JP5150876B2 - 変異型βシヌクレイントランスジェニック非ヒト動物 - Google Patents

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本発明は、神経変性疾患のモデル動物となるトランスジェニック非ヒト動物に関する。詳しくは、中枢神経系細胞において変異型βシヌクレインを発現するトランスジェニック非ヒト動物に関する。
また、本発明は、当該非ヒト動物を用いた神経変性疾患の治療薬のスクリーニング方法、及び神経変性疾患の治療薬の副作用の検定方法に関する。
パーキンソン病(Parkinson's disease: PD)は、振戦、硬直、歩行障害等のパーキンソンニズムを呈し、病理組織学的には、中脳黒質におけるドーパミン産生神経細胞の脱落、及び神経細胞内封入体であるレビー小体形成を特徴とする神経変性疾患である。
PDでみられる神経細胞内封入体と同様の封入体の形成は、アルツハイマー病に次ぐ頻度でみられる進行性の痴呆を伴った、痴呆性レビー小体病(dementia with Lewy body: DLB)などでも観察され、DLBはPDの関連疾患として取り扱われている。
これらの疾患(PD及びDLB)は、近年、老齢人口の激増とともに増加傾向にあり、根本的な治療法が存在しない現状においては深刻な社会問題となっている。PD及びDLBの発症には遺伝的因子や環境因子を含めた多くの要因が関与すると考えられるが、近年、これらの神経変性疾患の病態において、α-シヌクレイン(α-syn)の蓄積及び凝集が大きく関与していることが示された(非特許文献1)。
α-synと神経変性疾患:
ヒトα-synは、140アミノ酸からなる、神経組織に豊富に発現するリン酸化タンパク質であり、主として神経細胞の前シナプスに局在する。α-synは、それぞれ、異なる経緯で同定されアミノ酸配列上相同性の高いβ-シヌクレイン(β-syn)及びγ-シヌクレイン(γ-syn)とともに、シヌクレインペプチドファミリーを構成する(図1)。これらタンパク質は、シナプスの可塑性、ドーパミン放出の制御などに関与することが示唆されているが、詳細な生理的機能は明らかではない(非特許文献1)。
α-synは特別な折りたたみ構造をとらず、凝集しやすいアミロイド前駆体タンパク質であり、タンパク質凝集を特徴とする神経変性疾患の病態において重要な役割を担うことが示されてきた。そして、1993年には、アルツハイマー病患者の脳におけるアミロイド斑よりα-synがAβ以外の構成成分であるNAC(non-Aβ component of AD amyloid)の前駆体として同定された(非特許文献2)。しかしながら、神経変性におけるα-synの重要性が確立されたのは、1997年にα-synのミスセンス変異(A53T)が家族性PDに連鎖することが証明され(図1;非特許文献3)、これに引き続き、多くの組織学的解析が行われた結果、α-synがレビー小体の主要構成要素であることが見出されたことによる(非特許文献4)。α-synのミスセンス変異に関しては、その後、A30P及びE46Kが、それぞれ、家族性PD及び家族性DLBに連鎖することが報告され(図1)、A53T、A30P及びE46Kのいずれのミスセンス変異においてもα-synの凝集能が増加することが示された(非特許文献5,6)。また、それまで病態機序が不明であった多系統萎縮症(Multiple system atrophy: MSA)においても、オリゴデンドロサイトに形成される細胞内封入体においてα-synの蓄積が確認された(非特許文献7)。これらの神経変性疾患は、α-synによる細胞内封入体の形成という共通の病理像を示すことから、α-シヌクレイノパチーとして分類されている(非特許文献8)。
α-synトランスジェニック(Tg)マウス:
α-synの凝集による神経毒性に関する機序は不明であるが、この機序を明らかにすることは、神経変性疾患の病態を理解し、さらにそれらの治療方法を開発する上で不可欠である。この目的のために、多くの研究室においてα-syn過剰発現型Tgマウスの開発が精力的に試みられた。最初に成功したα-syn過剰発現型Tgマウスは(非特許文献9)、脳切片が、免疫組織染色により、抗α-syn抗体、抗ユビキチン抗体で染まる封入体様構造物を呈するものであった。そして、生化学的には、α-synが不溶分画に集積し、チロシンキナーゼの活性の低下が観察されたこと、行動学的には、ロタロッドで平衡運動感覚能力が有意に低下していることなどから、パーキンソン病の最初のモデル動物と認められた(非特許文献9)。しかしながら、封入体中にあるα-synはアミロイド繊維を形成していないこと、また神経細胞死などの所見が見られないことなど、必ずしもPDやDLBの完全な病態モデルと言えるものではなかった。α-syn Tgマウスの作製は、その後も多くのグループによってなされたが、レビー小体様封入対の形成が認められるものは見出されなかった。
野生型β-synの神経保護作用:
α-synの凝集は神経変性の病態に重要な役割を果たしているため、この凝集を抑制することが神経変性疾患の治療法を開発するための中心課題となる。この見地より、α-synの凝集を抑えるような薬剤開発が重点的に行われてきた。本発明者は、これに関連して、β-synが、α-synとは対照的に、神経保護的に働くことにより、α-synの神経変性促進作用に対する負の調節因子としての役割を担うものであることを提案した(非特許文献10)。β-synは、α-synの中央部にある凝集に本質的な疎水性ドメインが欠損しているため、本来的に、構造上凝集しにくいタンパク質である(図1)。本発明者は、PDのモデル動物であるα-syn Tgマウスとβ-synを過剰発現させたTgマウスとを交配させたバイジェニックマウスにおいて、α-syn Tgマウスに比べてレビー小体様封入体の減少や平衡運動感覚能力の回復などの神経変性病理が改善した所見を得た(非特許文献11)。
β-synによる神経保護作用の機序としては、インビトロでβ-synがα-synの凝集を直接抑制すること(非特許文献11)、また、培養細胞において、β-synがヒートショックタンパク質などと同じようにシャペロンタンパク質としてAkt(Protein kinase B)に直接作用してその活性を促進することを見いだした(非特許文献12)。後者の知見は、常染色体劣性型の家族性PDの原因遺伝子として同定されたDJ-1(Park7)やPINK1(Park6)が、PI3キナーゼシグナル伝達経路に対して促進的に働くこと(非特許文献13)などからも支持される。また最近、β-synがα-synによるプロテアソーム活性の低下を抑制することが報告されている(非特許文献14)。
以上の結果を総合すると、β-synの神経保護作用は多彩な機序にわたるものであり、保護作用に関与する機序を増強することで、PDやDLBの治療に応用できる可能性があると考えられる。実際、本発明者は、β-synをコードするレンチウィルスベクターを用いて、α-syn Tgマウスの脳にβ-synを発現させることにより、レビー小体様の封入体が減少することを観察した(非特許文献15)。
変異型β-synの同定:
β-synの神経保護作用が示される一方で、β-synの変異が関与すると考えられるDLBの症例が報告された(非特許文献16)。この報告において、野生型β-synのアミノ酸配列における第70番目のバリンがメチオニンに置換した変異(V70M)と、第123番目のプロリンがヒスチジンに置換した変異(P123H)とが同定され、それぞれ孤発性及び家族性DLBに連鎖していた(図1)。しかしながら、α-synのミスセンス変異の場合と異なり、P123Hの浸透率が高くないこと、またP123H患者の脳組織におけるレビー小体が、抗β-syn抗体により染色されなかったことなどから、これらの変異が家族性DLBの確かな原因となるかは不明である。それにも関わらず、V70M及びP123Hのいずれのアミノ酸変異も健常人には認められていない。したがって、V70M及びP123Hのアミノ酸変異はSNP多型によるものではないと考えられる。また、変異により置換されたアミノ酸は生物種を越えて保存されている部位であることなどから、V70M及びP123Hのアミノ酸変異は、β-synの機能に重要な変化を及ぼす変異の可能性がある。
