以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係るアクチュエータを図1に示す。図1は、第1実施形態に係るアクチュエータの平面図である。第1実施形態のアクチュエータ1は、ハードディスクドライブにおいて、超小型電気機械システム(MEMS)の駆動機構として用いられる。具体的には、アクチュエータ1は、磁気ディスクを読み出すための磁気ヘッド2を駆動する磁気ヘッド駆動装置である。
アクチュエータ1は、固定部材3と、固定部材3に対して駆動される被駆動部材4と、固定部材3と被駆動部材4とを連結する圧電素子5とを備える。アクチュエータ1では、圧電素子5が伸縮し、磁気ヘッド2が固定された被駆動部材4が固定部材3に対して駆動される。これにより、磁気ヘッド2が駆動されることとなる。
固定部材3は、長方形状のプレートである。被駆動部材4は、略三角形状の部分4aと部分4aの底辺の両端部からそれぞれ伸びた部分4b及び部分4cとから構成された、略U字型のプレートである。被駆動部材4の部分4bにおける先端部分が、固定部材3の上面に重なり、部分4bの貫通孔に挿入されたピン6を介して、固定部材3と被駆動部材4の部分4bとが連結されている。これにより、被駆動部材4は、固定部材3に対してピン6を軸に回転が可能である。
被駆動部材4の部分4cは部分4bより短く、その上面に圧電素子5における長手方向の一方端側の部分が固定されている。圧電素子5の他方端側の部分は、固定部材3の上面に固定され、圧電素子5が、固定部材3と被駆動部材4の部分4cとを連結している。この圧電素子5がその長手方向Y1に伸縮することにより、被駆動部材4が固定部材3に対してピン6を軸に回転駆動される。これにより、被駆動部材4の部分4aの頂部に固定された磁気ヘッド2が、被駆動部材4の回転方向Y2に動くこととなる。磁気ヘッド2の変位量は、圧電素子5の変位量が大きいほど大きくなる。
引き続いて、図2及び図3を参照して圧電素子5の構成について説明する。図2は圧電素子5の斜視図であり、図3は圧電素子5の平面図である。図2及び図3に示すように、圧電素子5は、直方体形状の積層型圧電素子である。本実施形態の圧電素子5は、長手方向Y1の長さが1.35mm程度、奥行きが0.5mm程度、積層方向の厚さが0.12mm程度である。
この圧電素子5は、直方体形状の積層体10と、積層体10の外表面に形成された2つの外部電極31,32とを備えている。積層体10は、積層方向と垂直且つ長手方向Y1と平行で互いに対向する主面10a及び10bを備え、長手方向Y1に対向する端面10c及び10dを備え、主面10a,10b,端面10c,10dに垂直で互いに対向する側面10e及び10fを備える。
外部電極31は、端面10c全体の領域を覆う外部電極部分31aと、主面10aにおける端面10c側の領域を覆う外部電極部分31bとを有する。この外部電極部分31aと外部電極部分31bとは連続して一体的に形成されている。外部電極部分31bによって覆われる主面10aの領域は、主面10aの3分の1程度である。
外部電極32は、端面10d全体の領域を覆う外部電極部分32aと、主面10aにおける端面10d側の領域を覆う外部電極部分32bとを有する。この外部電極部分32aと外部電極部分32bとは連続して一体的に形成されている。外部電極部分32bが覆う主面10aの領域は、主面10aの3分の2程度である。主面10aにおける外部電極部分31bと外部電極部分32bとの間には隙間があり、外部電極31と外部電極32とは、互いに絶縁されている。このような外部電極31,32は、圧電印加用の電極であり、例えば、Au等で形成されている。
圧電素子5は、互いに対向する第一面5aと第二面5bとを備える。第一面5aは、外部電極部分31b,32b及び積層体10の主面10aにおいて外部電極部分31b,32bから露出した部分で構成される。第二面5bは、積層体10の主面10bによって構成され、この第二面5bは、圧電体層15の外表面である。
