JP5180610B2 - 車両の駆動力制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、発進、直進、旋回の様々な走行場面において車輪のグリップ力を適切に維持するように駆動力を制御する車両の駆動力制御装置に関する。
従来より、車輪のスリップを抑制すべく駆動力を制限制御する様々なトラクション制御装置が提案され、実用化されている。
例えば、特開平10−310042号公報には、各車輪の摩擦円半径の推定値を求め、この摩擦円半径の推定値を超えない範囲内で、車両の走行状態により推定した各車輪が発生している横力と前後力との合力を調節する技術が開示されている。
特開平10−310042号公報
ところで、上述の特許文献1に開示されるようなトラクション制御に用いられる路面摩擦係数の推定やタイヤ力を把握するのに必要な情報は、特に低速時に精度良く得ることが困難なため、低速時におけるトラクション制御が十分な効果を発揮することができない虞がある。例えば、セルフアライニングトルクを用いた路面摩擦係数の推定では、低速において高めに路面摩擦係数を検出する傾向があり、これによりトルクダウン量を過小に設定して十分なトルクダウンを行えなくなる可能性がある。そこで、これを回避するために、やむなく車輪速がある速度以上にならないとトラクション制御を作動させない、などの処置が考えられるが、これでは雪道などの転舵発進等にトラクション制御が作動しないという問題が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、発進、直進、旋回のあらゆる走行場面において、的確に精度良く駆動力を制御して車両の安定性を向上させることができる車両の駆動力制御装置を提供することを目的とする。
本発明は、駆動源の出力を低減することで車輪のグリップ力を適切に維持する車両の駆動力制御装置において、少なくとも路面摩擦係数に基づいたトルクダウン量であって、所定の低車速領域では小さな値となる特性を有する第1のトルクダウン量設定する第1のトルクダウン量設定手段と、横加速度を検出する横加速度検出手段と、操舵角を検出する操舵角検出手段と、ヨーレートを検出するヨーレート検出手段と、上記検出した操舵角を基に目標ヨーレートを演算する目標ヨーレート演算手段と、上記検出したヨーレートと上記目標ヨーレートとを比較するヨーレート比較手段と、少なくとも上記横加速度と上記ヨーレートの比較結果及び上記所定の低車速領域では大きな値となる補正係数とを用いて第2のトルクダウン量を設定する第2のトルクダウン量設定手段と、上記第1のトルクダウン量と上記第2のトルクダウン量に基づいて駆動源の出力を低減する出力制御手段とを有することを特徴としている。
本発明による車両の駆動力制御装置によれば、発進、直進、旋回のあらゆる走行場面において、的確に精度良く駆動力を制御して車両の安定性を向上させることが可能となる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1乃至図22は本発明の実施の一形態を示し、図1は駆動力制御装置の構成を示す機能ブロック図、図2は駆動力制御プログラムのフローチャート、図3は路面摩擦係数推定装置の構成を示す機能ブロック図、図4は操舵角−操舵トルク特性の説明図、図5は車速と前輪すべり角に応じて設定される復帰速度の特性図、図6は操安キャパシティと車速及び車輪すべり角の関係を示す説明図、図7は本実施形態による路面摩擦係数推定の一例を示すタイムチャート、図8は要求エンジントルクを発生するためのアクセル開度とスロットル開度との関係の一例を示す説明図、図9はエンジン回転数とスロットル開度により設定される要求エンジントルクの一例を示す説明図、図10は第1のトルクダウン量演算部の構成を示す機能ブロック図、図11は第1のトルクダウン量演算処理ルーチンのフローチャート、図12は図11から続くフローチャート、図13は付加ヨーモーメント演算ルーチンのフローチャート、図14は横加速度飽和係数の説明図、図15は車速感応ゲインの特性マップ、図16は高μ路と低μ路での付加ヨーモーメントの値の差異の説明図、図17は第2のトルクダウン量演算部の構成を示す機能ブロック図、図18は第2のトルクダウン量演算処理ルーチンのフローチャート、図19は車体すべり角速度に対するトルクダウン基本量の特性の説明図、図20はヨーレート偏差に対する第1の補正係数の特性の説明図、図21はカントが横加速度センサに及ぼす影響を示す説明図、図22は車速に対する第2の補正係数の特性の説明図である。尚、本実施形態では、車両として、センタデファレンシャル付4輪駆動車を例とし、差動制限クラッチ等(締結トルクTLSD)により前後駆動力配分をセンタデファレンシャルによるベーストルク配分Rf_cdから可変自在な車両を例に説明する。
図1において、符号1は車両に搭載され、駆動力を適切に抑制する車両の駆動力制御装置を示し、この駆動力制御装置1には、各車輪の車輪速センサ11、ハンドル角センサ12、ヨーレートセンサ13、横加速度センサ14、アクセル開度センサ15、エンジン制御部16、トランスミッション制御部17、路面μ推定装置18が接続され、各車輪の車輪速ωfl、ωfr、ωrl、ωrr(添字の「fl」は左前輪、「fr」は右前輪、「rl」は左後輪、「rr」は右後輪を示す)、ハンドル角θH、ヨーレートγ、横加速度(dy/dt)、アクセル開度θACC、エンジン回転数Ne、エンジントルクTeg、主変速ギヤ比i、トルクコンバータのタービン回転数Nt、差動制限クラッチの締結トルクTLSD、路面摩擦係数μが入力される。
そして、駆動力制御装置1は、これら入力信号に基づき、後述の駆動力制御プログラムに従って、適切な駆動力を演算し、エンジン制御部16に出力する。エンジン制御部16は、後述の如く出力制御手段として、図示しないスロットル制御部に制御信号を出力してモータを駆動させ、スロットル弁を作動させる。
ここで、まず、図3〜図7を基に、上述の駆動力制御装置1に入力する路面摩擦係数μを推定する路面μ推定装置18について説明する。路面μ推定装置18は、セルフアライニングトルクTsaを基に路面摩擦係数μを推定するものであり、ラック推力FrとセルフアライニングトルクTsaとの関係が、以下の(1)式の関係であることから、ラック推力FrによりセルフアライニングトルクTsaの変化を検出して路面摩擦係数μを推定するものとなっている。
Fr=(2/Ln)・Tsa …(1)
ここで、Lnはナックルアーム長である。
路面μ推定装置18は、図3に示すように、各車輪の車輪速センサ11、ハンドル角センサ12、ヨーレートセンサ13、横加速度センサ14、エンジン制御部16、トランスミッション制御部17、操舵トルクセンサ21、電動パワーステアリングモータ22が接続され、各車輪の車輪速ωfl、ωfr、ωrl、ωrr、ハンドル角θH、ヨーレートγ、横加速度(dy/dt)、エンジン回転数Ne、エンジントルクTeg、主変速ギヤ比i、トルクコンバータのタービン回転数Nt、差動制限クラッチの締結トルクTLSD、ドライバ操舵力Fd、電動パワーステアリングによるアシスト力FEPSが入力される。
そして、路面μ推定装置18は、上述の各入力信号に基づき路面摩擦係数μを推定し、駆動力制御装置1に出力する。すなわち、路面μ推定装置18は、車速演算部18a、前輪すべり角演算部18b、前輪接地荷重演算部18c、前輪前後力演算部18d、前輪横力演算部18e、前輪摩擦円利用率演算部18f、推定ラック推力演算部18g、基準ラック推力演算部18h、ラック推力偏差演算部18i、路面摩擦係数演算部1jから主要に構成されている。
車速演算部18aは、4輪車輪速センサ11から各車輪の車輪速ωfl、ωfr、ωrl、ωrrが入力され、これらの平均を演算することで車速V(=(ωfl+ωfr+ωrl+ωrr)/4)を演算し、前輪すべり角演算部18b、路面摩擦係数演算部18jに出力する。
