以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
実施形態1.
本発明の第1の実施形態では、現在航行中の航空機がイベントを生じさせた場合、その航空機およびその周辺の航空機の状態と、そのイベントの内容とを示す情報(後述の基底事例データ)を生成する。また、過去においてイベントを生じさせた航空機およびその周辺の航空機の状態と、過去に生じたそのイベントの内容と、そのイベントに応じて航空機に指示された管制指示とを含む情報(後述の比較事例データ)を予め記憶しておき、基底事例データに類似する比較事例データを特定することにより、イベントを生じさせた現在航行中の航空機に対する的確な管制指示を特定する。
図1は、本発明の第1の実施形態の構成例を示すブロック図である。第1の実施形態の管制支援システムは、基底事例データを生成する基底事例データ生成装置1と、比較事例データを記憶する比較事例データ記憶装置2と、基底事例データと比較事例データとの類似度を計算する類似度計算装置3と、類似度計算結果に基づいて、イベントを生じさせた現在航行中の航空機に対する管制指示を表示する推薦事例表示装置4とを備える。
基底事例データは、イベントを生じさせた航空機の航空機情報と、その航空機の周辺の航空機の航空機情報と、そのイベントの内容を示すイベント情報とを含む情報である。基底事例データは、航空機の状況に関する事例を示しているので基底事例データと記すが、単に、基底データと称してもよい。
比較事例データは、過去にイベントを生じさせた航空機の航空機情報と、その航空機の周辺の航空機の航空機情報と、過去に生じたそのイベントの内容を示すイベント情報と、そのイベントに対して実際に採用された管制指示とを含む情報である。
イベントの例として、管制官に管制指示を求める管制要求の送信や、航空機同士の異常接近等が挙げられる。イベントは、管制官が管制指示を出すべき航空機状態ということができる。ここで、航空機状態には、航空機自身の状態だけでなく、航空機の周囲の状態を含めてもよい。また、基底事例データや比較事例データに含まれる航空機情報は、例えば、航空機の位置、高度、進行方向、進行速度等の情報であるが、航空機情報はこれらの情報に限定されない。
基底事例データ生成装置1は、管制ログ記憶部11と、イベント検出手段12と、基底事例データ生成手段13とを備えている。
管制ログ記憶部11は、管制システム(図示せず)によって生成される管制ログを記憶する記憶装置である。管制ログは空域における各種データの記録であり、最新の各種データが管制ログとして管制ログ記憶部11に追加される。管制ログの例として、「管制官と航空機の交信(管制要求、管制指示等)を記録した管制交信ログ」、「空域を航行中の全航空機の位置を記録した位置ログ」、「空域を航行中の全航空機の高度を記録した高度ログ」、「空域を航行中の全航空機周辺の風速を記録した風速ログ」等がある。管制ログは、地上の管制官が、空域を航行中の全航空機が定期的に送信する航空機情報(例えば、空域を航行中の各航空機を識別するための識別子、航空機情報発信時刻、位置、高度、風速等から構成)を受信する毎に、管制システム(図示せず)によって自動的に追記される。空域とは、管制官が管制すべきエリア全体である。なお、本発明の管制支援システム自身が管制ログを生成して管制ログ記憶部11に記憶させてもよい。
イベント検出手段12は、管制ログ記憶部11を監視し、新たなイベントが生じたと判定すると、基底事例データ生成手段13に、基底事例データを生成させる。以下、管制システムが新たな管制要求を受信したことをイベントとする場合を例にして説明する。この場合、イベント検出手段12は、いずれかの航空機から管制要求を受信したことを検出すると、基底事例データ生成手段13に基底事例データを生成させる。
基底事例データ生成手段13は、管制ログ記憶部11が記憶する複数の管制ログから、イベント(本例では管制要求)と、その管制要求を送信した航空機の航空機情報と、その航空機の周辺の航空機の航空機情報を抽出し、基底事例データを生成する。航空機情報は、前述のように、航空機の位置、高度、進行方向、進行速度、および航空機周囲の風速等であるが、これらに限定されない。基底事例データ生成手段13は、生成した基底事例データを類似度計算装置3に出力する。
ここでは、空域全体の情報を管制ログとして管制ログ記憶部11に記憶させておき、基底事例データ生成手段13が管制ログから、イベント(管制要求)と、その管制要求を送信した航空機およびその周囲の航空機の航空機情報とを抽出する場合を示した。管制システム(図示せず)が管制ログをイベント検出手段12に出力し、イベント検出手段12は、イベント検出時に、そのイベントの内容を示すイベント情報と、イベントを発生させた航空機の航空機情報と、その航空機の周辺の航空機の航空機情報とを管制ログ記憶部11に記憶させ、基底事例データ生成手段13は、管制ログ記憶部11に記憶された各情報をまとめることによって基底事例データを生成してもよい。
イベント検出手段12および基底事例データ生成手段13は、例えば、プログラムに従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。すなわち、CPUが、プログラムに従って、イベント検出手段12および基底事例データ生成手段13として動作してもよい。あるいは、イベント検出手段12および基底事例データ生成手段13が別々の専用回路として実現されていてもよい。
比較事例データ記憶装置2は、過去の管制ログを用いて予め生成された比較事例データを複数記憶する。比較事例データ記憶装置2は、過去においてイベントを発生させた航空機の航空機情報と、その航空機の周辺の航空機の航空機情報と、そのイベントのイベント情報と、そのイベントに対して実際に採用された管制指示とを含む比較事例データを複数記憶していればよい。従って、過去におけるイベント発生時に全空域に存在していた全航空機の情報を全て記憶していなくてもよい(少なくともイベントを発生させた航空機の周辺の航空機の航空機情報を記憶すればよい)。比較事例データ記憶装置2は、例えば、複数の比較事例データを記憶するデータベース装置によって実現される。
類似度計算装置3は、航空機コンテキスト計算手段31と、事例間類似度計算手段32とを備えている。
航空機コンテキスト計算手段31は、基底事例データ生成手段13から入力される基底事例データに含まれる各航空機の航空機情報と、比較事例データ記憶装置2に記憶されている比較事例データに含まれる各航空機の航空機情報とを対応付ける。そして、対応付けた航空機情報が示す航空機の状況の類似度である航空機類似度を計算する。この航空機類似度は、航空機の航空機情報の相関の度合いということもできる。以下、航空機類似度を航空機コンテキストと記す。航空機コンテキスト計算手段31は、例えば、基底事例データに含まれる航空機情報が示す航空機の位置および進行方向と、比較事例データに含まれる航空機情報が示す航空機の位置および進行方向との類似度を航空機コンテキストとして計算してもよい。ただし、航空機情報が示す他の属性の類似度を航空機コンテキストとして計算してもよい。航空機コンテキスト計算手段31は、基底事例データと、個々の比較事例データとの間で、航空機情報同士の対応付け、および対応付けた航空機情報の航空機コンテキスト算出を行う。
事例間類似度計算手段32は、航空機情報の組(換言すれば航空機の組)毎の各航空機コンテキスト計算に用いた基底事例データおよび比較事例データの類似度を、その各航空機コンテキストを用いて計算する。例えば、事例間類似度計算手段32は、航空機の組毎の各航空機コンテキストの平均値を、基底事例データおよび比較事例データの類似度としてもよい。あるいは、他の方法で基底事例データおよび比較事例データの類似度を求めてもよい。以下、基底事例データおよび比較事例データの類似度を事例間類似度と記す。また、事例間類似度計算手段32は、基底事例データとの間で事例間類似度を計算した各比較事例データを事例間類似度とともに推薦事例表示装置4に出力する。
航空機コンテキスト計算手段31および事例間類似度計算手段32は、例えば、プログラム(類似度計算プログラム)に従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。すなわち、類似度計算装置3はプログラムを記憶するプログラム記憶手段(図示せず)を備え、CPUがそのプログラムを読み込んで、プログラムに従って、航空機コンテキスト計算手段31および事例間類似度計算手段32として動作してもよい。また、航空機コンテキスト計算手段31および事例間類似度計算手段32が別々の専用回路として実現されてもよい。
推薦事例表示装置4は、推薦事例表示手段41を備える。推薦事例表示手段41は、予め設定された事例表示ルールに従って、管制官に対して比較事例データを推薦する。具体的には、推薦事例表示手段41は、各比較事例データを、基底事例データとの間で計算された事例間類似度とともに入力される。そして、推薦事例表示手段41は、事例間類似度に基づいて管制官に推薦すべき比較事例データを選択し、その比較事例データを出力する。例えば、推薦事例表示装置4が備えるディスプレイ装置(図示せず)に表示する。比較事例データには、管制指示が構成要素として含まれるため、比較事例データを表示するということは、管制指示を表示して、管制官にその管制指示を推薦することになる。なお、少なくとも管制指示を表示すれば、比較事例データ全体を表示しなくてもよい。
また、事例表示ルールは、事例間類似度に基づいて比較事例データを選択し、管制指示を管制官に推薦する態様を定めるルールである。例えば、事例表示ルールとして、基底事例データとの事例間類似度が最大の比較事例データを選択し、その比較事例データに含まれる管制指示と事例間類似度を表示するというルールが挙げられる。ただし、事例表示ルールは、この例に限定されない。
推薦事例表示手段41は、例えばプログラムに従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。この場合、CPUがプログラムに従って推薦事例表示手段41として動作する。
次に、動作について説明する。
図2は、第1の実施形態の管制支援システムの動作の例を示すフローチャートである。管制システム(図示せず)は、各種管制ログを生成し、基底事例データ生成装置1の管制ログ記憶部11に記憶させる。基底事例データ生成装置1のイベント検出手段12は、管制ログ記憶部11に記憶された管制ログを監視し、イベントを検出する(ステップA1)。例えば、管制交信ログを監視して、新たな管制要求が記録された場合、その管制要求をイベントとして検出する。
基底事例データ生成手段13は、管制ログ記憶部11に記憶された管制ログから、イベント(本例では、管制要求とする。)を発生させた航空機の航空機情報と、その航空機の周辺の航空機の航空機情報と、そのイベント(管制要求)の内容を示すイベント情報とを抽出し、その情報をまとめた基底事例データを生成する(ステップA2)。基底事例データ生成手段13は、航空機情報として、例えば、航空機の位置、高度、進行方向、進行速度、および航空機周囲の風速等を抽出すればよい。基底事例データ生成手段13は、生成した基底事例データを類似度計算装置3に出力する。
