JP5140778B1 - 多結晶シリコンインゴットの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶欠陥密度の低減や割れ防止を簡便でかつ低コストで行うことが可能な大きなサイズの多結晶シリコンインゴットの製造方法およびそれにより得られる多結晶シリコンインゴットならびにその用途を提供することを課題とする。
【解決手段】坩堝中の溶融シリコンを前記坩堝の底部から上方に一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを製造する方法であり、シリコン温度がシリコンの融点となる時の坩堝下面中央近傍の検知温度をTmとして前記検知温度が(Tm−20)℃から(Tm−60)℃まで低下する間に、7℃/時間を超え10℃/時間以下の温度変化率で温度低下する時間が存在する条件下で、前記溶融シリコンを一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを得ることを特徴とする多結晶シリコンインゴット製造方法により、上記の課題を解決する。
【選択図】図1
【解決手段】坩堝中の溶融シリコンを前記坩堝の底部から上方に一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを製造する方法であり、シリコン温度がシリコンの融点となる時の坩堝下面中央近傍の検知温度をTmとして前記検知温度が(Tm−20)℃から(Tm−60)℃まで低下する間に、7℃/時間を超え10℃/時間以下の温度変化率で温度低下する時間が存在する条件下で、前記溶融シリコンを一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを得ることを特徴とする多結晶シリコンインゴット製造方法により、上記の課題を解決する。
【選択図】図1
Description
この発明は、多結晶シリコンインゴットの製造方法に関する。
地球環境に様々な問題を引き起こしている石油などの代替として自然エネルギーの利用が注目されている。その中でも太陽電池は大きな設備を必要とせず、稼働時に騒音などを発生しないことから、日本や欧州などで特に積極的に導入されてきている。
カドミウムテルルなどの化合物半導体を用いた太陽電池も一部で実用化されているが、物質自体の安全性やこれまでの実績、またコストパフォーマンスの面から、結晶シリコン基板を用いた太陽電池が大きなシェアを占め、その中でも多結晶シリコン基板を用いた太陽電池(多結晶シリコン太陽電池)が大きなシェアを占めている。
カドミウムテルルなどの化合物半導体を用いた太陽電池も一部で実用化されているが、物質自体の安全性やこれまでの実績、またコストパフォーマンスの面から、結晶シリコン基板を用いた太陽電池が大きなシェアを占め、その中でも多結晶シリコン基板を用いた太陽電池(多結晶シリコン太陽電池)が大きなシェアを占めている。
多結晶シリコン太陽電池の基板として一般的に広く用いられている多結晶シリコンウエハは、坩堝内で溶融シリコンを一方向凝固させて大きな多結晶シリコンインゴットを得るキャスト法と呼ばれる方法で製造したインゴットをブロックに切り出し、スライスによりウエハ化したものである。
キャスト法で製造した多結晶シリコンウエハは、インゴットまたはブロック内の高さ方向の位置により、一般的に図5に示すような太陽電池の出力特性に分布を有している。
キャスト法で製造した多結晶シリコンウエハは、インゴットまたはブロック内の高さ方向の位置により、一般的に図5に示すような太陽電池の出力特性に分布を有している。
図5の特性分布が生じる原因は一般的に以下のように説明されている。
まず一方向凝固の初期の領域Iでは、坩堝から拡散した不純物の影響により特性低下が起こる。その上部側の領域IIでは、偏析による原料中の不純物の結晶中への取り込みや結晶欠陥の発生が少ないために、ブロック中で最も特性が良好となる。さらに上部側の領域IIIでは、結晶中に取り込まれる不純物量が徐々に増えることに加え、結晶欠陥の発生が増加し、領域IIよりも特性が低下する。さらに上部側の領域IVでは、領域IIIと同様に、結晶中に取り込まれる不純物量や結晶欠陥の発生がさらに増加することに加えて、インゴットが最後まで凝固した後に、最上部表面部分にできた不純物の高濃度部分から不純物の逆拡散が起こり、さらに不純物量が増加するために、領域IIIよりもさらに特性低下が顕著になる。
上記の説明では、原料中の不純物や坩堝から溶出する不純物の影響を考慮しているが、仮にそれらの影響がない場合でも、領域IIIおよびIVでは、上部に向かうにしたがって少数キャリアトラップとなる結晶欠陥が徐々に増加するために、太陽電池の特性は低下する傾向にある。
まず一方向凝固の初期の領域Iでは、坩堝から拡散した不純物の影響により特性低下が起こる。その上部側の領域IIでは、偏析による原料中の不純物の結晶中への取り込みや結晶欠陥の発生が少ないために、ブロック中で最も特性が良好となる。さらに上部側の領域IIIでは、結晶中に取り込まれる不純物量が徐々に増えることに加え、結晶欠陥の発生が増加し、領域IIよりも特性が低下する。さらに上部側の領域IVでは、領域IIIと同様に、結晶中に取り込まれる不純物量や結晶欠陥の発生がさらに増加することに加えて、インゴットが最後まで凝固した後に、最上部表面部分にできた不純物の高濃度部分から不純物の逆拡散が起こり、さらに不純物量が増加するために、領域IIIよりもさらに特性低下が顕著になる。
上記の説明では、原料中の不純物や坩堝から溶出する不純物の影響を考慮しているが、仮にそれらの影響がない場合でも、領域IIIおよびIVでは、上部に向かうにしたがって少数キャリアトラップとなる結晶欠陥が徐々に増加するために、太陽電池の特性は低下する傾向にある。
