以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1乃至図7本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は透過型表示装置および面光源装置の概略構成を示す斜視図である。図2、図3および図5は、光学シートを示す主切断面における断面図である。図5は、出光面での屈折により正面方向へ出射し得る角度で単位形状要素の出光面に入射する光についての各出光面角度での透過率を示すグラフである。図6は、集光シートを示す主切断面における断面図である。
図1に示された透過型表示装置10は、透過型表示部15と、透過型表示部15の背面側に配置され透過型表示部15を背面側から面状に照らす面光源装置20と、を備えている。透過型表示部15は、面光源装置20からの光の透過または遮断を画素毎に制御するシャッターとして機能し、画像を形成する装置である。
本実施の形態において、透過型表示部15は、液晶パネル(液晶セル)から構成されている。つまり、透過型表示装置10は液晶表示装置として機能する。液晶パネル(透過型表示部)15は、一対の偏光板16,17と、一対の偏光板間に配置された液晶層18と、を有している。偏光板16,17は、入射した光を直交する二つの偏光成分(P波およびS波)に分解し、一方の方向(透過軸と平行な方向)の偏光成分(例えば、P波)を透過させ、前記一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸と平行な方向)の偏光成分(例えば、S波)を吸収する機能を有している。
液晶層18には、一つの画素を形成する領域毎に、電界印加がなされ得るようになっている。そして、電界印加された液晶層18の配向は変化するようになる。入光側に配置された下偏光板16を透過した特定方向の偏光(本実施の形態においては、P波)は、電界印加された液晶層18を通過する際にその偏光方向を90°回転させ、電界印加されていない液晶層18を通過する際にその偏光方向を維持する。このため、液晶層18への電界印加の有無によって、下偏光板16を透過した特定方向の偏光(P波)が、下偏光板16の出光側に配置された上偏光板17をさらに透過するか、あるいは、上偏光板17で吸収されて遮断されるか、を制御することができる。
このようにして液晶パネル(透過型表示部)15では、面光源装置20からの光の透過または遮断を画素毎に制御し得るようになっている。なお、液晶パネル(液晶セル)の構成は、従来の液晶表示装置に組み込まれている装置(部材)と同様に構成することができ、ここでは、これ以上の詳細な説明を省略する。
ところで、この明細書において、「出光側」とは、進行方向を折り返されることなく光源25から光学シート40等を経て観察者へ向かう光の進行方向における下流側(観察者側、図1、図2、図3および図5においては紙面の上側)のことであり、「入光側」とは、進行方向を折り返されることなく光源25から光学シート40等を経て観察者へ向かう光の進行方向における上流側(図2、図3および図5においては紙面の下側)のことである。
次に、面光源装置20について説明する。面光源装置20は、図1に示すように、光源25と、光源25からの光を透過させる光学シート40と、を有している。本実施の形態において、光学シート40は、面光源装置20の最出光側に配置され、発光面(出光面)を構成する。そして、この光学シート40は、透過型表示部15の下偏光板16と隣り合うようになる。また、図1に示す例においては、光学シート40の入光側に配置され、光を集光させる集光シート(入光側光学シートとも呼ぶ)30、並びに、集光シート30の入光側に配置され、光を拡散させる光拡散シート28が、さらに設けられている。
面光源装置20は、例えばエッジライト(サイドライト)型等の種々の形態で構成され得るが、本実施の形態においては、直下型のバックライトユニットとして構成されている。このため、光源25は光学シート40の入光側において光学シート40と対面するようにして配置されている。また、光源25は、反射板22によって背面側から覆われている。反射板22は、光学シート40の側に開口部(窓)を有する箱状に形成されている。
なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
本実施の形態において、光源25は、線状に延びる複数の発光部25aを有している。線状の発光部25aは、その長手方向が互いに並行となるように並べて配置されている。発光部25aは、例えば、線状の冷陰極管等の蛍光灯から構成され得る。ただし、この例に限られず、光源25が、点状のLED(発光ダイオード)や白熱電球、面状のEL(電場発光体)等の種々の態様の発光部を有するようにしてもよい。
反射板22は、図1に示すように、光源25からの光を光学シート40の側へ向けるための部材である。反射板22の少なくとも内側表面は、例えば金属等の高い反射率を有する材料からなっている。
次に、光拡散シート28について説明する。光拡散シート28は、入射光を拡散させ、好ましくは入射光を等方拡散させ、光源25の構成に応じた輝度ムラ(管ムラともいう)を緩和し、輝度の面内分布を均一化させて光源25の像を目立たなくさせるためのシート状部材である。このような光拡散シート28として、基部と、基部内に分散され光拡散機能を有した光拡散性粒子と、を含むシートが用いられ得る。一例として、反射率の高い材料から光拡散性粒子を構成することにより、あるいは、基部をなす材料とは異なる屈折率を有する材料から光拡散性粒子を構成することにより、光拡散シート28に、光拡散機能を付与することができる。
次に、集光シート30について説明する。図1および図6に示すように、集光シート30は、シート状の本体部32と、本体部32の出光側に位置するレンズ部34と、を有している。レンズ部34は、シート状の本体部32の出光側面32a上に並べて配列された多数の単位形状要素(単位光学要素)35を有している。この集光シート30は、入光側から入射した光の進行方向を変化させて出光側から出射させ、正面方向(法線方向)ndの輝度を集中的に向上させる機能(集光機能)を有している。
単位形状要素35は、本体部32の出光側面32a上に並べて配列されている。図1に示すように、単位形状要素35は、単位形状要素35の配列方向と交差する方向に線状に延びている。本実施の形態において、単位形状要素35は直線状に延びている。また、単位形状要素35の長手方向は、本体部32のシート面と平行な面上において、単位形状要素35の配列方向に直交している。図1に示すように、本実施の形態において、単位形状要素35の配列方向は光源25の発光部25aの長手方向と直交し、各単位形状要素35の長手方向が各発光部25aの長手方向と平行になっている。
