JP5143958B1 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】インナーライナー9は、タイヤ内側の第1層と、カーカスプライ6と接する第2層で構成され、(A)第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体のスチレンブロック部分が不飽和結合を有する酸塩化物もしくは酸無水物で変性されたSIBS変性共重合体の、いずれかを含む熱可塑性エラストマーと紫外線吸収剤および酸化防止剤を含み、(B)第2層はスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンブロック共重合体のいずれかを含み、紫外線吸収剤および酸化防止剤を合計でエラストマーの0.5質量%〜40質量%含み、ビード領域Rbの平均厚さGbより、バットレス領域Rsの平均厚さGsが薄いことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
前記インナーライナーは、タイヤ内側に配置される第1層と、前記カーカスプライのゴム層と接するように配置される第2層で構成されており、
(A)前記第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体のスチレンブロック部分が不飽和結合を有する酸塩化物もしくは酸無水物で変性されたSIBS変性共重合体の、少なくともいずれかを含む熱可塑性エラストマーと紫外線吸収剤および酸化防止剤を含むエラストマー組成物であり、
(B)前記第2層は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンブロック共重合体の少なくともいずれかを含むエラストマーを含み、
前記第1層及び前記第2層は紫外線吸収剤および酸化防止剤は合計でエラストマー成分の0.5質量%〜40質量%含むエラストマー組成物であり、
前記インナーライナーは、タイヤ最大幅位置からビードトウに亘るビード領域Rbの平均厚さGbより、タイヤ最大幅位置からベルト層端の対応位置Luに亘るバットレス領域Rsの平均厚さGsが薄いことを特徴とする空気入りタイヤに関する。
本発明はタイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、前記インナーライナーは、少なくとも2層のポリマー積層体で形成される。第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)を主成分とするエラストマー組成物であり、第2層はスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)の少なくともいずれかを主成分とするエラストマー組成物である。
第1層および第2層のエラストマー成分として、SIBSのスチレンブロック部分が不飽和結合を有する酸塩化物もしくは酸無水物で変性されたスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SIBS変性共重合体」ともいう。)を含むことができる。第1層および第2層のエラストマー組成物には、紫外線吸収剤および酸化防止剤を含んでいる。
本発明において前記第1層は、エラストマー成分として、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SIBS」ともいう。)を含む。SIBSは、分子鎖中にイソブチレンブロックを含んでいるため、そのポリマーフィルムは優れた耐空気透過性を有する。したがって、SIBSをインナーライナーに用いた場合には耐空気透過性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。さらに、SIBSは、その分子構造において、芳香族単位以外は飽和しているため、酸化劣化が抑制される。
前記第2層は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SIS」ともいう。)およびスチレン−イソブチレンブロック共重合体(以下、「SIB」ともいう。)の少なくともいずれかを含むエラストマー組成物である。
0程度であることが好ましい。
第2層をSISとSIBSの混合物、またはSIBとSIBSの混合物で構成することができる。この場合はSIBSの混合量は、熱可塑性エラストマー成分の10〜80質量%の範囲で調整される。SIBSが10質量%より少ないと第1層との接着性が低下し、SIBSが80質量%を超えるとカーカスプライとの接着性が低下する傾向がある。
(SIBS変性共重合体)
前記第1層のエラストマー組成物は、SIBS変性共重合体をエラストマー成分の10質量%〜100質量%含むことができる。第2層のエラストマー組成物は、SIBS変性共重合体を、エラストマー成分の5〜80質量%、好ましくは10〜80質量%の範囲である。SIBS変性体共重合体が5質量%未満の場合は、第1層および第2層の間、または第2層とカーカスプライとの加硫接着力が低下する可能性があり、80質量%を超えるとカーカスプライとの接着力が低下する可能性がある。
本発明で変性に用いられる不飽和結合を有する酸塩化物とは、メタクリル酸クロライド、メタクリル酸ブロマイド、メタクリル酸ヨウダイド、アクリル酸クロライド、アクリル酸ブロマイド、アクリル酸ヨウダイド、クロトニル酸クロライドおよびクロトニル酸ブロマイドが例示される。特に、メタクリル酸クロライド、アクリル酸クロライドが好適である。また酸無水物とは、無水酢酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等が例示されるが、特に無水酢酸が好適である。係る変性によりSIBSに不飽和基が導入されるため架橋剤で分子鎖を架橋することができる。
