本発明は、前記課題、つまり耐熱性、耐衝撃性に優れ、さらには、植物度の高い成形体を得ることができるポリ乳酸系樹脂含む層を有する積層シートについて、鋭意検討した結果、特定な樹脂を特定の処方に従ってポリ乳酸系樹脂含む層を有するシートとして積層化したところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
本発明に用いられるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、適度な製膜、延伸適性および実用的な機械特性を満足させるため、5万〜50万であることが好ましく、より好ましくは10万〜25万である。なお、ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーでクロロホルム溶媒にて測定を行い、ポリメチルメタクリレート換算法により計算した分子量をいう。
本発明に用いられるポリ乳酸系樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を原料として得ることができる構造を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。かかる他の単量体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。上記他の共重合成分の共重合量は、耐熱性への影響を考慮すると、全単量体成分に対し、0〜30モル%であることが好ましく、0〜10モル%であることがより好ましい。
本発明において、特に高い耐熱性を有する積層シートを得るためには、ポリ乳酸系樹脂として乳酸成分の光学純度が高いものを用いることが好ましい。ポリ乳酸系樹脂の総乳酸成分の内、L体が80%以上含まれるかあるいはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることがより好ましく、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることが特に好ましい。
ポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、詳細は後述するが、既知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
ポリ乳酸系樹脂の融点は、特に制限されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。ポリ乳酸系樹脂の融点は通常、乳酸成分の光学純度を高くすることにより高くなり、融点120℃以上のポリ乳酸系樹脂は、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることにより、また融点150℃以上のポリ乳酸系樹脂は、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることにより得ることができる。
本発明におけるポリ(メタ)アクリレート系樹脂とは、アクリレートおよびメタクリレートから選ばれる少なくとも1種の単量体を構成単位とするものであり、2種以上の単量体を共重合して用いても構わない。ポリ(メタ)アクリレートを構成するアクリレートおよびメタクリレートとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノブチルアクリレートなどのアクリレート、およびメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのメタクリレートが挙げられるが、より高い高温剛性を付与するには、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂としてポリメチルメタクリレートを用いることが好ましい。
これらの単量体を重合あるいは共重合する方法については特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合等の公知の重合方法を用いることができる。
ポリ(メタ)アクリレート系樹脂としてポリメチルメタクリレートを用いる場合、ポリ乳酸系樹脂との相溶性に優れること、また、積層シート製膜時において各層の粘度をできるだけ近い値に調整し粘度斑を抑制して品位の良いシートを得やすいことから、JIS K7210に準じて230℃で測定したポリメチルメタクリレートの流動性が、1〜20g/10minであるものを用いることが好ましく、1.5〜15g/10minであるものがさらに好ましく、2〜10g/10minであるものが特に好ましい。
本発明で用いられるポリ(メタ)アクリレート系樹脂は、重量平均分子量が2万〜50万であることが好ましく、10万〜20万であることがより好ましい。重量平均分子量が2万未満では、積層シートまたはそれから成形される成形体の強度が低下する場合があり、重量平均分子量が50万を超えると積層シート製膜時に粘度斑が発生したり、成形体の成形時の流動性が低下する場合がある。
本発明のポリ乳酸系樹脂を含む層を有する積層シートは、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂組成物からなる層および/またはポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂とを含有する組成物からなる層を少なくとも1層有することが必要であり、該層を複数有していてもよい。これらの層を有しない場合、本発明の目的の一つである優れた耐熱性を付与することができない。
さらに本発明のポリ乳酸系樹脂を含む層を有する積層シートは、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂からなる層および/またはポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂とを含有する組成物からなる層において、以下の式(1)および式(2)を満たす層を有する(以下、式(1)および式(2)を満たす、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂からなる層および/またはポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂とを含有する組成物からなる層を層Aとする)ことが必要である。
