JP5142247B2 - 植物ウイルス抵抗性植物の製造方法及びその利用 - Google Patents

植物ウイルス抵抗性植物の製造方法及びその利用 Download PDF

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本発明は、植物ウイルス抵抗性植物の製造方法及びその利用に関するものである。より詳細には、植物ウイルスのゲノムRNAに結合して植物ウイルスの増殖を抑制する活性を有するポリペプチドを利用した、植物ウイルス抵抗性植物の製造方法及びその利用に関するものである。
植物ウイルスによる病害は、作物の収量や質に重篤な影響を与える。これまで、ウイルス病に対抗する策として、罹病株の早期発見・除去による感染拡大阻止、媒介昆虫の防除、弱毒ウイルスによるクロスプロテクション等が活用されている。また、自然界には特定のウイルスに対する抵抗性を賦与する遺伝子座が知られ、それらのうちいくつかは実際に作物に導入されて実績を上げている。ウイルスゲノムの一部を植物ゲノムに導入することにより植物にウイルス抵抗性を賦与する手法(pathogen-derived resistance)も、有効な対抗策のひとつとして期待されている。
病害の原因となる植物ウイルスとして、例えばトバモウイルス(Tobamovirus)が挙げられる。トバモウイルスは、アルファウイルス・スーパーファミリーに属するプラス鎖RNAウイルスである。トバモウイルスのメンバーとしては、例えば、タバコモザイクウイルス(Tobacco mosaic virus)及びトマトモザイクウイルス(Tomato mosaic virus、以下「ToMV」ともいう)を挙げることができる。
プラス鎖RNAウイルスは、ウイルス粒子内にmRNAとして機能する1本鎖RNA(極性のRNA)をゲノムとしてもつ。トバモウイルスを含む植物ウイルスの大多数、及びC型肝炎ウイルスやポリオウイルス等の動物ウイルスの多くは、プラス鎖RNAウイルスである。プラス鎖RNAウイルスが宿主細胞内に侵入すると、ゲノムRNAより複製に関与するタンパク質(複製タンパク質)が翻訳される。複製タンパク質は自身のゲノムRNAを認識し、宿主細胞のオルガネラ膜の細胞質側表面にRNA複製複合体を形成する。RNA複製複合体は、プラス鎖と相補的なマイナス鎖RNAを介して、ゲノムプラス鎖RNA(子孫ゲノムRNA)を複製する(非特許文献1及び2を参照)。また、複製の際に生じたサブゲノムRNAを介してウイルスの移行タンパク質及び外被タンパク質が翻訳される。この移行タンパク質が発現するとウイルスゲノムRNAは植物のプラズモデスマータを通って隣接する細胞へと移行する(非特許文献3を参照)。
トバモウイルスを原因とする病害を防ぐ方法としては、例えば、トバモウイルスの移行タンパク質に結合するタンパク質を植物で発現させる方法や(例えば特許文献1)、ウイルスの増殖に必要な宿主因子を同定し、それらの発現抑制により植物にウイルス抵抗性を賦与する方法(例えば非特許文献3を参照)等が提案されている。
国際公開第03/022039号パンフレット(2003年3月20日公開) Buck, K. W., Comparison of the replication of positive-stranded RNA viruses of plants and animals., Adv. Vrius Res., 1996, 47, 159-251 Schwartz, M., Chen, J., Janda, M., Sullivan, M., den Boon, J., and Ahlquist, P., A positive-strand RNA virus replicationcomplex parallels form and function of retrovirus capsids., Mol. Cell, 2002, 9, 505-514 Lucas, W. J., Plant viral movement proteins: Agents for cell-to-cell trafficking of viral genomes., Virology, 2006,344,169,184 Asano et al., Tobamovirus-resistant tobacco generated by RNA interference directed against host genes.,FEBS Lett., 2005, 579(20), 4479-4484
しかし、現在、植物に対して遺伝的にウイルス抵抗性を賦与することの可能な、宿主遺伝子に関する知見はわずかである。そして、将来、抵抗性を打破するウイルスが出現する可能性を考慮すると、標的遺伝子の幅広いレパートリーを確保しておくことが要求される。つまり、現在、ウイルス抵抗性賦与のために利用されている宿主遺伝子も、将来、当該抵抗性を打破するウイルスの出現によって無効になる可能性を有する。例えば特許文献1や非特許文献3の方法で、植物に賦与された抵抗性に関しても、将来、当該抵抗性を打破するウイルスが現われる可能性は否定できない。
また、Pathogen-derived resistanceは植物種を選ばずにウイルス抵抗性の賦与ができる利点をもつが、導入配列との組み換え等により新しいウイルスが生み出されてしまう危険性も指摘されている(例えば、Goldbach et al., Resistance mechanisms to plant viruses: an overview. Virus Res., 2003, 92, 207-212を参照)。
そこで、ウイルス抵抗性を賦与することが可能な遺伝子をできるだけ多く揃えておき、それらを複合的に使用することが要求される。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、植物ウイルスに対して高い抵抗性を有する植物ウイルス抵抗性植物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、トバモウイルスのゲノムRNAに結合してトバモウイルスの増殖を抑制するタンパク質を新たに見出した。そして、当該タンパク質を過剰発現させることでトバモウイルスの増殖を抑制することができることを見出して、本発明の完成に至った。即ち、本発明は、以下の発明を包含する。
本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物の製造方法は、植物体内において、植物ウイルスのゲノムRNAに結合して植物ウイルスの増殖を抑制するポリペプチドによる、植物ウイルスの増殖抑制活性を昂進させる工程を含むことを特徴としている。
本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物の製造方法では、上記ポリペプチドは、以下の(a)又は(b)に記載のポリペプチドであることがより好ましい:
(a)配列番号1もしくは2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号1もしくは2に示されるアミノ酸配列に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物ウイルス増殖抑制活性を有するポリペプチド。
本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物の製造方法では、上記工程は、植物体内において、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入することにより行なうことがより好ましい。
本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物の製造方法では、上記ポリヌクレオチドは、以下の(c)、(d)又は(e)に記載のポリヌクレオチドであることがより好ましい:
(c)配列番号3もしくは4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(d)配列番号3もしくは4に示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、挿入、置換、もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(e)配列番号3もしくは4に示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物の製造方法では、上記植物ウイルスは、トバモウイルスであることがより好ましい。
本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物の製造キットは、上記課題を解決するために、植物ウイルスのゲノムRNAに結合するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを備えていることを特徴としている。
本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物のスクリーニング方法は、上記課題を解決するために、植物体内の、植物ウイルスのゲノムRNAに結合するポリペプチドの蓄積量、及び植物ウイルスのゲノムRNAに結合するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現量のうち、少なくとも一方の量を測定する工程を含むことを特徴としている。
本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物のスクリーニングキットは、上記課題を解決するために、植物ウイルスのゲノムRNAに結合するポリペプチドと特異的に結合する抗体、及び植物ウイルスのゲノムRNAに結合するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと特異的に結合するプローブのうち、少なくとも一方を備えることを特徴としている。
本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物は、上記課題を解決するために、上記のいずれかに記載の本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物の製造方法により製造されることを特徴としている。また、植物ウイルスのゲノムRNAに結合するポリペプチドによる植物ウイルスの増殖抑制活性が、昂進されていることを特徴としている。
