JP5126903B2 - 鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造及び鉄道車両用輪軸 - Google Patents

鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造及び鉄道車両用輪軸 Download PDF

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本発明は、ブレーキディスクの締結に使用するボルトの疲労信頼性を高めて、長期間の使用に耐え得ることを可能とする、鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造、及びこの締結構造によりブレーキディスクを締結した鉄道車両用輪軸に関するものである。
鉄道車両や自動車及び自動二輪車等の陸上輸送機械の制動装置として、ブロックブレーキ、ドラムブレーキ、ディスクブレーキなどが使用されているが、近年は、車両の高速化や大型化に伴い、ディスクブレーキが多用されるようになってきている。
ディスクブレーキとは、回転するブレーキディスクにブレーキライニングを押し付けることによって発生する両者の摩擦により制動力を得る装置である。通常、ボルトにより車軸または車輪に取り付けたドーナツ形の円盤状ディスクの摺動面に、ブレーキライニングを押し付けることにより制動力を得、車軸または車輪の回転を制動して車両の速度を制御する。この摺動面を有する円盤状ディスクをブレーキディスクと称する。
このブレーキディスクの中で、鉄道車両用ブレーキディスクには、側ディスクと軸マウントディスクがある。このうち側ディスクとは、車輪の側面に締結されるブレーキディスクであり、軸マウントディスクとは、車軸にディスク体を介して締結されるブレーキディスクである。
以下、本明細書において、ブレーキディスクと言うときは、側ディスクと軸マウントディスクの両者を指し、かつ、摺動面がブレーキディスクの片側のみに存在するものを指すものとする。
図7は従来型の鉄道車両用側ディスクの形状を示し、(a)はブレーキディスクの1/4を示す半径方向−周方向平面図、(b)は半径方向−軸方向断面図である。同図(a)(b)に示すように、一般にブレーキディスク1は、片側に摺動面2aを備える摺動部2と、車輪に締結するためのボルト挿通孔3aを備える締結部3とから構成されている。なお、図示していないが、ブレーキディスク1の摺動部2において、摺動面2aの反対側の車輪と接触する面には放熱のためのフィンが設けられることが多い。
図8は従来型の鉄道車両用ブレーキディスクが車輪に取り付けられた状態を模式的に示す半径方向−軸方向断面図である。同図に示すように、ブレーキディスク1は、車輪4の両側面に締結部材であるボルト5a、ナット5b及び座金5cによって締結され、車輪4と一体的に回転するように取付けられている。
そして、ブレーキディスク1の摺動面2aと対向する位置には、摺動面2aに対して接離移動可能なブレーキライニング6がそれぞれ取り付けられ、制動時には、ブレーキライニング6がブレーキディスク1側に接近移動して車輪4の両側面から強く狭圧し、この摩擦力によって車輪4を介して車軸の回転を制動して車両を停止させる。
ところで、新幹線等の高速鉄道車両では、ブレーキディスクの回転速度や慣性力が非常に大きいので、制動中のブレーキディスクの温度上昇は著しく大きくなる。そのため、ブレーキディスクの熱変形に伴う、以下の問題が生じる。
1)締結用ボルトに著大な曲げ応力が発生する。
2)ブレーキディスクのボルト挿通孔周縁部に割れ・変形・陥没が発生する。
このような問題の解決を狙った技術として、以下に示すブレーキディスクの締結構造が開示されている。
例えば特許文献1では、片側に摺動面を設けた、特にアルミ基複合材料製のブレーキディスクを使用する場合に、制動時の熱膨張によるボルト挿通孔周縁部の割れ・変形を抑制することを目的とした締結構造が開示されている。
具体的には、図9に示すように、ブレーキディスク1の摺動部2と締結部3を分割して両者の連結部分を歯車状のかみ合い形状とし、前記連結部分の車輪から見て軸方向外側に波形板ばね7と呼ばれる環状体を挿入した締結構造である。
この締結構造により、摩擦熱によるブレーキディスク1の半径方向への膨張をボルト5aが拘束しないことと、締結部のみに強度の高い材料を使用できることが期待され、上記目標の達成を狙っている。
