JP5141213B2 - 光学デバイス、波長可変フィルタモジュール、および光スペクトラムアナライザ - Google Patents
光学デバイス、波長可変フィルタモジュール、および光スペクトラムアナライザ Download PDFInfo
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Description
例えば、特許文献1にかかる波長可変フィルタは、板状の可動板(可動板)がその厚さ方向に変位可能に設けられた可動基板と、可動板の変位を許容しつつ可動基板に対向する固定基板とが互いに接合されている。そして、可動板の固定基板側の面上と、固定基板の可動板に対向する面上とには、それぞれ反射膜が形成されている。この1対の反射膜間に形成された光学ギャップに光が入射されると、干渉作用により、光学ギャップの長さに応じた波長の光のみが射出(波長分離)される。
しかしながら、かかる波長可変フィルタにあっては、光学ギャップのための凹部の形成にエッチングを用いているため、当該凹部を所望の深さや平滑性を高精度に形成することが難しい。そのため、波長可変フィルタの波長分離範囲のバラツキや、波長可変フィルタの高コスト化を招いていた。
本発明の光学デバイスは、第1の光反射部を備える可動板が前記可動板の厚さ方向に変位可能に設けられた第1の基体と、
凹部を有し、前記凹部の底面に、前記第1の光反射部に光学ギャップを隔てて対向する第2の光反射部が設けられた第2の基体と、
前記可動板を前記可動板の厚さ方向に変位させる駆動手段とを有し、
前記第2の基体は、前記凹部の底壁を構成する第1の部材と、平面視にて前記第1の部材に対して外側に位置し前記凹部の側壁を構成する第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合する接合膜とを有しており、
前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含む原子構造を有するSi骨格と、前記Si骨格に結合する脱離基とを含むことを特徴とする。
これにより、低コスト化を図りつつ、寸法精度を優れたものとし、長期にわたり高精度に波長分離を行うことができる。
本発明の光学デバイスでは、前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合しているのが好ましい。
これにより、Si骨格は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、Si骨格の特性が顕在化し、接合膜の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基は、接合膜の接着性をより高度なものとすることができる。
アルキル基は化学的な安定性が高いため、脱離基としてアルキル基を含む接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
本発明の光学デバイスでは、前記接合膜は、プラズマ重合により形成されたものであることが好ましい。
これにより、接合膜は緻密で均質なものとなる。そして、第1の部材と第2の部材とを特に強固に接合し得るものとなる。さらに、プラズマ重合法で作製された接合膜は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、光学デバイスの製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
これにより、接合膜自体が優れた機械的特性を有するものとなる。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示す接合膜が得られる。したがって、この接合膜により、第1の部材と第2の部材とをより強固に接合することができる。また、非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行える接合膜となる。さらに、接合膜が優れた撥液性を示す。
これにより、接着性に特に優れる接合膜が得られる。
これにより、接合膜に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができる。
凹部を有し、前記凹部の底面に、前記第1の光反射部に光学ギャップを隔てて対向する第2の光反射部が設けられた第2の基体と、
前記可動板を前記可動板の厚さ方向に変位させる駆動手段とを有し、
前記第2の基体は、前記凹部の底壁を構成する第1の部材と、平面視にて前記第1の部材に対して外側に位置し前記凹部の側壁を構成する第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合する接合膜とを有しており、
前記接合膜は、金属原子、前記金属原子に結合する酸素原子、および前記金属原子または前記酸素原子に結合する脱離基、を含み、
前記接合膜は、少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合していることを特徴とする。
これにより、接合膜は、金属酸化物に脱離基が結合したものとなり、変形し難い強固な膜となる。このような接合膜を用いた光学デバイスによっても、設計自由度を高めるとともに低コスト化を図りつつ、寸法精度を優れたものとし、長期にわたり高精度に波長分離を行うことができる。
凹部を有し、前記凹部の底面に、前記第1の光反射部に光学ギャップを隔てて対向する第2の光反射部が設けられた第2の基体と、
前記可動板を前記可動板の厚さ方向に変位させる駆動手段とを有し、
前記第2の基体は、前記凹部の底壁を構成する第1の部材と、平面視にて前記第1の部材に対して外側に位置し前記凹部の側壁を構成する第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合する接合膜とを有しており、
前記接合膜は、金属原子、有機成分で構成される脱離基、を含み、
前記接合膜は、少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合していることを特徴とする。
これにより、接合膜は、金属原子と有機成分で構成される脱離基とを含むものとなり、変形し難い強固な膜となる。このような接合膜を用いた光学デバイスによっても、設計自由度を高めるとともに低コスト化を図りつつ、寸法精度を優れたものとし、長期にわたり高精度に波長分離を行うことができる。
これにより、静電ギャップを高精度なものとしつつ、可動板を静電力により変位させることができる。また、電極と接合膜とを同一工程にて形成することができるため、光学デバイスの低コスト化を図ることができる。
これにより、静電ギャップを高精度なものとしつつ、可動板を静電力により変位させることができる。
本発明の光学デバイスでは、前記第1の光反射部と前記第2の光反射部との間で光反射を繰り返し干渉を生じさせて、前記光学ギャップに応じた波長の光を外部へ出射し得るように構成されているのが好ましい。
これにより、低コストで、長期にわたり高精度に波長分離を行うことができる波長可変フィルタモジュールを提供することが可能となる。
本発明の光スペクトラムアナライザは、本発明の光学デバイスを備えることを特徴とする。
これにより、長期にわたり高精度に波長分析を行うことができる光スペクトラムアナライザを提供することが可能となる。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
(光学デバイス(波長可変フィルタ))
図1は、本発明の光学デバイス(波長可変フィルタ)の実施形態を示す平面図、図2は、図1におけるA−A線断面図、図3は、図1に示す光学デバイスに備えられた第2の基体を説明するための図、図4は、図1に示す光学デバイスに備えられた接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図5は、図1に示す光学デバイスに備えられた接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。なお、以下の説明では、図1中および図3中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言い、図2中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
このような光学デバイス1は、互いに接合された第1の基体(第1の構造体)2および第2の基体(第2の構造体)3を有し、これらの間に、光を干渉させるためのギャップ、すなわち光学ギャップG1が形成されている。そして、この光学ギャップG1に光Lが入射すると、干渉作用により、光学ギャップG1の大きさに応じた波長の光だけが射出する。
第1の基体2は、光透過性を有している。そして、第1の基体2は、光学ギャップG1を可変とするための可動板(板状の可動部)21と、支持部22と、可動板21を支持部22に対し上下方向(すなわち可動板21の厚さ方向)に変位可能とするようにこれらを連結する複数の連結部23とを有している。これらは、第1の基体2に異形状の開口部24が形成されることにより、一体的に形成されている。可動板21と支持部22と連結部23とが一体的に形成されていると、第2の基体3に対する可動板21の位置をより安定させることができる。
また、第1の基体2の構成材料としてシリコン材料またはガラスを用いる場合、これらの材料は、加工性に優れるため、寸法精度の高い第1の基体2が得られる。また、第1の基体2の構成材料としてガラスを用いた場合、可視光域での波長分離を行うことができる。一方、第1の基体2の構成材料としてシリコンを用いた場合、赤外域での波長分離を行うことができる。また、特にシリコンは機械的特性に優れ弾性変形を繰り返しても疲労が生じないため、第1の基体2の構成材料としてシリコンを用いた場合、長期にわたり、可動板21を安定して変位させ、より高精度な波長分離を行うことができる。