類似度計算装置3の航空機コンテキスト計算手段31は、基底事例データ生成手段13から基底事例データが入力されると、比較事例データ記憶装置2から比較事例データを取得する(ステップA3)。例えば、航空機コンテキスト計算手段31が比較事例データ記憶装置2に比較事例データを要求し、その要求に応じて比較事例データ記憶装置2が比較事例データを類似度計算装置3に送信する。そして、航空機コンテキスト計算手段31は、その比較事例データを受信する。また、ステップA3毎に、航空機コンテキスト計算手段31が比較事例データを取得し、類似度計算装置3がその比較事例データに関して、ステップA4,A5を実行する。
次に、航空機コンテキスト計算手段31は、基底事例データに含まれる航空機情報と比較事例データに含まれる航空機情報とを対応付け、航空機情報の組(換言すれば、航空機の組)を定める。このとき、航空機コンテキスト計算手段31は、航空機間の距離が一定距離以内となる基底事例データ側の航空機と比較事例データ側の航空機とを対応付ける。具体的には、同一の有効グリッドに属する航空機を特定することによって、航空機を対応付ける。有効グリッドについては後述する。航空機コンテキスト計算手段31は、対応付けした航空機毎に、航空機情報間の航空機コンテキストを計算する(ステップA4)。例えば、航空機の位置および航空機の進行方向に関する航空機コンテキスト(航空機位置・進行方向コンテキスト)を計算する。進行方向に関する航空機コンテキストは、例えば、進行方向ベクトルの内積として計算できる。航空機コンテキスト計算手段31は、基底事例データと比較事例データとにより計算した各航空機コンテキストを事例間類似度計算手段32に出力する。
次に、事例間類似度計算手段32は、ステップA4で計算した各組の航空機コンテキストを用いて、基底事例データおよび比較事例データの事例間類似度を計算する(ステップA5)。例えば、事例間類似度計算手段32は、各組の航空機コンテキストの平均値を計算し、その平均値を基底事例データおよび比較事例データの事例間類似度としてもよい。
次に、例えば、航空機コンテキスト計算手段31が、比較事例データ記憶装置2に記憶された比較事例データのうち、基底事例データとの事例間類似度を計算すべき全比較事例データについて、事例間類似度を計算したか否かを判定する(ステップA6)。まだ事例間類似度を計算していない比較事例データがあれば(ステップA6におけるNo)、類似度計算装置3はステップA3以降の処理を繰り返す。
基底事例データに含まれるイベント情報と共通のイベント情報を含む比較事例データのみを、事例間類似度の計算対象としてもよい。例えば、航空機コンテキスト計算手段31は、ステップA3で、基底事例データに含まれる管制指示と合致する管制指示を含む比較事例データのみを取得してもよい。そして、航空機コンテキスト計算手段13は、ステップA6において、基底事例データと共通のイベント情報を含む全比較事例データについて事例間類似度計算が完了したか否かを判定すればよい。また、比較事例データ記憶装置2に記憶される全比較事例データを事例間類似度の計算対象としてもよい。
また、基底事例データとの事例間類似度を計算すべき全比較事例データについて事例間類似度計算が完了したならば(ステップA6におけるYes)、ステップA3で取得した各比較事例データと、ステップA5で計算した各事例間類似度とを推薦事例表示装置4に出力する。推薦事例表示装置4の推薦事例表示手段41は、その各比較事例データおよび各事例間類似度が入力されると、予め定められた事例表示ルールに従い、事例間類似度に基づいて比較事例データを選択し(ステップA7)、選択した比較事例データを表示する(ステップA8)。この結果、管制官に、的確な管制指示を含む比較事例データが提示できる。
次に、第1の実施形態の具体例を説明する。
基底事例データ生成装置1、類似度計算装置3および推薦事例表示装置4は、例えば、入出力インタフェース、CPU(Central Processing Unit )等の演算処理部、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive )等の記憶部等を備えるコンピュータにより実現される。比較事例データ記憶装置2は、例えば、入出力インタフェース、CPU(Central Processing Unit )等の演算処理部、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive )等の記憶部等を備えるデータベース装置により実現される。
一般的な管制システムは、空域を航行中の全航空機が定期的に送信する航空機情報を用いて、「管制官と航空機の交信(管制要求、管制指示等)、航空機の位置、高度、航空機周辺の風速等」を管制ログとして逐次ロギングしている。この管制システムの例として、レーダ管制業務における航空路レーダ情報処理システム(RDP:Rader Data Processing sytem)等が挙げられる。また、管制システムは、航空機情報を解析し導出できる情報も、同様に管制ログとして逐次ロギングする。航空機情報を解析し導出できる情報の例として、特定の航空機位置を一定期間に渡ってトレースして得られる航行軌跡等が挙げられる。本発明では、航空機から受信した航空機情報を解析して導出できる情報も航空機情報として扱う。航空機情報の例を図3に示す。航空機情報として、航空機自体の情報だけでなく、航空機周辺の情報も用いることができる。航空機自体の情報として、管制指示、管制要求、位置、高度、進行方向、進行速度、上昇・下降速度、機首方向、航行軌跡、航行性能(旋回性能等)、燃費、残燃料、内気圧、航行ルートからの逸脱距離等が挙げられる。また、航空機周辺に関する情報として、航空機周囲の天候、風速、風向き、気温、外気圧、隣接航空機までの距離等が挙げられる。ただし、基底事例データや比較事例データに含まれる航空機情報は、図3に示す各内容を全て含んでいなくてもよく、また、他の内容を含んでいてもよい。
管制システムは、管制官と航空機との交信(管制要求、管制指示等)を管制交信ログとして、管制ログ記憶部11に記憶させる。なお、管制ログ記憶部11は、管制システムに設けられている一時メモリ、ハードディスク等の記憶装置であってもよい。あるいは、管制システムとは独立した一時メモリ、ハードディスク等の記憶装置であってもよい。図4は、管制ログの例を示す。図4に示す「EVA25」等は、航空機を一意に識別するための識別情報であり、一般にコールサインと呼ばれる。図4に示す項番L001(2007年2月13日 18時30分11秒)は、EVA25が管制官に対して管制要求(上昇要求)を送信したことを示している。そして、図4に示す項番L010(2007年2月13日 18時35分14秒)は、管制官がEVA25に対して管制指示(上昇要求の承認)を送信したことを示している。図4には、管制要求および管制指示以外の管制ログも含まれている。項番L002,L004,L005,L007,L008,L009は、EVA25を含む複数の航空機が自機位置(航空機位置)を管制官に送信したことを示している。これらのログは、位置ログとして管制ログ記憶部11に記憶される。
イベント検出手段12は、管制ログ記憶部11に記憶された管制交信ログを監視する。そして、例えば、上記のEVA25の上昇要求のような管制要求が管制交信ログに追記されると、新たなイベントとして検出する。また、管制要求以外のイベントの例として、航空機同士の異常接近(コンフリクト)の発生が挙げられる。イベント検出手段12は、隣接航空機までの距離が新たに管制ログ記憶部11に記憶されたときに、その距離が予め定められた閾値以下であればコンフリクト(イベント)が発生したと判定すればよい。また、イベントは、管制要求やコンフリクト以外であってもよい。どのような場合をイベントとして検出するのかは、予めイベント検出手段12に設定しておけばよい。
イベント検出手段12がイベントを検出すると、基底事例データ生成手段13は、管制ログ記憶部11にアクセスし、イベントを発生させた航空機およびその周辺の航空機の最新の航空機情報と、イベントの内容を示すイベント情報とを管制ログ記憶部11から抽出して、基底事例データを生成する。管制要求発生をイベントとして検知した場合の基底事例データの例を図4、図5および図6を用いて具体的に説明する。管制要求を発生させた航空機(例えば、図4に示す「EVA25」)を注目機と記す。さらに、管制要求の発生時刻(例えば、2007年2月13日 18時30分11秒)において、注目機の周辺を航行中の航空機を周辺機と記す。なお、どの範囲までに存在する航空機を周辺機とするか(例えば、注目機を中心に半径何kmまでに存在する航空機を周辺機とするか)は、予め定めておけばよい。図5は、注目機および周辺機の位置関係を示す説明図である。図5に示す黒い三角形は注目機(EVA25)を示し、白い三角形は周辺機(EVA18、CAL003、SIA37、CPA873、FDX94)を示している。また、図5では、緯度・経度を座標軸として位置を示している。以下、説明を簡単にするため、周辺機が5機である場合を例に説明する。一般の管制業務では、注目機の周辺に150〜200機の周辺機が存在することが多いが、そのように周辺機数が多数存在しても、本発明の効果は得られる。
イベント検出手段12が管制交信ログを監視して、EVA25が発信した管制要求を検出したとする。すると、基底事例データ生成手段13は、管制要求発生時刻において管制ログ記憶部11に記録済み最新の管制ログを参照し、注目機および周辺機の航空機情報(ここでは、位置、進行方向および高度とする)と、注目機が発生させた管制要求とを抽出する。ただし、各航空機の航空機情報は同時に管制ログに記録されるわけではないので、管制要求発生時刻に合致する周辺機の航空機情報が管制ログに含まれているとは限らない。その場合、基底事例データ生成手段13は、管制要求発生時刻から時間を過去に遡って得られる最新の航空機情報を抽出すればよい。このように管制要求発生時刻における周辺機の航空機情報がない場合、その航空機の過去における直近の航空機情報を抽出して、管制要求発生時刻の航空機情報とみなせばよい。過去の直近の航空機情報が生成された時刻と管制要求発生時刻との差は大きくても15分程度であり、管制要求発生時刻の直近の航空機情報を管制要求発生時刻における情報とみなすことができる。基底事例データ生成手段13は、抽出した航空機情報(位置、進行方向、高度)および管制要求をまとめることによって基底事例データを作成し、類似度計算装置3に出力する。
図6は、基底事例データの例を示す。図6に示す例では、イベント発生時刻、注目機および周辺機のコールサイン、および注目機であるか周辺機であるかを識別する情報も、航空機情報(位置、進行方向、高度)および管制要求とともに基底事例データに含めている。「TRUE」は注目機を示し、「FALSE」は周辺機を示している。また、周辺機は管制要求を発生させていないので周辺機の管制要求は「NULL」とし、注目機の管制要求が具体的に基底事例データに含める。図6に示す例では、管制要求イベントに関する基底事例データは、1つのイベント発生時刻、1つ注目機の識別情報、少なくとも1つの周辺機の識別情報、注目機の管制要求、注目機および周辺機の位置、進行方向および高度を含んでいる。図6に示す例では、位置を緯度・経度座標系で示している。また、進行方向を、緯度・経度座標系に準拠し大きさを1で正規化した方向ベクトルで示している。従って、進行方向ベクトルの大きさは1である。また、高度をフライトレベル(単位記号FL、1FL=100フィート)で示している。位置、進行方向、高度等の表し方は、上記の例に限定されない。例えば、管制システムで管制官が使用するディスプレイ(例えば、RDPにおけるレーダディスプレイ)の座標系で与えてもよい。また、本説明では、管制官が管制指示の生成において特に重要視する航空機の位置、進行方向および高度を抽出して基底事例データを生成する方法を説明したが、管制ログから注目機および周辺機の進行速度、航行軌跡および燃費等を抽出し、基底事例データを生成してもよい。