また、特許文献2では、片側に摺動面を設けた、特にアルミ複合材料製のブレーキディスクを使用する場合に、ボルト、ナット、座金等の締結部品に対してブレーキディスクの材料が軟らかいときは、ブレーキディスク締結面に締結部品が食い込み、き裂が発生することの防止を目的とした締結構造が開示されている。
具体的には、図10に示すように、ボルト5aの頭部及びナット5bとブレーキディスク1の締結面、および車輪4とブレーキディスク1の締結面との間に、複数のボルト挿通孔を有するリング状のスペーサー8を挿入した締結構造である。
このような締結構造を採用することで、ボルト等の締結部品を用いてブレーキディスクを締結した場合に、ブレーキディスクの締結面に発生する面圧の低減を狙っている。
また、特許文献3では、特に軽金属製のブレーキディスクの両側に摺動面を設け、車軸とはめ合わされたハブと締結されるブレーキディスクを使用する場合に、制動時にブレーキディスクの摺動面に発生した熱をハブに伝わり難くして、ハブの車軸に対する把握力の低下を抑制することを目的とした締結構造が開示されている。
具体的には、図11に示すように、ブレーキディスク1の締結面とハブ11、及びブレーキディスク1の締結面とハブ11と反対側の面に設けた緊締リング9と呼ばれる環状体との間に、絶縁座金、絶縁板、絶縁リングと呼ばれる薄板部材10を挿入した締結構造である。
このような締結構造を採用することにより、制動時にブレーキディスクの摺動面に発生した熱がハブに伝わり難くなって、ハブの車軸に対する把握力の低下を抑制するという目的の達成を狙っている。
ところで、近年、車両の高速化にともなって制動負荷が増大し、ブレーキディスクと車輪との締結に用いられるボルトに高応力が発生するようになっている。ボルトの発生応力が高くなることは、ボルトの疲労損傷の可能性が高くなることに結びつくので、ボルトを含むディスク締結部の疲労信頼性を向上させることが課題となっている。
ブレーキディスク締結部の疲労信頼性を向上させるには、ボルト及びブレーキディスク自体の疲労強度を向上させるか、締結部の構造を改良してボルト及びブレーキディスクに発生する応力を低減させるという二つの手法が考えられる。
前記特許文献1で開示された技術は両者の手法を、また前記特許文献2、3で開示された技術は後者の手法を採用している。
しかしながら、前記特許文献1で開示された締結構造は、ブレーキディスクの摺動部と締結部が分割されているので、その連結部の形状が複雑になる。また、ブレーキディスクがアルミ基複合材であるので、ボルト締結時の面圧を軽減するために、ボルト頭部又はナットと前記連結部との間に挿入する波形板ばねに板ばね機能を備えるための加工を施さねばならず、製作の手間とコストが大きくなる。さらに、使用途中で波形板ばねにへたりが生じると、ボルトの軸力が低下し、ボルトに過大な応力変動が生じて損傷を引き起こすおそれがある。
また、前記特許文献2及び3で開示された締結構造のように、ボルトとブレーキディスク締結面に環状体を挿入することは、接触部の面圧低減、熱伝導抑制には効果があるものの、ボルトの発生応力低減という意味では、以下の理由で効果が期待できないと考えられる。
すなわち、ブレーキディスク摺動面の摩擦発熱の不均一、ブレーキディスクと車輪又はハブとの接触面の摩擦係数の不均一によって、 ブレーキディスクの熱膨張時にブレーキディスクの軸芯と車輪又はハブの軸芯との間にずれが生じる。この場合、車輪又はハブに対しブレーキディスクの半径方向変位が大きくなる側のボルトに過大な応力が生じるおそれがある。
特開平10−129480号公報 特開平10−129481号公報 特許4092007号公報
本発明が解決しようとする問題点は、最近の車両の高速化にともなう制動負荷の増大に対応するためには、ブレーキディスク締結部の疲労信頼性、特にボルトの疲労信頼性を向上する必要があるという点である。
発明者らは、鉄道車両用ブレーキディスクと車輪との締結構造に関して、制動の繰返しを想定した数値解析を行い、研究を重ねた結果、以下の知見を得た。
(1)制動時の摩擦熱によってブレーキディスクが半径方向外周側に膨張すると、ボルトの幹部が車輪又はディスク体のボルト挿通孔内面と接触して曲げが生じるので、ボルトに作用する応力変動が大きくなる。
(2)ボルトに作用する応力変動は、前記半径方向変位が大きいほど大きくなる。
(3)制動の繰返しによって、ブレーキディスクの軸芯と、車輪又はディスク体には芯ずれが生じる。
