JP5125719B2 - 波長板及びこれを用いた光ピックアップ装置並びにプロジェクタ - Google Patents
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Description
例えば、2枚の水晶板を接合して形成される積層波長板や、薄い水晶板を水晶保持用ガラス板に接合した波長板等がある。
特許文献2で示される従来例では、被接合面が活性化された光学部材同士を直接接合するため、被接合面の表面粗さが大きかったり、うねりが大きかったりすると、接合することができない。
つまり、高温下で光学部材同士を接合した後常温に戻すと、線膨張係数が異なる光学部材同士にずれが生じる等、不具合となる。
本発明のある別の実施形態に係る波長板は、少なくともいずれか一方が異方性の線膨張係数を有している第一光学部材及び第二光学部材と、前記第一光学部材と前記第二光学部材との間に積層されており、分子接合により構成されているプラズマ重合膜と、を含み、前記第一光学部材は水晶で構成され、前記第二光学部材は前記水晶を保持するガラスで構成されていることを特徴とする。
本発明のある別の実施形態に係る波長板は、前記プラズマ重合膜の主材料がポリオルガノシロキサンであることを特徴とする。
本発明のある別の実施形態に係る光ピックアップ装置は、上述の何れかの波長板を備えていることを特徴とする。
本発明のある別の実施形態に係るプロジェクタは、上述の何れかの波長板を備えていることを特徴とする。
[適用例1]
本適用例にかかる光学物品は、第一光学部材及び第二光学部材の少なくともどちらか一方が異方性の線膨張係数を有し、前記第一光学部材と、前記第二光学部材と、これらの光学部材を分子接合する接合層とを備え、前記接合層はプラズマ重合膜であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、第一光学部材と第二光学部材とを分子接合するので、これらの部材の線膨張係数が異なるものであっても、接着剤が不要となる。
従って、本適用例では、接着剤を使用しないので、第一光学部材と第二光学部材との接合部分に厚さのバラツキがなくなって波面収差がなく、耐光性が向上する。そして、第一光学部材と第二光学部材とを分子接合するので、高温での処理が不要となり、線膨張係数の異なる光学部材同士を接合することができる。
しかも、第一光学部材と第二光学部材との接合面にそれぞれプラズマ重合膜を形成し、これらの重合膜同士を押し付けて第一光学部材と第二光学部材とを強固に接合する。
従って、第一光学部材と第二光学部材との接合面に微小な凹凸面があっても、この凹凸面をプラズマ重合膜で追従することができるので、光学部材同士の接合が可能となる。その上、第一光学部材と第二光学部材とで熱膨張が異なっても、プラズマ重合膜で追従することができる。
本適用例にかかる光学物品は、前記プラズマ重合膜の主材料がポリオルガノシロキサンである。そして、このポリオルガノシロキサンはオクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする。
この構成の本適用例では、プラズマ重合膜の主材料であるポリオルガノシロキサンが比較的に柔軟性に富んでいるので、線膨張係数が異なる第一光学部材と第二光学部材とを接合する際に、両光学部材の熱膨張に伴う応力を緩和することができる。そのため、第一光学部材と第二光学部材との剥離を確実に防止することができる。しかも、ポリオルガノシロキサンは、耐薬品性に優れているため、薬品等に長期に曝される光学物品に効果的に用いることができる。そして、ポリオルガノシロキサンの主成分をオクタメチルトリシロキサンの重合物とすれば、この重合物は取扱性に優れているだけでなく、当該重合物からなるプラズマ重合膜は密着性が優れているので、好適である。
本適用例にかかる光学物品は、前記第一光学部材と前記第二光学部材とはそれぞれ水晶であり、これらの水晶は積層波長板を構成する。
この構成の本適用例では、光学物品が水晶積層波長板であり、これらの水晶は結晶軸により熱膨張係数が異なる。そのため、積層される水晶同士は互いに熱膨張系数が異なるので、前述の効果を奏することができる水晶積層波長板を提供することができる。
本適用例にかかる光学物品は、前記第一光学部材は波長板を構成する水晶であり、前記第二光学部材は前記波長板を保持するガラスである。
この構成の本適用例では、光学物品が波長板をガラスで保持した構造であるため、波長板を薄くしても、ガラスで保持されているので、波長板が破損することがない。このような構造の光学物品において前述の効果を奏することができる。