第1層および第2層はスチレン系熱可塑性エラストマーを含むことができる。ここでスチレン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとしてスチレンブロックを含む共重合体をいう。前記SIBS、SIS、SIBのほか、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SBBS)がある。
第1層の熱可塑性エラストマー組成物にはゴム成分を配合することができる。ゴム成分の配合によって、隣接するカーカスプライとの未加硫状態での粘着性を付与し、加硫によりカーカスプライやインスレーションとの加硫接着性を高めることができる。
本発明において、エラストマー組成物は紫外線吸収剤が配合されている。紫外線吸収剤は、波長290nm以上の紫外線領域の光を吸収し高分子化合物の分子鎖の劣化を防止する。例えば、ベンゾフェノン系、サリチレート系およびベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤は高分子化合物が最も劣化を受けやすい波長320nm〜350nm付近の紫外線光を吸収する。この波長域の光を振動エネルギーや熱エネルギーに変換することで高分子化合物への吸収を防止する機能を有する。特に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が幅広い紫外線光を吸収できる。ここで、紫外線吸収剤を例示すれば次のとおりである。
TINUVIN P/FL(BASF社製、分子量225、融点128〜132℃、最大吸収波長341nm)(2−(2−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール)、TINUVIN 234(BASF社製、分子量447.6、融点137〜141℃、最大吸収波長343nm)(2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α’ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール)、TINUVIN 326/FL(BASF社製、分子量315.8、融点138〜141℃、最大吸収波長353nm)、アデカスタブLA−36((株)ADEKA製)(2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、TINUVIN 237(BASF社製、分子量338.4、融点139〜144℃、最大吸収波長359nm)(2,4−ジ−t−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル−)フェノール)、TINUVIN 328(BASF社製、分子量351.5、融点80〜88℃、最大吸収波長347nm)(2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール)、TINUVIN 329/FL(BASF社製、分子量323、融点103〜105℃、最大吸収波長343nm)(2−(2−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール)。
TINUVIN 213(BASF社製、融点−40℃、最大吸収波長344nm)(5−(2−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルベンゼンプロパン酸メチル)、TINUVIN 571(BASF社製、分子量393.6、融点−56℃、最大吸収波長343nm)(2−(2−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−ドデシルフェノール)。
TINUVIN 1577FF(BASF社製、分子量425、融点148℃、最大吸収波長274nm)(2−[4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(ヘキシルオキシ)フェノール)。
CHIMASSORB 81/FL(BASF社製、分子量326.4、融点48〜49℃)(2−ヒドロキシ−4−(オクチルオキシ)ベンゾフェノン)。
TINUVIN 120(BASF社製、分子量438.7、融点192〜197℃、最大吸収波長265nm)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート)。
CHIMASSORB 2020 FDL(BASF社製、分子量2600〜3400、融点130〜136℃)(ジブチルアミン1,3,5−トリアジン・N,N−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン・N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物)、CHIMASSORB 944 FDL(BASF社製、分子量2000〜3100、融点100〜135℃)(ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}])、TINUVIN 622 LD(BASF社製、分子量3100〜4000、融点55〜70℃)(ブタン二酸1−[2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ)エチル])、TINUVIN 144(BASF社製、分子量685、融点146〜150℃)(2−ブチル−2−[3,5−ジ(tert−ブチル)−4−ヒドロキシベンジル]マロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、TINUVIN 292(BASF社製、分子量509)(セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル))、TINUVIN 770 DF(BASF社製、分子量481、融点81〜85℃)(セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)。