前輪すべり角演算部18bは、ハンドル角センサ12からハンドル角θHが、ヨーレートセンサ13からヨーレートγが、車速演算部18aから車速Vが入力される。そして、以下説明するように車両の運動モデルに基づいて前輪すべり角βfを演算し、基準ラック推力演算部18h、路面摩擦係数演算部18jに出力する。
車両横方向の並進運動に関する運動方程式は、前後輪のコーナリングフォース(1輪)をCf,Cr、車体質量をmとすると、
2・Cf+2・Cr=m・(dy/dt) …(2)
となる。
一方、重心点まわりの回転運動に関する運動方程式は、重心から前後輪軸までの距離をLf,Lr、車体のヨーイング慣性モーメントをIz、ヨー角加速度を(dγ/dt)として、以下の(3)式で示される。
2・Cf・Lf−2・Cr・Lr=Iz・(dγ/dt) …(3)
また、車体すべり角をβ、車体すべり角速度(dβ/dt)とすると、横加速度(dy/dt)は、
(dy/dt)=V・((dβ/dt)+γ) …(4)
で表される。
従って、上述の(2)式は、以下の(5)式となる。
2・Cf+2・Cr=m・V・((dβ/dt)+γ) …(5)
コーナリングフォースはタイヤの横すべり角に対して1次遅れに近い応答をするが、この応答遅れを無視し、更に、サスペンションの特性をタイヤ特性に取り込んだ等価コーナリングパワーを用いて線形化すると以下となる。
Cf=Kf・βf …(6)
Cr=Kr・βr …(7)
ここで、Kf,Krは前後輪の等価コーナリングパワー、βf,βrは前後輪のすべり角である。
等価コーナリングパワーKf,Krの中でロールやサスペンションの影響を考慮するものとして、この等価コーナリングパワーKf,Krを用いて、前後輪のすべり角βf,βrは、前後輪舵角をδf,δr、ステアリングギヤ比をnとして以下のように簡略化できる。
βf=δf−(β+Lf・γ/V)
=(θH/n)−(β+Lf・γ/V) …(8)
βr=δr−(β−Lr・γ/V) …(9)
以上の運動方程式をまとめると、以下の状態方程式が得られる。
(dx(t) /dt)=A・x(t) +B・u(t) …(10)
x(t) =[β γ]
u(t) =[θH δr]
Figure 0005180610
a11=−2・(Kf+Kr)/(m・V)
a12=−1.0−2・(Lf・Kf−Lr・Kr)/(m・V
a21=−2・(Lf・Kf−Lr・Kr)/Iz
a22=−2・(Lf・Kf+Lr・Kr)/(Iz・V)
b11=2・Kf/(m・V・n)
b12=2・Kr/(m・V)
b21=2・Lf・Kf/Iz
b22=−2・Lr・Kr/Iz
すなわち、上述の(10)式を解くことにより車体すべり角βを演算し、この車体すべり角βを上述の(8)式に代入して前輪すべり角βfを演算する。
前輪接地荷重演算部18cは、エンジン制御部16からエンジントルクTeg、エンジン回転数Neが入力され、トランスミッション制御部17から主変速ギヤ比i、トルクコンバータのタービン回転数Ntが入力される。
そして、以下の(11)式により、前輪接地荷重Fzfを演算して前輪前後力演算部18d、前輪摩擦円利用率演算部18fに出力する。
Fzf=Wf−((m・Ax・h)/L) …(11)
ここで、Wfは前輪静荷重、hは重心高さ、Lはホイールベースであり、Axは前後加速度(=Fx/m)である。この前後加速度Axの演算式中のFxは総駆動力であり、例えば、以下の(12)式により演算され、前輪前後力演算部18dに対しても出力される。
Fx=Tt・η・if/Rt …(12)
ここで、ηは駆動系伝達効率、ifはファイナルギヤ比、Rtはタイヤ半径である。また、Ttはトランスミッション出力トルクであり、例えば、以下の(13)式により演算され、このトランスミッション出力トルクTtも前輪前後力演算部18dに対して出力される。
Tt=Teg・t・i …(13)
ここで、tはトルクコンバータのトルク比であり、予め設定されている、トルクコンバータの回転速度比e(=Nt/Ne)とトルクコンバータのトルク比とのマップを参照することにより求められる。
前輪前後力演算部18dは、トランスミッション制御部17から差動制限クラッチの締結トルクTLSDが入力され、前輪接地荷重演算部18cから前輪接地荷重Fzf、総駆動力Fx、トランスミッション出力トルクTtが入力される。そして、例えば、後述する手順に従って、前輪前後力Fxfを演算し、前輪摩擦円利用率演算部18fに出力する。
以下、前輪前後力Fxfを演算する演算する手順の一例を説明する。
まず、前輪荷重配分率WR_fを以下の(14)式により演算する。
WR_f=Fzf/W …(14)
ここで、Wは車両重量(=m・G;Gは重力加速度)である。
次に、最小前輪前後トルクTfminと最大前輪前後トルクTfmaxを、以下の(15)、(16)式により演算する。
Tfmin=Tt・Rf_cd−TLSD(≧0) …(15)
Tfmax=Tt・Rf_cd+TLSD(≧0) …(16)
次いで、最小前輪前後力Fxfminと最大前輪前後力Fxfmaxを、以下の(17)、(18)式により演算する。
Fxfmin=Tfmin・η・if/Rt …(17)
Fxfmax=Tfmax・η・if/Rt …(18)
そして、以下のように状態判定する。
・WR_f≦Fxfmin/Fxのときは後輪側に差動制限トルクが増加されているとし、判定値I=1とする。
・WR_f≧Fxfmax/Fxのときは前輪側に差動制限トルクが増加されているとし、判定値I=3とする。
・上記以外の場合は通常時と判定して、判定値I=2とする。
次いで、上述の判定値Iに応じて、前輪前後力Fxfを以下のように演算する。
・I=1の場合…Fxf=Tfmin・η・if/Rt …(19)
・I=2の場合…Fxf=Fx・WR_f …(20)
・I=3の場合…Fxf=Fxfmax・η・if/Rt …(21)
前輪横力演算部18eは、ヨーレートセンサ13からヨーレートγが、横加速度センサ14から横加速度(dy/dt)が入力される。そして、以下の(22)式により、前輪横力Fyfを演算し、前輪摩擦円利用率演算部18fに出力する。
Fyf=(Iz・(dγ/dt)
+m・(dy/dt)・Lr)/L …(22)
前輪摩擦円利用率演算部18fは、前輪接地荷重演算部18cから前輪接地荷重Fzfが、前輪前後力演算部18dから前輪前後力Fxfが、前輪横力演算部18eから前輪横力Fyfが入力される。そして、以下の(23)式により前輪摩擦円利用率rfを演算し、路面摩擦係数演算部18jに出力する。
rf=(Fxf+Fyf1/2/Fzf …(23)
推定ラック推力演算部18gは、ハンドル角センサ12からハンドル角θHが、操舵トルクセンサ21からドライバ操舵力Fdが、電動パワーステアリングモータ22から電動パワーステアリングによるアシスト力FEPSが入力される。そして、以下の(24)式により、推定ラック推力FEを演算し、ラック推力偏差演算部18iに出力する。
FE=Fd+FEPS−FFRI …(24)
ここで、FFRIは、操舵系におけるフリクション等により生じる力であり、例えば、予め設定しておいたマップを参照することにより設定される。このマップの一例を図4に示す。この例では、FFRIは、操舵角−操舵トルクの特性で与えられ、操舵角と操舵角速度に基づくヒステリシス関数で与えられている。尚、この図4に示すマップの特性を、横加速度(dy/dt)やドライバ操舵力Fdの値をも考慮したマップ(具体的には、上昇側と下降側のヒステリシス間隔を、横加速度(dy/dt)やドライバ操舵力Fdが大きいほど広い特性に変更する)とし、FFRIをより精度良く求めるようにしても良い。このようにFFRIを考慮することにより、ステアリングを切り増すときのみならず、戻すときにおいても推定ラック推力FEを正確に演算することができ、路面摩擦係数μを広い範囲で推定することができるようになっている。