Hashimoto M et al., Brain Pathol., vol.9, p.707-720, 1999 Ueda K et al., Proc Natl Acad Sci U S A., vol.90, p.11282-11286, 1993 Polymeropoulos MH et al., Science, vol.276, p.2045-2047, 1997 Spillantini MG et al., Nature, vol.388, p.839-840, 1997 Kruger R et al., Nat. Genet., vol.18, p.106-108, 1998 Zarranz JJ et al., Ann. Neurol., vol.55, p.164-173, 2004 Wakabayashi K et al., Neurosci. Lett., vol.249, p.180-182, 1998 藤田雅代ら, Cognition and Dementia, vol.4, p.282-289, 2005 Masliah E et al., Science, vol.287, p.1265-1269, 2000 Fujita M et al., Neuropathology, vol.26, p.383-392, 2006 Hashimoto, M., Neuron, vol.32, p.213-223, 2001 Hashimoto, M., J. Biol. Chem., vol.28, p.23622-23629, 2004 Abou-Sleiman PM, Nat. Rev. Neurosci., vol.7, p.207-219, 2006 Snyder, H., J. Biol. Chem., vol.280, p.7562-7569, 2005 Hashimoto, M., Gene Ther., vol.11, p.1713-1723, 2004 Ohtake H, Neurology 63 805-811, 2004
本発明は、神経変性疾患のモデル動物となるトランスジェニック非ヒト動物を提供することを目的とする。
また本発明は、神経変性疾患の治療薬のスクリーニング方法、及び神経変性疾患の治療薬の副作用の検定方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) 中枢神経系細胞において機能するプロモーター及び変異型βシヌクレイン遺伝子が導入されたトランスジェニック非ヒト動物。
本発明の非ヒト動物としては、例えば、変異型βシヌクレイン遺伝子が脳神経細胞及び/又は中枢神経系グリア細胞において発現するものが挙げられる。ここで、変異型βシヌクレインとしては、例えば、自己凝集促進活性及び/又はαシヌクレイン凝集促進活性を有するものが挙げられる。具体的には、変異型βシヌクレインとしては、野生型βシヌクレインのアミノ酸配列において第70番目及び第123番目のアミノ酸のうち少なくとも1つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列、又は当該置換されたアミノ酸配列のうち第70番目及び第123番目のアミノ酸を除く1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質を例示することができ、好ましくは、第70番目のアミノ酸がメチオニンに置換されたもの、及び/又は、第123番目のアミノ酸がヒスチジンに置換されたものが挙げられる。
本発明の非ヒト動物としては、齧歯類動物を例示することができ、具体的にはマウスが挙げられる。
(2) 上記(1)に記載の非ヒト動物に候補物質を投与する工程、及び当該候補物質投与後の非ヒト動物の神経変性疾患に関する病態を評価する工程を含む、神経変性疾患の治療薬をスクリーニングする方法。
(3) 胎生期にある上記(1)に記載の非ヒト動物由来の中枢神経系細胞に候補物質を接触させて当該細胞の細胞活性を測定し、得られる測定結果を指標として神経変性疾患の治療薬をスクリーニングする方法。
当該方法において、前記非ヒト動物としては、例えば胎生期の非ヒト動物が挙げられ、中枢神経系細胞としては、例えば初代培養細胞が挙げられる。
また当該方法としては、例えば、中枢神経系細胞が脳神経細胞であり、細胞活性が神経突起伸張能及び/又は生存能である方法、あるいは、中枢神経系細胞がグリア細胞であり、細胞活性が増殖能及び/又は生存能である方法が例示できる。
(4) 上記(1)に記載の非ヒト動物に神経変性疾患の治療薬を投与する工程、及び当該薬物投与後の非ヒト動物における副作用の有無を検出する工程を含む、神経変性疾患の治療薬の副作用を検定する方法。
(5) 胎生期にある上記(1)に記載の非ヒト動物由来の中枢神経系細胞に神経変性疾患の治療薬を接触させて当該細胞の細胞活性を測定し、得られる測定結果を指標として神経変性疾患の治療薬の副作用を検定する方法。
当該方法において、前記非ヒト動物としては、例えば胎生期の非ヒト動物が挙げられ、中枢神経系細胞としては、例えば初代培養細胞が挙げられる。
また当該方法としては、例えば、中枢神経系細胞が脳神経細胞であり、細胞活性が神経突起伸張能及び/又は生存能である方法、あるいは、中枢神経系細胞がグリア細胞であり、細胞活性が増殖能及び/又は生存能である方法が例示できる。
本発明によれば、神経変性疾患の有用なモデル動物となる新規なトランスジェニック非ヒト動物が提供される。本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、ヒトの神経変性疾患の病態と極めてよく似た表現型(具体的には、PDやDLB脳のレビー小体に酷似した封入体の形成)を有するため、PD及びDLB等の神経変性疾患の治療薬のスクリーニング、及び、当該疾患の治療薬の副作用の検定に利用することができ、極めて有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。
1.本発明の概要
βシヌクレイン(β-syn)の変異による機能変化の有無を解明することは、神経変性の機序の解明において本質的なものである。本発明者は、組換えタンパク質を用いた生化学的実験により、変異型β-syn(P123H及びV70M)がそれ自身で凝集し、またα-synと共存させた場合にはα-synの凝集を促進することを確認した。さらに、変異型β-syn(P123H及びV70M)を過剰発現させた神経芽細胞においては、α-synと共発現させることにより、オートファジー/リソソームによるタンパク質分解が顕著に亢進することを明らかにした。これらの結果から、本発明者は、野生型β-synが神経保護作用を有するものであることとは対照的に、変異型β-synは、神経変性促進的な作用を有するものではないかと考えた(図2)。
この変異型β-synの神経変性促進作用をインビボで確認するため、本発明者は、中枢神経系細胞において変異型β-synを過剰発現し得るトランスジェニックマウス(Tgマウス)の作製及び解析を行った。
発現ベクターに用いるプロモーターは、パーキンソン病(Parkinson's disease: PD)や痴呆性レビー小体病 (dementia with Lewy body: DLB)の病変が脳に広範に及ぶことを考慮し、中枢神経系細胞、特に中枢神経細胞全般に高発現するThy-1プロモーターを選択した(図3A)。具体的には、Thy-1カセットに、変異型β-syn(β-syn P123H)のcDNA(PCRを用いて作製)を挿入した発現ベクターを構築し、C57BL/6Nマウスの受精卵に注入した。誕生したマウスについて、テールブロットによりβ-syn P123Hトランスジーンを解析した結果、計7ライン(A〜Gライン)のF0マウスを得た。これらF0マウスを野生型のマウスと交配して、誕生したF1マウスに対してウエスタンブロット法により変異型β-synの発現解析をし、変異型β-synの発現量のレベルに応じて、低発現、中発現、及び高発現のマウスのラインに分類した。