本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物の製造方法は、以上のように、植物体内において、植物ウイルスのゲノムRNAに結合して植物ウイルスの増殖を抑制するポリペプチドによる、植物ウイルスの増殖抑制活性を昂進させる工程を含むので、植物ウイルスに対して高い抵抗性を有する植物ウイルス抵抗性植物を提供することができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
<1.植物ウイルス抵抗性植物の製造方法>
本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物の製造方法は、植物体内において、植物ウイルスのゲノムRNAに結合して植物ウイルスの増殖を抑制するポリペプチドによる、植物ウイルスの増殖抑制活性を昂進させる工程を含めばよい。
植物ウイルスのゲノムRNAに結合して、かつ当該植物ウイルスの増殖を阻害するポリペプチドの活性を昂進することで、植物ウイルスの増殖を抑制することができる。これにより、植物ウイルスに対する抵抗性が向上した植物を製造することができる。これにより、様々な植物ウイルスに対する抵抗性が賦与された植物ウイルス抵抗性植物を製造することができる。
本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物の製造方法で、植物に賦与する抵抗性の対象となる植物ウイルスとしては、ゲノムをRNAとするウイルスである限り限定されるものではなく、例えば、プラス鎖RNAウイルス等が挙げられるが、中でも後述するBTRポリペプチド等を用いれば、トバモウイルスに対する抵抗性を好適に賦与することができる。
そこで、本実施の形態では、トバモウイルスに対する抵抗性を賦与したトバモウイルス抵抗性植物を製造する方法について説明するが、本発明の精神の範囲内で、様々な植物ウイルスに対する抵抗性を賦与した植物ウイルス抵抗性植物を製造することができる。
ここで、トバモウイルスとは、トバモウイルス属に属するウイルスをいう。トバモウイルス属に属するウイルスとしては、例えば、Cucumber green mottle mosaic virus(CGMMV)、Frangipani mosaic virus(FrMV)、Kyuri green mottle mosaic virus(KGMMV)、Obuda pepper virus(ObPV、)、Odontoglossum ringspot virus(ORSV)、Paprika mild mottle virus(PaMMV)、Pepper mild mottle virus(PMMV)、Ribgrass mosaic virus(RMV)、Sammons’s Opuntia virus(SOV)、Sunn-hemp mosaic virus(SHMV)、Tobacco mild green mosaic virus(TMGMV)、Tobacco mosaic virus(TMV)、Tomato mosaic virus(ToMV)、Turnip vein-cleaning virus(TVCV)、Ullucus mild mottle virus(UMMV)、Yucari mosaic virus(YoMV)等が挙げられる。
また、トバモウイルスのゲノムRNAに結合してトバモウイルスの増殖を抑制する活性を有するポリペプチドを、以下「BTRポリペプチド」と表記し、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを「btrポリヌクレオチド」と表記する。また、トバモウイルスのゲノムRNAに結合してトバモウイルスの増殖を抑制する活性を「BTR活性」と表記する。なお、「BTR」又は「btr」とは「Binding to Tobamovirus RNA」を略記したものである。また、本明細書において、「トバモウイルスのゲノムRNAに結合するポリペプチドによるトバモウイルスの増殖抑制活性を、昂進させる」とは、BTRポリペプチドによるトバモウイルス増殖抑制活性を、野生株よりも昂進させることを意図するものであり、その昂進の程度を限定するものではない。
〔1−1.BTRポリペプチド及びbtrポリヌクレオチド〕
本発明において、トバモウイルスのゲノムRNAに結合するポリペプチド(BTRポリペプチド)とは、トバモウイルスのゲノムRNAに結合してトバモウイルスの増殖を抑制する活性を示すものである限り、限定されるものではない。
BTRポリペプチドとしては、以下の(a)に記載のポリペプチドを挙げることができる。
(a)配列番号1もしくは2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
配列番号1及び2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドは、それぞれ、GenBankに、アクセッション番号NM_120525、アクセッション番号NM_180433で登録されている。また、配列番号1及び2に示すアミノ酸配列は、GenBankに、アクセッション番号NC_003076で登録されているシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のゲノムDNAの内、Locus tag At5g04430で示される遺伝子の塩基配列から生じる2種類のスプライシングバリアントである。
後の実施例で詳述するように、配列番号1及び2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドは、それぞれKHドメインを3個有している。KHドメインはRNA結合ドメインとして知られている。しかし、従来、配列番号1及び2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能は全く不明であった。本発明者らは、後の実施例で説明するように、シロイヌナズナが、ToMVのゲノムRNAに結合してToMVの増殖を抑えるタンパク質を有することを見出した。そして、これを同定した結果、当該タンパク質は配列番号1及び2に示すアミノ酸配列を有することを見出した。本発明は、この全く新たな知見に基づく、当業者といえども容易に想到し得ない発明である。
なお、動物では、ポリC結合タンパク質の一種でKHドメインを有するPCBP2(αCP2)が、ポリオウイルスRNAの5’末端領域に結合して、当該RNAの翻訳効率を高めることが報告されている(Blyn, L. B., Swiderek, K. M., Richards, O., Stahl, D. C., Semler, B. L. and Ehrenfeld, E., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1996, 93, 11115-11120、Blyn, L. B., Towner, J. S., Semler, B. L. and Ehrenfeld, E., J. Virol., 1997, 71, 6243-6246を参照)。つまり、KHドメインを有するポリペプチドとして、従来は、ウイルスのゲノムRNAの翻訳効率を高めるポリペプチドが知られていた。これでは、配列番号1及び2のアミノ酸配列からなるポリペプチドを活性化させることには、当業者といえども容易に想到し得ない。なぜなら、様々なウイルスを原因とした病気が問題となる植物において、KHドメインを有するアミノ酸配列からなるポリペプチドの活性を高めることは、病原となるウイルスを増殖させる恐れすらあるからである。
また、一実施形態においてBTRポリペプチドは、BTRポリペプチドの変異体である。このような変異体としては、以下の(b)に記載のポリペプチドを挙げることができる。
(b)配列番号1もしくは2に示されるアミノ酸配列に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつトバモウイルス増殖抑制活性を有するポリペプチド。
このような変異体には、欠失、挿入、逆転、反復及びタイプ置換(例えば、親水性残基の別の残基への置換、しかし通常は強く親水性の残基を強く疎水性の残基には置換しない)を含む変異体が含まれる。
ポリペプチドを構成するアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、このポリペプチドの構造又は機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけではく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造又は機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。
当業者は、周知技術を使用してポリペプチドのアミノ酸配列において1個又は数個のアミノ酸を容易に変異させることができる。例えば、公知の点変異導入法に従えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の塩基を変異させることができる。また、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の部位に対応するプライマーを設計して欠失変異体又は付加変異体を作製することができる。さらに、本明細書中に記載されるBTRポリペプチドの蓄積量やbtrポリヌクレオチドの発現量を測定する方法等を用いれば、作製した変異体が所望のトバモウイルスの増殖を抑制するか否かを容易に決定することができる。
代表的に保存性置換と見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu及びIleの中での1つのアミノ酸から別のアミノ酸への置換;ヒドロキシル残基Ser及びThrの交換、酸性残基Asp及びGluの交換、アミド残基Asn及びGlnの間の置換、塩基性残基Lys及びArgの交換、並びに芳香族残基Phe、Tyrの間の置換である。