図6に示すように、本実施の形態においては、本体部32の法線方向ndおよび単位形状要素35の配列方向の両方に平行な切断面(「集光シートの主切断面」とも呼ぶ)における各単位形状要素35の断面形状は、単位形状要素35の長手方向(直線状に延びている方向)に沿って一定となっている。また、レンズ部34を形成する複数の単位形状要素35は、全て同様に構成されている。図示する例において、単位形状要素35は、集光シートの主切断面において、楕円の一部分または円の一部分に相当する形状を有している。ただし、図示する例に限られず、集光シート30以外の面光源装置20の構成、例えば光源25の構成等に応じて、単位形状要素35の構成を適宜変更してもよい。
以上のような構成からなる単位形状要素35の具体例として、単位形状要素35の幅W(図6参照)を1μm〜200μmとすることができる。また、集光シート30のシート面への法線方向ndに沿った本体部32の出光側面32aからの単位形状要素35の突出高さH(図6参照)を0.25μm〜50μmとすることができる。なお、本件発明者らが実験を重ねたところ、集光シートの主切断面において、本体部32のシート面に平行な方向に沿った集光シート30の単位形状要素35の幅Wを、本体部32の法線方向ndに沿った本体部32からの単位形状要素の高さHの1.8倍以上2.3倍以下とすることが、後述する光学シート40との組み合わせにおいて好ましいことが知見された。単位形状要素35の幅Wおよび単位形状要素35の高さHをこの範囲外に設定した場合、正面方向輝度が著しく低下するためである。
なお、本明細書において「シート面(フィルム面、板面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向と一致する面のことを指す。そして、本実施の形態においては、集光シート30の本体部32のシート面、後述する光学シート40の本体部42のシート面、光拡散シート28のシート面、面光源装置20の発光面、および、透過型表示装置10の表示面等は、互いに平行となっている。さらに、本願において「正面方向」とは、光学シート40のシート面に対する法線の方向nd(例えば図2参照)であり、また、集光シート30のシート面の法線方向や面光源装置20の発光面の法線方向等にも一致する。
次に、光学シート40について説明する。本実施の形態においては、図1に示すように、光学シート40は、後述する単位レンズ46が設けられていることを除き、上述した集光シート30と概ね同様の構成を有している。光学シート40は、シート状の本体部42と、本体部42の出光側に位置するレンズ部44と、を有している。レンズ部44は、シート状の本体部42の出光側面42a上に並べて配列された多数の単位形状要素(単位光学要素、単位レンズ)45を有している。本実施の形態においては、単位形状要素45が本体部42の出光側面42a上に隙間無く配置されている。この結果、光学シート40の出光面40aは、単位形状要素45の出光面45aのみによって構成されている。
この光学シート40は、後述するよう、屈折して正面方向へ出射する透過光のうちの特定の偏光成分(本実施の形態においては、P波)を選択的に透過させ、その一方で、前記特定の偏光成分以外の偏光成分(本実施の形態においては、S波)を選択的に反射させるといった偏光分離機能を有している。また、本実施の形態においては、光学シート40は、集光シート30と同様に、入光側から入射した光の進行方向を変化させて出光側から出射させ、正面方向(法線方向)ndの輝度を集中的に向上させる機能(集光機能)も併せ持っている。
図2および図3は、光学シート40の本体部42のシート面の法線方向ndおよび単位形状要素45の配列方向の両方に平行な断面(「光学シートの主切断面」とも呼ぶ)において、光学シート40を示している。なお、図2および図3に示された断面は、図1のII−II線に沿った断面にも対応する。
図2および図3に示すように、本体部42は、単位形状要素45を支持するシート状部材として機能する。図1および図2に示すように、本実施の形態において、本体部42の出光側面42a上には、単位形状要素45が隙間をあけることなく並べて配置され本体部42上にレンズ部44を形成している。
また、この本体部42は、透過光を主として単位形状要素45の配列方向に拡散させる異方性拡散機能を有している。本実施の形態においては、図2に示すように、本体部42の入光側面42bに、単位レンズ46が形成されている。この単位レンズ46によって、光拡散機能が本体部42に付与されている。本実施の形態において、単位レンズ46は隙間なく並べて配置されており、多数の単位レンズ46のみによって光学シート40の入光面40bが形成されている。
なお、本明細書において、「レンズ」の語は球面等の曲面から構成されるいわゆる狭義のレンズの他、平面から構成されるいわゆる狭義のプリズム、及び、曲面と平面とで構成される光学素子を包含する広義の意味で用いる。
単位レンズ46は、単位レンズ46の配列方向と交差する方向に線状(本実施の形態においては、直線状)に延びている。また、本実施の形態において、単位レンズ46の長手方向は、本体部42のシート面と平行な面上において、単位レンズ46の配列方向に直交している。図1および図2に示すように、単位レンズ46の配列方向は、後に詳述する光学シート40の単位形状要素45の長手方向に対して、本体部42のシート面と平行な面上で45°より大きく135°より小さい角度で交差している。とりわけ本実施の形態においては、単位レンズ46の配列方向は、光学シート40の単位形状要素45の配列方向と平行となっている。これにより、並列配置された単位レンズ46によって発現される本体部42の拡散機能は、主として単位形状要素45の配列方向に光を拡散させる異方性を有するようになる。
本実施の形態においては、図2に示すように、単位レンズ46は、その長手方向に直交する断面において、三角形形状(プリズム形状)を有している。単位レンズ46の断面形状は、単位レンズ46の長手方向(直線状に延びている方向)に沿って一定となっている。また、複数の単位レンズ46は、互いに同一形状を有している。
本体部42の入光側面42bを形成する複数の単位レンズ46の構成は、光を拡散させ得る粗面を、本体部42の入光側面42bに形成し得る程度であれば、特に限定されない。なお、ここでいう粗面とは、光学的な意味における粗面を指している。したがって、例えば、本体部42の入光側面42b(光学シート40の入光面40b)の十点平均粗さRz(JISB0601)が最短の可視光波長(0.38μm)以上となっていれば、十分、粗面に該当する。
次に、単位形状要素45について詳述する。図1に示すように、単位形状要素45は、単位形状要素45の配列方向と交差する方向に線状に延びている。本実施の形態において、単位形状要素45は直線状に延びている。また、単位形状要素45の長手方向は、本体部42のシート面と平行な面上において、単位形状要素45の配列方向に直交している。図1に示すように、本実施の形態において、単位形状要素45の配列方向は光源25の発光部25aの長手方向と平行であり、各単位形状要素45の長手方向が各発光部25aの長手方向と直交している。また、図1に示すように、本実施の形態において、光学シート40の単位形状要素45の配列方向は、集光シート30の単位形状要素35の配列方向と直交している。さらに、本実施の形態において、光学シート40の単位形状要素45の配列方向は、透過型表示部15の下偏光板16の透過軸と平行となっている。さらに、上述したように、光学シート40の単位形状要素45の配列方向は、光学シート40の本体部42の入光面42bをなす単位レンズ46の配列方向と平行になっている。