基準ラック推力演算部18hは、前輪すべり角演算部18bから前輪すべり角βfが入力される。そして、以下の(25)式により、基準ラック推力FRを演算し、ラック推力偏差演算部18iに出力する。
FR=−2・Kf・((ζc+ζn)/Ln)・βf …(24)
ここで、ζcはキャスタトレール、ζnはニューマチックトレールである。
ラック推力偏差演算部18iは、推定ラック推力演算部18gから推定ラック推力FEが入力され、基準ラック推力演算部18hから基準ラック推力FRが入力される。そして、以下の(26)式によりラック推力偏差ΔFRを演算し、路面摩擦係数演算部18jに出力する。
ΔFR=|FE−FR| …(26)
路面摩擦係数演算部18jは、車速演算部18aから車速Vが、前輪すべり角演算部18bから前輪すべり角βfが、前輪摩擦円利用率演算部18fから前輪摩擦円利用率rfが入力され、ラック推力偏差演算部18iからラック推力偏差ΔFRが入力される。
そして、ラック推力偏差ΔFRと予め設定しておいた最大値判定閾値μmaxaとを比較して、ラック推力偏差ΔFRが最大値判定閾値μmaxa以上の場合は、タイヤがスリップしていると判断して、その時の前輪摩擦円利用率rfを路面摩擦係数μとして設定する。また、ラック推力偏差ΔFRが最大値判定閾値μmaxaより小さい場合は、車速Vと前輪すべり角βfに基づいて路面摩擦係数μを予め定めた設定値(例えば、1.0)に復帰させる復帰速度Vμを予め設定しておいたマップ(図5に一例を示す)を参照して定め、この復帰速度Vμで路面摩擦係数を復帰させていきながら路面摩擦係数μを演算して出力するようになっている。
尚、最大値判定閾値μmaxaは、横加速度(dy/dt)の絶対値に応じて大きな値に設定するようにしても良い。
上述の復帰速度Vμを定めるマップは、図5に示すように、車速Vが高くなるほど、また、前輪すべり角βfが高くなるほど、復帰速度Vμが低くなるような特性となっている。
車両を2輪モデルでモデル化すると、車両の操縦安定性を定める、所謂、操安キャパシティωn・ζは、以下の(27)式で求められる。この操安キャパシティωn・ζが高いほど、車両の収束性が高いといえる。
ωn・ζ=(a11+a22)/2 …(27)
尚、上述のa11、及び、a22は、前述の(10)式で説明したものであり、a11の項は、車体すべり角の収束性に寄与することが知られており、この項が線形的に変化する程、車両の安定性が向上するとともに、応答性がドライバのフィーリングに沿ったものとなる。また、a22の項は、ヨー運動の収束性に影響を与えるシステム行列要素であり、ヨーレートのネガティブフィードバックゲインとなるものである。
これらa11、a22の項をタイヤの非線形性を2次式で簡易的に考慮すると、以下の(28)、(29)式で記述することが可能である。
a11=(1/(m・V))・(2・(Kf+Kr)
−((Kf/(μ・Fzf−Fxf1/2)・|βf|
+(Kr/(μ・Fzr−Fxr1/2)・|βr|))…(28)
a22=(1/(Iz・V))・(2・(Lf・Kf+Lr・Kr)
−((Lf・Kf/(μ・Fzf−Fxf1/2)・|βf|
+(Lr・Kr/(μ・Fzr−Fxr1/2)・|βr|))…(29)
ここで、Fzrは後輪接地荷重、Fxrは後輪前後力である。
上述の(28)、(29)式からも明らかなように、車速Vが高くなるほど、a11、a22の項が小さくなり、従って、操安キャパシティωn・ζが小さくなる(図6(a)参照)。そこで、このことを考慮し、車速Vが高くなるほど、復帰速度Vμが低くなるような特性に設定して大きな急激な変化を抑制する特性としている。
同様に、上述の(28)、(29)式からも明らかなように、前輪すべり角βfが高くなるほど、a11、a22の項が小さくなり、従って、操安キャパシティωn・ζが小さくなる(図6(b)参照)。そこで、このことを考慮し、前輪すべり角βfが高くなるほど、復帰速度Vμが低くなるような特性に設定して大きな急激な変化を抑制する特性としている。
尚、本実施の形態では、前輪すべり角βfを用いて復帰速度Vμの設定を行うようにしているが、上述の(28)、(29)式からも明らかなように、後輪すべり角βrを用いて復帰速度Vμの設定を行うようにしても良い。
この路面摩擦係数推定による一例を図7のタイムチャートで説明する。
時刻t1までは、ΔFR<μmaxaであり、路面摩擦係数μも1.0に安定して設定されている。
時刻t1〜時刻t2では、ΔFR≧μmaxaとなり、タイヤがスリップしていると判断されて、その時の前輪摩擦円利用率rfが路面摩擦係数μとして設定される。
そして、時刻t2〜時刻t3では、再び、ΔFR<μmaxaとなり、復帰速度Vμで路面摩擦係数を1.0に復帰させていきながら路面摩擦係数μが設定される。
このように、本実施の形態によれば、ラック推力偏差ΔFRと予め設定しておいた最大値判定閾値μmaxaとを比較して、ラック推力偏差ΔFRが最大値判定閾値μmaxa以上の場合は、タイヤがスリップしていると判断して、その時の前輪摩擦円利用率rfを路面摩擦係数μとして設定する。また、ラック推力偏差ΔFRが最大値判定閾値μmaxaより小さい場合は、車速Vと前輪すべり角βfに基づいて路面摩擦係数μを予め定めた設定値(例えば、1.0)に復帰させる復帰速度Vμを予め設定しておいたマップを参照して定め、この復帰速度Vμで路面摩擦係数を復帰させていきながら路面摩擦係数μを演算して出力するようになっている。このため、タイヤがスリップしていると判断できる場合には、その時の前輪摩擦円利用率rfにより路面摩擦係数μが適切に低く設定されると共に、それ以外の場合では、路面摩擦係数を1.0に復帰させていきながら路面摩擦係数μが設定されるので、路面摩擦係数μが低い値のままに維持されることがなく適切に設定され、たとえ、路面摩擦係数の推定が困難な場合であっても路面摩擦係数を適切に設定し、車両挙動制御の有するポテンシャルを最大限に発揮させることが可能となる。
また、路面摩擦係数を1.0に復帰させていく復帰速度は、車両挙動の収束性に関わる操安キャパシティωn・ζを考慮して、車速Vと前輪すべり角βfとに応じて可変設定されるため、車両の安定性を高度に維持しながら自然な感覚でスムーズな路面摩擦係数μの設定が行われる。
尚、本発明の実施の形態では、路面摩擦係数の推定を、推定ラック推力FEと基準ラック推力FRとの偏差ΔFRの関係により摩擦円利用率rf、或いは、予め定めた設定値(例えば、1.0)に復帰させていくことにより行うようになっているが、他の路面摩擦係数推定装置に対しても適応できることは云うまでもない。例えば、本出願人が特開平8−2274号公報で提案する適応制御理論を用いて、操舵角,車速,ヨーレート等から路面摩擦係数を推定する技術に対し、路面摩擦係数の推定が不可能な状況(例えば、操舵角が0の場合等)を検出した場合に、車速Vと前輪すべり角βfに基づいて路面摩擦係数μを予め定めた設定値(例えば、1.0)に復帰させる復帰速度Vμを予め設定しておいたマップを参照して定め、この復帰速度Vμで路面摩擦係数を復帰させていきながら路面摩擦係数μを演算して出力するようにしても良い。同様に、他の推定方法、例えば、本出願人が特開2000−71968号公報で開示するような、オブザーバを用いて路面摩擦係数を推定するものに対しても適用できることは云うまでもない。
そして、駆動力制御装置1は、図1に示すように、要求エンジントルク演算部2、第1のトルクダウン量演算部3、第2のトルクダウン量演算部4、制御量設定部5から主要に構成されている。
要求エンジントルク演算部2は、アクセル開度センサ15からアクセル開度θACCが入力され、エンジン制御部16からエンジン回転数Neが入力される。そして、予め設定されているマップ(例えば、図8に示すようなθACC−θthの関係のマップ)によりスロットル開度θthを求め、このスロットル開度θthとエンジン回転数Neを基に、図9に示すマップからエンジントルクを求め、このエンジントルクを要求エンジントルクTdrvとして制御量設定部5に出力する。尚、この要求エンジントルクTdrvは、予め設定しておいたアクセル開度θACCに応じたマップから求めるようにしても良く、また、エンジン制御部16から読み込んで用いても良い。