可動板21の厚さ(平均)は、構成材料、用途等に応じて適宜選択され、特に限定されないが、1〜500μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましい。
第1の反射膜25は、図2に示すように光学デバイス1の下方から後述の光学ギャップG1に入射した光を、後述する第2の光反射部である第2の反射膜34との間で複数回にわたって反射させるためのものである。
第1の反射膜(誘電体多層膜)25や第1の反射防止膜26は、必要な光学特性を得られるものであれば特に限定されないが、誘電体多層膜で構成されているものが好ましい。すなわち、第1の反射膜(誘電体多層膜)25や第1の反射防止膜26は、それぞれ、高屈折率層と低屈折率層とが交互に複数積層されてなるものであるのが好ましい。これにより、第1の反射膜25と第2の反射膜34との間での光の干渉時における光の損失を防止して、光学特性を向上させることができる。
第1の反射膜25および第1の反射防止膜26を構成する高屈折率層および低屈折率層の層数、厚さは、必要とする光学特性に応じて設定される。一般に、多層膜により反射膜を構成する場合、その光学特性を得るために必要な層数は12層以上であり、多層膜により反射防止膜を構成する場合、その光学特性に必要な層数は4層程度である。
なお、第1の駆動電極28の形状は、前述したものに限定されない。また、第1の駆動電極28は、周方向にて複数に分割されていてもよい。この場合、分割された複数の電極間で、印加する電圧を異ならせることにより、可動板21の姿勢(平行度)を変化させることができる。
このような第1の駆動電極28の厚さ(平均)は、構成材料、用途等により適宜選択され、特に限定されないが、0.1〜5μm程度であるのが好ましい。
複数の連結部23は、前述した可動板21の周囲に周方向に等間隔で設けられている。この連結部23は、弾性(可撓性)を有しており、これにより、可動板21は、第2の基体3に対し略平行に間隔を隔てて、その厚さ方向に(上下に)に変位可能となっている。なお、連結部23の数、位置、形状は、可動板21を支持部22に対し変位可能とするものであれば、前述したものに限定されない。
また、第1の基体2には、前述した引出し電極281に外部からアクセスするための開口部29が設けられている。
第2の基体3には、その一方の面側に、第1の基体2と第2の基体3との間に静電ギャップG2を形成するための第1の凹部31と、第1の凹部31内側で第1の基体2と第2の基体3との間に光学ギャップG1を形成するための第2の凹部32とが形成されている。これにより、可動板21の厚さ方向での変位を許容する空隙を形成しつつ、第2の基体3と第1の基体2とを接合することができる。
このような第1の部材3aは、接合膜41を介して各第2の部材3b1、3b2に接合されている。このように平面視にて互いに隣接する第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2とが接合膜41を介して接合されている。なお、この接合膜41については、後に詳述する。
このような1対の第2の部材3b1、3b2は、接合膜41と同様に構成された接合膜42を介して各第3の部材3c1、3c2に接合されている。なお、この接合膜42の構成は、接合膜41と異なるものであってもよい。
このような第2の基体3(第1の部材3a、第2の部材3b1、3b2、第3の部材3c1、3c2)の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、前述したようなシリコン材料、金属材料、ガラス材料、セラミックス材料、炭素材料、樹脂材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。ただし、第1の部材3aの構成材料については、用いる光の波長に関し光透過性を有する必要がある。また、第1の部材3a、第2の部材3b1、3b2、第3の部材3c1、3c2の構成材料は、同じであっても異なっていてもよい。
これにより、第2の基体3が高温下または低温下にさらされたときに、第2の基体3の層間に生じる応力を低減して、第2の基体3の損傷を防止することができる。
これにより、第1の基体2および第2の基体3が高温下または低温下にさらされたときに、第1の基体2と第2の基体3との間に生じる応力を低減して、第1の基体2または第2の基体3の損傷を防止することができる。
また、第2の基体3の厚さ(平均)は、構成材料、用途等により適宜選択され、特に限定されないが、10〜2000μm程度であるのが好ましく、100〜1000μm程度であるのがより好ましい。
なお、第2の駆動電極33の形状は、前述したものに限定されない。また、第2の駆動電極33は、周方向にて複数に分割されていてもよい。この場合、分割された複数の電極間で、印加する電圧を異ならせることにより、可動板21の姿勢(平行度)を変化させることができる。
第2の駆動電極33の構成材料としては、前述した第1の駆動電極28の構成材料と同様に、導電性を有しているものであれば、特に限定されず、例えば、Au、Cr、Al、Al合金、Ni、Zn、Tiなどの金属等が挙げられる。
このような第1の凹部31内の空間内に、可動板21の駆動のための駆動ギャップとして、静電ギャップG2が形成される。すなわち、第1の駆動電極28と第2の駆動電極33との間に、静電ギャップG2が形成される。
第2の凹部32は、その外形が円形をなし、前述した第1の凹部31とほぼ同心でかつ第1の凹部31および可動板21の外径よりも小さい外径を有している。また、第2の凹部32の底面(第2の基体3の可動板21側の面)上には、ほぼ円形をなす第2の反射膜34が設けられている。
第2の凹部32の底面上に第2の反射膜34が設けられているので、第2の駆動電極33と第1の駆動電極28や可動板21との間の距離に関係なく、第2の凹部32の深さに応じた使用可能波長帯域とすることができる。そのため、様々な使用波長帯域の光学デバイス1を製造しても、駆動電圧を低減することができる。
溝部35および第3の凹部36は、その深さが第1の凹部31の深さとほぼ同等となっており、これらの底面上には、第2の駆動電極33に接続される引出し電極331が設けられている。
また、引出し電極331の厚さ(平均)は、構成材料、用途等により適宜選択され、特に限定されないが、0.1〜5μm程度であるのが好ましい。そして、引出し電極331は、前述した第2の駆動電極33と一体的に形成されているのが好ましい。
第2の反射防止膜37は、図2に示すように光学デバイス1の下方から光学ギャップG1に向け照射された光が第2の基体3の下面と外気との界面で図中下方に反射されるのを防止するためのものである。なお、第1の反射膜25や第1の反射防止膜26の構成は、前述した第2の反射膜34や第2の反射防止膜37の構成と同様である。
ここで、前述した第2の基体3の接合膜41を詳細に説明する。
接合膜41は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含むものである。
そして、接合膜41は、エネルギーを付与したことにより、脱離基がSi骨格から脱離し、接合膜41の表面に発現した接着性によって、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2とを接合している。
そして、この接合膜41にエネルギーが付与されると、図5に示すように、一部の脱離基303がSi骨格301から脱離し、活性手304が生じる。これにより、接合膜41の第1の部材3a側の面41aに接着性が発現する。このようにして接着性が発現した接合膜41により、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2とが接合されている。なお、各第2の部材3b1、3b2に接合膜41を形成し、その接合膜41の第1の部材3a側の面にエネルギー付与により活性手304を生じさせ、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2とを接合してもよい。
また、接合膜41の厚さが極めて薄くかつ均一であるため、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2とを接合膜41を介して接合して得られた接合体が第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2とを一体で形成したものに近い機械的特性を発揮することができる。
また、接合プロセスにおける雰囲気が減圧雰囲気に限られないため、光学デバイス1の低コスト化を図ることができる。
また、接合膜41を用いて第1の第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2とを接合したことにより、接着剤がはみ出すといったエポキシ系接着剤などの接着剤のような問題が生じることがない。したがって、はみ出した接着剤が光学ギャップG1や静電ギャップG2に及んでしまうことなく、光学デバイス1の製造において歩留まりを向上させることができる。また、はみ出した接着剤を除去する手間も必要ないため、光学デバイス1の生産効率を向上させることもできる。
なお、接合膜41中のSi骨格301の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格301は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、前述したSi骨格301の特性が顕在化し、接合膜41の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