上述の(a)及び(b)に記載のBTRポリペプチドは、トバモウイルスのゲノムRNAの5’末端領域に結合するものである。より具体的には、上記(a)及び(b)に記載のBTRポリペプチドは、トバモウイルスのゲノムRNAの、5’末端の1〜277位のRNAに結合するものである。ただし、BTR活性を有するポリペプチドが結合するトバモウイルスのゲノムRNA上の領域はこれに限定されるものではない。つまり、トバモウイルスのゲノムRNAに結合した上で、トバモウイルスの増殖を抑制するものであればよい。例えば、トバモウイルスではウイルスのゲノムRNAの5’末端領域に加えて3’末端非翻訳領域(6280〜6384位)も自身の増殖に必須の役割を果たしている(Takamatsu, N., Watanabe, Y., Meshi, T. and Okada, Y., J. Virol., 1990, 64, 3686-3693、Takamatsu, N., Watanabe, Y., Iwasaki, T., Meshi, T. and Okada, Y., J. Virol., 1991, 65, 1619-1622を参照)。従って、3’末端非翻訳領域に結合してその機能を阻害するBTRポリペプチドであっても、効率よくウイルス増殖を抑制することができる。
また、上記(a)及び(b)のBTRポリペプチドは、トバモウイルスに特異的に結合する。本発明においてBTRポリペプチドは、トバモウイルスに結合してトバモウイルスの増殖を抑制するものであれば特に限定されるものではないが、上記(a)及び(b)のBTRポリペプチドのように、トバモウイルスに特異的に結合して増殖を抑制するものであることが好ましい。トバモウイルスに特異的に結合して増殖を抑制するBTRポリペプチドであれば、当該BTRポリペプチドにより植物自体の成長を阻害することがない。つまり、植物自体の成長を阻害することなく、トバモウイルスに対する抵抗性が向上したトバモウイルス抵抗性植物を提供することができる。実際に、後で述べる実施例において本発明者らは、植物の成長が阻害されることなく、トバモウイルスに対する抵抗性が向上した植物を作製している。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、「ペプチド」又は「タンパク質」と交換可能に使用される。また、ポリペプチドの「フラグメント」は、当該ポリペプチドの部分断片が意図される。また、本明細書中で使用される場合、用語「BTRポリペプチド」は、植物体内でbtrポリヌクレオチドの発現により産生されたもの、天然供給源より単離されたもの、化学合成して得たものをも包含する。なお、用語「単離された」ポリペプチド又はタンパク質は、その天然の環境から取り出されたポリペプチド又はタンパク質が意図される。例えば、宿主細胞中で発現された組換え産生されたポリペプチド及びタンパク質は、任意の適切な技術によって実質的に精製されている天然又は組換えのポリペプチド及びタンパク質と同様に、単離されていると考えられる。
また、BTRポリペプチドは、天然の精製産物、化学合成手順の産物、及び原核生物宿主又は真核生物宿主(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生された産物を含む。組換え産生手順において用いられる宿主に依存して、グリコシル化され得るか、又は非グリコシル化され得る。さらに、BTRポリペプチドは、いくつかの場合、宿主媒介プロセスの結果として、開始の改変メチオニン残基を含み得る。
BTRポリペプチドは、アミノ酸がペプチド結合しているポリペプチドであればよいが、これに限定されるものではなく、ポリペプチド以外の構造を含む複合ポリペプチドであってもよい。本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド以外の構造」としては、糖鎖及びイソプレノイド基等を挙げることができるが、特に限定されない。
また、BTRポリペプチドは、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。付加的なポリペプチドとしては、例えば、His、Myc、Flag等のエピトープ標識ポリペプチドが挙げられる。
本明細書中においてポリペプチド又はタンパク質に関して用いられる場合、用語「変異体」は、BTR活性を有するポリペプチド(すなわち、トバモウイルスのゲノムRNAに結合して増殖を抑制するポリペプチド)が意図され、例えば「配列番号に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの変異体」は、トバモウイルスの増殖を抑制するポリペプチドであって、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであることが意図される。
また、一実施形態においてBTRポリペプチドは、BTR活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、以下の(c)、(d)又は(e)に記載のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを挙げることができる。
(c)配列番号3もしくは4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(d)配列番号3もしくは4に示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、挿入、置換、もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(e)配列番号3もしくは4に示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
配列番号3及び4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、それぞれ、GenBankに、アクセッション番号NM_120525、アクセッション番号NM_180433で登録されており、それぞれ、配列番号1及び2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
なお、上記「ストリンジェントな条件」とは、少なくとも90%以上の同一性、好ましくは少なくとも95%以上の同一性、最も好ましくは97%の同一性が配列間に存在する時にのみハイブリダイゼーションが起こることを意味する。
上記ハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory, 1989に記載されている方法のような周知の方法で行なうことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなり(ハイブリダイズし難くなる)、より相同なポリヌクレオチドを取得することができる。ハイブリダイゼーションの条件としては、従来公知の条件を好適に用いることができ、特に限定しないが、例えば、42℃、6×SSPE、50%ホルムアミド、1%SDS、100μg/ml サケ***DNA、5×デンハルト液(ただし、1×SSPE;0.18M 塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム、pH7.7、1mM EDTA、5×デンハルト液;0.1% 牛血清アルブミン、0.1% フィコール、0.1% ポリビニルピロリドン)が挙げられる。
なお、本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」又は「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。また、本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、デオキシリボヌクレオチド(A、G、C及びTと省略される)の配列として示される。
〔1−2.BTRポリペプチドによるトバモウイルスの増殖抑制活性を、昂進させる工程〕
本実施の形態に係るトバモウイルス抵抗性植物の製造方法は、上述のように、BTRポリペプチドによるトバモウイルスの増殖抑制活性を、昂進させる工程を包含していればよい。
このような工程は、植物体内において、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入することにより行なうことや、予め植物体内に内在しているbtrポリヌクレオチドの発現量を向上させる方法や、精製したBTRポリペプチドを導入する方法等が挙げられる。中でも、上記工程は、植物体内において、BTRポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入することにより行なうことが好ましい。btrポリヌクレオチドを導入すれば、植物体内のbtrポリヌクレオチドの発現を長期間維持することができ、その子孫を得ることによっても、トバモウイルス抵抗性を有する植物を得ることができる。
植物にbtrポリヌクレオチドを導入する場合、当該ポリヌクレオチドが導入される植物の部位や組織は、植物体全体、植物器官(例えば葉、花弁、茎、根、種子など)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束、柵状組織、海綿状組織など)又は植物培養細胞、あるいは種々の形態の植物細胞(例えば、懸濁培養細胞)、プロトプラスト、葉の切片、カルス等のいずれでもよい。また、btrポリヌクレオチドの導入に用いる植物の種類としては、特に限定されず、単子葉植物綱又は双子葉植物綱に属する植物のいずれでもよい。
植物へのbtrポリヌクレオチドの導入は、当該ポリヌクレオチドを備えたベクターを導入する等の従来公知の方法を好適に利用することができる。
ここで、本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物の製造方法で利用可能な、植物へのポリヌクレオチドの導入方法を例示するが、これに限定されるものではない。
植物へのポリヌクレオチドの導入には、当業者に公知の形質転換方法(例えば、アグロバクテリウム法、遺伝子銃、PEG法、エレクトロポレーション法など)が用いられ、アグロバクテリウムを介する方法と直接植物細胞に導入する方法とに大別される。アグロバクテリウム法を用いる場合は、構築した植物用発現ベクターを適当なアグロバクテリウム(例えば、アグロバクテリウム・チュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens))に導入し、この株をリーフディスク法(内宮博文著、植物遺伝子操作マニュアル(1990)27〜31頁、講談社サイエンティフィック、東京)などに従って無菌培養葉片に感染させ、形質転換植物を得ることができる。また、Nagelらの方法(Micribiol. Lett., 1990, 67, 325)が用いられ得る。この方法は、まず、例えば発現ベクターをアグロバクテリウムに導入し、次いで、形質転換されたアグロバクテリウムをPlant Molecular Biology Manual(S.B.Gelvinら、Academic Press Publishers)に記載の方法で植物細胞又は植物組織に導入する方法である。ここで、「植物組織」とは、植物細胞の培養によって得られるカルスを含む。アグロバクテリウム法を用いて形質転換する場合には、pBI系のバイナリーベクター(例えば、pBIG、pBIN19、pBI101、pBI121、pBI221及びpPZP202など)が使用され得る。