圧電素子5は、第一面5aを構成する外部電極部分31bがハンダ7を介して被駆動部材の部分4cと接着されている。一方、第一面5aを構成する外部電極部分32bにおける端面10d側の部分がハンダ8を介して固定部材3と接着されている。すなわち、固定部材3は、圧電素子5の積層方向に垂直な第一面5aにおける端面10c側に固定されている。また、被駆動部材4は、圧電素子5の積層方向に垂直な第一面5aにおける端面10d側に固定されている。
積層体10は、5層の圧電体層11〜15と4層の内部電極層21〜24とが交互に積層されている。圧電体層11は、第一面5a側の最も外側の最外圧電体層である。積層体10において、圧電体層11の上には、内部電極層21、圧電体層12、内部電極層22、圧電体層13、内部電極層23、圧電体層14、内部電極層24、圧電体層15の順序で各層が積層されている。すなわち、圧電体層15は、第二面5b側の最も外側の最外圧電体層である。
また、圧電体層11は、外部電極部分32bと内部電極層21に挟まれている。圧電体層12〜14は、それぞれ内部電極層21〜24に挟まれている。圧電体層15は、内部電極層や外部電極に挟まれていない。
圧電体層11〜14の厚さは、同程度であり、15μm程度である。圧電体層15の厚さは、圧電体層11〜14の5倍程度であり、75μm程度である。この圧電体層15の厚さは、全ての圧電体層11〜15の総厚の55%程度である。総厚とは、全ての圧電体層の厚さの合計である。これらの圧電体層11〜15は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を主成分とした圧電セラミック材料で形成されている。
内部電極層21〜24は、互いに同形状の略長方形である。内部電極層21〜24における積層体10の側面10e側と側面10f側の端面は、それぞれ側面10eと側面10fに露出している。内部電極層21,23は、内部電極層22,24に対して端面10c側にずれて、積層体10の端面10cに内部電極層21,23の端面が露出している。この内部電極層21,23の端面は、端面10cに形成された外部電極部分31aと物理的且つ電気的に接続されている。
内部電極層22,24は、内部電極層21,23に対して端面10d側にずれて、積層体10の端面10dに内部電極層22,24の端面が露出している。この内部電極層22,24の端面は、端面10dに形成された外部電極部分32aと物理的且つ電気的に接続されている。内部電極層21〜24は、例えば、Ag:Pd=7:3の比率で構成された導電材料により形成されている。なお、内部電極層21〜24は、例えば、Au:Pd=7:3の比率で構成された導電材料により形成されてもよい。
引き続いて、以上説明した圧電素子5の製造方法について説明する。まず、圧電体層11〜15を形成するグリーンシートを作製する。グリーンシートを作製するにあたって、例えばPZTを主成分としたセラミック粉体に有機バインダ樹脂および有機溶剤等を混合したペーストを準備する。そして、ドクターブレード法によって、上記ペーストをキャリアフィルム上に塗布することにより、グリーンシートを複数枚作製する。
次に、作製したグリーンシートに、内部電極層21〜24に相当する電極パターンを複数形成する。電極パターンを形成するにあたって、例えばAg:Pd=7:3の比率で構成された導電材料に有機バインダ樹脂および有機溶剤等を混合したペーストを準備する。なお、導電材料はAu:Pd=7:3の比率で構成されたものを用いてもよい。そして、そのペーストをグリーンシートにスクリーン印刷して乾燥させることにより、内部電極層21〜24に相当する電極パターンが形成されたグリーンシートをそれぞれ得る。
次に、電極パターンが形成されたグリーンシートを重ねて加熱圧着し、シート積層体を得る。このとき、内部電極層24に相当する電極パターンが形成されたグリーンシートの上には、電極パターンが形成されていないグリーンシートを5枚積層する。これにより、圧電体層15がその他の圧電体層11〜14の約5倍の厚さとなる。
