認した。
Figure 0005220896
実験例5
(プロテアーゼ活性の測定方法)
試料醤油を0.45μmのフィルターを用い透過した。透過液0.5gを精秤し、分画分子量10,000の限外濾過膜(ミリポア社製、MICROCON YM-10)を用いて処理した。膜上に回収された酵素を純水で1mlにメスアップして酵素液を調整した。得られた酵素液0.1mlと0.1Mトリス緩衝液(pH7.3)0.1ml、基質として1.0%硫酸サルミン(Salmine Sulfate)0.2mlとをマイクロチューブに入れ、30℃で30分(活性が弱い場合は90分)反応させた後、TCA溶液0.4mlを加えて反応を停止させた。試料液200μlに炭酸ナトリウム溶液1mlとフェノール試薬200μlを加えて40℃30分の発色を行い、沈殿を遠心分離した後、上清の660nmの吸光度を測定した。対照は酵素液をTCA溶液添加の直前に入れて測定し、試験液測定値から差し引いて計算した。検量線はL−チロシンを用いて作成した。
1分間に1マイクロモルのアミノグループ(チロシン相当)を遊離する酵素量を1単位(U)とし、醤油1g当たりとして計算した。(参考文献:第四回改正国税庁所定分析法注解(2006) 211−8 「固体こうじ」の項、およびH. Sekine, Agr. Biol. Chem. 36, p198 (1972), “Neutral Proteinase I and II of Aspergillus sojae Isolation in Homogeneous Form”。)
その結果、試料火入れ醤油のプロテアーゼ(中性プロテアーゼ)活性の値は0.024(U/g)であった。なお、試料生醤油のプロテアーゼ活性は0.091(U/g)であった。

Claims (4)

  1. 豆腐に、中性プロテアーゼ活性が0.01U/gを超える火入れ醤油を含浸させ、次いでこれを加熱処理工程に付して一旦硬い物性に変化させた後、豆腐の破断応力が10〜60%に低下するまで熟成させ軟化させることを特徴とする、加工食品の製造方法。
  2. 熟成の温度が3〜65℃である、請求項1に記載の方法。
  3. 豆腐に、中性プロテアーゼ活性が0.01U/gを超える火入れ醤油を含浸させ、次いでこれを加熱処理工程に付した後に熟成させ、豆腐の破断応力が10〜60%に低下したことを特徴とする、軟化された加工食品。
  4. 熟成の温度が3〜65℃である、請求項3に記載の軟化された加工食品。
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