本発明は、画像振れを補正する像ぶれ補正装置および該像ぶれ補正装置を有する光学機器、撮像装置に関するものである。
現在のカメラは露出決定やピント合わせ等の撮影にとって重要な作業は全て自動化され、カメラ操作に未熟な人でも撮影失敗を起こす可能性は非常に少なくなっている。また、最近では、カメラに加わる手振れ等の振れによる画像振れを防ぐ振れ補正装置も多くの製品に搭載されてきており、撮影者の撮影ミスを誘発する要因は殆ど無くなってきている。
ここで、振れ補正装置について簡単に説明する。撮影時のカメラの例えば手振れは、周波数として通常1Hzないし10Hzの振動である。撮影時点において上記のような手振れを起こしていても画像振れの無い写真を撮影可能とする為には、手振れによるカメラの振動を検出し、その検出値に応じて振れを相殺する方向にレンズを変位させることである。その為、第1に、手振れを正確に検出し、第2に、手振れによる光軸変化を補正することが必要となる。
手振れ等の振れの検出は、原理的にいえば、加速度、角加速度、角速度、角変位等を検出し、振れ補正の為にその出力を適宜演算処理する手段をカメラに搭載することによって行う。そして、この検出情報に基づき撮影光軸を偏心させる補正光学系を駆動(光軸と直交する平面内で移動)させて像振れ抑制が行われる。
振れ補正装置としては、特許文献1に開示されたように、ジャイロ信号を基に手振れの検出を行い、光学系の一部を作動させることによって補正を行う構成のものが多く用いられている。
振れ補正装置を構成する機構の望ましい特性としては、
1)摩擦が小さく、目標への追従が良いこと
2)周波数特性を設計者が操作しやすいこと
などが挙げられる。これらを実現する機構として、様々な機構が提案されている。
特許文献2に開示された機構の特徴は、振れ補正装置と、可動部の変位を規制する弾性手段および粘性手段を設けたことにある。前記のような構成とすることで、いわゆるオープン制御可能で周波数特性を改善した機構を得ることができる。
ここで、一般的に防振材として用いられる紫外線硬化型のシリコーンゲルには、紫外線の積算光量[J/m2]と硬化厚み[m]の間に、紫外線照射装置の光量[W/m2]にもよるが、図36のような関係がある。したがって、シリコーンゲルの深度によって硬化する時間が異なる。また、シリコーンゲルの深部は硬化しないこともある。
特許文献3に開示の機構の特徴は、レンズ保持部材を支持する支持部材を固定する固定部材が透明樹脂で構成されるとともに、固定部材内に設けられた充填部の底部付近の外側壁の肉厚が、底部付近以外の外側壁の肉厚より底部に向けて薄く構成したことである。前記のように構成することで、充填部に注入されたシリコーン化合物の制振材を、上部から底部まで均一にゲル状に硬化させることができ、レンズ駆動装置の制振特性を安定化することができる。
特許文献4に開示された機構の特徴は、ベース部材に対してレンズ保持部材を変位可能に支持する板バネを押圧して接着される固定ピンの頭部及び先端部で開口する光通過穴を形成したことである。前記のように構成することで、固定ピンの光通過穴内を通過して紫外線硬化性接着剤に照射され、紫外線硬化性接着剤の硬化を促進し、短時間で板バネをレンズ保持部材に高強度に固定することである。
特開昭60−143330号公報
特開平8−184870号公報
特開平5−166208号公報
特開平7−153098号公報
特許文献2によると、機械的または電気的な方法で粘性抵抗を得ることができる。しかしながら、機械的方法によると構造が複雑になりやすい、摩擦が増加するなどの問題があり、電気的方法によると、制御対象のばらつきの影響を受けやすい、制御系が複雑になるなどの問題がある。
特許文献3によると、固定部材を透明部材で構成することで、制振材を上部から底部まで均一にゲル状に硬化させることができる。しかしながら、撮像光学系においては、可動部材や固定部材を透明部材で構成すると、写真にゴーストやフレアを生じさせる恐れがあるという問題がある。
特許文献4によると、固定ピンの頭部及び先端部で開口する光通過穴を形成することで、紫外線硬化性接着剤の硬化を促進し、短時間で板バネをレンズ保持部材に高強度に固定することができるとある。しかしながら、実際には紫外線硬化性接着剤が光通過穴の中に入り込んでくるので、接着剤の高さは高くなり、紫外線が充分に底まで届かない恐れがあり、問題がある。
(発明の目的)
本発明の目的は、簡単な構成により、減衰手段の硬化を確実なものにし、安定した防振効果を得ることができる像ぶれ補正装置及びそれを有する光学機器、撮像装置を提供しようとするものである。
上記目的を達成するために、本発明は、像振れを補正する補正手段を一体に保持する可動部材と、前記可動部材を移動可能に支持する固定部材と、前記可動部材を介して前記補正手段を撮像光学系の光軸と直交する方向に移動させ、振れによる画像振れを補正する駆動手段と、前記可動部材の前記固定部材に対する相対移動に際して粘性抵抗を与える紫外線硬化性の減衰手段と、紫外線透過材で構成され、前記可動部材と前記固定部材の一方に一端が固定され、他端が突出形状部に形成された棒状部材とを有し、前記可動部材と前記固定部材の他方には、円筒形の有底穴であって、前記棒状部材の前記突出形状部が開口部から挿入される減衰手段形成用穴部が設けられ、前記棒状部材の前記突出形状部が前記減衰手段形成用穴部に挿入された状態で、前記突出形状部と前記減衰手段形成用穴部の間に前記減衰手段が設けられ、前記棒状部材の前記突出形状部の側面に、入射される紫外線を前記減衰手段に対して射出する反射部または屈折部が設けられ、前記棒状部材の前記突出形状部の側面から射出された紫外線が通過する前記減衰手段内の距離は、前記減衰手段形成用穴部に配設された前記減衰手段の高さよりも短いことを特徴とする像ぶれ補正装置とするものである。
同じく上記目的を達成するために、本発明は、本発明の上記像ぶれ補正装置を有する光学機器、撮像装置とするものである。
本発明によれば、簡単な構成により、減衰手段の硬化を確実なものにし、安定した防振効果を得ることができる像ぶれ補正装置またはそれを有する光学機器、撮像装置を提供できるものである。
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例1ないし実施例5に示す通りである。
図1ないし図11は、本発明の実施例1に係る振れ補正機能を有する撮像装置を示す図である。図1は、後述の振れ補正ユニットを備えた撮像装置の光学配置図である。図1において、1は撮像装置、2は撮像レンズ、3はレンズ駆動制御部、4は撮像光学系である撮像レンズ2の撮像光軸(以下、光軸)、5はレンズ鏡筒である。6は撮像素子、7はメモリ、8は手振れ等の振れを検出する振れセンサ、9は後述の補正光学系を具備する振れ補正ユニットである。10は電源、11はレリーズ釦、12は撮像レンズ2に含まれる補正手段であるところの補正光学系、13はいわゆるクイックリターンミラー、14はファインダ光学系である。
撮像装置1は、撮像レンズ2と不図示のピント調節部を用いて、被写体像を撮像素子6近傍に結像させる。さらに、ユーザーによるレリーズ釦11の操作に同期させて撮像素子6より被写体の情報を得てメモリ7へ記録を行う。
次に、補正光学系12を用いた手振れ等による画像振れ補正について説明する。露光中などに例えば手振れが作用したときは、振れセンサ8の信号に基づいてレンズ駆動制御部3を介して、手振れを抑制する方向に振れ補正ユニット9を駆動する。詳しくは、振れ補正ユニット9に具備される補正光学系12を光軸4と直交する平面内で移動させる。これにより、撮像素子6上での画像の振れが軽減されて、手振れによる画像の劣化を防止できる。
図2は、撮像装置1の電気的構成を示すブロック図である。撮像装置1は、撮像系、画像処理系、記録再生系、制御系を有する。撮像系は、撮像レンズ2、撮像素子6を含み、画像処理系は、A/D変換器20、画像処理部21を含む。また、記録再生系は、記録処理部23、メモリ24を含み、制御系は、カメラシステム制御部25、AFセンサ26、AEセンサ27、振れセンサ8、操作検出部29、およびレンズシステム制御部30を含む。
撮像系は、物体からの光を撮像レンズ2を介して撮像素子6の撮像面に結像する光学処理系であり、AEセンサ27の信号をもとに図示しない絞りなどを用いて適切な光量の被写体光を撮像素子6に露光する。画像処理系に含まれる画像処理部21は、A/D変換器20を介して撮像素子6からの画像信号を処理するものであり、ホワイトバランス回路、ガンマ補正回路、補間演算による高解像度化を行う補間演算回路等を有する。記録再生系に含まれる記録処理部23は、メモリ24への画像信号の出力を行うとともに、表示部22に出力する像を生成、保存する。また、記録処理部23は、予め定められた方法を用いて画像や動画の圧縮を行う。
制御系は、レリーズ釦11等の操作を検出する操作検出部29からの検出信号に応動して撮像系、画像処理系、記録再生系をそれぞれ制御する。この制御系に含まれるカメラシステム制御部25は撮影の際のタイミング信号などを生成して出力する。AFセンサ26は撮像装置1のピント状態を検出する。AEセンサ27は被写体の輝度を検出する。振れセンサ8は手振れ等の振れを検出する。レンズシステム制御部30は上記カメラシステム制御部25の信号に応じて適切にレンズなどを制御する。
制御系は、上記のように外部操作に応動して撮像系、画像処理系、記録再生系をそれぞれ制御する。例えば、レリーズ釦11の押下を検出して、撮像素子6の駆動、画像処理部21の動作、記録処理部23の圧縮処理などを制御する。さらに表示部22によって光学ファインダ、液晶モニター等に情報表示を行う情報表示装置の各セグメントの状態を制御する。
カメラシステム制御部25はAFセンサ26とAEセンサ27に接続されており、これらからの信号を基にレンズ、絞り等を適切に制御する。さらにカメラシステム制御部25は振れセンサ8に接続されており、画像の振れ補正を行うモードにおいては、振れセンサ8の信号を基に振れ補正ユニット9を駆動する。
図3ないし図12を用いて、撮像装置1に具備される振れ補正ユニット9について説明する。
図3は振れ補正ユニット9の斜視図であり、図4は振れ補正ユニット9の被写体側から見た分解斜視図である。図3および図4において、31は固定部材であるところのベース板、38は後述の補正光学系40を移動可能に保持する可動部材であるところの可動鏡筒あり、これらは遮光部材で構成されている。32a,32b,32cはベース板31と可動鏡筒38に狭持された球である。40は撮影時に画像振れを補正するための補正光学系(図1の補正光学系2に相当)であり、可動鏡筒38に保持される。33a,33bはコイル、34a,34bは磁石、35はヨーク(磁石吸着板)である。36a,36bはヨーク固定ネジ、37a,37b,37cは弾性体、44a,44bはダンパー抵抗棒である。なお、図3ないし後述の図8までにおいては、振れ補正ユニット9の主要部分だけを示し、保持部材やリード線等は示していない。
次に、図3および図4を用いて、ベース板31と可動鏡筒38の相対運動について説明する。
