JP5116012B2 - セルロース繊維強化複合体の製造方法、セルロース繊維強化複合体、及びセルロース繊維強化複合体製造用材料 - Google Patents
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ところが、セルロース繊維の繊維集合体に樹脂を含浸させる製造方法においては、加工が難しく、量産性に乏しい。特に、機能紙研究会誌No.24,5−12頁,1985年や特開平10−248872号公報に記載されている0.1μm以下の径のミクロフィブリル化セルロース繊維の形態を維持するために水分中に分散している状態から乾燥しつつ成形しようとすると、保水力が高く、成形体にするためには大量の水分を蒸発させて乾燥しなければならず、体積が例えば2分の1〜5分の1になるなど大きな収縮にともなう歪みを克服する必要がある。
しかしこの方法でも、樹脂を高温で溶融させながら成形する必要があり、高温と高圧とを必要とし、繊維を含む溶融樹脂の溶融粘度の高さから複雑な形状への成形が難しい。
また、細径化セルロースと親和性が高い媒体自身を高分子化合物に変化させることによって、セルロース繊維と高分子化合物の親和力の高いセルロース繊維強化複合体を提供することを目的とする。
また、セルロース繊維強化複合体の製造に適した材料を提供することを目的とする。
なお、この明細書においては、繊維径が10nm〜400nmの範囲内のセルロース繊維を細径化セルロース繊維と定義している。特許請求の範囲では外延を明確化する必要があるが、前述の定義は、特許請求の範囲があいまいになる恐れがあるため、この明細書中でのみ使用される特別の定義である。セルロース繊維の繊維径が400nm以下のセルロース繊維を得るには、紙又はパルプの繊維径が通常μmオーダーであるから何らかの人為的処理を加える必要がある。ここで繊維径は、例えば走査型顕微鏡で測定できる。
なお、この明細書及び特許請求の範囲において、水よりも高い沸点又は分解温度を有するとは、沸点を有する場合には沸点が水の沸点よりも高ければよく、沸点を有しない場合には分解温度が水の沸点より高ければよいことを意味している。
を含むものである。
例えば、特開2005−42283号公報に記載されているように、紙又はパルプは、前処理として、公知のリファイナー処理を経ていることが好ましい。しかし、必ずしもリファイナー処理が必須ではない。磨砕工程における磨砕機の通過回数等を増やすなど設計事項によって対応できるからである。
以下、この発明の第1実施形態によるセルロース繊維強化複合体の製造方法について図1を用いて説明する。
まず、パルプを準備する。ここではパルプを原料として用いたが、パルプに限らず、紙類、例えば新聞紙あるいは牛乳パックなどの古紙でもよい。即ち、木材などからリグニンを取り除いたセルロース繊維を主体とする素材であればよく、パルプや紙と呼ばれるものに限られるものではない。しかし、材料が安定的に供給可能であり、材料の安定性つまり変質し難く保管が容易である点に鑑みれば、パルプと紙が適している。
例えば、特開平8−215595号公報に記載されている第1解繊機、つまり固定ドラムと、固定ドラム内に設けられて固定ドラムの刃と協働して解繊する回転刃と、固定ドラム内に気流を生じさせる気体吸引部と、解繊物を排出するためのスクリーンを備えるものを用いると、パルプのセルロース繊維同士の絡みを乾式で解すことができる。つまり綿状になったセルロース繊維の集合体を得ることができる。セルロース繊維を綿状にすることは、つまりセルロース繊維の長さを短くしすぎないので好ましい。しかし、セルロース繊維強化複合体に要求される仕様が様々であることから、後述の磨砕工程を経ることによって繊維径を小さくしたとき、所望の縦横比となるのであれば解繊工程K11において粉状にしてもよい。
特開平8−215595号公報に記載の解繊では、更に第2解繊機によって水を含ませたパルプを解繊する工程を備えているが、含ませる水が少量で後述する注型・合成工程K16における合成の妨げとならない程度であれば、特開平8−215595号公報に記載の解繊を活用する場合に、第2解繊機による解繊工程を省略しなくてもよい。もし、水分を含ませたくなければ、水分を含ませる工程を省略して第1解繊機による工程でとどめてもよい。
特別な装置を用いずもっと簡単に行うのであれば、多価アルコール類を入れた容器の中に解繊されたパルプを入れて浸漬しておくだけでもよい。また、大量に生産する場合には、連続して混合することが好ましい。いずれの混合方法においても、多価アルコール類が引火点を有するものが多いため乾燥窒素雰囲気中で混合することが好ましい。また、多価アルコール類とパルプを馴染ませるため、攪拌・脱泡後に例えば24時間常温にて乾燥窒素雰囲気中で保管する。