第1のトルクダウン量演算部3は、各車輪の車輪速センサ11、ハンドル角センサ12、ヨーレートセンサ13、横加速度センサ14、エンジン制御部16、トランスミッション制御部17、路面μ推定装置18が接続され、各車輪の車輪速ωfl、ωfr、ωrl、ωrr、ハンドル角θH、ヨーレートγ、横加速度(dy/dt)、エンジン回転数Ne、エンジントルクTeg、主変速ギヤ比i、トルクコンバータのタービン回転数Nt、差動制限クラッチの締結トルクTLSD、路面摩擦係数μが入力される。そして、第1のトルクダウン量演算部3は、これら入力信号に基づき第1のトルクダウン量T1overを演算し、制御量設定部5に出力する。以下、図10〜図16を基に、第1のトルクダウン量演算部3について説明する。
すなわち、第1のトルクダウン量演算部3は、図10に示すように、トランスミッション出力トルク演算部3a、総駆動力演算部3b、前後接地荷重演算部3c、左輪荷重比率演算部3d、各輪接地荷重演算部3e、各輪前後力演算部3f、各輪要求横力演算部3g、各輪横力演算部3h、各輪摩擦円限界値演算部3i、各輪要求タイヤ合力演算部3j、各輪タイヤ合力演算部3k、各輪要求オーバータイヤ合力演算部3l、各輪オーバータイヤ合力演算部3m、オーバータイヤ力演算部3n、第1のトルクダウン量設定部3oから主要に構成されている。
トランスミッション出力トルク演算部3aは、エンジン制御部16からエンジン回転数Ne、及び、エンジントルクTegが、トランスミッション制御部17から主変速ギヤ比i、及び、トルクコンバータのタービン回転数Ntが入力される。そして、例えば、前述の(13)式により、トランスミッション出力トルクTtを演算し、総駆動力演算部3b、各輪前後力演算部3fに出力する。
総駆動力演算部3bは、トランスミッション出力トルク演算部3aからトランスミッション出力トルクTtが入力される。そして、例えば、前述の(12)式により、総駆動力Fxを演算し、前後接地荷重演算部3c、各輪前後力演算部3fに出力する。
前後接地荷重演算部3cは、総駆動力演算部3bから総駆動力Fx入力される。
そして、前述の(11)式により前輪接地荷重Fzfを演算し、各輪接地荷重演算部3e、各輪前後力演算部3fに出力すると共に、以下の(30)式により後輪接地荷重Fzrを演算し、各輪接地荷重演算部3eに出力する。
Fzr=W−Fzf …(30)
左輪荷重比率演算部3dは、横加速度センサ14から横加速度(dy/dt)が入力される。そして、以下の(31)式により左輪荷重比率WR_lを演算し、各輪接地荷重演算部3e、各輪要求横力演算部3g、各輪横力演算部3hに出力する。
WR_l=0.5−((dy/dt)/G)・(h/Ltred) …(31)
ここで、Ltredは前輪と後輪のトレッド平均値である。
各輪接地荷重演算部3eは、前後接地荷重演算部3cから前輪接地荷重Fzf、後輪接地荷重Fzrが入力され、左輪荷重比率演算部3dから左輪荷重比率WR_lが入力される。そして、以下の(32)、(33)、(34)、(35)式により、それぞれ左前輪接地荷重Fzf_l、右前輪接地荷重Fzf_r、左後輪接地荷重Fzr_l、右後輪接地荷重Fzr_rを演算し、各輪摩擦円限界値演算部3iに出力する。
Fzf_l=Fzf・WR_l …(32)
Fzf_r=Fzf・(1−WR_l) …(33)
Fzr_l=Fzr・WR_l …(34)
Fzr_r=Fzr・(1−WR_l) …(35)
各輪前後力演算部3fは、トランスミッション制御部17からセンタデファレンシャルにおける差動制限クラッチの締結トルクTLSDが入力され、トランスミッション出力トルク演算部3aからトランスミッション出力トルクTtが入力され、総駆動力演算部3bから総駆動力Fxが入力され、前後接地荷重演算部3cから前輪接地荷重Fzfが入力される。そして、例えば、後述する手順に従って、左前輪前後力Fxf_l、右前輪前後力Fxf_r、左後輪前後力Fxr_l、右後輪前後力Fxr_rを演算し、これらを各輪要求タイヤ合力演算部3j、各輪タイヤ合力演算部3kに出力する。
以下、左前輪前後力Fxf_l、右前輪前後力Fxf_r、左後輪前後力Fxr_l、右後輪前後力Fxr_rを演算する手順の一例を説明する。
まず、前述の(19)、(20)、(21)式の何れかにより前輪前後力Fxfを演算し、後輪前後力Fxrを以下の(36)式により演算する。
Fxr=Fx−Fxf …(36)
以上の前輪前後力Fxf、及び、後輪前後力Fxrを用いて、以下、(37)〜(40)式により、左前輪前後力Fxf_l、右前輪前後力Fxf_r、左後輪前後力Fxr_l、右後輪前後力Fxr_rを演算する。
Fxf_l=Fxf/2 …(37)
Fxf_r=Fxf_l …(38)
Fxr_l=Fxr/2 …(39)
Fxr_r=Fxr_l …(40)
尚、本実施形態で示した各輪前後力の演算は、あくまで一例であり、車両の駆動形式・駆動機構等により適宜、選択されるものである。
各輪要求横力演算部3gは、横加速度センサ14から横加速度(dy/dt)が、ヨーレートセンサ13からヨーレートγが、ハンドル角センサ12からハンドル角θHが、各車輪の(4輪)車輪速センサ11から各車輪の車輪速ωfl、ωfr、ωrl、ωrrが、左輪荷重比率演算部3dから左輪荷重比率WR_lが入力される。
そして、後述する手順に従って(図13に示すフローチャートに従って)付加ヨーモーメントMzθを演算し、この付加ヨーモーメントを基に、以下の(41)式により要求前輪横力Fyf_FFを演算し、以下の(42)式により要求後輪横力Fyr_FFを演算する。これら要求前輪横力Fyf_FF、要求後輪横力Fyr_FFを基に、(43)〜(46)式により、左前輪要求横力Fyf_l_FF、右前輪要求横力Fyf_r_FF、左後輪要求横力Fyr_l_FF、右後輪要求横力Fyr_r_FFを演算して各輪要求タイヤ合力演算部3jに出力する。
Fyf_FF=Mzθ/L …(41)
Fyr_FF=(−Iz・(dγ/dt)
+m・(dy/dt)・Lf)/L …(42)
ここで、Izは車両のヨー慣性モーメント、Lfは前軸−重心間距離である。
Fyf_l_FF=Fyf_FF・WR_l …(43)
Fyf_r_FF=Fyf_FF・(1−WR_l) …(44)
Fyr_l_FF=Fyr_FF・WR_l …(45)
Fyr_r_FF=Fyr_FF・(1−WR_l) …(46)
また、付加ヨーモーメントMzθは、図13に示すように、まず、ステップ(以下、「S」と略称)301で車速Vを演算し(例えば、V=(ωfl+ωfr+ωrl+ωrr)/4)、S302に進み、以下の(47)式により、横加速度/ハンドル角ゲインGyを演算する。
Gy=(1/(1+A・V))・(V/L)・(1/n) …(47)
ここで、Aはスタビリティファクタ、nはステアリングギヤ比である。
次に、S303に進み、横加速度/ハンドル角ゲインGyとハンドル角θHを乗算した値(Gy・θH)と、横加速度(dy/dt)とに応じて予め設定されたマップを参照し、横加速度飽和係数Kμを演算する。この横加速度飽和係数Kμを求めるマップは、図14(a)に示すように、横加速度/ハンドル角ゲインGyとハンドル角θHを乗算した値(Gy・θH)と、横加速度(dy/dt)とに応じて予め設定され、ハンドル角θHが所定値以上において、横加速度(dy/dt)が大きくなる程、小さな値に設定される。これは、Gy・θHが大きいとき高μ路であるほど横加速度(dy/dt)が大きくなるが、低μ路では横加速度(dy/dt)が発生し難くなることを表現するものである。これにより、後述する基準横加速度(dyr/dt)の値は、図14(b)に示すように、Gy・θHが大きいとき横加速度(dy/dt)が大きく高μ路であると思われる場合は低い値に設定され、付加ヨーモーメントMzθに対する修正量が小さくなるようになっている。
