図1は、本発明の一実施形態に係る光学装置を搭載したカメラ3の全体ブロック図である。カメラ3は、カメラボディ5とレンズ鏡筒7を有している。レンズ鏡筒7は、カメラボディ5に対して着脱自在に装着される。なお、カメラ3の説明においては、図1および図2等に示すように、光軸αと略平行な方向であって、レンズ鏡筒7からカメラボディ5に向かう方向をZ軸の負方向、Z軸に直交する方向をX軸方向およびY軸方向として説明を行う。
本発明に係る光学装置を搭載したカメラとしては、図1に示すようなレンズ交換式カメラに限定されず、レンズ鏡筒7とカメラボディ5とが一体のカメラであってもよく、カメラの種類は特に限定されない。また、本発明に係る光学装置は、スチルカメラに限らず、ビデオカメラ、顕微鏡、携帯電話などの光学機器にも適用できる。
カメラボディ5およびレンズ鏡筒7の内部には、撮影光学系光軸αに沿って、複数の光学部品が配置されている。図1に示すカメラボディ5における後方側(Z軸負方向側)には撮像素子周辺部15が配置されており、撮像素子周辺部15の光軸α方向の前方側(Z軸正方向側)には、シャッタ68が配置してある。シャッタ68の光軸α方向の前方側には、ミラー70が配置してあり、その前方側には、レンズ鏡筒7に内蔵してある絞り部78および光学レンズ群24が配置してある。
カメラボディ5には、ボディCPU50が内蔵してあり、レンズ接点62を介してレンズCPU80に接続してある。ボディCPU50は、レンズ鏡筒7との通信機能と、カメラボディ5の制御機能を有している。レンズ接点62は、ボディCPU50と、レンズCPU80とを電気的に接続する。ボディCPU50には、カメラボディ5およびレンズ鏡筒7に備えられた電子部品に電力を供給するための電源58が接続してある。
ボディCPU50には、レリーズスイッチ52、ストロボ54、表示部56、EEPROM(メモリ)26、画像処理コントローラ66、AFセンサ60、電圧信号出力回路28などが接続してある。画像処理コントローラ66には、インターフェース回路64を介して、撮像素子周辺部15の撮像素子ユニット16が接続してある。画像処理コントローラ66およびインターフェース回路64は、ボディCPU50からの信号に基づき、撮像素子ユニット16によって撮像された画像の画像処理を制御する。撮像素子ユニット16は、たとえばCCDやCMOS等の固体撮像素子を有する。
表示部56は、主として液晶表示装置などで構成され、出力結果やメニューなどを表示する。レリーズスイッチ52は、撮影のタイミングを操作するスイッチである。レリーズスイッチ52は、ボディCPU50に対して、半押し信号および全押し信号を出力する。ボディCPU50は、レリーズスイッチ52から半押し信号が入力されると、AF制御、AE制御等の撮影準備動作を制御し、レリーズスイッチ52から全押し信号が入力されると、ミラーアップ、シャッタ駆動等の露光動作を制御する。
クイックリターンミラー70は、構図決定の際にファインダーに像を映し出すためのもので、露光中は光路から退避する。クイックリターンミラー70は、不図示のミラー駆動部(例えばDCモータ)により駆動される。
クイックリターンミラー70には、AFセンサ60に光を導くサブミラー70aが連結してある。このサブミラー70aも、露光中は光路から退避する。
シャッタ68は、露光時間を制御する。シャッタ68は、ボディCPU50からの制御に基づき、不図示のシャッタ駆動部(例えばDCモータ)によって駆動される。
AFセンサ60は、オートフォーカス(AF)を行うためのセンサである。このAFセンサ60としては、通常CCDが用いられる。EEPROM26は、ボディCPU50による制御に必要なパラメータ等を記憶しており、必要に応じてボディCPU50に出力する。
図1に示すレンズ鏡筒7には、焦点距離エンコーダ74、距離エンコーダ72、絞り部78、絞り部78を駆動する駆動モータ76、レンズCPU80、レンズ接点62及び光学レンズ群24が具備してある。
レンズCPU80は、ボディCPU50との通信機能と、レンズ鏡筒7に搭載された電子部品の制御機能とを有している。例えば、レンズCPU80は、焦点距離情報、被写体距離情報等を、レンズ接点62を介してボディCPU50に出力する。また、レンズCPU80には、ボディCPU50から、レリーズ情報、AF情報が入力される。レンズCPU80は、これらの情報に基づき、絞り78の駆動モータ76等を制御することができる。
焦点距離エンコーダ74は、不図示のズームレンズ群の位置情報から、焦点距離を算出し、レンズCPU80に出力する。距離エンコーダ72は、フォーカシングレンズ群の位置情報より被写体距離を算出し、レンズCPU80に出力する。
図1に示すように、カメラボディ5には、電圧信号出力回路28が備えられている。電圧信号出力回路28は、ボディCPU50からの制御信号に基づき、撮像素子周辺部15におけるフィルタ部18に備えられる複数の電極に電圧を出力する。例えば、電圧信号出力回路28は、電源58から必要な電力が供給されることが好ましい。
図2は、図1に示すカメラに搭載された撮像素子周辺部15の平面図である。撮像素子周辺部15は、ユニット固定基板14と、ケース12と、フィルタ部18と、撮像素子ユニット16とを有する。また、撮像素子周辺部15は、フィルタ部18に取り付けられた配線部38を有する。撮像素子周辺部15の断面図である図3に示すように、矩形平板形状を有するユニット固定基板14のZ軸正方向側の表面には、撮像素子ユニット16とケース12とが設置されている。撮像素子ユニット16は、撮像面16aをZ軸正方向側に向けた状態で配置される。ケース12は、額縁形状を有しており、撮像素子ユニット16の周辺を取り囲むように配置される。ケース12は、例えば合成樹脂またはセラミック等の絶縁性の材料を用いて形成される。
ケース12の内周面には、フィルタ部18を取り付けるための取付部12aが形成されている。フィルタ部18は、矩形平板形状を有しており、フィルタ部18の周辺部が、取付部12aに接触するように設計されている。フィルタ部18は、ケース12に対して、例えば接着剤等によって取り付けられる。撮像素子ユニット16は、フィルタ部18に対向して設けられ、フィルタ部18を透過した光は、撮像素子ユニット16の撮像面16aに入射する。
図3に示すように、撮像素子ユニット16の周囲は、ユニット固定基板14、ケース12、およびフィルタ部18によって封止されており、図3に示す撮像素子周辺部15は、撮像素子ユニット16が収納される封止空間に、塵埃等が浸入することを防止している。なお、図3に示す撮像素子周辺部15は、後述のように、フィルタ部18を振動させることなく、当該フィルタ部18に付着した塵埃を除去することができる。したがって、フィルタ部18は、ケース12に対して非可動的に固定されており、フィルタ部18のケース12に対する取り付け構造が単純である。また、撮像素子ユニット16が収納される封止空間は、フィルタ部18、ケース12およびユニット固定基板14によって、確実に封止される。