比較事例データ記憶装置2は、管制システムの一時メモリ、ハードディスク等の記憶装置、あるいは、管制システムとは独立して設けられた一時メモリ、ハードディスク等の記憶装置であってもよい。比較事例データ記憶装置2は、過去の管制ログを用いて予め作成された複数の比較事例データを記憶している。
図7は比較事例データの例を示す説明図である。図7に示す比較事例データは、図6に例示する基底事例データと同様に、1つのイベント発生時刻、1つ注目機の識別情報、少なくとも1つの周辺機の識別情報、注目機の管制要求、注目機および周辺機の位置、進行方向および高度を含んでいる。さらに、その管制要求に対して実際に採用された管制指示と、比較事例データ番号(比較事例データの識別情報)も含んでいる。図7に示す2つの比較事例データ(C001,C002)は、管制要求の種類が上昇要求で同一であるが、管制指示が異なっている。比較事例データ番号C001では、上昇要求(REQUEST CLIMB TO FL420)に対して、上昇要求承認(CLIMB TO AND MAINTAIN FL420)を管制指示として返信している。一方、比較事例データ番号C002は、上昇要求(CLIMB TO AND MAINTAIN FL350)に対して、上昇要求否認(UNABLE)を管制指示として返信している。C002において上昇要求を否認している理由は、注目機UAL869がFL350に上昇すると、周辺機GIA881と位置および高度が異常接近し、かつ進行方向が向かい合わせとなるためである。
航空機コンテキスト計算手段31は、基底事例データ生成手段13から基底事例データを入力されると、その基底事例データと、比較事例データ記憶装置2から取得する比較事例データとを用いて、航空機コンテキストを計算する。本例では、航空機の位置、進行方向および高度を用いた航空機コンテキストの計算例を説明する。
航空機コンテキスト計算手段31は、基底事例データ生成手段13から基底事例データを入力されると、基底事例データの構成要素である管制要求を参照する。そして、基底事例データの管制要求と共通の管制要求を含む比較事例データを、比較事例データ記憶装置2から取得する。管制要求には、要求内容に応じて識別番号が割り振られるため、その識別番号のマッチング処理によって、基底事例データの管制要求と共通の管制要求を含む比較事例データを取得できる。管制官に対して管制指示を提示することが本発明の目的であるので、少なくとも管制要求の種類(例えば上昇要求、下降要求等)を合致させる必要がある。管制要求が基底事例データと共通の比較事例データのみを取得することで、例えば上昇要求に対して、「下降要求時の管制指示」を提示することを回避できる。また、類似度計算装置3の処理負荷を抑えることができる。
管制要求が共通であるか否かを判定する方法として、例えば、以下の方法がある。第1の方法は、管制要求の種類(上昇要求、下降要求等)が共通であるか否かを判定する方法である。第2の方法は、管制要求の種類および引数(上昇要求で指定した希望高度、下降要求で指定した希望高度等)が共通であるか否かを判定する方法である。第3の方法は、管制要求の種類、引数およびイベント発生時刻が共通であるか否かを判定する方法である。イベント発生時刻が共通であるとは、基底事例データにおけるイベント発生時刻から一定期間内であるということを意味する。例えば、第2の方法であれば、基底事例データの管制要求が「REQUEST CLIMB TO FL360」の場合、フライトレベル360までの上昇を要求する管制要求を含む比較事例データだけを取得する。また、第3の方法であれば、基底事例データのイベント発生時刻(管制要求発生時刻)が「2007年02月13日 18:30:11」の場合、例えばイベント発生時刻が「2006年02月13日 18:30:11」以降(過去1年以内)の比較事例データだけを取得する。管制要求が共通であるか否かを判定する方法は、上記の例に限定されず、複数の判定方法を複合してもよい。
航空機コンテキスト計算手段31は、比較事例データを取得すると、基底事例データおよび比較事例データから、注目機の位置、進行方向および高度を抽出し、注目機同士の位置、進行方向および高度が共通になるように、注目機の位置および方向を変換する。そして、注目機の変換に従って、基底事例データが示す全周辺機および比較事例データが示す全周辺機の位置および方向を変換する。
注目機の位置、進行方向に着目し、事例データ(基底事例データおよび比較事例データ)の緯度・経度座標系を、XY座標系に変換する過程を図8を用いて説明する。図8に示す事例データ(ここでは基底事例データとする)は、注目機AP0、周辺機AP1、AP2を示し、図8(a)に示すように位置、進行方法は緯度・経度座標系で表されているとする。航空機コンテキスト計算手段31は、注目機の位置がXY座標系の原点となり、さらに注目機の進行方向がXY座標系のY軸正の方向に合致するよう、事例データの注目機および各周辺機を並行移動および回転移動する。航空機コンテキスト計算手段31は、比較事例データに関しても同様に、注目機および各周辺機を並行移動および回転移動する。基底事例データおよび比較事例データに関して、注目機の位置、進行方向に着目し、XY座標変換した結果、注目機の位置および進行方向が合致した基底事例データおよび比較事例データを導出できる。
次に、注目機の高度に着目し、事例データの緯度・経度平面に直交する高度軸を、XY平面に直交するZ軸に変換する過程を図9を用いて説明する。図9に示す事例データ(ここでは基底事例データとする)は、注目機AP0、周辺機AP1、AP2を示し、図9(a)に示すように高度軸はフライトレベル単位系で表されているとする。航空機コンテキスト計算手段31は、注目機の高度がZ軸およびXY座標系平面の交点に合致するよう、事例データの注目機および周辺機を並行移動する。航空機コンテキスト計算手段31は、比較事例データに関しても同様に、注目機および各周辺機の位置を変換する。基底事例データおよび比較事例データに関して、注目機の高度に着目し、Z軸変換した結果、注目機の高度が合致した基底事例データおよび比較事例データを導出できる。
以上のように、注目機の位置、進行方向および高度に着目した3次元座標変換の結果、注目機の位置、進行方向および高度が合致した基底事例データおよび比較事例データを得られる。ただし、本説明で使用した座標系以外(例えば、レーダディスプレイ座標系)を使用する場合、使用する座標系に合せた3次元変換を行えばよい。
次に、航空機コンテキスト計算手段31は、基底事例データおよび比較事例データにおいて注目機および周辺機の位置を表すXYZ座標系を用いて、航空機コンテキストを計算する航空機ペアを選定する。航空機ペアの選定方法を、図10を用いて説明する。
図10は、基底事例データが示す各航空機(注目機APB0、周辺機APB1,APB2,APB3,APB4)、および比較事例データが示す各航空機(注目機APC0、周辺機APC1,APC2,APC3,APC4,APC5)の航空機位置をXY座標系に重畳表示した模式図である。航空機コンテキスト計算手段31は、基底事例データの周辺機の位置に着目し、基底事例データの周辺機のXY座標系における所定範囲内(ここでは半径R以内とする)に比較事例データにおける周辺機が存在するか否かを計算する。基底事例データにおける周辺機の所定範囲内に比較事例データにおける周辺機が存在する場合、その所定範囲内(本例では半径Rで構成される円)を有効グリッドとよぶ。一方、その所定範囲内に比較事例データにおける周辺機が存在しない場合、その所定範囲内(半径Rで構成される円)を非有効グリッドとよぶ。グリッドサイズを示すパラメータ(本説明では半径R)は、予め航空機コンテキスト計算手段31に設定しておけばよい。図11は、有効グリッドおよび非有効グリッドを示す説明図である。基底事例データおよび比較事例データにおける航空機の位置が図10のように表される場合、図11に示すように、APB1およびAPC1が存在する有効グリッドGV001、APB2およびAPC2が存在する有効グリッドGV002、APB3およびAPC3、APC4が存在する有効グリッドGV003、および非有効グリッドGI001が選定できる。
航空機コンテキスト計算手段31は、有効グリッドの中心に位置する基底事例データにおける周辺機と、その有効グリッド内に存在する比較事例データにおける1機の周辺機とで航空機ペアを定める。例えば、図11に示す有効グリッドGV002では、APB2およびAPC2の航空機ペアを定める。1つの有効グリッド内に、比較事例データにおける異なる2機以上の周辺機が存在する場合、航空機コンテキスト計算手段31は、有効グリッドの中心に位置する基底事例データにおける周辺機に近い方の周辺機を選択して航空機ペアを定める。例えば、図11に示す有効グリッドGV003では、比較事例データにおける周辺機APC3,APC4が存在するが、航空機コンテキスト計算手段31は、基底事例データにおける周辺機APB3に近い方の周辺機APC3を選択し、APB3およびAPC3で航空機ペアを定める。または、1つの有効グリッド内に、比較事例データにおける異なる2機以上の周辺機(有効グリッドGV003の場合、APC3,APC4)が存在する場合、一対一のペアを定めずに以降の処理を行ってもよい。
また、航空機の位置、進行方向、高度を用いて航空機コンテキストを計算する場合、注目機同士の位置、進行方向、高度は一致する。このため、注目機ペアの航空機コンテキストは、一般に全比較事例データに対して一定値となる。よって、本例では、注目機同士の航空機ペアを定める必要はないものとする。ただし、航空機コンテキストの計算方法によっては、注目機APB0,ABC0の航空機ペアを定めてもよい。
上記の例では、航空機位置(XY座標系)に着目した円形の有効グリッドを生成する場合を示した。有効グリッドの態様は円形に限定されない。例えば、基底事例データにおける周辺機を中心とする半径Rの球形を有効グリッドとしてもよい。また、予めXYZ座標系の空間を格子状に分割し、分割後の範囲を有効グリッドとしてもよい。
次に、航空機コンテキスト計算手段31は、有効グリッドに含まれる航空機ペアに関する航空機コンテキストを計算する。本例では、航空機の位置、進行方向、高度を用いた航空機コンテキストの計算例を説明する。
第1の航空機コンテキスト計算方法として、航空機の位置、進行方向に基づく航空機コンテキスト(航空機位置・進行方向コンテキスト)の計算方法がある。この計算の例を、図12を用いて説明する。航空機コンテキスト計算手段31は、有効グリッドGV002に含まれる基底事例データの周辺機APB2の進行方向ベクトルaおよび比較事例データAPC2の進行方向ベクトルbを用いて、以下に示す式(1)の計算を行って航空機位置・進行方向コンテキストPaを求める。