図1に示すように、本実施の形態においては、光学シートの主切断面における各単位形状要素45の断面形状は、単位形状要素45の長手方向(直線状に延びている方向)に沿って一定となっている。また、光学シート40のレンズ部44を形成する複数の単位形状要素45は、全て同様に構成されている。以下において、光学シート40に含まれる単位形状要素45の主切断面における断面形状についてさらに詳細に説明する。
図2及び図3に示すように、本実施の形態においては、光学シートの主切断面における各単位形状要素45の断面形状は、出光側に向けて先細りしていく形状となっている。つまり、主切断面において、本体部42のシート面と平行な単位形状要素45の幅は、本体部42の法線方向ndに沿って本体部42から離間するにつれて小さくなっていく。
また、図3に示すように、光学シートの主切断面において、単位形状要素45の外輪郭は、つなぎ合わされた三以上の弧(円弧または楕円弧)から、本実施の形態においては三つの楕円弧A1,A2,A3から、構成されている。互いにつなぎ合わされた隣り合う二つ弧(弧A1および弧A2、並びに、弧A2および弧A3)は、つなぎ合わせ部分において、共通する接線CTL1,CTL2を有している。すなわち、隣り合う二つの弧は連続的に接続している。これにより、光学シート40の出光面40aにおける輝度の角度分布をなだらかに変化させることができ、観察方向を変化させた際に明るさが急激に変化すること(カットオフが発生すること)を防止することができる。
また、本実施の形態においては、光学シートの主切断面における単位形状要素45の外輪郭は、本体部42の法線方向ndと平行な軸を対称軸として、線対称となっている。これにより、光学シート40の出光面40aにおける輝度は、単位形状要素45の配列方向に平行な面において、正面方向を中心として対称的な輝度の角度分布を有するようになる。
さらに、図2に示すように、単位形状要素45の外輪郭への接線TLが主切断面において本体部42のシート面(本実施の形態においては、本体部42の出光側面42a)に対してなす角度(「出光面角度」とも呼ぶ)θaは、接線TLの単位形状要素45への接点TPが、本体部42の法線方向ndに本体部42から最も離間した単位形状要素45の外輪郭(出光面)45a上の頂部45b1から、本体部42の法線方向ndにおいて本体部42に隣接する単位形状要素45の外輪郭(出光面)45a上の両端部45b2へ向かうにつれて、大きくなっていく。なおここでいう、出光面角度θaが「大きくなっていく」とは、出光面角度θaが常に大きく変化していくこと(図2および図3に示された本実施の形態における態様)だけでなく、少なくとも一部の領域において出光面角度θaが変化しない場合も含む概念である。すなわち、ここでいう、出光面角度θaが「大きくなっていく」とは、接点TPが外輪郭(出光面)45a上の頂部45b1から外輪郭(出光面)45a上の端部45b2へ向かう際に、出光面角度θaが「小さくなることがない」ことを意味している。
単位形状要素の出光面角度θaは、本件発明者らの研究結果に基づいて次のように設定されることが好ましい。まず、光学シートの主切断面において、単位形状要素45の外輪郭上の端部45b2への接線TLが、本体部42のシート面に対してなす出光面角度(「出光面底角」とも呼ぶ)θaaが、55°以上であることが好ましく、65°以上であることがさらに好ましい。本件発明者が確認したところ、単位形状要素45の出光面底角θaaが55°以上である場合、目視で確認し得る程度に正面方向輝度を上昇させることができた。また、単位形状要素45の出光面底角θaaが65°以上である場合には、さらに顕著に正面方向輝度を上昇させることができた。一方、上限としては、単位形状要素45の出光面底角θaaは、75°以下であることが好ましい。出光面底角θaaを増加させることによって、正面方向輝度が上昇させることができるが、出光面底角θaaを増加させ過ぎると、正面方向輝度の上昇が停止し、さらには、正面方向輝度は低下していく。また、出光面底角θaaを増加させ過ぎると、透過光のスペクトル分布が不均一となり、表示装置10においては色再現性が低下してしまう。
また、光学シート40の主切断面において、単位形状要素45の端部45b2から本体部42のシート面と平行な方向に単位形状要素45の幅の15%の長さ分だけずれた位置で単位形状要素45の外輪郭へ接する接線TLが、本体部42のシート面に対して、40°以上の角度θaをなすことが好ましい。つまり、単位形状要素45の端部45b2から本体部42のシート面と平行な方向に単位形状要素45の幅の15%の長さ分だけずれた位置の単位形状要素45の出光面角度θaが、40°以上であることが好ましい。本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、詳しくは後述するように、目視で判断され得る正面方向輝度の上昇を確保し得る偏光分離機能は、出光面角度θaが40°以上となる場合であった。また、表示領域のうちの30%以上の領域において、出光面角度θaが40°以上となっている場合に、表示装置10において正面輝度の上昇を視認することができるようになった。
さらに、光学シートの主切断面において、単位形状要素45の外輪郭への接線TLの接点TPの位置が、本体部42のシート面と平行な方向において、単位形状要素45の全幅のうちの少なくとも15%を占める領域にある場合に、単位形状要素45の外輪郭への接線TLが本体部42のシート面に対して15°以下の角度をなすようになる。つまり、本体部42のシート面と平行な方向の割合において単位形状要素45のうちの15%以上の領域において、単位形状要素45の出光面角度θaが0°以上15°以下となることが好ましい。本実施の形態においては、上述しように、光学シートの主切断面において、単位形状要素45の断面形状は線対称であり、出光面角度θaは頂部45b1から端部45b2に向かうにつれて大きくなっていく。したがって、さらに言い換えると、単位形状要素45の頂部45b1から本体部42のシート面と平行な方向に単位形状要素45の幅の7.5%の長さ分だけずれた位置で単位形状要素45の外輪郭へ接する接線TLが、本体部42のシート面に対して、15°以下の角度θaをなすようになることが好ましい。本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、このような設定によれば、光学シートの主切断面と平行な方向に進み単位形状要素45の端部45b2に向かい、その一部分が単位形状要素45の出光面45aで屈折して本体部42の法線方向ndに出射するようになる光のうちの、単位形状要素45の出光面45aで屈折することなく反射した他の光が、その後、当該単位形状要素45から80°以上の出射角度(光の出射方向が光学シートの法線方向に対してなす角度)で出射する、あるいは、当該単位形状要素から出射した後に隣の単位形状要素に入射する傾向を呈するようになる。