フィルタ部18は、防塵フィルタ36と、赤外線吸収ガラス板32と、水晶波長板34と第2複屈折板30からなる4枚のフィルタを積層した積層構造を有している。積層方法としては、接着剤による積層、あるいはその他の積層方法でも良い。
図4(A)に示すように、本実施形態に係るフィルタ部18は、略同一の面積を有する4枚のフィルタを積層することによって形成されているが、フィルタ部18の形状としては、これに限定されない。例えば図4(B)に示す変形例に係るフィルタ部18では、一枚のフィルタ(第2複屈折板30)の面積が、他の3枚のフィルタ36,32,34より大きい。また、図4(C)に示す変形例に係るフィルタ部18では、一枚のフィルタ(防塵フィルタ36)が、他の3枚のフィルタ32.34.30と別体となっている。
図3に示す水晶波長板34は、直線偏光を円偏向に変えることができる光学板であり、赤外線吸収ガラス板32は、赤外線を吸収する機能を有する。また、防塵フィルタ36は、第2複屈折板30に対して、相互に複屈折の方向が90度異なる複屈折板(第1複屈折板)であり、一方が90度方向(短辺方向)の複屈折を有する複屈折板であれば、他方の複屈折板は、0度方向(長辺方向)の複屈折を有する複屈折板である。本実施形態では、防塵フィルタ36が0度方向(長辺方向)の複屈折を有する複屈折板であり、第2複屈折板30が90度方向(短辺方向)の複屈折を有する複屈折板であるが、逆でも良い。
本実施形態では、フィルタ部18における防塵フィルタ36および第2複屈折板30により、基本的には、光学ローパスフィルタ(OLPF)を構成している。なお、一般的には、光学ローパスフィルタは、二つの複屈折板36および30の間に、赤外線吸収ガラス板32および水晶波長板34が積層されて光学ローパスフィルタ(OLPF)を構成している。
防塵フィルタ36および第2複屈折板30は、例えば水晶を特定の角度で切り出した水晶板を用いて作成される。原材料となる水晶は、人工の水晶でもよいし天然水晶でもよい。
図6は、図3に示す撮像素子周辺部15に備えられる防塵フィルタ36の断面図(図6(a))および平面図(図6(b))である。図6(a)に示すように、防塵フィルタ36は、基材部40と、複数の電極42と、表面層44とを有する。基材部40は、矩形平板状の形状を有しており、Z軸負方向側に設けられた撮像素子ユニット16に向かう光を透過させる光透過領域40c(図2)を有する。防塵フィルタ36における基材部40は、複屈折性を有する複屈折板である。
例えば、電極42及び表面層44は、基材部40と同程度の透過率を有することが好ましい。例えば、電極42、表面層44及び基材部40は、入射した可視光の全域(例えば、波長が0.38μm以上、0.75μm以下の光)において、80%以上100%以下の透過率を有することが好ましい。透過率が80%以上100%以下であれば、静止画、動画等の撮影画像を取得するのに十分な光学特性が得られるからである。更に好ましくは、電極42、表面層44及び基材部40は、入射した可視光の全域において、90%以上100%以下の透過率を有することが好ましい。透過率が90%以上100%以下であれば、高精細な静止画の撮影画像を取得するのに十分な光学特性が得られるからである。
また、電極42、表面層44及び基材部40を光が透過することにより撮像素子ユニット16に到達する光の光量が低下する場合には、撮像素子ユニット16で得られる信号を処理(アナログ処理又はデジタル処理)して撮影画像の光量を実質的に増加させてもよい。
図6(a)に示すように、基材部40のZ軸正方向側の表面には、複数の電極42が形成されている。電極42は、例えばITO(酸化インジウムスズ)やZnO(酸化亜鉛)等の光を透過する材料を用いて形成される。電極42は、光透過領域40cを含む基材部40の全体表面に形成されており、後述のように、防塵フィルタ36の表面に付着する塵埃を除去する電界を発生させる。電極42は、図6(b)に示すように、基材部40の表面に沿って帯状に形成されている。本実施形態における防塵フィルタ36において、電極42は、基材部40の短辺40bに略平行な方向に延在するように形成されている。なお、電極42は、図3に示す撮像素子ユニット16の撮像面16aに対して、略平行に備えられている。電極42を撮像面16aに対して略平行に配置することによって、後述のように、電極42による電界が光透過領域40c(図2)を効率的にカバーできる。
複数の電極42は、基材部40の長辺40aに沿って、例えばピッチが所定の長さd1であって、互いの間隔が長さd2となるように、間隔を空けて配置される(図6(a))。図6(b)に示すように、各電極42の一方の端部(本実施形態ではY軸正方向側の端部)には、配線部38が取り付けられており、電極42は、配線部38を介して、図1に示す電圧信号出力回路28に対して電気的に接続されている。本実施形態に係る配線部38はFPC(フレキシブルプリント基板)であるが、電極42に電圧信号を伝えるものであれば特に限定されない。
また、複数の電極42は、互いに異なる位相を有する交流電圧を印加される複数のグループによって構成される。すなわち、本実施形態における複数の電極42は、第1の電圧信号が入力される第1グループの電極42aと、第2の電圧信号が入力される第2グループの電極42bと、第3の電圧信号が入力される第3グループの電極42cと、第4の電圧信号が入力される第4グループの電極42dによって構成される。
各グループの電極42a,42b,42c,42dは、電極42が延在する方向であるY軸方向とは垂直なX軸方向に沿って、第1グループの電極42a、第2グループの電極42b、第3グループの電極42c、第4グループの電極42dの順番に、所定の間隔を隔てて周期的に配置される。すなわち、1つの第1グループの電極42a1と、これと同位相の電圧信号が印加される他の1つの第1グループの電極42a2との間には、第1グループの電極42aとは異なる位相の電圧信号が印加される1つの第2グループの電極42bと、1つの第3グループの電極42cと、1つの第4グループの電極42dとが、互いに間隔を隔てて備えられる。第2グループの電極42b、第3グループの電極42c、第4グループの電極42dについても、第1グループの電極42a1,42a2と同様である。
本実施形態に係る防塵フィルタ36は、電極42の表面を覆うように、防塵フィルタ36のZ軸負方向側の表面に設けられた表面層44を有する(図6(a))。表面層44は、基材部40との間に、電極42を挟むように備えられる。表面層44は、絶縁性を有し光を透過する材料によって形成される。