結晶欠陥が発生する原因は、インゴット中の温度分布に起因する応力であると考えられ、これを抑制するという観点から、次の2つの方法が提案されている。
第1に、例えば、特開2005−152985号公報(特許文献1)には、一方向凝固(キャスト)時に坩堝下部に設置する鋳型ホルダとして、中心部の熱流束が周辺よりも大きいものを使用する方法が提案されている。
第2に、例えば、国際公開第2005/092791(特許文献2)には、受熱(熱交換)面積を可変にできる構造により、インゴット成長の途中で熱流制御を行う方法が提案されている。
第1に、例えば、特開2005−152985号公報(特許文献1)には、一方向凝固(キャスト)時に坩堝下部に設置する鋳型ホルダとして、中心部の熱流束が周辺よりも大きいものを使用する方法が提案されている。
第2に、例えば、国際公開第2005/092791(特許文献2)には、受熱(熱交換)面積を可変にできる構造により、インゴット成長の途中で熱流制御を行う方法が提案されている。
また、上記の方法とは別の多結晶シリコンインゴットの品質向上対策として、大粒径化を目的とした方法が提案されている。
例えば、特許第4203603号公報(特許文献3)および特開2005−132671号公報(特許文献4)には、坩堝底部を急冷することにより、インゴット底部に(凝固初期に)結晶核としてデンドライト結晶を発生させて、結晶粒を粗大化させる方法が提案されている。
また、特許第4054873号公報(特許文献5)には、シリコン原料の融解工程において残存させた結晶片(溶け残り)を成長させ結晶粒を肥大させて、擬似単結晶を得る方法が提案されている。
さらに、特許第4569957号公報(特許文献6)には、坩堝底に結晶方位を揃えて配置したSiCなどの種結晶からシリコンをヘテロエピ成長させて、擬似単結晶を得る方法が提案されている。
例えば、特許第4203603号公報(特許文献3)および特開2005−132671号公報(特許文献4)には、坩堝底部を急冷することにより、インゴット底部に(凝固初期に)結晶核としてデンドライト結晶を発生させて、結晶粒を粗大化させる方法が提案されている。
また、特許第4054873号公報(特許文献5)には、シリコン原料の融解工程において残存させた結晶片(溶け残り)を成長させ結晶粒を肥大させて、擬似単結晶を得る方法が提案されている。
さらに、特許第4569957号公報(特許文献6)には、坩堝底に結晶方位を揃えて配置したSiCなどの種結晶からシリコンをヘテロエピ成長させて、擬似単結晶を得る方法が提案されている。
特許文献1の方法では、特にヒータが坩堝横にあるような場合、固液界面の形状をより悪化させる結果となり、結晶欠陥密度の低減や割れ防止などの効果が得られないという課題がある。
特許文献2の方法では、坩堝側壁からの抜熱の制御性を向上させることはできるものの、装置構成が大変複雑で、高温の可動部分が多く、装置のコストアップや故障が増加するという課題がある。
特許文献2の方法では、坩堝側壁からの抜熱の制御性を向上させることはできるものの、装置構成が大変複雑で、高温の可動部分が多く、装置のコストアップや故障が増加するという課題がある。
特許文献3〜5の方法では、結晶粒の粗大化により粒界による特性低下を抑制でき、特にインゴットサイズが小さい場合には、温度分布による応力が比較的小さく、インゴットのトップ側で導入される結晶欠陥もある程度抑えられるというメリットがある。しかし、インゴットサイズが大きくなると共にトップ側での結晶欠陥が増加するために、ボトム側での特性向上が見られるものの、やはりトップ側で作製した太陽電池における特性が低下するという課題が残る。
特許文献6の方法では、隣り合うSiCなどの種結晶から成長したシリコン結晶がぶつかりあう境界部分で欠陥が形成され、インゴットは巨視的には単結晶に見えても電気的には多くの欠陥を含むものと考えられる。またトップ側に関しては、インゴットサイズが大きくなると共にトップ側での結晶欠陥密度が高くなり、やはりトップ側で作製した太陽電池における特性が低下するという課題が残る。
他方、多結晶シリコンインゴットのサイズが大きいほど、多結晶シリコンウエハの1枚当たりの価格を抑えることができるため、インゴットのサイズは大型化する傾向にある。
したがって、最終的な多結晶シリコン太陽電池モジュールの高性能化および低価格化のためには、大きなサイズの多結晶シリコンインゴットの製造において、結晶欠陥密度の低減や割れ防止を簡便でかつ低コストで行うことが可能な方法が求められている。
したがって、最終的な多結晶シリコン太陽電池モジュールの高性能化および低価格化のためには、大きなサイズの多結晶シリコンインゴットの製造において、結晶欠陥密度の低減や割れ防止を簡便でかつ低コストで行うことが可能な方法が求められている。
本発明は、結晶欠陥密度の低減や割れ防止を簡便でかつ低コストで行うことが可能な大きなサイズの多結晶シリコンインゴットの製造方法およびそれにより得られる多結晶シリコンインゴットならびにその用途を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、坩堝中の溶融シリコンを坩堝の底部から上部に一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを製造する際に、凝固(結晶成長)が開始される坩堝底部における温度を結晶核の発生を促進する条件に制御することにより、上記の課題を解消できることを見出し、本発明に至った。