以上のような構成からなる単位形状要素45の具体例として、単位形状要素45の幅を1μm〜200μmとすることができる。また、光学シート40のシート面への法線方向ndに沿った本体部42の出光側面42aからの単位形状要素45の突出高さを0.25μm〜50μmとすることができる。
以上のような構成からなる集光シート30および光学シート40は、押し出し加工により、あるいは、基材上に単位形状要素35,45を賦型することにより、極めて容易に作製することができる。集光シート30および光学シート40をなす材料としては、種々の材料を使用することができる。ただし、表示装置に組み込まれる光学シート(集光シート)用の材料として広く使用され、優れた機械的特性、光学特性、安定性および加工性等を有するとともに安価に入手可能な材料、例えば、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)が好適に使用され得る。このような表示装置に組み込まれる光学シート(集光シート)用の材料として広く使用されている材料を用いた場合、作製された光学シート40および集光シート30の単位形状要素45,35の屈折率は1.45〜1.60の範囲内となる。
次に、以上のような光学シート40、面光源装置20および透過型表示装置10の作用について説明する。
まず、透過型表示装置10および面光源装置20の全体的な作用について説明する。
光源25の発光部25aで発光された光は、直接または反射板22で反射した後に観察者側に進む。観察者側に進んだ光は、光拡散シート28で等方拡散された後に、集光シート30に入射する。
図6に示すように、集光シート30の単位形状要素35から出射する光L61,L62は、単位形状要素(単位レンズ)35の出光面(レンズ面)において屈折する。この屈折により、正面方向ndから傾斜した方向に進む光L61,L62の進行方向(出射方向)は、主として、集光シート30へ入射する直前における光の進行方向と比較して、集光シート30のシート面への法線方向ndに対する角度が小さくなるように、曲げられる。このような集光シートの作用により、単位形状要素35は、透過光の進行方向を正面方向nd側に絞り込むことができる。すなわち、単位形状要素35は、透過光に対して集光作用を及ぼすようになる。
なお、このような単位形状要素35の集光作用は、正面方向ndから大きく傾斜して進む光に対して効果的に及ぼされる。このため、集光シート30よりも光源側に配置された光拡散シート28による拡散の程度にも依るが、光源25の発光部25aから大きな入射角度で多くの光が入射するようになる傾向がある光源25の発光部25aから離れた領域において、効果的に正面方向輝度を上昇させることができる(図6の光L62参照)。
その一方で、図6に示すように、正面方向ndに対する進行方向の傾斜角度が小さい光L63は、単位形状要素35の出光面(レンズ面)において全反射を繰り返し、その進行方向を入光側(光源側)へ転換することもある。このため、集光シート30よりも光源側に配置された光拡散シート28による拡散の程度にも依るが、光源25から小さな入射角度で多くの光が入射するようになる傾向がある光源25の直上位置において、輝度が高くなり過ぎることを防止することができる。
このように、光源25の発光部25aからの離間距離に依存して透過光に対して単位形状要素35から主として及ぼされる光学的作用が相違する。これにより、光源25の発光部25aの配列に応じて発生する輝度ムラ(管ムラ)を効果的に低減し、光源の像(ライトイメージ)を目立たなくさせることもできる。すなわち、集光シート30は、輝度の面内バラツキを均一化させる光拡散機能も有している。このような光拡散機能は、集光シート30の単位形状要素35の配列方向と光源25の発光部25aの長手方向とが交差するようにして、光源25に対して集光シート30を配置することにより、発揮されるようになる。また、このような光拡散機能は、図1に示すように、集光シート30の単位形状要素35の配列方向と光源25の発光部25aの長手方向とが直交するようにして、すなわち、集光シート30の単位形状要素35の配列方向と光源25の発光管25aの配列方向とが平行となるようにして、光源25に対して集光シート30を配置することにより、効果的に発揮されるようになる。
以上のようにして、集光シート30から出射する光の出射角度は、集光シート30の単位形状要素35の配列方向と平行な面において、正面方向を中心とした狭い角度範囲内に絞り込まれる。
集光シート30を出光した光は、その後、光学シート40の入光面40bを介して光学シート40へ入射する。上述したように、光学シート40の入光面40bをなす本体部42の入光側面42bには、線状に延びる多数の単位レンズ46が線状配列(リニアアレイ)で設けられている。そして、この多数の単位レンズ46は、光学シート40の入光面40bに粗面を形成し、光学シート40への入射光を拡散させる。
ただし、単位レンズ46による拡散は、単位レンズ46の配列方向と平行な方向への拡散であって、異方性を有した拡散となる。すなわち、光学シート30の入光側に配置された集光シート40によって集光作用が及ぼされる方向と、光学シート30の単位レンズ46によって拡散作用が及ぼされる方向と、は直交している。したがって、集光シート30によって正面方向を中心とした狭い範囲に進行方向を絞り込まれた光の進行方向を、光学シート30の単位レンズ46により拡散によって、再び、当該正面方向を中心とした狭い範囲からそらしてしまうことが防止される。つまり、集光シート30の出光面での輝度の集光シート30の単位形状要素35の配列方向と平行な面内における理想的な角度分布が、光学シート30の単位レンズ46の拡散作用によって損なわれることなく、概ね維持されるようになる。
光学シート40では、光学シート40の単位形状要素45の配列方向に平行な面内において本体部42の法線方向ndへ出射する光のうちの一方の偏光成分、本実施の形態においてはP波の透過率が高められ、その一方で、他方の偏光成分、本実施の形態においてはS波の透過率が低下させられるようになる。すなわち、光学シート40では、集光シート30で集光させられた光に対して偏光分離作用が及ぼされる。この偏光分離作用については、後に詳述する。なお、光学シート40を透過しない光は光学シート40で反射し、反射光の多くはその進行方向を入光側に向ける。入光側に戻された光は、さらに反射を繰り返すことにより、その偏光状態を変化させる(例えば、S波がP波となる)とともに、再び光学シート40へ入射して利用されるようになり得る。