表面層44の屈折率は、電極42の屈折率と略等しいことが好ましい。また、表面層44における光の分散(屈折率の光の波長による変化)は、電極42における光の分散と略等しいことが好ましい。電極42と光学的な特性が略等しい表面層44を有する防塵フィルタ36は、撮像素子ユニット16によって撮像される像に、電極42の影が写りこむことを防止することができる。また、表面層44は撥水性を有していてもよく、表面層44が撥水性を有する場合は、防塵フィルタ36に対する塵埃37の付着力を低減することができる。また、表面層44は微細な凹凸を有していてもよく、表面層44が微細な凹凸を有する場合は、防塵フィルタ36に対する塵埃37の付着力(分子間力)を低減することができる。
図7は、防塵フィルタ36を用いた除塵動作を説明するための模式図である。電圧信号出力回路28は、信号生成部82と、位相調整部84と、増幅部86とを有する。信号生成部82は、所定の周期を有する交流電圧信号を生成し、位相調整部に出力する。位相調整部84は、交流電圧信号の位相を調整し、互いに異なる位相の4つの交流電圧信号を生成し、増幅部86に出力する。
増幅部86は、4つの交流電圧信号を、所定の振幅に増幅した後、駆動電圧信号として出力する。増幅部86は、配線部38を介して、防塵フィルタ36に備えられる電極42に、駆動電圧信号を出力する。したがって、電圧信号出力回路28は、互いに位相の異なる第1駆動電圧信号ch1、第2駆動電圧信号ch2、第3駆動電圧信号ch3および第4駆動電圧信号ch4を、防塵フィルタ36に備えられる電極42に出力することができる。
配線部38は、第1駆動電圧信号ch1を第1グループの電極42aに伝える第1配線部38aと、第2駆動電圧信号ch2を第2グループの電極42bに伝える第2配線部38bと、第3駆動電圧信号ch3を第3グループの電極42cに伝える第3配線部38cと、第4駆動電圧信号ch4を第4グループの電極42dに伝える第4配線部38dとを有する。
第1〜第4駆動電圧信号ch1〜ch4は、互いに位相が4分の1周期ずつずれた方形波の信号であるが、電極42に出力される電圧信号としてはこれに限定されず、正弦波や三角波等の信号であってもよい。第1〜第4駆動電圧信号ch1〜ch4の駆動周波数は、特に限定されないが、例えば1Hz〜500Hzとすることによって、塵埃を効率的に移動させることができる。
電圧信号出力回路28は、防塵フィルタ36の表面に備えられた複数の電極42に電圧を印加することによって、防塵フィルタ36の表面の電界を変化させることができる。本実施形態に係る防塵フィルタ36は、光を透過する電極42が縞状に配置されており、電極42に4相の交流電圧が印加されるため、進行波状の電界を防塵フィルタ36の表面に発生させることができる。
すなわち、防塵フィルタ36の表面には、各グループの電極42a,42b,42c,42dが、X軸方向に沿って周期的に配置されており、各グループの電極42a,42b,42c,42dに対して、それぞれに対応する駆動電圧信号ch1,ch2,ch3,ch4が印加される。これによって防塵フィルタ36の表面には、X軸方向に沿って移動する進行波状の電界が発生し、防塵フィルタ36の表面に存在する塵埃37は、電界から与えられる静電気力によって移動させられ、除去される。例えば、防塵フィルタ36の表面に付着した塵埃37は、例えば矢印39で示すように、進行波状の電界が移動する方向に沿う方向に移動させられ、防塵フィルタ36の表面から除去される。
本実施形態に係る電極42には、4相の駆動電圧信号が印加されるが、本発明に係る電極42に印加される駆動電圧信号は、単相であってもよく、2相であってもよい。単相の場合であっても、防塵フィルタ36の表面の電界を変化させて、防塵フィルタ36の表面に存在する塵埃を移動させることができる。また、2相以上であれば、防塵フィルタ36の表面の電界を移動させて、防塵フィルタ36の表面に存在する塵埃を移動させることができる。
しかし、電極42に印加させる駆動電圧信号は、3相以上であることが好ましい。周期的に配置された3以上のグループによって構成される電極42に、各グループに対応する交流電圧信号を印加することによって、防塵フィルタ36の表面に、進行波状の電界を容易に発生させることができる。防塵フィルタ36の表面に進行波状の電界を発生させることによって、塵埃37の移動方向の制御が容易となり、また、比較的小さな電圧によって、塵埃37を大きく移動させることが可能となる。なお、図示の実施例では、4グループの電極を用いた場合を例にして説明したが、電極グループは、2グループでもよいし、3グループでもよいし、5グループ以上であってもよい。
図5は、本実施形態に係る光学装置の製造工程の一例を説明したフローチャートである。図5に示すステップS001では、図6(a)に示す基材部40を準備する。図6(a)に示す基材部40は、複屈折性を有する複屈折板であるが、防塵フィルタ36における基材部40としてはこれに限定されない。たとえば、防塵フィルタ36を、光学ローパスフィルタとは別の光学部材とする場合には、基材部40は、ガラス板等の他の透光部材であってもよい。また、基材部40の形状も、矩形平板形状に限定されず、例えば円形平板形状等の他の形状であってもよい。
ステップS002では、基材部40の表面に電極42を形成する。電極42の形成方法としては、特に限定されないが、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、スピンコート法等を用いることができる。基材部40の表面に形成される電極42のピッチd1(図6(a))は、防塵フィルタ36に付着する可能性の高い塵埃37の性質に応じて適切に設計されればよく、例えば200μm〜1000μm(1mm)程度とすることができる。また、隣接する電極間の隙間d2についても、特に限定されないが、例えば200μm〜1000μm(1mm)とすることができる。
また、ステップS002では、基材部40の表面のうち、電極42が形成された側の表面に、表面層44を形成する。さらに、ステップS002では、必要に応じて、基材部40に振動素子20(図12)を配置してもよい。振動素子20は、接着剤等によって基材部40に固定される。
さらに、ステップS003では、図6(b)に示す配線部38を取り付け、当該配線部38によって、電極42と電圧信号出力回路28(図1)とを電気的に接続する。なお、ステップS002において、基材部40に振動素子20(図12)を配置した場合は、ステップS003において、図9に示す振動素子駆動回路29を、振動素子20に接続する。ステップS004では、図6に示す電極42に周期的な電圧が出力されるように、電圧信号出力回路28(図1)を調整する。電極42に出力される電圧の振幅は、防塵フィルタ36に付着する可能性の高い塵埃37の性質や、電極42のピッチd1等に応じて適切に設計されればよく、例えば100Vp−p〜2kVp−pとすることができる。なお、ステップS002において、基材部40に振動素子20(図12)を配置した場合は、ステップS004において、電極42の少なくとも一部の近傍に、振動の節99(図13)が生じるように振動素子駆動回路29を調整してもよい。