続いて、得られたシート積層体を切断して、チップ形状の積層体チップを複数得る。積層体チップをセッターに載せ、積層体チップの脱脂(脱バインダ)を400℃程度の大気雰囲気中にて10時間程度行う。その後、積層体チップが載置されたセッターを密閉炉内に入れ、1100℃程度の大気中にて積層体チップの焼成を2時間程度行い、焼結体を得る。
得られた焼結体に、温度120℃の環境下で、焼結体の厚みに対する電界強度が2〜3kV/mmとなるように所定の電圧を3分間印加することにより、焼結体の分極処理を行う。分極処理は、隣り合う圧電体層11〜15の分極方向が互いに反転の関係となるように行う。これにより、圧電体層11〜15と内部電極層21〜24とを有する、積層体10が得られることとなる。その後、積層体10の側面に金をスパッタリングすることにより外部電極31,32を形成する。以上の工程を経て、圧電素子5が完成する。
以上説明した圧電素子5の外部電極31,32に電圧を印加すると、積層体10においてその積層方向に電界が発生する。図3に示すように、主に、領域11a〜14aにおいて電界が発生する。領域11aは、圧電体層11において外部電極部分32bと内部電極層21とに挟まれた領域である。領域12aは、圧電体層12において内部電極層21と内部電極層22とに挟まれた領域である。領域13aは、圧電体層13において内部電極層22と内部電極層23とに挟まれた領域である。領域14aは、圧電体層14において内部電極層23と内部電極層24とに挟まれた領域である。領域11a〜14aに発生する電界強度は、同程度となる。
圧電素子5に電圧を印加した状態を図4に示す。圧電素子5に、電圧が印加され、領域11a〜14aに電界が発生すると、領域11a〜14aは活性状態となり長手方向Y1に縮む。一方で、第二面5b側の最外圧電体層(圧電体層15)には、電界が発生しないので、電界による歪は発生しない。第二面5b側の最外圧電体層(圧電体層15)以外の圧電体層11〜14が長手方向Y1に縮むことにより、圧電素子5には、曲げモーメントが発生し、第一面5aを内側にして屈曲する。すなわち、圧電素子5は、第一面5aの端面10c側の一方端5Pと端面10d側の他方端5Qとの距離が小さくなるように屈曲する。これにより、図3に示すように、固定部材3に対して被駆動部材4が矢印Y3に示すように固定部材3へ向かって駆動される。
圧電素子5が屈曲することにより、電界強度に応じて各圧電体層11〜14が長手方向Y1に縮んだ寸法以上に、第一面5aの一方端5Pと他方端5Qとの距離が小さくなり、変位量Dが大きくなる。圧電素子5の変位量Dは、第一面5aにおける他方端5Qに対する一方端5Pの長手方向Y1の移動量である。本実施形態のアクチュエータ1は、圧電素子5の第一面5aにおける一方端5P側と他方端5Q側にそれぞれ固定部材3と被駆動部材4とが固定されているので、固定部材3に対する被駆動部材4の変位量を大きくすることができる。
特に、本実施形態の圧電素子5では、第二面5b側の最外圧電体層(圧電体層15)における電界強度は、0であり、第二面5b側の最外圧電体層以外の全ての圧電体層11〜14における電界強度より小さい。これにより、圧電素子5では、第二面5b側の最外圧電体層(圧電体層15)以外の全ての圧電体層11〜14が縮む。よって、一方端5Pと他方端5Qとの距離が小さくなるように、効果的に曲げモーメントが発生するので、圧電素子5が効率良く屈曲する。したがって、固定部材3に対する被駆動部材4の変位量を大きくすることができる。
本実施形態に係る圧電素子5は、圧電素子における全ての圧電体層の総厚に対する第二面側の最外圧電体層(圧電体層)の厚さを様々に設定することができる。その例として、圧電素子5A,5Bについて図5を参照して説明する。図5(a)は、圧電素子5Aを示し、図5(b)は圧電素子5Bを示す。
圧電素子5A,5Bは、備える積層体の構成が上述した圧電素子5の積層体10と異なる。また、圧電素子5A,5Bは、圧電素子5と同様に、外部電極31,32を備え、互いに対向する第一面5a及び第二面5bを備えている。そして、圧電素子5A及び5Bは、圧電素子5と同様に、第一面5aにおける一方端5P側がハンダ7を介して被駆動部材4に固定され、他方端5Q側がハンダ8を介して固定部材3に固定されている。