本発明において、エラストマー組成物は酸化防止剤が配合されている。酸化防止剤は、紫外線吸収剤はラジカル補足剤として機能し、主に炭素ラジカルを補足することで、高分子の分子鎖の劣化を防止できる。酸化防止剤を以下に例示する。
IRGANOX1010(BASF製)、アデカスタブAO−60((株)ADEKA製)、スミライザーBP−101(住友化学(株)製)(ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])、IRGANOX1035(BASF製)(2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])、IRGANOX1076(BASF製)(オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、IRGANOX1098(BASF製)(N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド))、IRGANOX1135(BASF製)(イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])、IRGANOX1330(BASF製)(1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン)、IRGANOX1726(BASF製)(4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−O−クレゾール)、IRGANOX1425(BASF製)(ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム(50%)、ポリエチレンワックス(50%))、IRGANOX1520(BASF製)(2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−O−クレゾール)、IRGANOX245(BASF製)(トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])、IRGANOX259(BASF製)(1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])、IRGANOX3114(BASF製)(トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト)、IRGANOX5057(BASF製)(オクチル化ジフェニルアミン)、IRGANOX565(BASF製)(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン)、サイアノックスCY1790(サンケミカル(株)製)(1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸)、アデカスタブAO−40((株)ADEKA製)、スミライサーBBM(住友化学(株)製)(4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール))、アデカスタブAO−50((株)ADEKA製)、スミライザーBP-76(住友化学(株)製)(ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、アデカスタブAO−80((株)ADEKA製)、スミライザーGA-80(住友化学(株)製)(3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフィエニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカン)。
リン系酸化防止剤は、過酸化物分解剤として使用され、熱加工成型時の酸化防止機能に優れており、以下のものを例示できる。
IRGASTAB FS 042(BASF製)(N,N−ジオクタデシルヒドロキシルアミン)。
IRGANOX B 225(BASF製)(IRGAFOS168:IRGANOX1010=1:1)、IRGANOX215(BASF製)(IRGAFOS168:IRGANOX1010=2:1)、IRGANOX220(BASF製)(IRGAFOS168:IRGANOX1010=3:1)、IRGANOX921(BASF製)(IRGAFOS168:IRGANOX1076=2:1)。
本発明において酸化防止剤は酸素吸収剤を包含する概念である。酸素吸収剤は空気中の酸素捕捉能がある一般的な酸素吸収剤を用いることができ、例えば、鉄粉の酸化反応を利用して空気中の酸素を吸収する鉄粉末酸素吸収剤をあげることができ、通常、表面積が0.5m2/g以上の鉄粉100重量部に対し、0.1〜50重量部のハロゲン化金属、例えば塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン化物を組合せて用いる。これは両者の混合物として、また鉄粉表面をハロゲン化金属で被覆したものでもよい。なお、本発明に用いる酸素吸収剤にはさらにゼオライトなどの多孔性粒子に水分を含浸させたものをさらに組合せて前記酸素による鉄の酸化をさらに促進させることができる。特に、炭素ラジカルのラジカルトラップ剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
本発明において、前記第1層及び第2層の少なくともいずれかは、熱可塑性エラストマー成分100質量に対し、粘着付与剤が0.1〜100質量部、好ましくは1.0〜20質量部の範囲で配合される。ここで粘着付与剤とはエラストマー組成物の粘着性を増進するための配合剤をいい、例えば次の粘着付与剤が例示される。
(ポリマー積層体)