50≦Xa≦100 ・・・式(1)
0.05≦Ra≦0.5 ・・・式(2)
ただし、
Xa:層Aを構成する組成物全体に対するポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有割合(重量%)
Ra:シート全体の厚みを1としたときの、全体の厚みに対する層Aの厚みの比率
特に、本発明の積層シートにおいては、層Aが1層のみであることが好ましい。
上記の式(1)および式(2)を満たす層Aを有さない場合、本発明の目的とする耐熱性、耐衝撃性、および植物度の高い積層シートさらには成形体を得ることができなくなる。
さらに本発明の積層シートにおいて、層Aを1層のみとした場合、本発明の目的とする耐熱性、耐衝撃性、および植物度が特に優れた積層シートさらには成形体を得ることができる。つまり、所望の耐熱性を持たせるために、シートの全層に同じ割合でポリ(メタ)アクリレート系樹脂を配合すると、植物度が低くなってしまうことがあり、耐衝撃性も低下することがある。一般的にポリ乳酸系樹脂にポリ(メタ)アクリレート系樹脂を配合し、後述するように、分子レベルで両成分を均一に混合させると、ポリ乳酸系樹脂としては耐熱性は向上するが、耐衝撃性は悪化することが多い。
また、積層シート全体に対するポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有量が同じ条件で比較すると、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂を50重量%以上の高濃度で含有する層を1層のみとした場合と、2層以上の複数の構成とした場合では、前者の方が特に高いレベルの耐熱性と耐衝撃性を付与することができる一方、後者の場合では、十分な耐熱性と耐衝撃性を付与できない場合がある。一般的に、シートの曲げ剛性はシート厚みの3乗に比例することから、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有量が同じであっても、シートの構成が異なると上記のように耐熱性や耐衝撃性に大きな差が存在すると推定している。
層Aを構成する組成物全体に対するポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有割合:Xaは、50重量%以上が必要であり、50重量%未満では、積層シートに十分な耐熱性を付与することができない。Xaは、より好ましくは75重量%以上である。
シート全体の厚みを1としたときの、全体の厚みに対する層Aの厚みの比率:Raは、0.05以上0.5以下である。Raが0.05未満では、積層シートに十分な耐熱性を付与することができない。Raが0.5超では、前述したとおり、積層シートの耐衝撃性と植物度を損なってしまう。Raは好ましくは0.05以上0.4以下であり、さらに好ましくは0.05以上0.3以下である。Raが0.05以上0.3以下の場合、耐熱性と耐衝撃性、および植物度を高いレベルで付与することができる。
本発明の積層シートは、ヘイズが0%以上10%以下であることが好ましく、0%以上5%以下であることがさらに好ましい。ヘイズがこの範囲である場合、容器などに成形加工した際には内容物が容易に確認できる、商品としての見栄えがよいなど高い意匠性により好適である場合が多い。なお、ヘイズを2%未満とすることは現実的には困難である。そのため本発明の積層シートにおいてヘイズに下限はないものの、現実的な下限は2%と考えられる。
本発明の積層シートは、積層シート全体に対するポリ乳酸系樹脂の含有量が50〜97重量%であることが好ましい。より好ましくは60〜90重量%、さらに好ましくは80〜90重量%である。ポリ乳酸樹脂はバイオマス、つまり再生可能な生物由来の資源であり、具体的には、トウモロコシやサツマイモなどの植物を原料として製造されている。よって、ポリ乳酸系樹脂の使用がそのままシートの植物度向上につながる。バイオマスは空気中の二酸化炭素と水から植物が生み出すものなので、分解されても燃やされても大気中の二酸化炭素を増加させることがない。したがって、近年懸念されている地球温暖化防止さらには、石油資源の節約へ寄与することができる。本発明では、シートを積層構成とし、耐熱性を付与する成分となるポリ(メタ)アクリレート系樹脂を前述した特定の処方に従って積層化することで、耐熱性と耐衝撃性、および植物度を高いレベルで付与することが初めて可能となった。
各層におけるポリ(メタ)アクリレート系樹脂やポリ乳酸系樹脂などの各組成物の正確な含有量を特定する方法の一つにNMRによる特定が挙げられる。例えば、ポリ乳酸とポリメチルメタクリレートの配合量を特定するには、重クロロホルム溶媒中55℃で1H核のNMR測定を行い、ポリ乳酸に由来するピーク(例えばメチン基に由来するピーク)とポリメチルメタクリレートに由来するピーク(例えばメトキシ基に由来するピーク)の強度比から算出することができる。1H核のピークが重複して算出できない場合は、さらに13C核の測定を行い、特定することができる。このようにNMRを用いることでXaを求めたり、また積層シート全体に対するポリ乳酸系樹脂の含有量を求めることが可能となる。
また、シート全体の厚みに対する各層の厚みの比率は、シート断面を、例えば倍率100倍の顕微鏡などを用いて写真撮影し、写真上の各層の厚み長さとシート全体の厚み長さを測定することが可能であり、このようにしてRaを求めることができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートの積層構成には、特に制限は無い。層Aと他の組成物からなる層(以下、層Bとする)からなるA/B型の2層であってもよいし、A/B/A型やB/A/B型の3層であってもよいし、それ以上の多層構成であっても構わない。また、層A、層B以外の第3の層Cを含んだC/B/A/B/C型などでも構わない。本発明の積層シートは、好ましくは少なくともB/A/B型構成を有する場合であり、より好ましくはB/A/B型構成である。