また、btrポリヌクレオチド等の外来ポリヌクレオチドを直接、植物細胞又は植物組織に導入する方法としては、エレクトロポレーション法、遺伝子銃法が知られている。遺伝子銃を用いる場合は、植物体、植物器官、植物組織自体をそのまま使用してもよく、切片を調製した後に使用してもよく、プロトプラストを調製して使用してもよい。このように調製した試料を遺伝子導入装置(例えばPDS‐1000(BIO‐RAD社)など)を用いて処理することができる。処理条件は植物又は試料によって異なるが、通常は450〜2000psi程度の圧力、4〜12cm程度の距離で行なう。
外来ポリヌクレオチドが導入された細胞又は植物組織は、まずハイグロマイシン耐性などの薬剤耐性で選択され、次いで定法によって植物体に再生される。形質転換細胞から植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行なうことが可能である。選択マーカーとしては、ハイグロマイシン耐性に限定されず、例えば、ブレオマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコールなどに対する薬剤耐性が挙げられる。
植物培養細胞を宿主として用いる場合は、例えば、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法(電気穿孔法)、ポリエチレングリコール法、遺伝子銃(パーティクルガン)法、プロトプラスト融合法、リン酸カルシウム法などによって組換えベクターが培養細胞に導入されて形質転換される。形質転換の結果として得られるカルスやシュート、毛状根などは、そのまま細胞培養、組織培養又は器官培養に用いることが可能であり、また従来知られている植物組織培養法を用い、適当な濃度の植物ホルモン(オーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、アブシジン酸、エチレン、ブラシノライドなど)の投与などによって植物体に再生させることができる。
ポリヌクレオチドが植物に導入されたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法等によって行なうことができる。例えば、形質転換植物からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行なう。PCRは、前記プラスミドを調製するために使用した条件と同様の条件で行なうことができる。その後は、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動などを行ない、臭化エチジウム、SYBR Green液などによって染色し、そして増幅産物を1本のバンドとして検出することによって、形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素などによって標識したプライマーを用いてPCRを行ない、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレートなどの固相に増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応などによって増幅産物を確認する方法も採用することができる。
btrポリヌクレオチド等の外来ポリヌクレオチドがゲノム内に組み込まれた植物体が一旦取得されれば、当該植物体の有性生殖又は無性生殖によって子孫を得ることができる。また、当該植物体又はその子孫、あるいはこれらのクローンから、例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラストなどを得て、それらを基に当該植物体を量産することができる。したがって、本発明には、本発明にかかるポリヌクレオチドが発現可能に導入された植物体、もしくは、当該植物体と同一の性質を有する当該植物体の子孫、又はこれら由来の組織も含まれる。
なお、植物に導入する外来ポリヌクレオチドは、非翻訳領域(UTR)の配列またはベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。
また、植物に導入する外来ポリヌクレオチドを取得するための供給源としては、特に限定されないが、生物材料であることが好ましい。本明細書中で使用される場合、用語「生物材料」は、生物学的サンプル(生物体から得られた組織サンプルまたは細胞サンプル)が意図される。後述する実施例においては、シロイヌナズナを用いてbtrポリヌクレオチドを得ているが、これに限定されない。
また、BTRポリペプチドによるトバモウイルスの増殖抑制活性を、昂進させる方法としては、上述のように、予め植物体内に内在しているbtrポリヌクレオチドの発現量を向上させてもよい。例えば、植物に内在されるbtrポリヌクレオチド及び/又はその調節遺伝子に変異を与えて、BTRポリペプチドのBTR活性を昂進させてもよい。
つまり、本実施の形態に係るトバモウイルス抵抗性植物の製造方法で得られる植物は植物変異体であり得る。このような植物の変異体としては、例えば、天然に存在する変異体から、BTRポリペプチドのBTR活性が昂進した植物を選抜することによって得ることができる。また、上記植物変異体は、化学的突然変異原である公知な化合物で種子などを処理する方法(化学的突然変異誘発法)によっても取得することができる。上記化学的突然変異原としては、アジ化ナトリウム(NaN)、メタンスルホン酸エチル(EMS)、アジドグリセロール(AG、3−アジド−1,2−プロパンジオール)、メチルニトロソ尿素(MNU)、及びマレイン酸ヒドラジド(MH)などが例示できる。また、UV照射を用いてもよい。このような変異によって、例えば、btrポリヌクレオチドのリプレッサーをコードする領域において1ヌクレオチド以上の変異が導入されることにより、リプレッサーとしての機能が低下すると、btrポリヌクレオチドの発現性を向上させて、BTRポリペプチドのBTR活性を昂進させることができる。
また、BTRポリペプチドによるトバモウイルスの増殖抑制活性を、昂進させる方法としては、上述のように、植物体外で製造したBTRポリペプチドを外部導入してもよい。
BTRポリペプチドを外部導入する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、直接散布してもよく、葉脈に投与してもよい。
ここで、外部導入に用いるBTRポリペプチドの生産方法について説明する。BTRポリペプチドの生産方法は、特に限定されるものではなく、例えばbtrポリヌクレオチドを含むベクターを用いればよい。当該ベクターは、無細胞タンパク質合成系において用いられることが好ましい。無細胞タンパク質合成系を用いる場合、種々の市販のキットが用いられ得る。
無細胞タンパク質合成系としては、コムギ胚芽抽出液を用いる系、ウサギ網状赤血球抽出液を用いる系、大腸菌S30抽出液を用いる系、及び植物の脱液胞化プロトプラストから得られる細胞成分抽出液が挙げられる。一般的には、真核生物由来遺伝子の翻訳には真核細胞の系、すなわち、コムギ胚芽抽出液を用いる系又はウサギ網状赤血球抽出液を用いる系のいずれかが選択されるが、翻訳される遺伝子の由来(原核生物/真核生物)や、合成後のタンパク質の使用目的を考慮して、上記合成系から選択されればよい。
BTRポリペプチドを上記ベクターを用いて合成した後は、当該BTRポリペプチドを含む細胞又は組織の抽出液から、従来公知の方法で精製すればよい。BTRポリペプチドの精製は、従来公知の方法(例えば、細胞又は組織を破壊した後に遠心分離して可溶性画分を回収する方法)で細胞や組織から細胞抽出液を調製した後、この細胞抽出液から周知の方法(例えば、硫安沈殿又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、及びレクチンクロマトグラフィー)によって精製する工程が好ましいが、これらに限定されない。
また、BTRポリペプチドは化学合成によって得てもよい。当業者は、本明細書中に記載されるBTRポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて周知の化学合成技術を適用すれば、BTRポリペプチドを化学合成できることを、容易に理解する。
このように、BTRポリペプチドの生産方法は、少なくとも、BTRポリペプチドのアミノ酸配列又はbtrポリヌクレオチドの塩基配列に基づいて公知慣用技術を用いればよい。
上記のような方法で製造した植物から、トバモウイルス増殖抑制活性が昂進した植物を選抜する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ノーザンブロット法等によって、BTRポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現量を測定してもよく、また、BTRポリペプチドを特異的に認識する抗体を用いたELISA法やウエスタンブロット法などの免疫学的方法によって、当該ポリペプチドの蓄積量を測定してもよい。なお、BTRポリペプチドを特異的に認識する抗体については、本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物のスクリーニングキットの説明において詳述する。
以上に説明した本実施の形態に係るトバモウイルス抵抗性植物の製造方法によって、トバモウイルス抵抗性が向上したトバモウイルス抵抗性植物を得ることができる。このようにして得られたトバモウイルス抵抗性植物は、トバモウイルスに対する抵抗性が向上しているため、当該ウイルスが原因の植物病を予防した植物を得ることができる。
<II.本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物の製造キット>