また、第2の航空機コンテキストの計算方法として、航空機の高度に基づく航空機コンテキスト(航空機高度コンテキスト)の計算方法がある。この計算の例を、図13を用いて説明する。航空機コンテキスト計算手段31は、有効グリッドGV002に含まれる基底事例データにおける周辺機APB2の高度Aおよび比較事例データにおける周辺機APC2の高度Bを用いて、式(2)の計算を行って航空機高度コンテキストPbを求める。
また、図11に例示する有効グリッドGV003のように、1つの有効グリッド内に比較事例データにおける異なる2機以上の周辺機が存在する場合、航空機コンテキスト計算手段31は、比較事例データにおけるそれぞれの周辺機について、基底事例データにおける周辺機との航空機位置・進行方向コンテキストを計算し、その結果得られる複数の航空機位置・進行方向コンテキストから航空機位置・進行方向コンテキストを決定してもよい。例えば、複数の航空機位置・進行方向コンテキストの最大値、最小値、または中央値を、その有効グリッドにおける航空機コンテキストとして決定してもよい。航空機高度コンテキストに関しても同様である。
また、航空機コンテキスト計算手段31は、航空機コンテキストとして、上記の航空機位置・進行方向コンテキストPa、または、航空機高度コンテキストPbを求めればよいが、他の航空機コンテキストを求めてもよい。例えば、航空機コンテキスト計算手段31は、有効グリッド毎に、航空機位置・進行方向コンテキストPaおよび航空機高度コンテキストPbを計算し、さらにPa×Pbを計算して、その計算結果を航空機コンテキストとしてもよい。この航空機コンテキストを航空機位置・進行方向・高度コンテキストと記す。
また、航空機情報として航空機の周囲の風速や外気圧等を含む比較事例データおよび基底事例データから航空機コンテキストを計算する場合、航空機コンテキスト計算手段31は、風速や外気圧の値を要素とするベクトル(特徴ベクトルと記す)を生成してもよい。そして、基底事例データ側の特徴ベクトルと、比較事例ベクトル側の特徴ベクトルとのユークリッド距離を計算し、その計算結果を航空機コンテキストとしてもよい。
有効グリッド毎の航空機コンテキスト計算後、事例間類似度計算手段32は、有効グリッド毎に得られた航空機コンテキストから事例間類似度を計算する。事例間類似度の計算方法として、有効グリッド毎に得られた航空機コンテキストの平均値を計算し、その平均値を事例間類似度としてもよい。基底事例データbおよび比較事例データcの事例間類似度をS(b,c)とする。また、有効グリッドの数がn個であり、i番目の有効グリッドの航空機コンテキストをCPiとする。事例間類似度計算手段32は、例えば、以下に示す式(3)のように、事例間類似度S(b,c)を計算すればよい。
式(3)によって計算される事例間類似度は、航空機コンテキスト計算手段31によって定められたn個の有効グリッドでの航空機コンテキストCPi(i=1〜n)の平均値である。しかし、有効グリッド数nと比較して、非有効グリッド数が非常に多い場合、式(3)で計算する事例間類似度S(b,c)は、基底事例データbおよび比較事例データcの類似度を的確に表現しない場合がある。そこで、有効グリッド率を用いてS(b,c)を計算してもよい。有効グリッド率は、有効グリッドおよび非有効グリッドの総数に対する有効グリッド数の割合であり、有効グリッド数をn、非有効グリッド数をmとすると、n/(n+m)で表される。事例間類似度計算手段32は、有効グリッド率n/(n+m)を用いて、式(4)の計算を行って、事例間類似度S(b,c)を計算してもよい。
さらに、図11に示す有効グリッドの生成方法では、基底事例データの周辺機の近傍に存在する比較事例データの周辺機を特定し、有効グリッドを生成している。つまり、基底事例データの周辺機を基準として有効グリッドを定めることになる。一方、比較事例データにおける周辺機を基準にして有効グリッドを定めて航空機コンテキスト、および事例間類似度を計算することもできる。このとき、基底事例データにおける周辺機を基準として求めた事例間類似度S(b,c)と、比較事例データにおける周辺機を基準として求めた事例間類似度S(c,b)が異なることもある。そこで、基底事例データにおける周辺機を基準として、式(4)の計算を行って、基底事例データに対する比較事例データの類似度を表すS(b,c)を求め、同様に、比較事例データにおける周辺機を基準として、式(4)の計算を行って、比較事例データに対する基準事例データの類似度を表すS(c,b)を求め、両者を乗算した結果を、基準事例データおよび比較事例データの事例間類似度としてもよい。すなわち、事例間類似度計算手段32は、以下に示す式(5)の計算を行って得られるSを事例間類似度としてもよい。
S=S(b,c)×S(c,b) 式(5)
事例間類似度計算手段32は、航空機コンテキスト計算手段31取得した全比較事例データ(すなわち、基底事例データと管制要求が共通する各比較事例データ)に関して、事例間類似度を計算する。そして、事例間類似度計算手段32は、その各比較事例データ、および比較事例データ毎に計算した事例間類似度を推薦事例表示手段41に出力する。このとき、事例間類似度計算手段32は、基底事例データも推薦事例表示手段41に出力してもよい。
すると、推薦事例表示手段41は、事例間類似度計算手段32から入力された比較事例データの中から、予め設定された事例表示ルールに従って、表示すべき比較事例データ、あるいは比較事例データの一部を選択し、例えば、ディスプレイ装置(図示せず)に表示する。この結果、比較事例データに含まれている管制指示を推薦することになる。
事例表示ルールの例として、「事例間類似度が最大である比較事例データの管制指示および事例間類似度を表示する」というルールが挙げられる。この場合、推薦事例表示手段41は、事例間類似度が最大である比較事例データに含まれる管制指示を事例間類似度とともに表示すればよい。
事例表示ルールの例として、「事例間類似度の大きい順に上位の所定順位(例えば5位)までの比較事例データに着目して、その各事例間類似度の管制指示および事例間類似度を表示する」というルールが挙げられる。この場合、推薦事例表示手段41は、事例間類似度の大きさが上位5位までに該当している各比較事例データの管制指示を事例間類似度とともに表示すればよい。
また、事例表示ルールの例として、「予め定められた閾値(事例間類似度閾値と記す)よりも事例間類似度が大きい比較事例データを表示する」というルールが挙げられる。この場合、推薦事例表示手段41は、事例間類似度が事例間類似度閾値を越えている比較事例データを選択し、その比較事例データを表示する。また、事例間類似度が事例間類似度閾値を越えている比較事例データが存在しなければ、推薦事例表示手段41は、比較事例データを表示しない。
ここでは、事例表示ルールの例を3つ挙げたが、事例表示ルールは上記の例に限定されない。比較事例データ全体を表示するか、管制指示を含む一部のみを表示するか、また、事例間類似度も表示するか等は、事例表示ルールにおいて定めておけばよい。
航空機コンテキストの計算方法、および事例間類似度の計算方法を変えて、本発明の管制支援システムによって選択される比較事例データの正解率を評価した。図14は、正解率の評価結果を示す説明図である。図14に示すように、各計算方法毎に、事例間類似度が最大の比較事例データを選択するルールを用いた場合と、事例間類似度上位5番目までの各比較事例データを選択するルールを用いた場合とで、正解率を評価した。また、航空機コンテキストおよび事例間類似度の計算方法として、以下の5種類の計算方法で計算を行った。第1の計算方法は、式(1)による航空機位置・進行方向コンテキストを計算し、有効グリッド率を考慮せずに式(3)により事例間類似度を計算する方法である。第2の計算方法は、式(2)により航空機高度コンテキストを計算し、有効グリッド率を考慮せずに式(3)により事例間類似度を計算する方法である。第3の計算方法は、航空機位置・進行方向・高度コンテキスト(航空機位置・進行方向コンテキストと航空機高度コンテキストの積)を計算し、有効グリッド率を考慮せずに式(3)により事例間類似度を計算する方法である。第4の計算方法は、航空機位置・進行方向・高度コンテキストを計算し、有効グリッド率を考慮して式(4)により事例間類似度を計算する方法である。第5の計算方法は、基底事例データを基準とする場合と、比較事例データを基準とする場合のそれぞれについて、航空機位置・進行方向・高度コンテキストを計算し、有効グリッド率を考慮した式(4)の計算を行い、S(b,c),S(c,b)を求め、式(5)により事例間類似度を計算する方法である。また、この評価では、実際の管制事例データを94事例用意し、1事例を基底事例データとし、残りの93事例を比較事例データとした。その結果、第5の計算方法で事例間類似度を計算する場合に、正解率が最良となった。具体的には、図14に示すように、事例間類似度1位の正解率が0.89となり、事例間類似度上位5位に着目した正解率は0.75であり、他の計算方法よりも高い正解率が得られた。
本発明における航空機コンテキストおよび事例間類似度の計算方法は、上記の例に限定されない。例えば、管制官毎の管制指示生成における癖等を考慮して、航空機コンテキストおよび事例間類似度の計算方法、航空機コンテキストおよび事例間類似度の計算で使用するパラメータをチューニングしてもよい。その結果、推薦精度(例えば、事例間類似度1位の正解率、事例間類似度上位5位に着目した正解率等)を向上できる。
本実施形態では、基底事例データに含まれる航空機の航空機情報と、比較事例データに含まれる航空機の航空機情報とで航空機コンテキストを計算し、航空機コンテキストを用いて、基底事例データと比較事例データとの事例間類似度を計算する。そして、事例間類似度に基づいて、比較事例データを出力する。例えば、事例間類似度が最大であったり、事例間類似度の順位が上位である比較事例データを出力する。また例えば、事例間類似度が閾値より大きい比較事例データを出力する。これにより、管制モデルに近い管制指示を管制官に提示して推薦することができる。すなわち、イベントを発生させた注目機だけでなく、その周辺の周辺機も考慮した管制指示を選択して、管制官に推薦することができる。
また、上記の例では、基底事例データおよび比較事例データで、注目機の位置や進行方向が一致するように、注目機および周辺機の位置情報を変換して、有効グリッドを定めたが、このような位置情報の変換を行わずに有効グリッドを定めてもよい。この場合、航空機コンテキスト計算手段31は、変換前における緯度、経度、高度等で定められる絶対座標系において、基底事例データが示す航空機を基準とする所定範囲内に比較事例データが示す航空機が存在しているならば、その範囲を有効グリッドとして航空機コンテキストを計算してもよい。この場合、周辺機と注目機との間の航空機コンテキストを計算することもある。なお、注目機の位置や進行方向が一致するように注目機および周辺機の位置情報を変換する方が、事例間類似度の精度が向上する。よって、位置情報を変換することがこのましい。
実施形態2.