撮影時に画像振れを補正するための補正光学系40は、ベース板31に対し、光軸4と直交する平面内においてX方向およびY方向に移動可能な可動鏡筒38に保持されている。ベース板31と可動鏡筒38は球32a,32b,32cを狭持しており、球32a〜32cを介して相対運動を行う。このため、転がり摩擦という非常に小さな摩擦の影響しか受けずに相対運動を行うことができる。摩擦が小さいために非常に小さな入力に対しても適切に応答することができる。また、球32a〜32cによる案内面を適切な精度で製作することにより、ベース板31と可動鏡筒38が相対運動を行った場合でも、可動鏡筒38の傾きや光軸方向への不要な移動が発生することが無い。
図5(a)〜(d)は、振れ補正ユニット9を示す構成図である。詳しくは、図5(a)は光軸方向からみた正面図、図5(b)は図5(a)におけるA−A断面での断面図、図5(c)は図5(a)におけるB−B断面での断面図、図5(d)は図5(a)におけるC−C断面での断面図である。
図5(a)に示したように、可動鏡筒38はベース板31に対して複数の弾性体37a〜37cで弾性支持されている。本実施例1では、弾性体37a〜37cが光軸4から放射状に120度の間隔で3本配置されている。このように対称な配置とすることで、モーメントの発生による不要共振の励起を抑制することが可能となる。さらに、電源OFF時の補正光学系40の垂れ下がりを防止することが可能となり、高価なロック機構等が不要となり、コストダウンを図ることができる。また、複数の弾性体37a〜37cにより弾性支持されることで、補正光学系40のレンズ中心を常に光軸中心に位置させることが可能となり、高価なレンズ位置検出器を使ったフィードバック制御が不要となり、コストダウンを図ることができる。弾性体37a〜37cの弾性係数の決定方法については後述する。
図5(b)に示したように、弾性体37a〜37cは光軸4の方向に適宜傾けて取り付けられており、ベース板31と可動鏡筒38の間に設けられた球32a〜32cを把持している。
図5(c)に示したように、ベース板31にはコイル33a,33bが固定されており、可動鏡筒38には磁石34a,34bおよびヨーク35が固定されている。これらにより、いわゆるムービングマグネット型のアクチュエータ、つまり振れ補正ユニット9の駆動手段を構成している。
図5(a)において、可動鏡筒38の紙面右上側には、ベース板31に取り付けられたコイル33a、可動鏡筒38に取り付けられた磁石34aおよびヨーク35により構成される第1の電磁アクチュエータが配置されている。さらに、可動鏡筒38の紙面左上側には、ベース板31に取り付けられたコイル33b、可動鏡筒38に取り付けられた磁石34bおよびヨーク35により構成される第2の電磁アクチュエータが配置されている。これら駆動手段を成す第1の電磁アクチュエータ、第2の電磁アクチュエータおよび振れ補正ユニット9が振れ補正装置の主な構成要素である。
次に、可動鏡筒38とベース板31の間に介在し、適切な粘性抵抗を得るための減衰手段の取り付けについて説明する。
図5(d)において、44a,44bは紫外線を透過する部材より成る円柱状のダンパー抵抗棒である。45a,45bは後述するようにダンパー抵抗棒44a,44bの先端側に形成された突起形状部が挿入される減衰手段形成用穴部、46a,46bは適切な粘性抵抗を得るためのゲルより成る減衰手段である。ダンパー抵抗棒44a,44bの後端は可動鏡筒38に設けられた円柱状の貫通穴38a(図4も参照)に差し込まれ、接着等で固定される。ベース板31に設けられた円形の穴部である減衰手段形成用穴部45a,45bに対して、ダンパー抵抗棒44a,44bの先端側の突起形状部がほぼ同心円状になるように配置される。そして、その隙間にドーナツ状に減衰手段46a,46bが充填されている。減衰手段46a,46bは様々な粘弾性体を用いることが可能であるが、本実施例1では、組付け性や耐環境性に優れた紫外線硬化型シリコーンゲルを用いている。減衰手段46a,46bとして用いる粘弾性体の望ましい特性については後述する。
図5(d)に示すように、可動鏡筒38上に後端が固定されるダンパー抵抗棒44a,44bの先端側の突起形状部は、ベース板31に設けられた減衰手段形成用穴部45a,45b内に、ベース板31と光軸4の方向にオーバーラップするように挿入されている。
減衰手段46a,46bは光軸対称に複数設けられることが望ましい。本実施例1では、図5(d)に示すように、光軸4に対して対称な位置に2つ設けられている。光軸4に対称に設けることで、ベース板31と可動鏡筒38が相対運動を行ったときに、減衰手段46a,46bから受ける力によって可動鏡筒38にモーメントが発生することが無い。
ここで、本実施例1では、ベース板31上に設けられた減衰手段形成用穴部45a,45bと、可動鏡筒38上に後端が固定されたダンパー抵抗棒44a,44bとの間に、減衰手段46a,46bを介在させている。しかし、可動鏡筒38上に減衰手段形成用穴部を設け、ベース板31上にダンパー抵抗棒の後端を固定する構造とし、これらの間に減衰手段46a,46bを介在させても構わない。
次に、本実施例1における減衰手段46a,46bの硬化に関して説明する。
図6は減衰手段形成用穴部45a,45b近傍の拡大図であり、図7は図6のA部の詳細図である。なお、ダンパー抵抗棒44a,44b、減衰手段形成用穴部45a,45b、減衰手段46a,46bは、それぞれ同一部材であるので、以下、ダンパー抵抗棒44、減衰手段形成用穴部45、減衰手段46とも記す。本実施例1では、減衰手段46は防振材として紫外線硬化型のシリコーンゲルを用いている。47は紫外線照射装置であり、光線トレース図を同時に示している。ダンパー抵抗棒44は紫外線透過性の材料で出来ている。紫外線透過性の材料としては、例えば住友化学製のスミペック010がある。
図7に示したように、ダンパー抵抗棒44の先端部周囲には全反射面(段差が形成されている部分)が形成されている。紫外線照射装置47から射出された紫外線は、ダンパー抵抗棒44の後端面である入射面から入射した後、ダンパー抵抗棒44の先端部周囲から中心に向かってそれぞれ全反射面で反射される。そして、進行方向を変化させ、ダンパー抵抗棒44の側面から射出される。ダンパー抵抗棒44の先端部(突起形状部)には射出平面が形成されていて、入射面から入射した光線はそのまま射出平面(入射される光線に垂直な端面)から射出される。
図7に示した光線トレースは、ダンパー抵抗棒44、減衰手段46の屈折率がそれぞれ1.5,1.4のときのものである。
このようにして、紫外線照射装置47から射出された紫外線は、紫外線透過性の材料で構成されたダンパー抵抗棒44を通り、突起形状部にて逐次反射屈折され、減衰手段46を成すシリコーンゲルに照射される。このとき、シリコーンゲル内を通る光線の距離は、シリコーンゲル表面46cから減衰手段形成用穴部45の底面45cまでの距離、すなわちシリコーンゲルの高さよりも短くなるように設定してある。したがって、シリコーンゲルの表面46cから紫外線を照射するのに比べて、本実施例1の方がシリコーンゲルの深部まで硬化させることが可能である。
ここで、シリコーンゲルの硬化に利用したダンパー抵抗棒44は、そのまま振れ補正ユニット9の減衰機構の一部として利用される。ダンパー抵抗棒44は、光軸4とは離れた位置に存在するので、撮影画像に影響することはないと思われるが、不要光の発生を抑えるために減衰手段46の硬化後にダンパー抵抗棒44の入射面には遮光板を貼ってもよい。
次に、図8を用いて、振れ補正ユニット9の上記した駆動手段について説明する。図8は駆動手段の模式図であり、図8(a)は磁石とコイルのみを光軸方向から見た図、図8(b)は磁石を中心付近で切断した時の断面図を示している。
図8(a),(b)において、43は着磁境界を示している。また、図8(b)において、42a,42b,42cは磁石34a、コイル33a近傍の代表的な磁力線を模式的に表している。
図8(a)に示したように、着磁境界43を挟んで磁石34aは2つの領域34a1,34a2に分けて着磁されている。このとき、着磁境界43は駆動手段で発生する力の方向と直交する方向であり、図8(a)の上下方向に着磁境界が存在し、左右方向に駆動される。コイル33aは光軸方向から見たときに小判型をしており、二つの長手部分33a1,33a2が磁石の2つの領域34a1,34a2と対向するように配置されている。
また、図8(b)に示したように、磁石34aのコイル33aと反対側の面には、ヨーク35aがある。ヨーク35aは望ましくは軟磁性体であり、多くの磁束を透過させ,磁気回路のパーミアンスを下げている。その結果、42a,42bのように磁石34aからコイル33aに向かって比較的直線的に磁力線が生じている。
磁石吸着板として機能するヨーク35a,35bは本実施例1では可動鏡筒38に固定されるので、厚みを増すと可動部の重量も増加してしまう。そこで、ヨーク35a,35bの外形、飽和磁束密度および磁石の形状、表面磁束密度などを考慮して、ヨーク35a,35bが飽和磁束近傍となるように決めるのが好ましい。この状態でコイル33aに通電すると、図8(b)の紙面垂直方向で二つの長手部分33a1と33a2に反対方向に電流が流れる。したがって、フレミング左手の法則によって駆動力が発生する。図5(a)で説明したように可動鏡筒38は弾性支持されているので、弾性体37a,37b,37cの合力と駆動力がつりあう位置までベース板31と可動鏡筒38の間に相対運動が生じる。
図9を用いて、本実施例1において減衰手段46として用いる好適な粘弾性体の特性について説明する。
粘弾性体は一般的に図9に示したように、入力周波数によってその特性が変化する。よく知られているように、粘弾性体においては、周波数の増加は温度の低下と同様の物性を示す。つまり、図9に示したように転移領域51bを挟んで、低い周波数の領域51aでゴム物性を示し(以下、ゴム領域)、高い周波数の領域51cでガラス物性を示す(以下、ガラス領域)。ゴム領域では柔らかく、ガラス領域ではゴム領域に比べて100〜1000倍程度のヤング率になる。一般的に、ゴム領域とガラス領域の中間にある転移領域51bで複素弾性係数における実数部と虚数部の比であるtanδが大きくなる。tanδは粘弾性体の応力歪み線図のヒステリシスを示しており、大きな値の方が効率よく、運動エネルギーを熱エネルギーに変換できる。
そこで、本実施例1では、手振れに適用することを考慮して、制御周波数帯域を0.3Hz−100Hz程度に設定する。制御周波数帯域の好適な設定方法に関しては後述する。この制御周波数帯域が転移領域51bに含まれ、tanδが大きい材料が好ましい。近年上記のような材料も多く開発されており、一般的なブチルゴムに加え、シリコーンを主成分とするゲル、エラストマーなどの様々な商品が提供されている。一例としては、内外ゴム製ハネナイト、宮坂ゴム製ミヤフリーク、スリーボンド製TB3168等が好適な粘弾性材料と言える。
次に、駆動手段の設計について、図10を用いて説明する。
図10は、本実施例1における補正光学系40の駆動手段の1軸方向の運動をモデル化した図である。図10(a)は減衰手段が無い場合のモデルを示しており、図10(b)は減衰手段を介在させた場合のモデルを示している。図11は解析モデルの周波数応答線図である。
本実施例1の振れ補正ユニット9は、複数の弾性体37a,37b,37cを有しているが、特定の移動方向を考えた場合、複数の弾性体の合力を仮想的な一つのバネ、ダッシュポッドとして考えることができる。図10(a)に示したように1自由度のバネ質点系として表現できる。このときの力Fに対する変位xは、以下の数(1)で表される。
