JP5144139B2 - 窒化処理方法および異種材料接合機械部品、エンジンバルブの製造方法およびエンジンバルブ - Google Patents

窒化処理方法および異種材料接合機械部品、エンジンバルブの製造方法およびエンジンバルブ Download PDF

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Description

本発明は、窒化処理方法および異種材料接合機械部品、エンジンバルブの製造方法およびエンジンバルブに関するものである。
浸炭処理や窒化処理などの表面硬化処理は、鋼材の耐磨耗性、耐焼付き性、疲労強度などの機械的性質を向上させるための手段として自動車部品や圧縮機などの各種機械部品を中心に幅広い分野で利用されている。これらのうち窒化処理は、鋼の変態点よりも低い温度で処理を行うため、歪の発生が少ないことなどの理由から、摺動部品を中心に様々な形状で精度を要求されるような部品に対しても適用されている。
このとき鋼材表面に形成される窒素化合物層は高度が高く、摺動する相手の金属材との反応性が母材よりも低いため、特に耐磨耗性や耐焼付性に優れるという性質を持つことから、ガス窒化処理、塩浴窒化処理、イオン窒化処理などの窒化処理方法にかかわらず、鋼材表面にFeN、FeNを主体とした窒素化合物を形成させ、部品の耐久性能を満たすことが行われている。
窒化処理が適用されている機械部品の中で、例えば自動車部品として使用されるエンジンバルブがある。エンジンバルブは過酷な環境下で使用されることから、耐磨耗性だけではなく、耐熱性および耐衝撃性などが要求される部品である。特に、排気弁は高温の排気ガスに曝され、フェース部の最高温度は約700℃にも達する。このため、排気弁でもより高温となる弁傘側の部分には、Crを多く含有するSUH35、SUH36などのオーステナイト系の耐熱鋼が用いられる場合が多く、排気弁でも温度が低い部分となる弁軸側の部分には、よりCrやNiの含有量が少なく廉価なSUH3、SUH11などのマルテンサイト系の耐熱鋼が使用され、図1に例示するように、それらの異種材料を弁軸側の途中で接合した接合バルブが主に用いられてきている。
近年では、エンジンの燃焼効率改善などを目的として、燃焼温度の更なる高温化が行われる傾向にあり、そのような高温環境では上記のような耐熱鋼では十分な耐磨耗性、耐衝撃性を得ることができない場合がある。そのため、より高温での耐熱性に優れるNiを多く含有するNCF750、NCF751などの耐食耐熱合金を弁傘側に用いたエンジンバルブが使用され始めている(下記の特許文献1)。
ところが、NCF750、NCF751などの耐食耐熱合金は、Niを多く含有しているため、その表面には侵入を阻害するNiOなどの非常に還元が困難な酸化皮膜が形成されており、通常のガス窒化処理はもちろんのこと、窒化力の強い塩浴窒化処理やイオン窒化処理等の方法であっても均一な窒化層を形成することが困難である。
上記のような難窒化材である耐食耐熱合金を窒化する方法として、窒化処理の前処理としてフッ化処理を行なう方法がある。この方法は酸化物よりもフッ化物の方が安定でありながら、還元雰囲気では酸化物よりもフッ化物の方が還元され易い性質を利用するもので、上記の非常に還元しづらい酸化皮膜をフッ化物膜に一旦置換した後、例えばNHのように窒化処理温度域で還元性のある窒素源ガスを供給することによって、NHの分解によって発生する水素で上記のフッ化物膜を容易に還元除去するのと同時に、NHの分解によって発生する窒素を処理品の内部へ侵入、拡散させることができる。この方法によって通常窒化処理が困難な耐食耐熱合金であっても均一な窒化層の形成を行うことが可能になる(下記の特許文献2)。
特開平9−256821 特開平5−195193
しかしながら、窒化処理を行い材料表面に窒化層を形成させると、被処理物は窒素化合物の形成および窒素原子の侵入によって膨張する現象が生じる。例えば、弁軸側の素材がフェライトやマルテンサイトを主体とする鋼種で構成され、弁傘側の素材がオーステナイトを主体とする耐食耐熱合金で構成されたエンジンバルブに窒化処理を行なった場合、それぞれの材料で窒素原子の拡散速度が違うことから、2種類の材料の双方に所定の窒化層を形成することが極めて困難であった。
加えて、形成される窒化層の状態も違うことから、その膨張量も異なって窒化処理後の膨張量に差が発生し、その接合部分の両側で軸径差が生じる。このような軸径差が生じた場合、エンジンが駆動する際に異音を発したり、ガス漏れが生じたりするなどの問題が発生する。その対策として窒化処理後、接合部分を含めた軸部を研削や研磨することにより接合部の軸径差を低減させる方法も考えられるが、上記の研削や研磨によって窒化層厚さが減少して十分な耐磨耗性が得られない可能性があるのと同時に、工程が増えるためコストの上昇につながるという問題点がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、異種材料の接合部材において、双方の材料に所定の窒化層を形成し、窒化処理における接合部の寸法変化を小さくした窒化処理方法および異種材料接合機械部品を提供することを第1の目的とし、弁軸側と弁傘側が異なる材料から構成されたエンジンバルブについて、双方の材料に所定の窒化層を形成し、窒化処理による接合部の軸径差を小さくしたエンジンバルブの製造方法およびエンジンバルブを提供することを第2の目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の第1の窒化処理方法は、フェライト相またはマルテンサイト相を主体とした第1材と、オーステナイト相を主体とした第2材とが接合された接合部材に対し、窒化性ガス雰囲気中で加熱保持して表層部に窒化層を形成させる窒化処理を行なう前に、あらかじめフッ素系ガス雰囲気中で加熱保持するフッ化処理を行うとともに、炭素源ガス雰囲気中に加熱保持して表層部に炭素拡散層を形成させる炭素拡散処理を行うことにより、窒化処理における第1材と第2材の寸法変化の差を小さくすることを要旨とする。