かくして、本発明によれば、坩堝中の溶融シリコンを前記坩堝の底部から上方に一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを製造する方法であり、シリコン温度がシリコンの融点となる時の坩堝下面中央近傍の検知温度をTmとして前記検知温度が(Tm−20)℃から(Tm−60)℃まで低下する間に、7℃/時間を超え10℃/時間以下の温度変化率で温度低下する時間が存在する条件下で、前記溶融シリコンを一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを得ることを特徴とする多結晶シリコンインゴット製造方法が提供される。
また、本発明によれば、坩堝中の溶融シリコンを前記坩堝の底部から上方に一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを製造する方法であり、シリコン温度がシリコンの融点となる時の坩堝下面中央近傍の下方20mm位置の検知温度をTm’として前記検知温度が(Tm’−20)℃から(Tm’−60)℃まで低下する間に、7℃/時間を超え10℃/時間以下の温度変化率で温度低下する時間が存在する条件下で、前記溶融シリコンを一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを得ることを特徴とする多結晶シリコンインゴット製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記の多結晶シリコンインゴット製造方法により製造された多結晶シリコンインゴット、その多結晶シリコンインゴットを加工して得られた多結晶シリコンブロック、その多結晶シリコンブロックを加工して得られた多結晶シリコンウエハおよびその多結晶シリコンウエハを用いて製造された多結晶シリコン太陽電池が提供される。
本発明において、「太陽電池」とは、最小ユニットを構成する「太陽電池セル」およびその複数個を電気的に接続した「太陽電池モジュール」を意味する。
本発明において、「太陽電池」とは、最小ユニットを構成する「太陽電池セル」およびその複数個を電気的に接続した「太陽電池モジュール」を意味する。
本発明によれば、結晶欠陥密度の低減や割れ防止を簡便でかつ低コストで行うことが可能な大きなサイズの多結晶シリコンインゴットの製造方法およびそれにより得られる多結晶シリコンインゴットならびにその用途を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、高品質の多結晶シリコンインゴット、ブロックおよびウエハを低価格で製造することができ、コストパフォーマンスの高い、高出力の多結晶シリコン太陽電池を市場に供給することができる。
すなわち、本発明によれば、高品質の多結晶シリコンインゴット、ブロックおよびウエハを低価格で製造することができ、コストパフォーマンスの高い、高出力の多結晶シリコン太陽電池を市場に供給することができる。
本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法は、上記の7℃/時間を超え10℃/時間以下の温度変化率で温度低下する時間が20%以上存在する場合に、上記の効果が特に発揮される。
本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法は、坩堝中の溶融シリコンを前記坩堝の底部から上方に一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを製造する方法であり、シリコン温度がシリコンの融点となる時の坩堝下面中央近傍の検知温度をTmとして前記検知温度が(Tm−20)℃から(Tm−60)℃まで低下する間に、7℃/時間を超え10℃/時間以下の温度変化率で温度低下する時間が存在する条件下で、前記溶融シリコンを一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを得ることを特徴とする。
上記の検知温度「Tm」は、坩堝内で原料固体シリコンを溶融する場合には、シリコン溶融完了直前にシリコン融液温度がシリコンの融点で一定値をとり、坩堝下面中央近傍の検知温度もほぼ一定となる時の検知温度として決定できる。この状態では、シリコン融液温度は、シリコンの融点となっており、Tmはその時の坩堝下面中央近傍の検知温度である。坩堝台は常に冷却されるため、Tmはシリコンの融点より数℃低いものと考えられる。Tmの実測絶対値は熱電対の較正方法や劣化度合い、個体差、装置への設置のばらつきなどのため、表示に若干ばらつきはあり、実測絶対値の誤差は大きい。但し、Tmを基準として坩堝下面中央近傍の検知温度を補正することで、上記ばらつき要因を排除することができ、結晶成長条件の再現性を確保可能となる。本実施例でのTmの実測絶対値は上記のような理由でシリコンの融点よりも高い場合も見られ、1407℃から1418℃の範囲内であった。
坩堝にシリコン融液を注ぐ方式の多結晶シリコンインゴット製造装置などの場合には、例えば、放射温度計で融液の温度を測定し、坩堝下面中央近傍での検知温度との相関をとることで上記「Tm」を決定することが可能である。
坩堝にシリコン融液を注ぐ方式の多結晶シリコンインゴット製造装置などの場合には、例えば、放射温度計で融液の温度を測定し、坩堝下面中央近傍での検知温度との相関をとることで上記「Tm」を決定することが可能である。