本発明において、ポリ乳酸系樹脂成分とその他の樹脂成分を含有する組成物を得るにあたっては、各成分を溶媒に溶かした溶液を均一混合した後、溶媒を除去して組成物を製造することも可能であるが、溶媒へ原料の溶解、溶媒除去等の工程が不要で、実用的な製造方法である、各成分を溶融混練することにより組成物を製造する溶融混練法を採用することが好ましい。その溶融混練方法については、特に制限はなく、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸または二軸押出機等の通常使用されている公知の混合機を用いることができる。中でも生産性の観点から、単軸または二軸押出機の使用が好ましい。またその混合順序についても特に制限はなく、例えばポリ乳酸系樹脂とポリ(メタ)アクリレート系樹脂をドライブレンド後、溶融混練機に供する方法や、予めポリ乳酸系樹脂とポリ(メタ)アクリレート系樹脂を溶融混練したマスターバッチを作製後、該マスターバッチとポリ乳酸系樹脂とを溶融混練する方法等が挙げられる。また必要に応じて、その他の添加剤を同時に溶融混練する方法や、予めポリ乳酸系樹脂とその他の添加剤を溶融混練したマスターバッチを作製後、該マスターバッチとポリ乳酸系樹脂とポリ(メタ)アクリレート系樹脂とを溶融混練する方法を用いてもよい。また溶融混練時の温度は190℃〜250℃の範囲が好ましく、またポリ乳酸の劣化を防ぐ意味から、200℃〜240℃の範囲とすることがより好ましい。
層Aがポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂とを含有する組成物からなる際に、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂の種類や配合量、混練方法によっては3μm以下の構造周期を有する場合があり、この場合、優れた機械特性と耐熱性を両立することから好ましい。この構造周期は、溶融混練時に一旦相溶化後、スピノーダル分解により形成された微細な相分離構造に由来する場合があるが、これに限定されるものではない。なお、「微細な相分離構造」を確認するためには、例えば、光学顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察等の方法が挙げられる。また、「構造周期」については、光散乱装置や小角X線散乱装置を用いて行う散乱測定において、散乱極大が現れること等によって確認することができる。なお、光散乱装置、小角X線散乱装置は最適測定領域が異なるため、構造周期の大きさに応じて適宜選択して用いられる。この散乱測定における散乱極大の存在は、ある周期を持った規則正しい相分離構造を持つ証明であり、構造周期Λmの値は、散乱光の散乱体内での波長λ、散乱極大を与える散乱角θm を用いて次式により計算することができる。
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)。
さらに、層Aがポリ(メタ)アクリレート系樹脂とポリ乳酸系樹脂とを含有する組成物からなる際に、配合するポリ(メタ)アクリレートの種類や配合量、混練方法によっては相溶化する場合があり、この場合、特に耐熱性、透明性に優れることから各種透明用途で好適に用いられることから好ましい。一般的に、「相溶化」とは、分子レベルで両成分が均一に混合していることを意味し、前述した構造周期を測定すると少なくとも0.01μm以下となるが、この場合は特に好ましい。
本発明の積層シートの層Aには、本発明の目的、効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、ポリ乳酸系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂以外の樹脂を混合してもよい。例えば、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニル化合物などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体などの軟質熱可塑性樹脂が挙げられる。
その中でも特にガラス転移温度が60℃以上となるポリビニル化合物は、ポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性を向上させる効果があるため好ましい。ガラス転移温度が60℃以上となるポリビニル化合物の具体例としては、ポリスチレン、ポリ(4−アセチルスチレン)、ポリ(2−メチルスチレン)、ポリ(3−メチルスチレン)、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(4−メトキシスチレン)、ポリ(4−ヒドロキシスチレン)(ポリビニルフェノール)、ポリ(2−ヒドロキシメチルスチレン)、ポリ(3−ヒドロキシメチルスチレン)、ポリ(4−ヒドロキシメチルスチレン)等の各種スチレン系重合体、およびポリ(ベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(シクロヘキサノイルオキシエチレン)、ポリ(4−エトキシベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(2−メトキシベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(4−メトキシベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(4−フェニルベンゾイルオキシエチレン)等の各種ポリビニルエステル等が挙げられるが、これらの中でもポリ乳酸樹脂との相溶性の観点からポリ(4−ヒドロキシスチレン)(ポリビニルフェノール)を用いるのが好ましい。