上記目的を達成するため、本発明の第2の窒化処理方法は、フェライト相またはマルテンサイト相を主体とした第1材と、オーステナイト相を主体とした第2材とが接合された接合部材に対し、窒化性ガス雰囲気中で加熱保持して表層部に窒化層を形成させる窒化処理を行なう前に、あらかじめフッ素系ガス雰囲気中で加熱保持するフッ化処理を行うとともに、炭素源ガス雰囲気中に加熱保持して表層部に炭素拡散層を形成させる炭素拡散処理を行い、上記炭素拡散処理における雰囲気ガスの炭素ポテンシャルを制御することにより、窒化処理における第1材と第2材の寸法変化の差を制御することを要旨とする。
上記目的を達成するため、本発明の異種金属接合機械部品は、フェライト相またはマルテンサイト相を主体とした第1材と、Niを20質量%以上含有するオーステナイト相を主体とした耐熱鋼もしくはNi基合金の第2材とが接合されて構成された異種材料接合機械部品であって
フッ素系ガス雰囲気中で加熱保持するフッ化処理とともに、炭素源ガス雰囲気中に加熱保持して表層部に炭素拡散層を形成させる炭素拡散処理が行われ、さらに窒化性ガス雰囲気中で加熱保持して表層部に窒化層を形成させる窒化処理が行なわれて、窒化処理後における第1材と第2材の接合部の寸法差が片側で2μm以下でかつ、上記第1材と第2材双方の表面に5μm以上の窒化層が形成されたことを要旨とする。
上記目的を達成するため、本発明のエンジンバルブの製造方法は、弁軸側の素材がフェライト相またはマルテンサイト相を主体とした鋼材であり、弁傘側の素材がNiを20質量%以上含有するオーステナイト相を主体とした耐熱鋼もしくはNi基合金から構成されたエンジンバルブに対し、窒化性ガス雰囲気中で加熱保持して表層部に窒化層を形成させる窒化処理を行なう前に、あらかじめフッ素系ガス雰囲気中で加熱保持するフッ化処理を行うとともに、炭素源ガス雰囲気中に加熱保持して表層部に炭素拡散層を形成させる炭素拡散処理を行い、上記炭素拡散処理を、炭素源ガス濃度が5容量%以上となる雰囲気中において300〜600℃の温度で10分以上保持することを要旨とする。
上記目的を達成するため、本発明のエンジンバルブは、弁軸側がフェライト相またはマルテンサイト相を主体とした鋼の第1材であり、弁傘側がNiを20質量%以上含有するオーステナイト相を主体とした耐熱鋼もしくはNi基合金の第2材であり、上記第1材と第2材が軸部で接合されて構成されたエンジンバルブであって、
フッ素系ガス雰囲気中で加熱保持するフッ化処理とともに、炭素源ガス雰囲気中に加熱保持して表層部に炭素拡散層を形成させる炭素拡散処理が行われ、さらに窒化性ガス雰囲気中で加熱保持して表層部に窒化層を形成させる窒化処理が行なわれて、窒化処理後における第1材と第2材の接合部の軸径差が4μm以下でかつ、上記第1材と第2材双方の表面に5μm以上の窒化層が形成されたことを要旨とする。
なお、本発明において、上記炭素源ガス雰囲気としては、炭素源ガスを含むガス、還元性ガスと炭素源ガスの両方を含むガス、還元性のある炭素源ガスのいずれかを用いることができる。
本発明の第1の窒化処理方法は、フェライト相またはマルテンサイト相を主体とした第1材と、オーステナイト相を主体とした第2材とが接合された接合部材に対し、窒化処理を行なう前に、あらかじめフッ化処理を行うとともに炭素拡散処理を行うことにより、窒化処理における第1材と第2材の寸法変化の差を小さくする。
このようにすることにより、被処理物である接合部材の表面に炭素が優先的に拡散し、素材がフェライト相もしくはマルテンサイト相を主体とする第1材ではその後の窒化処理でその表面から窒素を侵入、拡散させようとしても、窒素原子は表層部に侵入している炭素原子の間をかい潜って侵入するか、あるいは侵入している炭素原子をさらに深部まで押し込むようにしながら侵入することになる。したがって、炭素拡散処理を実施しない場合に比べて窒素原子の侵入と拡散が抑制されることにより窒化層の成長もある程度抑制され、結果的に窒化処理による過度な膨張を抑制することができる。
一方、素材がオーステナイト相を主体とする第2材では、素材がフェライト相やマルテンサイト相を主体とする材料に比較して窒素および炭素の拡散速度自体は遅いものの、窒素および炭素の固溶可能量が多いため、炭素拡散処理によってその表面に優先的に炭素を拡散させたとしても、その後行われる窒化処理において窒素の侵入を妨げる効果は軽微である。
フェライト相もしくはマルテンサイト相を主体とする第1材であっても、フッ化処理を実施しなければ、その表面に形成されている酸化皮膜の影響によって均一に炭素原子を侵入、拡散させることが困難であるが、上述した炭素拡散処理の前にフッ化処理を実施することにより、炭素原子の侵入と拡散が可能となり、更にその後行なわれる窒化処理においても均一な窒化層の形成が可能となる。