また本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法は、坩堝中の溶融シリコンを前記坩堝の底部から上方に一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを製造する方法であり、シリコン温度がシリコンの融点となる時の坩堝下面中央近傍の下方20mm位置の検知温度をTm’として前記検知温度が(Tm’−20)℃から(Tm’−60)℃まで低下する間に、7℃/時間を超え10℃/時間以下の温度変化率で温度低下する時間が存在する条件下で、前記溶融シリコンを一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを得ることを特徴とする。
上記の検知温度「Tm’」は、温度測定ポイントが異なるだけで、前記「Tm」と同様に決定することができる。ここでは温度測定ポイントとして、坩堝下面近傍の下方20mm位置を選んだが、坩堝と熱的に導通があり、坩堝内のシリコンの温度と相関の取れる領域であれば温度測定ポイントとなりえる。
本発明者らは、多数の多結晶シリコンインゴットについて結晶欠陥の評価、分析および検討を行った結果、インゴットのトップ側の結晶欠陥密度を低減する方法として、従来から有効であると考えられ、そして常用されている温度分布の抑制による応力低減以外に全く別の方法があることを見出した。
具体的には、本発明者らは、結晶粒の粗大化により粒界による特性低下を抑制するという特許文献3〜6に記載の技術とは全く逆の発想で、結晶粒径の小さい多結晶シリコンインゴットが、結晶粒径の大きいものと比較して、応力に強く、結晶欠陥が発生し難いことを見出した。
具体的には、本発明者らは、結晶粒の粗大化により粒界による特性低下を抑制するという特許文献3〜6に記載の技術とは全く逆の発想で、結晶粒径の小さい多結晶シリコンインゴットが、結晶粒径の大きいものと比較して、応力に強く、結晶欠陥が発生し難いことを見出した。
本発明者らの知見によれば、(1)多結晶シリコンインゴット内ですぐ隣り合った部分であっても結晶粒径の大きい粒と小さい粒とでは内部に導入されている結晶欠陥密度が大きく異なり、(2)インゴットの結晶粒径とそのトップ側の結晶欠陥密度との間に相関があり、(3)例外はあるものの結晶粒径が小さいほどインゴットのトップ側の結晶欠陥密度が低い。インゴット内の隣り合った部分で、インゴット成長時に受ける熱ストレスに大きな差があるとは考え難いことから、結晶粒径の小さな部分は、粒界部分のすべりなどにより結晶粒内が受けるストレスが緩和され、結果的に結晶粒内への結晶欠陥導入が抑えられるものと考えられる。
したがって、坩堝中の溶融シリコンを一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを製造する際に、坩堝底部での結晶核の発生を促進して結晶粒径を小さくすることで、多結晶シリコンインゴットのトップ側の特性低下を和らげることができる。
多結晶シリコンインゴットのトップ側の結晶欠陥を低減するためには、これまで、固液界面の平坦化など、インゴットにかかる熱ストレスの低減が必要と考えられてきたのに対して、本発明では、結晶粒径を小さくする結晶粒径の制御のみで、多結晶シリコンインゴットのトップ側の結晶欠陥を低減できる。
多結晶シリコンインゴットのトップ側の結晶欠陥を低減するためには、これまで、固液界面の平坦化など、インゴットにかかる熱ストレスの低減が必要と考えられてきたのに対して、本発明では、結晶粒径を小さくする結晶粒径の制御のみで、多結晶シリコンインゴットのトップ側の結晶欠陥を低減できる。
本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法に利用できる多結晶シリコンインゴット製造装置は、特に限定されるわけではなく、公知の製造装置を用いて実施できる。
一例として挙げると、例えば、坩堝の台座側に設けられた冷媒循環のような冷却機構によって坩堝底面を冷却することと、昇降駆動機構によって坩堝を加熱機構から遠ざけることとの併用により、坩堝中の溶融シリコンを、坩堝の底部付近の溶融シリコンから徐々に凝固させる方式の製造装置などにより実施可能である。その際、公知の方法、具体的には熱電対や放射温度計によりヒータ温度を制御し、シリコンの溶融および凝固、冷却の温度変化率などを監視する。
一例として挙げると、例えば、坩堝の台座側に設けられた冷媒循環のような冷却機構によって坩堝底面を冷却することと、昇降駆動機構によって坩堝を加熱機構から遠ざけることとの併用により、坩堝中の溶融シリコンを、坩堝の底部付近の溶融シリコンから徐々に凝固させる方式の製造装置などにより実施可能である。その際、公知の方法、具体的には熱電対や放射温度計によりヒータ温度を制御し、シリコンの溶融および凝固、冷却の温度変化率などを監視する。
(多結晶シリコンインゴットの製造方法)
本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法について、以下に図面に基づいて説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
本発明の多結晶半導体インゴットの製造方法は、図4に示されるような公知の装置を用いても実施することができる。
図4は、本発明の多結晶半導体インゴットの製造方法に用いられる装置の一例を示す概略断面図である。
本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法について、以下に図面に基づいて説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
本発明の多結晶半導体インゴットの製造方法は、図4に示されるような公知の装置を用いても実施することができる。
図4は、本発明の多結晶半導体インゴットの製造方法に用いられる装置の一例を示す概略断面図である。
この装置は、一般に多結晶シリコンインゴットを製造するために使用され、抵抗加熱炉を構成するチャンバー(密閉容器)7を有している。