また、光学シート40は、集光シート30と同様に、単位形状要素45の出光面45aでの屈折により、透過光に対して集光作用も及ぼすようになる。ただし、光学シート40でその進行方向を変化させられる光は、光学シート40の主切断面と平行に進む成分であり、集光シート30で集光させられた成分とは異なる。つまり、集光シート30は、集光シート30の単位形状要素35の配列方向と平行な面において、光の進行方向を正面方向を中心とした狭い角度範囲内に絞り込むようになり、その一方で、光学シート40は、光学シート40の単位形状要素45の配列方向と平行な面において、光の進行方向を正面方向を中心とした狭い角度範囲内に絞り込むようになる。したがって、光学シート40での光学的作用によって、集光シート30で上昇されられた正面方向輝度を害すことなく、さらに、正面方向輝度を上昇させることができる。
なお、上述したように、光学シート40の本体部42は、主として光学シート40の単位形状要素の配列方向に光を拡散させる拡散機能を有している。したがって、光学シート40の出光面40bでの輝度の光学シート40の単位形状要素45の配列方向と平行な面内における角度分布が滑らかに変化させることができる。とりわけ、集光機能を有するレンズ44の直前に拡散機能を有した本体部42が配置されているため、輝度の角度分布を極めて滑らかに変化させることができるとともに、輝度の角度分布に急激な変化(カットオフ)が発生してしまうことを効果的に防止することができる。一例として、図7に、光学シート40の本体部42に異方性拡散機能を付与した場合の輝度の角度分布(実線)と、光学シート40の本体部42に異方性拡散機能を付与しなかった場合の輝度の角度分布(点線)と、の調査結果を示す。異方性拡散機能を付与した場合の調査は、上述した構成の表示装置を用いて行った。なお、異方性拡散機能を付与しなかった場合の調査に用いた表示装置は、本体部の入光側面が平滑な面となっていたことを除き、異方性拡散機能を付与した場合の調査に用いた表示装置と同一に構成した。
光学シート40を出射した光は、透過型表示部15の下偏光板16に入射する。下偏光板16は、入射光のうち、一方の偏光成分(本実施の形態においてはP波)を透過させ、その他の偏光成分(本実施の形態においてはS波)を吸収する。下偏光板16を透過した光は、画素毎への電界印加の状態に応じて、選択的に上偏光板17を透過するようになる。このようにして、透過型表示部15によって、面光源装置20からの光を画素毎に選択的に透過させることにより、透過型表示装置10の観察者が、映像を観察することができるようになる。
上述したように、面光源装置20の出光面における正面方向輝度は、集光シート30による集光作用および光学シート40による集光作用により、高められている。さらに、光学シート40による偏光分離機能に起因して、光学シート40の単位形状要素45の配列方向に平行な面内において本体部42の法線方向ndへ出射する光には、透過型表示部15の下偏光板16に入射され得る偏光成分(P波)が高い比率で含まれており、その一方で、透過型表示部15の下偏光板16で吸収される偏光成分(S波)は低い比率でしか含まれていない。すなわち、光学シート40の単位形状要素45の配列方向に平行な面内において本体部42の法線方向ndへ出射する光には、透過型表示部15での映像の形成に用いられ得る成分が高い割合で含まれている。すなわち、本実施の形態における表示装置10においては、単位形状要素35,45によって光の進行方向を正面方向を中心として狭い角度範囲内に変化させる機能(集光機能)だけでなく、正面方向へ出射しようとする光に対する光学シート40の偏光分離機能による光源光の利用効率の改善によって、正面方向輝度を極めて効果的に上昇させることができる。
ここで、光学シート40で及ぼされる作用について、さらに詳しく説明しておく。
界面への入射角(界面の法線と入射光とがなす角度)に依存して、当該界面における反射率、これにともなって当該界面における透過率が変化することが広く知られている(例えば、共立出版社発行の「屈折率(山口重雄著)」)。この際、偏光成分であるP波およびS波は異なる透過率(反射率)を呈するようになる。また、入射角に応じた透過率(反射率)の変動の挙動は、界面の両側における屈折率にも依存する。
一方、本件発明者らは、このような特性を利用して表示装置10の利用効率を向上させることを検討した。まず、光学シートの出光面で屈折して正面方向へ出射する光(図2の光L21および図3の光L31参照)について、着目した。このような正面方向へ出射する光の透過型表示部15内での利用効率を改善することができれば、表示装置10の正面方向輝度を直接的に向上させることができるからである。
具体的には、本件発明者らは、光学シートの出光面で屈折して当該光学シートから正面方向へ出射する光L21,L31の透過率を、当該光L21,L31が入射する出光面と光学シートのシート面とによってなされる角度(出光面角度)θaを変化させながら、調査した。結果として、広く用いられている安価な材料の屈折率の範囲(1.45以上1.60以下)内であれば、屈折率の相違が、正面方向への出射光の透過率の出光面角度に応じた変化挙動に影響を与えない、つまり、光学シートをなす材料の屈折率が変化したとしても、正面方向への出射光の透過率の出光面角度に応じた変化挙動はほぼ同様となる、ことが確認された。正面方向への出射光の透過率の出光面角度に応じた変化挙動の一例として、屈折率が1.49の材料からなる上述した光学シート40を用いて行った調査結果を、図4に示す。
なお、光学シート40へ入射した後、単位形状要素45で屈折して正面方向へ出射する光については、以下の式(1)および式(2)が成り立つ。ここで、式(1)および式(2)中における各角度θa,θ1,θ2,θ3は、図3に示すとおりである。すなわち、θ3は、本体部42内を透過する際の傾斜角度である。θ2は、単位形状要素45の出光面45aに対する入射角度(単位形状要素45の出光面45aの法線方向に対する光の入射方向の傾斜角度)である。θ1は、単位形状要素45の出光面45aに対する出射角度(単位形状要素45の出光面45aの法線方向に対する光の出射方向の傾斜角度)である。また、式中のnは光学シート(単位形状要素および本体部)をなす材料の屈折率の値である。
θa = θ1 = θ2 + θ3 ・・・式(1)
n × sin(θ2) = sin(θ1) ・・・式(2)
そして、式(1)および式(2)を変形することにより、本体部42内を透過する際の傾斜角度θ3、単位形状要素45の出光面45aに対する入射角度θ2、並びに、単位形状要素45の出光面45aに対する出射角度θ1を、以下の式(3)〜式(5)に示すように、出光面角度θaを用いて特定することができる。
θ1=θa ・・・式(3)
θ2=Arcsin(sin(θ1)/n) ・・・式(4)
θ3=θ1−Arcsin(sin(θ1)/n) ・・・式(5)
図4にも示されているように、広く用いられている安価な材料(屈折率:1.45〜1.60)からなる光学シート40から正面方向へ出射する光については、出光面角度θaが62°〜65°となった場合に、一方の偏光成分(P波)の透過率が最も高くなった。出光面角度θaが62°〜65°のピーク領域から小さくなるにつれて又は大きくなるにつれて、一方の偏光成分(P波)の透過率は低下していった。その一方で、他方の偏光成分(S波)の透過率は、出光面角度θaが大きくなるにつれて徐々に低下していった。つまり、他方の偏光成分(S波)の透過率は、出光面角度θaが小さいほど、高くなった。