このように、窒化処理の前に、フッ化処理と炭素拡散処理を行なうことにより、第1材と第2材が接合された接合部材であっても、2種類の材料の双方に所定の窒化層を形成することができる。また、接合部に大きな寸法差を発生させることなく、窒化処理後の研磨などの後工程を必要とせず、双方の材料に耐磨耗性に優れた窒化層を形成させることが可能となる。また、第1材において窒化処理による窒化層の成長が抑制されて過度な膨張が抑制される一方、第2材において窒化処理における窒素侵入を妨げる作用が軽微であることから、第1材と第2材での窒化処理による寸法変化の差が小さくなる。
本発明の第2の窒化処理方法は、フェライト相またはマルテンサイト相を主体とした第1材と、オーステナイト相を主体とした第2材とが接合された接合部材に対し、窒化処理を行なう前に、あらかじめフッ化処理を行うとともに炭素拡散処理を行い、上記炭素拡散処理における雰囲気ガスの炭素ポテンシャルを制御することにより、窒化処理における第1材と第2材の寸法変化の差を制御する。
上述したように、炭素拡散処理により、フェライト相もしくはマルテンサイト相を主体とする第1材ではその後の窒化処理での窒素原子の侵入と拡散が抑制されることから、上記炭素拡散処理における雰囲気ガスの炭素ポテンシャルを制御することにより、その後の窒化処理における第1材の膨張度合を制御できる。これにより、窒化処理における第1材と第2材の寸法変化の差を制御することが可能となるのである。
そして、本発明の異種材料接合機械部品は、フェライト相またはマルテンサイト相を主体とした第1材と、Niを20質量%以上含有するオーステナイト相を主体とした耐熱鋼もしくはNi基合金の第2材とが接合されて構成され、フッ素系ガス雰囲気中で加熱保持するフッ化処理とともに、炭素源ガス雰囲気中に加熱保持して表層部に炭素拡散層を形成させる炭素拡散処理が行われ、さらに窒化性ガス雰囲気中で加熱保持して表層部に窒化層を形成させる窒化処理が行なわれて、窒化処理後における第1材と第2材の接合部の寸法差が片側で2μm以下でかつ、上記第1材と第2材双方の表面に5μm以上の窒化層が形成され、2種の材料の双方に、耐磨耗性に優れた窒化層を形成されているのである。
本発明の異種材料接合機械部品、上記窒化層を形成するための窒化処理後における第1材と第2材の接合部の寸法差が片側で2μm以下であるため、接合部の寸法差が小さく、研磨などの後工程を必要とせず、耐磨耗性に優れた窒化層が形成されるのである。
本発明のエンジンバルブの製造方法は、弁軸側の素材がフェライト相またはマルテンサイト相を主体とした鋼材であり、弁傘側の素材がNiを20質量%以上含有するオーステナイト相を主体とした耐熱鋼もしくはNi基合金から構成されたエンジンバルブに対し、窒化処理を行なう前に、あらかじめフッ化処理を行うとともに炭素拡散処理を行い、上記炭素拡散処理を、炭素源ガス濃度が5容量%以上となる雰囲気中において300〜600℃の温度で10分以上保持する。
このようにすることにより、被処理物であるエンジンバルブの表面に炭素が優先的に拡散し、素材がフェライト相もしくはマルテンサイト相を主体とする鋼材ではその後の窒化処理でその表面から窒素を侵入、拡散させようとしても、窒素原子は表層部に侵入している炭素原子の間をかい潜って侵入するか、あるいは侵入している炭素原子をさらに深部まで押し込むようにしながら侵入することになる。したがって、炭素拡散処理を実施しない場合に比べて窒素原子の侵入と拡散が抑制されることにより窒化層の成長も抑制される。
一方、素材がオーステナイト相を主体とする材料、特にNiを多く含有する耐食耐熱合金などでは、素材がフェライト相やマルテンサイト相を主体とする材料に比較して窒素および炭素の拡散速度自体は遅いものの、窒素および炭素の固溶可能量が多いため、炭素拡散処理によってその表面に優先的に炭素を拡散させたとしても、その後行われる窒化処理において窒素の侵入を妨げる効果は軽微である。
素材がフェライト相もしくはマルテンサイト相を主体とする比較的Crなどの含有量が少ない材料であっても、フッ化処理を実施しなければ、その表面に形成されている酸化皮膜の影響によって均一に炭素原子を侵入、拡散させることが困難であるが、上述した炭素拡散処理の前にフッ化処理を実施することにより、炭素原子の侵入と拡散が可能となり、更にその後行なわれる窒化処理工程においても均一な硬化層の形成が可能となる。
上述したように、窒化処理の前に、フッ化処理と炭素拡散処理を行なうことにより、異種材料が接合された接合バルブであっても、2種類の材料の双方に所定の窒化層を形成することができる。また、接合部に大きな軸径差を発生させることなく、窒化処理後の研磨などの後工程を必要とせず、双方の材料に耐磨耗性に優れた窒化層を形成させることが可能となる。また、フェライト相もしくはマルテンサイト相を主体とする材料において窒化処理による窒化層の成長が抑制されて過度な膨張が抑制される一方、オーステナイト相を主体とする材料において窒化処理における窒素侵入を妨げる作用が軽微であることから、双方の材料での窒化処理による寸法変化の差が小さくなる。