最初に圧電素子5Aが備える積層体40について、図5(a)を参照して説明する。積層体40は、9層の圧電体層41〜49と8層の内部電極層21〜28とが交互に積層されている。圧電体層41は、圧電素子5Aの第一面5a側の最も外側の最外圧電体層である。積層体40において、圧電体層41の上には、内部電極層21〜28と圧電体層42〜49が順に交互に積層されている。すなわち、圧電体層49は、第二面5b側の最も外側の最外圧電体層である。
圧電体層41は、外部電極部分32bと内部電極層21に挟まれている。圧電体層42〜48は、それぞれ内部電極層21〜28に挟まれている。圧電体層49は、内部電極層や外部電極に挟まれていない。また、全ての圧電体層41〜49の厚さは、同程度であり、15μm程度である。圧電体層49の厚さは、全ての圧電体層41〜49の総厚の11%程度である。
また、内部電極層21,23,25,27は、外部電極部分31aと物理的且つ電気的に接続されている。内部電極層22,24,26,28は、外部電極部分32aと物理的且つ電気的に接続されている。
以上説明した圧電素子5Aの外部電極31,32に電圧を印加すると、主に、領域41a〜48aにおいて電界が発生する。領域41aは、圧電体層41において外部電極部分32bと内部電極層21とに挟まれた領域である。領域42a〜48aは、圧電体層42〜48においてそれぞれ内部電極層21〜28に挟まれた領域である。領域41a〜48aに発生する電界強度は同程度である。
領域41a〜48aに電界が発生すると、領域41a〜48aは活性状態となり長手方向Y1に縮む。一方で、第二面側の最外圧電体層(圧電体層49)には、電界が発生しないので、電界による歪は発生しない。第二面5b側の最外圧電体層(圧電体層49)以外の圧電体層41〜48が長手方向Y1に縮むことにより、圧電素子5Aには曲げモーメントが発生し、第一面5aを内側にして屈曲する。すなわち、圧電素子5Aは、第一面5aの端面10c側の一方端5Pと端面10d側の他方端5Qとの距離が小さくなるように屈曲する。
圧電素子5Aが屈曲することにより、電界強度に応じて各圧電体層41〜48が長手方向Y1に縮んだ寸法以上に、第一面5aの一方端5Pと他方端5Qとの距離が小さくなり、変位量Dが大きくなる。本実施形態のアクチュエータ1は、圧電素子5の第一面5aにおける一方端5P側と他方端5Q側にそれぞれ固定部材3と被駆動部材4とが固定されているので、固定部材3に対する被駆動部材4の変位量を大きくすることができる。
次に圧電素子5Bが備える積層体50について、図5(b)を参照して説明する。積層体50は、3層の圧電体層51〜53と2層の内部電極層21,21とが交互に積層されている。圧電体層51は、圧電素子5Bの第一面5a側の最も外側の最外圧電体層である。積層体50において、圧電体層51の上には、内部電極層21、圧電体層52、内部電極層22、圧電体層53が順に積層されている。すなわち、圧電体層53は、第二面5b側の最も外側の最外圧電体層である。
圧電体層51は、外部電極部分32bと内部電極層21に挟まれている。圧電体層52は、内部電極層21と内部電極層22に挟まれている。圧電体層53は、内部電極層や外部電極に挟まれていない。
圧電体層51,52の厚さは、同程度であり、15μm程度である。圧電体層53の厚さは、圧電体層51の7倍程度であり、105μm程度である。この圧電体層53の厚さは、全ての圧電体層51〜53の総厚の77%程度である。内部電極層21は、外部電極部分31aと物理的且つ電気的に接続されている。内部電極層22は、外部電極部分32aと物理的且つ電気的に接続されている。
以上説明した圧電素子5Bの外部電極31,32に電圧を印加すると、主に、領域51a,52aにおいて電界が発生する。領域51aは、圧電体層51において外部電極部分32bと内部電極層21とに挟まれた領域である。領域52aは、圧電体層5において内部電極層21と内部電極層22とに挟まれた領域である。領域51a,52aに電界が発生すると、領域51a,52aは活性状態となり長手方向Y1に縮む。一方で、第二面側の最外圧電体層(圧電体層53)には、電界が発生しないので、電界による歪は発生しない。