本発明の積層シートの各層には、さらに耐衝撃性を付与するため、耐衝撃改良材を添加することも好ましい。耐衝撃改良剤の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロプレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、各種アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体(たとえば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体)、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、ジエンゴム(たとえばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル単量体との共重合体(たとえばスチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合せしめたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエンまたはイソプレンとの共重合体、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリエステル系エラストマー、およびポリアミド系エラストマーなどを使用することができる。
更に、各種の架橋度を有するものや、各種のミクロ構造、例えばシス構造、トランス構造等を有するもの、ビニル基などを有するもの、或いは各種の平均粒径(樹脂組成物中における)を有するものや、コア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成され、また隣接し合った層が異種の重合体から構成されるいわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造重合体なども使用することができる。
また、上記具体例に挙げた各種の(共)重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体などのいずれであっても、本発明の耐衝撃改良剤として用いることができる。
更には、これらの(共)重合体を作るに際し、他のオレフィン類、ジエン類、芳香族ビニル化合物、アクリル酸、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルなどの単量体を共重合することも可能である。
これらの耐衝撃改良剤の中でも、アクリル単位を含む重合体や、酸無水物基および/またはグリシジル基を持つ単位を含む重合体が好ましい。ここでいうアクリル単位の好適例としては、メタクリル酸メチル単位、アクリル酸メチル単位、アクリル酸エチル単位およびアクリル酸ブチル単位を挙げることができ、酸無水物基やグリシジル基を持つ単位の好適例としては、無水マレイン酸単位およびメタクリル酸グリシジル単位を挙げることができる。
また、耐衝撃改良剤は、コア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成され、また隣接し合った層が異種の重合体から構成される、いわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造重合体であることが好ましく、メタクリル酸メチル単位またはアクリル酸メチル単位をシェル層に含む多層構造重合体であることがさらに好ましい。このような多層構造重合体としては、アクリル単位を含むことや、酸無水物基および/またはグリシジル基を持つ単位を含むことが好ましく、アクリル単位の好適例としては、メタクリル酸メチル単位、アクリル酸メチル単位、アクリル酸エチル単位およびアクリル酸ブチル単位を挙げることができ、酸無水物基やグリシジル基を持つ単位の好適例としては、無水マレイン酸単位やメタクリル酸グリシジル単位を挙げることができる。特に、メタクリル酸メチル単位、アクリル酸メチル単位、無水物マレイン酸単位およびメタクリル酸グリシジル単位から選ばれた少なくとも一つをシェル層に含み、アクリル酸ブチル単位、アクリル酸エチルヘキシル単位、スチレン単位およびブタジエン単位から選ばれた少なくとも一つをコア層に含む多層構造体が好ましく使用される。
また、別の好ましい耐衝撃性改良剤はポリウレタンゴムである。ここでポリウレタンゴムとはウレタン結合を有する弾性体全般を総称するものであり、熱可塑性ポリウレタンエラストマーや、それを架橋した架橋ポリウレタンゴムを含む。なかでも熱可塑性ポリウレタンエラストマーが好ましい。熱可塑性ポリウレタンエラストマーはジイソシアネートと短鎖ポリオールからなるハードセグメントと、ジイソシアネートと長鎖ポリオールからなるソフトセグメントを少なくとも有する。熱可塑性ポリウレタンエラストマーを構成するジイソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート、m−およびp−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが好ましく使われる。短鎖ポリオール成分としては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ブテンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカメチレンジオール等が好ましく使われる。ソフトセグメントとしての長鎖ポリオールとしては、ポリアルキレンアジペート、ポリアルキレンエーテルなどが好ましく、ポリエチレン−ブチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリノナンジオールアジペート、ポリテトラメチレングリコールなどがより好ましい。それぞれの成分は1種又は2種以上の混和物でも好適に用いることができる。
また、上記耐衝撃改良剤は、実質的にアニオンが検出されないものであることが、他の樹脂の安定性の観点から好ましい。
そして、上記耐衝撃改良剤のガラス転移温度は、−20℃以下であることが好ましく、−30℃以下であることがさらに好ましい。