そして、本発明のエンジンバルブは、弁軸側がフェライト相またはマルテンサイト相を主体とした鋼の第1材であり、弁傘側がNiを20質量%以上含有するオーステナイト相を主体とした耐熱鋼もしくはNi基合金の第2材であり、上記第1材と第2材が軸部で接合されて構成され、フッ素系ガス雰囲気中で加熱保持するフッ化処理とともに、炭素源ガス雰囲気中に加熱保持して表層部に炭素拡散層を形成させる炭素拡散処理が行われ、さらに窒化性ガス雰囲気中で加熱保持して表層部に窒化層を形成させる窒化処理が行なわれて、窒化処理後における第1材と第2材の接合部の軸径差が4μm以下でかつ、上記第1材と第2材双方の表面に5μm以上の窒化層が形成され、2種の材料の双方に、耐磨耗性に優れた窒化層を形成されているのである。
本発明のエンジンバルブ、上記窒化層を形成するための窒化処理後における第1材と第2材の接合部の軸径差が4μm以下であるため、接合部の軸径差が小さく、研磨などの後工程を必要とせず、耐磨耗性に優れた窒化層が形成されるのである。
次に本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明の窒化処理方法は、フェライト相またはマルテンサイト相を主体とした第1材と、オーステナイト相を主体とした第2材とが接合された接合部材に対し、窒化性ガス雰囲気中で加熱保持して表層部に窒化層を形成させる窒化処理を行なう前に、あらかじめフッ素系ガス雰囲気中で加熱保持するフッ化処理を行うとともに、炭素源ガス雰囲気中に加熱保持して表層部に炭素拡散層を形成させる炭素拡散処理を行う。
対象とする接合部材を構成する第1材としては、フェライト相またはマルテンサイト相を主体とした鋼材が用いられ、例えば、高張力鋼、機械構造用鋼、快削鋼、炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度鋼、軸受鋼、ばね鋼、フェライト系耐熱鋼、マルテンサイト系耐熱鋼等を用いることができる。これらは、塑性加工や切削加工等により所定の部品形状に成形した後、あらかじめ所定の熱処理を施すことができる。
上記接合部材を構成する第2材としては、Niを20質量%以上含有するオーステナイト相を主体とした耐熱鋼もしくはNi基合金を好適に用いることができる。
例えば、上記耐熱鋼としては、Cr−Ni系のオーステナイト系耐熱鋼、Cr−Ni−Mn系のオーステナイト系耐熱鋼、18−8鋼にNb、Ti、Moを添加した18−8Nb鋼、18−8Ti鋼、18−8Mo鋼、18−8TiNb鋼、23−13鋼、25−20鋼、16−30鋼等を用いることができる。また、エンジンバルブ用として用いられるCr−Ni−Mn系耐熱鋼、Cr−Ni系耐熱鋼等も好適に用いることができる。
また、上記Ni基合金としては、Inconel,Hastelloy,Nimonic,Udimet,Rene41,Astoroy,Waspaloy(いずれも登録商標),D979,M252,IN738,IN100等の各種ニッケル基耐熱合金を用いることができる。
上記接合部材としては、例えば、自動車用等のエンジンバルブを挙げることができる。上記エンジンバルブとしては、弁軸側の素材としてフェライト相またはマルテンサイト相を主体とした鋼材である第1材を用い、弁傘側の素材としてNiを20質量%以上含有するオーステナイト相を主体とした耐熱鋼もしくはNi基合金である第2材を用い、弁軸側の第1材と弁傘側の第2材を軸部で接合した接合バルブを用いることができる。
上記接合部材を所定の熱処理炉内に装入し、
(1)あらかじめフッ素系ガス雰囲気中で加熱保持するフッ化処理を行い、
(2)炭素源ガス雰囲気中に加熱保持して表層部に炭素拡散層を形成させる炭素拡散処理を行い、
(3)その後、窒化性ガス雰囲気中で加熱保持して表層部に窒化層を形成させる窒化処理を行なう。
以下、各工程について説明する。
(1)フッ化処理工程
上記フッ化処理工程は、まずエンジンバルブ等の接合部材をフッ素源ガスを含む雰囲気に加熱保持してエンジンバルブ表面に形成している酸化物膜を除去しフッ化物膜を形成させる。
上記フッ化処理に使用するフッ素源ガスとしては、酸化物膜を形成している母材成分であるFe、CrおよびNiなどに対して酸素よりも親和性が強いハロゲン系物質であるフッ素系ガス(フッ素化合物ガスまたはフッ素ガスを含有するガス)が用いられる。このフッ素系ガスとしては、フッ素化合物、例えばNF、BF、CF、SFなどを主成分とするガスやFを主成分とするガスがあげられる。通常は、この主成分ガスを窒素ガスなどの希釈ガスで希釈してフッ素系ガスとして使用する。これらのフッ素系ガスに用いられる主成分ガスのうち、反応性、取り扱い性などの面でNFが最も優れており、実用的である。
上記フッ素系ガス雰囲気でエンジンバルブを、例えばNFを含む窒素ガス雰囲気中で200〜600℃の温度域に10〜60分保持することでNFが分解して活性なFが発生し、エンジンバルブ表面の酸化物が置換されて酸化物よりも安定なフッ化物膜が形成される。このフッ化物膜は還元性雰囲気に曝されると容易に還元、除去されるため、この方法によって窒素や炭素の原子が侵入、拡散する際の障壁となる酸化物膜などの無い表面が現れることになるため、ガス窒化処理およびガス軟窒化処理の前処理として極めて適した処理である。なお上記の処理温度および処理時間については処理を行なうエンジンバルブの材質、表面状態などに応じて、表面の酸化物膜がフッ化物膜に置換できるよう適当な条件を設定する。
上述した理由により、フッ化処理の後に窒化処理を行なうことによって、エンジンバルブの表面に容易に均一な窒化層を得ることが可能になる。またフッ化物膜が還元され酸化物膜などのない表面は窒素だけでなく炭素も浸透、拡散し易い状態となっているため、引き続き実施する炭素拡散処理工程において炭素を拡散させる前処理としても極めて適した処理である。