このとき、小さい摩擦しか受けない構成となっているため、一般的に粘性抵抗は小さく、cの値は小さな値になる。その結果、図10(a)では共振が強く見られる機構になる。つまり、小さな振幅の入力に対して適切に応答できるものの、外乱などの影響を受けやすい機構といえる。ここで、減衰比ζを次の数(2)で定義する。
この減衰比ζを用いてバネ質点系の共振峰の状態や過渡応答を把握することができる。
図10(b)は減衰手段を介在させた系であり、上記の弾性体37a,37b,37cと同様に、減衰手段46の合力を仮想的な一つのバネ、ダッシュポッドとみなしたモデル図である。k1,c1は弾性体によるバネ、ダッシュポッドを、k2,c2は減衰手段46によるバネ、ダッシュポッドを示している。図10(b)の力Fに対する変位xは、以下の数(3)で表される。
図9で説明したような好適な粘弾性体を減衰手段46として用いている場合、k2とc2の比であるtanδは制御周波数帯域で比較的大きな値を示している。好適な材料の中では0.5程度得られるものもある。このように大きなtanδが得られるので、k2が小さな値であっても十分な減衰を得ることができる。つまり、アクチュエータの感度を低下させずに減衰を適切に付与できる。このときの減衰比は明らかに次の数(4)で表される。
次に、図12を用いて、本実施例1に示す振れ補正ユニット9の好適な制御について説明する。図12はカメラシステム制御部25に含まれ、振れ補正ユニット9の制御信号を生成する制御用信号処理回路のブロック図である。
図12において、61は振れセンサ8の一例である角速度センサ、62は低域通過フィルタ(以下、LPF)、63はCPU、64はA/D変換器、65は積分器である。66は高域通過フィルタ(以下、HPF)、67は撮像装置1のズーム情報等の各種の情報を記録したメモリ、68は補正光学系12の位置を計算する補正光学系位置変換器、69は補正光学系位置制御器、70は駆動手段、9は振れ補正ユニットである。
図12に示すように、手振れ等の振れを検出する振れセンサ8としては、角速度センサが多くの場合用いられている。本実施例1においても角速度センサ61を用いた場合を例として、以下の説明を行う。
角速度センサ61は手振れ等の振れによる角速度を検出し、角速度に比例した信号を出力する。LPF62はノイズカットのために設けられており、角速度センサ61の高域ノイズをカットする。CPU63は振れ補正に必要な制御のための演算を行うものであり、内部にA/D変換器64、積分器65、HPF66、メモリ67、補正光学系位置変換器68、補正光学系位置制御器69を備えている。以下に、各部の働きについて説明する。
A/D変換器64は、LPF62を通過した信号を適切なサンプリング周期でデジタル変換する。サンプリング周期は制御周波数帯域の100倍程度あることが望ましい。例えば50Hzまでの制御を行う振れ補正ユニット9においては、5000Hz程度のサンプリング周期であればサンプリングの影響を無視できて好適である。積分器65は、角速度信号を積分し、手振れによる角度を求める。HPF66は、角速度センサ61の低周波ゆらぎを除去するフィルタである。フィルタ時定数は前記低周波ゆらぎと制御周波数帯域を考慮して適切に設定される。
また、HPF66はメモリ67からズーム情報などの撮影条件の情報を取得し、適切にフィルタの時定数を変更することも出来る。補正光学系位置変換器68は、メモリ67から得たズーム、フォーカスなどの情報から、入力された振れに対する振れ補正ユニット9に具備される補正光学系12の移動量を計算する。補正光学系位置制御器69は振れ補正ユニット9の周波数特性などを考慮して適切な位相補償などを行う。また、補正光学系位置制御器69はその結果を駆動手段70に出力し、振れ補正ユニット9の駆動制御を行う。
ここで、任意の位置センサによって補正光学系の位置検出を行い、いわゆるフィードバック制御を行うことでも任意の位置に移動可能である。
図13及び図14は、本発明の実施例1に係わる、上記減衰手段46の硬化に関する変形例を説明するための図である。
図13は減衰手段形成用穴部45近傍の拡大図であり、図14は図13のA部の詳細図である。44−1はダンパー抵抗棒、45は減衰手段形成用穴部、46は減衰手段である。この例では、減衰手段46は紫外線硬化型のシリコーンゲルを用いている。47は紫外線照射装置であり、光線トレース図を同時に示している。ダンパー抵抗棒44−1は紫外線透過性の材料でできている。紫外線透過性の材料としては、例えば住友化学製のスミペック010がある。
図14に示したように、ダンパー抵抗棒44−1の先端部周囲には屈折面(段差が形成されている部分)が形成されている。紫外線照射装置47から射出された紫外線は、ダンパー抵抗棒44−1の入射面から入射した後、ダンパー抵抗棒44−1の先端部周囲から外側に向かってそれぞれ屈折面で屈折され、進行方向を変化させられ、ダンパー抵抗棒44−1から射出される。ダンパー抵抗棒44−1の先端部(突起形状部)には射出平面が形成されていて(入射される光線に垂直な端面)、上記のように入射面から入射した光線はそのまま射出平面から射出される。
図14に示した光線トレースは、ダンパー抵抗棒44−1、減衰手段46の屈折率がそれぞれ1.5,1.4のときのものである。
このようにして、紫外線照射装置47から射出された紫外線は、紫外線透過性の材料で構成されたダンパー抵抗棒44−1を通り、逐次屈折されてシリコーンゲルに照射される。このとき、シリコーンゲル内を通る光線の距離は、シリコーンゲルの表面46cから減衰手段形成用穴部45の底面45cまでの距離、すなわちシリコーンゲルの高さより短くなるように設定してある。したがって、シリコーンゲルの表面46cから紫外線を照射するのに比べて、この例の方がシリコーンゲルの深部まで硬化させることが可能である。
ここで、シリコーンゲルの硬化に利用したダンパー抵抗棒44−1は、そのまま振れ補正ユニット9の減衰機構の一部として利用される。ダンパー抵抗棒44−1は、光軸4とは離れた位置に存在するので、撮影画像に影響することはないと思われるが、不要光の発生を抑えるために減衰手段46の硬化後にダンパー抵抗棒44−1の入射面には遮光板を貼ってもよい。
上記の実施例1によれば、可動鏡筒38に後端が固定され、先端が突出形状部をしたダンパー抵抗棒44,44−1と、ベース板31に設けられ、ダンパー抵抗棒44,44−1の突出形状部が挿入される減衰手段形成用穴部45とを有する。さらに、ダンパー抵抗棒44,44−1の突出形状部が減衰手段形成用穴部45に挿入された状態で、これらの間に介在し、可動鏡筒38のベース板31に対する相対移動に際して粘性抵抗を与える、ゲルより成る減衰手段46を有する。また、上記ダンパー抵抗棒44,44−1は、紫外線を透過させる部材で構成されるとともに、その突出形状部の側面に、上端側から入射される紫外線を減衰手段46に射出する反射面(図7参照)または屈折部である屈折面(図14参照)が設けられている。なお、減衰手段46は、光軸4に対して線対称または点対称に複数設けられる。
よって、減衰手段46を成すシリコーンゲルの深部まで硬化させることができ、振れ補正ユニットの周波数特性を手振れに適したものにすることである。また、減衰手段46を、電気的、複雑な機械的なものにより構成するのではなく、ゲルにより構成しているので、構成が簡単なものになる。また、振れ補正ユニットの減衰機構の一部を成すダンパー抵抗棒44,44−1を減衰手段46の硬化のための導光部材として利用することで、粘性抵抗を均一な状態にするができ、安定した防振性能を維持することが可能となる。また、上記のようにダンパー抵抗棒44,44−1を減衰手段46の硬化のための導光部材として利用しているので、従来のように可動鏡筒38やベース板31を透明部材にする必要がなく、ゴーストやフレアを生じる心配もない。
つまり、簡単な構成により、ゲル材より成る減衰手段の硬化を確実なものにし、安定した防振効果を得ることができる振れ補正装置や、該振れ補正装置を具備する撮像装置を提供することが可能となる。
図15から図19は、本発明の実施例2に係る撮像装置に具備される振れ補正ユニット9を示す図である。本実施例2における振れ補正ユニット9と実施例1の振れ補正ユニット9との違いは、減衰手段取付部の構成と、補正光学系の駆動手段としていわゆるムービングコイル式を用いたところである。
本実施例2に係る振れ補正ユニット9が組み込まれる撮像装置やその電気的構成は実施例1と同様であるので、ここでは割愛する。
図15は、振れ補正ユニット9を示す斜視図、図16は振れ補正ユニット9の被写体側から見た分解斜視図である。図15および図16において、131は固定部材であるところのベース板、138は可動部材であるところの可動鏡筒であり、これらは遮光部材で構成されている。132a,132b,132cはベース板131と可動鏡筒138に狭持された球である。140は可動鏡筒138に固定され、撮影時に像振れを補正するための補正光学系である。133a,133bはコイル、134a,134bは磁石、135a,135bはヨーク、137a,137b,137cは弾性体、144a,144bは紫外線を透過する材料より成るダンパー抵抗棒である。なお、図15から後述の図19においては、振れ補正ユニットの主要部分だけを示し、保持部材やリード線等は示していない。
図15および図16を用いて、ベース板131と可動鏡筒138の相対運動について説明する。
撮影時に像振れを補正するための補正光学系140は、ベース板131に対し、X方向およびY方向に移動可能な可動鏡筒138に固定されている。ベース板131と可動鏡筒138は球132a〜132cを狭持しており、球132a〜132cを介して相対運動を行う。このため、転がり摩擦という非常に小さな摩擦の影響しか受けずに相対運動を行うことができる。摩擦が小さいために非常に小さな入力に対しても適切に応答することが出来る。また、球132a〜132cによる案内面を適切な精度で製作することにより、ベース板131と可動鏡筒138が相対運動を行った場合でも、可動鏡筒138の傾きや光軸方向への不要な移動が発生することが無い。
図17(a)〜(d)は振れ補正ユニット9を示す構成図である。詳しくは、図17(a)は光軸4の方向からみた正面図、図17(b)は図17(a)におけるA−A断面での断面図、図17(c)は図17(a)におけるB−B断面での断面図、図17(d)は図17(a)におけるC−C断面での断面図である。
図17(a)に示したように、可動部材の支持方法は実施例1と同じ方法を取っている。つまり、可動鏡筒138はベース板131に対して複数の弾性体137a,137b,137cで弾性支持されている。本実施例2では、弾性体137a〜137cが光軸4から放射状に120度の間隔で3本配置されている。このような対称な配置とすることで、モーメントの発生による不要共振の励起を抑制することが可能となる。さらに、電源OFF時の補正光学系140の垂れ下がりを防止することが可能となり、高価なロック機構等が不要となり、コストダウンを図ることができる。また、複数の弾性体137a〜137cにより弾性支持されることで、レンズ中心を常に光軸中心に位置させることが可能となり、高価なレンズ位置検出器を使ったフィードバック制御が不要となり、コストダウンを図ることができる。
図17(b)に示したように、弾性体137a〜137cは光軸4の方向に適宜傾けて取り付けられており、ベース板131と可動鏡筒138の間に設けられた球132a〜132cを把持している。