次いで、S304に進み、以下の(48)式により、横加速度偏差感応ゲインKyを演算する。
Ky=Kθ/Gy …(48)
ここで、Kθは、舵角感応ゲインであり、以下の(49)式により演算される。
Kθ=(Lf・Kf)/n …(49)
Kfは前軸の等価コーナリングパワーである。
すなわち、上述の(48)式により、横加速度偏差感応ゲインKyは、設定の目安(最大値)として、極低μ路にて舵がまったく効かない状態(γ=0,(dy/dt)=0)で、付加ヨーモーメントMzθ(定常値)が0となる場合が考慮される。
次に、S305に進み、以下の(50)式により基準横加速度(dyr/dt)を演算する。
(dyr/dt)=Kμ・Gy・(1/(1+Ty・s))・θH …(50)
ここで、sは微分演算子、Tyは横加速度の1次遅れ時定数であり、この1次遅れ時定数Tyは、後軸の等価コーナリングパワーをKrとして、例えば以下の(51)式により算出される。
Ty=Iz/(L・Kr) …(51)
次いで、S306に進み、以下の(52)式により横加速度偏差(dye/dt)を演算する。
(dye/dt)=(dy/dt)−(dyr/dt) …(52)
次に、S307に進み、以下の(53)式によりヨーレート/ハンドル角ゲインGγを演算する。
Gγ=(1/(1+A・V))・(V/L)・(1/n) …(53)
次いで、S308に進み、以下の(54)式により、例えば、グリップ走行((dye/dt)=0)時に付加ヨーモーメントMzθ(定常値)が0となる場合を考えて、ヨーレート感応ゲインKγを演算する。
Kγ=Kθ/Gγ …(54)
次に、S309に進み、予め設定しておいたマップにより車速感応ゲインKvを演算する。このマップは、例えば図15に示すように、低速域での不要な付加ヨーモーメントMzθを避けるために設定されている。尚、図15において、Vc1は、例えば40km/hである。
そして、S310に進み、以下の(55)式により付加ヨーモーメントMzθを演算する。
Mzθ=Kv・(−Kγ・γ+Ky・(dye/dt)+Kθ・θH) …(55)
すなわち、この(55)式に示すように、−Kγ・γの項がヨーレートγに感応したヨーモーメント、Kθ・θHの項がハンドル角θHに感応したヨーモーメント、Ky・(dye/dt)の項がヨーモーメントの修正値となっている。このため、図16に示すように、高μ路で横加速度(dy/dt)が大きな運転をした場合には、付加ヨーモーメントMzθも大きな値となり、運動性能が向上する。一方、低μ路での走行では、付加ヨーモーメントMzθは、上述の修正値が作用して付加ヨーモーメントMzθを低減するため回頭性が大きくなることがなく、安定した走行性能が得られるようになっている。
各輪横力演算部3hは、横加速度センサ14から横加速度(dy/dt)が、ヨーレートセンサ13からヨーレートγが、左輪荷重比率演算部3dから左輪荷重比率WR_lが入力される。そして、以下の(56)式により前輪横力Fyf_FBを演算し、以下の(57)式により後輪横力Fyr_FBを演算する。これら前輪横力Fyf_FB、後輪横力Fyr_FBを基に、(58)〜(61)式により、左前輪横力Fyf_l_FB、右前輪横力Fyf_r_FB、左後輪横力Fyr_l_FB、右後輪横力Fyr_r_FBを演算して各輪タイヤ合力演算部3kに出力する。
Fyf_FB=(Iz・(dγ/dt)
+m・(dy/dt)・Lr)/L …(56)
Fyr_FB=(−Iz・(dγ/dt)
+m・(dy/dt)・Lf)/L …(57)
ここで、Lrは後軸−重心間距離である。
Fyf_l_FB=Fyf_FB・WR_l …(58)
Fyf_r_FB=Fyf_FB・(1−WR_l) …(59)
Fyr_l_FB=Fyr_FB・WR_l …(60)
Fyr_r_FB=Fyr_FB・(1−WR_l) …(61)
各輪摩擦円限界値演算部3iは、路面μ推定装置18から路面摩擦係数μが入力され、各輪接地荷重演算部3eから左前輪接地荷重Fzf_l、右前輪接地荷重Fzf_r、左後輪接地荷重Fzr_l、右後輪接地荷重Fzr_rが入力される。
そして、以下の(62)〜(65)式により、左前輪摩擦円限界値μ_Fzfl、右前輪摩擦円限界値μ_Fzfr、左後輪摩擦円限界値μ_Fzrl、右後輪摩擦円限界値μ_Fzrrを演算し、各輪要求オーバータイヤ力演算部3l、各輪オーバータイヤ力演算部3mに出力する。
μ_Fzfl=μ・Fzf_l …(62)
μ_Fzfr=μ・Fzf_r …(63)
μ_Fzrl=μ・Fzr_l …(64)
μ_Fzrr=μ・Fzr_r …(65)
各輪要求タイヤ合力演算部3jは、各輪前後力演算部3fから左前輪前後力Fxf_l、右前輪前後力Fxf_r、左後輪前後力Fxr_l、右後輪前後力Fxr_rが入力され、各輪要求横力演算部3gから左前輪要求横力Fyf_l_FF、右前輪要求横力Fyf_r_FF、左後輪要求横力Fyr_l_FF、右後輪要求横力Fyr_r_FFが入力される。そして、以下の(66)〜(69)式により、左前輪要求タイヤ合力F_fl_FF、右前輪要求タイヤ合力F_fr_FF、左後輪要求タイヤ合力F_rl_FF、右後輪要求タイヤ合力F_rr_FFを演算し、各輪要求オーバータイヤ力演算部3lに出力する。
F_fl_FF=(Fxf_l+Fyf_l_FF1/2 …(66)
F_fr_FF=(Fxf_r+Fyf_r_FF1/2 …(67)
F_rl_FF=(Fxr_l+Fyr_l_FF1/2 …(68)
F_rr_FF=(Fxr_r+Fyr_r_FF1/2 …(69)
各輪タイヤ合力演算部3kは、各輪前後力演算部3fから左前輪前後力Fxf_l、右前輪前後力Fxf_r、左後輪前後力Fxr_l、右後輪前後力Fxr_rが入力され、各輪横力演算部3hから左前輪横力Fyf_l_FB、右前輪横力Fyf_r_FB、左後輪横力Fyr_l_FB、右後輪横力Fyr_r_FBが入力される。そして、以下の(70)〜(73)式により、左前輪タイヤ合力F_fl_FB、右前輪タイヤ合力F_fr_FB、左後輪タイヤ合力F_rl_FB、右後輪タイヤ合力F_rr_FBを演算し、各輪オーバータイヤ力演算部2oに出力する。
F_fl_FB=(Fxf_l+Fyf_l_FB1/2 …(70)
F_fr_FB=(Fxf_r+Fyf_r_FB1/2 …(71)
F_rl_FB=(Fxr_l+Fyr_l_FB1/2 …(72)
F_rr_FB=(Fxr_r+Fyr_r_FB1/2 …(73)
各輪要求オーバータイヤ力演算部3lは、各輪摩擦円限界値演算部3iから左前輪摩擦円限界値μ_Fzfl、右前輪摩擦円限界値μ_Fzfr、左後輪摩擦円限界値μ_Fzrl、右後輪摩擦円限界値μ_Fzrrが入力され、各輪要求タイヤ合力演算部3jから左前輪要求タイヤ合力F_fl_FF、右前輪要求タイヤ合力F_fr_FF、左後輪要求タイヤ合力F_rl_FF、右後輪要求タイヤ合力F_rr_FFが入力される。そして、以下の(74)〜(77)式により、左前輪要求オーバータイヤ力ΔF_fl_FF、右前輪要求オーバータイヤ力ΔF_fr_FF、左後輪要求オーバータイヤ力ΔF_rl_FF、右後輪要求オーバータイヤ力ΔF_rr_FFを演算し、オーバータイヤ力演算部3nに出力する。
ΔF_fl_FF=F_fl_FF−μ_Fzfl …(74)
ΔF_fr_FF=F_fr_FF−μ_Fzfr …(75)
ΔF_rl_FF=F_rl_FF−μ_Fzrl …(76)
ΔF_rr_FF=F_rr_FF−μ_Fzrr …(77)