このような特徴を有する接合膜41の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合を含む重合物等が挙げられる。
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。
すなわち、接合膜41の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜41の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、光学デバイス1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
このような接合膜41は、いかなる方法で作製されたものでもよく、プラズマ重合法、CVD法、PVD法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により作製した膜にエネルギーを付与することによって作製することができるが、これらの中でも、エネルギー付与前の膜として、後述するようなプラズマ重合法により作製された膜を用いるのが好ましい。プラズマ重合法によれば、最終的に、緻密で均質な接合膜41を効率よく作製することができる。これにより、プラズマ重合法で作製された接合膜41は、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2とを特に強固に接合し得るものとなる。さらに、プラズマ重合法で作製され、エネルギーが付与される前の接合膜41は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持することができる。このため、光学デバイス1の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
図示しない通電回路により第1の駆動電極28と第2の駆動電極33との間に電圧が印加されると、第1の駆動電極28と第2の駆動電極33とが互いに逆極性に帯電して、両者の間にクーロン力(静電引力)が発生する。このとき、図示しない検出回路が可動板21の変位状態を検出し、その検出結果に基づき、図示しない制御手段が通電回路の駆動を制御する。
一方、図2に示すように、光学デバイス1の下方から光学ギャップG1に向け光Lが照射されると、光Lは、第2の反射防止膜37、第2の基体3、第2の反射膜34を透過して、光学ギャップG1に入射する。このとき、この光Lは、第2の反射防止膜37により、ほとんど損失せずに光学ギャップG1に入射する。
前述したように第1の反射膜25と第2の反射膜34との間で光が反射を繰り返す過程において、第1の反射膜25と第2の反射膜34との間の光学ギャップG1の大きさに対応する干渉条件を満たさない波長の光は急激に減衰し、この干渉条件を満たした波長の光だけが残って最終的に光学デバイス1から出射する。したがって、第1の駆動電極28と第2の駆動電極33との間に印加される電圧を変更することにより、光学ギャップG1を変更(すなわち干渉条件を変更)すれば、光学デバイス1を透過する光の波長を変更することができる。
なお、本実施形態では、光学ギャップG1に入射した光を光学デバイス1の上方へ出射したが、光学ギャップG1に入射した光を光学デバイス1の下方へ出射してもよい。
また、本実施形態では、光学デバイス1に対し、その下方から光を入射したが、上方から光を入射してもよい。
次に、光学デバイス1の製造方法の一例を図6ないし図12に基づいて説明する。
図6〜図10は、図1および図2に示す光学デバイスの製造工程を説明するための図、図11は、図8(b)に示す接合膜の作製に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図、図12は、図1および図2に示す光学デバイスの他の構成例を示す断面図である。なお、図6〜図10は、図1のA−A線断面に対応する断面を示している。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図6〜12中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
特に、工程[A]は、前述したような接合膜41を介して第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2とを接合する工程を含む。
−A1−
まず、図6(a)に示すように、基板(第2の基板)を加工して得られた1対の第2の部材3b1、3b2を用意する。
各第2の部材3b1、3b2を形成するための基板としては、厚さが均一で、たわみや傷のないものが好適に用いられる。かかる基板の構成材料としては、各第2の部材3b1、3b2の説明で述べたものを用いることができる。
次に、図6(b)に示すように、各第2の部材3b1、3b2の接合面(第1の部材3aに対向する面)上に接合膜41を形成する。
接合膜41(エネルギー付与前の接合膜41)の形成方法としては、例えばプラズマ重合法を用いることができる。プラズマ重合法は、例えば、強電界中に、原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給することにより、原料ガス中の分子を重合させ、重合物を各第2の部材3b1、3b2上に堆積させ、膜を得る方法である。
かかるプラズマ重合法には、例えば、図11に示すようなプラズマ重合装置100を用いる。
図11に示すプラズマ重合装置100は、チャンバー101と、各第2の部材3b1、、3b2を支持する第1の電極130と、第2の電極140と、各電極130、140間に高周波電圧を印加する電源回路180と、チャンバー101内にガスを供給するガス供給部190と、チャンバー101内のガスを排気する排気ポンプ170とを備えている。これらの各部のうち、第1の電極130および第2の電極140がチャンバー101内に設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
図11に示すチャンバー101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
なお、本実施形態では、チャンバー101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線102を介して電気的に接地されている。
この第1の電極130は、チャンバー101の側壁の内壁面に、鉛直方向に沿って設けられており、これにより、第1の電極130は、チャンバー101を介して電気的に接地されている。なお、第1の電極130は、図11に示すように、チャンバー本体と同心状に設けられている。
この静電チャック139により、図11に示すように、第2の部材3b1、3b2を鉛直方向に沿って支持することができる。また、第2の部材3b1、3b2に多少の反りがあっても、静電チャック139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で各第2の部材3b1、3b2をプラズマ処理に供することができる。
この第2の電極140には、配線184を介して高周波電源182が接続されている。また、配線184の途中には、マッチングボックス(整合器)183が設けられている。これらの配線184、高周波電源182およびマッチングボックス183により、電源回路180が構成されている。
このような電源回路180によれば、第1の電極130は接地されているので、第1の電極130と第2の電極140との間に高周波電圧が印加される。これにより、第1の電極130と第2の電極140との間隙には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
図11に示すガス供給部190は、液状の膜材料(原料液)を貯留する貯液部191と、液状の膜材料を気化してガス状に変化させる気化装置192と、キャリアガスを貯留するガスボンベ193とを有している。また、これらの各部とチャンバー101の供給口103とが、それぞれ配管194で接続されており、ガス状の膜材料(原料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを、供給口103からチャンバー101内に供給するように構成されている。
このような液状の膜材料は、気化装置192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
また、チャンバー101内の供給口103の近傍には、拡散板195が設けられている。
排気ポンプ170は、チャンバー101内を排気するものであり、例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等で構成される。このようにチャンバー101内を排気して減圧することにより、ガスを容易にプラズマ化することができる。また、大気雰囲気との接触による各第2の部材3b1、3b2の汚染・酸化等を防止するとともに、プラズマ処理による反応生成物をチャンバー101内から効果的に除去することができる。
以上説明したように構成されたプラズマ重合装置100を用いて、各第2の部材3b1、3b2上に接合膜41を形成するに際しては、まず、各第2の部材3b1、3b2をプラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納して封止状態とした後、排気ポンプ170の作動により、チャンバー101内を減圧状態とする。
ここで、混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20〜70%程度に設定するのが好ましく、30〜60%程度に設定するのがより好ましい。これにより、重合膜の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