このとき、フッ素系ガス雰囲気のフッ素化合物またはフッ素の濃度は1000〜10000ppmとするのが好ましい。
またこのフッ化処理工程については、そのまま同一の炉を用いて炭素拡散処理工程および窒化処理工程を実施することも可能であるし、例えば連続炉内でフッ化処理室と以降の工程を実施する処理室を分けて実施する方法なども可能である。
(2)炭素拡散処理工程
上記フッ化処理工程と同時期またはその後に、上記フッ化処理工程によって形成されたエンジンバルブ表面のフッ化物膜を還元、除去し、更にその表面から炭素を侵入、拡散させるため、CO等の炭素源ガスを含むガスを含む雰囲気中、アセチレンやメタン等の炭化水素ガスのように還元性のある炭素源ガスを含む雰囲気中、もしくはHガスやNHガスなどの還元性ガスとCO等の炭素源ガスの両方を含む雰囲気中に上記エンジンバルブ等の接合部材を加熱保持する炭素拡散処理工程を実施する。
このとき、上記の還元性ガスと炭素源ガスは同時に供給する必要はなく、先に還元性ガスを供給しフッ化物膜を還元、除去した後、炭素源ガスを供給する方法も可能であるが、同時に供給する方法を用いた方が工程時間の短縮化が図れるためより好ましい。ただしこのとき上記のフッ化物膜を還元するための還元性ガスとしてNHガスを供給する場合は、炭素の拡散が優先的に起こるようにその濃度を調整することが望ましく、処理温度によっても最適な量は異なるが、好ましくは30容量%以下、より好ましくは20容量%以下とすることが望ましい。
また、このとき供給する炭素源ガスとしてはメタンやアセチレンなどの炭化水素系ガスや一酸化炭素など、浸炭性のあるガスであれば特に限定されるものではないが、プロパンガスやブタンガスなどの変性ガスであるRXガスは、炭素源ガスとなる一酸化炭素と還元性ガスであるHガスの両方を含有していることから浸炭性と還元性の双方を備え、かつ低コストであるためより好適に使用できる。
このように、窒化処理の前にフッ化処理および炭素拡散処理を行なうことにより、フェライト相もしくはマルテンサイト相を主体とする第1材では、炭素の拡散によりその後の窒化処理における窒素の侵入、拡散が抑制され、オーステナイト相を主体とする第2材では、炭素が拡散してもそれほど窒化処理における窒素の侵入、拡散が抑制されない。また、フッ化処理により、フェライト相もしくはマルテンサイト相を主体とする第1材に対する炭素原子の侵入と拡散が可能となり、更にその後行なわれる窒化処理において均一な窒化層の形成が可能となる。
このように、窒化処理の前に、フッ化処理と炭素拡散処理を行なうことにより、第1材と第2材が接合された接合部材であっても、2種類の材料の双方に所定の窒化層を形成することができる。また、接合部の寸法変化の差を小さくすることができる。
この炭素拡散処理工程で供給する上記の炭素源ガスの濃度は5容量%以上とすることが好ましい。炭素源ガスの濃度が5容量%未満では、弁軸側の材料に対し、次工程の窒化処理工程で窒素の拡散を抑制するのに十分な炭素量を拡散させるのに長時間を要してしまい効率的ではないからである。
このとき、炭素拡散処理の際の雰囲気ガスの炭素源ガスの濃度を高くしたり低くしたりして制御し、炭素拡散処理における炭素ポテンシャルを制御することにより、第1材に対する窒化処理での窒素の侵入、拡散を抑制する程度を制御することが可能であることから、上記炭素拡散処理における雰囲気ガスの炭素ポテンシャルを制御することにより、窒化処理における第1材と第2材の寸法変化の差を制御することが可能となる。
また、この炭素拡散処理工程を行なう温度は300℃以上600℃以下とするのが好ましい。処理温度が300℃未満では、弁軸側の材料に対し、次工程の窒化処理工程で窒素の拡散を抑制するのに十分な炭素量を拡散させるのに長時間を要してしまい効率的ではないからであり、より好ましい温度は400度以上である。また処理温度が600℃を超える場合には、通常の窒化処理温度より高温となってしまい、次工程の窒化処理工程で温度を下げる必要があり効率的ではないからである。
また、この炭素拡散処理工程を行なう時間は10分以上とするのが好ましい。処理時間が10分未満では弁軸側の材料に対し、次工程の窒化処理工程で窒素の拡散を抑制するのに十分な炭素量を拡散させることが困難だからである。
なお、上記の処理温度および時間については、弁軸側の材質、次工程の窒化処理工程などを考慮して最適化されることが望ましい。これによって、弁軸と弁傘が異なる材質で構成され、軸部で接合されたエンジンバルブ等の接合部材に対し、次工程の窒化処理工程を実施しても、接合部両側に生じる軸径差を微小にすることが可能となる。
このように、第1材と第2材が接合された異種金属接合部材に対し、窒化処理の前に炭素拡散処理を行なうことにより、窒化処理における第1材と第2材の寸法変化の差を小さくすることが可能となる。また、上記炭素拡散処理における雰囲気ガスの炭素ポテンシャルを制御することにより、窒化処理における第1材と第2材の寸法変化の差を制御することが可能となる。
(3)窒化処理工程