図17(c)に示したように、可動鏡筒138には、コイル133a,133bが固定されており、ベース板131には磁石134a,134bおよびヨーク135a,135bが固定されている。そして、いわゆるムービングコイル型のアクチュエータ、つまり振れ補正ユニット9の駆動手段を構成している。
図17(a)において、可動鏡筒138の紙面右上側には、可動鏡筒138に取り付けられたコイル133a、ベース板131に取り付けられた磁石134aおよびヨーク135aにより構成される第1の電磁アクチュエータが配置されている。さらに、可動鏡筒138の紙面左上側には、可動鏡筒138に取り付けられた第2のコイル133b、ベース板131に取り付けられた磁石134bおよびヨーク135bにより構成される第2の電磁アクチュエータが配置されている。これら第1の電磁アクチュエータおよび第2の電磁アクチュエータが、振れ補正ユニット9の駆動手段を構成する。
次に、可動鏡筒138とベース板131の間に介在し、適切な粘性抵抗を得るための減衰手段の取り付けについて説明する。
図17(d)において、144a,144bは紫外線透過材より成るダンパー抵抗棒である。145a,415bは後述するようにダンパー抵抗棒144a,144bの先端側に形成された突起形状部が挿入される減衰手段形成用穴部、146a,146bは適切な粘性抵抗を得るためのゲルより成る減衰手段である。ダンパー抵抗棒144a,144bの後端は可動鏡筒138に設けられた円柱状の貫通穴138aに差し込まれ、接着等で固定される。ベース板131に設けられた円形の穴部である減衰手段形成用穴部145a,145bに対して、ダンパー抵抗棒144a,144bの先端側の突起形状部がほぼ同心円状になるように配置される。そして、その隙間にドーナツ状に減衰手段146a,146bが充填されている。減衰手段146a,146bは様々な粘弾性体を用いることが可能であるが、本実施例2においても、組付け性や耐環境性に優れた紫外線硬化型シリコーンゲルを用いている。減衰手段146a,146bとして用いる粘弾性体の望ましい特性については上記実施例1と同様である。
図17(d)に示すように、可動鏡筒138上に後端が固定されるダンパー抵抗棒144a,144bの先端側の突起形状部は、減衰手段形成用穴部145a,145b内に、ベース板131と光軸4の方向にオーバーラップするように挿入されている。
また、減衰手段146a,146bは光軸対称に複数設けられることが望ましい。本実施例2では、図17(d)に示すように、光軸4に対して対称な位置に2つ設けられている。光軸4に対称に設けることで、ベース板131と可動鏡筒138が相対運動を行ったときに、減衰手段146a,146bから受ける力によって可動鏡筒138にモーメントが発生することが無い。
ここで、本実施例2では、ベース板131上に設けられた減衰手段形成用穴部145a,145bと、可動鏡筒138上に後端が固定されたダンパー抵抗棒144a,144bとの間に、減衰手段146a,146bを介在させている。しかし、可動鏡筒138上に減衰手段形成用穴部を設け、ベース板131上にダンパー抵抗棒の後端を固定する構造とし、これらの間に減衰手段146a,146bを介在させても構わない。
次に、本実施例2における減衰手段146a,146bの硬化に関して説明する。
図18は、減衰手段形成用穴部145a,145b近傍の拡大図である。なお、以下、ダンパー抵抗棒144a,144b、減衰手段形成用穴部145a,145b、減衰手段146a,146bは、それぞれ同一部材であるので、上記のように、ダンパー抵抗棒144、減衰手段形成用穴部145、減衰手段146と記す。
本実施例2においても、減衰手段146は紫外線硬化型のシリコーンゲルを用いている。147は紫外線照射装置であり、光線トレース図を同時に示している。ダンパー抵抗棒144は紫外線透過性の材料で出来ている。ダンパー抵抗棒144はT字形の断面を回転してできた段付き円柱形状をしており、周辺部からも紫外線を透過させる構造になっている。紫外線透過性の材料としては、例えば住友化学製のスミペック010がある。
図18に示したように、紫外線照射装置147から射出された紫外線は、ダンパー抵抗棒144の後端面である入射面から入射する。その後、減衰手段146を成すシリコーンゲルの表面から入射する光線と、ダンパー抵抗棒144の先端部(突起形状部)から射出して、シリコーンゲルに入射する光線に分かれる。シリコーンゲルの表面から入射した光線は、そのままシリコーンゲルの深部に向う。また、ダンパー抵抗棒144の先端部から射出される光線は、シリコーンゲルに照射される。ここで、ダンパー抵抗棒144の先端は鏡面でも拡散面(拡散部)でも構わない。本実施例2では拡散面になっており、紫外線は拡散光となり、シリコーンゲル内を広がりを持って進む。
図18に示した光線トレースは、ダンパー抵抗棒144、減衰手段146の屈折率がそれぞれ1.5、1.4のときのものである。
このようにして、紫外線照射装置147から射出された紫外線は、紫外線透過性の材料で構成されたダンパー抵抗棒144の外周部と中央部を通り、それぞれシリコーンゲルに照射される。このとき、ダンパー抵抗棒144の外周部を通った光線はシリコーンゲルの表面から深部近くを硬化させる。また、ダンパー抵抗棒144の中央部を通った光線は、ダンパー抵抗棒144の先端部で拡散光となり、シリコーンゲルの深部を硬化させる。したがって、減衰手段146であるシリコーンゲルを満遍なく硬化させることが可能である。
ここで、シリコーンゲルの硬化に利用したダンパー抵抗棒144は、そのまま振れ補正ユニットの減衰機構の一部として利用される。ダンパー抵抗棒144は、撮影光軸とは離れた位置に存在するので、撮影画像に影響することはないと思われるが、不要光の発生を抑えるために減衰手段146の硬化後にダンパー抵抗棒144の入射面には遮光板を貼ってもよい。
図19を用いて、振れ補正ユニット9の駆動手段について説明する。
図19は駆動手段の模式図であり、図19(a)は磁石134a(134b)とコイル133a(133b)のみを光軸4の方向から見た図、図19(b)は磁石134a(134b)を中心付近で切断した時の断面図を示している。図19において、143は着磁境界を示している。
図19(b)において、142a,142b,142cは、磁石134a(134b)、コイル133a(133b)近傍の代表的な磁力線を模式的に表している。図19に示したように、着磁境界143を挟んで磁石134aは2つの領域134a1,134a2に分けて着磁されている。このとき、着磁境界143は駆動手段で発生する力の方向と直交する方向であり、図19(a)の上下方向に着磁境界が存在し、左右方向に駆動される。コイル133aは光軸方向から見たときに小判型をしており、2つの長手部分133a1,133a2が2つの磁石134a1,134a2と対向するように配置されている。
また、図19(b)に示したように、磁石134aのコイル133aと反対側の面には、固定ヨーク135aがある。固定ヨーク135aは望ましくは軟磁性体であり、図19(b)のように多くの磁束を透過させ磁気回路のパーミアンスを下げている。その結果、142a,142bの様に磁石134aからコイル133aに向かって比較的直線的に磁力線が生じている。固定ヨーク135aはベース板131に固定されるので、重量を気にすることなく磁束が飽和しないように適切な厚みとすることができる。この状態でコイル133aに通電すると、図19(b)の紙面垂直方向で133a1,133a2に反対方向に電流が流れる。フレミング左手の法則によって駆動力が発生する。図17(a)で説明したように可動鏡筒138は弾性支持されているので、弾性体137a〜137cの合力と前記駆動力がつりあう位置までベース板131と可動鏡筒138の間に相対運動が生じる。
ここで、本実施例2に好適な粘弾性体(減衰手段146)は、上記実施例1と同様のものである。また、本実施例2に示す振れ補正ユニット9の制御方法についても、上記実施例1と同様なので割愛する。
また、任意のレンズ位置センサによって位置検出を行いいわゆるフィードバック制御を行うことでも任意の位置に移動可能である。
図20は、本発明の実施例2に係る減衰手段146の硬化に関しての変形例1を説明するための図である。
図20は減衰手段形成用穴部近傍の拡大図であり、144−1はダンパー抵抗棒、145は減衰手段形成用穴部、146は減衰手段である。
この例においても、減衰手段146は紫外線硬化型のシリコーンゲルを用いている。147は紫外線照射装置であり、光線トレース図を同時に示している。ダンパー抵抗棒144−1は紫外線透過性の材料で出来ている。ダンパー抵抗棒144−1はT字形の断面を回転してできた段付き円柱形状をしており、ダンパー抵抗棒144の周辺部からも紫外線が透過する構造になっている。紫外線透過性の材料としては、例えば住友化学製のスミペック010がある。
図20に示したように、紫外線照射装置147から射出された紫外線は、ダンパー抵抗棒144−1の後端面である入射面から入射する。その後、減衰手段146であるシリコーンゲルの表面から入射する光線と、ダンパー抵抗棒144−1の先端部から射出されて、シリコーンゲルに入射する光線に分かれる。シリコーンゲルの表面から入射した光線は、そのままシリコーンゲルの深部に向う。また、ダンパー抵抗棒144−1の先端部から射出される光線は、ダンパー抵抗棒144−1の先端部の凹部斜面に全反射面が構成してあるので、全反射面で反射されて進行方向を変化させられ、シリコーンゲルに照射される。
図20に示した光線トレースは、ダンパー抵抗棒144−1、減衰手段146の屈折率がそれぞれ1.5,1.4のときのものである。
このようにして、紫外線照射装置147から射出された紫外線は、紫外線透過性の材料で構成されたダンパー抵抗棒144−1の外周部と中央部を通り、それぞれシリコーンゲルに照射される。このとき、ダンパー抵抗棒144−1の外周部を通った光線はシリコーンゲルの表面から深部近くを硬化させる。また、ダンパー抵抗棒144−1の中央部を通った光線は、ダンパー抵抗棒144−1の先端部で進行方向を変化させられ、シリコーンゲルの深部を硬化させる。したがって、減衰手段146であるシリコーンゲルを満遍なく硬化させることが可能である。
ここで、シリコーンゲルの硬化に利用したダンパー抵抗棒144−1は、そのまま振れ補正ユニット190の減衰機構の一部として利用される。ダンパー抵抗棒144−1は、撮影光軸とは離れた位置に存在するので、撮影画像に影響することはないと思われるが、不要光の発生を抑えるために減衰手段146の硬化後にダンパー抵抗棒144−1の入射面には遮光板を貼ってもよい。
図21は、本発明の実施例2に係る減衰手段146の硬化に関しての変形例2を説明するための図である。
図21は減衰手段形成用穴部近傍の拡大図であり、144−2はダンパー抵抗棒、145は減衰手段形成用穴部、146は減衰手段である。
この例においても、減衰手段146は紫外線硬化型のシリコーンゲルを用いている。147は紫外線照射装置であり、光線トレース図を同時に示している。ダンパー抵抗棒144−2は紫外線透過性の材料でできている。ダンパー抵抗棒144−2はT字形の断面を回転してできた段付き円錐形状をしており、ダンパー抵抗棒144−2の周辺部からも紫外線が透過する構造になっている。紫外線透過性の材料としては、例えば住友化学製のスミペック010がある。