次いで、電源回路180を作動させ、一対の電極130、140間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極130、140間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、重合物が各第2の部材3b1、3b2上に付着・堆積する。これにより、図6(b)に示すように、各第2の部材3b1、3b2上にプラズマ重合膜で構成された接合膜41が形成される。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜41は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜10W/cm2程度であるのが好ましく、0.1〜1W/cm2程度であるのがより好ましい。
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度であるのが好ましく、1〜100sccm程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5〜750sccm程度であるのが好ましく、10〜500sccm程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、接合膜41を得ることができる。
なお、各第2の部材3b1、3b2の上面のうち、第1の部材3aを接合する領域のみに部分的に接合膜41を形成する場合、例えば、この領域に対応する形状の窓部を有するマスクを用い、このマスク上から接合膜41を成膜するようにすればよい。
次に、図6(c)に示すように、各第2の部材3b1、3b2上に形成した接合膜41に対してエネルギーを付与する。
エネルギーが付与されると、接合膜41では、図5に示すように、脱離基303がSi骨格301から脱離する。そして、脱離基303が脱離した後には、接合膜41の表面および内部に活性手304が生じる。これにより、接合膜41の表面に、第1の部材3aとの接着性が発現する。
(I)接合膜41にエネルギー線を照射する場合、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザー光のような光、X線、γ線、電子線、イオンビームのような粒子線等、またはこれらのエネルギー線を組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長150〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図6(c)参照)。かかる紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜41中のSi骨格301が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、Si骨格301と脱離基303との間の結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜41の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜41に接着性を発現させることができる。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、160〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜41の面積に応じて異なるが、1mW/cm2〜1W/cm2程度であるのが好ましく、5mW/cm2〜50mW/cm2程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜41との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
また、接合膜41に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、特に大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜41から脱離する脱離基303の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基303の脱離量を調整することにより、接合膜41と第1の部材3aとの間の接合強度を容易に制御することができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
また、加熱時間は、接合膜41の分子結合を切断し得る程度の時間であればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
なお、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2との互いの熱膨張率がほぼ等しい場合には、上記のような条件で接合膜41を加熱すればよいが、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2の熱膨張率が互いに異なっている場合には、後に詳述するが、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
この場合、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2とが互いに近づく方向に、0.2〜10MPa程度の圧力で圧縮するのが好ましく、1〜5MPa程度の圧力で圧縮するのがより好ましい。これにより、単に圧縮するのみで、接合膜41に対して適度なエネルギーを簡単に付与することができ、接合膜41に十分な接着性が発現する。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2の各構成材料によっては、第1の部材3aや各第2の部材3b1、3b2に損傷等が生じるおそれがある。
なお、仮接合体の状態では、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2との間が接合されていないので、これらの相対的な位置を容易に調整する(ずらす)ことができる。したがって、一旦、仮接合体を得た後、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2との相対位置を微調整することにより、最終的に得られる光学デバイス1の組み立て精度(寸法精度)を確実に高めることができる。
なお、接合膜41の全面にエネルギーを付与するようにしてもよいが、一部の領域のみに付与するようにしてもよい。このようにすれば、接合膜41の接着性が発現する領域を制御することができ、この領域の面積・形状等を適宜調整することによって、接合界面に発生する応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2の熱膨張率差が大きい場合でも、これらを確実に接合することができる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜41に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成することができる。
次に、光透過性を有する第1の基板を加工して得られた第1の部材3aを用意し、図6(d)に示すように、接着性が発現してなる接合膜41と第1の部材3aとが密着するように、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2とを貼り合わせる。その結果、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2とが、接合膜41を介して接合(接着)される。また、この接合により、第2の凹部32が形成される。
ここで、上記のようにして接合される第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2の各熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましい。第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2の熱膨張率がほぼ等しければ、これらを貼り合せた際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られる光学デバイス1において、剥離等の不具合が発生するのを確実に防止することができる。
すなわち、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
なお、各第2の部材3b1、3b2の接合膜41を成膜する領域には、あらかじめ、接合膜41との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、各第2の部材3b1、3b2と接合膜41との間の接合強度をより高めることができ、最終的に得られる光学デバイス1において、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2との接合強度を高めることができる。
なお、表面処理を施す各第2の部材3b1、3b2が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、各第2の部材3b1、3b2の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜41の接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる各第2の部材3b1、3b2の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