第二面5b側の最外圧電体層(圧電体層53)以外の圧電体層51,52が長手方向Y1に縮むことにより、圧電素子5Bには曲げモーメントが発生し、第一面5aを内側にして屈曲する。すなわち、圧電素子5Bは、第一面5aの一方端5Pと他方端5Qとの距離が小さくなるように屈曲する。これにより、固定部材3に対して被駆動部材4が矢印Y3に示すように固定部材3へ向かって駆動される。
圧電素子5Bが屈曲することにより、電界強度に応じて各圧電体層51,52が長手方向Y1に縮んだ寸法以上に、第一面5aの一方端5Pと他方端5Qとの距離が小さくなり、変位量Dが大きくなる。本実施形態のアクチュエータ1は、圧電素子5の第一面5aにおける一方端5P側と他方端5Q側にそれぞれ固定部材3と被駆動部材4とが固定されているので、固定部材3に対する被駆動部材4の変位量を大きくすることができる。
以上、例を出して説明したように、本実施形態に係る圧電素子5は、圧電体層の総厚に対する第二面5b側の最外圧電体層の厚さを様々に設定することができる。図6は、圧電体層の総厚に対する第二面5b側の最外圧電体層の厚さの割合と圧電素子5の変位量との関係を示すグラフである。
横軸は、圧電体層の総厚に対する第二面5b側の最外圧電体層の厚さの割合である。縦軸は、比較の基準となる圧電素子の変位量Dに対する、本実施形態に係る各圧電素子の変位量Dの割合、変位%である。なお、圧電素子の変位量Dは、第一面5aにおける他方端5Qに対する一方端5Pの長手方向Y1の移動量である。
比較の基準となる圧電素子は、図10に示す従来の圧電素子100である。圧電素子100は、本実施形態に係る圧電素子5と同様な大きさで、積層体110と、外部電極31,32を備える。積層体110は、9層の圧電体層111〜119と9層の内部電極層121〜128が交互に積層されている。更に、積層体110は、圧電体層119の外側に形成された外部電極層129を備える。外部電極層129は、内部電極層121〜128と同形状である。
圧電体層111は、外部電極部分32bと内部電極層121とに挟まれ、その他の全ての圧電体層112〜119は、それぞれ内部電極層121〜128及び外部電極層129によってそれぞれ挟まれている。また、9層の圧電体層111〜119は全て同じ程度の厚さである。
圧電素子100に電圧が印加されると、圧電体層111の外部電極32aと内部電極層121に挟まれた領域と、圧電体層112〜119において内部電極層121〜128及び外部電極層129にそれぞれ挟まれた領域が活性化し、長手方向Y1に縮む。すなわち、圧電素子100では、積層された全ての圧電体層111〜119がほぼ同様に長手方向Y1に縮む。よって、圧電素子100は、屈曲しない。
図6のグラフでは、圧電体層の総厚に対する第二面5b側の最外圧電体層の厚さの割合が11%、22%、33%、44%、55%、66%、77%である場合の変位%が示されている。最外圧電体層の厚さの割合が11%から55%までは大きくなるにつれて変位%が大きくなり、最外圧電体層の厚さの割合が55%から77%まで小さくなるにつれて変位%が小さくなっている。そして、最外圧電体層の厚さの割合が33%〜66%の範囲で、変位%が大きい。
すなわち、駆動の際、第二面5b側の最外圧電体層における電界強度が第二面5b側の最外圧電体層以外の圧電体層における電界強度より小さく、第二面5b側の最外圧電体層における電界強度が0である場合、第二面5b側の最外圧電体層の厚さは、複数の圧電体層の合計の厚さに対する33%〜66%程度であることが好ましい。この場合、圧電素子では、より効率良く圧電素子が屈曲して、固定部材に対する被駆動部材の変位量をより大きくすることができる。
(第2実施形態)
第2実施形態に係るアクチュエータは、備える圧電素子の構成が第1実施形態のアクチュエータ1と異なる。図7は、第2実施形態に係るアクチュエータが備える圧電素子の平面図である。図7に示すように、圧電素子9は、圧電素子5と同様に直方体形状の積層型圧電素子であり、大きさも同程度である。そして、圧電素子9は、直方体形状の積層体60と、積層体60の外表面に形成された上述の外部電極31,32を備えている。