本発明はまた、植物ウイルス抵抗性植物の製造キットを提供する。本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物の製造キットは、植物体内における植物ウイルス増殖抑制活性を昂進させることが可能なものを備えていればよいが、植物ウイルスのゲノムRNAに結合するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを備えていることが好ましい。例えば、トバモウイルス抵抗性植物の製造キットであれば、btrポリヌクレオチドを備えているものが好ましい。
なお、本発明に係る製造キットは、btrポリヌクレオチド等の、植物ウイルスのゲノムRNAに結合するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド以外に、上述した植物の製造方法を実行するために必要とされる試薬等を備えていることが好ましい。このような試薬としては、例えば、上述のアグロバクテリウム法等を実施するための試薬が挙げられる。
<III.植物ウイルス抵抗性植物のスクリーニング方法及びスクリーニングキット>
〔3−1.本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物のスクリーニング方法〕
本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物のスクリーニング方法は、植物体内の、植物ウイルスのゲノムRNAに結合するポリペプチドの蓄積量及び植物ウイルスのゲノムRNAに結合するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現量のうち、少なくとも一方の量を測定する工程を含めばよい。例えば、トバモウイルス抵抗性植物のスクリーニング方法であれば、植物体内の、BTRポリペプチドの蓄積量及びbtrポリヌクレオチドの発現量のうち、少なくとも一方の量を測定する工程(以下、「測定工程」ともいう)を含めばよい。本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物のスクリーニング方法でスクリーニングされた植物は、天然であっても、形質転換体であっても、変異体であってもよい。
以下、本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物のスクリーニング方法の一実施形態として、トバモウイルス抵抗性植物のスクリーニング方法について以下に説明するが、これに限定されるものではなく、本発明の精神の範囲で、様々な植物ウイルスに対して抵抗性を有する植物をスクリーニングすることが可能なスクリーニング方法を提供することができる
本実施の形態に係るトバモウイルス抵抗性植物のスクリーニング方法において、上記測定工程としては、例えば、目的の植物から抽出したBTRポリペプチド(粗抽出物であってもよいし、部分精製物であってもよいし、精製物であってもよい)を、BTRポリペプチドに対する抗体と反応させて、植物体内におけるBTRポリペプチドの蓄積量を測定する工程を挙げることができる。より具体的には、ウエスタンブロット法や、ELISA法を用いて、植物体内におけるBTRポリペプチドの蓄積量を測定する工程を行なえばよい。当該工程によれば、野生株との比較により、植物体内におけるBTRポリペプチドの蓄積量が高い植物体を容易に検出(スクリーニング)することができる。このようなBTRポリペプチドの蓄積量が高い植物体は、多くの場合、植物におけるトバモウイルス増殖抑制活性が昂進している。そのため、当該工程により、トバモウイルスに対する抵抗性が向上した植物を容易にスクリーニングできる。上記工程において用いる抗体としては、後述する抗体を用いることができる。
また、上記測定工程としては、例えば、btrポリヌクレオチドの塩基配列又はその相補配列からなるポリヌクレオチドの塩基配列の、少なくとも一部の塩基配列を有するプローブを、目的の植物由来のゲノムDNA、mRNA又はmRNAに対するcDNAにハイブリダイズさせ、当該プローブにハイブリダイズするポリヌクレオチドを検出することによって、btrポリヌクレオチドの発現量を測定する工程を挙げることができる。このような工程によれば、野生株との比較により、btrポリヌクレオチドの発現量が向上した植物体を容易に検出(スクリーニング)することができる。btrポリヌクレオチドの発現量が向上した植物体は、多くの場合、植物におけるトバモウイルス増殖抑制活性が向上しているため、当該工程により、トバモウイルス増殖抑制活性が昂進した植物を容易にスクリーニングできる。
上記測定工程として例示した工程は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。単独で用いることにより、迅速にトバモウイルス抵抗性植物をスクリーニングすることができる。一方、複数を組み合わせて用いることにより、スクリーニングの精度を高めることができる。
本実施の形態に係るトバモウイルス抵抗性植物のスクリーニング方法において用いられる上記プローブは、btrポリヌクレオチド又はそのフラグメントを得るためのPCRプライマー又はハイブリダイゼーションプローブとしても用いることができる。また、当該プローブは、以下のような用途に用いることもできる。:(1)cDNAライブラリー中のbtrポリヌクレオチド又はその対立遺伝子もしくはスプライシング改変体の単離;(2)btrポリヌクレオチドの正確な染色***置を提供するための、***中期染色体スプレッドへのインサイチュハイブリダイゼーション(例えば、「FISH」)(Verma et al., Human Chromosomes:A Manual of Basic Techniques, Pergamon Press, New York, 1988を参照);及び(3)特定の組織におけるbtrポリヌクレオチドのmRNA発現を検出するためのノーザンブロット分析。なお、当業者は、上述した用途がいずれも、本実施の形態に係るトバモウイルス抵抗性植物のスクリーニング方法において用いられるプローブと目的の遺伝子(ポリヌクレオチド)との間で生じるハイブリダイゼーションに起因しており、当該プローブが、目的の遺伝子(ポリヌクレオチド)とハイブリダイズさせるために用いられることを容易に理解する。
本実施の形態に係るトバモウイルス抵抗性植物のスクリーニング方法において用いられる上記プローブは、少なくとも7nt(ヌクレオチド)、10nt、12nt、好ましくは約15nt、そしてより好ましくは少なくとも約20nt、なお、より好ましくは少なくとも約30nt、そしてさらにより好ましくは少なくとも約40ntの長さのフラグメント(プローブ)が意図されるが、当業者は、上述した用途に応じて好ましい長さを適宜設定し得る。「少なくとも20ntの長さのフラグメント」によって、例えば、配列番号3に示される塩基配列からの20以上の連続した塩基配列又はその相補配列を含むフラグメント(プローブ)が意図される。本明細書を参照すれば配列番号3に示される塩基配列が提供されるので、当業者は,配列番号3に基づくプローブを容易に作製することができる。例えば、制限エンドヌクレアーゼ切断又は超音波による剪断は、種々のサイズのフラグメントを作製するために容易に使用され得る。あるいは、このようなフラグメントは、合成的に作製され得る。適切なフラグメントが、Applied Biosystems Incorporated (ABI, 850 Lincoln Center Dr., Foster City, CA 94404)392型シンセサイザーなどによって合成される。また、当該プローブは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖及びアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAやRNAを包含する。
このように、本実施の形態に係るトバモウイルス抵抗性植物のスクリーニング方法において用いられるプローブを、btrポリヌクレオチドを検出するハイブリダイゼーション用プローブ又は当該ポリヌクレオチドを増幅するためのPCR用プライマーとして利用することによって、btrポリヌクレオチドの発現量が向上した植物体又は組織を容易に検出(スクリーニング)することができる。
〔3−2.本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物のスクリーニングキット〕
本発明はまた、植物ウイルス抵抗性植物のスクリーニングキットを提供する。本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物のスクリーニングキットは、植物ウイルスのゲノムRNAに結合するポリペプチドと特異的に結合する抗体及び植物ウイルスのゲノムRNAに結合するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと特異的に結合するプローブのうち、少なくとも一方を備えていればよい。例えば、トバモウイルス抵抗性植物のスクリーニングキットであれば、BTRポリペプチドと特異的に結合する抗体、及びbtrポリヌクレオチドと特異的に結合するプローブのうち、少なくとも一方を備えていればよい。
以下、本発明に係る植物ウイルス抵抗性植物のスクリーニングキットの一実施形態として、トバモウイルス抵抗性植物のスクリーニングキットについて以下に説明するが、これに限定されるものではなく、本発明の精神の範囲で、様々な植物ウイルスに対して抵抗性を有する植物をスクリーニングすることが可能な、スクリーニングキットを提供することができる
本実施の形態に係るトバモウイルス抵抗性植物のスクリーニングキットは、BTRポリペプチドと特異的に結合する抗体や、btrポリヌクレオチドと特異的に結合するプローブ以外に、上述したトバモウイルス抵抗性植物のスクリーニング方法を実行するために必要とされる試薬などを備えていることが好ましい。例えば、上記抗体及び/又は上記プローブと、スクリーニングされる植物組織とを混合する際に用いる緩衝液を備えてもよく、上記抗体及び/又は上記プローブを安定に保持するための試薬や緩衝液を備えてもよい。
(BTRポリペプチドと特異的に結合する抗体)
ここで、BTRポリペプチドと特異的に結合する抗体について説明する。BTRポリペプチドと特異的に結合する抗体は、本実施の形態に係るスクリーニングキットに包含するのみでなく、種々の利用が可能である。例えば、上述の本発明の一実施形態に係るトバモウイルス抵抗性植物の製造方法により製造した植物から、トバモウイルス増殖抑制活性が昂進した植物を選抜するときや、製造したトバモウイルス抵抗性植物体内における、BTRポリペプチドの蓄積又はbtrポリヌクレオチドの発現の確認にも利用可能である。