また、第二光学部材はガラスであるので線膨張が等方性であるが、第一光学部材は水晶であるので線膨張が異方性である。積層物において、一方の光学部材の線膨張係数が方位角により異なっていれば、前述のような熱膨張による応力が発生するので、その緩和にも効果を奏することができる。
本適用例にかかる光学物品の製造方法は、前記第一光学部材の接合面と前記第二光学部材の接合面とのそれぞれにプラズマ重合膜を形成する重合膜形成工程と、前記接合面に形成された前記プラズマ重合膜を活性化する表面活性化工程と、前記プラズマ重合膜の表面が活性化された前記第一光学部材と前記第二光学部材とを貼り合わせて一体化する貼合工程と、を備えたことを特徴とする。
この構成の本適用例では、重合膜形成工程で、第一光学部材と第二光学部材との接合面にそれぞれプラズマ重合膜を形成する。そして、表面活性化工程では表面を効率よく活性化する。表面活性化工程は、例えば、プラズマを照射する方法、オゾンガスに接触させる方法、オゾン水で処理する方法、あるいは、アルカリ処理する方法等を用いることができる。さらに、貼合工程でプラズマ重合膜同士を押し付けて第一光学部材と第二光学部材とをプラズマ重合膜を介して接合する。ここで、接合強度をより強めるために、間にプラズマ重合膜が設けられた第一光学部材と第二光学部材とを、必要に応じて25〜100℃に加熱する。
従って、本適用例では、貼合工程での高温処理が不要とされ、仮に、加熱する場合であっても25〜100℃という従来例の400℃に対して比べものにならない程度での温度であるから、線膨張係数の異なる光学部材同士の接合が簡易な方法で実現できる。
本適用例にかかる光学物品の製造方法は、前記重合膜形成工程は、前記第一光学部材の接合面と前記第二光学部材の接合面とのそれぞれに形成されるプラズマ重合膜を、その平均厚さが10〜1000nmとなるようにする。
第一光学部材や第二光学部材に形成されるプラズマ重合膜の厚さを10〜1000nmとすることで、プラズマ重合膜にある程度の形状追従性を確保することができるから、接合面に多少の凹凸があっても、2つの光学部材を強固に接合することができる。
まず、本実施形態にかかる光学物品を図1から図4に基づいて説明する。
図1は光学物品として積層波長板を説明する場合の概略構成図である。積層波長板は、例えば、光ピックアップ装置に用いられるものである。
図1において、光学物品1は、第一光学部材11と、第二光学部材12と、これらの第一光学部材11と第二光学部材12とを分子接合する接合層13とを備えた積層波長板である。第一光学部材11と第二光学部材12とは線膨張係数が異なる。
第一光学部材11と第二光学部材12とは、それぞれ水晶から形成された波長板であり、これらの波長板は互いに結晶光学軸が交差するように積層された構造である。なお、波長板を形成する結晶材料としては、水晶以外にも、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、サファイヤ、BBO、方解石、YVO4等を例示できる。
図2において、光学物品2は、第一光学部材21と、この第一光学部材21に設けられる第二光学部材22と、この光学部材22と第一光学部材21とを分子接合する接合層13とを有するガラス板付き波長板である。第一光学部材21と第二光学部材22とは線膨張係数が異なる。
ここで、第二光学部材22は、水晶、その他の材質から形成される薄肉波長板であり、第一光学部材21は薄肉波長板を保持するガラス板である。
第一光学部材21を形成するガラス板としては、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、結晶化ガラス等の光学ガラスを例示できる。
図3において、光学物品3は、第一光学部材31と、この第一光学部材31に接合される第二光学部材32と、この光学部材32と第一光学部材31とを分子接合する接合層13とを有するグレーティング付き波長板である。
第一光学部材31は波長板であり、水晶、その他の材質から形成される。第一光学部材31の表面にはエッチング等によって、回折格子が形成される。
第二光学部材32は波長板である。この波長板は、水晶、その他の材質から形成される。なお、この波長板が水晶の場合の多くは、結晶軸が異なる水晶同士が接合されるので、互いの線膨張係数は異なる。
図4において、光学物品4は、第一光学部材41と、この第一光学部材41に設けられる第二光学部材42と、第二光学部材42と第一光学部材41とを分子接合する接合層13とを備えた開口フィルタである。第一光学部材41と第二光学部材42とは線膨張係数が異なる。