本発明者は、この実験系において、以下の(i),(ii)の知見を得た。
(i) 変異型β-synの発現量に応じて、マウスの寿命が顕著に短縮すること(図3D)。
(ii) 複数のライン(F0及びF1マウス)の脳組織標本において、大脳基底核等の特異的な領域にレビー小体様の封入体が形成されること(図3E)。
上記(i)に関しては、従来、α-syn過剰発現Tgマウスにおいてこのような個体死はほとんど報告されていない。
上記(ii)に関しては、レビー小体様の封入体数は、変異型β-synの発現量にほぼ相関しており、低発現及び中発現マウスに比べ高発現マウス(ラインC)においてより多く認められた。また、レビー小体様の封入体は、形態的にはヒトのPD又はDLB脳に形成されるレビー小体と同様に、対称的で繊細な円形像を呈するものであった。封入体のサイズは大小様々であり、小さな封入体が時間の経過に伴って徐々に増大するものと考えられた。免疫組織学的に、これらの封入体は、抗β-syn抗体、抗変異型β-syn抗体及び抗α-syn抗体のいずれによっても強く染色された。さらに、蛍光二重染色による変異型β-syn及びα-synの免疫原性から判断して、各封入体は、α-syn及びβ-synが種々の割合で共在するものであった。
これまで、変異型β-syn発現によるTgモデルマウスは知られていない。また、PD又はDLB脳のレビー小体に酷似した封入体の形成が認められるTgマウスは他に例を見ない。これらの点を考慮すると、本発明にかかる変異型β-syn過剰発現Tgマウスは、極めてユニークなものである。また、当該Tgマウスは、神経変性疾患の病態におけるβ-synの役割及び封入体形成の機序の理解を深めるとともに、神経変性疾患の治療薬及び治療法を開発し得る強力なツールとなるため、極めて有用なものである。
なお、本明細書においては、α-syn、β-syn及びγ-synのタンパク質分子並びに遺伝子は、野生型か変異型かに関わらず、また明記しているか否かに関わらず、いずれもヒト由来のものを示すこととする。
2.トランスジェニック非ヒト動物
本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、中枢神経系細胞において機能するプロモーター及び変異型βシヌクレイン(β-syn)遺伝子が導入された動物である(以下、「β-synトランスジェニック非ヒト動物」と言うことがある。)。
通常、所望の遺伝子を目的組織において特異的に発現させる場合は、組織特異的なプロモーターを利用する。本発明は、変異型β-syn遺伝子を中枢神経系細胞において特異的に発現させることを目的とし、変異型β-syn遺伝子を、中枢神経系細胞において機能するプロモーターにより発現制御するようにする。中枢神経系細胞において機能するプロモーターとしては、限定はされないが、例えば、Thy-1プロモーター(脳特異的)、Neuron-Specific Enolaseプロモーター(脳特異的)及びTα1プロモーター(脳特異的)及びプリオンプロモーター(脳特異的)等の中枢神経細胞用プロモーター、並びに、グリア細胞など中枢神経系に存在し得る各種細胞用の公知のプロモーターが挙げられる。中枢神経系細胞において機能するプロモーターは、中枢神経細胞用プロモーターとしての機能と、中枢神経系に存在し得る各種細胞用プロモーターとしての機能とを、いずれも有するものであってもよい。
本発明の非ヒト動物において変異型β-syn遺伝子を発現させる「中枢神経系細胞」は、限定はされず、例えば、脳神経細胞(大脳、間脳、中脳、小脳の各神経細胞)、延髄神経細胞及び脊髄神経細胞等の中枢神経細胞、並びに、グリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイト及びマイクログリア等)が挙げられ、中でも脳神経細胞及びグリア細胞が好ましく、より好ましくは脳神経細胞である。なお、本発明で言う「グリア細胞」とは、中枢神経系に存在するグリア細胞(中枢神経系グリア細胞)を意味する。
変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物は、中枢神経系細胞において機能するプロモーターの制御下にある変異型β-syn遺伝子を導入した非ヒト動物であり、当該動物の染色体DNAに、上記プロモーター制御下の変異型β-syn遺伝子がホモ遺伝子型(+/+)又はヘテロ遺伝子型(+/-)で導入されたものである。変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物は、変異型β-syn遺伝子と共に導入される上記プロモーターの制御により、変異型β-synが中枢神経系細胞特異的に発現亢進されたものである。
ここで、「プロモーターの制御下にある」とは、当該プロモーターが機能して変異型β-syn遺伝子が中枢神経系細胞において特異的に発現され得るように、すなわち、当該プロモーターが変異型β-syn遺伝子に作用可能なように、連結されたものであることを意味する。
また、本明細書において、変異型β-syn遺伝子の遺伝子型を表す「(+/+)」及び「(+/-)」の表記は、本発明のトランスジェニック非ヒト動物を作出するために導入される変異型β-syn遺伝子、すなわち「中枢神経系細胞において機能するプロモーターの制御下にある変異型β-syn遺伝子」についての遺伝子型を示しており、「(+/+)」はホモ導入、「(+/-)」はヘテロ導入の遺伝子型を意味する。同様に、「(-/-)」の表記は、本発明のトランスジェニック非ヒト動物を作出するために導入される変異型β-syn遺伝子についての遺伝子型を意味するものであり、この場合は、「中枢神経系細胞において機能するプロモーターの制御下にある変異型β-syn遺伝子」が導入されていない非トランスジェニック非ヒト動物を意味する。
本発明に用い得る非ヒト動物としては、例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、ヒツジ、ウシ及びウマ等のヒトを除く哺乳類動物が挙げられ、中でも、マウス、ラット及びモルモット等の齧歯類(ネズミ目)動物が好ましく、より好ましくはマウスである。
本発明の非ヒト動物は、中枢神経系細胞、特に脳神経細胞において、ヒトのPD又はDLB脳に見られるレビー小体に酷似した封入体(レビー小体様の封入体)が形成されたものが好ましい。また本発明の非ヒト動物は、ヒトのPD又はDLBなど、ヒトにおける神経変性疾患と同様の病態を有するものが好ましい。これら非ヒト動物は、ヒトにおける神経変性疾患のモデル動物として極めて有用である。
以下に、本発明の非ヒト動物の作出方法について説明する。ここでは、非ヒト動物としてマウスを用いた場合を例に挙げて説明するが、他の非ヒト動物を用いる場合についても同様の方法を適用することができる。
