JP5147160B2 - ポルフィリン化合物の製造方法 - Google Patents
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Heterocycles,2000,52,399
(i)ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体を還元して2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を得る際に副生成物として2−メチルピロール誘導体が生成すること、
(ii)2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を脱水環化してポルフィリノーゲン誘導体を得る際に、前工程の副生成物である該2−メチルピロール誘導体がポルフィリノーゲン誘導体の選択性を低下させること、
(iii)従って、ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体を還元して得られる粗2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を精製して、粗2−ヒドロキシメチルピロール誘導体中の2−メチルピロール誘導体を除去した後、脱水環化に供することにより、ポルフィリノーゲン誘導体を高収率、高選択率で得ることができ、これを酸化することにより、テトラビシクロポルフィリンを高収率で得ることができること、
を見出し、本発明に到達した。
(A)ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体を還元し、得られた反応生成物から2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を精製した後に、
(B)該精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を脱水環化し、次いで、
(C)酸化させることによりポルフィリン化合物を製造する。
ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体としては、特に限定されるものではないが、ピロール−2−カルボン酸エステルのピロール環の3位および4位に置換基を有するものが好ましく、特に3位および4位の置換基が結合して環を形成しているものが好ましい。
ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体を還元剤で還元して、2−ヒドロキシピロール誘導体を製造する。
還元剤としては、カルボン酸エステルをヒドロキシ基に還元できるものであれば特に限定されないが、通常、金属水素化物であり、好ましくは金属水素錯化物であり、金属水素錯化者の中でもリチウム水素化アルミニウムが特に好ましい。
反応は、通常溶媒の存在下に還元剤とピロール−2−カルボン酸エステル誘導体とを反応させることにより行われる。
反応温度は、通常−30℃以上、好ましくは−20℃以上、通常50℃以下、好ましくは20℃以下であり、この温度範囲のなかでも0℃以下が好ましい。反応温度が低すぎると反応が不完全になり、また、高すぎると副生成物として2−メチルピロール誘導体が生成しやすいため、好ましくない。
反応終了後、反応混合物を処理して反応生成物と還元剤とを加水分解して還元剤由来物質を除去することにより、目的生成物である2−ヒドロキシピロール誘導体を得る。このとき、反応混合物から還元剤由来物質を除去した後、必要に応じて、蒸発乾固することで固体が得られる。この固体には目的物である2−ヒドロキシメチルピロール誘導体及び副生物である2−メチルピロール誘導体が含まれている。
上述の如く、反応混合物から還元剤由来物質を除去することにより、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を含む反応生成物が得られる。
粗2−ヒドロキシメチルピロール誘導体には副生物として2−メチルピロール誘導体が含まれるが、本発明においては2−メチルピロール誘導体の含有量の少ない精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を得ることが重要である。即ち、前述の通り、2−メチルピロール誘導体は2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の脱水環化でポルフィリノーゲン誘導体を製造する際の選択性を下げるため、脱水環化に供する2−ヒドロキシメチルピロール誘導体は2−メチルピロール誘導体の含有量が少ないものであることが好ましい。
本工程(B)においては、工程(A)で得られた精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体、好ましくは前記一般式(III)で表される精製2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を脱水環化させることによりポルフィリノーゲン誘導体、好ましくは下記一般式(IV)で表されるポルフィリノーゲン誘導体を製造する。
反応装置は特に限定されないが、反応系を攪拌する場合には、反応容器に邪魔板のあるものや効率的に攪拌のできる攪拌翼(アンカー翼、傾斜パドル翼、平パドル翼、ファドラー翼、マックスブレンド翼(住友重機械工業株式会社)、フルゾーン翼(神鋼パンテック株式会社)、ヘリカルリボン翼、ブ ルマージン翼、スーパミックス翼(佐竹化学機械工業製)、A310翼(LIGHTNIN製)、A320翼(LIGHTNIN製)、インターミグ翼(エカート製)等)を用いることができる。
酸触媒は、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を脱水環化できる酸触媒であれば特に限定されないが、反応系に分散しやすい酸を用いるのが好ましい。反応系に分散しやすい酸とは、反応系内に溶解又は微分散する酸であり、例えば反応系内で溶解又は微分散する固体、液体又は気体の酸を用いる。
溶媒は、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体が溶解するものであって、反応に悪影響を与えないものを適宜選択すれば良く、また、前記酸との組み合わせによっても適宜選択できるが、その具体例としてはクロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;トルエン、ベンゼン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル類;ピリジン、キノリン等の含窒素有機溶媒類;あるいはエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類の溶媒等の1種又は2種以上が挙げられる。
反応温度は通常−20℃以上、好ましくは−10℃以上であり、通常60℃以下、好ましくは30℃以下である。
本工程(C)は工程(B)に引き続いて行うことも、工程(B)で得られたポルフィリノーゲン誘導体を分離・精製した後に行うこともできるが、通常は工程(B)に引き続き、工程(B)を経た反応混合物と酸化剤とを接触させることにより行われる。
酸化剤としては、クロラニル、ジクロロジシアノベンゾキノン、N−2,4,6−トリニトロフェニル−N',N'−フェニルジヒドラジン等の有機酸化剤や、二酸化マンガン、二酸化セレン等の無機酸化剤、更には酸素等の酸化性の気体を吹き込むことも利用できる。好ましくは、クロラニル、ジクロロジシアノベンゾキノンである。