図15は、本発明の第2の実施形態の構成例を示すブロック図である。第1の実施形態と同様の構成要素については図1と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。第2の実施形態の管制支援システムは、第1の実施形態と同様に、基底事例データ生成装置1と、比較事例データ記憶装置2と、類似度計算装置3と、推薦事例表示装置4とを備える。本実施形態は、類似度計算装置3が航空機コンテキスト計算手段31および事例間類似度計算手段32に加えてコンテキスト重み付け手段33を備える点が、第1の実施形態と異なる。
コンテキスト重み付け手段33は、航空機コンテキスト生成手段31が計算した有効グリッド毎の航空機コンテキストに対して、航空機コンテキストに応じた重み係数を乗じることによって、航空機コンテキストの重み付けを行う。航空機コンテキストに重み係数を乗算した結果を、重み付き航空機コンテキストと記す。コンテキスト重み付け手段33は、重み付き航空機コンテキストを事例間類似度計算手段32に出力する。なお、重み係数は重み値と呼ばれることもある。
重み係数は、有効グリッドの位置に基づいて定めてもよい。例えば、注目機に近い有効グリッドほど重み係数を大きく定めたり、あるいは、注目機の進行方向等の特定方向の有効グリッドの重み係数を他の方向の有効グリッドより大きく定めたりしてもよい。このとき、方向だけでなく有効グリッドにおける周辺機の進行方向にも応じた重み係数を定めてもよい。例えば、注目機の後方の有効グリッドであって、周辺機が注目機方向に進行している場合に、その有効グリッドの重み係数を他の有効グリッドよりも大きく定めてもよい。
また、重み係数は、現在時刻と、比較事例データ側のイベント情報が示すイベントの発生時刻との差に基づいて定めてもよい。すなわち、現在時刻と、比較事例データが示すイベントの発生時刻との差が小さいほど、重み付け係数を大きく定めてもよい。この場合、他の重み付けの条件を考慮しなければ、一つの比較事例データに関しては、各有効グリッドの重み係数は共通となり、比較事例データ毎に重み係数が異なることになる。なお、現在時刻として、基底事例データ側のイベント情報が示すイベントの発生時刻を用いてもよい。
また、コンテキスト重み付け手段33は、注目機と有効グリッドとの距離、注目機に対する有効グリッドの方向、現在時刻と過去のイベント発生時刻の差等の個々の条件毎に重み係数を定め、それらの重み係数の積を計算することによって、複数の条件を考慮した重み係数を計算してもよい。
事例間類似度計算手段32は、重み付き航空機コンテキストを用いて、事例間類似度を計算する。
コンテキスト重み付け手段33は、例えば、プログラムに従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。すなわち、CPUが、プログラムに従って、航空機コンテキスト生成手段31、コンテキスト重み付け手段33、事例間類似度計算手段32として動作してもよい。あるいは、コンテキスト重み付け手段33が他の手段とは別の専用回路として設けられていてもよい。
次に、本実施形態の動作について説明する。図16は、第2の実施形態の管制支援システムの動作の例を示すフローチャートである。第1の実施形態と同様の処理は、図2と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
ステップA1〜ステップA4の処理は、第1の実施形態と同様である。航空機コンテキスト計算手段31は、ステップA4で計算した有効グリッド毎の航空機コンテキストをコンテキスト重み付け手段33に出力する。
コンテキスト重み付け手段33は、ステップA4で計算された各航空機コンテキストに、その航空機コンテキストに応じた重み係数を乗じて重み付き航空機コンテキストを計算し、事例間類似度計算手段32に出力する(ステップB1)。既に説明したように、重み係数として、注目機と有効グリッドとの距離に応じた重み係数を用いてもよい。より具体的には、基底事例データにおける注目機の位置と、有効グリッドに含まれる基底事例データ側の周辺機との距離(有効グリッド距離と記す。)に応じた重み係数を用いてもよい。また、現在時刻と比較事例データのイベント発生時刻との差に応じた重み係数を用いてもよい。あるいは、有効グリッド位置やイベント発生時刻等の複数種類の条件を考慮した重み係数を計算し、その重み係数を用いてもよい。
以降のステップA5,A6の動作、および、各比較事例データについて事例間類似度を計算したと判定した後のステップA7,A8の動作は、第1の実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、ステップA5において、事例間類似度計算手段32は、重み付き航空機コンテキストを用いて、事例間類似度を計算する。
次に、第2の実施形態におけるコンテキスト重み付け手段33の動作の具体例を説明する。図17は、有効グリッド距離に応じた重み係数の計算例を示す説明図である。図17(a)に示す例では、有効グリッドGV002の有効グリッド距離(基底事例データにおける注目機APB0と周辺機APB2との距離)は、92.6kmである。また、有効グリッドGV001の有効グリッド距離は185.2kmである。
コンテキスト重み付け手段33は、重み係数Wを、有効グリッド距離(Lとする)の関数として、以下に示す式(6)により計算する。
本例では、有効グリッドGV002の重み係数はW=0.37となり、有効グリッドGV001の重み係数はW=0.14となる。すなわち、有効グリッドが注目機から遠く、有効グリッド距離Lが大きいほど、重み係数Wは小さくなる。ただし、式(6)以外の方法で重み係数を定めてもよい。
コンテキスト重み付け手段33は、このように求めた重み係数を各有効グリッドの航空機コンテキストに乗じることによって、重み付き航空機コンテキストを計算し、事例間類似度計算手段32に出力する。事例間類似度計算手段32は、その重み付き航空機コンテキストに基づいて事例間類似度を計算する。このように事例間類似度を計算すれば、注目機に近い有効グリッドが多いほど、事例間類似度が高くなる。よって、注目機周辺を航行する航空機の航空機情報(位置、進行方向、高度等)を特に注視して管制指示を選択できるため、管制モデルに則した管制指示の提示が可能となる。管制業務では、注目機周辺の航空機の航空機情報(位置、進行方法、高度等)を特に注しして管制指示を生成することが多いので、有効グリッド距離に応じた重み付けを行うことでより的確な管制指示を推薦できる。
他の重み係数の例を説明する。コンテキスト重み付け手段33は、比較事例データが示すイベント発生時刻に基づいて重み係数を定めてもよい。コンテキスト重み付け手段33は、現在時刻と、比較事例データが示すイベントの発生時刻を参照し、両者の差分時間を計算する。そして、差分時間が大きいほど重み係数が小さくなるような差分時間の関数に、計算した差分時間を代入して重み係数を計算する。従って、比較事例データが古いデータであるほど、重み係数は小さくなる。この重み係数を用いて重み付き航空機コンテキストを計算し、さらに事例間類似度を計算すれば、古い比較事例データ(例えば、30年前のデータ等)における管制指示を推薦することを回避できる。
また、管制業務では、注目機の管制要求が上昇要求・下降要求などの高度変更に関する管制要求であった場合、注目機の現在高度と、注目機の要求高度(上昇要求で指定された高度・下降要求で指定された高度)との間を飛行する航空機を特に注視して、管制指示を生成する場合が多い。これを鑑みて、例えば、注目機の現在高度と、注目機の要求高度との間を飛行する航空機で規定される有効グリッドの重み係数が、他の有効グリッドより大きくなるように重み係数を定めてもよい。
さらに、管制業務では、注目機の後方に位置し、かつ注目機の進行方向と逆方向に航行する航空機(注目機から遠ざかる航空機)には特に配慮せずに、管制指示を生成する場合が多い。これを鑑みて、例えば、注目機の後方に位置し、かつ注目機の進行方向と逆方向に航行する航空機で規定される有効グリッドの重み係数が、他の有効グリッドより小さくなるように重み係数を定めてもよい。すなわち、注目機の後方の有効グリッドであって、その有効グリッドにおける比較事例データ側の航空機の進行方向が注目機の逆方向であるという条件が成立するときに、その有効グリッドの重み係数を他より低くするように定めてもよい。
第2の実施形態でも第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、第2の実施形態では、コンテキスト重い付け手段33が有効グリッド毎に重み係数を計算し、航空機コンテキストを重み付けする。そして、その結果を用いて、事例間類似度計算手段32が事例間類似度を計算する。従って、注目機に近い有効グリッドを重視して管制指示を推薦したり、古い比較事例データを避けて、できるだけ最近の比較事例データを重視して管制指示を推薦したりするなど、柔軟な管制指示の推薦が可能になる。
実施形態3.