(4)(3)の現象は、ブレーキディスク摺動面の摩擦発熱の不均一、ブレーキディスクと車輪又はハブとの接触面の摩擦係数の不均一のために、車輪又はハブに対しブレーキディスクの半径方向変位が円周方向位置によって一定でないことに起因すると推定される。このため、前記半径方向変位が大きい円周方向位置のボルトには過大な応力が生じるおそれがある。
(5)ボルト、ナット、座金等の締結部品とブレーキディスク締結部の間に挿入する環状体の内周面を、車輪又はディスク体のボス部とはめ合い構造とした場合、制動を繰返しても環状体と車輪又はディスク体との芯ずれが生じない。また、制動時にボルトがブレーキディスクの熱膨張によって半径方向に変位することがない。従って、ボルトに作用する応力変動を大幅に低減することが可能になる。
本発明の鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造は、以上の知見に基づいてなされたものであり、
ブレーキディスク締結部の疲労信頼性、特にボルトの疲労信頼性を向上するために、
車輪の両側面、又は車軸にはめ合い締結されたディスク体の両側面に、ボルトとナットを用いてブレーキディスクを締結する締結構造であって、
前記ブレーキディスクの締結部に設けられたボルト挿通孔、および、前記車輪又は前記ディスク体の前記ブレーキディスクとの締結部に設けられたボルト挿通孔と同じ位置にボルト挿通孔を有し、内周面を前記車輪又は前記ディスク体のボス部とのはめ合い構造とした環状体を、前記ブレーキディスク締結部の外側に配置し、ボルトとナットで締結したことを最も主要な特徴としている。
以上の本発明の鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造を用い、ブレーキディスクを車輪の両側面又は車軸にはめ合い締結されたディスク体の両側面に締結した本発明の鉄道車両用輪軸は、長期間使用した場合もブレーキディスク締結部の疲労損傷による不具合を防止できる。
本発明では、ブレーキディスクと車輪又は車軸との締結に際し、ブレーキディスクの締結部、特にボルトの疲労信頼性を向上させることができるので、新幹線等の車両の高速化にともなって制動負荷が増大しても、ブレーキディスク締結部の疲労損傷による不具合を防止することができる。
有限要素法による数値解析に用いた従来形状のモデルを示した図で、(a)は斜視図、(b)は側面図である。 有限要素法による数値解析の結果として得られた、制動時のブレーキディスクとボルトの変形を模式的に示す図である。 本発明締結構造の数値解析に用いたモデルを示した図で、(a)は斜視図、(b)は側面図である。 本発明の鉄道用ブレーキディスクの締結構造を示した図で、(a)は要部の半径方向−軸方向断面図、(b)はブレーキディスクの1/4を示す半径方向−周方向平面図である。 解析を行ったモデルのブレーキディスクと環状体形状を示す図であり、(a)は発明例1、(b)は発明例2、(c)は発明例3、(d)は比較例である。 環状体の内周面と車輪のボス部との隙間量の影響を評価する有限要素法による数値解析に用いたモデル図で、(a)はブレーキディスクの1/2を示す半径方向−周方向平面図、(b)は半径方向−軸方向断面図である。 従来型の鉄道車両用側ディスクの形状を示し、(a)はブレーキディスクの1/4を示す半径方向−周方向平面図、(b)は半径方向−軸方向断面図である。 従来型の鉄道車両用ブレーキディスクが車輪に取り付けられた状態を模式的に示す半径方向−軸方向断面図である。 特許文献1で開示された鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造を示した図で、(a)は摺動部の斜視図、(b)は締結部の斜視図、(c)は摺動部に締結部を連結させた状態の斜視図、(d)は波形板ばねの斜視図、(e)は(c)図のA−A線に沿う断面図である。 (a)は特許文献2で開示された鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造の要部斜視図、(b)は(a)図のA−A断面図である。 特許文献3で開示された鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造の要部断面図である。
本発明では、ブレーキディスク締結部の、特にボルトの疲労信頼性を向上するという目的を、内周面を車輪又は車軸にはめ合い締結されたディスク体のボス部とのはめ合い構造とした環状体を、前記ブレーキディスク締結部の外側に配置することで実現した。
以下、本発明について、図1〜図6を用いて詳細に説明する。