一方、上述したように、透過型表示部15の下偏光板16は、一方の偏光成分であるP波のみを選択的に透過させ、他方の偏光成分であるS波を吸収してしまう。したがって、上述してきた実施の形態にように、光学シート40の単位形状要素45の配列方向が、下偏光板16の透過軸と平行になっていることが好ましい。このような構成によれば、光学シート40の出光面角度θaを調節することによって、透過型表示部15での光源光の利用効率を上昇させることができるためである。
図4の結果からすれば、透過光中に占めるP波の比率を高めるためには、出光面角度θaをできるだけ大きく設定することが好ましいと言える。出光面角度θaをできるだけ大きく設定することにより、P波の透過率を高めることができる。また、出光面角度θaをできるだけ大きく設定することにより、S波の反射率を高めることができ、これにより、透過型表示部15の下偏光板16でS波が吸収されることを防止して、逆に、当該S波を再利用し得るようにし向けることができる。
本実施の形態では、出光面角度θaが端部45b2から頂部45b1へ向けて小さくなっていく。したがって、単位形状要素45の出光面全体として出光面角度θaをできるだけ大きく設定するためには、出光面底角(端部45b2における出光面角度)θaaを大きめに設定することが好ましい。とりわけ、本件発明者が種々の条件を変更して実験を繰り返したところ、広く用いられている安価な材料(屈折率:1.45〜1.60)からなる光学シート40では、出光面底角θaaが55°以上であれば、集光シート30と透過型表示部15の下偏光板16との間に光学シート40を配置することによって、光学シート40を表示装置10に組み込まない場合よりも、正面方向輝度を上昇させ得ることを、目視で確認することができた。この点から、出光面底角θaaを55°以上に設定することが好ましい。
また、図4にも示されているように、広く用いられている安価な材料(屈折率:1.45〜1.60)からなる光学シート40では、出光面角度θaが62°〜65°でP波の透過率が最も高くなる。したがって、出光面角度θaが最も大きい出光面底角θaaが65°以上となっていることが好ましい。出光面底角θaaが65°以上となっている場合には、単位形状要素45の出光面45aのうちの端部45b2と頂部45b1との間に、P波を最高の透過率で透過させる領域が含まれるようになるからである。この点から、出光面底角θaaを65°以上に設定することが非常に好ましい。
その一方で、本件発明者らが種々の条件を変更して実験を繰り返したところ、出光面角度θaを大きくし過ぎると、透過光のスペクトル分布が不均一となった。広く用いられている安価な材料(屈折率:1.45〜1.60)からなる光学シートでは、出光面角度θaが75°を超えると、目視により、表示装置10の色再現性の劣化が感じとられるようになった。また、出光面角度θaが75°を超えると、図4に示すように、P波の透過率が急激に低下し始める。そして、上述した光学シート40について言えば、出光面底角θaaが75°を超えると、集光シート30と透過型表示部15の下偏光板16との間に光学シート40を配置した場合と、光学シート40を表示装置10に組み込まない場合とで、正面方向輝度の大小を目視により判断することができなくなった。つまり、出光面底角θaaが75°を超えると、もはや、光学シート40を設けることにより、目視で判断し得る程度に正面方向輝度を上昇させることは不可能となった。これらの点から、出光面底角θaaを75°以下に設定することが好ましい。
加えて、本件発明者らが種々条件を変更して実験を行ったところ、出光面底角θaaが75°を超える場合には、図5を参照しながら後述するように、急斜面となっている単位形状要素45の端部45b2で反射した後、単位形状要素45の出光面45aの他の領域から屈折して出射する光(例えば、図5の光L52)が多く存在するようになる。このような光は、透過型表示部15で遮断されることなく漏れ出し、表示装置10に表示される映像のコントラストを著しく低下させるようになる。そして、このようなコントラストの低下を防止するためにも、出光面底角θaaを75°以下に設定することが好ましい。
さらに、上述したように、光学シート40の本体部42は、主として光学シート40の単位形状要素45の配列方向に光を拡散させる拡散機能を有している。そして、このような光学シート40によれば、極めて効果的に光源光の利用効率を高めることが可能となる。
通常、図2に点線で示された輝度の角度分布のように、光学シート40に入射する光L22には、反射板22等の作用により、正面方向へ進む光が最も多く含まれている。このような光L22は、本体部42からの光拡散作用により光学シートの主切断面内において拡散され、例えば、図2に点線で示すような輝度の角度分布から、図2に実線で示すような角度分布に変化する。つまり、光学シート40の本体部42の拡散作用によって、光学シート40の単位形状要素45の配列方向に平行な面において、正面方向をピークとして正面方向を中心としたある程度の角度範囲内に収まっていた輝度の角度分布が、ピーク輝度を下げるとともに全体的に平坦化させられる。
一方、上述してきたように、広く使用に供されている屈折率が1.45〜1.60の範囲内である材料を用いて作製された光学シート40においては、屈折して正面方向へ出射するようになる光L21に対して偏光分離作用を最も効果的に及ぼすことができる単位形状要素45の出光面角度θaは62°〜65°である。そして、このような出光面角度θa(62°〜65°)の出光面で正面方向へ屈折する光は、本体部45の法線方向ndに対して25°〜30°程度の傾斜角度θ3(図3参照)で単位形状要素45の出光面45aに向けて本体部42内を進む光(例えば、図2における光L22bおよび光L22c)である。
そして、本実施の形態によれば、上述したように、光学シート40の単位形状要素45に入射する直前に、本体部42の拡散作用によって、単位形状要素45からの偏光分離機能を効果的に及ぼされ得る方向へ、光の進行方向を変更することができる。つまり、本体部42の拡散機能によって、光学シート40の単位形状要素45から有効に偏光分離機能を受ける光の光量を増大させることができる。これにより、光の利用効率を効果的に向上させることができ、結果として、正面方向輝度をさらに改善することも可能となる。
なお、本体部42の拡散機能により、正面方向へ進む光L22a(図2参照)が拡散され、当該光L22aの進行方向が正面方向以外の方向へ変化してしまう。つまり、光学シート40の本体部42への入射後における正面方向輝度が、入射前における正面方向輝度よりも低下してしまう可能性がある。しかしながら、本体部42の出光側には単位形状要素45が設けられ、単位形状要素45は、出光面45aにおける屈折によって集光機能を発揮し得る。加えて、上述したように、本体部42の拡散機能により、単位形状要素45の偏光分離機能が極めて効果的に発揮されるようになることこら、光の利用効率を効果的に向上させることにより、結果として、正面方向輝度をさらに改善することも可能となる。