さらに、各第2の部材3b1、3b2のうちの接合膜41を成膜する領域に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、各第2の部材3b1、3b2と接合膜41との接合強度を十分に高くすることができる。
また、このようなものを有する表面が得られるように、上述したような各種表面処理を適宜選択して行うのが好ましい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜41との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層を介して各第2の部材3b1、3b2上に接合膜41を成膜することにより、各第2の部材3b1、3b2と接合膜41との接合強度を高め、信頼性の高い接合体、すなわち光学デバイス1を得ることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、各第2の部材3b1、3b2と接合膜41との間の接合強度を特に高めることができる。
なお、この表面処理には、各第2の部材3b1、3b2に対して施す前述したような表面処理と同様の処理を適用することができる。
かかる中間層の構成材料には、前述の各第2の部材3b1、3b2に形成する中間層の構成材料と同様のものを用いることができる。
例えば、第1の部材3aのうちの各第2の部材3b1、3b2との接合に供される領域に、水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、接合膜41と第1の部材3aとが接触するように、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2とを貼り合わせたとき、接合膜41の第1の部材3a側の面41aに存在する水酸基と、第1の部材3aの前記領域に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、接合膜41を備える各第2の部材3b1、3b2と第1の部材3aとが接合されると推察される。
なお、前述した工程A3(エネルギー付与工程)で活性化された接合膜41の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、工程A3の終了後、できるだけ早く本工程A4(貼り合わせ工程)に移行するのが好ましい。具体的には、工程A3の終了後、60分以内に本工程A4を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜41の表面が十分な活性状態を維持しているので、本工程A4で第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2(接合膜41の面41a)とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
次に、図6(e)に示すように、基板(第3の基板)を加工して得られた1対の第3の部材3c1、3c2を用意する。そして、図7(a)に示すように、第2の部材3b1、3b2の接合面(第1の部材側の面)上に、接合膜42を形成する。
各第3の部材3c1、3c2を形成するための基板としては、厚さが均一で、たわみや傷のないものが好適に用いられる。かかる基板の構成材料としては、各第3の部材3c1、3c2の説明で述べたものを用いることができる。
接合膜42は、前述した接合膜41と同様の方法により形成することができる。すなわち、接合膜42は、前述した工程A2と同様、プラズマ重合により成膜し、その後、前述した工程A3と同様、エネルギー付与する。
次に、図7(b)に示すように、接着性が発現してなる接合膜42と各第3の部材3c1、3c2とが密着するように、第1の部材3aおよび1対の第2の部材3b1、3b2からなる接合体と各第3の部材3c1、3c2とを貼り合わせる。その結果、1対の第2の部材3b1、3b2と1対の第3の部材3c1、3c2とが、接合膜42を介して接合(接着)される。また、この接合により、第1の凹部31が形成される。
本工程は、前述した工程A4と同様にして行うことができる。
次に、図7(c)に示すように、第1の凹部31の底面上に第2の駆動電極33を形成するとともに、第2の凹部32の底面上に第2の反射膜34を形成する。
第2の駆動電極33は、例えば、化学気相成膜法(CVD法)、スパッタリング法、蒸着法等の気相成膜法、メッキ法等により形成することができる。
高屈折率層および低屈折率層の形成方法としては、例えば、化学的気相成長法(CVD)、物理的化学気相成長法(PVD)が好適に用いられる。
以上説明した工程A1〜A7により、第2の基体3が形成される。
−B1−
一方、図8(a)に示すように、第1の基体2を形成するための基板として、光透過性を有する第1の基板9を用意する。
第1の基板9としては、厚さが均一で、たわみや傷のないものが好適に用いられる。第1の基板9の構成材料としては、第1の基体2の説明で述べたものを用いることができる。また、第1の基板9としては、単層で構成されたものを用いてもよいし、SOI基板のような複数層で構成された基板を用いてもよい。
次に、図8(b)に示すように、第1の基板9の一方の面上に、第1の反射膜25と第1の駆動電極28と接合膜43とを形成する。
接合膜43は、前述した接合膜41と同様の方法により形成することができる。すなわち、接合膜43は、前述した工程A2と同様、プラズマ重合により成膜し、その後、前述した工程A3と同様、エネルギー付与する。
また、第1の駆動電極28の形成方法としては、前述した第2の駆動電極33の形成方法と同様のものを用いることができる。
なお、第1の反射膜25および第1の駆動電極28の形成は、それぞれ、接合膜43の形成に対し前であっても後であってもよい。
次に、図8(c)に示すように、接着性が発現してなる接合膜43と第2の基体3(第3の部材3c1、3c2)とが密着するように、第1の基板9と第2の基体3とを貼り合わせる。その結果、第1の基板9と第2の基体3とが、接合膜43を介して接合(接着)される。
本工程は、前述した工程A4と同様にして行うことができる。
−C1−
次に、図9(a)に示すように、エッチングや研磨を行って第1の基板9を薄肉化する。
第1の基板9としてSOI基板を用いた場合、SiO2で構成された層をウェットエッチング等によりエッチングすることにより、一方のSi層を薄肉化された層として残存させることができる。
次に、図9(b)に示すように、第1の基板9の第2の基体3とは反対側の面上に、マスク層10を形成する。
マスク層10を構成する材料としては、例えば、Au/Cr、Au/Ti、Pt/Cr、Pt/Tiなどの金属、多結晶シリコン(ポリシリコン)、アモルファスシリコン等のシリコン、窒化シリコン等が挙げられる。マスク層10の構成材料にシリコンを用いると、マスク層10と第1の基板9との密着性が向上する。マスク層10の構成材料に金属を用いると、形成されるマスク層10の視認性が向上する。
マスク層10は、例えば、化学気相成膜法(CVD法)、スパッタリング法、蒸着法等の気相成膜法、メッキ法等により形成することができる。
次に、図9(c)に示すように、マスク層10に開口部24および開口部29に対応する形状の開口を形成する。
より具体的には、まず、例えばフォトリソグラフィ法を用い、マスク層10上に、フォトレジストを塗布し、露光、現像を行って、開口部24、29に対応する開口を有するレジストマスクを形成する。次に、このレジストマスクを介してマスク層10をエッチングして、マスク層10の一部を除去した後、レジストマスクを除去する。このようにして、マスク層10に開口が形成される。このエッチングとしては、例えば、CFガス、塩素系ガス等によるドライエッチング、フッ酸+硝酸水溶液、アルカリ水溶液等によるウェットエッチングを用いることができる。
次に、ドライエッチング法などを用いて、前述したような開口を有するマスク層10を介して第1の基板9をエッチングし、その後、マスク層10を除去して、図10(a)に示すように、第1の基体2を形成する。
マスク層10の除去方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ水溶液(例えばテトラメチル水酸化アンモニウム水溶液等)、塩酸+硝酸水溶液、フッ酸+硝酸水溶液等によるウェットエッチング、CFガス、塩素系ガス等によるドライエッチングなどを用いることができる。
特に、マスク層10の除去方法としてウェットエッチングを用いると、簡易な操作で、効率よく、マスク層10を除去することができる。
その後、図10(b)に示すように、第1の基体2の第2の基体3とは反対側の面上に、第1の反射防止膜26を形成し、また、第2の基体3の第1の基体2とは反対側の面上に、第2の反射防止膜37と形成する。これにより、光学デバイス1を得る。
第1の反射防止膜26および第2の反射防止膜37の形成方法としては、それぞれ、前述した第2の反射膜34の形成方法と同様のものを用いることができる。
図12に示す光学デバイス1では、第1の部材3aに成膜された接合膜41と、各第2の部材3b1、3b2に成膜された接合膜41とが密着するように、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2とを貼り合わせることにより、これらが接合(接着)されている。
なお、この場合、例えば、接合膜41に対するエネルギーの付与は、第1の部材3aに成膜された接合膜41と、各第2の部材3b1、3b2に成膜された接合膜41のそれぞれに対して行うようにすればよい。
また、前述した工程A6またはC6の後、第2の基体3または光学デバイス1に対して、必要に応じ、以下の2つの工程C6およびC7のうちの少なくとも1つの工程(光学デバイス1の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2との接合強度のさらなる向上を図ることができる。