本発明においてインナーライナーは前記第1層と第2層で構成されるポリマー積層体が使用される。ここで第1層、第2層は熱可塑性エラストマーを含むエラストマー組成物であり、加硫温度、例えば150℃〜180℃において、金型中で軟化状態にある。軟化状態とは分子運動性が向上し固体と液体の中間状態を意味する。また、熱可塑性エラストマー組成物が軟化状態では、固体状態よりも反応性が向上するため、隣接する部材と粘着、接着する。そのため熱可塑性エラストマー組成物の形状変化や隣接部材との粘着、融着を防止するために、タイヤの製造の際には冷却工程を設けることが好ましい。冷却工程は、タイヤ加硫後に、10〜300秒間、50〜120℃に急冷しブラダー部内を冷却することができる。冷却媒体としては、空気、水蒸気、水およびオイルより選択される1種以上が使用される。かかる冷却工程を採用することでインナーライナーを薄く形成できる。
図1に示すバットレス領域Rsのインナーライナーの厚さ(Gs)は、耐空気透過性を阻害しない範囲でできるだけ薄くすることが好ましく、好ましくは0.05〜0.3mmの範囲に設定される。
本発明の空気入りタイヤは、一般的な製造方法を用いることができる。まず前記ポリマー積層体PLを用いてインナンーライナーを製造する。空気入りタイヤ1の生タイヤに前記インナーライナーを適用して他の部材とともに加硫成形することによって製造することができる。ポリマー積層体PLを生タイヤに配置する際は、第2層PL2が、カーカスプライ6に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて配置する。
本発明の第1層および第2層よりなるポリマー積層体の製造に用いた熱可塑性エラストマー(SIB、SIBS、SIS及びSIBS変性共重合体)、紫外線吸収剤、酸化防止剤は以下のとおり調整した。
攪拌機付き2L反応容器に、メチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)589mL、n−ブチルクロライド(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)613ml、クミルクロライド0.550gを加えた。反応容器を−70℃に冷却した後、α−ピコリン(2−メチルピリジン)0.35mL、イソブチレン179mLを添加した。さらに四塩化チタン9.4mLを加えて重合を開始し、−70℃で溶液を攪拌しながら2.0時間反応させた。次に反応容器にスチレン59mLを添加し、さらに60分間反応を続けた後、大量のメタノールを添加して反応を停止させた。反応溶液から溶剤などを除去した後に、重合体をトルエンに溶解して2回水洗した。このトルエン溶液をメタノール混合物に加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間乾燥することによりスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を得た(スチレン成分含有量:15質量%、重量平均分子量:70,000)。
カネカ(株)社製の「シブスターSIBSTAR 102T(ショアA硬度25、スチレン成分含有量15質量%、重量平均分子量:100,000)」を用いた。
クレイトンポリマー社製のD1161JP(スチレン成分含有量15質量%、重量平均分子量:150,000)を用いた。
2リットルのセパラブルフラスコにスチレン―イソブチレンブロック共重合体75g(スチレン含量30%、スチレンユニットのモル数0.216モル)を入れて、容器内を窒素で置換した。注射器を用いて、モレキュラーシーブスで乾燥したn−ヘキサン1200mL及びモレキュラーシーブスで乾燥したn−ブチルクロリド1800ミリリットルを加えた。
応を開始した。30分の反応の後、反応溶液に約1000ミリリットルの水を加えて激しく攪拌し反応を終了させた。反応溶液を多量の水で数回水洗を行い、さらに大量のメタノールとアセトン混合溶媒(1:1)に徐々に滴下して反応生成物を沈殿させ、その後反応生成物を60℃で24時間真空乾燥して、SIBS変性共重合体(重量平均分子量:150,000、スチレン含量:20重量%、酸塩化物:1.0重量%)を得た。
(株)ADEKA社製のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として「アデカスタブLA−36」(2−(2’−ヒドロキシ−3’−ter−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)を用いた。この紫外線吸収剤は融点が138〜141℃、分子量315.8、最大吸収波長が353nmである。
BASF社製のヒンダードフェノール系酸化防止剤として「IRGANOX 1010」(ペンタエリスリチル・テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)を用いた。この酸化防止剤の融点は110〜125℃であり、比重が1.15、分子量が117.7である。
(注2)ポリイソブチレン:新日本石油(株)社製、「テトラックス3T」(粘度平均分子量30,000、重量平均分子量、49,000)。
表1、表2の実施配合、比較配合に基づき、SIBS変性共重合体、SIBS、SISおよびSIBなどの熱可塑性エラストマー組成物を、2軸押出機(スクリュ径:φ50mm、L/D:30、シリンダ温度:220℃)にてペレット化した。その後、Tダイ押出機(スクリュ径:φ80mm、L/D:50、ダイリップ幅:500mm、シリンダ温度:220℃、フィルムゲージ:第1層は0.25mm、第2a層及び第2b層は、いずれも0.05mm)にてインナーライナーを作製した。
空気入りタイヤは、図1に示す基本構造を有する195/65R15サイズのものを製造した。上記ポリマー積層体をインナーライナーに用いて生タイヤを製造し、170℃で20分間プレス加硫を行った。加硫タイヤを加硫金型から取り出すことなく、110℃で3分間冷却した後に加硫金型から取り出した。冷却媒体としては水を使用した。