本発明の積層シートの各層には、さらなる耐衝撃性付与、成形性向上の観点から、ガラス転移温度が60℃以下のポリエステル系樹脂を、その層を構成する組成物全体に対して、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.2〜30重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%含有してもよい。該層は前記層Aおよび/または前記層Bおよび/または前記層A、層B以外の第3の層のいずれであっても構わない。かかるポリエステル系樹脂が40重量%を超えると、耐熱性、透明性が低下することがあり、ポリエステル系樹脂が0.1重量%未満であると耐衝撃性の改良効果が低くなることがある。
ポリマーの耐衝撃性と柔軟性は相関しており、ポリマーの柔軟性を評価する一つの目安としてガラス転移点があげられる。本発明の積層シートの耐衝撃性を向上させるために、該ガラス転移温度が60℃以下のポリエステル系樹脂は、ポリ乳酸のガラス転移温度を考慮して、ガラス転移温度が60℃以下であることが好ましい。
該ガラス転移温度が60℃以下のポリエステル系樹脂の重量平均分子量には特に制限は無いが、主に耐熱性を維持する観点とポリ乳酸樹脂との相溶性の観点から、それぞれ下限と上限の好ましい値が存在し、2,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは5,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜80,000である。
このガラス転移温度が60℃以下のポリエステル系樹脂の種類については特に制限は無いが、芳香族および/または脂肪族ポリエステル、ポリエーテル系および/またはポリエステル系セグメントとポリ乳酸セグメントで構成される樹脂組成物であることが好ましい。
芳香族および/または脂肪族ポリエステルの具体例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンセバケート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/サクシネート、ポリプロピレンセバケート、ポリプロピレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート/テレフタレート、ポリプロピレンアジペート/テレフタレート、ポリプロピレンアジペート/サクシネートなどが挙げられる。
ポリエーテル系および/またはポリエステル系セグメントとポリ乳酸セグメントで構成される樹脂組成物は、ポリエーテル系および/またはポリエステル系樹脂とポリ乳酸樹脂のブロック共重合体であることがさらに好ましい。またこのブロック共重合体一分子中に分子量が1,500以上のポリ乳酸セグメントを一つ以上有することが好ましい。この場合、該ポリ乳酸セグメントが、母材であるポリ乳酸系重合体から形成される結晶中に取り込まれることで母材につなぎ止められる作用を生じ、該ブロック共重合体のブリードアウトを十分に抑制することができる。
ポリエーテルの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール共重合体などが挙げられる。
ポリエステルの具体例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンセバケート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/サクシネート、ポリプロピレンセバケート、ポリプロピレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート/テレフタレート、ポリプロピレンアジペート/テレフタレート、ポリプロピレンアジペート/サクシネートなどが挙げられる。
本発明の積層シートの層Aおよび/またはその他の層には、ポリ乳酸系樹脂の結晶の過大な成長を抑制し、微細化するため、また、結晶化速度を促進するために透明核剤を混合してもよい。かかる透明核剤は、ポリ乳酸系樹脂との相溶性が良好である必要があり、また、結晶化速度を高め、結晶化した時は該樹脂の透明性を維持する必要がある。このような透明核剤としては、脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族アルコール及び脂肪族カルボン酸エステルが挙げられる。
脂肪族カルボン酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドのような脂肪族モノカルボン酸アミド類、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミドのようなN−置換脂肪族モノカルボン酸アミド類、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、へキサメチレンビスステアリン酸アミド、へキサメチレンビスベヘニン酸アミド、へキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドのような脂肪族ビスカルボン酸アミド類、N,N´−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N´−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N´−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N´−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N´−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N´−ジステアリルテレフタル酸アミドのようなN−置換脂肪族カルボン酸ビスアミド類、N−ブチル−N´−ステアリル尿素、N−プロピル−N´−ステアリル尿素、N−ステアリル−N´−ステアリル尿素、N−フェニル−N´−ステアリル尿素、キシリレンビスステアリル尿素、トルイレンビスステアリル尿素、ヘキサメチレンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスラウリル尿素のようなN−置換尿素類が挙げられる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。この中でも、脂肪族モノカルボン酸アミド類、N−置換脂肪族モノカルボン酸アミド類、脂肪族ビスカルボン酸アミド類が好適に用いられ、特に、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドが好適に用いられる。