図21に示したように、紫外線照射装置147から射出された紫外線は、ダンパー抵抗棒144−2の後端面である入射面から入射する。その後、シリコーンゲルの表面から入射される光線と、ダンパー抵抗棒144−2の側面から射出されて、シリコーンゲルに入射する光線に分かれる。シリコーンゲルの表面から入射した光線は、そのままシリコーンゲルの深部に向う。ダンパー抵抗棒144−2の先端部(突起形状部)が先細り形状(テーパー状)となっている。このように先細り形状にすると、ダンパー抵抗棒144−2の後端面である入射面から入射される光線は、この先端部のテーパー面に浅い角度で入射することになる。よって、ダンパー抵抗棒144−2の周辺から順番に全反射され、進行方向を変化させられ、側面から射出されて、シリコーンゲルに照射される。
図21に示した光線トレースは、ダンパー抵抗棒144−2、減衰手段146の屈折率がそれぞれ1.5,1.4のときのものである。
このようにして、紫外線照射装置147から射出された紫外線は、紫外線透過性の材料で構成されたダンパー抵抗棒144−2の外周部と中央部を通り、それぞれシリコーンゲルに照射される。このとき、ダンパー抵抗棒144−2の外周部を通った光線はシリコーンゲルの表面から深部近くを硬化させる。また、ダンパー抵抗棒144−2の中央部を通った光線は、ダンパー抵抗棒144−2の側面で順次進行方向を変化させられ、シリコーンゲルの深部を硬化させる。したがって、減衰手段146であるシリコーンゲルを満遍なく硬化させることが可能である。
ここで、シリコーンゲルの硬化に利用したダンパー抵抗棒144−2は、そのまま振れ補正ユニット190の減衰機構の一部として利用される。ダンパー抵抗棒144−2は、撮影光軸とは離れた位置に存在するので、撮影画像に影響することはないと思われるが、不要光の発生を抑えるために減衰手段146の硬化後にダンパー抵抗棒144−2の入射面には遮光板を貼ってもよい。
図22は、本発明の実施例2に係る減衰手段146の硬化に関しての変形例3を説明するための図である。
図22は減衰手段形成用穴部近傍の拡大図であり、144−3はダンパー抵抗棒、145は減衰手段形成用穴部、146は減衰手段である。
この例においても、減衰手段146は紫外線硬化型のシリコーンゲルを用いている。147は紫外線照射装置であり、光線トレース図を同時に示している。ダンパー抵抗棒144−3は紫外線透過性の材料で出来ている。ダンパー抵抗棒144−3はT字形の断面を回転してできた段付き円柱形状をしており、ダンパー抵抗棒144−3の周辺からも紫外線が透過する構造になっている。また、ダンパー抵抗棒144−3の中央部には空気層144aが形成されおり、その先端部には屈折面が形成されている。紫外線透過性の材料としては、例えば住友化学製のスミペック010がある。
図22に示したように、紫外線照射装置147から射出された紫外線は、ダンパー抵抗棒144−3の後端面である入射面から入射する。その後、シリコーンゲルの表面から入射される光線と、ダンパー抵抗棒144−3の先端部(突起形状部)から射出されて、シリコーンゲルに入射する光線に分かれる。シリコーンゲルの表面から入射した光線は、そのままシリコーンゲルの深部に向う。また、ダンパー抵抗棒144−3の先端部から射出される光線は、ダンパー抵抗棒144−3の中央部にある空気層144aを通り、先端部のテーパー面である屈折面で屈折されて進行方向を変化させられ、シリコーンゲルに照射される。
図22に示した光線トレースは、ダンパー抵抗棒144−3、減衰手段146の屈折率がそれぞれ1.5,1.4のときのものである。
このようにして、紫外線照射装置147から射出された紫外線は、紫外線透過性の材料で構成されたダンパー抵抗棒144−3の外周部と中央部を通り、それぞれシリコーンゲルに照射される。このとき、ダンパー抵抗棒144−3の外周部を通った光線はシリコーンゲルの表面から深部近くを硬化させる。また、ダンパー抵抗棒144−3の中央部を通った光線は、ダンパー抵抗棒144の先端部で方向を変化させられ、シリコーンゲルの深部を硬化させる。したがって、減衰手段146であるシリコーンゲルを満遍なく硬化させることが可能である。
ここで、シリコーンゲルの硬化に利用したダンパー抵抗棒144−3は、そのまま振れ補正ユニット190の減衰機構の一部として利用される。ダンパー抵抗棒144−3は、撮影光軸とは離れた位置に存在するので、撮影画像に影響することはないと思われるが、不要光の発生を抑えるために減衰手段146の硬化後にダンパー抵抗棒144−3の入射面には遮光板を貼ってもよい。
上記の実施例2によれば、可動鏡筒138に後端が固定され、先端が突出形状部をしたダンパー抵抗棒144(144−1,144−2,144−3)を有する。さらに、ベース板131に設けられ、ダンパー抵抗棒144の突出形状部が挿入される減衰手段形成用穴部145を有する。さらに、ダンパー抵抗棒144の突出形状部が減衰手段形成用穴部145に挿入された状態で、これらの間に介在し、可動鏡筒138のベース板131に対する相対移動に際して粘性抵抗を与える、ゲルより成る減衰手段146を有する。また、上記ダンパー抵抗棒144は、紫外線を透過させる部材で構成されるとともに、その突出形状部の側面に、後端側から入射される紫外線を減衰手段146に射出する拡散面等が設けられている。
よって、減衰手段146を成すシリコーンゲルの深部まで硬化させることができ、振れ補正ユニットの周波数特性を手振れに適したものにすることである。また、減衰手段146を、電気的、複雑な機械的なものにより構成するのではなく、ゲルにより構成しているので、構成が簡単なものになる。また、振れ補正ユニットの減衰機構の一部を成すダンパー抵抗棒144を減衰手段146の硬化のための導光部材として利用することで、粘性抵抗を均一な状態にするができ、安定した防振性能を維持することが可能となる。また、上記のようにダンパー抵抗棒144を減衰手段146の硬化のための導光部材として利用しているので、従来のように可動鏡筒138やベース板131を透明部材にする必要がなく、ゴーストやフレアを生じる心配もない。
つまり、簡単な構成により、ゲル材より成る減衰手段の硬化を確実なものにし、安定した防振効果を得ることができる振れ補正装置や、該振れ補正装置を具備する撮像装置を提供することが可能となる。
図23から図28は本発明の実施例3に係る振れ補正機能を有する撮像装置に関する図である。上記実施例1の撮像装置との違いは、振れ補正ユニットの構成要素である減衰手段取付部の構成と、補正光学系の代わりに撮像素子を補正手段として画像の振れ補正を行う点である。
図23は、振れ補正ユニットを具備するカメラの光学配置図である。図23において、201は撮像装置、202は撮像レンズ、203はレンズ駆動制御部、204は撮像レンズ202の光軸、205はレンズ鏡筒である。206は撮像素子、207はメモリ、208は振れセンサ、209は撮像素子206を含む振れ補正ユニット290を光軸204と直交する平面内で移動させる駆動手段である。210は電源、211はレリーズ釦、213はいわゆるクイックリターンミラー、214はファインダ光学系である。
図24は、撮像装置201の電気的構成を示す図である。撮像装置201は、撮像系、画像処理系、記録再生系、制御系を有する。撮像系は、撮像レンズ202、撮像素子206を含み、画像処理系は、A/D変換器220、画像処理部221を含む。また、記録再生系は、表示部222、記録処理部223、メモリ224を含み、制御系は、カメラシステム制御部225、AFセンサ226、AEセンサ227、振れセンサ208、操作検出部229、およびレンズシステム制御部230を含む。
本実施例3に係る撮像装置やその電気的構成は上記実施例1とほぼ同様であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
以下、図25から図28を用いて、本実施例3に係る振れ補正ユニット290の要部について説明する。
図25は振れ補正ユニット290の斜視図、図26は振れ補正ユニット290の被写体側から見た分解斜視図である。図25および図26において、231は固定部材であるところのベース板、238は可動部材であるところの可動枠であり、これらは遮光部材で構成されている。232a,232b,232cはベース板231と可動枠238に狭持された球である。240は可動枠238に固定され、撮影時に画像振れを補正するための撮像素子である。233a,233bはコイル、234a,234bは磁石、235はヨーク(磁石吸着板)である。236a,236bはヨーク固定ネジを、237a,237b,237cは弾性体、244a,244bはダンパー抵抗棒である。なお、図25から後述の図28までにおいては、振れ補正ユニット290の主要部分だけを示し、保持部材やリード線等は示していない。
図25および図26を用いてベース板231と可動枠238の相対運動について説明する。
撮影時に像振れを補正するための撮像素子240は、ベース板231に対し、X方向およびY方向に移動可能な可動枠238に固定されている。ベース板231と可動枠238は球232a〜232cを狭持しており、球232a〜232cを介して相対運動を行う。このため、転がり摩擦という非常に小さな摩擦の影響しか受けずに相対運動を行うことができる。摩擦が小さいために非常に小さな入力に対しても適切に応答することができる。また、球232a〜232cによる案内面を適切な精度で製作することにより、ベース板231と可動枠238が相対運動を行った場合でも可動枠238の傾きや光軸方向への不要な移動が発生することが無い。
図27(a)〜(c)は振れ補正ユニット290を示す構成図である。詳しくは、図27(a)は光軸204の方向からみた正面図、図27(b)は図27(a)におけるA−A断面での断面図、図27(c)は図26(a)におけるB−B断面、図27(d)は図26(a)におけるC−C断面での断面図である。
図27(a)に示したように、可動部材である可動枠228の支持方法は上記実施例1と同じ方法を取っている。つまり、可動枠238はベース板231に対して複数の弾性体237a,237b,237cで弾性支持されている。本実施例3では、弾性体237a〜237cが光軸204から放射状に120度の間隔で3本配置されている。このような対称な配置とすることで、モーメントの発生による不要共振の励起を抑制することが可能となる。さらに、電源OFF時の撮像素子240の垂れ下がりを防止することが可能となり、高価なロック機構等が不要となり、コストダウンを図ることができる。また、複数の弾性体237a〜237cにより弾性支持されることで、撮像素子240の中心を常に光軸中心に位置させることが可能となり、高価な撮像素子位置検出器を使ったフィードバック制御が不要となり、コストダウンを図ることができる。
図27(b)に示したように、弾性体237a〜237cは光軸204の方向に適宜傾けて取り付けられており、ベース板231と可動枠238の間に設けられた球232a(232b,232cは不図示)を把持している。
図27(c)に示したように、ベース板231にはコイル233a,233b(不図示)が固定されており、可動枠238には磁石234a(234bは不図示)およびヨーク235が固定されている。そして、いわゆるムービングマグネット型のアクチュエータ、つまり駆動手段を構成している。