図18は、本発明の第3の実施形態の構成例を示すブロック図である。第1の実施形態および第2の実施形態と同様の構成要素については図1、図15と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。第3の実施形態の管制支援システムは、第1および第2の実施形態と同様に、基底事例データ生成装置1と、比較事例データ記憶装置2と、類似度計算装置3と、推薦事例表示装置4とを備える。本実施形態は、類似度計算装置3が航空機コンテキスト計算手段31、事例間類似度計算手段32およびコンテキスト重み付け手段33に加えて空域コンテキスト計算手段34を備える点が第2の実施形態と異なる。
本実施形態では、航空機コンテキストだけでなく、空域の状態の類似度を示す空域コンテキストを計算する。空域の状態を示す情報を空域情報と記す。図19は、空域情報として用いられる項目の例を示す。図19に示すように、例えば、航空機数、航空機密度、航空機の分布、航行禁止エリア(どの領域が航行禁止であるか)、タービュランス発生エリア(どの領域にタービュランスが発生しているか)等を空域情報として表し、空域情報の類似度を空域コンテキストとする。
空域情報の一例として、空域をエリアに分割し、各エリアにおける航空機密度(スカラ値)や航空機の分布データ(スカラ値)を、エリア番号と対応付けたデータ配列が挙げられる。図20(b)は、このような空域情報を示している。本実施形態では、比較事例データに過去のイベント発生時における空域情報を含めておき、基底事例データにも空域情報を含める。そして、空域コンテキスト計算手段34が、基底事例データの空域情報と比較事例データの空域情報とに基づいて、空域コンテキストを計算する。空域情報は、航空機コンテキスト生成のための航空機情報(図3参照)、航空機(パイロット)との音声通信、および管制業務システムが具備する機能(例えば、航空気象台観測情報の取得機能)等によって、取得可能である。
本実施形態の基底事例データ生成手段13は、空域情報を含む基底事例データを生成する。図20は、第3の実施形態における基底事例データの例を示す。図20(a)は、第1、第2の実施形態における基底事例データと同様である。第3の実施形態の基底事例データ生成手段13、図20(b)に例示する空域情報も含めたデータを基底事例データとして生成する。すなわち、図20(a),(b)に例示するデータ全体を基底事例データとして生成する。
また、比較事例データ記憶装置2は、予め空域情報を含む比較事例データを記憶する。すなわち、比較事例データ記憶装置2が記憶する個々の比較事例データは、比較事例データが示すイベント発生時における空域情報を含んでいる。
空域コンテキスト計算手段34は、基底事例データの空域情報と比較事例データの空域情報との類似度を示す情報である空域コンテキストを計算する。空域コンテキストの例として、空域情報が航空機の分布を示す場合において、その空域情報の相関係数を示す空域分布コンテキスト等が挙げられる。空域分布コンテキストの計算方法については後述する。
コンテキスト重み付け手段33は、航空機コンテキスト計算手段31から入力される航空機コンテキストおよび空域コンテキスト計算手段34から入力される空域コンテキストに対して重み付けを行う。航空機コンテキストの重み付けは第2の実施形態と同様である。空域コンテキストに対する重み付けの例として、基底事例データ側のイベント情報が示すイベントの発生時刻と、比較事例データ側のイベント情報が示すイベントの発生時刻との差に基づいて重み係数を定め、その重み係数を空域コンテキストに乗算する処理が挙げられる。この場合、その時刻の差が小さいほど、重み係数を大きく定める。重み付けが行われた空域コンテキストを重み付き空域コンテキストと記す。コンテキスト重み付け手段33は、計算した重み付き航空機コンテキストおよび重み付き空域コンテキストを事例間類似度計算手段32に出力する。
事例間類似度計算手段32は、重み付き航空機コンテキストおよび重み付き空域コンテキストを用いて事例間類似度を計算する。事例間類似度計算手段32は、例えば、有効グリッド毎の重み付き航空機コンテキストの平均値と重み付き空域コンテキストとを乗算し、その乗算結果を事例間類似度とする。ただし、事例間類似度の計算方法は、この方法に限定されず、他の方法であってもよい。
空域コンテキスト計算手段34は、例えば、プログラムに従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。すなわち、CPUが、プログラムに従って、航空機コンテキスト生成手段31、空域コンテキスト計算手段34、コンテキスト重み付け手段33、事例間類似度計算手段32として動作してもよい。あるいは、空域コンテキスト計算手段34が他の手段とは別の専用回路として設けられていてもよい。
次に、本実施形態の動作について説明する。図21は、第3の実施形態の管制支援システムの動作の例を示すフローチャートである。第1の実施形態および第2の実施形態と同様の処理は、図2、図16と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
イベント検出手段12がイベントを検出すると(ステップA1)、基底事例データ生成手段13は、基底事例データを生成し、類似度計算装置3に出力する(ステップA2)。ただし、第3の実施形態では図20(b)に例示する空域情報を含む基底事例データを生成する。
次に、航空機コンテキスト計算手段31は、第1の実施形態と同様に、比較事例データ記憶手段2から比較事例データを取得する(ステップA3)。本実施形態では、空域コンテキスト計算手段34も、その比較事例データを取得する。空域コンテキスト計算手段34は、航空機コンテキスト計算手段31とは別に比較事例データ記憶装置2から航空機コンテキスト計算手段31と同一の比較事例データを取得してもよい。あるいは、空域コンテキスト計算手段34は、航空機コンテキスト計算手段31から比較事例データを入力されてもよい。次に、航空機コンテキスト計算手段31は、基底事例データおよび比較事例データから航空機コンテキストを計算する(ステップSA4)。航空機コンテキストの計算は、第1および第2の実施形態と同様に行えばよい。
また、空域コンテキスト計算手段34は、基底事例データの空域情報と比較事例データの空域情報とから空域コンテキストを計算し、コンテキスト重み付け手段33に出力する(ステップC1)。
コンテキスト重み付け計算手段33は、ステップA4で計算された各航空機コンテキストに対する重み付けを行う(ステップB1)。航空機コンテキストの重み付けは第2の実施形態と同様である。第3の実施形態では、コンテキスト重み付け計算手段33は、ステップB1において、空域コンテキストに対する重み付けも行う。コンテキスト重み付け計算手段33は、重み付けの結果である重み付き航空機コンテキストおよび重み付き空域コンテキストを事例間類似度計算手段32に出力する。
事例間類似度計算手段32は、重み付き航空機コンテキストおよび重み付き空域コンテキストを用いて、事例間類似度を計算する(ステップA5)。以降のステップA6の動作、および、各比較事例データについて事例間類似度を計算したと判定した後のステップA7,A8の動作は、第1の実施形態と同様である。
次に、第3の実施形態における空域コンテキストおよび事例間類似度の計算を、具体例を用いて説明する。まず、空域コンテキストをスカラ値として計算する場合を例にして説明する。また、本例では、空域情報が航空機の分布を表す場合を例にする。すなわち、空域情報が、空域を分割した各エリア毎の航空機数である場合を例にする。なお、エリア毎の航空機の密度を空域情報とする場合の動作も同様である。
図22は、エリア毎の航空機数を模式的に示す説明図である。図22に示す例では、空域を5行5列のエリアに分割し、行番号および列番号を並べた番号により各エリアを識別する。例えば、図22における第1行第5列のエリアは、「15」というエリア番号で識別する。また、図22に示す三角形の記号は航空機を表し、「3」等の数は、一つのエリア内における航空機数を示す。基底事例データ生成手段13は、図22に例示する航空機の分布を、エリア識別情報(エリア番号)とエリア内の航空機数とを対応付けた空域情報として表現し(図20(b)参照)、その空域情報を基底事例データ内に含める。ただし、エリア内に航空機が存在せず、航空機数が0であるエリアに関しては、そのエリア番号および航空機数(0)を空域情報に記述しなくてもよい。
また、比較事例データも、イベント発生時刻における空域情報として、基底事例データと同様の空域情報を含む。本例では、エリア番号とエリア内の航空機数とを対応付けた空域情報とを含んでいる。空域を分割したエリアの数は、比較事例データと基底事例データとで共通である。
空域コンテキスト計算手段34は、基底事例データと比較事例データとの間における、航空機の分布に関する相関係数を示す空域分布コンテキストを計算する。空域を分割した各エリアの数をnとし、i番目のエリアをその順番iで表すとする。i=1〜nである。また、基底事例データにおけるエリアiの航空機数をxiとし、比較事例データにおけるエリアiの航空機数をyiとする。また、xiの相加平均をxavgとし、yiの相加平均をyavgとする。このとき、空域分布コンテキストは、以下に示す式(7)で表され、空域コンテキスト計算手段34は、式(7)の計算により空域分布コンテキストQを計算してもよい。本例では、式(7)の結果得られる空域コンテキストはスカラ値である。
図23(a)は、基底事例データにおける航空機分布(エリア毎の航空機数)の例を示し、図23(b)は、比較事例データにおける航空機分布の例を示す。図23(a),(b)に例示する航空機分布が空域情報として与えられると、空域コンテキスト計算手段34は、式(7)の計算を行う。本例では、式(7)の計算により、空域分布コンテキストとして、0.79が得られる。空域分布コンテキスト0.79は、強い正の相関を意味する。空域コンテキスト計算手段34は、計算した空域分布コンテキストをコンテキスト重み付け手段33に出力する。
コンテキスト重み付け手段33は、例えば、現在時刻と、比較事例データ側のイベント情報が示すイベントの発生時刻との差に基づいて、重み係数を定める。この場合、現在時刻と、比較事例データが示すイベントの発生時刻との差が小さいほど、重み付け係数を大きく定めればよい。そして、コンテキスト重み付け手段33では、空域分布コンテキストにその重み係数を乗じることによって、空気分布コンテキストに対する重み付けを行う。コンテキスト重み付け手段33は、この結果得られた重み付き空域分布コンテキストを事例間類似度計算手段32に出力する。なお、上記の重み係数を定める際に、現在時刻として、基底事例データ側のイベント情報が示すイベントの発生時刻を用いてもよい。
事例間類似度計算手段32は、重み付き航空機コンテキストおよび空域分布コンテキストを用いて、事例間類似度を計算する。例えば、事例間類似度計算手段32は、重み付き航空機コンテキストを用いて、重み付き航空機コンテキストの平均値を計算し、その計算結果に空域分布コンテキストを乗算した結果を、最終的な事例間類似度としてもよい。事例間類似度計算手段32は、各比較事例データと、各比較事例データについて求めた事例間類似度とを推薦事例表示装置4に出力する。