本実施形態に係る光学装置は、電界を変化させることによって、防塵フィルタ36の表面に付着した塵埃を移動させて除去する。電界が塵埃に与えることができる力は、所定の条件下では塵埃の帯電量に比例するため、本実施形態に係る光学装置は、物理的な振動を防塵フィルタに発生させる方式では除去することが困難であった帯電量が大きい塵埃を除去することができる。
また、本実施形態に係る光学装置は、電気的な力によって塵埃を移動させるため、物理的な振動を防塵フィルタに発生させる方式では除去することが困難であった質量の小さい塵埃を除去することができる。また、本実施形態に係る光学装置は、物理的な振動を発生させることなく塵埃を除去することができるため、静粛性に優れている。また、防塵フィルタ36自体が発塵(塵埃を発生させる)する恐れも少ない。
本実施形態に係る光学装置は、電気的な力によって塵埃を移動させるため、物理的な振動を発生させて塵埃を除去する従来技術とは異なり、防塵フィルタ36を振動可能な状態に取り付ける必要がない。したがって、防塵フィルタ36を含むフィルタ部18を、ケース12に対して非可動的に取り付けることができるため、フィルタ部18とケース12の隙間から、封止空間内に塵埃が浸入することを効果的に防止できる。また、防塵フィルタ36を、弾性部材等を介在させてケース12に取り付ける必要がないため、弾性部材の経年変化等によってゴミ除去性能が変化する恐れもない。
第2実施形態
図8は、本発明の第2実施形態に係る光学装置おける防塵フィルタ36aの断面図(図8(a))および平面図(図8(b))である。第2実施形態に係る光学装置は、防塵フィルタ36aにおける複数の電極92の配置が異なる他は、第1実施形態に係る光学装置と同様である。
防塵フィルタ36aは、矩形平板形状を有する基材部40と、複数の電極92と、表面層94とを有している。電極92は、第1実施形態に係る電極42とは異なり、基材部40のZ軸負方向側の表面に形成されている。また、電極92は、基材部40の長辺40aに略平行な方向に延在するように形成されている。
複数の電極92は、基材部40の短辺40bに沿って、互いの間隔が所定の長さとなるように、間隔を空けて配置される。各電極92の一方の端部(本実施形態ではX軸正方向側の端部)には、配線部88が取り付けられている。電極92は、配線部88を介して、電圧信号出力回路28に電気的に接続されている。
本実施形態に係る防塵フィルタ36aは、基材部40の表面のうち、撮像素子ユニット16側(Z軸負方向側)の表面に電極92が形成されている。本実施形態に係る防塵フィルタ36aにおいて、塵埃37は、主として基材部40のZ軸正方向側の表面に付着する。しかしながら、電極92に電圧が出力されることによって形成される電界による力は、基材部40の反対側まで及ぶ。
したがって、本実施形態に係る光学装置は、第1実施形態と同様に、防塵フィルタ36aにおける撮像素子ユニット16側とは反対側の表面の電界を変化させることができ、これによって防塵フィルタ36aの表面に付着した塵埃37を移動させて、除去することができる。
また、複数の電極92は、互いに異なる位相を有する交流電圧を印加される複数のグループによって構成される。すなわち、本実施形態における複数の電極92は、第1の電圧信号が入力される第1グループの電極92aと、第2の電圧信号が入力される第2グループの電極92bと、第3の電圧信号が入力される第3グループの電極92cと、第4の電圧信号が入力される第4グループの電極92dによって構成される。
各グループの電極92a,92b,92c,92dは、基材部40の短辺方向(Y軸方向)に沿って周期的に配置されており、各グループの電極92a,92b,92c,92dには、第1実施形態と同様に、各相の対応する駆動電圧信号ch1〜ch4が印加される。これによって防塵フィルタ36aの表面には、電極92の周期的配列方向であるY軸方向に沿って移動する進行波状の電界が発生する。したがって、防塵フィルタ36aの表面に存在する塵埃は、進行波状の電界から与えられる静電気力によって移動させられ、防塵フィルタ36aの表面から除去される。
例えば、防塵フィルタ36aの表面に付着した塵埃37は、例えば矢印95で示すように、進行波状の電界が移動する方向に沿う方向(Y軸方向に沿う方向)に移動させられ、防塵フィルタ36aの表面から除去される。本実施形態に係る光学装置は、防塵フィルタ36aにおける基材部40の短辺40b方向に沿って塵埃を移動させることができるため、塵埃37を防塵フィルタ36aから除去するために必要とされる搬送距離が、第1実施形態に係る防塵フィルタ36より小さい。このため、第2実施形態に係る光学装置は、防塵フィルタ36aの表面に付着した塵埃37を、より効率的に除去することができる。また、本実施形態に係る光学装置は、第1実施形態に係る光学装置と同様の効果を奏する。
第3実施形態
図9は、本発明の第3実施形態に係る光学装置を搭載したカメラ3aの全体ブロック図である。カメラ3aは、カメラボディ5aに振動素子駆動回路29が備えられており、カメラボディ5aに備えられる撮像素子周辺部15aが、図1に示す撮像素子周辺部15と異なる他は、図1に示すカメラ3と同様である。
カメラボディ5aには、振動素子駆動回路29が備えられている。振動素子駆動回路29は、ボディCPU50と撮像素子周辺部15aとに、電気的に接続されている。振動素子駆動回路29は、ボディCPU50からの制御を受けて、撮像素子周辺部15aに備えられる振動素子20(図10)を駆動することができる。例えば、振動素子駆動回路29は、電源58から必要な電力が供給されることが好ましい。
図10は、図9に示すカメラ3aに備えられる撮像素子周辺部15aの平面図である。撮像素子周辺部15aは、ユニット固定基板14と、ケース12と、フィルタ部18aと、撮像素子ユニット16とを有する。また、撮像素子周辺部15aは、防塵フィルタ36b(図11)をケース12に対して取り付けるための加圧部材10と、フィルタ部18aに取り付けられた配線部38と、振動素子20とを有する。
撮像素子周辺部15aの断面図である図11に示すように、矩形平板形状を有するユニット固定基板14のZ軸正方向側の表面には、撮像素子ユニット16とケース12とが配置されている。ケース12は、額縁形状を有しており、撮像素子ユニット16の周辺を取り囲むように配置される。ケース12は、例えば合成樹脂またはセラミック等の絶縁性の材料を用いて形成される。
ケース12の内周面には、フィルタ部18を取り付けるための取付部12aが形成されている。本実施形態のおけるフィルタ部18aは、防塵フィルタ36bが、他の3枚のフィルタである赤外線吸収ガラス板32,水晶波長板34および第2複屈折板30と別体となっている。ケース12の取付部12aには、防塵フィルタ36b以外の3枚のフィルタ32,34,30が取り付けられる。3枚のフィルタ32,34,30は、ケース12に対して、例えば接着剤等によって取り付けられる。