発明者らは、研究の初期段階において、制動時、ボルトに発生する応力を明らかにするため、図1に示す従来形状のブレーキディスク1を、ボルト5aによって車輪4に締結した構造体のモデルを用いて、有限要素法(FEM)による数値解析を行った。
数値解析の結果、図2に模式的に示すように、制動時における温度上昇時には、ブレーキディスク1が凸状に変形して半径方向外周側に膨張するために、ボルト5aに曲げ応力が発生することが分かった。その曲げ応力は、ボルト5aのくびれ部5aaからねじ部5abにかけ、ブレーキディスク1の外周側に面した部位が高応力となるような分布となることも分かった。
ボルトに発生する前記曲げ応力は、熱変形するブレーキディスクを無理やり押さえ付けるために生じるものである。従って、ボルトに発生する前記曲げ応力を低減するには、ブレーキディスクの熱変形を小さくするか、ブレーキディスクの変形に対する剛性を低減するか、ブレーキディスクが変形してもボルトに負荷が作用しない構造とすることが有効と考えられる。
前二者については、ブレーキディスクの摺動部の板厚を厚くすること、締結部の板厚を薄くすることで実現できることが分かっている。発明者らは、最後者の対策であるブレーキディスクが変形してもボルトに負荷が作用しない構造とすることに着目した。
発明者らは、ボルト、ナット、座金等の締結部品とブレーキディスクの締結部との間に、前記締結部のボルト挿通孔と同じ位置にボルト挿通孔を有する環状体を挿入し、この環状体の内周面を車輪又はディスク体のボス部外周とのはめ合い構造とすることを考えた。そして、図3に示すブレーキディスク1−車輪4−ボルト5a−環状体12による締結体のモデルを用いて有限要素法による数値解析を行った。
これは、図4に示す締結構造に基づき、その対称性を考慮して軸方向に1/2の領域で、周期性を考慮して円周方向に15°分の領域をモデル化したものである。図3中の環状体12の内周面の径と車輪4のボス部の外周面の直径は、はめ合いを模擬するため、同一寸法としている。
このモデルを用いて、まずボルト5aに軸力としてボルト1本当たり150kNを与えて締結状態を再現した後、ブレーキディスク1の摺動面2aに275km/hから停止するまでの制動に相当する熱量を与え、その後放冷させた。
この時のボルト5aのねじ部5abと幹部5acの間に設けたくびれ部5aaにおける応力範囲と、前記幹部5acにおける曲げモーメント分布と引張荷重に基づき、前記ねじ部5abに外挿して求めた応力範囲と、ボルト5aのねじ部5ab中心位置のブレーキディスク1の半径方向変位量を下記表1に示す。下記表1には、図1に示した従来形状のモデルによる解析結果も比較して示している。
表1に示した応力範囲は、全てブレーキディスク1の外周側に向いた部位の軸方向応力の制動中の変化量である。ブレーキディスク1の外周側としたのは、制動によりボルト5aに発生する曲げ応力が、外周側が高応力となるように発生するためである。
Figure 0005126903
表1 より、環状体12を挿入した本発明の締結構造では、ボルト5aのくびれ部5aaにおける応力範囲が大幅に低減されていることが分かる。これは、本発明の締結構造の場合は、制動時にボルト5aがブレーキディスク1の半径方向に変位することがないためである。さらに、実際に疲労損傷が生じるおそれがあるねじ部5abに外挿して求めた応力範囲についても同様に低減されていることが分かる。
上記の数値解析は、ブレーキディスクの摺動面上の摩擦発熱がブレーキディスクの円周方向に均一で、ブレーキディスクと車輪またはハブとの接触面の摩擦係数も均一であり、制動時にブレーキディスクが半径方向外周側に膨張・収縮する場合にブレーキディスクの半径方向変位は円周方向の各位置で全く同じ、すなわちブレーキディスク、車輪、ボルト締結位置のピッチ円直径、それぞれの軸芯が一致したままであることを前提としたものである。
しかしながら、実際に制動試験を繰り返し行った場合、徐々にブレーキディスク、車輪の軸芯にずれが生じること、ボルトの挿入位置も初期状態から若干変化することが分かった。
この現象は、ブレーキディスクの摺動面の摩擦発熱の不均一、ブレーキディスクと車輪又はハブとの接触面の摩擦係数の不均一のために、車輪又はハブに対するブレーキディスクの半径方向変位が、円周方向位置によって一定でないことに起因すると推定される。このため、図11の従来形状の場合、前記半径方向変位が大きい円周方向位置のボルトには、さらに過大な応力が生じるおそれがある。