温度:酸化反応は、通常室温で行うが、副反応速度を制御する為に高温あるいは低温で反応を行うことも可能である。望ましい反応温度は、−20℃から80℃である。20℃より低いと、反応が進行せず、ポルフィリン化合物の生成量が少なくなり、80℃より高いと副反応が起こり、結果的にポルフィリン化合物の生成量が少なくなる。
工程(C)で得られるポルフィリン化合物は結晶状態で電気伝導や光起電力等の半導体特性を示すので、トランジスタ、発光ダイオード、太陽電池等の電気、光機能素子に応用することができ、特に有機トランジスタには好適に用いることができる。
<ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体(反応原料)の製法>
窒素雰囲気下、2−エキソ,3−エンド−ビス(フェニルスルホニル)ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン10.55g(27.2mmol)をTHF170mlに溶解させた。更にイソシアノ酢酸エチルを3.01g(27.2mmol)加え攪拌を続けた。該溶液の温度を3℃以下を保ちながら、別途、窒素雰囲気下、t−ブトキシカリウム7.31g(65.1mmol)を溶解したTHF件濁溶液を滴下した。
1H−NMR(CDCl3,400MHz,δppm):1.36(3H,t), 1.42−1.61(4H,m), 3.87(1H,s), 4.28−4.33(2H,q), 4.37(1H,s), 6.49(2H,d), 6.50(1H,s), 8.35(1H,s)
窒素雰囲気下、水素化リチウムアルミニウム1.24g(32.6mmol)を氷冷下で、脱水THF58mlにゆっくりと加えて攪拌し、系内を0℃とした。なお、以後の作業は反応器をアルミ箔で覆うことにより全て遮光条件で行った。該水素化リチウムTHF溶液に対して、別途調整した、脱水THF58mlに、上記で得られた4,7−ジヒドロ−4,7−エタノ−2H−イソインドール−1−カルボン酸エチル4.55g(21.0mmol)を溶解した溶液を、系内を0℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後も同温度を保ちながら攪拌し、TLCとHPLCにより原料が消失していることを確認して反応の終点とした。
上記で得られた粉末にTHF3.3ml及びヘキサン33mlを加え、粒形が均等になるまで室温で攪拌後、氷冷下で4時間攪拌して濾取し、真空乾燥したところ薄い桃色粉末の(4−アザ−トリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカ−2,5,8−トリエン−3−イル)−メタノール、2.89g(16.5mmol)を得た(収率78%、純度99.9モル%、メチル体の含有量0.1モル%)。
1H−NMR(CDCl3,400MHz,δppm):1.50−1.59(4H,m), 3.81−3.85(2H,m), 4.60(2H,s), 6.43(1H,s), 6.48−6.51(2H,m), 7.65(1H,s)
遮光した1Lジャケット式セパラブルフラスコに精製した(4−アザ−トリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカ−2,5,8−トリエン−3−イル)−メタノール2.01g(11.4mmol)、およびクロロホルム(安定剤アミレン)450mlを加え攪拌を開始した。1Mの塩酸を1.48ml加えた。LCにて原料の消失、及び前駆体であるポルフィリノーゲンが選択的に生成していることを確認した後、クロラニル0.97g(3.9mmol)を加えた。1時間半後、ポルフィリノーゲンが一部残存していることがLCにて判明したため、更にクロラニル0.097g(0.39mmol)を加え1時間攪拌した。LCにて目的のポルフィリン化合物の収率が78%であることを確認した。
遮光した50mlナスフラスコに、実施例1で得られた、未精製の(4−アザ−トリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカ−2,5,8−トリエン−3−イル)−メタノール151mg(メチル体を3モル%含む)をクロロホルム18.8mlに加え室温で攪拌した。1Mの塩酸114μlを加えLCにて原料が消失したことを確認後クロラニル73mg(0.29mmol)加えた。LCにて目的のポルフィリン化合物の収率を解析すると、51%であった。
<ポルフィリン化合物の製造>
実施例1のポルフィリン化合物の製造工程において、精製した(4−アザ−トリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカ−2,5,8−トリエン−3−イル)−メタノールをクロロホルムに溶解した後、塩酸を加える前に系中に空気(80〜90ml/min)を通じた以外は実施例1と同様に反応を行ったところ、ポルフィリン化合物の収率は89%となった。
上記で得られた粗ポルフィリン化合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を100ml加え洗浄した。水層をクロロホルム200mlで再度抽出し、得られた有機層を合わせて飽和食塩水100mlで洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、真空乾燥により残留物2.84gを得た。この残留物をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製後、メタノールで懸濁洗浄することにより精製ポルフィリン化合物1.20g(1.93mmol)を得た(収率68%)。
Claims (4)
- ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体を還元して2−ヒドロキシメチルピロール誘導体と2−メチルピロール誘導体とを含み、2−メチルピロール誘導体の含有量が3〜20モル%である反応生成物を得る還元工程と、
該反応生成物を精製する精製工程と、
該精製工程で得られた精製物中の2−ヒドロキシメチルピロール誘導体を脱水環化し、次いで、酸化してポルフィリン化合物を得る脱水環化・酸化工程と
を具備するポルフィリン化合物の製造方法であって、
前記精製物中の2−メチルピロール誘導体の含有量が、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体と2−メチルピロール誘導体との合計に対して2モル%以下であり、
該ポルフィリン化合物が下記一般式(I)で表されるポルフィリン類であって、ピロール−2−カルボン酸エステル誘導体が下記一般式(II)で表されるピロール−2−カルボン酸エステル誘導体であって、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体が下記一般式(III)で表される2−ヒドロキシメチルピロール誘導体であることを特徴とするポルフィリン化合物の製造方法。
- 請求項1において、精製工程において、反応生成物を晶析又は懸濁洗浄により精製して精製物を得ることを特徴とするポルフィリン化合物の製造方法。
- 請求項1又は2において、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の脱水環化を酸素存在下で行うことを特徴とするポルフィリン化合物の製造方法。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、2−ヒドロキシメチルピロール誘導体の脱水環化を遮光下で行うことを特徴とするポルフィリン化合物の製造方法。
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