撮像素子ユニット16の周囲は、ユニット固定基板14、ケース12、およびフィルタ部18aによって密封されており、撮像素子ユニット16が収納されている密封空間に、塵埃等が浸入することを防止している。
防塵フィルタ36bは、赤外線吸収ガラス板32のZ軸負方向側に、当該赤外線吸収ガラス板32との間に封止部材17を挟んで配置される。封止部材17は、例えば合成樹脂あるいはゴムなどの弾性部材で構成され、防塵フィルタ36bと赤外線吸収ガラス板32の間を封止している。
防塵フィルタ36bは、板バネ形状を有する加圧部材10によって、ケース12に対して、振動可能な状態に取り付けられている。すなわち、加圧部材10は、防塵フィルタ36bを、Z軸正方向側から赤外線吸収ガラス板32に向かって加圧し、封止部材17との間に防塵フィルタ36bを挟んで保持する。なお、加圧部材10の両端部は、図10および図11に示すように、ケース12に対して螺旋止めされている。
図12は、図10に示す撮像素子周辺部15aに備えられる防塵フィルタ36bの断面図(図12(a))および平面図(図12(b))である。図12(a)に示すように、防塵フィルタ36bは、基材部40と、複数の電極42と、表面層44とを有する。また、防塵フィルタ36bにおけるZ軸正方向側の表面には、振動素子20が取り付けられている。
振動素子20は、例えば圧電素子および圧電素子に電圧を印加するための電極等を有しており、図9に示す振動素子駆動回路29によって駆動される。振動素子駆動回路29は、防塵フィルタ36bに振動の節が生じるように、振動素子20を駆動することができる。本実施形態に係る振動素子駆動回路29は、図13に示すように、例えば防塵フィルタ36bが3次の屈曲振動を起こすように、振動素子20を駆動することができる。
第3実施形態に係る基材部40のZ軸正方向側の表面には、図6に示す防塵フィルタ36と同様に、複数の電極42が形成されている。電極42は、図12(b)に示すように、基材部40の表面に沿って帯状に形成されている。本実施形態における防塵フィルタ36bでは、電極42は、基材部40の短辺40bに略平行な方向に延在するように形成されている。また、電極42は、図13に示す振動の節99と略平行に備えられている。
電極42を、振動の節99と略平行に備えることによって、振動の節99に略垂直な方向に勾配を有する電界を発生させることができるため、防塵フィルタ36bは、振動の節と略垂直な方向(X軸方向)に塵埃37を移動させることができる。したがって、防塵フィルタ36bを有する光学装置は、振動の節99の周辺に残留した塵埃37を、振動の節99から遠ざかる方向(振動の節と略垂直な方向)に移動させて、単一モードの屈曲振動のみで、防塵フィルタ36bの表面全体の塵埃を除去することができる。
また、防塵フィルタ36bにおける振動素子20も、基材部40の短辺40bに略平行に備えられているため、本実施形態における光学装置において、振動素子20と電極42は、略平行に備えられる。振動の節は、振動素子20と略平行な方向や、基材部42の辺と略平行な方向に発生しやすいため、電極42を基材部40の辺または振動素子20と略平行に配置することが、防塵フィルタ36bの表面全体の塵埃をする上で好ましい。
各電極42のY軸正方向側の端部には、配線部38が取り付けられており、電極42は配線部38を介して、図1に示す電圧信号出力回路28に電気的に接続されている。また、本実施形態における複数の電極42は、図7に示す第1実施形態と同様に、第1の電圧信号が入力される第1グループの電極42aと、第2の電圧信号が入力される第2グループの電極42bと、第3の電圧信号が入力される第3グループの電極42cと、第4の電圧信号が入力される第4グループの電極42dによって構成される。
各グループの電極42a,42b,42c,42dは、電極42が延在する方向であるY軸方向とは垂直なX軸方向に沿って、第1グループの電極42a、第2グループの電極42b、第3グループの電極42c、第4グループの電極42dの順番に、所定の間隔を隔てて周期的に配置される。
図19は、図12に示す防塵フィルタ36bを有するカメラ3a(図9)による除塵動作の一例を説明したフローチャートである。図19に示すステップS101では、防塵フィルタ36bに付着した塵埃37を除去する除塵動作を開始する。除塵動作は、例えば図9に示すカメラ3aの電源がONされた時や、カメラボディ5aに備えられる不図示の入力部より、ボディCPU50に清掃開始信号が入力された時に開始される。
ステップS102では、図9に示すボディCPU50から振動素子駆動回路29に制御信号が出力され、振動素子駆動回路29は、振動素子20を駆動し、防塵フィルタ36bを振動させる。図13は、図12に示す防塵フィルタ36bによる除塵動作における第1の段階(ステップS102)を説明した模式図である。
ステップS102において、振動素子駆動回路29は、防塵フィルタ36bが3次の屈曲振動を起こすように、振動素子20を駆動する。ステップS102では、防塵フィルタ36bに付着している塵埃のうち、振動の節99の周辺以外に付着している塵埃37を除去することができる。しかし、屈曲振動における振動の節99の周辺101は、振動の振幅が小さいため、図13に示すように、振動の節99の周辺に付着した塵埃37は、十分に除去されない場合がある。
図19に示すステップS103では、図9に示すボディCPU50から電圧信号出力回路28に制御信号が出力され、電圧信号出力回路28は、電極42に電圧信号を出力し、防塵フィルタ36bの表面に進行波状の電界を発生させる。図14は、図12に示す防塵フィルタ36bによる除塵動作における第2の段階(ステップS103)を説明した模式図である。
ステップS103において、電圧信号出力回路28は、防塵フィルタ36bの表面に備えられた複数の電極に電圧を印加することによって、防塵フィルタ36bの表面の電界を変化させる。電圧信号出力回路28は、図7に示すのと同様に、縞状に配置された電極42に4相の交流電圧信号ch1〜ch4を印加し、X軸方向に沿って移動する進行波状の電界を、防塵フィルタ36bの表面に発生させる(図14)。
防塵フィルタ36bの表面のうち、ステップS102における屈曲振動において振動の節99が発生する位置の周辺部に残存する塵埃37は、図14(b)に示すように、電界から与えられる静電気力によって、矢印105に示すように、X軸方向に沿って移動させられる。電圧信号出力回路28は、振動の節99の発生位置周辺部に残存する塵埃37が、振動の節99から離れた位置に移動するまで、電極42に電圧を印加することができる。なお、ステップS102において振動の節99の発生位置周辺部101に残存した塵埃の一部は、矢印106に示すように、ステップS103において防塵フィルタ36bの表面から除去される。