図27(a)において、可動枠238の紙面右上側には、ベース板231に取り付けられたコイル233a、可動枠238に取り付けられた磁石234aおよびヨーク235により構成される第1の電磁アクチュエータが配置されている。さらに、可動枠238の紙面左上側には、ベース板231に取り付けられたコイル233b、可動枠238に取り付けられた磁石234bおよびヨーク235により構成される第2の電磁アクチュエータが配置されている。これら第1の電磁アクチュエータおよび第2の電磁アクチュエータが、駆動手段を構成する。
次に、可動枠238とベース板231の間に介在し、適切な粘性抵抗を得るための減衰手段の取り付けについて説明する。
図27(d)において、ダンパー抵抗棒244a,244bの後端は可動枠238に設けられた円柱状の貫通穴238aに差し込まれ、接着等で固定される。ベース板231に設けられた円形の穴部である減衰手段形成用穴部245a,245bに対して、ダンパー抵抗棒244a,244bの先端側の突起形状部がほぼ同心円状になるように配置される。そして、その隙間にドーナツ状に減衰手段246a,246bが充填されている。減衰手段246a,246bは様々な粘弾性体を用いることが可能であるが、本実施例3においても、組付け性や耐環境性に優れた紫外線硬化型シリコーンゲルを用いている。減衰手段246a,246bとして用いる粘弾性体の望ましい特性については上記実施例1と同様である。
図27(d)に示すように、可動枠238上に後端が固定されるダンパー抵抗棒244a,244bの先端側の突起形状部は、減衰手段形成用穴部245a,245b内に、ベース板231と光軸204の方向にオーバーラップするように挿入されている。
また、減衰手段246a,246bは光軸対称に複数設けられることが望ましい。本実施例3では、図27(d)に示すように、光軸204に対して対称な位置に2つ設けられている。光軸204に対称に設けることで、ベース板231と可動枠238が相対運動を行ったときに、減衰手段246a,246bから受ける力によって可動枠238にモーメントが発生することが無い。
ここで、本実施例3では、ベース板231上に設けられた減衰手段形成用穴部245a,245bと、可動枠238上に後端が固定されたダンパー抵抗棒244a,244bとの間に、減衰手段246a,246bを介在させている。しかし、可動枠238上に減衰手段形成用穴部を設け、ベース板231上にダンパー抵抗棒の後端を固定する構造とし、これらの間に減衰手段246a,246bを介在させても構わない。
次に、本実施例3に係る減衰手段246a,246bの硬化に関して説明する。
図28は減衰手段形成用穴部近傍の拡大図である。なお、以下、ダンパー抵抗棒244a,44b、減衰手段形成用穴部245a,45b、減衰手段246a,46bは、それぞれ同一部材であるので、ダンパー抵抗棒244、減衰手段形成用穴部245、減衰手段246と記す。本実施例3においても、減衰手段246は紫外線硬化型のシリコーンゲルを用いている。247は紫外線照射装置であり、光線トレース図を同時に示している。ダンパー抵抗棒244は紫外線透過性の材料でできている。また、ダンパー抵抗棒244の中央部には空気層244aが形成されている。紫外線透過性の材料としては、例えば住友化学製のスミペック010がある。受光窓248はPETフィルム等の紫外線を透過する薄い透明フィルムで構成されており、減衰手段形成用穴部245の底部を塞ぐ働きと紫外線照射装置247からの紫外線をシリコーンゲルに導く働きを持つ。
図28に示したように、紫外線照射装置247から射出された紫外線は、受光窓248を通ってシリコーンゲルの深部に入射する。その後、紫外線はシリコーンゲルの中を進む光線と、ダンパー抵抗棒244の中央部の先端から入射し、ダンパー抵抗棒244の側面から射出され、シリコーンゲルに入射する光線とに分かれる。シリコーンゲルの中を進む光線は、そのままシリコーンゲルの表面に向う。また、ダンパー抵抗棒244の中央部には空気層244aが形成されており、先端にテーパー面を設けることで全反射面が形成してある。したがって、ダンパー抵抗棒244の中央部を通った光線は、全反射面で反射され、進行方向を変化させられ、シリコーンゲルの表面近くに照射される。
図28に示した光線トレースは、ダンパー抵抗棒244、減衰手段246の屈折率がそれぞれ1.5,1.4のときのものである。
このようにして、紫外線照射装置247から射出された紫外線は、受光窓248を通り、シリコーンゲルに照射される。このとき、ダンパー抵抗棒244に入射しなかった光線はシリコーンゲルの深部から表面近くを硬化させる。また、ダンパー抵抗棒244の中央部を通った光線は、ダンパー抵抗棒244の全反射面で方向を変化させられ、シリコーンゲルの表面近くを硬化させる。したがって、減衰手段246であるシリコーンゲルを満遍なく硬化させることが可能である。
ここで、シリコーンゲルの硬化に利用したダンパー抵抗棒244は、そのまま振れ補正ユニット290の減衰機構の一部として利用される。ダンパー抵抗棒244は、光軸204とは離れた位置に存在するので、撮影画像に影響することはないと思われるが、不要光の発生を抑えるために減衰手段246の硬化後にダンパー抵抗棒244の入射面には遮光板を貼ってもよい。
なお、振れ補正ユニット290の駆動手段209は、上記実施例1における駆動手段と同様なので、その説明を省略する。また、本実施例3に好適な減衰手段246を成す粘弾性体は、実施例1と同様のものである。また、本実施例3に示す振れ補正ユニット290の制御方法についても、実施例1と同様なので割愛する。また、任意の撮像素子位置センサによって位置検出を行い、いわゆるフィードバック制御を行うことでも任意の位置に移動可能である。
図29は、本発明の実施例3に係る減衰手段246の硬化に関しての変形例1について説明するための図である。
図29は減衰手段形成用穴部近傍の拡大図である。244−1はダンパー抵抗棒、245は減衰手段形成用穴部、246は減衰手段、248は受光窓である。この例においても、減衰手段244−1は紫外線硬化型のシリコーンゲルを用いている。247a,247bは紫外線照射装置であり、紙面上下方向から、減衰手段244−1を照射する。図29には光線トレース図を同時に示している。ダンパー抵抗棒244−1は紫外線透過性の材料でできている。ダンパー抵抗棒244−1はT字形の断面を回転してできた段付き円柱形状をしており、ダンパー抵抗棒244−1の周辺からも紫外線が透過する構造になっている。紫外線透過性の材料としては、例えば住友化学製のスミペック010がある。受光窓248はPETフィルム等の紫外線を透過する薄い透明フィルムで構成される。
図29に示したように、紫外線照射装置247aから射出され、ダンパー抵抗棒244−1の後端面である入射面から入射した紫外線は、ダンパー抵抗棒244−1の周辺部から入射して、シリコーンゲル表面に照射される。シリコーンゲルの表面から入射した光線は、そのままシリコーンゲルの中を深部に向かって進む。また、紫外線照射装置247bから射出され、受光窓248を通った光線は、シリコーンゲルの深部に入射する。シリコーンゲルの深部に入射した光線は、そのままシリコーンゲルの中を表面に向かって進む。
図29に示した光線トレースは、ダンパー抵抗棒244−1、減衰手段246の屈折率がそれぞれ1.5,1.4のときのものである。
このようにして、紫外線照射装置247aから射出された紫外線は、ダンパー抵抗棒244−1の入射面から入射し、シリコーンゲルの表面から深部近くを硬化させる。また、紫外線照射装置247bから射出された紫外線は、受光窓248から入射し、シリコーンゲルの深部から表面近くを硬化させる。したがって、減衰手段246であるシリコーンゲルを満遍なく硬化させることが可能である。
ここで、シリコーンゲルの硬化に利用したダンパー抵抗棒244−1は、そのまま振れ補正ユニット290の減衰機構の一部として利用される。ダンパー抵抗棒244−1は、撮影光軸とは離れた位置に存在するので、撮影画像に影響することはないと思われるが、不要光の発生を抑えるために減衰手段246の硬化後にダンパー抵抗棒244−1の入射面には遮光板を貼ってもよい。
上記の実施例3によれば、可動枠238に後端が固定され、先端が突出形状部をしたダンパー抵抗棒244,244−1、ベース板231に設けられ、ダンパー抵抗棒244,244−1の突出形状部が挿入される減衰手段形成用穴部245を有する。さらに、ダンパー抵抗棒244,244−1の突出形状部が減衰手段形成用穴部245に挿入された状態で、これらの間に介在し、可動枠238のベース板231に対する相対移動に際して粘性抵抗を与える、ゲルより成る減衰手段246を有する。また、上記ダンパー抵抗棒244,244−1は、紫外線を透過させる部材で構成される。
よって、減衰手段246を成すシリコーンゲルの深部まで硬化させることができ、振れ補正ユニットの周波数特性を手振れに適したものにすることである。また、減衰手段246を、電気的、複雑な機械的なものにより構成するのではなく、ゲルにより構成しているので、構成が簡単なものになる。また、振れ補正ユニットの減衰機構の一部を成すダンパー抵抗棒244,244−1を減衰手段246の硬化のための導光部材として利用することで、粘性抵抗を均一な状態にするができ、安定した防振性能を維持することが可能となる。また、上記のようにダンパー抵抗棒244,244−1を減衰手段246の硬化のための導光部材として利用しているので、従来のように可動枠238やベース板231を透明部材にする必要がなく、ゴーストやフレアを生じる心配もない。
つまり、簡単な構成により、ゲル材より成る減衰手段の硬化を確実なものにし、安定した防振効果を得ることができる振れ補正装置や、該振れ補正装置を具備する撮像装置を提供することが可能となる。
図30から図33は本発明の実施例4に係る撮像装置に具備される振れ補正ユニットを示す図である。上記実施例1の撮像装置との違いは、振れ補正ユニットの構成要素である減衰手段取付部の構成である。撮像装置やその電気的構成は実施例1と同様であるので、ここでは割愛する。
図30から図33を用いて、本実施例4に係わる振れ補正ユニット390の要部について説明する。
図30は振れ補正ユニット390の斜視図、図31は振れ補正ユニット390の被写体側から見た分解斜視図である。図30および図31において、331は固定部材であるところのベース板、338は可動部材であるところの可動鏡筒であり、これらは遮光部材で構成されている。332a,332b,332cはベース板331と可動鏡筒338に狭持された球である。340は可動鏡筒338に固定され、撮影時に画像振れを補正するための補正光学系である。333a,333bはコイル、334a,334bは磁石、335a,335bはヨーク、337a,337b,337cは弾性体である。344a,344bはダンパー抵抗棒、345a,345bはダンパー保持缶である。なお、図30から図33では、振れ補正ユニット390の主要部分だけを示し、保持部材やリード線等は示していない。
図30および図31を用いて、ベース板331と可動鏡筒338の相対運動について説明する。