BTRポリペプチドと特異的に結合する抗体としては、BTRポリペプチドと特異的に結合し得るものであれば限定されない。例えば、BTRポリペプチドに対するポリクローナル抗体等でもよいが、BTRポリペプチドに対するモノクローナル抗体であることが好ましい。モノクローナル抗体は、性質が均一で供給しやすい、ハイブリドーマとして半永久的に保存ができるなどの利点を有する。
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgG、IgM及びこれらのFabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fcフラグメント)を意味し、例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体及び抗イディオタイプ抗体が挙げられるがこれらに限定されない。
BTRポリペプチドに特異的な抗体の製造方法としては、上述のBTRポリペプチドの生産方法によって得たBTRポリペプチドを抗原として、種々の公知の方法を好適に用いることができる。
例えば、モノクローナル抗体であれば、ハイブリドーマ法(Kohler, G. and Milstein, C., Nature, 1975 256, 495‐497を参照)、トリオーマ法、ヒトB‐細胞ハイブリドーマ法(Kozbor, Immunology Today, 1983, 4, 72を参照)及びEBV−ハイブリドーマ法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R Liss, Inc., 1985, 77‐96を参照)等を用いることができる。
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
〔実施例1:BTR1の同定〕
プラス鎖RNAウイルスのゲノムRNAの5’及び3’末端領域はウイルスRNAの翻訳及び複製に重要な役割を果たしている。本発明者らは、本実施例において、トバモウイルスの増殖制御に関わる宿主因子を同定するため、これら末端領域と結合する植物細胞由来因子の同定を試みた。
より具体的には、ToMVのゲノムRNAのうち5’末端又は3’末端の領域を含むRNAに結合するタンパク質を、シロイヌナズナの細胞抽出液から得て、これを同定した。
(ストレプトタグ付加RNAプローブの合成)
本実施例では、ToMVのゲノムRNAに結合するタンパク質を得るため、ToMVのゲノムRNAのうち5’末端又は3’末端の領域を含むRNAをストレプトタグに結合させたRNAプローブ(以下、「ストレプトタグ付加RNAプローブ」を用いた。
なお、ストレプトタグとは、46塩基のストレプトマイシン結合性のRNAモチーフを意味しており、Bachler, M., Schroeder, R. and von Ahsen, U., RNA, 1999, 5, 1509‐1516に記載の方法により合成した。
ストレプトタグ付加RNAプローブは以下のようにして作製した。
まず、SacI認識部位、ストレプトタグ、SphI認識部位、NotI認識部位、MluI認識部位、XbaI認識部位を、この順で有するDNA断片を合成した。
次に、pBluescript II SK(+)(TOYOBO社製、GenBankのアクセッション番号X52328)のSacI、XbaI認識部位に、上記DNA断片を挿入して、ベクター(pStM)を作製した。
次に、ToMVゲノムRNA(6384塩基、GenBankのアクセッション番号X02144)のうち、1〜510位の領域、6166〜6384位の領域のRNAに対応する塩基配列を有するDNAを、それぞれpStMのSphI、MluI認識部位に挿入してプラスミドを作製した。また、比較のため、764〜1004位の領域のRNAに対応する塩基配列を有するDNAを用いて同様の操作を行なった。上記1〜510位の領域、764〜1004位の領域、6166〜6384位の領域のRNAに対応する塩基配列を有するDNAに由来するプラスミドを、それぞれpL5‐5、pLR1、pL3‐2とする。なお、「RNAに対応する塩基配列を有するDNA」とは、当該RNAの塩基配列のU(ウラシル)をT(チミン)に置換した以外は、当該塩基配列と全く同じ塩基配列を有するDNAを意図する。
次に、pL5‐5をEcoRIで直鎖化した。また、pLR1及びpL3‐2をMluIで直鎖化した。
次に、それぞれのプラスミドを直鎖化したDNAの転写を、T3 RNAポリメラーゼを用いて行なった。これにより、ToMVゲノムの1〜277位、764〜1004位又は6166〜6384位の領域を含み、5’末端側にストレプトタグが付加された転写物を得た。
ここで、図1を用いて、本実施例で得たストレプトタグ付加RNAプローブの構造について説明する。図1は、本実施例で得たストレプトタグ付加RNAプローブの構造を模式的に示した図であり、上段はToMVのゲノムRNAの構造を示し、下段がストレプトタグ付加RNAプローブの構造を示している。
図1のストレプトタグ付加RNAプローブの3’末端に示す「Probe RNA」の箇所には、図1において「L5」と示す1〜277位の領域、「LR」と示す764〜1004位の領域、及び「L3」と示す6166〜6384位の領域からなるRNA断片のうちのいずれかが入る。つまり、上述の方法で、いずれかの領域のRNA断片が3’末端に結合したストレプトタグ付加RNAプローブを得ることができるのである。
以下、ToMVゲノムRNAの1〜277位の塩基配列を有するストレプトタグ付加RNAプローブを「L5」と表記し、764〜1004位の塩基配列を有するストレプトタグ付加RNAプローブを「LR」と表記し、6166〜6384位の塩基配列を有するストレプトタグ付加RNAプローブを「L3」と表記する。
(シロイヌナズナの細胞抽出液)
細胞抽出液の材料として、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)エコタイプ Col‐0株(以下、単に「Col‐0」と表記する)を用いた。
Col‐0の細胞抽出液は、以下のようにして調製した。まず、Col‐0のMM2d培養細胞を脱液胞化した後、破砕バッファー(50mM Tris‐HCl (pH7.5)、100mM NaCl、3mM MgCl、2mM DTT、Complete mini)中で破砕した。破砕によって得られた抽出液を30,000×g、15分間遠心して、生体膜成分を除いた上清(S30)を、Col‐0の細胞抽出液として、以後の実験に用いた。なお、MM2d培養細胞は、Menges, M. and Murray, J. A. H., Plant J., 2002, 30, 203−212に記載の方法により得た。また、脱液胞化は、Sonobe, S., J. Plant Res., 1996, 109, 437−448に記載の方法により行なった。
(Col‐0の細胞抽出液とRNAプローブとの混合)
次に、Col‐0の細胞抽出液と、L5、LR、L3のそれぞれのRNAプローブとを以下の条件で混合して、RNA‐タンパク質複合体を形成させた。
まず、タンパク質濃度15mg/mlに調整したCol‐0の細胞抽出液400μlに、上記RNAプローブを添加した。添加したRNAプローブの量は、L5では50μg、L3及びLRでは20μgとした。RNAプローブを添加した後、氷上で20分静置した。その後、ヘパリン(100mg/ml)を8μl添加して、さらに氷上で30分静置した。
(アフィニティー精製)
上記それぞれのRNAプローブから得たRNA‐タンパク質複合体を、ストレプトマイシンを結合したセファロースビーズを用いてアフィニティー精製した。
アフィニティー精製はBachler, M., Schroeder, R. and von Ahsen, U., RNA, 1999, 5, 1509‐1516に記載の方法に従った。具体的には、上記セファロースビーズ0.8mlをカラムに充填して、7mlカラムバッファー(50mM Tris−HCl(pH7.5)、100mM NaCl、3mM MgCl)で平衡化させた後、サンプルを添加した。洗浄は2mlのカラムバッファーで10回行ない、3mlの10μMストレプトマイシンをさらに含有させた上記カラムバッファーで溶出した。溶出サンプルはアセトン沈殿で濃縮後、全量の1/15を8‐12%SDS−PAGEで分離し、銀染色で検出した。操作は全て4℃で行なった。
サンプルとしては、L5、LR、L3のそれぞれのRNAプローブから得たRNA−タンパク質複合体に、それぞれフェノール/クロロホルム抽出を施したものと、施していないものとを用いた。その結果を図2に示す。図2は、本実施例で得たRNA−タンパク質複合体をSDS−PAGEに供した結果を示す図である。図2に示す「P/C」の「+」、「−」は、それぞれ、上記フェノール/クロロホルム抽出を行なったサンプル、行なっていないサンプルを示す。
図2中の黒三角印に示すように、L5から得たRNA−タンパク質複合体では、フェノール/クロロホルム抽出によって消失するタンパク質のバンドが確認された。
(LC‐MS/MS解析)
図2の黒三角印に示したバンドのタンパク質をLC‐MS/MSにより解析した。当該タンパク質としては、SDS‐PAGEゲルより切り出して、トリプシン処理して得たサンプルを用いた。LC‐MS/MSによる解析はアプロサイエンス株式会社の受託解析サービスを利用した。
この結果、LC‐MS/MS解析に供したタンパク質のアミノ酸配列は、GenBankに登録されているLocus tag At5g04430のアミノ酸配列に一致した。以下、このタンパク質を「BTR1」と表記する。Locus tag At5g04430に示されるアミノ酸配列は、シロイヌナズナの有するアミノ酸配列の一つである。