ステップS104では、ステップS102と同様に、図9に示すボディCPU50から振動素子駆動回路29に制御信号が出力され、振動素子駆動回路29は、防塵フィルタ36bを振動させるように振動素子20を駆動する。図15は、図12に示す防塵フィルタ36bによる除塵動作における第3の段階(ステップS104)を説明した模式図である。
ステップS104において、振動素子駆動回路29は、防塵フィルタ36bが3次の屈曲振動を起こすように、振動素子20を駆動する。ステップS103によって、防塵フィルタ36bの表面に残存する塵埃37は、振動の節99から離れた位置に移動されているため、ステップS104における屈曲振動によって除去される。防塵フィルタ36bの表面に残存する塵埃37は、図15において矢印で示すように、重力方向に移動して除去される。
図19に示すステップS105では、除塵動作を終了する。ボディCPU50は、ステップS105において、電圧信号出力回路28および振動素子駆動回路29の制御を停止する。
このように、本実施形態に係る光学装置は、防塵フィルタ36bを屈曲振動させる除塵動作と、防塵フィルタ36bの表面の電界を変化させる除塵動作の両方を行うことができるため、防塵フィルタ36bの表面に付着した塵埃37を効率的に除去することができる。すなわち、屈曲振動による除塵動作によって、質量の比較的大きい塵埃や、振動の節の周辺以外の部分に付着した塵埃を除去することができる。また、進行性電界による除塵動作によって、質量の比較的小さい塵埃や、振動の節の周辺に付着した塵埃や、帯電量の大きい塵埃等を除去することができる。
電圧信号出力回路28は、振動素子駆動回路29が振動素子20を駆動した後に、防塵フィルタ36bに生じる電界が移動するように、電極42に電圧を出力することによって、振動の節99の発生位置周辺に残存する塵埃37を、振動の節99から離れた位置に移動させることができる。したがって、本実施形態に係る光学装置は、屈曲振動させる除塵動作と、電界を変化させる除塵動作の両方を組み合わせることによって、単一モードの屈曲振動のみで、防塵フィルタ36bの表面全体の塵埃を除去することができる。
なお、図19に示す除塵動作の例では、屈曲振動させる除塵動作と、電界を変化させる除塵動作を、時間をずらして行うが、除塵動作としてはこれに限定されず、例えば屈曲振動させる除塵動作と、電界を変化させる除塵動作を同時に行ってもよい。すなわち、電圧信号出力回路28は、振動素子駆動回路29が振動素子20を駆動しているとき、防塵フィルタ36bに生じる電界が移動するように、電極42に電圧を出力することができる。これによって、本実施形態に係る光学装置は、防塵フィルタ36bの表面全体の塵埃を短時間で除去することができる。
また、本実施形態に係る防塵フィルタ36bでは、図13に示すように、防塵フィルタ36bの表面全体に電極42が形成されているが、電極42の配置はこれに限定されず、振動の節99の発生位置の周辺部にのみ電極42が形成されていてもよい。振動の節99の発生位置の周辺部にのみ電極42を有する防塵フィルタは、電界を変化させる除塵動作によって、振動の節99の発生位置周辺に付着している塵埃37を、振動の節99から離れた位置に確実に移動させ、その場所に留まらせることができる。
第4実施形態
図16は、本発明に係る第4実施形態に係る光学装置おける防塵フィルタ36cの断面図(図16(a))および平面図(図16(b))である。第4実施形態に係る光学装置は、防塵フィルタ36cにおける複数の電極92の配置が異なる他は、第3実施形態に係る光学装置と同様である。
防塵フィルタ36cは、矩形平板形状を有する基材部40と、複数の電極92と、表面層94とを有している。電極92は、第3実施形態に係る電極42とは異なり、基材部40のZ軸負方向側の表面に形成されている。また、電極92は、基材部40の長辺40aに略平行な方向に延在するように形成されている。
本実施形態に係る防塵フィルタ36cは、基材部40の表面のうち、撮像素子ユニット16側(Z軸負方向側)の表面に電極92が形成されている。本実施形態に係る防塵フィルタ36cにおいて、塵埃37は、主として基材部40のZ軸正方向側の表面に付着する。しかしながら、電極92に電圧が出力されることによって形成される電界による力は、基材部40の反対側まで及ぶ。
したがって、本実施形態に係る光学装置は、第3実施形態と同様に、防塵フィルタ36cにおける撮像素子ユニット16側とは反対側の表面の電界を変化させることができ、これによって防塵フィルタ36cの表面に付着した塵埃37を移動させて、除去することができる。
本実施形態に係る光学装置において、振動素子20と電極92とは略直交して備えられる。このような配置であっても、電圧信号出力回路28は、振動の節99の発生位置周辺部に残存する塵埃37を、図16における矢印107に示すようにZ軸方向に移動させることができる。したがって、本実施形態に係る光学装置は、第3実施形態に係る光学装置と同様に、防塵フィルタ36cの表面全体に付着した塵埃を除去することができる。
第5実施形態
図17は、本発明に係る第5実施形態に係る光学装置おける防塵フィルタ36dの断面図(図17(a))および平面図(図17(b))である。第5実施形態に係る光学装置は、第1振動素子20aおよび第2振動素子20bを有し、防塵フィルタ36dにおける振動素子20a,20bの配置面が異なる他は、第4実施形態に係る光学装置と同様である。
防塵フィルタ36dは、矩形平板形状を有する基材部40と、複数の電極98と、表面層97とを有している。電極98は、第4実施形態に係る電極92と同様に、基材部40のZ軸負方向側の表面に形成されている。また、電極98は、基材部40の長辺40aに略平行な方向に延在するように形成されている。
複数の電極98は、基材部40の短辺40bに沿って、互いの間隔が所定の長さとなるように、間隔を空けて配置される。各電極98の一方の端部(本実施形態ではX軸正方向側の端部)には、配線部96が取り付けられている。電極98は、配線部96を介して、電圧信号出力回路28(図1)に電気的に接続されている。
複数の電極98は、互いに異なる位相を有する交流電圧を印加される複数のグループによって構成される。すなわち、本実施形態における複数の電極98は、第1の電圧信号が入力される第1グループの電極98aと、第2の電圧信号が入力される第2グループの電極98bと、第3の電圧信号が入力される第3グループの電極98cと、第4の電圧信号が入力される第4グループの電極98dによって構成される。
第5実施形態に係る光学装置は、防塵フィルタ36dにおける一対の短辺40bに沿って備えられる第1振動素子20aと、第2振動素子20bとを有する。第5実施形態に係る光学装置は、互いに略平行に配置される2つの振動素子20a,20bを有するため、防塵フィルタ36dに対してより強い振動を発生させ、効率的に塵埃を除去することができる。