光学デバイス1(または第2の基体3。以下同じ。)をその幅方向(図2、図7にて左右方向)に圧縮するように、すなわち第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、第1の部材3aと各第2の部材3b1、3b2との接合強度をより高めることができる。
このとき、光学デバイス1を加圧する際の圧力は、光学デバイス1が損傷を受けない程度の圧力で、できるだけ高い方が好ましい。これにより、この圧力に比例して光学デバイス1における接合強度を高めることができる。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、光学デバイス1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
得られた光学デバイス1を加熱する。
これにより、光学デバイス1における接合強度をより高めることができる。
このとき、光学デバイス1を加熱する際の温度は、室温より高く、光学デバイス1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、光学デバイス1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
なお、以上説明したような工程C6、C7の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、光学デバイス1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、光学デバイス1の接合強度を特に高めることができる。
以上のような工程を行うことにより、光学デバイス1における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図13は、本発明の第2実施形態における接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図14は、本発明の第2実施形態における接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。なお、以下の説明では、図13および図14中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
本実施形態にかかる光学デバイスは、接合膜の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる光学デバイスは、接合膜41がエネルギー付与前の状態で、金属原子と、この金属原子に結合する酸素原子と、これら金属原子および酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基303とを含むものである。換言すれば、エネルギー付与前の接合膜41は、それぞれ、金属酸化物で構成される金属酸化物膜に脱離基303を導入した膜である。
第2実施形態において、接合膜41は、金属原子と、この金属原子と結合する酸素原子とで構成されるもの、すなわち金属酸化物に脱離基303が結合したものであることから、変形し難い強固な膜となる。このため、接合膜41自体が寸法精度の高いものとなり、最終的に得られる光学デバイス1においても、寸法精度が高いものが得られる。
また、接合膜42が導電性を有する場合、接合膜42の抵抗率は、接合膜42の構成材料の組成に応じて若干異なるものの、1×10−3Ω・cm以下であるのが好ましく、1×10−4Ω・cm以下であるのがより好ましい。
具体的には、金属原子としては、特に限定されないが、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、TiおよびPb等が挙げられる。中でも、In(インジウム)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)、Ti(チタン)およびSb(アンチモン)のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。接合膜41を、これらの金属原子を含むもの、すなわちこれらの金属原子を含む金属酸化物に脱離基303を導入したものとすることにより、接合膜41は、優れた導電性と透明性とを発揮するものとなる。
なお、金属酸化物としてインジウム錫酸化物(ITO)を用いる場合には、インジウムとスズとの原子比(インジウム/スズ比)は、99/1〜80/20であるのが好ましく、97/3〜85/15であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
また、脱離基303は、前述したように、金属原子および酸素原子の少なくとも一方から脱離することにより、接合膜41に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜41に確実に結合しているものが好適に選択される。
なお、上記の各原子で構成される原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびスルホン酸基等が挙げられる。
以上のことを考慮すると、接合膜41としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO2)の金属酸化物に、脱離基303として水素原子が導入されたものが好適に選択される。
すなわち、接合膜41の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜41の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、光学デバイス1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜41の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜41の厚さをできるだけ厚くすればよい。
<A> Aの方法では、接合膜41は、上記のように、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法(PVD法)により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成される。このようにPVD法を用いると、金属酸化物材料を各第2の部材3b1、3b2に向かって飛来させる際に、比較的容易に金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することができる。このため、接合膜41のほぼ全体にわたって脱離基303を導入することができる。
まず、接合膜41の成膜方法を説明するのに先立って、各第2の部材3b1、3b2上にイオンビームスパッタリング法により接合膜41を成膜する際に用いられる成膜装置200について説明する。
図15に示す成膜装置200は、イオンビームスパッタリング法による接合膜41の形成がチャンバー(装置)内で行えるように構成されている。
なお、本実施形態では、基板ホルダー212は、チャンバー211の天井部に取り付けられている。この基板ホルダー212は、回動可能となっている。これにより、各第2の部材3b1、3b2上に接合膜41を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
また、イオン発生室256には、図15に示すように、その内部にガス(スパッタリング用ガス)を供給するガス供給源219が接続されている。
この成膜装置200では、イオン源215は、その開口250がチャンバー211内に位置するように、チャンバー211の側壁に固定(設置)されている。なお、イオン源215は、チャンバー211から離間した位置に配置し、接続部を介してチャンバー211に接続した構成とすることもできるが、本実施形態のような構成とすることにより、成膜装置200の小型化を図ることができる。
なお、イオン源215の設置個数は、1つに限定されるものではなく、複数とすることもできる。イオン源215を複数設置することにより、接合膜41の成膜速度をより速くすることができる。
これらシャッター220、221は、それぞれ、ターゲット216、各第2の部材3b1、3b2および接合膜41が、不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
さらに、ガス供給手段260は、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を貯留するガスボンベ264と、ガスボンベ264からこのガスをチャンバー211に導くガス供給ライン261と、ガス供給ライン261の途中に設けられたポンプ262およびバルブ263とで構成されており、脱離基303を構成する原子成分を含むガスをチャンバー211内に供給し得るようになっている。
ここでは、各第2の部材3b1、3b2上に接合膜41を成膜する方法について説明する。
まず、1対の第2の部材3b1、3b2を用意し、これらをそれぞれ成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
さらに、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
また、チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、金属原子または酸素原子と、前記原子成分を含むガスとの反応が効率良く行われ、金属原子および酸素原子に確実に、前記原子成分を含むガスを導入することができる。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜41に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜41の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