なお、図7に示した調査結果においては、本体部42の異方性拡散機能を設けることによって、正面方向輝度が若干増加している。その一方で、図7からは、本体部42の異方性拡散機能を設けることにより、光源光の利用効率が大幅に上昇していること、および、輝度の角度分布の変化がなだらかになっていること、が明瞭に理解され得る。
また、上述したように、単位形状要素45の端部45b2から本体部42のシート面と平行な方向に単位形状要素45の幅の15%の長さ分だけずれた位置の単位形状要素45の出光面角度θaが、40°以上であることが好ましい。本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、広く用いられている安価な材料(屈折率:1.45〜1.60)からなる光学シートでは、目視で判断され得る正面方向輝度の上昇を確保し得る偏光分離機能は、出光面角度θaを40°以上に設定することによって発現された。また、表示領域のうちの30%以上の領域において、出光面角度θaが40°以上となっている場合に、表示装置10において正面方向輝度の上昇を視認し得ることが確認された。具体的な計測結果として、正面方向輝度の5%の上昇が得られた。
ところで、単位形状要素45を含む光学シート40を用いた場合、正面方向輝度を向上させることができるが、正面方向とは異なる比較的に大きな出射角度域(例えば60°〜75°)に、小さな輝度ピークを生じさせてしまうことがある。このように大きな出射角度に形成された輝度ピークはサイドローブとも呼ばれ、表示装置において有効に活用することはできない。すなわち、このような光が発生することにより、光源のエネルギ効率(光源光の利用効率)を低下させてしまうことになる。さらにそれだけでなく、代表的な透過型表示部である液晶表示パネル(LCDパネル)においては、このような光を完全に遮断することができない。したがって、黒を表示したい場合にも、光が液晶表示パネルを抜けてしまい、結果として表示される映像のコントラストが低下し、画質を悪化させることにもなる。
正面方向以外に輝度ピークが生じてしまう原因として、以下のことが原因であると考えられている。図5に示すように、単位形状要素45に入射する光の中には、単位形状要素45の出光面45aを透過することなく、単位形状要素45の出光面45aで反射する光L51がある。このような光のうちの一部L51は、単位形状要素45の出光面45aで反射を繰り返し、その進行方向を入光側へ向ける。その一方で、このような光のうちの一部には、単位形状要素45の出光面45aで反射した後、単位形状要素45の出光面45aの他の領域から屈折して出射する光L52も含まれている。そして、このような光L52が、サイドローブを形成しているものと考えられている。このことは、シミュレーションによっても確認されている。また、二つの平坦面を出光面として有するプリズムシートにおいて、サイドローブが顕著となることにも合致している。
そして、上述した本実施の形態においては、一方の偏光成分であるS波が、通常よりも高い反射率で反射されるようになる。図4に示すように、S波の反射率は、出光面角度θaが大きくなるのにともなって、大きくなっていく。したがって、とりわけ出光面角度θaが最も大きくなる単位形状要素45の端部45b2近傍に入射するS波は、最も高い反射率で反射されるようになる。
一方、本実施の形態においては、上述したように、光学シートの主切断面において、単位形状要素45の全幅に対する割合において、頂部45b1を中心とした15%以上の領域において、出光面角度θaが15°以下となっている。すなわち、頂部45b1を中心とした領域に出光面角度θaが極端に小さい出光面45aが設けられている。この結果、偏光分離機能によるS波の反射によって単位形状要素45で反射される光が増加したとしても、サイドローブの発生を効果的に抑制することができるようになっている。
具体的には、最も高い反射率で反射される単位形状要素45の端部45b2に入射した光L53は、単位形状要素45の出光面45aで一度反射して、出光面角度θaが15°以下の出光面45a、あるいは、出光面角度θaがそれほど大きくない出光面45aへ入射する。同様に、端部45b2よりも幾分頂部45b1側にて単位形状要素45へ入射する光L54も、単位形状要素45の出光面45aで一度反射した後、出光面角度θaが15°以下あるいはそれほど大きくない角度となっている領域の出光面45aへ入射する。そして、図5に示すように、これらの光L53,L54は、屈折して極めて大きな出射角度で出射する、あるいは、全反射して入光側に戻るようになる。
本件発明者らが実験を重ねたところ、出射角度が80°以上になる場合は、当該光は無駄になってしまうが、透過型表示部15に入射して目視で判断され得る程度に画質を劣化させてしまうことはなかった。そして、光学シートの主切断面における単位形状要素45の全幅に対する割合において、頂部45b1を含む15%以上の領域内で、出光面角度θaが15°以下となっている場合には、正面方向へ屈折する入射角度で単位形状要素45の端部45b2に向かい、当該端部45b2において反射された光L53が、その後、当該単位形状要素45から80°以上の出射角度で出射する、あるいは、当該単位形状要素45から出射した後に隣の単位形状要素に入射するようになった。
なお、出光面角度θaが端部45b2から頂部45b1へ向けて小さくなっていく単位形状要素45において、正面方向へ屈折する入射角度で単位形状要素45の端部45b2から離れた領域における出光面45aへ入射した光L55は、サイドローブの原因とはなりにくい傾向がある。そもそも、このような光L55は、単位形状要素45の出光面45aへの入射角度が比較的に小さくなる。したがって、図4に示すように、単位形状要素45の出光面45aへ入射した際に反射される光量は少ない。また、単位形状要素45の出光面45aへ入射した際に反射されたとしても、ほとんどの場合、進路方向が入光側へ向けられ、本体部42へ再入射するか、隣の単位形状要素へ入射する。以上のことから、正面方向へ屈折する入射角度で単位形状要素45の端部45b2から離れた領域(例えば、頂部45b1の近傍)における出光面45aへ入射した光L55は、本実施の形態において、サイドローブの原因とはなりにくい。
また、単位形状要素45の出光面45aに入射する光の一部には、その入射角度が全反射臨界角度を超えていることに起因して、出光面45aで全反射する光L51(図5参照)もある。そして、本件発明者らが種々の条件を変更して実験を繰り返したところ、出光面角度θaが端部45b2から頂部45b1へ向けて小さくなっていく単位形状要素45を、光学シートの主切断面における単位形状要素45の全幅に対する割合において、頂部45b1を含む15%以上の領域内で、出光面角度θaが15°以下となるように設計することにより、出光面45aで全反射した光L51を起因とするサイドローブも効果的に抑制することができた。