また、第2振動素子20bと配線部96は、防塵フィルタ36dにおけるYX軸正方向側の端部に配置されている。すなわち、第2振動素子20bと配線部96は、光軸α方向(Z軸方向)から防塵フィルタ36dをみた場合、互いに重複する位置に配置されている。第2振動素子20bと配線部96とを光軸方向に重複するように配置することによって、防塵フィルタ36dの表面において撮影光を透過しない領域が増加することを抑制できる。したがって、本実施形態に係る光学装置は、防塵フィルタ36dに強い振動を発生させて除塵効果を高めつつも、防塵フィルタ36dの面積の増加を抑制することができる。また、本実施形態に係る光学装置は、第4実施形態に係る光学装置と同様の効果を奏する。
第6実施形態
図18は、本発明に係る第6実施形態に係る光学装置おける防塵フィルタ36eの断面図(図18(a))および平面図(図18(b))である。第6実施形態に係る光学装置は、第1振動素子20aおよび第2振動素子20bを有し、電極103および配線部102の配置面が異なる他は、第3実施形態に係る光学装置と同様である。
防塵フィルタ36eは、矩形平板形状を有する基材部40と、複数の電極103と、表面層104とを有している。電極103は、第3実施形態に係る電極42とは異なり、基材部40のZ軸負方向側の表面に形成されている。しかし、電極103は、第3実施形態に係る電極42と同様に、基材部40の短辺40bに略平行な方向に延在するように形成されている。
複数の電極103は、基材部40の長辺40aに沿って、互いの間隔が所定の長さとなるように、間隔を空けて配置される。各電極103の一方の端部(本実施形態ではY軸正方向側の端部)には、配線部102が取り付けられている。電極103は、配線部102を介して、電圧信号出力回路28に電気的に接続されている。
複数の電極103は、互いに異なる位相を有する交流電圧を印加される複数のグループによって構成される。すなわち、本実施形態における複数の電極103は、第1の電圧信号が入力される第1グループの電極103aと、第2の電圧信号が入力される第2グループの電極103bと、第3の電圧信号が入力される第3グループの電極103cと、第4の電圧信号が入力される第4グループの電極103dによって構成される。
第6実施形態に係る光学装置は、防塵フィルタ36eの基材部40における一対の短辺40bに沿って備えられる第1振動素子20aと、第2振動素子20bとを有する。第6実施形態に係る光学装置は、互いに略平行に配置される2つの振動素子20a,20bを有するため、防塵フィルタ36eに対してより強い振動を発生させ、効率的に塵埃を除去することができる。
また、第1及び第2振動素子20a,20bの一部と、配線部102の一部とは、光軸α方向(Z軸方向)にみて、互いに重複するように配置されている。これにより、防塵フィルタ36eは、図17に示す防塵フィルタ36dと同様に、防塵フィルタ36eの表面において撮影光を透過しない領域が増加することを抑制できる。また、本実施形態に係る光学装置は、第3実施形態に係る光学装置と同様の効果を奏する。
第5および第6実施形態に係る防塵フィルタ36d,36eでは、基材の一方の表面に電極98,103を配置し、基材の他方の表面に振動素子20a,20bを配置したが、電極と振動素子の配置はこれに限定されない。例えば、基材の一方の表面に電極および表面層を形成し、表面層に振動素子20a,20bを固定してもよく、これによって第5および第6実施形態に係る防塵フィルタ36d,36eと同様の効果が得られる。
また、図1および図9に示す画像処理コントローラ66は、撮像素子ユニット16によって撮像された画像に電極42の影が写り込んだ場合、画像処理によって電極42の影を低減してもよい。これにより、電極42が撮像措置の光学性能に与える影響を抑制することができる。
第7実施形態
図20は、本発明の第7実施形態に係る光学装置を搭載したカメラ3bの全体ブロック図である。カメラ3bは、電圧信号出力回路128および振動素子駆動回路129が図9に示す第3実施形態とは異なり、電圧供給回路131およびスイッチ部133がさらに備えられている他は、第3実施形態のカメラ3bと同様である。すなわち、フィルタ部18aおよびこれに含まれる防塵フィルタ36b(図21)等の構成は、図10〜12に示す第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。
電圧信号出力回路128は、第1および第2実施形態に係る電圧信号出力回路28と同様に、撮像素子周辺部15aにおけるフィルタ部18aに備えられる複数の電極42に電圧を出力する。電圧信号出力回路128は、昇圧部A135および遅延部139によって構成されており、図7に示すような信号生成部82を含まない。しかし、電圧信号出力回路128には、電圧供給回路131で生成された電圧信号が、スイッチ部133を介して入力される。
振動素子駆動回路129は、第2実施形態に係る振動素子駆動回路29と同様に、撮像素子周辺部15aに備えられる振動素子20(図1)を駆動することができる。振動素子駆動回路129には、昇圧部B137が含まれているが、電圧信号出力回路128と同様に、信号生成部を含まない。また、振動素子駆動回路129には、電圧信号出力回路128と同様に、電圧供給回路131で生成された電圧信号が、スイッチ部133を介して入力される。
ボディCPU50には、電圧供給回路131が接続されている。電圧供給回路131は、ボディCPU50からの制御信号に基づき電圧信号を生成し、電圧信号出力回路128および振動素子駆動回路129に、生成した電圧信号を供給する。例えば、電圧供給回路131は、電源58から必要な電力が供給されることが好ましい。また、電圧供給回路131には、電圧信号出力回路128および振動素子駆動回路129に出力する電圧信号の周波数を、時間とともに変化させるスイープ回路131a(図21参照)が含まれていても良い。
電圧供給回路131と、電圧信号出力回路128および振動素子駆動回路129との間には、スイッチ部133が配置される。スイッチ部133は、電圧供給回路131の後段であって、電圧信号出力回路128および振動素子駆動回路129の前段に配置されている。したがって、スイッチ部133は、電圧供給回路131から出力された電圧信号を、電圧信号出力回路128および振動素子駆動回路129に伝達する。
スイッチ部133は、ボディCPU50からの制御を受けて、電圧供給回路131に対して電圧信号出力回路128または振動素子駆動回路129のいずれか一方を切り替えて電気的に接続する。例えば、スイッチ部133は、一連の除塵動作において、まず電圧供給回路131と振動素子駆動回路129とを接続し、次に電圧供給回路131と電圧信号出力回路128とを繋ぐように接続を切り替え、その後に再度電圧供給回路131と振動素子駆動回路129とを繋ぐように接続を切り替える。