チャンバー7の内部には、黒鉛製、石英(SiO2)製などの坩堝1が配置され、チャンバー7の内部の雰囲気を密閉状態で保持できるようになっている。
坩堝1が収容されるチャンバー7内には、坩堝1を支持する、黒鉛製の坩堝台3が配置されている。坩堝台3は、昇降駆動機構12により昇降が可能であり、その内部には冷却槽11内の冷媒(冷却水)が循環されるようになっている。
坩堝台3の上部には、黒鉛製などの外坩堝2が配置され、その中に坩堝1が配置されている。外坩堝2の代わりに、坩堝1を取り囲むような黒鉛製などのカバーが配置されていてもよい。
チャンバー7の内部には、黒鉛製、石英(SiO2)製などの坩堝1が配置され、チャンバー7の内部の雰囲気を密閉状態で保持できるようになっている。
坩堝1が収容されるチャンバー7内には、坩堝1を支持する、黒鉛製の坩堝台3が配置されている。坩堝台3は、昇降駆動機構12により昇降が可能であり、その内部には冷却槽11内の冷媒(冷却水)が循環されるようになっている。
坩堝台3の上部には、黒鉛製などの外坩堝2が配置され、その中に坩堝1が配置されている。外坩堝2の代わりに、坩堝1を取り囲むような黒鉛製などのカバーが配置されていてもよい。
外坩堝2を取り囲むように、黒鉛ヒータのような抵抗加熱体10が配置され、さらにこれらを上方から覆うように、断熱材8が配置されている。
抵抗加熱体10は、坩堝1の周囲から加熱して、坩堝1内の原料シリコン4を融解させることができる。
抵抗加熱体10による加熱、上記の冷却槽11による坩堝1下方からの冷却および昇降駆動機構12による坩堝1の昇降により、本発明の温度制御が可能であれば、発熱体などの加熱機構の形態や配置は特に限定されない。
抵抗加熱体10は、坩堝1の周囲から加熱して、坩堝1内の原料シリコン4を融解させることができる。
抵抗加熱体10による加熱、上記の冷却槽11による坩堝1下方からの冷却および昇降駆動機構12による坩堝1の昇降により、本発明の温度制御が可能であれば、発熱体などの加熱機構の形態や配置は特に限定されない。
坩堝1の底面の温度を検出するために、坩堝1下面中央近傍に坩堝下熱電対5が、外坩堝下面の中央近傍に外坩堝下熱電対6がそれぞれ配置され、これらの出力を制御装置9に入力し、抵抗加熱体10による加熱状態を制御する。上記の熱電対以外にも温度を検出するための熱電対や放射温度計が配置されていてもよい。
チャンバー7は、外部の酸素ガス、窒素ガスなどが流入しないように、その内部を密閉状態に保持でき、通常、多結晶シリコンなどのシリコン原料を投入した後でその溶融前に、チャンバー7内を真空にし、その後アルゴンガスなどの不活性ガスを導入して、不活性な雰囲気に保持する。
このような構成の装置により、基本的に、坩堝1へのシリコン原料4の充填、脱気(真空化)および不活性ガスの導入によるチャンバー7内のガス置換、加熱によるシリコン原料4の溶融、溶融確認とその保持、温度制御および昇降駆動機構12の動作による凝固開始、固化完了確認およびアニールならびにインゴット取り出しの工程により、多結晶シリコンインゴットを製造する。
本発明の製造方法では、シリコン温度がシリコンの融点となる時の坩堝下面中央近傍の検知温度をTmとして検知温度が(Tm−20)℃から(Tm−60)℃まで低下する間に、7℃/時間を超え10℃/時間以下の温度変化率で温度低下する時間が存在する条件にする。
また本発明の製造方法では、シリコン温度がシリコンの融点となる時の坩堝下面中央近傍の下方20mm位置の検知温度をTm’として検知温度が(Tm’−20)℃から(Tm’−60)℃まで低下する間に、7℃/時間を超え10℃/時間以下の温度変化率で温度低下する時間が存在する条件にする。
本発明者らは、次のことを確認している。
シリコン原料を坩堝中で融解する場合には、融解完了直前に坩堝下面中央近傍温度および坩堝下面中央近傍の下方20mm位置の温度がほぼ一定値を示す。この一定値を基準温度(それぞれTm、Tm’)とすることで、前述の通り例えば、熱電対を交換した場合でも個体差(ばらつき)を排除することができ、温度条件を安定させることができる。融解が完了すると一時、液温上昇に伴い、坩堝下温度も上昇するが、通常はその後、一方向凝固過程に入るために徐々に温度を下げる。
シリコン原料を坩堝中で融解する場合には、融解完了直前に坩堝下面中央近傍温度および坩堝下面中央近傍の下方20mm位置の温度がほぼ一定値を示す。この一定値を基準温度(それぞれTm、Tm’)とすることで、前述の通り例えば、熱電対を交換した場合でも個体差(ばらつき)を排除することができ、温度条件を安定させることができる。融解が完了すると一時、液温上昇に伴い、坩堝下温度も上昇するが、通常はその後、一方向凝固過程に入るために徐々に温度を下げる。
温度測定ポイントは、坩堝下面中央近傍や坩堝下面中央近傍の下方20mm位置である必要は必ずしもなく、坩堝底面で核発生が起こる温度範囲で、坩堝下面中央近傍の温度と相関が取れる位置であれば、熱電対設置に便利な位置を適宜選択することができる。但し、そのように選択した温度測定ポイントの温度が、坩堝下面中央近傍の温度とほぼ一定の差を保ったまま変化することが好ましく、例えば、坩堝台の中であれば坩堝台のできる限り上方部、面内ではヒータ出力の変化の影響を受けにくい中央部が望ましい。
例えば、図4の装置において、外坩堝2下面中央近傍に設置した熱電対の検知温度が、坩堝1下面中央近傍の検知温度と常に一定の温度差がある場合には、シリコン溶融直前にシリコン温度が一定(シリコンの融点)になる時の外坩堝2下面中央近傍の検知温度をTm’’として、外坩堝下面中央近傍の検知温度が(Tm’’−20)℃から(Tm’’−60)℃まで低下する間が、坩堝下面中央近傍の検知温度が(Tm−20)℃から(Tm−60)℃まで低下する間に等価であるとして温度制御が可能である。