第一光学部材41はガラス基板である。第二光学部材42は波長板であり、表面に位相調整材421と波長選択材422が施されている。位相調整層421は、互いに波長の異なる複数の光線のうち、全ての波長の光線を透過するものであり、波長選択層422は所定波長の光線の透過を阻止するものである。
なお、本実施形態では、第一光学部材11,21,31,41及び第二光学部材12,22,32,42は、ケイ素含有基材であれば、水晶、ガラス以外にもサファイヤ、その他の材質を用いることができ、さらに、製品としての光学物品1〜4は、光学レンズ、マイクロレンズ、プリズム、等であってもよい。
第一光学部材11,21,31,41の接合面と第二光学部材12,22,32,42の接合面とのそれぞれにプラズマ重合膜131が設けられており、これらのプラズマ重合膜131が互いに重合されて接合層13が形成される(図7参照)。
本実施形態で使用されるプラズマ重合膜131は、後述する通り、その主材料がポリオルガノシロキサンである。このポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合をもつ高分子化合物の総称である。
図5は、本実施形態で使用するプラズマ重合装置の概略図である。
図5において、プラズマ重合装置100は、チャンバー101と、このチャンバー101の内部にそれぞれ設けられる第1電極111及び第2電極112と、これらの第1電極111と第2電極112との間に高周波電圧を印加する電源回路120と、チャンバー101の内部にガスを供給するガス供給部140と、チャンバー101の内部のガスを排出する排気ポンプ150を備えた構造である。
第1電極111は、基材として、第一光学部材11,21,31,41や第二光学部材12,22,32,42を支持するものであり、第一光学部材11,21,31,41や第二光学部材12,22,32,42を挟んで第1電極111と第2電極112とが対向配置されている。
ガス供給部140は、液状の膜材料(原料液)を貯蔵する貯液部141と、液状の膜材料を気化して原料ガスに変化させる気化装置142と、キャリアガスを貯留するガスボンベ143とを備えている。このガスボンベ143に貯留されるキャリアガスは、電界の作用によって放電し、この放電を維持するためにチャンバー101に導入するガスであって、例えば、アルゴンガスやヘリウムガスが該当する。
これらの貯液部141、気化装置142及びガスボンベ143とチャンバー101とが配管102で接続されており、ガス状の膜材料とキャリアガスとの混合ガスをチャンバー101の内部に供給するように構成されている。
貯液部141に貯留される膜材料は、プラズマ重合装置100によって第一光学部材11,21,31,41や第二光学部材12,22,32,42にプラズマ重合膜131を形成するための原材料であり、気化装置142で気化されて原料ガスとなる。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜131は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、つまり、ポリオルガノシロキサン、有機金属ポリマー、炭化水素系ポリマー、フッ素系ポリマー等で構成されることになる。
撥水性を示すポリオルガノシロキサンで構成されたプラズマ重合膜131は、それ同士を接触させても、有機基によって接着が阻害されることになり、極めて接着し難い。一方、親水性を示すポリオルガノシロキサンで構成されたプラズマ重合膜131は、それ同士を接触させると、特に容易に接着することができる。つまり、撥水性と親水性の制御を容易に行えるという利点は、接着性の制御を容易に行えるという利点につながるため、ポリオルガノシロキサンで構成されたプラズマ重合膜131は、本実施形態では好適に用いられることになる。そして、ポリオルガノシロキサンは比較的柔軟性に富んでいるので、第一光学部材11,21,31,41と第二光学部材12,22,32,42との構成材質が相違して線膨張係数が異なっても、第一光学部材11,21,31,41と第二光学部材12,22,32,42との間に生じる熱膨張に伴う応力を緩和することができる。さらに、ポリオルガノシロキサンは耐薬品性に優れているため、薬品類等に長期にわたって曝されるような部材の接合に効果的に用いることができる。
まず、図6(A)〜(C)に示される通り、第一光学部材11,21,31,41や第二光学部材12,22,32,42の接合面にプラズマ重合膜を形成する(重合膜形成工程)。