圧電素子9は、第1実施形態に係る圧電素子5と、その積層体の構成が異なる。圧電素子9が備える積層体60は、第二面側に形成された外部電極層75を備える点で、圧電素子5が備える積層体10と構成が異なる。この積層体60の構成について詳細に説明する。
積層体60は、積層体10と同様に積層方向と垂直且つ長手方向Y1と平行で互いに対向する主面60a及び60bを備え、長手方向Y1に対向する端面60c及び60dを備え、主面60a,60b,端面60c,60dに垂直で互いに対向する側面60e及び側面を備える。外部電極31は、端面60c全体の領域を覆う外部電極部分31aと、主面60aの端面60c側の領域を覆う外部電極部分31bとを有する。外部電極32は、端面60d全体の領域を覆う外部電極部分32aと、主面60aの端面60d側の領域を覆う外部電極部分32bとを有する。
このような圧電素子9は、互いに対向する第一面9a及び第二面9bを備える。第一面9aは、外部電極部分31b,32b及び積層体60の主面60aにおいて外部電極部分31b,32bから露出した部分で構成される。第二面9bは、積層体60の主面60bによって構成される。圧電素子9は、第一面9aを構成する外部電極部分31bがハンダ7を介して被駆動部材の部分4cと接着されている。一方、第一面9aを構成する外部電極部分32bの端面60d側の部分がハンダ8を介して固定部材3と接着されている。
すなわち、本実施形態のアクチュエータは、第1実施形態に係るアクチュエータ1と同様に、固定部材3は、圧電素子9の積層方向に垂直な第一面9aにおける端面60c側に固定されている。また、被駆動部材4は、圧電素子9の積層方向に垂直な第一面9aにおける端面60d側に固定されている。
積層体60は、5層の圧電体層61〜65と4層の内部電極層71〜74とが交互に積層されている。圧電体層61は、第一面側9a側の最も外側の最外圧電体層である。積層体60において、圧電体層61の上には、内部電極層71、圧電体層62、内部電極層72、圧電体層63、内部電極層73、圧電体層64、内部電極層74、圧電体層65の順序で積層されている。すなわち、圧電体層65は、積層体60の最も外側の最外圧電体層である。更に、積層体60が備える外部電極層75は、圧電体層65の上に積層されている。
すなわち、圧電体層61は、外部電極部分32bと内部電極層71とによって挟まれている。圧電体層62〜64は、内部電極層71〜74によってそれぞれ挟まれている。圧電体層65は、内部電極層74と外部電極層75によって挟まれている。
圧電体層61〜64の厚さは、同程度であり、15μm程度である。圧電体層65の厚さは、圧電体層15の5倍程度であり、75μm程度である。この圧電体層65の厚さは、全ての圧電体層61〜65の総厚の55%程度である。内部電極層71,73及び外部電極層75は、内部電極層72,74に対して端面60c側にずれて、端面60cに形成された外部電極部分31aと物理的且つ電気的に接続されている。内部電極層72,74は、内部電極層71,73及び外部電極層75に対して端面60d側にずれて、端面60dに形成された外部電極部分32aと物理的且つ電気的に接続されている。
以上説明した圧電素子9の外部電極31,32に電圧を印加すると、積層体60においてその積層方向に電界が発生する。主に、領域61a〜65aにおいて電界が発生する。領域61aは、圧電体層11において外部電極部分32bと内部電極層71とに挟まれた領域である。領域62aは、圧電体層62において内部電極層71と内部電極層72とに挟まれた領域である。領域63aは、圧電体層63において内部電極層72と内部電極層73とに挟まれた領域である。領域64aは、圧電体層64において内部電極層73と内部電極層74とに挟まれた領域である。領域65aは、圧電体層65において内部電極層74と外部電極層75とに挟まれた領域である。
領域61a〜64aは、同程度の強さの電界が発生する。領域65aは、領域65aを挟む内部電極層74と内部電極層75との間の距離が、領域61a〜64aをそれぞれ挟む内部電極層71〜74の5倍程度なので、領域65aに発生する電界強度は、領域61a〜64aの5分の1程度である。