具体的には、実施例に記載のように、外坩堝2下面中央近傍(下方20mm位置)に設置した熱電対の検知温度が、坩堝1下面中央近傍の検知温度と常に−10℃の温度差があり、(Tm’−20)℃から(Tm’−60)℃まで低下する間で、本発明の製造方法における温度制御が可能である。
具体的には、実施例に記載のように、外坩堝2下面中央近傍(下方20mm位置)に設置した熱電対の検知温度が、坩堝1下面中央近傍の検知温度と常に−10℃の温度差があり、(Tm’−20)℃から(Tm’−60)℃まで低下する間で、本発明の製造方法における温度制御が可能である。
本発明者らの知見によれば、上記の温度範囲において、坩堝底部の溶融シリコンから結晶核の発生が始まり、その結晶粒径は、坩堝底部での結晶核の発生確率と結晶核の成長速度に依存するものと考えられる。
そして、上記の温度変化率で冷却される時間が存在することにより、坩堝底部での結晶核の水平方向の成長速度が抑制され、結果として結晶核の発生密度を高く、結晶粒径を小さく制御することができ、多結晶シリコンインゴットのトップ側の結晶欠陥を低減してその特性低下を和らげることができる。
そして、上記の温度変化率で冷却される時間が存在することにより、坩堝底部での結晶核の水平方向の成長速度が抑制され、結果として結晶核の発生密度を高く、結晶粒径を小さく制御することができ、多結晶シリコンインゴットのトップ側の結晶欠陥を低減してその特性低下を和らげることができる。
冷却の温度変化率が0℃/時間を超え1℃/時間未満では、結晶粒径を小さく制御するという意味では良好なものの、結晶成長に時間が掛かり過ぎること、またその結果として坩堝から溶融シリコンまたは凝固シリコン中への金属不純物の拡散(溶出)が助長されてしまうため、メリットが相殺されるおそれがある。また冷却の温度変化率が10℃/時間を超えると坩堝底部で発生した結晶核の水平方向の成長速度を抑制することができず、結果として結晶核の発生密度を高くすることができない。したがって、冷却の温度変化率は1〜10℃/時間の間が好ましい。より好ましい温度変化率は、2〜7℃/時間である。
本発明の製造方法では、上記の温度低下の間に、1〜10℃/時間の温度変化率で温度低下する時間の割合はより高い方が好ましく、例えば20%以上であるのが好ましく、40%以上であるのがより好ましい。この割合が高いことにより、坩堝底部での結晶核の発生密度が高く、結晶粒径が小さく制御された領域の割合が増加する。
(多結晶シリコンインゴット)
本発明の多結晶シリコンインゴットは、本発明の多結晶シリコンインゴット製造方法により製造される。
本発明の多結晶シリコンインゴットは、本発明の多結晶シリコンインゴット製造方法により製造される。
(多結晶シリコンブロック)
本発明の多結晶シリコンブロックは、本発明の多結晶シリコンインゴットを加工することにより得られる。
多結晶シリコンブロックは、例えば、バンドソーなどの公知の装置を用いて、本発明の多結晶シリコンインゴットにおいて坩堝材料などの不純物が拡散されているおそれのある表面部分を切断加工することにより得ることができる。
また、必要に応じて、多結晶シリコンブロックの表面を研磨加工してもよい。
本発明の多結晶シリコンブロックは、本発明の多結晶シリコンインゴットを加工することにより得られる。
多結晶シリコンブロックは、例えば、バンドソーなどの公知の装置を用いて、本発明の多結晶シリコンインゴットにおいて坩堝材料などの不純物が拡散されているおそれのある表面部分を切断加工することにより得ることができる。
また、必要に応じて、多結晶シリコンブロックの表面を研磨加工してもよい。
(多結晶シリコンウエハ)
本発明の多結晶シリコンウエハは、本発明の多結晶シリコンブロックを加工することにより得られる。
多結晶シリコンウエハは、例えば、マルチワイヤーソーなどの公知の装置を用いて、本発明の多結晶シリコンブロックを所望の厚さにスライス加工することにより得ることができる。現状では、厚さ170〜200μm程度が一般的であるが、傾向としてはコスト削減のため、薄型化の傾向にある。
また、必要に応じて、多結晶シリコンウエハの表面を研磨加工してもよい。
本発明の多結晶シリコンウエハは、本発明の多結晶シリコンブロックを加工することにより得られる。
多結晶シリコンウエハは、例えば、マルチワイヤーソーなどの公知の装置を用いて、本発明の多結晶シリコンブロックを所望の厚さにスライス加工することにより得ることができる。現状では、厚さ170〜200μm程度が一般的であるが、傾向としてはコスト削減のため、薄型化の傾向にある。
また、必要に応じて、多結晶シリコンウエハの表面を研磨加工してもよい。
(多結晶シリコン太陽電池)
本発明の多結晶シリコン太陽電池は、本発明の結晶シリコンウエハを用いて製造される。
多結晶シリコン太陽電池セルは、例えば、本発明の結晶シリコンウエハを用いて、公知の太陽電池セルプロセスにより製造することができる。すなわち、公知の材料を用いて、公知の方法により、p型の不純物がドープされたシリコンウエハの場合、n型の不純物をドープしてn型層を形成してpn接合を形成し、表面電極および裏面電極を形成して多結晶シリコン太陽電池セルを得る。
本発明の多結晶シリコン太陽電池は、本発明の結晶シリコンウエハを用いて製造される。
多結晶シリコン太陽電池セルは、例えば、本発明の結晶シリコンウエハを用いて、公知の太陽電池セルプロセスにより製造することができる。すなわち、公知の材料を用いて、公知の方法により、p型の不純物がドープされたシリコンウエハの場合、n型の不純物をドープしてn型層を形成してpn接合を形成し、表面電極および裏面電極を形成して多結晶シリコン太陽電池セルを得る。