変異型β-synトランスジェニックマウスは、公知の作出方法、すなわち受精卵前核へのDNAマイクロインジェクションによる方法、胚性幹細胞(ES細胞)にDNAを導入した後キメラを作製する方法、及びレトロウイルスベクターを初期発生胚に感染させて導入する方法等のいずれの方法を用いることができる。これらの方法については、例えば、「Manipulating the Mouse Embryo-A Laboratory Manual, 2nd Ed. (1994) Hogan B et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor」、「マウス ラボマニュアル 第2版 −ポストゲノム時代の実験法−(第271〜296頁), 発行日:2003年5月26日(初版), 編集:東京都臨床医学総合研究所 実験動物研究部門, 発行者:平野皓正, 発行所:シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社」、「発生工学実験マニュアル (1987) 勝木元也(編)講談社サイエンティフィク, 東京」、「マウス胚の操作マニュアル 第2版 (1997) Hogan B et al.(著), 山内一也ら(訳)近代出版, 東京」、「Gordon, J. W. (1993) Guide to Techniques in Mouse Development (Wassarman, P. M., and DePamphilis, M. L., Eds.), Academic Press, San Diego」等に記載されており、これらの記載を適宜参照してトランスジェニックマウスを作出することができる。
公知の作出方法の中でも、最も一般的である受精卵前核へのDNAマイクロインジェクション法を用いる場合について、以下の(i)〜(vii)に概略を説明する。
(i) 変異型β-syn遺伝子を調製する。
具体的には、まず、ヒトのcDNA遺伝子ライブラリーからPCR等の方法により野生型β-syn遺伝子断片を得、この遺伝子断片を用いて野生型β-syn遺伝子をスクリーニングする。野生型β-syn遺伝子には、必要により、エピトープタグ等をコードするDNAを連結しておいてもよい。スクリーニングした野生型β-syn遺伝子は、組換えDNA技術を用いて、適当なプラスミドベクターに挿入しておいてもよい。あるいは、上記スクリーニングをする代わりに、予め野生型β-syn遺伝子が挿入された市販のプラスミドベクターを使用してもよい。
野生型ヒトβ-syn遺伝子の塩基配列情報(配列番号1)は、公知のデータベースから容易に入手することができ、例えばNCBIのウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)において「アクセッション番号:BC002902」として公表されている。配列番号1において、野生型ヒトβ-synのコード領域(CDS)は第252番目〜第656番目であるため、配列番号1に示す全長配列の代わりに上記コード領域を使用することも可能である。
次いで、野生型β-syn遺伝子の塩基配列に変異を加えて、変異型β-synタンパク質をコードする変異型β-syn遺伝子を得る。ここで、本発明でいう変異型β-synタンパク質とは、自己凝集促進活性及びαシヌクレイン(α-syn)凝集促進活性のいずれか又は両方を有するタンパク質を意味する。「自己凝集促進活性」とは、自己、すなわち変異型β-syn同士が互いに凝集する活性を意味し、構造的に本来凝集しにくい野生型β-syn同士の凝集の程度に比べて、変異型β-syn同士の凝集の程度が高いと認められる物性であればよい。また、「α-syn凝集促進活性」とは、α-syn同士を互いに凝集させる活性を意味し、野生型β-synの存在下におけるα-syn同士の凝集の程度が、野生型β-synの非存在下におけるα-syn同士の凝集の程度に比べて高いと認められる物性であればよい。
本発明でいう変異型β-synタンパク質は、具体的には、(a) 野生型β-synのアミノ酸配列(配列番号2)において第70番目及び第123番目のアミノ酸のうち少なくとも1つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列、又は、(b) 当該置換されたアミノ酸配列のうち第70番目及び第123番目のアミノ酸を除く1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるものが好ましく挙げられ、これらのなかでも特に、上記第70番目のアミノ酸(バリン)が他のアミノ酸としてメチオニンに置換されたもの、及び/又は、上記第123番目のアミノ酸(プロリン)が他のアミノ酸としてヒスチジンに置換されたものが好ましい。配列番号1に示される塩基配列において、上記第70番目のアミノ酸をコードする塩基は第459番目〜第461番目の塩基「gtg」であり、上記第123番目のアミノ酸をコードする塩基は第618番目〜第620番目の塩基「ccc」である。よって、変異型β-synタンパク質の遺伝子を構築する場合は、これら塩基配列(「gtg」,「ccc」)が所望のアミノ酸をコードする配列となるように変異を加えればよい。例えば、上記第70番目のアミノ酸(バリン)をメチオニンに置換する場合は、「gtg」から「atg」となるように第459番目の塩基に変異置換を加えればよく、上記第123番目のアミノ酸(プロリン)をヒスチジンに置換する場合は、「ccc」から「cat」又は「cac」となるように第619番目や第620番目の塩基に変異置換を加えればよい。
上記の変異置換型の遺伝子(変異型β-synをコードする遺伝子)は、例えば、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997) 等に記載の部位特異的変位誘発法に準じて調製することができる。具体的には、Kunkel法や Gapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キットを用いて調製することができ、当該キットとしては、例えば、QuickChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等が好ましく挙げられる。
また、後述する実施例に記載のように、所望のアミノ酸のコドンを示す塩基となるようにミスセンス変異が導入されるように設計したPCRプライマーを用い、野生型β-synをコードする塩基配列を含むDNA等をテンプレートとして、適当な条件下でPCRを行うことにより調製することもできる。PCRに用いるDNAポリメラーゼは、限定はされないが、正確性の高いDNAポリメラーゼであることが好ましく、例えば、Pwo DNA(ポリメラーゼロシュ・ダイアグノスティックス)、Pfu DNAポリメラーゼ(プロメガ)、プラチナPfx DNAポリメラーゼ(インビトロジェン)、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡)、KOD-plus-ポリメラーゼ(東洋紡)等が好ましい。PCRの反応条件は、用いるDNAポリメラーゼの最適温度、合成するDNAの長さや種類等により適宜設定すればよいが、例えば、サイクル条件であれば「90〜98℃で5〜30秒(熱変性・解離)→50〜65℃で5〜30秒(アニーリング)→65〜80℃で30〜1200秒(合成・伸長)」を1サイクルとして合計20〜200サイクル行う条件が好ましい。
さらに本発明においては、上記のごとく得られた変異型β-syn遺伝子の塩基配列またはそのコード領域の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、自己凝集促進活性及び/又はα-syn凝集促進活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を使用することもできる。「ストリンジェントな条件」としては、例えば、ハイブリダイゼーションにおいて洗浄時の塩濃度が100〜900mM、好ましくは100〜300mMであり、温度が50〜70℃、好ましくは55〜65℃の条件が挙げられる。ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」 (Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons (1987-1997) )等を参照することができる。ハイブリダイズするDNAとしては、その相補配列に対して少なくとも50%以上、好ましくは70%、さらに好ましくは80%、より一層好ましくは90%(例えば、95%以上、さらには99%)の同一性を有する塩基配列を含むDNAが挙げられる。