以上の結果、本実施の形態によれば、単位形状要素45で反射する光が増加したとしても、サイドローブの発生を効果的に抑制することができるようになっている。なお、この点については、本件発明者らの実験によっても、その効果(サイドローブの抑制)が確認されている。
以上のような本実施の形態によれば、光学シート40の単位形状要素45の出光面45a、とりわけ出光面45aのうちの側方領域に、概ね正面方向に屈折し得る角度で入射する光のうち、特定の偏光成分(例えば、P波)を高い透過率で正面方向へ出射させ、その他の偏光成分(例えば、S波)を高い反射率で反射することができる。結果として、その他の偏光成分(例えば、S波)に依存した光学シート40の出光面40aにおける正面方向輝度は低下するが、特定の偏光成分(例えば、P波)に依存した光学シート40の出光面40aにおける正面方向輝度については大幅に上昇させることが可能となる。このような傾向は、透過光を主として光学シート40の単位形状要素45の配列方向に拡散させる異方性拡散機能を光学シート40の本体部42に付与することによって、より顕著となる。
なお、面光源装置20においては、単位形状要素45の出光面45aで反射された光のうちの多くは、反射を繰り返す等して、再び光学シート40へ入射して再利用され得る。そして、このような光の偏光状態は、反射によって変化する。すなわち、単位形状要素45の出光面45aにおいて反射したその他の偏光成分(例えば、S波)は、特定の偏光成分(例えば、P波)として、光学シート40へ再び入射し得る。この点から、例えば図4のデータそのものから予想されるよりも、極めて効果的に、特定の偏光成分に依存した光学シート40の出光面40aにおける正面方向輝度を上昇させることができる。
すなわち、光学シート40は、特定の偏光成分(例えば、P波)をその他の偏光成分(例えば、S波)から選択して取り出す、偏光分離機能を有している。そして、この偏光分離機能が、光学シート40から正面方向へ出射していく光に対して極めて効果的に発揮されるように、光学シート40は形成されている。したがって、自然光のうちの特定の偏光成分のみを利用する透過型表示部15、典型的には液晶パネルと組み合わせて用いる場合には、表示装置10における光源光の利用効率を向上させ、これにより、極めて効果的に正面方向輝度を向上させることができる。
なお、この光学シート40において、単位形状要素45の主切断面における断面形状は、出光側に先細りする形状となっている。したがって、単位形状要素45の外形状の一部分(端部45b2側の領域)を、偏光分離機能の向上に注目して設計したとしても、単位形状要素全体として、単位形状要素45の外形状に起因した優れた集光機能を維持することが可能となるだけでなく、サイドローブ等の発生を防止し得るように構成することも可能となる。
なお、以上の実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
例えば、上述した実施の形態において、光学シート40の単位形状要素45が互いに隣接して配置されている例を示したが、これに限られない。例えば、図8に示すように、隣り合う二つの単位形状要素45間に平坦部48が形成されていてもよいし、図9に示すように、隣り合う二つの単位形状要素45間に凹部49が形成されていてもよい。
なお、変形例を説明するための図8および図9において、図1〜図7に示す上述の実施の形態と同一に構成され得る部分には同一符号を付している。
また、上述した実施の形態において、光学シート40の単位形状要素45がすべて同一の構成を有する例を示したが、これに限られない。一例として、一枚の光学シート40内に異なる形状を有した単位形状要素が含まれていてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、光学シート40の本体部42の入光側面42b(光学シート40の入光面40b)をなす単位レンズ46の一例を説明したが、上述した単位レンズ46は単なる例示に過ぎず、種々の変更を行うことができる。例えば、単位レンズ46の断面形状が、楕円の一部分に相当する形状や円の一部分に相当する形状であってもよい。また、単位レンズ46の断面形状が、単位レンズ46の長手方向に沿って変化するようにしてもよい。さらに、並べて配列された多数の単位レンズ46が互いに異なる構成を有するようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、光学シート40の本体部42の入光側面42b(光学シート40の入光面40b)をなす単位レンズ46によって、光学シート40の本体部42に異方性の光拡散機能が付与される例を示したが、これに限られない。例えば、本体部42の入光側面42bに凹凸が形成され、この凹凸をなす凹部および凸部が線状に延びるようにしてもよい。この凹部および凸部の長手方向が、光学シートのシート面上において、光学シート40の単位光学要素45の長手方向に対して45°未満の角度をなす場合、本体部42は凹凸によって、透過光を主として単位形状要素45の配列方向へ拡散させる異方性拡散機能を有するようになる。なお、このような凹凸は、種々の既知な方法によって形成することができる。一例として、本体部42の入光側面42bにヘアライン加工を施すことによって、本体部42の入光側面42bに凹凸を極めて容易に形成することができる。
さらに、上述した実施の形態において、集光シート30の一例を説明したが、上述した集光シート30は単なる例示に過ぎず、種々の変更を行うことができる。例えば、集光シート30の単位形状要素35の断面形状が、主切断面において、円形状の一部分または楕円形状の一部分からなっている例を示したが、これに限られない。単位形状要素35の断面形状を、例えば、三角形等の多角形状にしてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、面光源装置20の光源25の発光部25aが、線状に延びる冷陰極管からなる例を示したが、これに限られない。光源25として、点状のLED(発光ダイオード)や面状のEL(電場発光体)等からなる発光部を有するようにしてもよい。また、上述した実施の形態において、光学シート40が直下型の面光源装置20に適用されている例を示したが、これに限られない。上述した光学シート40を、例えばエッジライト型(サイドライト型等とも呼ばれる)の面光源装置に適用することも可能であり、このような場合においても、光学シート40は直下型の面光源装置20に適用された場合と略同様の作用効果を奏することができる。
さらに、上述した実施の形態において、光学シート40が組み込まれた面光源装置20および透過型表示装置10の全体構成の一例を説明したが、これに限られず、適宜変更することができる。例えば、種々の機能を有した光学シート等を、面光源装置20および透過型表示装置10にさらに組み込んでもよい。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。