脂肪族カルボン酸塩の具体例としては、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸水素カリウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸銀等のラウリン酸塩、ミリスチン酸リチウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸水素カリウム、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸銀等のミリスチン酸塩、パルミチン酸リチウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、パルミチン酸鉛、パルミチン酸タリウム、パルミチン酸コバルト等のパルミチン酸塩、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸鉛、オレイン酸タリウム、オレイン酸銅、オレイン酸ニッケル等のオレイン酸塩、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸タリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸ベリリウム等のステアリン酸塩、イソステアリン酸ナトリウム、イソステアリン酸カリウム、イソステアリン酸マグネシウム、イソステアリン酸カルシウム、イソステアリン酸バリウム、イソステアリン酸アルミニウム、イソステアリン酸亜鉛、イソステアリン酸ニッケル等のイソステアリン酸塩、ベヘニン酸ナトリウム、ベヘニン酸カリウム、べヘニン酸マグネシウム、ベヘニン酸カルシウム、ベヘニン酸バリウム、ベヘニン酸アルミニウム、べヘニン酸亜鉛、ベヘニン酸ニッケル等のベヘニン酸塩、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カリウム、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸バリウム、モンタン酸アルミニウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸ニッケル等のモンタン酸塩等が挙げられる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。特に、ステアリン酸の塩類やモンタン酸の塩類が好適に用いられ、特に、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸カルシウムが好適に用いられる。
脂肪族アルコールの具体例としては、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール等の脂肪族モノアルコール類、1,6−ヘキサンジオール、1,7−へプタンジール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族多価アルコール類、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等の環状アルコール類等が挙げられる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。特に脂肪族モノアルコール類が好適に用いられ、特にステアリルアルコールが好適に用いられる。
脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、ラウリン酸セチルエステル、ラウリン酸フェナシルエステル、ミリスチン酸セチルエステル、ミリスチン酸フェナシルエステル、パルミチン酸イソプロピリデンエステル、パルミチン酸ドデシルエステル、パルミチン酸テトラドデシルエステル、パルミチン酸ペンタデシルエステル、パルミチン酸オクタデシルエステル、パルミチン酸セチルエステル、パルミチン酸フェニルエステル、パルミチン酸フェナシルエステル、ステアリン酸セチルエステル、べヘニン酸エチルエステル等の脂肪族モノカルボン酸エステル類、モノラウリン酸グリコール、モノパルミチン酸グリコール、モノステアリン酸グリコール等のエチレングリコールのモノエステル類、ジラウリン酸グリコール、ジパルミチン酸グリコール、ジステアリン酸グリコール等のエチレングリコールのジエステル類、モノラウリン酸グリセリンエステル、モノミリスチン酸グリセリンエステル、モノパルミチン酸グリセリンエステル、モノステアリン酸グリセリンエステル等のグリセリンのモノエステル類、ジラウリン酸グリセリンエステル、ジミリスチン酸グリセリンエステル、ジパルミチン酸グリセリンエステル、ジステアリン酸グリセリンエステル等のグリセリンのジエステル類、トリラウリン酸グリセリンエステル、トリミリスチン酸グリセリンエステル、トリパルミチン酸グリセリンエステル、トリステアリン酸グリセリンエステル、パルミトジオレイン、パルミトジステアリン、オレオジステアリン等のグリセリンのトリエステル類等が挙げられる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。この中でもエチレングリコールのジエステル類が好適であり、特にエチレングリコールジステアレートが好適に用いられる。
これらの透明核剤の具体的な添加量は、各層を構成する組成物全体に対して、0.1〜2.5重量%が好ましく、より好ましくは0.3〜2重量%、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%である。0.1重量%より小さいと、透明核剤としての効果が不十分となり、耐熱性が低くなることがある。2.5重量%より大きいと、透明性が低下するばかりか、外観や物性の変化を来す場合がある。