各輪オーバータイヤ力演算部3mは、各輪摩擦円限界値演算部3iから左前輪摩擦円限界値μ_Fzfl、右前輪摩擦円限界値μ_Fzfr、左後輪摩擦円限界値μ_Fzrl、右後輪摩擦円限界値μ_Fzrrが入力され、各輪タイヤ合力演算部3kから左前輪タイヤ合力F_fl_FB、右前輪タイヤ合力F_fr_FB、左後輪タイヤ合力F_rl_FB、右後輪タイヤ合力F_rr_FBが入力される。そして、以下の(78)〜(81)式により、左前輪オーバータイヤ力ΔF_fl_FB、右前輪オーバータイヤ力ΔF_fr_FB、左後輪オーバータイヤ力ΔF_rl_FB、右後輪オーバータイヤ力ΔF_rr_FBを演算し、オーバータイヤ力演算部3nに出力する。
ΔF_fl_FB=F_fl_FB−μ_Fzfl …(78)
ΔF_fr_FB=F_fr_FB−μ_Fzfr …(79)
ΔF_rl_FB=F_rl_FB−μ_Fzrl …(80)
ΔF_rr_FB=F_rr_FB−μ_Fzrr …(81)
オーバータイヤ力演算部3nは、各輪要求オーバータイヤ力演算部3lから左前輪要求オーバータイヤ力ΔF_fl_FF、右前輪要求オーバータイヤ力ΔF_fr_FF、左後輪要求オーバータイヤ力ΔF_rl_FF、右後輪要求オーバータイヤ力ΔF_rr_FFが入力され、各輪オーバータイヤ力演算部3mから左前輪オーバータイヤ力ΔF_fl_FB、右前輪オーバータイヤ力ΔF_fr_FB、左後輪オーバータイヤ力ΔF_rl_FB、右後輪オーバータイヤ力ΔF_rr_FBが入力される。そして、各輪要求オーバータイヤ力ΔF_fl_FF、ΔF_fr_FF、ΔF_rl_FF、ΔF_rr_FFの総和と、各輪オーバータイヤ力ΔF_fl_FB、ΔF_fr_FB、ΔF_rl_FB、ΔF_rr_FBの総和とを比較して、値の大きい方をオーバータイヤ力Foverとして設定する。すなわち、
Fover=MAX((ΔF_fl_FF+ΔF_fr_FF+ΔF_rl_FF+ΔF_rr_FF)
,(ΔF_fl_FB+ΔF_fr_FB+ΔF_rl_FB+ΔF_rr_FB))…(82)
第1のトルクダウン量設定部3oは、エンジン制御部16からエンジン回転数Neが、トランスミッション制御部17から主変速ギヤ比i、トルクコンバータのタービン回転数Ntが、オーバータイヤ力演算部3nからオーバータイヤ力Foverが入力される。そして、以下の(83)式により第1のトルクダウン量T1overを演算し、制御量設定部5に出力する。
T1over=Fover・Rt/t/i/η/if …(83)
次に、上述の第1のトルクダウン量演算部3で実行される第1のトルクダウン量演算処理プログラムについて、図11、図12のフローチャートで説明する。
まず、S201で、トランスミッション出力トルク演算部3aで、前述の(13)式により、トランスミッション出力トルクTtを演算する。
次に、S202に進み、総駆動力演算部3bで、前述の(12)式により、総駆動力Fxを演算する。
次いで、S203に進み、前後接地荷重演算部3cで、前述の(11)式により前輪接地荷重Fzfを演算し、前述の(30)式により後輪接地荷重Fzrを演算する。
次に、S204に進み、左輪荷重比率演算部3dで、前述の(31)式により左輪荷重比率WR_lを演算する。
次いで、S205に進み、各輪接地荷重演算部3eで、前述の(32)、(33)、(34)、(35)式により、それぞれ左前輪接地荷重Fzf_l、右前輪接地荷重Fzf_r、左後輪接地荷重Fzr_l、右後輪接地荷重Fzr_rを演算する。
次に、S206に進み、各輪前後力演算部3fで、前述の(37)〜(40)式により、左前輪前後力Fxf_l、右前輪前後力Fxf_r、左後輪前後力Fxr_l、右後輪前後力Fxr_rを演算する。
次いで、S207に進み、各輪要求横力演算部3gで、前述の(43)〜(46)式により左前輪要求横力Fyf_l_FF、右前輪要求横力Fyf_r_FF、左後輪要求横力Fyr_l_FF、右後輪要求横力Fyr_r_FFを演算する。
次に、S208に進み、各輪横力演算部3hで、前述の(58)〜(61)式により、左前輪横力Fyf_l_FB、右前輪横力Fyf_r_FB、左後輪横力Fyr_l_FB、右後輪横力Fyr_r_FBを演算する。
次いで、S209に進み、各輪摩擦円限界値演算部3iで、前述の(62)〜(65)式により、左前輪摩擦円限界値μ_Fzfl、右前輪摩擦円限界値μ_Fzfr、左後輪摩擦円限界値μ_Fzrl、右後輪摩擦円限界値μ_Fzrrを演算する。
次に、S210に進み、各輪要求タイヤ合力演算部3jで、前述の(66)〜(69)式により、左前輪要求タイヤ合力F_fl_FF、右前輪要求タイヤ合力F_fr_FF、左後輪要求タイヤ合力F_rl_FF、右後輪要求タイヤ合力F_rr_FFを演算する。
次いで、S211に進み、各輪タイヤ合力演算部3kで、前述の(70)〜(73)式により、左前輪タイヤ合力F_fl_FB、右前輪タイヤ合力F_fr_FB、左後輪タイヤ合力F_rl_FB、右後輪タイヤ合力F_rr_FBを演算する。
次に、S212に進み、各輪要求オーバータイヤ力演算部3lで、前述の(74)〜(77)式により、左前輪要求オーバータイヤ力ΔF_fl_FF、右前輪要求オーバータイヤ力ΔF_fr_FF、左後輪要求オーバータイヤ力ΔF_rl_FF、右後輪要求オーバータイヤ力ΔF_rr_FFを演算する。
次いで、S213に進み、各輪オーバータイヤ力演算部3mで、前述の(78)〜(81)式により、左前輪オーバータイヤ力ΔF_fl_FB、右前輪オーバータイヤ力ΔF_fr_FB、左後輪オーバータイヤ力ΔF_rl_FB、右後輪オーバータイヤ力ΔF_rr_FBを演算する。
次に、S214に進み、オーバータイヤ力演算部3nで、前述の(82)式により、オーバータイヤ力Foverを演算する。
次いで、S215に進み、第1のトルクダウン量設定部3oで、前述の(83)式により、第1のトルクダウン量T1overを演算し、制御量設定部5に出力してプログラムを抜ける。
このように本発明の実施の形態によれば、第1のトルクダウン量演算部3では、ドライバ要求に基づき車輪に発生するタイヤ力が摩擦円限界値からオーバーするトルク値と、車輪に現在発生しているタイヤ力が摩擦円限界値からオーバーするトルク値とを比較し、その大きい方の値をドライバが要求する駆動力から減じて補正するようになっている。このため、現在のみならず、今後のトルク過剰な状態が適切に補正され、スピン、及び、プラウに対して適切な制御が行われ、タイヤのグリップ力を適切に維持して車両の走行安定性を向上させることが可能となっている。
また、ドライバが要求する駆動力から減じて補正する値は、あくまでも、タイヤ力が摩擦円限界値からオーバーするトルク値であるため、前後方向の駆動力が急に抑制されることがなく、ドライバに対して不自然な感覚や、加速不足といった不満感を与えることもない。
一方、図1において、第2のトルクダウン量演算部4は、各車輪の車輪速センサ11、操舵角検出手段としてのハンドル角センサ12、ヨーレート検出手段としてのヨーレートセンサ13、横加速度検出手段としての横加速度センサ14が接続され、各車輪の車輪速ωfl、ωfr、ωrl、ωrr、ハンドル角θH、ヨーレートγ、横加速度(dy/dt)が入力される。そして、第2のトルクダウン量演算部4は、これら入力信号に基づき第2のトルクダウン量T2overを演算し、制御量設定部5に出力する。以下、図17〜図22を基に、第2のトルクダウン量演算部4について説明する。
すなわち、第2のトルクダウン量演算部4は、図17に示すように、車速演算部4a、トルクダウン基本量設定部4b、第1の補正係数設定部4c、第2の補正係数設定部4d、第2のトルクダウン量設定部4eから主要に構成されている。
車速演算部4aは、4輪車輪速センサ11から各車輪の車輪速ωfl、ωfr、ωrl、ωrrが入力され、これらの平均を演算することで車速V(=(ωfl+ωfr+ωrl+ωrr)/4)を演算し、トルクダウン基本量設定部4b、第1の補正係数設定部4c、第2の補正係数設定部4dに出力する。