上述したフッ化処理工程および炭素拡散処理工程の効果により、引き続き実施される窒化処理工程については、そのガス組成、処理温度など、特に限定されるものではないが、窒素源ガスとしてNHガスを5容量%以上、より好ましくは10容量%以上含む雰囲気中で、300〜600℃、より好ましくは400〜600℃の処理温度で実施することが望ましい。ただし十分な耐磨耗性を得るために弁軸側および弁傘側の軸部には双方とも5μm以上の硬化層を形成させることが望ましく、処理を行なうエンジンバルブ等の接合部材の材質によって窒化処理条件は適宜調整する必要がある。
なお、本実施形態において、窒化層とは、窒化処理後の被処理材の表層部の状態によって窒素拡散層だけの窒化層の場合もあるし、窒素拡散層のさらに表面部に窒素化合物層が形成されて窒素拡散層と窒素化合物層から形成された窒化層の場合もある。本実施形態の場合、フェライト相またはマルテンサイト相を主体とした第1材の表面部には、窒素化合物層と窒素拡散層からなる窒化層が形成されることが多く、オーステナイト相を主体とした第2材の表面部には窒素拡散層からなる窒化層が形成されることが多い。
本発明の窒化方法は、例えば、図2に示すような熱処理炉によって行なうことができる。
この熱処理炉は、加熱ヒーター2を備えた炉体本体1に窒化性ガスや浸炭性ガス等のプロセスガスを供給するプロセスガス供給ポート3と、炉内に導入されたプロセスガスを撹拌する撹拌ファン6および撹拌ファン用モーター5と、排ガス排出ポート4とが設けられている。
上記プロセスガス供給ポート3は、RXガス等の浸炭性ガスを発生するガス変性装置11、NFガスボンベ12、Nガスボンベ13、NHガスボンベ14、Hガスボンベ15が接続され、それぞれプロセスガスとして変性ガス、NFガス、Nガス、NHガス、Hガスを供給するようになっている。上記ガス変性装置11には、炭素源となるエンリッチガスとしてプロパンガスを供給するプロパンガスボンベ16が接続されている。図において、7はガス供給ライン元弁、8は空圧作動弁、9は減圧弁、10はガス流量計、17は排ガス除害装置である。
上記熱処理炉を用い、窒素ガスで希釈したNFガスを供給してフッ化処理を行ない、RXガスを主成分とする還元性と浸炭性の双方を備えたガスを供給して炭素拡散処理を行ない、NHガス単独、もしくは必要に応じてRXガスやNガスなどを加えたNHガスを主成分とする窒素源ガスを供給して窒化処理を行なう。RXガスは、Nガス、Hガス、COガス、COガス等の混合ガスで、そのうち浸炭性のあるCOガスを20〜25容量%含んだガスである。
すなわち、まず、被処理物であるエンジンバルブ等の接合部材を炉内に配置し、昇温中の酸化を防止するため炉内雰囲気をNガス等で十分に置換した後、200〜600℃に加熱する。炉内の被処理物が均熱された時点でNF等を含むガスを炉内に導入しエンジンバルブ等の接合部材の表面にフッ化物膜を形成させるフッ化処理を行なう。
次にNFガスの供給を停止し、300〜600℃、より好ましくは400〜600℃に加熱した炉内にRXガスを主成分とし、より還元力を高める必要がある場合には適量のHガスやNHガスなどを加えた、還元性ガスを導入し、上記フッ化処理を実施したエンジンバルブ等の接合部材に対してフッ化物膜の還元処理と炭素拡散処理を行なう。
フッ化処理で表面に形成されたフッ化物は上記の混合ガスによって容易に還元され表面から除去される。これによって活性な金属表面が露出する。そしてこの活性な金属表面にRXガス中に含まれるCOガスから発生する炭素が鋼材中へ侵入、拡散し炭素濃化層を形成する。
このとき、上記の炭素拡散工程を行なわずに窒化処理工程を実施した場合には、その窒化処理時の雰囲気にRXガスなどの炭素源ガスが含まれていたとしても、窒素の拡散が優先して起こり、弁軸側の素材であるフェライト相もしくはマルテンサイト相を主体とする材料では、表面に形成する窒素化合物層には炭素が添加できるものの内部の拡散層にはほとんど炭素原子を拡散させることができない。これは炭素原子の拡散経路である金属の結晶格子間が先に窒素原子によって占められてしまうためであり、この場合、結果的に厚い窒化層が形成し、弁軸側の素材であるオーステナイト相を主体とする材料、特にNiを多量に含むいわゆるNi基合金などの窒素および炭素の拡散速度が遅い材料との窒化層厚さの差が顕著となり、両者の膨張量すなわち接合部両側の軸径に大きな差が生じてしまう。
しかし、上記の炭素拡散処理工程を窒化処理工程の前に実施することにより、窒化処理工程において厚い窒化層を形成し易い上記の弁軸側の材料の膨張量を大きく抑制することができる。これは窒化処理工程に先立って上記弁軸側の材料に炭素濃化層を形成させておくことによって、その後窒化処理を行なった場合でも窒素は表層部に侵入している炭素の間をかい潜って侵入するか、あるいは侵入している炭素をさらに深部まで押し込むようにしながら侵入しなければならないためである。したがって、上記の炭素濃化層がない場合に比べ窒素原子の侵入と拡散が抑制され、弁傘側の材料と弁軸側の材料の双方に所定の窒化層が形成されるととももに、弁傘側の材料の膨張量が非常に少ない場合でも両者の軸径の膨張量に大きな差が生じないのである。
このとき、接合部の両側の材料の軸径差すなわち窒化処理による膨張量差をできるだけ小さくするため、両者の材質を考慮し、適当な炭素拡散処理工程の時間を設定する必要がある。ただし炭素拡散処理工程の効果を発現させるためには少なくとも10分以上、より好ましくは20分以上の時間に設定することが望ましい。
上記炭素拡散処理工程を実施した後、NHを含む窒素源ガスを供給して目的とする窒化層厚さを得るために300〜600℃、より好ましくは400〜600℃に加熱保持もしくは昇温して必要な時間保持することで窒化処理が行なわれ、弁軸側、弁傘側の材料とも少なくとも5μm以上の硬化層が形成される。