(ii) 受精卵に導入する目的のDNA構築物を調製する。
中枢神経系細胞において機能するプロモーター(例えば、Thy-1プロモーター)制御下で導入遺伝子が発現制御されるように設計されたベクターに、組換えDNA技術を用いて、変異型β-syn遺伝子を挿入する。上記挿入後のベクターを制限酵素処理等して、目的のDNA構築物、すなわちThy-1プロモーター及びその制御下にある変異型β-syn遺伝子を含むDNA断片を得る。
(iii) 雌のマウスにホルモンを注射して強制的に過剰***させ、受精を行い、交尾後1日目の卵管から受精卵を摘出する。
(iv) 核が融合する前の時期の受精卵に、顕微鏡下で目的のDNA構築物を雄性全核中にマイクロインジェクションにより注入する。
(v) マイクロインジェクション後の受精卵を約20個程度、仮親となる偽妊娠雌マウスの子宮又は卵管内に移植する。
(vi) 移植後の雌マウスを通常の飼育条件下で飼育し、仔マウスを出産させる。
(vii) 仔マウスの一部(尾の先端や耳介片など)からゲノムDNAを抽出し、PCR法又はサザンブロット法等により、Thy-1プロモーターの制御下にある変異型β-syn遺伝子の導入の成否を確認する。
以上のようにして作出された変異型β-synトランスジェニックマウスは、野生型のマウスと交配させることにより、ヘテロ遺伝子型マウス(+/-)を得ることができる。さらに、このヘテロ遺伝子型のマウス同士を交配させることにより、ホモ遺伝子型マウス(+/+)を得ることができる。また、メンデルの法則に従い、変異型β-synトランスジェニックマウスと共に、同腹の対照マウス(-/-)を得ることもできる。
変異型β-synトランスジェニックマウスにおいて、中枢神経系特異的に変異型β-synが発現していることの確認は、例えば、当該マウスの脳の所定の部位(視床下部など)からRNAを抽出してRT-PCR法及びノーザンブロット法等により確認する方法、あるいは、当該マウスの脳における変異型β-synの発現をウエスタンブロット法等により確認する方法が挙げられる。
3.スクリーニング方法
(1) 非ヒト動物を用いる方法
前述の通り、変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物は、ヒトの神経変性疾患の病態とよく一致するため、これら疾患の治療薬の開発において極めて有用なものである。そこで本発明は、変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物を用いた神経変性疾患の治療薬のスクリーニング方法、並びに当該方法により得られる神経変性疾患の治療薬を提供する。ここで、神経変性疾患としては、例えば、パーキンソン病(PD)、痴呆性レビー小体病(DLB)、多系統萎縮症及びレビー小体亜系型アルツハイマー病等の各種疾患を含む。
本発明において、神経変性疾患の治療薬をスクリーニングする方法は、以下の(a)及び(b)の工程を含む。
(a) 変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物に、候補物質を投与する工程(投与工程)
(b) 上記トランスジェニック非ヒト動物について、神経変性疾患の病態を評価する工程
(評価工程)
「神経変性疾患の病態を評価する」とは、候補物質を投与した後におけるトランスジェニック非ヒト動物の神経変性疾患に関する病態の表現型を解析することを意味し、候補物質の投与前後のトランスジェニック非ヒト動物の神経変性疾患に関する病態を比較検討すること、あるいは、候補物質を投与した被験動物と投与しない対照動物との比較検討を行うことのいずれをも意味するものである。
被験動物の表現型と対照動物の表現型との比較を行なう方法について、以下に説明する。
「対照動物」は、被験動物との比較対照に使用されるに適している限り限定されるものではなく、変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物〔(+/+)又は(+/-)〕であっても、同腹の非トランスジェニック(-/-)の非ヒト動物であっても、トランスジェニック動物でない野生型非ヒト動物であってもよい。
比較検討は、変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物〔(+/+),(+/-)〕を被験動物とし、当該被験動物以外の非ヒト動物(-/-)を対照動物として用いて、上記(a)及び(b)の工程を含む方法を採用することができる。また、変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物〔(+/+),(+/-)〕を被験動物として用い、候補物質を投与しない変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物〔(+/+),(+/-)〕を対照動物として用いることもできる。
本発明の非ヒト動物と同腹又は同種の野生型非ヒト動物は、正確な比較実験を行うことができる点で対照動物として好ましい。
なお、本発明のスクリーニング方法は、必要に応じ、他の工程を含んでいてもよい。
以下に、上記各工程について説明する。
(a) 投与工程
被験動物及び対照動物としては、特に限定されるものではないが、通常、同種の非ヒト動物を用いる。また被験動物及び対照動物は、同腹の動物を用いることが好ましく、同性及び同齢の動物を用いることがより好ましい。さらに被験動物及び対照動物は、飼料の摂取量以外の飼育条件は同様であることが好ましい。
被験動物としては、変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物(+/+)を用いてもよいし、又は変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物(+/-)を用いてもよい。また被験動物は、神経変性疾患の症状を呈するものを用いることができる。対照動物として、変異型β-synについて非トランスジェニック(-/-)の非ヒト動物を用いることができる。
被験動物に投与する候補物質としては、限定はされないが、天然又は人為的に合成された各種ペプチド、タンパク質(酵素や抗体を含む)、核酸(ポリヌクレオチド(DNA, RNA)、オリゴヌクレオチド(siRNA等)、ペプチド核酸(PNA)など)、低分子又は高分子有機化合物等を例示することができる。
候補物質の投与は、経口的又は非経口的に行うことができ、限定はされず、いずれの場合も公知の投与方法及び投与条件等を採用することができる。投与量についても、被験動物の種類及び状態、並びに候補物質の種類等を考慮して、適宜設定可能である。
(b) 評価工程
神経変性疾患の治療薬をスクリーニングする場合は、候補物質が投与された被験動物、及び候補物質が投与されていない対照動物について、各種評価項目、例えば、レビー小体様封入体の有無、大小又は個数、寿命、平衡運動感覚能力(ロタロッド)及び記憶能力(水迷路)等を比較評価することが好ましい。これら評価項目の評価(測定方法等)は、公知の手段及び手順により行うことができる。
変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物(+/+)又は変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物(+/-)を対照として使用した場合は、被験動物における評価項目の内容が対照動物と比較して優れたものとなったとき、候補物質を神経変性疾患の治療薬として選択することができる。「優れたものとなったとき」とは、例えば、レビー小体様封入体が無くなること、小さくなること又は少なくなること、寿命が延びること、平衡運動感覚能力(ロタロッド)が高くなることの少なくとも1つを満たすときを意味する。