トルクダウン基本量設定部4bは、ヨーレートセンサ13からヨーレートγが、横加速度センサ14から横加速度(dy/dt)が、車速演算部4aから車速Vが入力される。そして、まず、以下の(84)式により、車体すべり角速度(dβ/dt)を演算し、この車体すべり角速度(dβ/dt)を基に、予め実験等により設定しておいた車体すべり角速度に対するトルクダウン基本量の特性マップ(図19)を参照して、トルクダウン基本量ΔT2moverを設定し、第2のトルクダウン量設定部4eに出力する。すなわち、トルクダウン基本量設定部4bは、トルクダウン量設定手段として設けられている。
(dβ/dt)=γ−((dy/dt)/V) …(84)
車体すべり角速度に対するトルクダウン基本量の特性マップは、図19に示すように、車体すべり角速度(dβ/dt)が高くなるほどトルクダウン基本量ΔT2moverが大きくなるように設定されている。これは、車体すべり角速度(dβ/dt)が高くなると、スピンやプラウの虞が高くなるため、トルクダウン量を大きくして、このような不安定な車両挙動を確実に抑止するためである。
第1の補正係数設定部4cは、ハンドル角センサ12からハンドル角θHが、ヨーレートセンサ13からヨーレートγが、車速演算部4aから車速Vが入力される。そして、以下の(85)式により、舵角ベースのヨーレート(目標ヨーレート)γtを演算し、以下の(86)式により、ヨーレート偏差Δγを演算し、このヨーレート偏差の絶対値|Δγ|を基に、予め実験等により設定しておいたヨーレート偏差に対する第1の補正係数の特性マップ(図20)を参照して、第1の補正係数Kcantを設定し、第2のトルクダウン量設定部4eに出力する。
γt=(1/(1+A・V))・(V/L)・(θH/n) …(85)
Δγ=γt−γ …(86)
この第1の補正係数Kcantは、後述するように、第2のトルクダウン量設定部4eにおいてトルクダウン基本量ΔT2moverに乗じることによりトルクダウン基本量ΔT2moverを補正する係数となっている。
すなわち、トルクダウン基本量ΔT2moverは、上述の(84)式で示すように、横加速度センサ14からの横加速度(dy/dt)を基に演算するようになっており、横加速度センサ14からの横加速度(dy/dt)は、図21に示すように、カントの影響を受ける。
例えば、図21(b)に示すように、旋回内側に向けて車体を傾斜させるようなカントの場合では、横加速度センサ14からの横加速度(dy/dt)は、実際の横加速度をGr、重力加速度をG、カントの傾斜角をθとすると、(Gr・cos(θ)−G・sin(θ))となり、実際の値よりも小さな値となってしまう。
逆に、図21(c)に示すように、旋回外側に向けて車体を傾斜させるようなカントの場合では、横加速度センサ14からの横加速度(dy/dt)は、(Gr・cos(θ)+G・sin(θ))となり、実際の値よりも大きな値となってしまう。
このような横加速度センサ14からの出力値に及ぼすカントの影響による誤差を排除するため、カントの影響を受けない舵角ベースのヨーレート(目標ヨーレート)γtを用いて補正係数(第1の補正係数)を設定するのである。
ヨーレート偏差に対する第1の補正係数の特性マップは、図20に示すように、ヨーレート偏差の絶対値|Δγ|が小さい領域、換言すれば、目標ヨーレートγtと実際のヨーレートの差が小さく、ドライバのハンドル操作と車両挙動とが略一致している場合には、トルクダウン量を設定する必要が無いものと判断し、略0に設定されるようになっている。このように、第1の補正係数設定部4cは、目標ヨーレート演算手段、ヨーレート比較手段、トルクダウン量設定手段として設けられている。
第2の補正係数設定部4dは、車速演算部4aから車速Vが入力される。そして、車速Vを基に、予め実験等により設定しておいた車速に対する第2の補正係数の特性マップ(図22)を参照して、第2の補正係数Kvsを設定し、第2のトルクダウン量設定部4eに出力する。
この第2の補正係数Kvsは、後述するように、第2のトルクダウン量設定部4eにおいてトルクダウン基本量ΔT2moverに乗じることによりトルクダウン基本量ΔT2moverを補正する係数となっている。
車速に対する第2の補正係数の特性マップは、図22に示すように、低車速領域で高く設定されるようになっている。これは、前述の第1のトルクダウン量演算部3による第1のトルクダウン量T1overの演算が路面μ推定装置18からの路面摩擦係数μを基に演算される値であり、この路面摩擦係数μは、特にセルフアライニングトルクを基に推定されるため、低車速領域において大きくなる傾向を有している。従って、低車速領域では、第1のトルクダウン量T1overが小さくなり、十分なトルクダウンを行えなくなる可能性があるため、第2のトルクダウン量T2overを与えて的確なトラクション制御が行えるようにするのである。
第2のトルクダウン量設定部4eは、トルクダウン基本量設定部4bからトルクダウン基本量ΔT2moverが、第1の補正係数設定部4cから第1の補正係数Kcantが、第2の補正係数設定部4dから第2の補正係数Kvsが入力される。そして、以下の(87)式により第2のトルクダウン量T2overを演算し、制御量設定部5に出力する。すなわち、第2のトルクダウン量設定部4eは、第1の補正係数設定部4cと共にトルクダウン量設定手段として設けられている。
T2over=Kcant・Kvs・ΔT2mover …(87)
次に、上述の第2のトルクダウン量演算部4で実行される第2のトルクダウン量演算処理プログラムについて、図18のフローチャートで説明する。
まず、S401で、車速演算部4aは車速Vを演算し、S402で、トルクダウン基本量設定部4bは、前述の(84)式により、車体すべり角速度(dβ/dt)を演算する。
次いで、S403に進み、トルクダウン基本量設定部4bで、車体すべり角速度に対するトルクダウン基本量の特性マップ(図19)を参照して、トルクダウン基本量ΔT2moverを設定する。
次に、S404に進み、第1の補正係数設定部4cで、前述の(85)式により、目標ヨーレートγtを演算する。
次いで、S405に進み、第1の補正係数設定部4cで、前述の(86)式により、ヨーレート偏差Δγを演算する。
次いで、S406に進み、第1の補正係数設定部4cで、ヨーレート偏差に対する第1の補正係数の特性マップ(図20)を参照して、第1の補正係数Kcantを設定する。
次に、S407に進み、第2の補正係数設定部4dで、車速に対する第2の補正係数の特性マップ(図22)を参照して、第2の補正係数Kvsを設定する。
そして、S408に進み、第2のトルクダウン量設定部4eは、前述の(87)式により、第2のトルクダウン量T2overを演算し、制御量設定部5に出力してプログラムを抜ける。
このように本発明の実施の形態によれば、第2のトルクダウン量演算部4では、路面摩擦係数μを用いることなく横加速度から求められる車体すべり角速度(dβ/dt)に基づいて第2のトルクダウン量T2overを演算するようになっているので、低速域においても精度の良いトルクダウン量を求めることができる。
また、第2のトルクダウン量T2overは、横加速度センサ14からの横加速度(dy/dt)を基に車体すべり角速度(dβ/dt)を演算し、この車体すべり角速度(dβ/dt)を基にトルクダウン基本量ΔT2moverを演算するようになっているため、横加速度センサ14からの横加速度(dy/dt)がカントの影響を受けて誤差を含む虞があるが、これをカントの影響のない舵角ベースのヨーレートを基に設定する第1の補正係数Kcantで補正するようになっているため、カントの影響の無い、精度の良いトルクダウン量を得ることが可能となっている。