表3において、比較例1、2は、第1層にSIBSを、第2層にSISを用い、Gs/Gが、それぞれ1、0.5のインナーライナーの例である。比較例3は、第1層にSIBSを、第2層にSISを用いたインナーライナーの例である。比較例4は第1層にSIBSを第2層にSIBを用いたインナーライナーの例である。比較例5は、第1層にSIBS変性共重合体を、第2層にSISを用いたインナーライナーの例である。
表4において、比較例6は、第1層および第2層に実施例4と同じ配合を用いて、Gs/Gが1のインナーライナーの例である。実施例10〜13は、第1層および第2層に比較例6と同じ配合でGs/Gの値を変化させたインナーライナーの例である。比較例6よりも実施例10〜13は、耐候性、耐屈曲亀裂成長性、耐空気透過性および転がり抵抗性が総合的に優れていることが認められる。
前述の如く製造された空気入りタイヤに関し、以下の性能試験をおこなった。
タイヤインナーライナー内部について、スガ試験機(株)製サンシャインスーパーロングライフウェザーメーターを用いて、次の条件で耐候性試験を行った。槽内温度63℃、湿度50%、60℃中、12分間降雨の条件で60時間照射し、試験後のインナーライナーの亀裂個数を求めた。比較例1を基準として、他の比較例、実施例との亀裂個数の相対値を求め、以下の式に基づき耐候性指数を算出した。数値が大きいほど耐候性に優れている。
<屈曲亀裂成長試験>
耐久走行試験は、インナーライナーが割れたり剥がれたりするかどうかで評価した。試作タイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、タイヤ内圧は150KPaで通常よりも低内圧に設定し、荷重は600kg、速度100km/h、走行距離20,000kmでタイヤの内部を観察し、亀裂、剥離の数を測定した。比較例1を基準として、各比較例、実施例の亀裂成長性を指数で表示した。指数の値が大きいほど、屈曲亀裂成長が小さいことを示す。
<静的空気圧低下率試験>
上述の方法で製造した195/65R15スチールラジアルPCタイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、初期空気圧300Kpaを封入し、90日間室温で放置し、空気圧の低下率を計算した。
195/65R15スチールラジアルPCタイヤを周方向に8等分し、それぞれの箇所で、幅20mmでタイヤ径方向に沿って切断した8個のカットサンプルを作成し、この8個のカットサンプルについて、それぞれのバットレス領域Rsとビード領域Rbにおいて等間隔に5等分した5点についてインナーライナー層の厚さを測定した。それぞれ測定した合計40点の測定値の算術平均値をGs、Gbとした。
(株)神戸製鋼所製の転がり抵抗試験機を用いて、試作タイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、荷重3.4kN、空気圧230kPa、速度80km/hの条件で、室温(38℃)にて走行させて転がり抵抗を測定した。そして、下記の計算式に基づき比較例1を基準100として、実施例の転がり抵抗変化率(%)を指数で表示した。転がり抵抗変化率が大きいほど、転がり抵抗が低減されていることを示す。
<総合判定>
判定Aは、次の条件をすべて満たしたものをいう。
(a)耐候性指数が105以上。
(b)屈曲亀裂成長指数が120以上。
(c)静的空気圧低下率が2.7未満。
(d)転がり抵抗指数が105以上。
(a)耐候性指数が100未満。
(b)屈曲亀裂成長指数が120未満。
(c)静的空気圧低下率が2.7以上。
(d)転がり抵抗指数が105より小さい。
Claims (5)
- トレッド部から左右両側のビード部に亘るカーカス層と、そのクラウン部外側にベルト層と、前記カーカス層の内側にインナーライナーを配置した空気入りタイヤにおいて、
前記インナーライナーは、タイヤ内側に配置される第1層と、前記カーカスプライのゴム層と接するように配置される第2層で構成されており、
(A)前記第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体のスチレンブロック部分が不飽和結合を有する酸塩化物もしくは酸無水物で変性されたSIBS変性共重合体の、少なくともいずれかを含む熱可塑性エラストマーと紫外線吸収剤および酸化防止剤を含むエラストマー組成物であり、
(B)前記第2層は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンブロック共重合体の少なくともいずれかを含むエラストマーを含み、
前記第1層及び前記第2層は紫外線吸収剤および酸化防止剤は合計でエラストマー成分の0.5質量%〜40質量%含むエラストマー組成物であり、
前記インナーライナーは、タイヤ最大幅位置からビードトウに亘るビード領域Rbの平均厚さGbより、タイヤ最大幅位置からベルト層端の対応位置Luに亘るバットレス領域Rsの平均厚さGsが薄いことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記インナーライナーのバットレス領域の平均厚さGsと、ビード領域の平均厚さGbの比(Gs/Gb)は、0.5〜0.7である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記インナーライナーのバットレス領域の平均厚さGsは、0.06〜0.30mmである請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記第1層および前記第2層のいずれかのエラストマー組成物は、SIBS変性共重合体がエラストマー成分の5質量%〜100質量%配合されている請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記第1層および第2層のいずれかのエラストマー組成物は、粘着付与剤またはポリイソブチレンが配合されている請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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