図2に磨砕機の要部の断面を模式的に示す。図2の磨砕機は、互いに対抗する一対の円盤状の砥粒板1,2と、砥粒板1,2の間にパルプと多価アルコール類の混合物を供給するための供給管3と、下側の砥粒板2を回転させるための駆動モータ4と、駆動モータ4からの駆動力を下側の砥粒板2に伝達する駆動軸5とを備えている。砥粒板1,2は、図2に示すように、対向部の回転中心近傍に被磨砕物を滞留させる磨砕チャンバー6を形成する凹部を有している。また、磨砕チャンバー6には混合物の流れを整えて、砥粒板1,2の対向面に形成される磨砕スペース7に混合物を安定して送り込むための送り用回転羽根8が配設されている。
特開2007−100246号公報では、セルロース繊維を裂いて細く解す工程を、解繊したパルプを大量の水分中に分散して行っている。しかし、ここでは、大量の多価アルコール類を用いる。多価アルコール類は引火点を有するものが多いため窒素雰囲気中で磨砕工程K13を行うことが好ましい。
ここで使用する多価アルコール類は、従来、セルロース繊維を解すために用いられていた水の粘度に比べてきわめて高い粘度を有しており、数十倍〜数千倍に達する。そのため、磨砕機には、ポンプで加圧しながら供給管3を通して供給する。多価アルコール類が水酸基を有すること及び粘度があがることによって、セルロース繊維を解す効率を高めることができる。パルプと多価アルコール類の混合物を加圧しながら供給する流体用ポンプは公知のポンプを用いることができる。
セルロース繊維を解すのは、1度磨砕機を通しただけでは不十分であることは、特開2007−100246号公報の記載からも分かる。通す回数は、砥粒板の粒度の差や砥粒板の間隔や回転数の違い、あるいは水と多価アルコール類のセルロース繊維との親和性の違いや液体の粘度の違いなどから適宜設計される。
磨砕工程K13では、例えば複数台の磨砕機を砥粒板の粒度を徐々に細かくし、間隔を徐々に狭くなるように設定して並べ、順次複数台の磨砕機を通過するように設定して連続的に生産するようにしてもよい。また、セルロース繊維を解すのに、従来使用されている高圧ホモジナイザーを用いてもよい。
磨砕工程K13において、磨砕機を何度も通過することで、セルロース繊維の繊維径が10nm〜400nmになるものが含まれるものが得られる。
第2の混合工程K14では、後述する注型・合成工程K15で合成を行えるように混合する。もし、混合することで合成が開始する場合には、後述の注型・合成工程K16と混合工程15を同時に行ってもよい。
例えば多価アルコール類としてジエチレングリコールを用いて細径化セルロース繊維を生成したときに、そのジエチレングリコールを用いて硬質ポリイソシアヌレートフォームを製造する場合には、例えばポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート100重量部に対して8重量部のジエチレングリコールを添加する。また、フロン21重量部、シリコーン整泡剤1重量部、および触媒としてオクチル酸カリ・アミンの分子量200のポリオキシエチレングリコール溶液を5重量部添加する。なお、ジエチレングリコールの8重量部の中には、セルロース繊維の重量は含まれていない。例えば、磨砕工程K13において、ジエチレングリコールと細径化セルロース繊維を含むセルロース繊維を重量比にして、4対1の割合で得られたのであれば、セルロース繊維の重量は2重量部であり、磨砕工程K13で得られた混合物の添加は合計10重量部となる。
上記の例では、イソシアネート15℃、ポリオール20℃としたときのミキシングタイムが10秒、クリームタイムが19秒、ゲルタイム33秒、ライズタイム42秒である。
次に、ミキシングタイム内での攪拌後、すばやく金型内に注入する。クリームタイムからライズタイムを経過して後、加熱炉で熟成してから取り出す(注型・合成工程K15)。
取り出したセルロース繊維強化複合体のカッティングなどによって必要な部分を切り出したりして、セルロース繊維強化複合体の成形体を完成する(仕上げ工程)。
このように例示したイソシアネートとポリオールとの反応において発泡させると成形体に気泡が形成されるので、密度の調整を行うことができるという効果がある。
他の例として、混合工程K14においてまず、多価アルコール類としてエチレングリコールやプロピレングリコールやグリセリンなどを開始剤として用い、細径化セルロース繊維を含むポリオールを得ることもできる。また、ポリエステルの合成原料として、細径化セルロース繊維を分散した多価アルコール類を用いることもできる。