次に、図1において、制御量設定部5は、要求エンジントルク演算部2から要求エンジントルクTdrvが、第1のトルクダウン量演算部3から第1のトルクダウン量T1overが、第2のトルクダウン量演算部4から第2のトルクダウン量T2overが入力される。そして、以下の(88)式により、最終的なトルクダウン量である総トルクダウン量Toverを演算し、以下の(89)式により、制御量Treqを演算し、エンジン制御部16に出力する。すなわち、制御量設定部5は、トルクダウン量設定手段を構成している。
Tover=T1over+T2over …(88)
Treq=Tdrv−Tover …(89)
次に、上述の駆動力制御装置1で実行される駆動力制御プログラムについて、図2のフローチャートで説明する。
まず、S101で必要なパラメータ、すなわち、各車輪の車輪速ωfl、ωfr、ωrl、ωrr、ハンドル角θH、ヨーレートγ、横加速度(dy/dt)、アクセル開度θACC、エンジン回転数Ne、エンジントルクTeg、主変速ギヤ比i、トルクコンバータのタービン回転数Nt、差動制限クラッチの締結トルクTLSD、路面摩擦係数μが読み込まれ、S102で、要求エンジントルク演算部2は、要求エンジントルクTdrvを演算する。
次に、S103に進み、第1のトルクダウン量演算部3は、前述の(83)式により第1のトルクダウン量T1overを演算し、S104に進んで、第2のトルクダウン量演算部4は、前述の(87)式により第2のトルクダウン量T2overを演算する。
次いで、S105に進み、制御量設定部5は、前述の(88)式により総トルクダウン量Toverを演算し、S106に進んで、前述の(89)式により制御量Treqを演算して、エンジン制御部16に出力し、プログラムを抜ける。
このように本実施の形態によれば、低速域においては横加速度から求めた車体すべり角速度(dβ/dt)を基に設定される第2のトルクダウン量T2overによりトルクダウンが実行され、それ以外の領域では路面摩擦係数μを基に設定される第1のトルクダウン量T1overによりトルクダウンが実行されるので、全ての車速領域において精度の良いトルクダウンが実行でき、発進、直進、旋回のあらゆる走行場面において、的確に精度良く駆動力を制御して車両の安定性を向上させることができる。
尚、本実施の形態では、第2のトルクダウン量T2overを演算する際の車体すべり角速度(dβ/dt)は、前述の(84)式、すなわち、ヨーレートγ、横加速度(dy/dt)、車速Vから演算して求めるようにしているが、他に、車体すべり角センサからの出力を微分して求めるようにしても良く、GPS(Global Positioning System)からの位置情報を基に求めるようにしても良く、カメラからの画像情報を処理して求めるようにしても良い。
また、本実施の形態では、ヨーレートセンサからのヨーレートγと、横加速度センサからの横加速度と車速から車体すべり角速度を演算し、この車体すべり角速度を基に、基本となるトルクダウン量を設定している。しかし、基本となるトルクダウン量を設定するにあたりヨーレートγと車速、車体すべり角速度を必ずしも必要としなく、カントの影響を受ける横加速度さえ最低限用いていれば他のパラメータは特に限定されない。
また、本実施の形態では、横加速度センサから基本となるトルクダウン量を設定し、その後、検出したヨーレートと目標ヨーレートとのヨーレート偏差に基づいて基本となるトルクダウン量を補正し、カントの影響を排除している。しかし、本発明は基準となるトルクダウン量を算出した後に補正を行う手法だけに限定されず、最初から横加速度とカントの影響を排除するヨーレート偏差とを用いてトルクダウン量を設定しても本発明の課題を解決できる。
さらに、本実施の形態では、検出したヨーレートと目標ヨーレートとのヨーレート偏差を用いている。しかし、本発明はそれに限定されず、例えば検出したヨーレートの目標ヨーレートに対する割合など、検出したヨーレートと目標ヨーレートとの比較であれば良く、ヨーレート偏差に限定されるものではない。
駆動力制御装置の構成を示す機能ブロック図 駆動力制御プログラムのフローチャート 路面摩擦係数推定装置の構成を示す機能ブロック図 操舵角−操舵トルク特性の説明図 車速と前輪すべり角に応じて設定される復帰速度の特性図 操安キャパシティと車速及び車輪すべり角の関係を示す説明図 本実施形態による路面摩擦係数推定の一例を示すタイムチャート 要求エンジントルクを発生するためのアクセル開度とスロットル開度との関係の一例を示す説明図 エンジン回転数とスロットル開度により設定される要求エンジントルクの一例を示す説明図 第1のトルクダウン量演算部の構成を示す機能ブロック図 第1のトルクダウン量演算処理ルーチンのフローチャート 図11から続くフローチャート 付加ヨーモーメント演算ルーチンのフローチャート 横加速度飽和係数の説明図 車速感応ゲインの特性マップ 高μ路と低μ路での付加ヨーモーメントの値の差異の説明図 第2のトルクダウン量演算部の構成を示す機能ブロック図 第2のトルクダウン量演算処理ルーチンのフローチャート 車体すべり角速度に対するトルクダウン基本量の特性の説明図 ヨーレート偏差に対する第1の補正係数の特性の説明図 カントが横加速度センサに及ぼす影響を示す説明図 車速に対する第2の補正係数の特性の説明図
符号の説明
1 駆動力制御装置
2 要求エンジントルク演算部
3 第1のトルクダウン量演算部
4 第2のトルクダウン量演算部
4a 車速演算部
4b トルクダウン基本量設定部(トルクダウン量設定手段)
4c 第1の補正係数設定部(目標ヨーレート演算手段、ヨーレート比較手段、トルクダウン量設定手段)
4d 第2の補正係数設定部
4e 第2のトルクダウン量設定部(トルクダウン量設定手段)
5 制御量設定部(トルクダウン量設定手段)
11 車輪速センサ
12 ハンドル角センサ(操舵角検出手段)
13 ヨーレートセンサ(ヨーレート検出手段)
14 横加速度センサ(横加速度検出手段)
15 アクセル開度センサ
16 エンジン制御部(出力制御手段)
17 トランスミッション制御部
18 路面μ推定装置

Claims (3)

  1. 駆動源の出力を低減することで車輪のグリップ力を適切に維持する車両の駆動力制御装置において、
    少なくとも路面摩擦係数に基づいたトルクダウン量であって、所定の低車速領域では小さな値となる特性を有する第1のトルクダウン量設定する第1のトルクダウン量設定手段と、
    横加速度を検出する横加速度検出手段と、
    操舵角を検出する操舵角検出手段と、
    ヨーレートを検出するヨーレート検出手段と、
    上記検出した操舵角を基に目標ヨーレートを演算する目標ヨーレート演算手段と、
    上記検出したヨーレートと上記目標ヨーレートとを比較するヨーレート比較手段と、
    少なくとも上記横加速度と上記ヨーレートの比較結果及び上記所定の低車速領域では大きな値となる補正係数とを用いて第2のトルクダウン量を設定する第2のトルクダウン量設定手段と、
    上記第1のトルクダウン量と上記第2のトルクダウン量に基づいて駆動源の出力を低減する出力制御手段とを有することを特徴とする車両の駆動力制御装置。
  2. 上記第2のトルクダウン量設定手段は、上記横加速度を基に設定したトルクダウン量を上記ヨーレートの比較結果を基に補正し上記第2のトルクダウン量を設定することを特徴とする請求項1記載の車両の駆動力制御装置。
  3. 上記ヨーレート比較手段は、上記検出したヨーレートと上記目標ヨーレートとの偏差を算出し、上記第2のトルクダウン量設定手段は、上記ヨーレート偏差の絶対値が小さいほど上記トルクダウン量が小さくなる方向に補正して上記第2のトルクダウン量を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の駆動力制御装置。
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