圧電素子9に、電圧が印加され、領域61a〜65aに電界が発生すると、領域61a〜64aは活性状態となり長手方向Y1に縮む。一方で、第二面側の最外圧電体層(圧電体層65)における領域65aには、領域61a〜64aの5分の1程度の電界しか発生しないので、領域61a〜64aの5分の1程度しか電界強度に応じた応力が発生しない。これにより、圧電素子9には曲げモーメントが発生し、第一面9aを内側にして屈曲する。すなわち、圧電素子9は、第一面9aの端面60c側の一方端9Pと端面60d側の他方端9Qとの距離が小さくなるように屈曲する。これにより、固定部材3に対して被駆動部材4が矢印Y3に示すように固定部材3へ向かって駆動される。
圧電素子9が屈曲することにより、電界強度に応じて各圧電体層61〜64が長手方向Y1に縮んだ寸法以上に、第一面9aの一方端9Pと他方端9Qとの距離が小さくなり、変位量Dが大きくなる。圧電素子9の変位量Dは、第一面9aにおける他方端に対する一方端9Pの長手方向Y1の移動量である。本実施形態のアクチュエータは、圧電素子9の第一面9aにおける一方端9P側と他方端9Q側にそれぞれ固定部材3と被駆動部材4とが固定されているので、固定部材3に対する被駆動部材4の変位量を大きくすることができる。
特に、本実施形態の圧電素子9では、第二面9b側の最外圧電体層(圧電体層65)における電界強度が、第二面9b側の最外圧電体層以外の圧電体層61〜64における電界強度より小さい。これにより、圧電素子9では、第二面9b側の最外圧電体層(圧電体層65)よりこの最外圧電体層以外の圧電体層61〜64が大きく縮む。よって、効果的に曲げモーメントが発生するので、圧電素子9が効率良く屈曲する。したがって、固定部材3に対する被駆動部材4の変位量を大きくすることができる。
本実施形態に係る圧電素子9は、圧電体層の総厚に対する第二面9b側の最外圧電体層(圧電体層)の厚さを様々に設定することができる。その例として、圧電素子9Aについて図8を参照して説明する。
圧電素子9Aは、備える積層体80の構成が上述した圧電素子9の積層体60と異なる。また、圧電素子9Aは、圧電素子9と同様に、外部電極31,32を備え、互いに対向する第一面9a及び第二面9bを備えている。そして、圧電素子9Aは、圧電素子9と同様に、第一面9aにおける一方端9P側がハンダ7を介して被駆動部材4に固定され、他方端9Q側がハンダ8を介して固定部材3に固定されている。
積層体80は、3層の圧電体層81〜83と2層の内部電極層91,91とが交互に積層されている。圧電体層81は、圧電素子9Aの第一面9a側の最も外側の最外圧電体層である。積層体80において、圧電体層81の上には、内部電極層91、圧電体層82、内部電極層92、圧電体層83が順に積層されている。すなわち、圧電体層83は、第二面9b側の最も外側の最外圧電体層である。更に、積層体80が備える外部電極層93は、圧電体層83の上に積層されている。
圧電体層81は、外部電極部分32bと内部電極層91に挟まれている。圧電体層82は、内部電極層91と内部電極層92に挟まれている。圧電体層83は、内部電極層92と外部電極層93とに挟まれている。
圧電体層81,82の厚さは、同程度であり、15μm程度である。圧電体層83の厚さは、圧電体層81の7倍程度であり、105μm程度である。この圧電体層83の厚さは、全ての圧電体層81〜83の総厚の77%程度である。また、内部電極層91は、外部電極部分31aと物理的且つ電気的に接続されている。内部電極層92は、外部電極部分32aと物理的且つ電気的に接続されている。
以上説明した圧電素子9の外部電極31,32に電圧を印加すると、積層体60においてその積層方向に電界が発生する。主に、領域81a〜83aにおいて電界が発生する。領域81aは、圧電体層81において外部電極部分32bと内部電極層91とに挟まれた領域である。領域82aは、圧電体層82において内部電極層91と内部電極層92とに挟まれた領域である。領域83aは、圧電体層83において内部電極層92と外部電極層93とに挟まれた領域である。