本発明の積層シートには、各種粒子を含有することができる。その平均粒子径は0.01〜10μm、含有量は各層の組成物100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましい。平均粒子径は、より好ましくは0.02〜5μm、さらに好ましくは0.03〜2μmである。混合する重量部は、より好ましくは0.02〜1重量部、さらに好ましくは0.03〜0.5重量部である。平均粒子径が0.01μmより小さいと、または混合重量部が0.01重量部より少ないと、成形金型とシートとの滑りが悪くなり、成形ムラが生じたり、シートが破断したり、また、金型からの離型性が悪くなるなど、成形性が不良となることがある。一方、平均粒子径が10μmより大きいと、または混合質量部が10重量部より多いと、フィルムの透明性が低下することがある。
かかる粒子の種類は、目的や用途に応じて適宜選択され、本発明の効果を損なわなければ特に限定されないが、無機粒子、有機粒子、架橋高分子粒子、重合系内で生成させる内部粒子などを挙げることができる。もちろん、各粒子は、それぞれ単独で使用しても、混合して用いても構わない。混合して用いる場合は、それぞれの種類の粒子が、上記平均粒子径の範囲内となるようにすればよく、また、全ての種類の粒子の総含有量が上記範囲内となるようにすればよい。
無機粒子としては、特に限定されないが、シリカ等の酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の各種炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の各種硫酸塩、カオリン、タルク等の各種複合酸化物、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の各種リン酸塩、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の各種酸化物、フッ化リチウム等の各種塩等からなる微粒子を使用することができる。
また有機粒子としては、シュウ酸カルシウムや、カルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩などからなる微粒子が使用される。架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体からなる微粒子が挙げられる。その他、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機微粒子も好ましく使用される。
重合系内で生成させる内部粒子としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などを反応系内に添加し、さらにリン化合物を添加する公知の方法で生成される粒子も使用される。
本発明の積層シートの全体の厚みは、特に限定されないが、好ましくは50〜2000μm、より好ましくは100〜1500μm、特に好ましくは200〜1000μmであるのがよい。かかる厚みが50μmより小さい場合は、成形体の成形時にフィルム破れが発生しやすくなり成形性が悪化するだけでなく、成形できた場合でも成形体の強度が弱くなってしまうといった問題が発生しやすくなる。また、フィルム厚みが2000μmより大きい場合は、成形体の成形前の加熱が長時間必要になってしまい、うまく成形できた場合でも脆くなりやすいといった問題が発生しやすくなる。
また、本発明の積層シートには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて添加剤、例えば、難燃剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、粘着性付与剤、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤またはポリシロキサン等の消泡剤、顔料または染料等の着色剤を適量配合することができる。
また、ブロッキング防止、帯電防止、離型性付与、耐傷付き性改良などの目的で、表面に主にシリコーン系のコーティング機能層を設けることが有効であり、この機能層の形成には、シートの製造工程内で行うインラインコーティング法、シートの巻き取り後に行うオフラインコーティング法を用いることができる。
本発明の積層シートは、シートおよびこれを用いて得られる成形体の分解による強度低下を抑制し、耐熱性を良好とする点から、該積層シートのカルボキシル基末端濃度が30当量/103kg以下であることが好ましく、より好ましくは20当量/103kg以下、さらに好ましくは10当量/103kg以下である。ポリ乳酸系樹脂中のカルボキシル基末端濃度が30当量/103kgを超える場合には、該積層シートおよび成形体が高温多湿条件下あるいは熱水との接触条件下で使用される際に加水分解により強度が低下し、容器などの成形体が脆くなり割れやすい等といった問題が発生する場合がある。
該積層シートのカルボキシル基末端濃度を30当量/103kg以下とする方法としては、例えば、ポリ乳酸系樹脂の合成時の触媒や熱履歴により制御する方法、シート製膜時の押出温度を低下あるいは滞留時間を短時間化する等熱履歴を低減する方法、反応型化合物を用いカルボキシル基末端を封鎖する方法等が挙げられる。
反応型化合物を用いカルボキシル基末端を封鎖する方法では、シート中のカルボキシル基末端の少なくとも一部が封鎖されていることが好ましく、全量が封鎖されていることがより好ましい。反応型化合物としては、例えば、脂肪族アルコールやアミド化合物等の縮合反応型化合物やカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物等の付加反応型化合物が挙げられるが、反応時に余分な副生成物が発生しにくい点で付加反応型化合物が好ましい。
本発明の積層シートは、該積層シート中に含まれるラクチド量が0.5重量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.4重量%以下、さらに好ましくは0.3重量%以下である。該積層シート中に含まれるラクチド量が0.5重量%を超えると、該積層シート中に残留しているラクチドが粉末状あるいは液状として析出したときに、ハンドリング性、透明性が悪化する場合がある。また、ポリ乳酸樹脂の加水分解を進行させ、シートの耐経時性が悪化する場合がある。