以上のようにして、ほぼ全体にわたって脱離基303が存在する接合膜41を成膜することができる。
なお、Bの方法を用いて接合膜41の成膜する場合も、Aの方法を用いて接合膜41を成膜する際に用いられる成膜装置200と同様の成膜装置が用いられるため、成膜装置に関する説明は省略する。
[ii] 次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、このとき、加熱手段を動作させ、チャンバー211内を加熱する。チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、膜密度の高い金属酸化物膜を成膜することができる。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜41に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜41の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
この状態で、加熱手段を動作させ、チャンバー211内をさらに加熱する。チャンバー211内の温度は、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303が導入される温度に設定され、100〜600℃程度であるのが好ましく、150〜300℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、次工程[v]において、各第2の部材3b1、3b2および金属酸化物膜を変質・劣化させることなく、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303を導入することができる。
このように、前記工程[iv]でチャンバー211内が加熱された状態で、チャンバー211内を、脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)とすると、金属酸化物膜の表面付近に存在する金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303が導入されて、接合膜41が形成される。
なお、チャンバー211内は、前記工程[ii]において、排気手段230を動作させることにより調整された減圧状態を維持しているのが好ましい。これにより、金属酸化物膜の表面付近に対する脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。また、前記工程[ii]の減圧状態を維持したまま、本工程においてチャンバー211内を減圧する構成とすることにより、再度減圧する手間が省けることから、成膜時間および成膜コスト等の削減を図ることができるという利点も得られる。
また、熱処理を施す時間は、15〜120分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、第1の部材3a側の面41a付近に脱離基303が偏在する接合膜41を成膜することができる。
以上のような第2実施形態にかかる光学デバイス1においても、前述した第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
なお、以下の説明では、前述した第1実施形態および第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる光学デバイスは、接合膜の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
このような接合膜41は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜41から脱離し、接合膜41の少なくとも表面付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜41の表面に、前述した第2実施形態と同様の接着性が発現する。
このような接合膜41は、エネルギーが付与されると、脱離基303の結合手が切れて接合膜41の少なくとも第1の部材3a側の面41a付近から脱離し、図14に示すように、接合膜41の少なくとも第1の部材3a側の面41a付近に、活性手304が生じるものである。これにより、接合膜41の第1の部材3a側の面41aに接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜41が設けられた各第2の部材3b1、3b2は、第1の部材3aに対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
このような接合膜41は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜41)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、このような接合膜41を用いて得られた光学デバイス1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
具体的には、金属原子としては、例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、各種ランタノイド元素、各種アクチノイド元素のような遷移金属元素、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Tl、Pd、Bi、Poのような典型金属元素等が挙げられる。
以上のような原子団の中でも、脱離基303は、特に、アルキル基であるのが好ましい。アルキル基で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303としてアルキル基を備える接合膜41は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
すなわち、接合膜41の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜41の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、光学デバイス1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜41の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜41の厚さをできるだけ厚くすればよい。
まず、接合膜41の成膜方法を説明するのに先立って、接合膜41を成膜する際に用いられる成膜装置400について説明する。
図17に示す成膜装置400は、有機金属化学気相成長法(以下、「MOCVD法」と省略することもある。)による接合膜41の形成をチャンバー411内で行えるように構成されている。
また、基板ホルダー412の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができるシャッター421が配設されている。このシャッター421は、各第2の部材3b1、3b2および接合膜41が不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
なお、キャリアガスとしては、特に限定されず、例えば、窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガス等が好適に用いられる。
なお、有機金属材料として、後述する2,4−ペンタジオネート−銅(II)や[Cu(hfac)(VTMS)]等のように分子構造中に酸素原子を含有するものを用いる場合には、低還元性雰囲気下とするためのガスに、水素ガスを添加するのが好ましい。これにより、酸素原子に対する還元性を向上させることができ、接合膜41に過度の酸素原子が残存することなく、接合膜41を成膜することができる。その結果、この接合膜41は、膜中における金属酸化物の存在率が低いものとなり、優れた導電性を発揮することとなる。
また、排気手段430は、ポンプ432と、ポンプ432とチャンバー411とを連通する排気ライン431と、排気ライン431の途中に設けられたバルブ433とで構成されており、チャンバー411内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
以上のような構成の成膜装置400を用いてMOCVD法により、以下のようにして各第2の部材3b1、3b2上に接合膜41が形成される。
[ii] 次に、排気手段430を動作させ、すなわちポンプ432を作動させた状態でバルブ433を開くことにより、チャンバー411内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
そして、固形状の有機金属材料を貯留された貯留槽462が備える加熱手段を動作させることにより、有機金属材料を気化させた状態で、ポンプ464を動作させるとともに、バルブ463を開くことにより、気化または霧化した有機金属材料をキャリアガスとともにチャンバー内に導入する。