ここで、本実施例で得たBTR1の構造を、図3を用いて説明する。図3は、Locus tag At5g04430の塩基配列から生じる二種類のスプライシングバリアント、及び本実施例のLC‐MS/MS解析の結果を示す図である。なお、当該二種類のスプライシングバリアントにより得られるアミノ酸配列を有するタンパク質を、それぞれ「BTR1S」、「BTR1L」と表記する。つまり、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド及び配列番号3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドはBTR1Sである。また、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド及び配列番号4に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドはBTR1Sである。また、図3中のI、II、IIIは、KHドメインを示している。図3中の下線を引いたアミノ酸は、上述のLC‐MS/MS解析によって検出されたペプチド断片のアミノ酸配列を示している。
図3に示すように、BTR1S及びBTR1Lのアミノ酸配列は、KHドメインII及びIIIの間に存在する21のアミノ酸残基の有無以外は同一である。
図3の下線部に示すように、LC‐MS/MS解析の結果、BTR1Sのアミノ酸配列の一部に一致する11のペプチド断片が検出された。そして、ペプチド断片の一つは、図3に示すように、BTR1Lに特異的な上記21のアミノ酸残基をまたいだアミノ酸配列を有するものであった。そして、上記21のアミノ酸残基を有する領域は検出されなかった。このことから本実施例で得られたBTR1はBTR1Sであるといえる。
〔実施例2:BTR1Sのトバモウイルスに対する結合性の評価〕
本実施例では、大腸菌で発現させたBTR1Sの、ToMVのゲノムRNAに対する結合性をゲルシフトアッセイによって評価した。ToMVのゲノムRNAの塩基配列としては、実施例1と同様にGenBankにアクセッションナンバーX02144で登録されている配列を用いた。
(ToMVの5’末端領域300塩基を有する転写物及びToMVの3’末端領域218塩基を有する転写物の調整)
ToMVの5’末端領域300塩基を有する転写物及びToMVの3’末端領域218塩基を有する転写物を、以下の方法で作製した。
T3 RNAポリメラーゼプロモーターの下流に、ToMVの5’末端領域300塩基に対応する塩基配列を有するDNA、又はToMV3’末端領域218塩基に対応する塩基配列を有するDNAを連結した。さらに、それぞれの3’末端にMluI認識部位を結合させて、cDNAを合成した。次に、当該cDNAを、pCR‐Blant II‐TOPO(Invitrogen社製)を用いてクローニングした。以下、ToMVの5’末端領域300塩基を有する転写物を「ToMV5’」、ToMV3’末端領域218塩基を有する転写物を「ToMV3’」と表記する。
クローニングにより得られたcDNAを、MluIで直鎖化した後、32P CTP存在下でAmpliScribe T3 Transcription kit (Epicentre社製)を用いて転写を行なった。
また、ゲルシフトアッセイの比較に用いるため、ホタルルシフェラーゼ遺伝子の5’末端領域318塩基を有する転写物を、pSP‐luc+vector(Promega社製)をCfr10Iで直鎖化して、32P CTP存在下でSP6 RNAポリメラーゼを用いて転写させることで得た。以下、ホタルルシフェラーゼ遺伝子の5’末端領域318塩基を有する転写物を「luc5’」と表記する。
(大腸菌によるBTR1Sの合成)
ヒスチジンタグをN末端に融合したBTR1Sを、pDEST‐Hisベクター(Tsunoda et al.,2005)を用いて、大腸菌(BL21(DE3)、Novagen社製)において発現させた。
次に、His Select Nickel affinity gel (Sigma社製)を用いて精製して、BTR1Sを得た。
(ゲルシフトアッセイ)
20μlの反応液(50mM Tris‐HCl (pH7.5)、100mM NaCl、3mM MgCl、2mM DTT、100mM イミダゾール、5% Glycerol、2mg/mlヘパリン)に、上述の大腸菌に発現させたBTR1Sを終濃度0、200、400、600nMとなるように添加した。次に、30℃で10分静置後、32P標識したToMV5’、ToMV3’又はluc5’(0.1pmol/μl)を1μl、及び2.5μlのGlycerol‐BPB液(50% Glycerol、0.05% ブロムフェノールブルー)を加えた。
次に、4%TBEゲルで100V、1.5〜2時間電気泳動した。32P−RNAの検出はBAS−2500(Fujifilm)で行なった。
また、32P標識したToMV5’と、非標識のToMV5’、ToMV3’又はluc5’とを上記反応液に混合して競合実験を行なった。競合実験では、BTR1Sの終濃度を600nM、32P標識したToMV5’の混合量を5nMとして、非標識のToMV5’、ToMV3’又はluc5’を1、3、10pmolとした。これら非標識の転写物の混合量は、混合した32P標識したToMV5’の10倍、30倍、100倍のモル数となる。次に、4% TBEゲルで100V、1.5〜2時間電気泳動した。32P−RNAの検出はBAS−2500(Fujifilm)で行なった。
これらの結果を図4に示す。図4は、本実施例におけるゲルシフトアッセイの結果を示す図であり、(a)は、32P標識したToMV5’、ToMV3’又はluc5’を用いた、BTR1Sに対する結合性を検討した結果を示し、(b)は、32P標識したToMV5’と、非標識の、ToMV5’、ToMV3’又はluc5’とを用いた、BTR1Sに対する結合性を検討した結果を示す図である。また、図4において、「F」を付した領域はタンパク質と結合していないRNAを示すバンドが現われる大よその領域を示し、「C」を付した領域は、RNA及びタンパク質が結合した複合体を示すバンドが現われる大よその領域を示す。
図4(a)に示すように、32P標識したToMV5’でのみ、「C」の領域にバンドが確認された。また、図4(b)に示すように、非標識のToMV5’のみが、32P標識したToMV5’に対して競合的に機能して、BRT1Sに結合することが確認された。このことから、BTR1Sは、ToMV RNAの5’末端領域に特異的に結合することが確認された。
〔実施例3:BTR1のウイルス増殖への影響〕
植物体内における、BTR1のウイルス増殖に対する関与を、BTR1のノックアウト株及びBTR1Sを過剰発現させた株を用いて確認した。
(BTR1ノックアウト株の作製)
シロイヌナズナのBTR1ノックアウト株は、Arabidopsis Biological Resource Centre(ABRC)のT−DNAタグラインより入手した(SALK_007924)。以下このBTR1ノックアウト株を、単に「SALK_007924」と表記する。SALK_007924は、Locus tag At5g04430の位置にT‐DNAが挿入されている。これにより、BTR1がノックアウトされている。
なお、ABRCより入手した株は、ホモ個体及びヘテロ個体の混在状態である。よって、ホモ個体を同定するために、プライマーLP(5’‐ACGCTTAACCACCAAATATC‐3’:配列番号5)、プライマーRP(5’‐ATCCAGCATCTACACTTGAC‐3’:配列番号6)、プライマーLB(5’‐CGTGGACCGCTTGCTGCAACT‐3’:配列番号7)を用いたゲノミックPCRに、SALK_007924を供することで確認した。プライマーLP、RP、LBは次のようにして設計したものである。つまり、シロイヌナズナのゲノム配列情報を元に、T−DNAの挿入部位を中心として、前後約400bp(計約800bp)離れた部位に相同なプライマーを作製して、さらに、これらのプライマーと、T−DNA挿入領域内のプライマーを設計した。
なお、シロイヌナズナゲノムDNAは、以下の方法に従い取得した。播種後約3週間のロゼット葉1〜2枚に、DNA抽出バッファー(200mM Tris‐HCl(pH7.5)、250mM NaCl、25mM EDTA、0.5%(wt/vol)SDS)を加え、Tissue Lyser(Qiagen社製)を用いて葉を破砕した。15,000×g、室温、5分間の遠心処理により得られた上清から、イソプロパノール沈殿により全DNAを回収した。
(BTR1過剰発現株の作製)
シロイヌナズナのBTR1過剰発現株は以下のようにして作製した。植物材料としては、シロイヌナズナの野生株であるCol‐0を用いた。
まず、XbaI、SacI認識部位を利用して、pBI121(GenBank アクセッションナンバー AF485783)の35Sプロモータの下流に、配列番号3又は配列番号4からなるポリヌクレオチドが挿入されたプラスミドを構築した。次に、アグロバクテリウム・チュメファシエンス(Agrobacterium tumefacience)を用いて、シロイヌナズナに当該プラスミドを導入することで、シロイヌナズナの形質転換を行なった。形質転換はFloral dip法(Clough, S. J. and Bent, A. F., Plant J., 1998, 16, 735‐743を参照)により行なった。このようにして得られたシロイヌナズナのBTR1過剰発現株のうち、BTR1Sの過剰発現株を、以下「35S:BTR1S」と表記し、BTR1Lの過剰発現株を、以下「35S:BTR1L」と表記する。
(BTR1とウイルス増殖との関係に関する検討)
ウイルス増殖の測定には、各形質転換植物を、カナマイシン選抜することで得たT2世代のものを用いた。
播種して4〜5週間後の各形質転換植物のロゼット葉に、ToMV(0.1mg/ml)又はCMV RNA(0.1mg/ml)を接種した。ToMVを接種したSALK_007924では接種から7日後に接種葉を採取した。ToMVを接種した35S:BTR1S及び35S:BTR1Lでは接種から4日後に接種葉を採取した。また、キュウリモザイクウイルス(以下、「CMV」と表記する)を接種した各形質転換植物では接種から2日目に、接種葉を採取した。
採取した接種葉を、次のように調整してSDS‐PAGEに供した。まず、葉の湿重量の5倍量のゲルサンプル緩衝液(50mM Tris‐HCl(pH6.8)、2% SDS、5% β-メルカプトエタノール、10%グリセロール、0.02% BPB)を加えて破砕した後、100℃、3分間加熱したものをSDS−PAGEサンプルとした。
SALK_007924におけるToMVの外被タンパク質(以下、「CP」と表記する)の蓄積を、クマシーブリリアントブルー染色によって検出し、BTR1過剰発現株(35S:BTR1S及び35S:BTR1L)におけるToMVのCPの蓄積や、SALK_007924及びBTR1過剰発現株におけるCMVのCPの蓄積はウエスタンブロット法によって検出した。