このとき、フェライト相もしくはマルテンサイト相を主体とする材料の最表面に形成される窒素化合物層は硬度が高く耐磨耗性、耐焼付き性に優れているものの、脆い性質も持っていることから、RXガスなどの添加によって、耐磨耗性だけでなくある程度の靭性を有するよう窒化処理工程の雰囲気の調整を行なうことが望ましい。
また、エンジンバルブの場合、弁傘側の素材が耐熱性を重視したNiを20質量%以上含有する合金である場合には、5μm以上の硬化層を得るためには通常550〜600℃と比較的高い窒化処理温度を適用しなければならないが、このような上記の弁軸側の材料が厚い窒化層を形成し、膨張量が多くなり易い条件においても、上記の炭素拡散処理条件を最適化することで、必要とする硬化層を形成させることができ、両者の膨張量に大きな差を発生させることもないため、本発明の窒化処理方法がより好適に使用できる。
このように、本実施形態では、フッ化処理を実施し、材料表面に形成している緻密な酸化皮膜を除去した後、そのフッ化物膜を還元によって除去し、かつ窒化処理を行なう前に炭素源ガス雰囲気で炭素拡散処理を実施することにより、異なる材質が接合されたエンジンバルブ等の異種金属接合機械部品であっても接合部両側の軸径差を微小にすることが可能となる。
さらに、本実施形態の窒化処理方法はエンジンバルブ等の弁軸側の素材がフェライト相またはマルテンサイト相を素地とする鉄鋼材、弁傘側の素材が耐熱性の観点からNiを20%以上含有するオーステナイト相を素地とする合金から構成されている場合に、より効果的な窒化処理方法である。
そして、本発明の窒化処理を行なった異種金属接合機械部品は、上記第1材と第2材双方の表面に5μm以上の窒化層が形成される。また、上記窒化層を形成するための窒化処理後における第1材と第2材の接合部の寸法差は片側で2μm以下、好ましくは1.5μm以下となる。
また、上記のようにして製造したエンジンバルブは、上記第1材と第2材双方の表面に5μm以上の窒化層が形成され、優れた耐熱性、耐磨耗性を発揮する。さらに、上記窒化層を形成するための窒化処理後における第1材と第2材の接合部の軸径差が4μm以下、好ましくは3μm以下と微小であることから優れた性能を有し、曝される温度の高い排気弁としてより好適に使用できる。
次に、実施例について説明する。
弁軸側の材質がマルテンサイト系の耐熱鋼であるSUH11、弁傘側の材質がオーステナイト系の耐熱鋼でNiを約25%含有するSUH660で構成されており、上記の両材料が図1に示すように弁軸部で接合され、接合部を含めた弁軸を研磨仕上げされたエンジンバルブを使用し、図2に示す炉体本体1内に配置し、400℃に昇温してNFガスを含むフッ化処理用ガスを炉体本体1内に導入し15分保持した。
その後、500℃に昇温しRXガスが50容量%、Hガスが15容量%、NHガスが15容量%、Nガスが20容量%となる組成の混合ガスを炉体本体1内に導入し、実施例(a)として10分、実施例(b)として20分保持し炭素拡散処理を行なった。
その後、540℃に昇温しNHガスが50容量%、RXガスが50容量%となる組成の混合ガスを炉体本体1内に導入し3時間保持して窒化処理を実施した。
また比較例(c)として上記のフッ化処理を実施したのち炭素拡散処理を実施せずに上記の窒化処理を実施したものを、また比較例(d)として上記のフッ化処理を実施せずに上記の炭素拡散処理を10分実施し、上記の窒化処理を実施したものを作製した。
これらの硬化層厚さや軸径差などをまとめたものを下記の表1に示す。
Figure 0005144139
上記表1に示すように炭素拡散処理が10分以上であれば硬化層が厚くなり膨張し易い弁軸側の硬化層厚さ、すなわち窒化処理による膨張量が抑制されることによって上記接合部両側の軸径差が3μm以下となることがわかる。またより好ましい炭素拡散処理の時間は20分以上である。
なお、上記表1において、硬化層とは、窒化層(窒素拡散層だけから構成される窒化層、または窒素拡散層と窒素化合物層とから構成される窒化層)と、窒化層の直下に形成された炭素拡散層とを合わせた硬化層をいう。
一方フッ化処理を行ない、炭素拡散処理を行なわない比較例(c)の場合には、実施例(a)および実施例(b)と同様に、弁軸側、弁傘側とも均一な窒化層は形成されているものの、接合部両側の軸径差が大きく再研磨等の後加工が必要になる。
またフッ化処理を行なわない比較例(d)の場合には硬化層の形成が認められないことから、本発明の窒化処理方法にとってフッ化処理の適用が不可欠であることが分かる。
次に弁軸側の材質がマルテンサイト系の耐熱鋼であるSUH3、弁傘側の材質がオーステナイト系の耐熱鋼でNiを約70%含有するNCF751で構成されており、上記の両材料が図1に示すように弁軸部で接合され、接合部を含めた弁軸を研磨仕上げされたエンジンバルブを使用し、図2に示す炉体本体1内に配置し、実施例(e)として500℃に昇温してNF3ガスを含むフッ化処理用ガスを炉体本体1内に導入し10分保持した。
その後、590℃に昇温しRXガスが70容量%、Hガスが30容量%となる組成の混合ガスを炉体本体1内に導入し、15分保持し炭素拡散処理を行なった。
その後、590℃でNH3ガスが70容量%、RXガスが30容量%となる組成の混合ガスを炉体本体1内に導入し3時間保持して窒化処理を実施した。