さらに、ブレーキディスクは1枚の車輪の両側に2枚配置されているが、この2枚が必ずしも全く同じ変形挙動を示すとは限らない。両側のブレーキディスクの半径方向変位が異なる場合も、ボルトに過大な応力変動が生じるおそれがある。
このような挙動を示すのは、図11に示した従来の締結構造に限らず、締結部品とブレーキディスクの締結面に環状体が挿入されていても、環状体が車輪に対し軸芯がずれる動きに対して拘束しない構造であれば生じる可能性がある。
従って、環状体は車輪に対し、常に軸芯がずれないように拘束される必要があるため、図4に示した本発明の締結構造では、環状体12の内周面12bを、車輪4又はディスク体のボス部4aの外周とはめ合う構造とした。
このはめ合い部は、前記表1に示した従来形状のボルトの半径方向変位より十分小さければ良いことから、軸受等のはめ合いに常用される、日本工業規格のJIS B0401に規定された中間ばめ、またはすきまばめとすれば良い。例えば中間ばめの場合は、環状体の内周面をH7、車輪のボス部の外周面をh7にする。また、すきまばめの場合は、環状体の内周面をH7、車輪のボス部の外周面をg7にする。
本発明の鉄道用ブレーキディスクの締結構造は、以上の解析結果に基づいてなされたものであり、
車輪の両側面、又は車軸にはめ合い締結されたディスク体の両側面に、ボルトとナットを用いてブレーキディスクを締結する締結構造であって、
前記ブレーキディスクの締結部に設けられたボルト挿通孔、および、前記車輪又は前記ディスク体の前記ブレーキディスクとの締結部に設けられたボルト挿通孔と同じ位置にボルト挿通孔を有し、内周面を前記車輪又は前記ディスク体のボス部とのはめ合い構造とした環状体を、前記ブレーキディスク締結部の外側に配置し、ボルトとナットで締結したことを特徴とするものである。
また、以上の本発明の鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造を用い、ブレーキディスクを車輪の両側面又は車軸にはめ合い締結されたディスク体の両側面に締結したものが本発明の鉄道車両用輪軸である。
以下に、本発明の効果を確認するために行った解析結果について説明する。
下記表2に、解析したモデル形状の明細を示す。
Figure 0005126903
発明例には3種類の形状があり、その中の発明例1と比較例は前記表1に結果を示したものと同じである。また、発明例2,3は、発明例1に比べて環状体の板厚trを薄肉化し、その代わりにブレーキディスクの締結部の板厚tbを厚くした形状である。
それぞれブレーキディスクは、外径が725mmで、締結部のボルト挿通孔のピッチ円直径は385mmと、全てのモデルで同一にしている。また、車輪、ボルトも全て同じ形状のモデルを使用している。
図5(a)〜(d)に発明例1〜3と比較例のブレーキディスク1と環状体12の形状を示す。これらのモデルも、前記したように周期性を考慮して円周方向に15°分の領域をモデル化している。また、環状体12の内周面12bの径と車輪4のボス部4aの外周面の直径ははめ合いを模擬するため、同一寸法としている。
解析に使用するディスク、ボルト、車輪それぞれの物性・強度特性には、従来品として使われている鉄鋼材料の測定値を用いた。そして、まず、ボルトに1本当たり150kNに相当する軸力を与え、その後摺動面上に初速275km/hから制動をかけた時の運動エネルギーに相当する熱量を与えて得た温度分布とその変化を基に熱応力を解析した。
前記表2中には解析で得られたボルトのくびれ部の応力範囲も比較して示している。この応力範囲は、くびれ部においてブレーキディスクの外周側に向いた部位の軸方向応力の制動中の変化量である。ブレーキディスクの外周側としたのは、制動時にでボルトに発生する曲げ応力は、外周側が高応力となるように発生するためである。
表2より、発明例1〜3の何れも比較例に比べてボルト発生応力が50%以上低減されることが分かる。発明例1〜3を比較すると、環状体の板厚が薄いほどボルトの応力範囲が大きくなる傾向が見られたが、環状体の板厚が4mmであっても、比較例に対してはボルトの応力範囲が大幅に低減されていることが分かる。
但し、表2には示していないが、環状体自体に発生する応力は当然ながら環状体の板厚が薄いほど高応力となる傾向があるため、板厚に応じて環状体に用いる材料の強度を選定する必要がある。
また、発明例で用いた環状体のモデルにはボルト挿通孔のみが設けられているが、必要に応じて車輪とブレーキディスクのフィン側との隙間に冷却風を通すため、または車輪油圧ばめ用の油圧ホースを挿入するための孔または切欠を設けてもよい。