撮影時に像振れを補正するための補正光学系340は、ベース板331に対し、X方向およびY方向に移動可能な可動鏡筒338に固定されている。ベース板331と可動鏡筒338は球332a〜332cを狭持しており、球332a〜332cを介して相対運動を行う。このため、転がり摩擦という非常に小さな摩擦の影響しか受けずに相対運動を行うことができる。摩擦が小さいために非常に小さな入力に対しても適切に応答することが出来る。また、球332a〜332cによる案内面を適切な精度で製作することにより、ベース板331と可動鏡筒338が相対運動を行った場合でも、可動鏡筒338の傾きや光軸方向への不要な移動が発生することが無い。
図32は振れ補正ユニット390を示す構成図である。詳しくは、図32(a)は光軸4の方向からみた正面図、図32(b)は図32(a)におけるA−A断面での断面図、図32(c)は図32(a)におけるB−B断面での断面図で、図32(d)は図32(a)におけるC−C断面での断面図である。
図32(a)に示したように、可動部材である可動鏡筒338の支持方法は、上記実施例1と同じ方法を取っている。つまり、可動鏡筒338はベース板331に対して複数の弾性体337a,337b,337cで弾性支持されている。本実施例4では、弾性体337a〜337cが光軸304から放射状に120度の間隔で3本配置されている。このような対称な配置とすることで、モーメントの発生による不要共振の励起を抑制することが可能となる。さらに、電源OFF時の補正光学系340の垂れ下がりを防止することが可能となり、高価なロック機構等が不要となり、コストダウンを図ることができる。また、複数の弾性体337a〜337cにより弾性支持されることで、補正光学系340のレンズ中心を常に光軸中心に位置させることが可能となり、高価なレンズ位置検出器を使ったフィードバック制御が不要となり、コストダウンを図ることができる。
図32(b)に示したように、弾性体337a〜337cは光軸方向に適宜傾けて取り付けられており、ベース板331と可動鏡筒338の間に設けられた球332a〜332c332を把持している。
図32(c)に示したように、可動鏡筒338にはコイル333a,333bが固定されており、ベース板331には磁石334a,334bおよびヨーク335a,335bが固定されている。そして、いわゆるムービングコイル型のアクチュエータ、つまり振れ補正ユニット390の駆動手段を構成する。
図32(a)において、可動鏡筒338の紙面右上側には、可動鏡筒338に取り付けられたコイル333a、ベース板331に取り付けられた磁石334aおよびヨーク335aにより構成される第1の電磁アクチュエータが配置されている。さらに、可動鏡筒338の紙面左上側には、可動鏡筒338に取り付けられたコイル333b、ベース板331に取り付けられた磁石334bおよびヨーク335bにより構成される第2の電磁アクチュエータが配置されている。これら第1の電磁アクチュエータおよび第2の電磁アクチュエータが、振れ補正ユニット390の駆動手段を構成している。
次に、可動鏡筒338とベース板231の間に介在し、適切な粘性抵抗を得るための減衰手段の取り付けについて説明する。
図32(d)において、ダンパー抵抗棒344a,344bの後端は可動鏡筒338に設けられた円柱状の貫通穴238aに差し込まれ、接着等で固定される。ベース板331に設けられた円形の穴部に接着される、減衰手段形成用開口容器に相当するダンパー保持缶345a,345bに対して、可動鏡筒338に設けられたダンパー抵抗棒344a,344bの先端側の突起形状部がほぼ同心円状になるように配置される。そして、その隙間にドーナツ状に減衰手段346a,346bが充填されている。減衰手段346a,346bは様々な粘弾性体を用いることが可能であるが、本実施例4においても、組付け性や耐環境性に優れた紫外線硬化型シリコーンゲルを用いている。減衰手段246a,246bとして用いる粘弾性体の望ましい特性については上記実施例1と同様である。
図32(d)に示すように、可動鏡筒338上に後端が固定されるダンパー抵抗棒344a,344bの先端側の突起形状部は、ダンパー保持缶345a,345b内に、ベース板331と光軸304の方向にオーバーラップするように挿入されている。
また、減衰手段346a,346bは光軸対称に複数設けられることが望ましい。本実施例4では、図32(d)に示すように、光軸304に対して対称な位置に2つ設けられている。光軸に対称に設けることで、ベース板331と可動鏡筒338が相対運動を行ったときに、減衰手段346a,346bから受ける力によって可動鏡筒338にモーメントが発生することが無い。
ここで、本実施例4では、ベース板331上に設けられたダンパー保持缶345a,345bと、可動鏡筒338上に後端が固定されたダンパー抵抗棒344a,344bとの間に、減衰手段346a,346bを介在させている。しかし、可動鏡筒338上にダンパー保持缶を設け、ベース板331上にダンパー抵抗棒の後端を固定する構造とし、これらの間に減衰手段346a,346bを介在させても構わない。
次に、本実施例4における減衰手段346a,346bの硬化に関して説明する。
図33は、ダンパー保持缶345a,345b近傍の拡大図である。なお、以下、ダンパー抵抗棒344a,344b、ダンパー保持缶345a,345b、減衰手段346a,346bは、それぞれ同一部材であるので、ダンパー抵抗棒344、ダンパー保持缶345、減衰手段346と記す。本実施例4においても、減衰手段346は紫外線硬化型のシリコーンゲルを用いている。347は紫外線照射装置であり、光線トレース図を同時に示している。ダンパー抵抗棒344およびダンパー保持缶345は紫外線透過性の材料でできている。ダンパー抵抗棒344はT字形の断面を回転してできた段付き円柱形状をしており、ダンパー抵抗棒344の周辺部からも紫外線が透過する構造になっている。また、ダンパー保持缶345はU字形の断面を回転してできた形状をしており、ダンパー抵抗棒344を通った光線がダンパー保持缶345の側壁部分を透過する構造になっている。紫外線透過性の材料としては、例えば住友化学製のスミペック010がある。
図33に示したように、紫外線照射装置347から射出された紫外線は、ダンパー抵抗棒344の後端面である入射面から入射する。その後、シリコーンゲルの表面から入射する光線と、ダンパー抵抗棒344の中央部の先端から射出されてシリコーンゲルに照射される光線に分かれる。さらには、ダンパー保持缶345の側壁部分に入射した後、ダンパー保持缶345の全反射面345cで反射して、シリコーンゲルに照射される光線に分かれる。シリコーンゲルの表面から入射した光線は、そのままシリコーンゲルの深部に向う。また、ダンパー抵抗棒344の中央部の先端から射出する光線は、ダンパー抵抗棒144の先端からシリコーンゲルの深部に照射される。また、ダンパー保持缶345の全反射面345cで反射した光線は、シリコーンゲルの深部に照射される。
図33に示した光線トレースは、ダンパー抵抗棒344、減衰手段346の屈折率がそれぞれ1.5,1.4のときのものである。
このようにして、紫外線照射装置347から射出された紫外線は、紫外線透過性の材料で構成されたダンパー抵抗棒344の外周部と中央部を通り、それぞれシリコーンゲルに照射される。このとき、ダンパー抵抗棒344の外周部を通った光線のうち、シリコーンゲルの表面から入射した紫外線は、シリコーンゲルの表面から深部近くを硬化させる。また、ダンパー抵抗棒334の中央部を通った紫外線は、ダンパー抵抗棒344の中央部の先端から照射され、シリコーンゲルの深部を硬化させる。また、ダンパー抵抗棒344の外周部を通った光線のうち、ダンパー保持缶345の側壁部分に入射した紫外線は、ダンパー保持缶345に設けられた全反射面345cで反射し、進行方向を変化させられ、シリコーンゲルの深部を硬化させる。したがって、減衰手段346であるシリコーンゲルを満遍なく硬化させることが可能である。
ここで、シリコーンゲルの硬化に利用したダンパー抵抗棒344は、そのまま振れ補正ユニット390の減衰機構の一部として利用される。ダンパー抵抗棒344は、撮影光軸とは離れた位置に存在するので、撮影画像に影響することはないと思われるが、不要光の発生を抑えるために減衰手段346の硬化後にダンパー抵抗棒344の入射面には遮光板を貼ってもよい。
なお、振れ補正ユニット390の駆動手段については、上記実施例1と同様なので説明を省略する。また、本実施例4に好適な減衰手段346を成す粘弾性体は実施例1と同様のものである。また、本実施例4に示す振れ補正ユニット390の制御方法についても、実施例1と同様なので割愛する。また、任意の撮像素子位置センサによって位置検出を行い、いわゆるフィードバック制御を行うことでも任意の位置に移動可能である。
図34は、本発明の実施例4に係る減衰手段346の硬化に関しての変形例について説明するための図である。
図34は、減衰手段取付部近傍の拡大図である。344はダンパー抵抗棒、345−1は減衰手段形成用開口容器に相当するダンパー保持缶、346は減衰手段である。本実施例4では、減衰手段346は紫外線硬化型のシリコーンゲルを用いている。347は紫外線照射装置であり、光線トレース図を同時に示している。ダンパー保持缶345−1は紫外線透過性の材料でできている。ダンパー保持缶345−1はU字形の断面を回転してできた形状をしており、ダンパー保持缶345−1の底面から入射した光線が該ダンパー保持缶345−1を透過する構造になっている。紫外線透過性の材料としては、例えば住友化学製のスミペック010がある。ここで、ダンパー抵抗棒344は紫外線透過性の材料でできていなくて、可動鏡筒338と一体で構成されていても構わない。
図34に示したように、紫外線照射装置347から射出された紫外線は、ダンパー保持缶345の底面(ダンパー抵抗棒344の先端側)から入射する。その後はシリコーンゲルの深部に入射する光線と、ダンパー保持缶345の側壁部分に設けられた全反射部345cで反射して、シリコーンゲルの表面部分に照射される光線に分かれる。シリコーンゲルの深部から入射した光線は、そのままシリコーンゲルの表面に向う。また、ダンパー保持缶345の側壁部分の全反射面345cで反射した光線は進行方向を変化させ、シリコーンゲルの表面部分に照射される。
図34に示した光線トレースは、ダンパー保持缶345−1、減衰手段346の屈折率がそれぞれ1.5、1.4のときのものである。
このようにして、紫外線照射装置347から射出された紫外線は、紫外線透過性の材料で構成されたダンパー保持缶345−1を通り、それぞれシリコーンゲルに照射される。このとき、ダンパー保持缶345−1の側壁部分を通った光線はシリコーンゲルの表面を硬化させる。したがって、減衰手段346であるシリコーンゲルを満遍なく硬化させることが可能である。
ここで、シリコーンゲルの硬化に利用したダンパー抵抗棒344は、そのまま振れ補正ユニット390の減衰機構の一部として利用される。ダンパー抵抗棒344は、撮影光軸とは離れた位置に存在するので、撮影画像に影響することはないと思われるが、不要光の発生を抑えるために減衰手段346の硬化後にダンパー保持缶345−1の入射面には遮光板を貼ってもよい。
上記実施例4によれば、可動鏡筒338に後端が固定され、先端が突出形状部をしたダンパー抵抗棒344、ベース板331に設けられ、ダンパー抵抗棒344の突出形状部が挿入される減衰手段形成用開口容器であるダンパー保持缶345,345−1を有する。さらに、ダンパー抵抗棒344の突出形状部がダンパー保持缶345,345−1に挿入された状態で、これらの間に介在し、可動鏡筒338のベース板331に対する相対移動に際して粘性抵抗を与える、ゲルより成る減衰手段346を有する。また、上記ダンパー保持缶345,345−1は、紫外線を透過させる部材で構成される。