この重合膜形成工程では、プラズマ重合装置100のチャンバー101の第1電極111に、基材として第一光学部材11,21,31,41又は第二光学部材12,22,32,42を保持する。そして、チャンバー101の内部に酸素を所定量導入するとともに第1電極111と第2電極112との間に電源回路120から高周波電圧を印加して光学部材自体の活性化(基板活性化)を実施する。
その後、ガス供給部140を作動させると、チャンバー101の内部に原料ガスとキャリアガスとの混合ガスが供給される。供給された混合ガスはチャンバー101の内部に充填され、図6(A)に示される通り、基材としての第一光学部材11,21,31,41又は第二光学部材12,22,32,42に混合ガスが露出される。
第1電極111と第2電極112との間に印加する周波数は、特に限定されないが、1kHz〜100MHz程度であるのが好ましく、10〜60MHz程度がより好ましい。高周波の出力密度は特に限定されないが、0.01〜10W/cm2程度であることが好ましく、0.1〜1W/cm2程度であるのがより好ましい。
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度が好ましく、1〜100sccm程度がより好ましい。
キャリアガス流量は、5〜750sccm程度が好ましく、10〜500sccm程度がより好ましい。
処理時間は1〜10分程度であることが好ましく、4〜7分程度がより好ましい。
基材としての第一光学部材11,21,31,41又は第二光学部材12,22,32,42の温度は、25℃以上が好ましく、25〜100℃がより好ましい。
プラズマ重合膜131は、その平均厚さが10〜1000nmであり、50〜500nmが好ましい。プラズマ重合膜131の平均厚さが10nmを下回ると、十分な接合強度を得ることができず、1000nmを超えると、接合体の寸法精度が著しく低下する。
表面活性化工程は、例えば、プラズマを照射する方法、オゾンガスに接触させる方法、オゾン水で処理する方法、あるいは、アルカリ処理する方法等を用いることができる。
ここで、活性化させる、とは、プラズマ重合膜131の表面及び内部の分子結合が切断されて終端化されていない結合手が生じた状態や、その切断された結合手にOH基が結合した状態、又は、これらの状態が混在した状態をいう。
この表面活性化工程では、プラズマ重合膜131の表面を効率よく活性化させるためにプラズマを照射する方法が好ましい。プラズマ重合膜131の表面に照射するとしたのは、プラズマ重合膜131の分子構造を必要以上に、例えば、プラズマ重合膜131と第一光学部材11,21,31,41又は第二光学部材12,22,32,42との境界に至るまで切断しないので、プラズマ重合膜131の特性の低下を避けるためである。
このようなプラズマを使用することで、プラズマ重合膜131の特性の著しい低下を防止するとともに、広範囲のムラをなくし、より短時間で処理することができる。そして、プラズマはプラズマ重合膜を形成する装置と同設備で発生させることができるから、製造コストが低減できるという利点もある。
プラズマを照射する時間は、プラズマ重合膜131の表面付近の分子結合を切断し得る程度の時間であれば特に限定されるものではないが、5sec〜30min程度であるのが好ましく、10〜60secがより好ましい。
このようにして活性化されたプラズマ重合膜131の表面には、OH基が導入される。
なお、本実施形態では、プラズマ重合膜形成工程と表面活性化工程との間に第一光学部材11,21,31,41や第二光学部材12,22,32,42を洗浄する工程を設けてもよい。この洗浄工程は、薬品、水、その他の適宜な手段を用いて行われる。
つまり、図7(A)(B)に示される通り、第一光学部材11,21,31,41と第二光学部材12,22,32、42とをそれぞれプラズマ重合膜131を対向させた状態で互いに押し付ける。
表面が活性化されたプラズマ重合膜131は、その活性状態が経時的に緩和するので、表面活性化工程の後速やかに貼合工程に移行する。具体的には、表面活性化工程の後、60分以内に貼合工程に移行するのが好ましく、5分以内に移行するのがより好ましい。この時間内であれば、プラズマ重合膜131の表面が十分な活性状態を維持しているので、貼り合わせに際して十分な結合強度を得ることができる。