また、35S:BTR1S及び35S:BTR1Lから採取した接種葉では、ウエスタンブロット法によって、それぞれBTR1S及びBTR1Lの発現を検出した。BTR1特異的抗体は、上述のヒスチジンタグをN末端に融合させたBTR1Sを抗原として、シバヤギ株式会社の受託サービスを利用して作製した。
この結果を図5に示す。図5は、BTR1とウイルス増殖との関係に関する検討した結果を示す図であり、(a)はCol‐0及びSALK_007924の葉に含まれるウイルスのCPを検出した結果を示し、(b)はCol‐0及び35S:BTR1Sの葉に含まれるウイルスのCPを検出した結果、及びそれぞれの葉におけるBTR1Sの発現を検出した結果を示し、(c)はCol‐0及び35S:BTR1Lの葉に含まれるToMVのCPを検出した結果、及びそれぞれの葉におけるBTR1Lの発現を検出した結果を示す。
図5(a)に示すように、SALK_007924におけるToMVの増殖は、野生型Col‐0に比べて昂進していた。また、図5(b)に示すように、35S:BTR1Sでは、ToMVの増殖が低下することが確認できた。また、このようなウイルスの増殖の低下は、CMVについては確認されなかった。また、図5(c)に示すように、35S:BTR1Lでも、ToMVの増殖を抑制する効果が得られることが確認できた。
(BTR1の発現による植物体形成への影響)
BTR1の発現が、シロイヌナズナの植物体の形成に与える影響について確認した。
まず、Col‐0、SALK_007924、35S:BTR1S及び35S:BTR1Lのそれぞれに、ToMV(0.1mg/ml)を播種した。次に、23℃日長16時間の長日条件下で4週間育成した。そして、育成後の植物体を観察した。この結果を図6に示す。図6は、ToMVを播種して育成した後のシロイヌナズナを観察した結果を示す図である。
図6に示すように、BTR1S及びBTR1Lの過剰発現は、植物の生育に目立った影響を及ぼさなかった。
以上の結果から、BTR1はToMV RNAの5’末端領域に結合して、ToMVの増殖を特異的に阻害することが示された。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以上のように、本発明によれば、植物ウイルス抵抗性が賦与された植物体を作製することができるので、種々の作物において植物ウイルスを防除し得る。したがって、本発明は、育種分野に用いることができるだけではなく、植物ウイルスが感染する植物を用いる農業や園芸等の産業分野に適用することも可能である。
実施例で作製したストレプトタグ付加RNAプローブの構造を模式的に示した図である。 実施例において、RNA−タンパク質複合体をSDS−PAGEに供した結果を示す図である。 Locus tag At5g04430の塩基配列から生じる二種類のスプライシングバリアント、及び本実施例のLC−MS/MS解析の結果を示す図である。 実施例において、ゲルシフトアッセイを行なった結果を示す図であり、(a)は、32P標識したToMV5’、ToMV3’又はluc5’を用いた、BTR1Sに対する結合性を検討した結果を示し、(b)は、32P標識したToMV5’と、非標識の、ToMV5’、ToMV3’又はluc5’とを用いた、BTR1Sに対する結合性を検討した結果を示す。 実施例において、BTR1とウイルス増殖との関係に関する検討した結果を示す図であり、(a)はCol−0及びSALK_007924の葉に含まれるウイルスのCPを検出した結果を示し、(b)はCol−0及び35S:BTR1Sの葉に含まれるウイルスのCPを検出した結果、及びそれぞれの葉におけるBTR1Sの発現を検出した結果を示し、(c)はCol−0及び35S:BTR1Lの葉に含まれるToMVのCPを検出した結果、及びそれぞれの葉におけるBTR1Lの発現を検出した結果を示す。 実施例において、ToMVを播種して育成した後のシロイヌナズナを観察した結果を示す図である。

Claims (11)

  1. 植物生体内において、下記ポリペプチド(a)又は(b)による、トマトモザイクウイルスの増殖抑制活性を昂進させる工程、および
    トマトモザイクウイルスの増殖抑制活性が昂進した植物を選抜する工程
    を含むことを特徴とするトマトモザイクウイルス抵抗性植物の製造方法
    (a)配列番号1もしくは2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (b)配列番号1もしくは2に示されるアミノ酸配列に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつトマトモザイクウイルス増殖抑制活性を有するポリペプチド。
  2. 上記選抜する工程が、植物体内の、上記ポリペプチド(a)又は(b)の蓄積量を測定することを含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 上記昂進させる工程は、植物体内において、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入することにより行うことを特徴とする請求項1または2記載の製造方法
  4. 上記ポリヌクレオチドは、以下の(c)、(d)又は(e)に記載のポリヌクレオチドであることを特徴とする請求項3に記載の製造方法
    (c)配列番号3もしくは4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (d)配列番号3もしくは4に示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、挿入、置換、もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (e)配列番号3もしくは4に示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
  5. 上記選抜する工程が、上記ポリヌクレオチド(c)、(d)又は(e)の発現量を測定することを含む、請求項4に記載の製造方法。
  6. 下記ポリヌクレオチドを備えていることを特徴とするトマトモザイクウイルス抵抗性植物を製造するためのキット
    (c)配列番号3もしくは4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
    (d)配列番号3もしくは4に示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、挿入、置換、もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド
    (e)配列番号3もしくは4に示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
  7. 植物体内の、下記ポリペプチド(a)又は(b)の蓄積量及び下記ポリヌクレオチド(c)、(d)又は(e)の発現量のうち、少なくとも一方の量を測定する工程を含むことを特徴とするトマトモザイクウイルス抵抗性植物のスクリーニング方法
    (a)配列番号1もしくは2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (b)配列番号1もしくは2に示されるアミノ酸配列に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつトマトモザイクウイルス増殖抑制活性を有するポリペプチド;
    (c)配列番号3もしくは4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
    (d)配列番号3もしくは4に示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、挿入、置換、もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド
    (e)配列番号3もしくは4に示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
  8. 野生株と比較して、上記植物体内における上記ポリペプチドの蓄積量または上記ポリヌクレオチドの発現量が高い植物体をスクリーニングする工程をさらに含む、請求項7に記載のスクリーニング方法
  9. 下記ポリペプチド(a)又は(b)と特徴的に結合する抗体及び下記ポリヌクレオチド(c)、(d)又は(e)と特異的に結合するプローブのうち、少なくとも一方を備えることを特徴とするトマトモザイクウイルス抵抗性植物のスクリーニングキット
    (a)配列番号1もしくは2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (b)配列番号1もしくは2に示されるアミノ酸配列に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつトマトモザイクウイルス増殖抑制活性を有するポリペプチド;
    (c)配列番号3もしくは4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
    (d)配列番号3もしくは4に示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、挿入、置換、もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド
    (e)配列番号3もしくは4に示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
  10. 植物体内において、下記ポリペプチド(a)又は(b)による、トマトモザイクウイルスの増殖抑制活性を昂進させる工程を含むことを特徴とするトマトモザイクウイルス抵抗性植物の製造方法:
    (a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (b)配列番号2に示されるアミノ酸配列に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつトマトモザイクウイルス増殖抑制活性を有するポリペプチド。
  11. 請求項10に記載の製造方法により製造されることを特徴とするトマトモザイクウイルス抵抗性植物。
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