よって、減衰手段346を成すシリコーンゲルの深部まで硬化させることができ、振れ補正ユニットの周波数特性を手振れに適したものにすることである。また、減衰手段346を、電気的、複雑な機械的なものにより構成するのではなく、ゲルにより構成しているので、構成が簡単なものになる。また、振れ補正ユニットの減衰機構を一部を成すダンパー保持缶345,345−1を減衰手段346の硬化のための導光部材として利用することで、粘性抵抗を均一な状態にするができ、安定した防振性能を維持することが可能となる。また、上記のようにダンパー保持缶345,345−1を減衰手段346の硬化のための導光部材として利用しているので、従来のように可動鏡筒338やベース板331を透明部材にする必要がなく、ゴーストやフレアを生じる心配もない。
つまり、簡単な構成により、ゲル材より成る減衰手段の硬化を確実なものにし、安定した防振効果を得ることができる振れ補正装置や、該振れ補正装置を具備する撮像装置を提供することが可能となる。
図35は、本発明の実施例5に係る撮像装置に具備される振れ補正ユニットを示す断面図である。本実施例5に係る撮像装置やその電気的構成は、上記実施例1と同様であるので、ここでは割愛する。
図35は振れ補正ユニット490の光軸404を通る断面図である。431は固定部材であるところのベース板、438は可動部材であるところの可動鏡筒であり、これらは遮光部材で構成されている。440は可動鏡筒438に固定され、撮影時に画像振れを補正するための補正光学系である。444a,444bはダンパー抵抗棒、445a,445bは減衰手段形成用開口容器に相当するダンパー保持缶、446a,446bは減衰手段である。なお、図35では、振れ補正ユニット490の主要部分だけを示し、保持部材やリード線等は示していない。また、以下、ダンパー抵抗棒444a,444b、ダンパー保持缶445a,445b、減衰手段446a,446bは、それぞれ同一部材であるので、ダンパー抵抗棒444、ダンパー保持缶445、減衰手段446と記す。
ここで、ベース板431に対する可動鏡筒438の保持方法および駆動方法については、上記実施例1と同様であるので、ここでは割愛する。
次に、本実施例5に係る減衰手段446の硬化に関して説明する。
本実施例5においても、減衰手段446は紫外線硬化型のシリコーンゲルを用いている。447は紫外線照射装置、448は光線反射装置であり、光線トレース図を同時に示している。ダンパー抵抗棒444、ダンパー保持缶445は紫外線透過性の材料でできている。ダンパー保持缶445はU字形の断面を回転してできた形状をしており、光線反射装置448で反射された光線が該ダンパー保持缶445を透過する構造になっている。紫外線透過性の材料としては、例えば住友化学製のスミペック010がある。ここで、ダンパー抵抗棒444は紫外線透過性の材料でできていなくて、可動鏡筒438と一体で構成されていても構わない。
図35に示したように、紫外線照射装置447から発せられた光線は、補正光学系440を通過後、光線反射装置448で反射され、ダンパー保持缶445へ向かう。そして、ダンパー保持缶445は紫外線透過性の材料で出来ているので、ダンパー保持缶445が保持しているシリコーンゲルを照射する。
図35に示した光線トレースは、ダンパー保持缶446、減衰手段446の屈折率がそれぞれ1.5,1.4のときのものである。
このようにして、紫外線照射装置447から射出された紫外線は、紫外線透過性の材料で構成されたダンパー保持缶445を通り、シリコーンゲルに照射される。このとき、ダンパー保持缶445の側面を通った光線はシリコーンゲルの表面から深部までを硬化させる。したがって、減衰手段446であるシリコーンゲルを満遍なく硬化させることが可能である。
ここで、シリコーンゲルの硬化に利用したダンパー抵抗棒444は、そのまま振れ補正ユニットの減衰機構の一部として利用される。ダンパー抵抗棒444は、撮影光軸とは離れた位置に存在するので、撮影画像に影響することはないと思われるが、不要光の発生を抑えるためにダンパー抵抗棒の入射面には遮光板を貼ってもよい。
上記の実施例5によれば、可動鏡筒438に後端が固定され、先端が突出形状部をしたダンパー抵抗棒444、ベース板431に設けられ、ダンパー抵抗棒444の突出形状部が挿入される減衰手段形成用開口容器であるダンパー保持缶445を有する。さらに、ダンパー抵抗棒444の突出形状部がダンパー保持缶445に挿入された状態で、これらの間に介在し、可動鏡筒438のベース板431に対する相対移動に際して粘性抵抗を与える、ゲルより成る減衰手段446を有する。また、上記ダンパー保持缶445は、紫外線を透過させる部材で構成される。
よって、減衰手段446を成すシリコーンゲルの深部まで硬化させることができ、振れ補正ユニットの周波数特性を手振れに適したものにすることである。また、減衰手段446を、電気的、複雑な機械的なものにより構成するのではなく、ゲルにより構成しているので、構成が簡単なものになる。また、振れ補正ユニットの減衰機構の一部を成すダンパー保持缶445を減衰手段446の硬化のための導光部材として利用することで、粘性抵抗を均一な状態にするができ、安定した防振性能を維持することが可能となる。また、上記のようにダンパー保持缶445を減衰手段446の硬化のための導光部材として利用しているので、従来のように可動鏡筒438やベース板431を透明部材にする必要がなく、ゴーストやフレアを生じる心配もない。
つまり、簡単な構成により、ゲル材より成る減衰手段の硬化を確実なものにし、安定した防振効果を得ることができる振れ補正装置や、該振れ補正装置を具備する撮像装置を提供することが可能となる。
(本発明と実施例の対応)
補正光学系12,140,340,440又は撮像素子206が本発明の補正手段に、可動鏡筒38,138,338,438又は可動枠238が、補正手段を一体に保持する可動部材に、それぞれ相当する。また、ベース板31,131,231,331,431が、可動部材を移動可能に支持する固定部材に、駆動手段70、209が、可動部材を介して補正手段を撮像光学系の光軸と直交する平面内で移動させる駆動手段に、それぞれ相当する。また、ダンパー抵抗棒44,44−1,44−2,144,144−1,144−2,144―3,244,244−1,344,444が、可動部材と固定部材の一方に一端が固定され、他端が突出形状部に形成された棒状部材に相当する。
また、減衰手段形成用穴部45,145,245が、可動部材と固定部材の他方に設けられ、棒状部材の突出形状部が挿入される減衰手段形成用穴部に相当する。また、ダンパー保持缶345,345−1が、可動部材と固定部材の他方に設けられ、棒状部材の突起形状部が挿入される減衰手段形成用開口容器に相当する。また、減衰手段46,146,246,346,446が本発明の減衰手段に相当する。
本発明の実施例1に係わる撮像装置を示す構成図である。
本発明の実施例1に係わる撮像装置の電気的構成を示す図である。
本発明の実施例1に係わる振れ補正ユニットを示す斜視図である。
本発明の実施例1に係わる振れ補正ユニットの分解斜視図である。
本発明の実施例1に係わる振れ補正ユニットを示す平面図及び断面図である。
本発明の実施例1に係わる振れ補正ユニットの減衰手段形成用穴部近傍を示す図である。
図6のA部拡大図である。
本発明の実施例1に係わる振れ補正ユニットの駆動手段を示す模式図である。
本発明の実施例1に係わる粘弾性体の周波数特性を示す図である。
本発明の実施例1に係わる振れ補正ユニットの解析モデルを示す図である。
本発明の実施例1に係わる補正光学系駆動時の解析モデルの周波数応答線図である。
本発明の実施例1に係わる振れ補正ユニットの制御用信号処理回路のブロック図である。
本発明の実施例1に係わる振れ補正ユニットの減衰手段形成用穴部近傍の変形例を示す図である。
本発明の実施例1に係わる振れ補正ユニットの減衰手段形成用穴部近傍の変形例を示す詳細図である。
本発明の実施例2に係わる振れ補正ユニットを示す斜視図である。
本発明の実施例2に係わる振れ補正ユニットを示す分解斜視図である。
本発明の実施例2に係わる振れ補正ユニット平面図及び断面図である。
本発明の実施例2に係わる振れ補正ユニットの減衰手段形成用穴部近傍を示す図である。
本発明の実施例2に係わる振れ補正ユニットの駆動手段を示す模式図である。
本発明の実施例2に係わる振れ補正ユニットの減衰手段形成用穴部近傍の変形例1を示す図である。
本発明の実施例2に係わる振れ補正ユニットの減衰手段形成用穴部近傍の変形例2を示す図である。
本発明の実施例2に係わる振れ補正ユニットの減衰手段形成用穴部近傍の変形例3を示す図である。
本発明の実施例3に係わる撮像装置を示す構成図である。
本発明の実施例3に係わる撮像装置の電気的構成を示す図である。
本発明の実施例3に係わる振れ補正ユニットを示す斜視図である。
本発明の実施例3に係わる振れ補正ユニットの分解斜視図である。
本発明の実施例3に係わる振れ補正ユニットを示す平面図及び断面図である。
本発明の実施例3に係わる振れ補正ユニットの減衰手段形成用穴部近傍を示す図である。
本発明の実施例3に係わる振れ補正ユニットの減衰手段形成用穴部近傍の変形例1を示す拡大図である。
本発明の実施例4に係わる振れ補正ユニットを示す斜視図である。
本発明の実施例4に係わる振れ補正ユニットの分解斜視図である。
本発明の実施例4に係わる振れ補正ユニットを示す平面図及び断面図である。
本発明の実施例4に係わる振れ補正ユニットのダンパー保持缶近傍を示す図である。
本発明の実施例4に係わる振れ補正ユニットのダンパー保持缶近傍の変形例を示す図である。
本発明の実施例5に係わる振れ補正ユニットのダンパー保持缶近傍を示す図である。
シリコーンゲルの紫外線の積算光量と硬化厚みの関係を示す図である。
符号の説明
1 撮像装置
2 撮像レンズ
4 光軸
8 振れセンサ
9 振れ補正ユニット
12 補正光学系
31 ベース板
38 可動鏡筒
44 ダンパー抵抗棒
44−1 ダンパー抵抗棒
44−2 ダンパー抵抗棒
45 減衰手段形成用穴部
46 減衰手段
47 紫外線照射装置
70 駆動手段
140 補正光学系
131 ベース板
138 可動鏡筒
144 ダンパー抵抗棒
144−1 ダンパー抵抗棒
144−2 ダンパー抵抗棒
144−3 ダンパー抵抗棒
145 減衰手段形成用穴部
146 減衰手段
147 紫外線照射装置
206 撮像素子
209 駆動手段
231 ベース板
238 可動枠
244 ダンパー抵抗棒
244−1 ダンパー抵抗棒
245 減衰手段形成用穴部
246 減衰手段
247 紫外線照射装置
247a,247b 紫外線照射装置
248 受光窓
290 振れ補正ユニット
340 補正光学系
331 ベース板
338 可動鏡筒
344 ダンパー抵抗棒
345 ダンパー保持缶
345−1 ダンパー保持缶
346 減衰手段
347 紫外線照射装置
390 振れ補正ユニット
440 補正光学系
431 ベース板
438 可動鏡筒
444 ダンパー抵抗棒
445 ダンパー保持缶
446 減衰手段
447 紫外線照射装置
490 振れ補正ユニット