同腹の非トランスジェニック(-/-)の非ヒト動物を対照として使用した場合は、被験動物における評価項目の内容が対照動物と比較して同等又は優れたものとなったとき、候補物質を神経変性疾患の治療薬として選択することができる。
被験動物に候補物質を投与する前の段階を対照として使用する場合は、ホモ遺伝子型(+/+)又はヘテロ遺伝子型(+/-)を対照としたときと同様の基準で候補物質投与後の被験動物を比較評価することができる。
(2) 中枢神経系細胞を用いる方法
また本発明は、変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物由来の中枢神経系細胞を用いた変性疾患の治療薬のスクリーニング方法、並びに当該方法により得られる変性疾患の治療薬を提供することができる。前記3.(1)の非ヒト動物を用いる方法が、in vivo法であるのに対し、中枢神経系細胞を用いる本方法は、in vitro法と言うことができる。
上記スクリーニング方法において、変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物由来の中枢神経系細胞としては、当該中枢神経系細胞の初代培養細胞(初代培養中枢神経系細胞)を用いることが好ましい。また、変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物由来の中枢神経系細胞としては、胎生期にある当該非ヒト動物由来の中枢神経系細胞が好ましい。胎生期の期間は、使用する非ヒト動物の種類により異なるため、特に限定はされず、各非ヒト動物に特有の公知の期間が適用される。
上記スクリーニング方法は、詳しくは、変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物由来の中枢神経系細胞に候補物質を接触させて当該細胞の細胞活性を測定し、得られる測定結果を指標として神経変性疾患の治療薬をスクリーニングするというものである。また、当該方法のうち、より好ましい態様としては、例えば、胎生期にある変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物から採取された初代培養中枢神経系細胞に候補物質を接触させて当該細胞の細胞活性を測定し、得られる測定結果を指標として神経変性疾患の治療薬をスクリーニングする方法が挙げられる。
さらに、上記スクリーニング方法においては、例えば、中枢神経系細胞が脳神経細胞であり、細胞活性が神経突起伸張能及び/又は生存能であるか、あるいは、中枢神経系細胞がグリア細胞であり、細胞活性が増殖能及び/又は生存能であることが、特に好ましい。
ここで、中枢神経系細胞の細胞活性としては、限定はされず、各々の中枢神経系細胞の機能及び特性等に関わる種々の活性を挙げることができる。種々の活性の測定方法は、公知の方法が採用できる。
中枢神経系細胞が脳神経細胞であるときは、脳神経細胞に候補物質を接触させた場合に、神経突起伸張能の測定結果が、候補物質を接触させない細胞等と比較して、高い伸長率(伸長速度)を有すると評価できれば、候補物質を神経変性疾患の治療薬として選択することができる。また、脳神経細胞に候補物質を接触させた場合に、生存能の測定結果が、候補物質を接触させない細胞等と比較して、長い寿命又は高い生存率を有すると評価できれば、候補物質を神経変性疾患の治療薬として選択することができる。
一方、中枢神経系細胞がグリア細胞であるときは、グリア細胞に候補物質を接触させた場合に、増殖能の測定結果が、候補物質を接触させない細胞等と比較して、高い増殖率(増殖速度)を有すると評価できれば、候補物質を神経変性疾患の治療薬として選択することができる。また、グリア細胞に候補物質を接触させた場合に、生存能の測定結果が、候補物質を接触させない細胞等と比較して、長い寿命又は高い生存率を有すると評価できれば、候補物質を神経変性疾患の治療薬として選択することができる。
4.副作用の検定方法
(1) 非ヒト動物を用いる方法
上述したスクリーニング方法により得られる神経変性疾患の治療薬が優れた効能を示すものであっても、投与した動物に悪影響を及ぼす副作用を持つ場合は有用なものとは言い難いため、上記薬物の副作用の検定は重要である。同様に、公知の又は別途開発された神経変性疾患の治療薬に関しても、その副作用の検定は重要である。そこで本発明は、変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物を用いた神経変性疾患の治療薬の副作用を検定する方法を提供する。ここで、神経変性疾患としては、前記3.の項に記載した疾患と同様のものが挙げられる。
本発明の検定方法は、以下の(a)及び(b)の工程を含むものである。
(a) 被験動物に、神経変性疾患の治療薬を投与する工程(投与工程)
(b) 被験動物と対照動物とを比較評価する工程、又は被験動物における副作用の有無を検出する工程(評価工程)
なお、本発明の検定方法は、必要に応じ、他の工程を含んでいてもよい。
本発明においては、変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物〔(+/+),(+/-)〕を被験動物とし、非トランスジェニック非ヒト動物(-/-)、又は変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物〔(+/+),(+/-)〕を対照動物として用いて、両動物の副作用の有無を比較検討することもできる。
以下に、上記各工程について説明する。
(a) 投与工程
使用する被験動物及び対照動物については、前記スクリーニング方法と同様である。
各薬物の投与は、その種類に応じ、経口的又は非経口的に行うことができ、投与方法及び投与条件等についても、被験動物の種類や状態を考慮して適宜設定することができる。また各薬物は、薬学的に許容し得る塩又は水和物の状態で投与してもよいし、さらに、薬学的に許容し得る公知の担体とともに投与してもよく、限定はされない。
(b) 評価工程
副作用の有無に関しては、被験動物及び対照動物について、あるいは薬物の投与前後の被験動物について、例えば、体重変化、造血機能、及び生殖機能からなる群より選ばれる少なくとも1つが挙げられる。対照非ヒト動物と、神経変性疾患の治療薬を投与した被験動物とについて、これら評価項目を比較することにより、当該治療薬による副作用の有無、及び副作用の種類や症状の程度等について容易に検定できる。
各評価の方法(測定方法等)は、公知の手段及び手順により行うことができるが、以下に例示して説明する。
<体重変化についての比較評価>
本評価方法では、被験動物が、神経変性疾患の治療薬を投与した後、非投与群である対照動物と同様の飼育条件において、対照動物と比べて体重変化に違いが見られるかを検定する。
<造血機能についての比較評価>
本評価方法では、被験動物が、神経変性疾患の治療薬を投与した後も末梢血中の各種血液細胞(赤血球、リンパ球及び好中球等)の存在比率と絶対数が正常の範囲にあるかどうかを検定する。
<生殖機能についての比較評価>
本評価方法では、10週齢を越えた雄と雌の生殖能を検定する。対照動物は、少なくとも遺伝的背景がC57BL/6である限りは、雄も雌も次世代の子供をつくることができるため、神経変性疾患の治療薬を投与した被験動物と有効に比較できる。
(2) 中枢神経系細胞を用いる方法
また本発明は、変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物由来の中枢神経系細胞を用いた神経変性疾患の治療薬の副作用を検定する方法を提供することができる。前記4.(1)の非ヒト動物を用いる方法が、in vivo法であるのに対し、中枢神経系細胞を用いる本方法は、in vitro法と言うことができる。