また、事例間類似度計算手段32は、重み付き航空機コンテキストの平均値を第1の事例間類似度とし、空域コンテキスト(本例では空域分布コンテキスト)を第2の事例間類似度とし、基底事例データおよび比較事例データの類似度を、第1の事例間類似度および第2の事例間類似度の組で表してもよい。この場合、事例間類似度計算手段32は、各比較事例データと、各比較事例データについて求めた第1の事例間類似度および第2の事例間類似度とを推薦事例表示装置4に出力する。
推薦事例表示装置4の推薦事例表示手段41は、事例間類似度に基づいて比較事例データを選択し、その比較事例データを出力する。この動作は、第1および第2の実施形態と同様である。ただし、事例間類似度が、第1の事例間類似度および第2の事例間類似度の組で表される場合、事例表示ルールとして、例えば、「第1の事例間類似度の大きい順に上位の所定順位(例えば5位)までの比較事例データを選択し、第2の事例間類似度の大きい順に上位の所定順位(例えば5位)までの比較事例データを選択し、いずれの場合でも選択された比較事例データを、第1の事例間類似度および第2の事例間類似度とともに表示する。」等のルールを定めておけばよい。推薦事例表示手段41は、このようなルールに従って、第1の事例間類似度に着目した比較事例データを選択し、第2の事例間類似度に着目した比較事例データを選択し、その選択結果の積集合をなす比較事例データを表示する。
以上の例では、空域コンテキストとしてスカラ値を計算する場合を説明したが、空域コンテキストはスカラ値とは限らない。空域コンテキストが複数の数値を要素とするベクトル形式または行列形式で表されてもよい。以下、空域コンテキストを行列で表す場合について説明する。また、以下の説明では、空域を分割した個々のエリアが制限エリア(飛行規制されているエリア)に該当するか否かを示す情報を空域情報とする場合を例にする。個々のエリアにタービュランスが発生しているか否かを示す情報を空域情報とする場合も同様である。
図24は、個々のエリア毎に航行の制限があるか否かを表す空域情報を示す模式図である。図24(a)は、基底事例データに含まれる空域情報を示し、図24(b)は、比較事例データに含まれる空域情報を示している。図24に示す例では、空域を5行5列のエリアに分割し、行番号および列番号を並べた番号により各エリアを識別する。また、図24に示す黒丸は、規制またはタービュランスにより航空機の航行が制限されていることを示す。従って、図24(a)では、エリア24,32,45,51が制限エリアである。また、図24(b)では、エリア12,32,45,51が制限エリアである。
基底事例データに含まれる空域情報において、エリアijが制限エリアであるか否かをvijで表す。vij=1は、エリアijが制限エリアであることを意味し、vij=0は、エリアijが制限エリアでないことを意味する。ここで、iはエリアの行番号であり、jはエリアの列番号である。
同様に、比較事例データに含まれる空域情報において、エリアijが制限エリアであるか否かをwijで表す。wij=1は、エリアijが制限エリアであることを意味し、wij=0は、エリアijが制限エリアでないことを意味する。
空域コンテキスト計算手段34は、上記のように、エリア毎にvijで表された空域情報およびエリア毎にwijで表された空域情報が与えられると、i行j列の要素の値をvij×wijとする行列を計算する。そして、この行列を空域コンテキストとする。本例では、この空域コンテキストを空域制限コンテキストと記す。
例えば、図24(a)の状態を示す空域情報および図24(b)の状態を示す空域情報が与えられると、空域コンテキスト計算手段34は、式(8)の計算を行い、式(8)右辺の行列を空域制限コンテキストとして求める。
空域コンテキスト計算手段34は、空域制限コンテキストの個々の要素に対して重み係数を乗じることによって、空域制限コンテキストに対する重み付けを行う。空域コンテキスト計算手段34は、注目機の進行方向のエリアに対応する要素の重み係数を、他のエリアの重み係数よりも大きく定め、空域制限コンテキストの要素に重み係数を乗じる。例えば、基底事例データにおける注目機の進行方向のエリアに対応する要素の重み係数を、他のエリアの重み係数よりも大きく定め、空域制限コンテキストの要素に重み係数を乗じる。また、基底事例データにおける注目機だけでなく、比較事例データの注目機の進行方向を基準とする場合においても同様に重み係数を定め、その重み係数を乗算してもよい。すなわち、基底事例データにおける注目機の進行方向に基づく重み係数と、比較事例データにおける注目機の進行方向に基づく重み係数とを定め、それらの重み係数をそれぞれ要素に乗じてもよい。空域コンテキスト計算手段34は、重み付けを行った空域制限コンテキスト(重み付き空域制限コンテキスト)を事例間類似度計算手段32に出力する。
事例間類似度計算手段32は、行列で表される重み付き空域制限コンテキストを入力されると、例えば、その行列のユークリッドノルムを計算する。また、事例間類似度計算手段32は、重み付き航空機コンテキストを用いて、重み付き航空機コンテキストの平均値を計算し、その平均値に行列のユークリッドノルムを乗じた値を事例間類似度とすればよい。
以上の空域コンテキストや事例間類似度の計算は例示であり、他の方法で空域コンテキストや事例間類似度を求めてもよい。
第3の実施形態でも、第1および第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、第3の実施形態では、空域コンテキストも求め、空域コンテキストを考慮した事例間類似度を計算する。従って、空域情報を考慮して、管制官意思決定モデルに則した的確な管制指示を提示することができる。例えば、基底事例データと比較事例データとの間で、空域の航空機の分布が異なれば空域コンテキストの値が小さくなり、事例間類似度の値も小さくなる。また、例えば、基底事例データおよび比較事例データの一方では、タービュランス等による制限区域があり、他方では制限区域がない場合等では、同様に、事例間類似度が小さくなる。この結果、そのような比較事例データが管制官に提示されることを回避して、的確な管制指示を推薦することができる。
また、以上の第3の実施形態では、類似度計算装置3が、コンテキスト重み付け手段33を備える場合を説明したが、コンテキスト重み付け手段33を備えていなくてもよい。その場合、事例間類似度計算手段32は、重み付き航空機コンテキストおよび重み付き空域コンテキストの代わりに、航空機コンテキストおよび空域コンテキストを用いて事例間類似度を計算すればよい。
また、管制すべき空域全体を複数の管制官で分担して担当することが一般的である。その場合、管制すべき空域全体を分割しておき、その分割領域を対象に、空域コンテキストと同様の類似度を計算してもよい。例えば、空域を分割して分割領域を定め、注目機が属する分割領域のみに関して、第3の実施形態で示した方法と同様の方法で空域コンテキストを定めてもよい。この場合、空域を分割した分割領域において、さらに、図22に例示するような複数のエリアを定めて、空域コンテキストを求めればよい。
実施形態4.
図25は、本発明の第4の実施形態の構成例を示すブロック図である。第1から第3までの実施形態と同様の構成要素については図1、図15、図18と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。第4の実施形態の管制支援システムは、他の実施形態と同様に、基底事例データ生成装置1と、比較事例データ記憶装置2と、類似度計算装置3と、推薦事例表示装置4とを備える。本実施形態は、推薦事例表示装置4が推薦事例表示手段41に加えて推薦事例結果反映手段42を備える点が他の実施形態と異なる。
本実施形態では、比較事例データ記憶装置2は、選択頻度情報を含む比較事例データを記憶する。選択頻度情報は、比較事例データが推薦事例表示手段41によって推薦され、実際にその管制指示が管制官に採用された頻度の多さを示す情報である。選択頻度情報の例として、例えば、一定期間(例えば一ヶ月)における平均採用回数等が挙げられる。選択頻度情報は、採用され易さを表す評価値であるということもできる。
推薦事例表示手段41は、他の実施形態と同様に、事例表示ルールに従い、事例間類似度を参照して比較事例データを選択し、その比較事例データに含まれる管制指示を表示する。管制官は、その管制指示を確認して、表示された管制指示または他の管制指示を採用し、管制指示を入力するためのインタフェース部(図示せず)を介して管制指示を入力する。このインタフェース部(図示せず)は、推薦事例表示装置4に設けられていても、あるいは、推薦事例表示装置4に接続される他のシステムに設けられていてもよい。
推薦事例選択結果反映手段42は、推薦事例表示手段41が表示した管制指示が管制官によって採用されたか否かを検出する。換言すれば、管制官によって上記のインタフェース部に入力された管制指示が、推薦事例表示手段41が表示した管制指示のいずれかに該当するか否かを判定する。推薦事例選択結果反映手段42は、管制官に入力された管制指示が、表示した管制指示のいずれかに該当する場合、その表示した管制指示を含む比較事例データの選択頻度情報を更新する。具体的には、推薦事例選択結果反映手段42は、比較事例データ記憶装置2に記憶された比較事例データのうち、管制官に推薦され実際に採用された管制指示を含む比較事例データの選択頻度情報を更新する。
また、コンテキスト重み付け手段33は、選択頻度情報に応じた重み係数を定め、その重み係数を航空機コンテキストに乗じることによって、航空機コンテキストに対する重み付けを行う。同様に、空域コンテキストに関しても、選択頻度情報に応じた重み係数を空域コンテキストに乗じることによって、空域コンテキストに対する重み付けを行う。
コンテキスト重み付け手段33は、選択頻度情報だけでなく、注目機と有効グリッドとの距離等の種々の条件毎に重み係数を定め、それらの重み係数の積を計算することによって、選択頻度情報を含む複数の条件を考慮した重み係数を計算してもよい。
推薦事例選択結果反映手段42は、例えば、プログラムに従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。すなわち、CPUが、プログラムに従って、推薦事例表示手段41および推薦事例選択結果反映手段42として動作する。また、推薦事例表示手段41および推薦事例選択結果反映手段42が別々の専用回路であってもよい。
次に、本実施形態の動作について説明する。図26は、第4の実施形態の管制支援システムの動作の例を示すフローチャートである。第1から第3までの実施形態と同様の処理は、図2、図16、図21と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。ステップA1〜A8の処理は、第3の実施形態と同様である。ただし、ステップB1において、コンテキスト重み付け手段33は、ステップA2で取得された比較事例データに含まれる選択頻度情報を参照し、その選択頻度情報に応じた重み係数を定める。このとき、選択頻度情報の値が大きいほど、重み係数を大きな値に定める。従って、比較事例データに含まれる管制指示が管制官に選択される頻度が大きいほど、重み係数は大きな値となる。コンテキスト重み付け手段33は、選択頻度情報に応じた重み係数用いて航空機コンテキストに対する重み付けと空域コンテキストに対する重み付けを行う。