(1)2つの基材同士、本実施形態では、第一光学部材11,21,31,41と第二光学部材12,22,32,42とを貼り合わせると、各プラズマ重合膜131の表面にそれぞれ存在するOH基同士が隣接することになる。この隣接したOH基同士は、水素結合によって互いに引き合い、OH基同士の間に引力が発生する。また、この水素結合によって互いに引き合うOH基同士は温度条件によって脱水縮合を伴って表面から離脱する。その結果、2つのプラズマ重合膜131同士の接触境界では、脱離したOH基が結合していた結合手同士が結合する。つまり、各プラズマ重合膜131を構成するそれぞれの母材同士が直接結合して一体化し、1層のプラズマ重合膜、つまり、接合層13が形成される。
(2)2つの基材同士を貼り合わせると、各プラズマ重合膜131の表面や内部に生じた終端化されていない結合手同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成される。これにより、各プラズマ重合膜131を構成するそれぞれの母材同士が直接接合して一体化し、一層のプラズマ重合膜、つまり、接合層13が形成される。
この加圧工程では、接合強度を大きくするために、第一光学部材11,21,31,41と第二光学部材12,22,32,42とを大きな力で加圧することが好ましい。具体的には、加圧するための圧力は、 第一光学部材11,21,31,41や第二光学部材12,22,32,42の厚さ寸法や装置等の条件によって異なるものの、1〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPaがより好ましい。加圧時間は特に限定されないが、10sec〜30min程度であるのが好ましい。
この加熱工程は必要に応じて設けられるものであり、その加熱温度は、25〜100℃であり、好ましくは、50〜100℃である。100℃を超えると、光学物品1〜4が変質・劣化するおそれがある。加熱時間は1〜30min程度であることが好ましい。
なお、この加熱工程は加圧工程の後で単独に行ってもよいが、加圧工程と同時に行うことが接合強度を強める上で好ましい。
(1)第一光学部材11,21,31,41及び第二光学部材12,22,32,42と、これらの第一光学部材11,21,31,41と第二光学部材12,22,32,42とを分子接合する接合層13とを備え、第一光学部材11,21,31,41及び第二光学部材12,22,32,42の少なくともどちらか一方が異方性の線膨張係数を有する構成とした。そのため、第一光学部材11,21,31,41と第二光学部材12,22,32,42とが分子接合されることで接着剤が不要となり、その結果、第一光学部材11,21,31,41と第二光学部材12,22,32,42との接合部分に厚さのバラツキがなくなって波面収差がなくなる。
しかも、接着剤を使用しないことで、耐光性が向上する。そして、光学部材同士を直接プラズマ接合する従来例に比べて高温での処理が不要となり、線膨張係数の異なる第一光学部材11,21,31,41と第二光学部材12,22,32,42とを接合することができる。
(5)加圧工程の後に、50〜100℃で加熱する加熱工程を備えれば、接合強度をより高めることができる。
(6)加熱工程を貼合工程と同時に行えば、作業効率が向上し、光学物品1〜4の製造時間の短縮が図れる。
実施例は、プラズマ重合膜131を介して第一光学部材11,21,31,41と第二光学部材12,22,32,42とを接合して構成された光学物品1〜4に対応するものである。第一光学部材11,21,31,41として縦横厚さ寸法が35.5mm×33.5mm×0.5mmの水晶基板を用い、第二光学部材12,22,32,42として縦横厚さ寸法が35.5mm×33.5mm×1.1mmの石英基板を用いた。
[プラズマ重合膜形成工程]
実施例では、第一光学部材11,21,31,41や第二光学部材12,22,32,42に対応する基板をプラズマ重合装置100のチャンバー101に投入し、このチャンバー101に酸素を100ccm導入し、チャンバー101の内部に設けられた第1電極111と第2電極112との間に周波数13.5MHz、電力100Wの電圧を供給して基板活性化を実施する。その時間は60秒である。
その後、次の成膜条件でチャンバー101の内部に原料ガスとキャリアガスとを投入し、プラズマ重合膜を形成する。
<成膜条件>
原料ガスの組成 :オクタメチルトリシロキサン
原料ガスの流量 :100sccm
キャリアガスの組成 :アルゴン
キャリアガスの流量 :10ccs
高周波電力の出力 :100W
処理時間 :10分
膜厚 :350nm
プラズマ重合膜131に紫外線を次の条件下でプラズマを照射して表面を活性化する。
<プラズマ照射条件>