上記検定方法において、変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物由来の中枢神経系細胞としては、当該中枢神経系細胞の初代培養細胞(初代培養中枢神経系細胞)を用いることが好ましい。また、変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物由来の中枢神経系細胞としては、胎生期にある当該非ヒト動物由来の中枢神経系細胞が好ましい。胎生期の期間については、前記3.(2)で述べた通りである。
上記検定方法は、詳しくは、変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物由来の中枢神経系細胞に神経変性疾患の治療薬を接触させて当該細胞の細胞活性を測定し、得られる測定結果を指標として神経変性疾患の治療薬の副作用を検定するというものである。また、当該方法のうち、より好ましい態様としては、例えば、胎生期にある変異型β-synトランスジェニック非ヒト動物から採取された初代培養中枢神経系細胞に神経変性疾患の治療薬を接触させて当該細胞の細胞活性を測定し、得られる測定結果を指標として神経変性疾患の治療薬の副作用を検定する方法が挙げられる。
さらに、上記検定方法においては、例えば、中枢神経系細胞が脳神経細胞であり、細胞活性が神経突起伸張能及び/又は生存能であるか、あるいは、中枢神経系細胞がグリア細胞であり、細胞活性が増殖能及び/又は生存能であることが、特に好ましい。
ここで、中枢神経系細胞の細胞活性については、前記3.(2)で述べた通りである。
中枢神経系細胞が脳神経細胞であるときは、脳神経細胞に神経変性疾患の治療薬を接触させた場合に、神経突起伸張能の測定結果が、当該治療薬を接触させない細胞等と比較して、同等又は高い伸長率(伸長速度)を有すると評価できれば、当該治療薬が副作用を有しないと判断することができる。また、脳神経細胞に神経変性疾患の治療薬を接触させた場合に、生存能の測定結果が、当該治療薬を接触させない細胞等と比較して、同等若しくは長い寿命又は同等若しくは高い生存率を有すると評価できれば、当該治療薬が副作用を有しないと判断することができる。
一方、中枢神経系細胞がグリア細胞であるときは、グリア細胞に神経変性疾患の治療薬を接触させた場合に、増殖能の測定結果が、当該治療薬を接触させない細胞等と比較して、同等又は高い増殖率(増殖速度)を有すると評価できれば、当該治療薬が副作用を有しないと判断することができる。また、グリア細胞に神経変性疾患の治療薬を接触させた場合に、生存能の測定結果が、当該治療薬を接触させない細胞等と比較して、同等若しくは長い寿命又は同等若しくは高い生存率を有すると評価できれば、当該治療薬が副作用を有しないと判断することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<トランスジェニックマウス(Tgマウス)の作製>
野生型β-synの第123番目のアミノ酸であるプロリンをヒスチジンに置換し得る合成プライマーを用いて、野生型β-syn cDNA(pCEP-β-synプラスミド, Takenouchi et al., Mol. Cell Neurosci., 2001)を鋳型にしたPCRを行った。PCRに用いたプライマー、反応液組成及び反応条件は、以下の通りである。
<プライマー>
Fプライマー:5'-ATGGACGTGTTCATGAAGGGCCTGTC-3' (配列番号3)
Rプライマー:5'-CTACGCCTCTGGCTCATACTCCTGATATTCCTCCTGGTGTGGG-3' (配列番号4)
<反応液組成>
テンプレート(pCEP-β-syn;10ng/μl): 1μl
10×buffer: 5μl
2.5mM dNTP: 4μl
Pfuポリメラーゼ: 0.5μl
Fプライマー (10μM): 2.5μl
Rプライマー (10μM): 2.5μl
滅菌水: 34.5μl
合計: 50μl
<反応条件>
94℃で5分間加熱後、「熱変性・解離:94℃(30sec)→アニーリング:55℃(30sec)→合成・伸長:72℃(30sec)」を1サイクルとして計35サイクル行い、72℃で10分間保温後に4℃で冷却した。
上記PCRの結果、増幅産物として、変異型β-syn P123H(野生型β-synのアミノ酸配列において第123番目のアミノ酸がヒスチジンに置換されたタンパク質;配列番号6)をコードするcDNA(配列番号5)を得た。
得られたcDNAを平滑末端処理し、処理後のcDNAを、Thy-1プロモーターを含むThy-1カセット型プラスミド pTSC21k(Novartis社、Basel、Switzerland)のXhoI部位に挿入することにより、Thy-1プロモーターに誘導されるβ-syn P123H発現ベクター、すなわちpTSC21k β-syn P123Hを構築した(図3A)。常法により、構築した発現ベクター中に、変異型β-syn P123Hの全長を含むシークエンスが挿入されていることを確認した。
また、常法により、B103神経芽細胞に構築した発現ベクターを導入して形質転換体を得、一過性発現させることにより、β-syn P123HのmRNA及びタンパク質レベルにおける発現を確認した。
このようにして構築した発現ベクター(pTSC21k β-syn P123H)をEcoRIで切断し、その結果生じたThy-1プロモーター/β-syn P123H 発現ユニットを単離、精製した。
精製後の発現ユニットを、マウス受精卵(C57BL/6)に注入し(マイクロインジェクション)、これらを数匹の偽妊娠処理した仮親マウスの子宮に戻すことにより、数週間後に数十匹のマウスが誕生させた。得られたマウスの尾を切断し、常法により、ゲノムDNAを調製してPCRによるタイピングを行うことで、ヒトβ-syn P123Hのトランスジーンが存在することを確認した。さらに、β-syn P123H cDNAを32P標識したプローブを用いてサザンブロットを行うことにより、β-syn P123Hのトランスジーンの発現量を評価した。
以上のようにして、ヒトβ-syn P123Hのトランスジーンを確認し得た7匹のマウスをF0マウスとして系統化し(A〜Gラインと命名)、さらに、F0マウスと野生型マウス(C57BL/6)とを交配して得られるF1マウスに対し、β-syn P123HのmRNA及びタンパク質レベルにおける発現をそれぞれ、PCR及びウエスタンブロット法で解析して、高発現、中発現、及び低発現の系統に分類した。F2以降のマウスに対しても同様の実験を繰り返し、前記トランスジーンが安定して存在し、タンパク質レベルにおける発現量も一定に保たれていることを確認した。
<Tgマウスの解析>
生後6、12、18ヶ月のマウスに対し、所定のガイドラインに沿って、安楽死させ、大脳半球を摘出し、左右に分けた。そのうち一方は、病理組織学実験に用い、もう一方は、後日生化学実験に用いるために凍結保存した。
病理組織学実験に用いる方の半球は、ブアン固定液にて一晩固定した。脱水後、パラフィン包埋し、大脳皮質、大脳基底核、黒質、海馬、小脳など脳全体像が観察できるように、4μmのパラフィン切片を作製した。
作製した切片を用い、まず、一次抗体として、抗β-syn P123H特異抗体、抗β-syn抗体、及び抗α-syn抗体を用いて、免疫組織化学的検討を行った。切片を脱パラフィン及び脱水後、マイクロウェーブ処理及び内在性ペルオキシダーゼの不活化を行い、その後、上記一次抗体にて一晩反応させた。切片を洗浄後、ビオチン化2次抗体を反応させ、さらに、アビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体と反応させた後、DABにて発色させた。ヘマトキシリンで核染色を行った後、切片を脱水、透徹、封入し、明視野の光学顕微鏡にて染色像を観察した。特に、β-syn P123H、α-synの細胞内異常集積、レビー小体様の封入体の形成などの所見に焦点を当てて観察した。その結果、大脳基底核を中心にした領域に、レビー小体様の封入体が形成されているのが複数のラインのマウスにおいて確認された。