次に、前記環状体12の内周面12bを車輪4またはディスク体のボス部4aの外周とのはめ合い構造とすることの有効性を確認するため、図6に示すモデルを用いて有限要素法による数値解析を行った。
図6に示したモデルは、先に図3に示した15°分のモデルを180°に拡張したものである。環状体12のモデルには、その内周面12bの直径を変えた2種類があり、車輪4のボス部4aとの隙間は、それぞれ0.0mm、0.1mm、0.5mmとなっている。
数値解析では、ボルト5aに150kNの軸力を与え、ブレーキディスク1が、図6に白抜き矢印で示すように、対称面に平行方向に0.7mm移動するような強制変位を与えた。
この解析条件は、長期間の使用でかなりの回数の制動が負荷されることで、ブレーキディスク1と車輪4に芯ずれが生じる現象を想定して、芯ずれが起こった状態のボルト5aの発生応力を評価することを意図して設定したものである。
下記表3に、評価ボルト(図6で斜線を施した紙面右側のボルト)の外周側くびれ部の応力の増加量を示す。
Figure 0005126903
表3より、環状体の内周面と車輪のボス部との隙間が0.0mmではボルトの応力は全く変化しないが、前記隙間が0.1mm、0.5mmと大きくなるにつれてボルトの応力増加量が大きくなっていることが分かる。
以上より、環状体の内周面と車輪のボス部の隙間量はできるだけ小さくする方が好ましいことが分かる。しかしながら、組み立て性をも勘案すると、環状体の内周面と車輪のボス部の隙間量は、前記したJIS B0401に規定された中間ばめ又はすきまばめのはめ合い構造とするのが現実的といえる。
ちなみに、先にはめ合い構造の一例として挙げた、環状体の内周面をH7、車輪のボス部の外周面をh7にする中間ばめのすきま量は0.00〜0.10mm、また環状体の内周面をH7、車輪のボス部の外周面をg7にするすきまばめのすきま量は0.01〜0.12mmである。
以上より、ボルト、ナット、座金等の締結部品とブレーキディスク締結部の間に、ブレーキディスクの締結部に設けられたボルト挿通孔と同じ位置にボルト挿通孔を有する環状体を挿入し、この環状体の内周面を車輪またはディスク体のボス部外周とのはめ合い構造とすることが、ボルト発生応力の低減,ボルトを含むディスク締結部の疲労信頼性向上に有効であると結論付けられる。
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範囲内で、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
例えば上記の例ではブレーキディスクの材料を鉄鋼材料として解析したが、アルミ複合材料といった他の材料でも本発明は有効と考えられる。また、上記の例ではブレーキディスクがボルトで締結される部材を車輪と呼んだが、これを車軸にはめ合わされたディスク体とし、軸マウントディスクとして使用しても同様な効果が得られる。
以上の本発明は、鉄道車両用のブレーキディスクに限らず、自動車や自動二輪車等のブレーキディスクであっても適用できる。
1 ブレーキディスク
2 摺動部
2a 摺動面
3 締結部
3a ボルト挿通孔
4 車輪
4a ボス部
5a ボルト
5b ナット
5c 座金
6 ブレーキライニング
12 環状体
12a ボルト挿通孔
12b 内周面

Claims (2)

  1. 車輪の両側面、又は車軸にはめ合い締結されたディスク体の両側面に、ボルトとナットを用いてブレーキディスクを締結する締結構造であって、
    前記ブレーキディスクの締結部に設けられたボルト挿通孔、および、前記車輪又は前記ディスク体の前記ブレーキディスクとの締結部に設けられたボルト挿通孔と同じ位置にボルト挿通孔を有し、内周面を前記車輪又は前記ディスク体のボス部とのはめ合い構造とした環状体を、前記ブレーキディスク締結部の外側に配置し、ボルトとナットで締結したことを特徴とする鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造。
  2. 請求項1に記載の鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造を用い、ブレーキディスクを車輪の両側面又は車軸にはめ合い締結されたディスク体の両側面に締結したことを特徴とする鉄道車両用輪軸。
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