導入ガス :酸素
流量 :20sccm
真空度 :55Pa
印加電圧 :100W(周波数13.56MHz)
照射時間 :30sec
本実施例では、プラズマ重合膜形成工程と表面活性化工程との間に基板を洗浄する。
それぞれプラズマ重合膜131が形成された一対の基板を、プラズマ重合膜131同士が対向した状態で貼り合わせる。
[加圧工程]
さらに、大気圧加圧装置を用いて一対の基板を加圧する。この際の加圧条件は、10kN、10秒であり、温度は室温(20℃)である。
比較例は、前記一対の基板の接合面にそれぞれ光硬化型接着剤(商品名UT20)を塗布し、これらの基板同士を貼り合わせた後、紫外線を照射して硬化させたものである。この光硬化型接着剤により形成される接合部の厚さの面内分布は概ね5μmから10μmである。
図8は同一条件の実施例を2例作成し、同一条件の比較例を2例作成した場合の透過波面収差を上記測定器で測定した結果を示す。図8(A)(B)は実施例を示し、図8(C)(D)は比較例を示す。
図8(A)(B)で示される通り、2つの実施例では、干渉縞を認識することができず、波面収差が極めて低いことがわかる。これに対して、図8(C)(D)で示される通り、2つの比較例では、干渉縞を明らかに認識することができるので、波面収差が極めて高いことがわかる。
その測定結果を図9に示す。図9では、ベースBの上に実施例の9つのサンプルS1〜S9を配置し、これらのサンプルS1〜S9における両端部の膜厚t1R〜t9R,t1L〜t9Lをそれぞれ段差測定した。なお、図9中、符号HはベースBに設けられたホルダーである。また、段差測定に際しては、サンプルS1〜S9の両端部にマスキングテープを貼り付けておく。
サンプルS1では膜厚t1Lが186.3nmであり、膜厚t1Rが238.6nmである。
サンプルS2では膜厚t2Lが300.8nmであり、膜厚t2Rが239.2nmである。
サンプルS3では膜厚t3Lが279.8nmであり、膜厚t3Rが231.6nmである。
サンプルS4では膜厚t4Lが244.6nmであり、膜厚t4Rが277.8nmである。
サンプルS5では膜厚t5Lが327.3nmであり、膜厚t5Rが304.4nmである。
サンプルS6では膜厚t6Lが320.9nmであり、膜厚t6Rが256.7nmである。
サンプルS7では膜厚t7Lが219.4nmであり、膜厚t7Rが260.2nmである。
サンプルS8では膜厚t8Lが314.6nmであり、膜厚t8Rが298.3nmである。
サンプルS9では膜厚t9Lが312.3nmであり、膜厚t9Rが241.8nmである。
以上の測定結果から実施例では、接合層の膜厚が薄く、従来技術の光硬化型接着剤よりも膜厚分布が良いことがわかる。
このように接合部の膜厚が薄い接合方法を採用することで、面内の膜厚分布が良くなり、よって波面収差が極めて高い積層波長板を得ることができる。
例えば、前記実施形態では、1つの第一光学部材11,21,31,41と1つの第二光学部材12,22,32,42との間に接合層13が形成される構成としたが、本発明では、第一光学部材11,21,31,41と第二光学部材12,22,32,42との少なくとも一方を複数に分割し、3つ以上の光学部材が接合層を介して互いに接合される構成であってもよい。
Claims (5)
- 水晶で構成されており、且つ、少なくともいずれか一方が異方性の線膨張係数を有している第一光学部材及び第二光学部材と、
前記第一光学部材と前記第二光学部材との間に積層されており、分子接合により構成されているプラズマ重合膜と、
を含むことを特徴とする波長板。 - 少なくともいずれか一方が異方性の線膨張係数を有している第一光学部材及び第二光学部材と、
前記第一光学部材と前記第二光学部材との間に積層されており、分子接合により構成されているプラズマ重合膜と、
を含み、
前記第一光学部材は水晶で構成され、
前記第二光学部材は前記水晶を保持するガラスで構成されていることを特徴とする波長板。 - 請求項1又は2において、
前記プラズマ重合膜の主材料がポリオルガノシロキサンであることを特徴とする波長板。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の波長板を備えていることを特徴とする光ピックアップ装置。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の波長板を備えていることを特徴とするプロジェクタ。
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