本発明の積層シートにおける、シート中に含まれるラクチドとは、上述したポリ乳酸を主体とするポリマーを構成する乳酸成分の環状2量体を意味するものであって、LL−ラクチド、DD−ラクチドおよびDL(メソ)−ラクチドが挙げられる。
本発明のポリ乳酸系樹脂積層シートは、主に耐経時性の観点から、延伸シートとしてもよく、その場合は、二軸延伸シートとすることが好ましい。
延伸シートを得る場合は、インフレーション法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法などの既存の延伸シート製造法により行うことができるが、成形性と耐熱性を両立するシートの配向状態を制御しやすいこと、また、製膜速度を高速にできることから逐次二軸延伸法が好ましい。
次に、積層シートを製造する方法を具体的に説明する。
本発明におけるポリ乳酸系樹脂は、例えば、次のような方法で得ることができる。原料としては、L−乳酸またはD−乳酸の乳酸成分を主体とし、前述した乳酸成分以外のヒドロキシカルボン酸を併用することができる。またヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えば、ラクチド、グリコリド等を原料として使用することもできる。更にジカルボン酸類やグリコール類等も使用することができる。
ポリ乳酸系樹脂は、上記原料を直接脱水縮合する方法、または上記環状エステル中間体を開環重合する方法によって得ることができる。例えば直接脱水縮合して製造する場合、乳酸類または乳酸類とヒドロキシカルボン酸類を好ましくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより高分子量のポリマーが得られる。
また、ラクチド等の環状エステル中間体をオクチル酸錫等の触媒を用い減圧下開環重合することによっても高分子量のポリマーが得られることも知られている。このとき、有機溶媒中での加熱還流時の水分および低分子化合物の除去の条件を調整する方法や、重合反応終了後に触媒を失活させ解重合反応を抑える方法、製造したポリマーを熱処理する方法などを用いることにより、ラクチド量の少ないポリマーを得ることができる。
以下に本発明の無延伸の積層シートを得る場合、さらにはテンター式逐次二軸延伸を行う場合の好ましい製膜方法を示すが、本発明は、かかる製膜方法に限定されるものではない。
ポリ乳酸系樹脂とポリ(メタ)アクリレート系樹脂を性状に応じた計量装置を用いて、層A用、その他の層用として、それぞれ所定の比率で、独立した別々の二軸押出機に供給する。二軸押出機としては、ポリ乳酸系樹脂とポリ(メタ)アクリレート系樹脂を未乾燥で供給可能であるため、ベント式二軸押出機を好ましく用いることができる。層Aについては、供給されたポリ乳酸系樹脂とポリ(メタ)アクリレート系樹脂は、溶融粘度に応じて150〜300℃で溶融し、ダイ外またはダイ内で複合化し、例えばTダイ法によりリップ間隔2〜3mmのスリット状の口金から金属製冷却キャスティングドラム上に、直径0.5mmのワイヤー状電極を用いて静電印加して密着させ、無配向キャストシートを得る。
金属製冷却ロールの表面温度の好ましい範囲は0〜30℃であり、より好ましい範囲は3〜25℃であり、さらに好ましい範囲は5〜20℃である。金属製冷却ロールの表面温度をこの範囲に設定することで良好な透明性を発現できる。
延伸シートを得る場合は、こうして得られた無配向キャストシートを加熱ロール上を搬送することによって縦延伸を行う温度まで昇温する。昇温には赤外線ヒーターなど補助的な加熱手段を併用しても良い。延伸温度の好ましい範囲は80〜95℃であり、より好ましくは85〜90℃である。このようにして昇温した無配向キャストシートを加熱ロール間の周速差を用いてシート長手方向に1段もしくは2段以上の多段で延伸を行う。合計の延伸倍率は1.2〜3.5倍が好ましく、より好ましくは1.5〜3.0倍である。
このように一軸延伸したシートをいったん冷却した後、シートの両端部をクリップで把持してテンターに導き、幅方向の延伸を行う。延伸温度は75〜90℃が好ましく、より好ましくは80〜85℃である。延伸倍率は1.2〜3.5倍が好ましく、より好ましくは1.5〜3.0倍である。
シートの幅方向の性能差を低減するためには、長手方向の延伸温度よりも1〜15℃低い温度で幅方向の延伸を行うことが好ましい。
さらに必要に応じて、再縦延伸および/または再横延伸を行ってもよい。
次に、この延伸した配向シートを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱固定する。主にシートに熱寸法安定性を付与する観点、また同時にシートに含有しているラクチドを飛散させラクチド量を低減させる観点から、好ましい熱処理温度は100〜160℃であり、より好ましくは120〜150℃である。時間は0.2〜30秒の範囲で行うのが好ましいが、特に限定されない。弛緩率は、幅方向の熱収縮率を低下させる観点から1〜8%であることが好ましく、より好ましくは2〜5%である。熱固定処理を行う前にいったんシートを冷却することがさらに好ましい。
さらに、シートを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、シートを冷やして巻き取り、目的とする積層シートを得る。
上記のような製造方法を採用することにより、本発明の積層シートを得ることができる。
本発明の成形体の成形法としては、本発明の積層シートに対して真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト成形、ストレート成形、フリードローイング成形、プラグアンドリング成形、スケルトン成形などの各種成形法を適用できる。
本発明の成形体は、公知、公用の成形法で得られるフィルム、袋、チューブ、シート、カップ、ボトル、トレー、糸等を包含し、その形状、大きさ、厚み、意匠等に関して何ら制限はない。