また比較例(f)として590℃で3時間塩浴窒化処理を実施したものも作製した。
これらの硬化層厚さや軸径差などをまとめたものを下記の表2に示す。
Figure 0005144139
上記表2に示すように弁傘側の材質がNiを70%以上含むような材料であり、できる限り短時間で必要な硬化層を得るため、高温処理を適用した場合であっても、本実施例(e)では接合部両側の軸径差は3μm以内となっていることが分かる。なおフッ化処理の効果により、比較的硬化層を形成し易い弁軸側はもちろんのこと、Niを多量に含有する弁傘側にも均一な硬化層が形成されており、その硬化層厚さは約10μmであることを確認した。
なお、上記表2における硬化層も表1の場合と同様に、窒化層(窒素拡散層だけから構成される窒化層、または窒素拡散層と窒素化合物層とから構成される窒化層)と、窒化層の直下に形成された炭素拡散層とを合わせた硬化層である。
一方実施例(e)と同一温度、同一時間塩浴窒化処理を実施した比較例(f)については、弁軸側には比較的均一な硬化層が形成されているものの、弁傘側にはほとんど硬化層が形成されていないことを確認した。したがって比較的窒化力が強くエンジンバルブの窒化処理方法として広く用いられている塩浴窒化処理では、Niを多く含有する耐熱合金に対して均一な窒化処理が実施できず、接合部両側の軸径差の問題だけではなく、弁傘側の材料がNiを多量に含有するような場合には耐磨耗性に問題が発生する可能性が高いことが分かる。
軸部で異種材料が接合されたエンジンバルブの一例を示す外観図である。 処理炉の一例を示す断面図である。
符号の説明
1 炉体本体
2 加熱ヒーター
3 プロセスガス供給ポート
4 排ガス排出ポート
5 撹拌ファン用モーター
6 撹拌ファン
7 ガス供給ライン元弁
8 空圧作動弁
9 減圧弁
10 ガス流量計
11 ガス変性装置
12 NFガスボンベ
13 Nガスボンベ
14 NHガスボンベ
15 Hガスボンベ
16 プロパンガスボンベ
17 排ガス除害装置

Claims (5)

  1. フェライト相またはマルテンサイト相を主体とした第1材と、オーステナイト相を主体とした第2材とが接合された接合部材に対し、窒化性ガス雰囲気中で加熱保持して表層部に窒化層を形成させる窒化処理を行なう前に、あらかじめフッ素系ガス雰囲気中で加熱保持するフッ化処理を行うとともに、炭素源ガス雰囲気中に加熱保持して表層部に炭素拡散層を形成させる炭素拡散処理を行うことにより、窒化処理における第1材と第2材の寸法変化の差を小さくすることを特徴とする窒化処理方法。
  2. フェライト相またはマルテンサイト相を主体とした第1材と、オーステナイト相を主体とした第2材とが接合された接合部材に対し、窒化性ガス雰囲気中で加熱保持して表層部に窒化層を形成させる窒化処理を行なう前に、あらかじめフッ素系ガス雰囲気中で加熱保持するフッ化処理を行うとともに、炭素源ガス雰囲気中に加熱保持して表層部に炭素拡散層を形成させる炭素拡散処理を行い、上記炭素拡散処理における雰囲気ガスの炭素ポテンシャルを制御することにより、窒化処理における第1材と第2材の寸法変化の差を制御することを特徴とする窒化処理方法。
  3. フェライト相またはマルテンサイト相を主体とした第1材と、Niを20質量%以上含有するオーステナイト相を主体とした耐熱鋼もしくはNi基合金の第2材とが接合されて構成された異種材料接合機械部品であって
    フッ素系ガス雰囲気中で加熱保持するフッ化処理とともに、炭素源ガス雰囲気中に加熱保持して表層部に炭素拡散層を形成させる炭素拡散処理が行われ、さらに窒化性ガス雰囲気中で加熱保持して表層部に窒化層を形成させる窒化処理が行なわれて、窒化処理後における第1材と第2材の接合部の寸法差が片側で2μm以下でかつ、上記第1材と第2材双方の表面に5μm以上の窒化層が形成されたことを特徴とする異種材料接合機械部品。
  4. 弁軸側の素材がフェライト相またはマルテンサイト相を主体とした鋼材であり、弁傘側の素材がNiを20質量%以上含有するオーステナイト相を主体とした耐熱鋼もしくはNi基合金から構成されたエンジンバルブに対し、窒化性ガス雰囲気中で加熱保持して表層部に窒化層を形成させる窒化処理を行なう前に、あらかじめフッ素系ガス雰囲気中で加熱保持するフッ化処理を行うとともに、炭素源ガス雰囲気中に加熱保持して表層部に炭素拡散層を形成させる炭素拡散処理を行い、上記炭素拡散処理を、炭素源ガス濃度が5容量%以上となる雰囲気中において300〜600℃の温度で10分以上保持することを特徴とするエンジンバルブの製造方法。
  5. 弁軸側がフェライト相またはマルテンサイト相を主体とした鋼の第1材であり、弁傘側がNiを20質量%以上含有するオーステナイト相を主体とした耐熱鋼もしくはNi基合金の第2材であり、上記第1材と第2材が軸部で接合されて構成されたエンジンバルブであって、
    フッ素系ガス雰囲気中で加熱保持するフッ化処理とともに、炭素源ガス雰囲気中に加熱保持して表層部に炭素拡散層を形成させる炭素拡散処理が行われ、さらに窒化性ガス雰囲気中で加熱保持して表層部に窒化層を形成させる窒化処理が行なわれて、窒化処理後における第1材と第2材の接合部の軸径差が4μm以下でかつ、上記第1材と第2材双方の表面に5μm以上の窒化層が形成されたことを特徴とするエンジンバルブ。
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