推薦事例表示手段41が事例表示ルールに従って比較事例データを表示した後(ステップA8)、管制官は、表示された比較事例データの管制指示を確認し、その管制指示あるいは他の管制指示を入力する。推薦事例選択結果反映手段42は、管制官が選択した管制指示(管制官が入力した管制指示)を確認し、ステップA8で表示された管制指示のいずれかに該当しているかを判定する。ステップA8で表示された管制指示のいずれかが、管制官に選択された場合、比較事例データ記憶手段2が記憶する比較事例データのうち、ステップA8で表示され、さらに管制官に選択された管制指示を含む比較事例データの選択頻度情報を更新する(ステップD1)。
次に、第4の実施形態の動作を具体例を用いて説明する。図27は、推薦事例表示手段41が表示する画面の例を示す説明図である。推薦事例表示手段41は、例えば、管制要求情報ウィンドウ91と、管制指示リストウィンドウ92とを表示する。管制要求情報ウィンドウ91では、例えば、管制要求(イベント)の発生時刻、管制要求を送った航空機のコールサイン、および管制要求の内容を表示する。また、管制指示リストウィンドウ92では、例えば、事例間類似度に基づいて選択された比較事例データ毎に、比較事例データ番号、比較事例データに含まれる管制指示の内容、事例間類似度、イベント発生時刻を表示する。なお、管制要求情報ウィンドウ91および管制指示リストウィンドウ92において、他の情報を表示してもよい。管制官は、管制指示リストを確認し、所望の管制指示を選択して航空機に送信する。
図27に例示する管制指示リストウィンドウ92において、管制官が比較事例データ番号C004に該当する管制指示“CLIMB TO AND MAINTAIN FL360”を選択して、その管制指示を航空機に送信したとする。すると、推薦事例選択結果反映手段42は、比較事例データ記憶装置2に記憶されている比較事例データC004の選択頻度情報を更新する。
図28は、第4の実施形態における比較事例データの例を示す説明図である。図28では、二つの比較事例データC004,C005を例示している。また、本例では、管制官に管制指示が選択された通算回数を示す「通算選択回数」と、一定期間(本例では一ヶ月)当たりの管制官による選択回数を示す「選択頻度」とを、選択頻度情報としている。上記のようにC004が管制官に選択された場合、推薦事例選択結果反映手段42は、比較事例データ記憶装置2に記憶された比較事例データC004の「通算選択回数」の値を1増加させる。また、その比較事例データC004の「選択頻度」を計算し、「選択頻度」の値を更新する。選択頻度は、現在時刻と比較事例データにおけるイベント発生時刻との差分を月単位で計算し、通算選択回数をその月数で除算することにより算出すればよい。推薦事例選択結果反映手段42は、比較事例データに含まれる選択頻度情報を更新することで、管制官の選択結果を比較事例データに反映する。
また、コンテキスト重み付け手段33は、比較事例データに含まれる「選択頻度(図28参照)」を参照して、選択頻度が大きいほど重み係数を大きく定め、選択頻度が小さいほど重み係数を小さく定める。この結果、管制官に採用される頻度が高い比較事例データほど事例間類似度が高くなり、管制官に推薦されやすくなる。選択頻度に応じて定める重み係数をWとし、選択頻度をUとすると、コンテキスト重み付け手段33は、例えば、しくも緯度関数に準じた以下に示す式(9)の計算を行って重み係数Wを求めればよい。
ただし、他の計算方法で、選択頻度に応じた重み係数を定めてもよい。
本実施形態でも、他の実施形態と同様の効果が得られる。さらに本実施形態では、管制官の管制指示採用結果を比較事例データに選択頻度情報として反映し、類似度計算装置3は事例間類似度を計算するときに、選択頻度情報に応じて重み係数を定め、その重み係数を用いて航空機コンテキスト等を重み付ける。従って、管制官に多数採用された比較事例データについての事例間類似度を高くして、そのような信頼性の高い比較事例データを管制官に推薦しやすくすることができる。また、管制官に推薦しても却下される比較事例データの事例間類似度を低くして、そのような比較事例データを推薦しないようにすることができる。
第4の実施形態において、類似度計算装置3に、空域コンテキスト計算手段34が備えられていなくてもよい。その場合、空域コンテキストは計算されず、コンテキスト重み付け手段33は、航空機コンテキストの重み付けを行えばよい。
また、第1から第4の各実施形態において、基底事例データ生成装置1と、比較事例データ記憶装置2と、類似度計算装置3と、推薦事例表示装置4とは、別々の装置として実現されてもよい。あるいは、基底事例データ生成装置1、比較事例データ記憶装置2、類似度計算装置3および推薦事例表示装置4が一つの装置で実現されてもよい。
次に、本発明の最小構成について説明する。図29は、本発明の管制支援システムの最小構成を示す説明図である。図30は、本発明の類似度計算装置の最小構成を示す説明図である。本発明の管制支援システムは、基底データ生成手段71と、比較事例データ記憶手段72と、航空機類似度計算手段73と、事例間類似度計算手段74と、管制指示出力手段75とを備える(図29参照)。また、本発明の類似度計算装置は、航空機類似度計算手段73と、事例間類似度計算手段74とを備える。
基底データ生成手段71(例えば、基底事例データ生成手段13)は、イベント(例えば、管制要求)を生じさせた航空機の航空機情報とその航空機の周辺の航空機の航空機情報とイベントを示すイベント情報とを含む情報である基底データ(例えば、基底事例データ)を生成する。
比較事例データ記憶手段72(例えば、比較事例データ記憶装置2)は、過去にイベントを生じさせた航空機の航空機情報とその航空機の周辺の航空機の航空機情報と過去に生じたイベントを示すイベント情報とイベントに対する管制指示とを含む情報である比較事例データを複数記憶する。
航空機類似度計算手段73(例えば、航空機コンテキスト計算手段31)は、基底データに含まれる航空機情報と比較事例データに含まれる航空機情報とを対応付け、対応付けた航空機情報から航空機同士の状況の類似度である航空機類似度(例えば、航空機コンテキスト)を計算する。
事例間類似度計算手段74(例えば、事例間類似度計算手段32)は、航空機類似度に基づいて基底データと比較事例データとの類似度である事例間類似度を計算する。
管制指示出力手段75(例えば、推薦事例表示手段41)は、事例間類似度に基づいて比較事例データを選択し、選択した比較事例データに含まれる管制指示を出力する。
そのような構成により、複数の航空機の状態を考慮した的確な管制指示を管制官に推薦して、管制官の航空管制を支援することができる。
また、上記の実施形態には、航空機類似度に対して重み係数を乗じることによって航空機類似度の重み付けを行う類似度重み付け手段(例えば、コンテキスト重み付け手段33)を備える構成が開示されている。そのような構成によれば、種々の条件に基づく柔軟な管制指示の推薦が可能になる。
また、上記の実施形態には、類似度重み付け手段が、航空機類似度が算出された航空機の組の位置に基づいて重み付け係数の値を変化させる構成が開示されている。
また、上記の実施形態には、類似度重み付け手段が、比較事例データが示すイベントの発生時刻に基づいて重み付け係数の値を変化させる構成が開示されている。
また、上記の実施形態には、比較事例データ記憶手段が、管制指示に対する評価を表す評価値(例えば、選択頻度情報)を含む比較事例データを記憶し、類似度重み付け手段が、比較事例データに含まれる評価値に基づいて重み係数の値を変化させる構成が開示されている。
また、上記の実施形態には、管制指示出力手段が出力した管制指示が管制官によって採用されたか否かにより、その管制指示を含む比較事例データの評価値を更新する評価値更新手段(例えば、推薦事例選択結果反映手段42)を備える構成が開示されている。
また、上記の実施形態には、比較事例データ記憶手段が、管制指示の評価値として、管制指示が管制指示出力手段に出力されて管制官に採用された頻度を含む比較事例データを記憶し、評価値更新手段が、管制指示出力手段が出力した管制指示が管制官によって採用されたときに、その管制指示に対応する頻度を更新する構成が開示されている。
また、上記の実施形態には、航空機類似度計算手段が、基底データに含まれるイベント情報と共通のイベント情報を含む比較事例データを選択し、選択した比較事例データと基底データとを用いて航空機類似度を計算する構成が開示されている。
また、上記の実施形態には、基底データ生成手段が、航空機情報として航空機の位置情報を含む基底データを生成し、比較事例データ記憶手段が、航空機情報として航空機の位置情報を含む比較事例データを記憶し、航空機類似度計算手段が、位置が近い航空機同士が組になるように航空機情報を対応付け、対応付けた航空機情報から航空機類似度を計算する構成が開示されている。
また、上記の実施形態には、航空機類似度計算手段が、基底データにおけるイベントを生じさせた航空機および比較事例データにおけるイベントを生じさせた航空機が3次元空間における共通の位置に配置されるように基底データが示す各航空機および比較事例データが示す各航空機の位置を座標変換し、座標変換後における位置が近い航空機同士が組になるように航空機情報を対応付け、対応付けた航空機情報から航空機類似度を計算する構成が開示されている。
また、上記の実施形態には、基底データ生成手段が、イベント発生時の管制対象範囲(例えば、空域、あるいは空域の一部)の状態を示す管制対象範囲情報(例えば、空域情報)を含む基底データを生成し、比較事例データ記憶手段は、過去におけるイベント発生時の管制対象範囲情報を含む比較事例データを記憶し、基底データに含まれる管制対象範囲情報と比較事例データに含まれる管制対象範囲情報との類似度である範囲類似度(例えば、空域コンテキスト)を計算する範囲類似度計算手段(例えば、空域コンテキスト計算手段34)を備え、事例間類似度計算手段が、航空機類似度および範囲類似度に基づいて事例間類似度を計算する構成が開示されている。
また、上記の実施形態には、基底データ生成手段が、管制対象範囲を分割したエリア毎の航空機数を管制対象範囲情報とする基底データを生成し、比較事例データ記憶手段が、過去のイベント発生時におけるエリア毎の航空機数を管制対象範囲情報とする比較例データを記憶し、範囲類似度計算手段が、基底データにおけるエリア毎の航空機数と比較事例データにおけるエリア毎の航空機数との相関係数を範囲類似度として計算する構成が開示されている。
また、上記の実施形態には、基底データ生成手段が、管制対象範囲を分割した個々のエリアが飛行制限区域であるか否かを示す管制対象範囲情報を含む基底データを生成し、比較事例データ記憶手段が、過去のイベント発生時に個々のエリアが飛行制限区域であったか否かを示す管制対象範囲情報を含む比較事例データを記憶し、範囲類似度計算手段が、基底データと比較事例データのどちらにおいても飛行制限区域とされているエリアを示す情報を範囲類似度として計算する構成が開示されている。
また、上記の実施形態には、航空機類似度計算手段が、基底データにおけるイベントを生じさせた航空機の周辺の航空機の航空機情報と、その航空機情報に対応付けられた比較事例データ内の航空機情報とから航空機類似度を計算する構成が開示されている。
また、上記の実施形態には、管制指示出力手段が、予め定められたルール(例えば、事例表示ルール)に従い、事例間類似度に基づいて比較事例データを選択し、選択した比較事例データに含まれる管制指示を出力する構成が開示されている。
また、上記の実施形態には、入力される管制ログを監視して、イベントを検出するイベント検出手段(例えば、イベント検出手段12)を備え、基底データ生成手段が、イベント検出手段がイベントを検出したときに基底データを生成する構成が開示されている。