圧電素子9Aに、電圧が印加され、領域81a〜83aに電界が発生すると、領域81a〜82aは活性状態となり長手方向Y1に縮む。一方で、第二面側の最外圧電体層(圧電体層83)における領域83aには、領域81a,82aの7分の1程度の電界しか発生しないので、領域81a,82aの7分の1程度しか電界強度に応じた応力が発生しない。これにより、圧電素子9Aには曲げモーメントが発生し、第一面9aを内側にして屈曲する。すなわち、圧電素子9Aは、第一面9aの一方端9Pと他方端9Qとの距離が小さくなるように屈曲する。これにより、固定部材3に対して被駆動部材4が矢印Y3に示すように固定部材3へ向かって駆動される。
圧電素子9Aが屈曲することにより、電界強度に応じて各圧電体層81,82が長手方向Y1に縮んだ寸法以上に、第一面9aの一方端9Pと他方端9Qとの距離が小さくなり、変位量Dが大きくなる。本実施形態のアクチュエータは、圧電素子9Aの第一面9aにおける一方端9P側と他方端9Q側にそれぞれ固定部材3と被駆動部材4とが固定されているので、固定部材3に対する被駆動部材4の変位量を大きくすることができる。
特に、本実施形態の圧電素子9Aでは、第二面9b側の最外圧電体層(圧電体層83)における電界強度が、第二面9b側の最外圧電体層以外の圧電体層81,82における電界強度より小さい。これにより、圧電素子9Aでは、第二面9b側の最外圧電体層(圧電体層83)よりこの最外圧電体層以外の圧電体層81,82が大きく縮む。よって、効果的に曲げモーメントが発生するので、圧電素子9が効率良く屈曲する。したがって、固定部材3に対する被駆動部材4の変位量を大きくすることができる。
以上、例を出して説明したように、本実施形態に係る圧電素子9Aは、圧電体層の総厚に対する第二面9b側の最外圧電体層の厚さを様々に設定することができる。図9は、圧電体層の総厚に対する第二面9b側の最外圧電体層の厚さの割合と圧電素子9の変位量との関係を示すグラフである。
横軸は、圧電体層の総厚に対する第二面5b側の最外圧電体層の厚さの割合である。縦軸は、比較の基準となる圧電素子の変位量Dに対する、本実施形態に係る各圧電素子の変位量Dの割合である。なお、圧電素子の変位量Dは、第一面9aにおける他方端9Qに対する一方端9Pの長手方向Y1の移動量である。比較の基準となる圧電素子は、図10に示す上述した圧電素子100である。
図9のグラフでは、圧電体層の総厚に対する第二面9b側の最外圧電体層の厚さの割合が11%、22%、33%、44%、55%、66%、77%である場合の変位%が示されている。最外圧電体層の厚さの割合が11%から55%までは大きくなるにつれて変位%が大きくなり、最外圧電体層の厚さの割合が55%から77%まで小さくなるにつれて変位%が小さくなっている。そして、最外圧電体層の厚さの割合が33%〜66%の範囲で、変位%が大きい。
すなわち、駆動の際、第二面9b側の最外圧電体層における電界強度が第二面9b側の最外圧電体層以外の圧電体層における電界強度より小さい場合、第二面9b側の最外圧電体層の厚さは、複数の圧電体層の合計の厚さに対する33%〜66%程度であることが好ましい。この場合、圧電素子では、より効率良く圧電素子が屈曲して、固定部材に対する被駆動部材の変位量をより大きくすることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、圧電素子の第二面側の最外圧電体層における電界強度が、第一面側の最外圧電体層における電界強度より小さければ、第二面側の最外圧電体層と第一面側の最外圧電体層との間の層の電界強度が0であってもよい。
1…アクチュエータ、3…固定部材、4…被駆動部材、5,5A,5B,9,9A…圧電素子、5P,9P…一方端、5Q,9Q…他方端、5a,9a…第一面、5b,9b…第二面、10,40,50,60,80…積層体、11〜15,41〜49,51〜53,61〜65,81〜83…圧電体層、21〜28,71〜74…内部電極層、31,32…外部電極。