このように、混合工程K14において、後工程の注型・合成工程K15にて化合物と反応させるための前処理としての合成を行わせることもある。
得られたポリオールに、アミン触媒などの触媒、必要に応じて製泡剤や発泡剤や架橋剤、及び必要に応じて離型剤や顔料や難燃剤などの添加剤を加えてA液をつくる。一方、トルエンジイソシアネートなどのイソシアネートをB液として準備する。そして、A液にB液を添加してすばやく混合する。また、多価アルコールの誘導体であるポリオールを多価アルコール類として用い細径化セルロースを含むポリオールを磨砕工程を経て生成することもできる。
次の注型・合成工程K15においては、型に注入する以外にも、ベルトコンベア上に混合したA液とB液を流して板状に成形する場合もある。或いは、建物の壁に吹き付けて、壁の上で合成させることも可能である。
板状に成形したときに、ボードを所定の大きさに切り出したり、不要な耳の部分をカットしたりする仕上げ工程K16を行う。また、壁に吹き付けて形成することもこの発明における注型・合成工程K15に含まれる概念である。壁に吹き付けるなどした場合には、更にその上に他の素材を形成したり、断熱材として使用するために、鉄製や木製の板で覆ったりする工程が仕上げ工程K16になる。
例えば、A液としては、スクロール系ポリエーテルポリオール,OHV450が100重量部、トリクロロエチルホスフェート(難燃剤)が15重量部、ジメチルシクロヘキシルアミン(触媒)が1.5重量部、シリコーン整泡剤が1.5重量部、水が0.5重量部、フロン11が30重量部、B液としては、ポリメリックMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)が128重量部用いる。ポリエーテルポリオールには1重量部の細径化セルロースが含まれる。このときのミキシングタイムは10秒程度である。
さらには、多価アルコール類には、多価アルコールを合成して形成されるポリオールが含まれる。ポリオールの中にも液状でかつ、水の沸点よりも高い沸点を有するものが存在する。
多価アルコール類には、多価アルコールから誘導され、混合工程K14で混合される化合物と合成可能な液状の化合物が含まれる。液状である必要があるのは、磨砕工程K13でセルロース繊維を磨砕するには、液体中にパルプを入れておくためである。そのため、粘度の調整が必要な場合には、他の粘度調整剤を添加してもよい。
次に、この発明の第2実施形態によるセルロース繊維強化複合体の製造方法について図3を用いて説明する。
まず、パルプを準備する。解繊工程K21においては、上述の解繊工程K11と同様に準備したパルプを解繊機によって解繊する。
磨砕機を通す回数、つまり磨砕機で解す回数は、砥粒板の粒度の差や砥粒板の間隔や回転数の違い、あるいは水と多価アルコール類との混合物のセルロース繊維との親和性の違いや液体の粘度の違いなどから適宜設計される。例えば、PPG100重量部、水100重量部、パルプ1重量部からなる混合物を10〜20回程度磨砕機に通す。
減水のために先ず、液体と固体の割合を調整する。磨砕工程K23においては、例えば砥粒板と砥粒板との隙間からセルロース繊維を液体によって押し出す必要があることから、多量の液体を要する。しかし、後述する注型・合成工程K25においては、セルロース繊維強化複合体のマトリックスの原料である多価アルコール類と強化繊維成分であるセルロース繊維の割合は、セルロース繊維強化複合体のマトリックスと強化繊維成分を所望の割合にあわせて設定する必要があり、その前工程の減水工程K24aにおいて、多価アルコール類と水からなる液体成分を、スクリーンなどによって濾すことにより、液体成分を減らして後述の注型・合成工程K25に合わせて調整し易くする。同時に、液体成分を減らすことにより混合物の熱容量が小さくなるので、液体成分中の水分を減じる際の必要エネルギーを下げる効果がある。例えば、磨砕工程K23において得られたPPG100重量部、水100重量部、セルロース繊維1重量部からなる混合物をスクリーンで濾してPPGと水の混合液体100重量部に対してセルロース繊維のコンテントを10重量部まで上げる。
取り出したセルロース繊維強化複合体をカッティングなどによって必要な部分を切り出したりして、セルロース繊維強化複合体の成形体を完成する(仕上げ工程K26)。