このようなMOCVD法に用いられる、有機金属材料としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ペンタジオネート−銅(II)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq3)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq2)、銅フタロシアニン、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(hfac)(VTMS)]、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(hfac)(MHY)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(pfac)(VTMS)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(pfac)(MHY)]等、各種遷移金属元素を含んだアミド系、アセチルアセトネート系、アルコキシ系、シリコンを含むシリル系、カルボキシル基をもつカルボニル系のような金属錯体、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、ジエチル亜鉛のようなアルキル金属や、その誘導体等が挙げられる。これらの中でも、有機金属材料としては、金属錯体であるのが好ましい。金属錯体を用いることにより、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存した状態で、接合膜41を確実に形成することができる。
気化または霧化した有機金属材料の流量は、0.1〜100ccm程度であるのが好ましく、0.5〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、均一な膜厚で、かつ、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で、接合膜41を成膜することができる。
なお、有機金属材料を用いて形成された接合膜41に残存する前記有機物の一部は、その全てが脱離基303として機能するものであってもよいし、その一部が脱離基303として機能するものであってもよい。
以上のような第3実施形態にかかる光学デバイス1においても、前述した第1実施形態および第2実施形態と同様の作用・効果が得られる。
以上説明したような光学デバイス1(波長可変フィルタ)は、例えば、図18や図19に示すような形態で用いられる。
図18は、本発明の波長可変フィルタモジュールの実施形態を示す図、図19は、本発明の光スペクトラムアナライザの実施形態を示す図である。
図18に示す波長可変フィルタモジュール1100は、例えば波長分割多重(WDM)光伝送方式のような光ネットワークの光伝送経路に設置されるものである。このような波長可変フィルタモジュール1100は、前述した波長可変フィルタである光学デバイス1と、この光学デバイス1に光を導く光ファイバ1101およびレンズ1102と、光学デバイス1から射出された光を外部へ導くレンズ1103および光ファイバ1104とを備えている。
このような波長可変フィルタモジュール1100は、低コストで、長期にわたり高精度に波長分離を行うことができる。
また、図19に示す光スペクトラムアナライザ1200は、被測定光のスペクトラム特性(波長と強度との関係)を測定する装置である。このような光スペクトラムアナライザ1200は、被測定光が入射される光入射部1201と、前述した光学デバイス1と、光入射部1201に入射された被測定光を光学デバイス1へ導く光学系1202と、光学デバイス1から出射された光を受光する受光素子1203と、光学デバイス1から出射された光を受光素子1203へ導く光学系1204と、光学デバイス1の駆動を制御するとともに受光素子1203の出力に基づきスペクトラム特性を求める制御部1205と、制御部1205の演算結果を表示する表示部1206とを備えている。
また、前述した光学デバイス1を用いることで、波長可変光源や波長可変レーザを実現することができる。
以上、本発明の光学デバイス、波長可変フィルタモジュール、および光スペクトラムアナライザを、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
Claims (16)
- 第1の光反射部を備える可動板が前記可動板の厚さ方向に変位可能に設けられた第1の基体と、
凹部を有し、前記凹部の底面に、前記第1の光反射部に光学ギャップを隔てて対向する第2の光反射部が設けられた第2の基体と、
前記可動板を前記可動板の厚さ方向に変位させる駆動手段とを有し、
前記第2の基体は、前記凹部の底壁を構成する第1の部材と、平面視にて前記第1の部材に対して外側に位置し前記凹部の側壁を構成する第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合する接合膜とを有しており、
前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含む原子構造を有するSi骨格と、前記Si骨格に結合する脱離基とを含むことを特徴とする光学デバイス。 - 前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合している請求項1に記載の光学デバイス。
- 前記Si骨格の結晶化度は、45%以下である請求項1または2に記載の光学デバイス。
- 前記接合膜は、プラズマ重合により形成されたものである請求項1ないし3のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されている請求項4に記載の光学デバイス。
- 前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物である請求項5に記載の光学デバイス。
- 前記脱離基は、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子が前記Si骨格に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記脱離基は、アルキル基である請求項7に記載の光学デバイス。
- 前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および、前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項2に記載の光学デバイス。
- 第1の光反射部を備える可動板が前記可動板の厚さ方向に変位可能に設けられた第1の基体と、
凹部を有し、前記凹部の底面に、前記第1の光反射部に光学ギャップを隔てて対向する第2の光反射部が設けられた第2の基体と、
前記可動板を前記可動板の厚さ方向に変位させる駆動手段とを有し、
前記第2の基体は、前記凹部の底壁を構成する第1の部材と、平面視にて前記第1の部材に対して外側に位置し前記凹部の側壁を構成する第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合する接合膜とを有しており、
前記接合膜は、金属原子、前記金属原子に結合する酸素原子、および前記金属原子または前記酸素原子に結合する脱離基、を含み、
前記接合膜は、少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合していることを特徴とする光学デバイス。 - 第1の光反射部を備える可動板が前記可動板の厚さ方向に変位可能に設けられた第1の基体と、
凹部を有し、前記凹部の底面に、前記第1の光反射部に光学ギャップを隔てて対向する第2の光反射部が設けられた第2の基体と、
前記可動板を前記可動板の厚さ方向に変位させる駆動手段とを有し、
前記第2の基体は、前記凹部の底壁を構成する第1の部材と、平面視にて前記第1の部材に対して外側に位置し前記凹部の側壁を構成する第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合する接合膜とを有しており、
前記接合膜は、金属原子、有機成分で構成される脱離基、を含み、
前記接合膜は、少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合していることを特徴とする光学デバイス。 - 前記第2の基体の前記第1の基体側の面には、前記可動板に静電ギャップを隔てて対向する電極が設けられており、前記駆動手段は、前記可動板と前記電極との間に電圧を印加することにより、前記可動板と前記電極との間に静電引力を生じさせて、前記可動板を変位させるように構成され、前記第2の基体は、平面視にて前記可動板に対応する部分の外側に設けられた第3の部材が前記第2の部材に前記接合膜と同様の他の接合膜を介して接合されており、前記電極は、前記他の接合膜と同一材料で構成されている請求項10または11に記載の光学デバイス。
- 前記第2の基体の前記第1の基体側の面には、前記可動板に静電ギャップを隔てて対向する電極が設けられており、前記駆動手段は、前記可動板と前記電極との間に電圧を印加することにより、前記可動板と前記電極との間に静電引力を生じさせて、前記可動板を変位させるように構成され、前記第2の基体は、平面視にて前記可動板に対応する部分の外側に設けられた第3の部材が前記第2の部材に前記接合膜と同様の他の接合膜を介して接合されている請求項1ないし12のいずれかに記載の光学デバイス。
- 前記第1の光反射部と前記第2の光反射部との間で光反射を繰り返し干渉を生じさせて、前記光学ギャップに応じた波長の光を外部へ出射し得るように構成されている請求項1ないし13のいずれかに記載の光学デバイス。
- 請求項1ないし14のいずれかに記載の光学デバイスを備えることを特徴とする波長可変フィルタモジュール。
- 請求項1ないし14のいずれかに記載の光学デバイスを備えることを特徴とする光スペクトラムアナライザ。
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