同様に、n型の不純物がドープされたシリコンウエハの場合、p型の不純物をドープしてp型層を形成してpn接合を形成し、表面電極および裏面電極を形成して多結晶シリコン太陽電池セルを得る。あるいは、これらシリコン同士のpn接合を利用したものの他にも、薄い絶縁層を挟んで金属を蒸着するなどしたMIS型太陽電池、例えば、多結晶ウエハと反対の導電型のアモルファスなどのシリコン薄膜を製膜し、異なる構造のp型、n型シリコンヘテロ接合を利用したものなどがある。また、その複数個を電気的に接続して、多結晶シリコン太陽電池モジュールを得る。
上記のように、本明細書においては、「太陽電池セル」と「太陽電池モジュール」とを含む概念として、単に「太陽電池」と称する。したがって、例えば、「多結晶シリコン太陽電池」と記載されたものがあれば、それは「多結晶シリコン太陽電池セル」および「多結晶シリコン太陽電池モジュール」を含む意味となる。
以下に試験例により本発明を具体的に説明するが、これらの試験例により本発明が限定されるものではない。
(試験例1)温度変化率の依存性に関する検討
図4に示される多結晶シリコンインゴット製造装置内の黒鉛製坩堝台3(880mm×880mm×厚さ200mm)上に、黒鉛製外坩堝2(内寸:900mm×900mm×高さ460mm、底板肉厚および側面肉厚20mm)を設置し、その中に石英製坩堝1(内寸:830mm×830mm×420mm、底板肉厚および側面肉厚22mm)を設置した。また、温度測定用の熱電対を、坩堝1下面中央近傍および外坩堝2下面中央近傍の2ヵ所に設置した。
図4に示される多結晶シリコンインゴット製造装置内の黒鉛製坩堝台3(880mm×880mm×厚さ200mm)上に、黒鉛製外坩堝2(内寸:900mm×900mm×高さ460mm、底板肉厚および側面肉厚20mm)を設置し、その中に石英製坩堝1(内寸:830mm×830mm×420mm、底板肉厚および側面肉厚22mm)を設置した。また、温度測定用の熱電対を、坩堝1下面中央近傍および外坩堝2下面中央近傍の2ヵ所に設置した。
次いで、インゴットの比抵抗が約1.5Ωcmになるようにホウ素ドーパント濃度を調整した原料シリコン4の420kgを坩堝1にチャージした後、装置内を真空引きし、アルゴンガスで置換した。その後、装置の加熱手段として坩堝横に配置された加熱機構(黒鉛ヒータ10)を用いてシリコン原料を融解し、全原料の融解を確認した後、下記の条件でシリコンを一方向凝固させ、1200℃で2時間アニールし、100℃/時間の冷却速度で降温させ、装置から多結晶シリコンインゴットを取り出した。
凝固工程では、ヒータ温度および坩堝下降速度を制御することにより、坩堝下面中央近傍の検知温度がTm−20℃からTm−60℃まで低下する間に、熱電対の温度変化率が、それぞれ0.5℃/時間、1℃/時間、2℃/時間、5℃/時間、7℃/時間、10℃/時間、15℃/時間および20℃/時間のほぼ一定になる条件とした。「温度変化率」は、冷却における負の傾きを示す。この試験では、Tmの実測値は1410℃〜1418℃の範囲内であった。
熱電対の温度変化率以外の温度条件はほぼ同一条件とし、特にインゴット底部の核発生の影響のみを評価できるようにした。
坩堝1下面中央近傍、外坩堝2下面中央近傍(坩堝下面中央近傍の下方20mm位置)の検知温度の相関を確認したところ、常にほぼ10℃の差を保ったまま変化しており、坩堝1下面中央近傍の検知温度がTm−20℃からTm−60℃までの温度範囲が、外坩堝2下面中央近傍の検知温度Tm’−20℃からTm’−60℃までに対応することを確認した。
熱電対の温度変化率以外の温度条件はほぼ同一条件とし、特にインゴット底部の核発生の影響のみを評価できるようにした。
坩堝1下面中央近傍、外坩堝2下面中央近傍(坩堝下面中央近傍の下方20mm位置)の検知温度の相関を確認したところ、常にほぼ10℃の差を保ったまま変化しており、坩堝1下面中央近傍の検知温度がTm−20℃からTm−60℃までの温度範囲が、外坩堝2下面中央近傍の検知温度Tm’−20℃からTm’−60℃までに対応することを確認した。
得られた多結晶シリコンインゴットを、バンドソーを用いてブロック(156mm×156mm×200mm)に加工し、さらにワイヤーソーを用いてスライスして、多結晶シリコンウエハ(156mm×156mm×厚さ0.18mm)約12,000枚を得た。
得られた多結晶シリコンウエハを通常の太陽電池セルプロセスに投入して、1つのインゴット当たり12,000個の太陽電池(外形156mm×156mm×厚さ0.18mm)を作製し、その出力(W)を測定した。
得られた多結晶シリコンウエハを通常の太陽電池セルプロセスに投入して、1つのインゴット当たり12,000個の太陽電池(外形156mm×156mm×厚さ0.18mm)を作製し、その出力(W)を測定した。
一般的に太陽電池の出力が低くなる原因の大部分は、インゴットのトップ側での結晶欠陥、特に結晶成長の時間、つまりインゴットの製造時間が極端に長い場合には、インゴットのボトム側の不純物拡散にあることがわかっている。
したがって、太陽電池の出力分布を評価することにより、インゴットの良否がわかる。
各太陽電池の出力を、ランク1の下限出力を100として規格化し、高出力側からランク1〜3に分類し、各インゴット毎にその存在割合(%)を算出した。
ランク1:出力100以上
ランク2:出力93以上100未満
ランク3:出力93未満
得られた結果を表1および図2に示す。
したがって、太陽電池の出力分布を評価することにより、インゴットの良否がわかる。