次に、蛍光免疫組織染色にてβ-syn P123H、α-syn、及び抗ユビキチン抗体(ケミコン社)などの二重染色を行った。切片を脱パラフィン、脱水後、マイクロウェーブ処理を行い、β-syn P123H特異抗体(ラビット)とα-syn抗体(マウスモノクローナル抗体)、あるいはβ-syn P123H特異抗体(ラビット)とユビキチン抗体(マウスモノクローナル抗体)を混合し、一晩反応させた。切片洗浄後、Alexa-fluor-488標識抗マウス2次抗体およびAlexa-fluor-555標識抗ラビット2次抗体を混合し、1時間反応させた。DAPIにて核を染色した後、水系封入剤で封入し、レビー小体様の封入体などに重点をおいて、レーザー照射による共焦点顕微鏡(オリンパス社、FV1000)を用いて観察、撮影した。
α-syn、β-syn及びγ-synの3つのタンパク質分子から構成されるシヌクレインファミリーを表す概略図である。いずれのタンパク質においても、家族性PD/DLBに連鎖するようなミスセンス変異が報告されている(α-syn: A30K, E46K, A53T;β-syn: V70M, P123H;γ-syn: V84Z)。 変異型β-synが、野生型β-synとは対照的にα-synの凝集を促進することにより、またその他の機序により、神経変性に対して促進的に作用することを示す概念図である。 変異型β-syn P123HのcDNAを、Thy-1カセット型プラスミド(pTSC21k)のXhoI部位に挿入して構築された、Thy-1プロモーターに誘導されるβ-syn P123H発現ベクターの概略図である。 F0マウスの尻尾より得られたDNAに対してβ-syn P123H cDNAをプローブにしてサザンブロットを行った結果を表す図である。 F1マウスの脳抽出液に対して抗β-syn P123H抗体、抗β-syn抗体を用いてイムノブロットを行った結果を示す図である。 野生型マウス、ラインBのマウス、及びラインCのマウスの生存曲線を示すグラフである。野生型に比べ、変異型β-synを高発現するラインCのマウスの生存率が大幅に低下し、中発現するラインBのマウスの生存率が少し低下している。 Tgマウスの組織学的解析の結果を示す図である(E-1〜E-3)。 E-1)ラインCのF1マウス(13か月)の脳切片に対して、抗β-syn P123H抗体、抗β-syn抗体、抗α-syn抗体でラベル後、DAB染色を行った。いずれの抗体においても大脳基底核に封入体形成が認められた。 E-2)ラインCのF1マウス(13か月)の脳切片を、抗β-syn P123H抗体、抗α-syn抗体で二重ラベル後、Alexa-fluor-標識2次抗体で反応させ、共焦点顕微鏡にて観察した。大脳基底核(上段、中段)においては、レビー小体様封入体の形成が認められた。大脳皮質(下段)においては、β-syn P123Hの蓄積は観察されたが、レビー小体様封入体の形成は認められなかった。 E-3)ラインCのF1マウス(13か月)の脳切片を、抗β-syn P123H抗体、抗ユビキチン抗体で二重ラベル後、蛍光2次抗体で反応させ、共焦点顕微鏡にて観察した。ユビキチンの染色は、いくつかのレビー小体様封入体において反応性が認められたが、まったく反応性がないレビー小体様封入体もあった。この結果はヒトパーキンソン病におけるレビー小体の特徴と一致する。 ヒトパーキンソン病におけるレビー小体を表す図(比較用参考図)である(Spillantini MG et al., Nature, vol.388, p.839-840, 1997)。
配列番号3:合成DNA
配列番号4:合成DNA
配列番号5:合成DNA
配列番号6:合成コンストラクト

Claims (18)

  1. 中枢神経系細胞において機能するプロモーター及び変異型βシヌクレイン遺伝子が導入されたトランスジェニック非ヒト動物であって、
    該変異型βシヌクレインは、(a)野生型βシヌクレインのアミノ酸配列において第123番目のアミノ酸がヒスチジンに置換されたアミノ酸配列からなるものであるか、又は(b)該置換されたアミノ酸配列のうち第123番目のアミノ酸を除く1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるものであり、
    該非ヒト動物の中枢神経系細胞において発現する変異型βシヌクレインが、自己凝集促進活性を有するものである、
    前記非ヒト動物。
  2. 変異型βシヌクレインが中枢神経系細胞において自己凝集により蓄積したものである、請求項1記載の非ヒト動物。
  3. 変異型βシヌクレイン遺伝子が脳神経細胞及び/又は中枢神経系グリア細胞において発現するものである、請求項1又は2記載の非ヒト動物。
  4. 変異型βシヌクレインは、(a)野生型βシヌクレインのアミノ酸配列において第123番目のアミノ酸がヒスチジンに置換され且つ第70番目のアミノ酸がメチオニンに置換されたアミノ酸配列からなるものあるか、又は(b)該置換されたアミノ酸配列のうち第123番目及び第70番目のアミノ酸を除く1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
  5. 非ヒト動物が齧歯類動物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
  6. 齧歯類動物がマウスである、請求項5記載の非ヒト動物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の非ヒト動物に候補物質を投与する工程、及び当該候補物質投与後の非ヒト動物の神経変性疾患に関する病態を評価する工程を含む、神経変性疾患の治療薬をスクリーニングする方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の非ヒト動物由来の中枢神経系細胞に候補物質を接触させて当該細胞の細胞活性を測定し、得られる測定結果を指標として神経変性疾患の治療薬をスクリーニングする方法。
  9. 前記非ヒト動物が胎生期の非ヒト動物である、請求項8記載の方法。
  10. 中枢神経系細胞が初代培養細胞である、請求項8又は9記載の方法。
  11. 中枢神経系細胞が脳神経細胞であり、細胞活性が神経突起伸張能及び/又は生存能である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 中枢神経系細胞がグリア細胞であり、細胞活性が増殖能及び/又は生存能である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
  13. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の非ヒト動物に神経変性疾患の治療薬を投与する工程、及び当該薬物投与後の非ヒト動物における副作用の有無を検出する工程を含む、神経変性疾患の治療薬の副作用を検定する方法。
  14. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の非ヒト動物由来の中枢神経系細胞に神経変性疾患の治療薬を接触させて当該細胞の細胞活性を測定し、得られる測定結果を指標として神経変性疾患の治療薬の副作用を検定する方法。
  15. 前記非ヒト動物が胎生期の非ヒト動物である、請求項14記載の方法。
  16. 中枢神経系細胞が初代培養細胞である、請求項14又は15記載の方法。
  17. 中枢神経系細胞が脳神経細胞であり、細胞活性が神経突起伸張能及び/又は生存能である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 中枢神経系細胞がグリア細胞であり、細胞活性が増殖能及び/又は生存能である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
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