なお、第2実施形態の説明では、多価アルコールから誘導されたPPGを中心に例に挙げて説明したが、第1実施形態のように、多価アルコールを用いても良いことはいうまでもない。多価アルコールを用いて細径化セルロース繊維を得るか、多価アルコールからの誘導体を用いて細径化セルロース繊維を得るかは、どのような高分子化合物を所望するかによって変わるのであって、沸点または分解温度が水の沸点を超えている液状の多価アルコール類であれば第2実施形態において適用可能である。
次に、この発明の第3実施形態によるセルロース繊維強化複合体の製造方法について図4を用いて説明する。
まず、パルプを準備する。解繊工程K31においては、上述の解繊工程K11と同様に準備したパルプを解繊機によって解繊する。
減水のために先ず、液体と固体の割合を調整してもよい。上述の例ではセルロース繊維の含有量がPPG100重量部に対して1重量部の割合だが、スクリーンなどで濾して固形分であるセルロース繊維のコンテントを上げることもでき、例えばPPG100重量部に対してセルロース繊維を2重量部とすることもできる。
磨砕工程K33においては、例えば砥粒板と砥粒板との隙間からセルロース繊維を液体によって押し出す必要があることから、多量の液体を要する。しかし、後述する注型・合成工程K35においては、セルロース繊維強化複合体のマトリックスの原料である多価アルコール類と強化繊維成分であるセルロース繊維の割合は、セルロース繊維強化複合体のマトリックスと強化繊維成分を所望の割合にあわせて設定する必要があり、その前工程の減水工程K34bにおいて、多価アルコール類と水からなる液体成分を、スクリーンなどによって濾すことにより、液体成分を減らして後述の注型・合成工程K35に合わせて調整し易くする。
Claims (7)
- 繊維径が10nm〜400nmの範囲内のセルロース繊維(以下細径化セルロース繊維という)を含む液状の多価アルコール又は液状かつ複数の水酸基を有する多価アルコールの誘導体(以下前記多価アルコールと前記誘導体とを合わせて液体多価アルコール類という)を準備する第1の工程と、
前記液体多価アルコール類の水酸基と化学結合する官能基を複数有する化合物とを反応させて高分子化合物を合成して成形する第2の工程と、
を備える、セルロース繊維強化複合体の製造方法。 - 前記第1の工程は、
紙又はパルプを原料として、セルロース繊維の繊維径が10nm〜400nmの範囲内に入るものが存在するように液体多価アルコール類中において前記原料に物理的な力を加えて繊維を解すことにより、前記細径化セルロース繊維を含む液体多価アルコール類を準備する工程を含む、請求項1に記載のセルロース繊維強化複合体の製造方法。 - 前記第1の工程は、
紙又はパルプを原料として、セルロース繊維の繊維径が10nm〜400nmの範囲内に入るものが存在するように前記原料を、水の沸点よりも高い沸点又は分解温度を有する液体多価アルコール類と水ととともに磨砕することにより、前記細径化セルロース繊維及び水を含む液体多価アルコール類を準備する工程を含み、前記細径化セルロースと前記水と前記多価アルコールとを水の沸点以上の温度にすることにより水分を蒸発させて減水する工程を含む請求項1に記載のセルロース繊維強化複合体の製造方法。 - 前記第1の工程は、
紙又はパルプを原料として、セルロース繊維の繊維径が10nm〜400nmの範囲内に入るものが存在するように水中において前記原料に物理的な力を加えてセルロース繊維を解す第1前処理工程と、
前記第1前処理工程で製造された水を含むセルロース繊維の集合体において、水の沸点よりも高い沸点又は分解温度を有する液体多価アルコール類を加えて又は液体多価アルコール類と少なくとも水の一部と置換する第2前処理工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のセルロース繊維強化複合体の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロース繊維強化複合体の製造方法により製造されるセルロース繊維強化複合体。
- 前記高分子化合物中に気泡を有することを特徴とする、請求項5に記載のセルロース繊維強化複合体。
- 細径化セルロース繊維が高分子化合物に分散されたセルロース繊維強化複合体を製造するためのセルロース繊維強化複合体製造用材料であって、
水の沸点よりも高い沸点又は分解温度を有する液体多価アルコール類と、細径化セルロース繊維とを含み、前記液体多価アルコール類100重量部に対する水分の含有量が10重量部を超えないセルロース繊維強化複合体製造用材料。
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