各太陽電池の出力を、ランク1の下限出力を100として規格化し、高出力側からランク1〜3に分類し、各インゴット毎にその存在割合(%)を算出した。
ランク1:出力100以上
ランク2:出力93以上100未満
ランク3:出力93未満
得られた結果を表1および図2に示す。
表1および図2の結果から明らかなように、温度変化率が1〜10℃/時間である場合、特に2〜7℃/時間以下である場合において、高ランク品の発生率が高く、インゴット品質が良好であることがわかる。
一方、温度変化率が1℃/時間未満である場合および10℃/時間を超える場合において、低ランク品の発生率が高く、インゴット品質が良好でないことがわかる。
また、得られた多結晶シリコンインゴットの結晶粒径を目視で観察したところ、温度変化率が大きいほど結晶粒径が大きいことがわかった。
一方、温度変化率が1℃/時間未満である場合および10℃/時間を超える場合において、低ランク品の発生率が高く、インゴット品質が良好でないことがわかる。
また、得られた多結晶シリコンインゴットの結晶粒径を目視で観察したところ、温度変化率が大きいほど結晶粒径が大きいことがわかった。
(試験例2)温度変化率の占有率に関する検討
凝固工程では、ヒータ温度および坩堝下降速度を制御することにより、熱電対の温度変化率が1〜10℃/時間になる時間の占める割合(占有率)がそれぞれ0%、20%、40%、60%、80%および100%になる条件とすること以外は、試験例1と同様にして多結晶シリコンインゴットを製造し、太陽電池を作製して、それらの出力分布を評価した。なお温度変化率が1〜10℃/時間となる範囲の他は、平均温度変化率が25℃/時となるように調整した。
この試験では、Tmの実測値は1407℃〜1415℃の範囲内であった。
図1に、占有率60%のときの経過時間(時間)と坩堝下面中央近傍の検知温度(℃)の関係を示す。図中、TG1、TG10およびTG25はそれぞれ温度変化率1℃/時間、10℃/時間および25℃/時間のラインを示す。
すなわち、試験例2でも試験例1と同様に、特にインゴット底部の核発生の影響のみを評価できるようにした。
得られた結果を表2および図3に示す。
凝固工程では、ヒータ温度および坩堝下降速度を制御することにより、熱電対の温度変化率が1〜10℃/時間になる時間の占める割合(占有率)がそれぞれ0%、20%、40%、60%、80%および100%になる条件とすること以外は、試験例1と同様にして多結晶シリコンインゴットを製造し、太陽電池を作製して、それらの出力分布を評価した。なお温度変化率が1〜10℃/時間となる範囲の他は、平均温度変化率が25℃/時となるように調整した。
この試験では、Tmの実測値は1407℃〜1415℃の範囲内であった。
図1に、占有率60%のときの経過時間(時間)と坩堝下面中央近傍の検知温度(℃)の関係を示す。図中、TG1、TG10およびTG25はそれぞれ温度変化率1℃/時間、10℃/時間および25℃/時間のラインを示す。
すなわち、試験例2でも試験例1と同様に、特にインゴット底部の核発生の影響のみを評価できるようにした。
得られた結果を表2および図3に示す。
表2および図3の結果から明らかなように、特定の温度変化率の占有率が20%以上である場合、特に40%以上である場合において、低ランク品の発生率が低下し、良好な品質のインゴットが得られることがわかる。
1 坩堝
2 外坩堝
3 坩堝台
4 原料シリコン
5 坩堝下熱電対
6 外坩堝下熱電対(坩堝下20mm熱電対)
7 チャンバー
8 断熱材
9 制御装置
10 抵抗加熱体(黒鉛ヒータ)
11 冷却槽
12 昇降駆動機構
TG1 温度変化率1℃/時間のライン
TG10 温度変化率10℃/時間のライン
TG25 温度変化率25℃/時間のライン
2 外坩堝
3 坩堝台
4 原料シリコン
5 坩堝下熱電対
6 外坩堝下熱電対(坩堝下20mm熱電対)
7 チャンバー
8 断熱材
9 制御装置
10 抵抗加熱体(黒鉛ヒータ)
11 冷却槽
12 昇降駆動機構
TG1 温度変化率1℃/時間のライン
TG10 温度変化率10℃/時間のライン
TG25 温度変化率25℃/時間のライン
Claims (3)
- 坩堝中の溶融シリコンを前記坩堝の底部から上方に一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを製造する方法であり、シリコン温度がシリコンの融点となる時の坩堝下面中央近傍の検知温度をTmとして前記検知温度が(Tm−20)℃から(Tm−60)℃まで低下する間に、7℃/時間を超え10℃/時間以下の温度変化率で温度低下する時間が存在する条件下で、前記溶融シリコンを一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを得ることを特徴とする多結晶シリコンインゴット製造方法。
- 坩堝中の溶融シリコンを前記坩堝の底部から上方に一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを製造する方法であり、シリコン温度がシリコンの融点となる時の坩堝下面中央近傍の下方20mm位置の検知温度をTm’として前記検知温度が(Tm’−20)℃から(Tm’−60)℃まで低下する間に、7℃/時間を超え10℃/時間以下の温度変化率で温度低下する時間が存在する条件下で、前記溶融シリコンを一方向凝固させて多結晶シリコンインゴットを得ることを特徴とする多結晶シリコンインゴット製造方法。
- 前記7℃/時間を超え10℃/時間以下の温度変化率で温度低下する時間が、20%以上存在する請求項1または2に記載の多結晶シリコンインゴット製造方法。
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