図21は、第7実施形態に係る光学装置において行われる除塵動作を説明するための模式図である。防塵フィルタ36bの電極42a〜42bと、防塵フィルタ36bに備えられる振動素子20には、電圧供給回路131から電圧信号が供給される。例えば、電圧供給回路131は、CPU50(図20参照)からの制御を受けて、所定の周期を有する交流電圧信号を生成し、スイッチ部133に出力する。電圧供給回路131が出力する電圧信号の波形は、特に限定されないが、例えば、矩形波状、サイン波状の波形の電圧信号を用いることができる。
また、電圧供給回路131は、出力する電圧信号の周波数を時間とともに変化させるスイープ回路部131aを含んでいても良い。スイープ回路部131aを含む電圧供給回路131は、電極42a〜42dによって発生する進行波の周波数を遷移的に変化させ、様々な粒径または帯電状態の塵埃を移動させることができる。また、スイープ回路部131aを含む電圧供給回路131は、振動素子20によって防塵フィルタ36bを屈曲振動させる際に、防塵フィルタ36bを確実に共振させることが可能であり、防塵フィルタ36bに強い振動を発生させることができる。
電圧信号出力回路128には、電圧供給回路131で生成された電圧信号が、スイッチ部133を介して入力される。本実施形態に係る電圧信号出力回路128は、昇圧部A135と、遅延部A139、遅延部B141および遅延部C139を含む。昇圧部A135は、電圧供給回路131から供給される電圧信号を、所定の振幅まで昇圧もしくは増幅させる。なお、昇圧部A135は、遅延部A139、遅延部B141および遅延部C139の後段に配置されてもよい。
昇圧部A135によって昇圧された電圧信号は、4つに分岐される。4つに分岐された電圧信号のうち1つは、第1配線38aを介して第1電極群42aに入力される第1駆動電圧信号ch1となる。4つに分岐された電圧信号のうち残りの3つは、遅延部A139、遅延部B141および遅延部C143にそれぞれ入力される。遅延部A139は、昇圧部A135から入力された電圧信号を、4分の1周期遅延させ、第2駆動電圧信号ch2を出力する。遅延部B141および遅延部C143も、昇圧部A135から入力された電圧信号を、それぞれ2分の1周期または4分の3周期遅延させ、第3駆動電圧信号ch3または第4駆動電圧信号ch4を出力する。
電圧信号出力回路128から出力される駆動電圧信号ch1〜ch4は、第1実施形態と同様に、配線部38を介して、第1〜第4電極部42a〜42dに入力される。駆動電圧信号ch1〜ch4によって電圧を印加された電極42によって、防塵フィルタ36bの表面には、塵埃を移動させる進行波電界が発生する。
振動素子駆動回路129には、電圧信号出力回路128と同様に、電圧供給回路131で生成された電圧信号が、スイッチ部133を介して入力される。本実施形態に係る振動素子駆動回路129は、昇圧部B137を含む。昇圧部B137は、電圧供給回路131によって生成された電圧信号を、必要に応じて所定の振幅まで昇圧もしくは増幅させる。振動素子駆動回路129から出力された電圧信号は、振動素子20に入力される。振動素子20は、振動素子駆動回路129から入力した電圧信号によって駆動され、防塵フィルタ36bを屈曲振動させることができる。
図20に示すカメラ3bも、図12に示すカメラ3aと同様に、図19に示すフローチャートに従って除塵動作を行うことができる。図19に示すステップS101では、カメラ3bは、一連の除塵動作を開始する。
ステップS102において、カメラ3bは、図21に示す防塵フィルタ38bを屈曲振動させることによって、除塵動作を行う。ステップS102では、図20に示すボディCPU50から電圧供給回路131およびスイッチ部133に制御信号が出力される。電圧供給回路131は、ボディCPU50からの制御信号を受けて、電圧信号を生成し、スイッチ部133に出力する。スイッチ部133は、ボディCPU50からの制御信号を受けて、電圧供給回路131と振動素子駆動回路129とを電気的に接続する。
振動素子駆動回路129は、電圧供給回路131から出力された電圧信号を、昇圧部B137で昇圧し、図21に示す振動素子20に出力する。これにより、ステップS102では、第3実施形態と同様に、屈曲振動が発生する(図13)。ステップS102における除塵動作では、図13に示すように、振動の節99の周辺101に、除去しきれなかった塵埃が残留する場合がある。
図19に示すステップS103において、図20に示すカメラ3bは、図21に示す防塵フィルタ36bの表面に進行波電界を発生させることによって、除塵動作を行う。ステップS103を開始する際、図20に示すボディCPU50からスイッチ部133に制御信号が出力される。スイッチ部133は、ボディCPU50からの制御信号を受けて、電圧供給回路131と電圧信号出力回路128とを電気的に接続し、電圧供給回路131と振動素子駆動回路129との接続を遮断する。なお、ボディCPU50は、ステップS103を開始する際、電圧供給回路131に制御信号を出力し、電圧供給回路131で生成される電圧信号の周波数等を変更してもよい。
電圧信号出力回路128は、電圧供給回路131から出力された電圧信号を、昇圧部A135で昇圧したのち分岐させる。電圧信号出力回路128は、昇圧した電圧信号を4つに分岐させたのち遅延処理を行い、第1〜第4駆動信号ch1〜ch4を第1〜第4電極部42a〜42dに出力する。これにより、ステップS103では、第3実施形態と同様に、防塵フィルタ36bの表面に進行波電界が発生する(図14)。
図14に示すように、ステップS103において、防塵フィルタ36bに残存する塵埃37は、電極42によって発生された電界から与えられる静電気力によって、矢印105に示すように、X軸方向に沿って移動させられる。電圧供給回路131および電圧信号出力回路128は、振動の節99の発生位置周辺部に残存する塵埃37が、振動の節99から離れた位置に移動するまで、電極42に電圧を印加することができる。
ステップS104において、カメラ3bは、図21に示す防塵フィルタ38bを再度屈曲振動させることによって、除塵動作を行う。ステップS104を開始する際、図20に示すボディCPU50からスイッチ部133に制御信号が出力される。スイッチ部133は、ボディCPU50からの制御信号を受けて、電圧供給回路131の後段の接続を切り替え、電圧供給回路131と振動素子駆動回路129とを電気的に接続する。なお、ボディCPU50は、ステップS104を開始する際、ステップS103を開始する際と同様に、電圧供給回路131に制御信号を出力し、電圧供給回路131で生成される電圧信号の周波数等を変更してもよい。
振動素子駆動回路129は、電圧供給回路131から出力された電圧信号を、昇圧部B137で昇圧し、図21に示す振動素子20に出力する。これにより、ステップS104では、ステップS102と同様に、屈曲振動が発生する(図15参照)。ステップS102において除去しきれなかった塵埃は、ステップS103によって振動の節99から離れた位置に移動されているため、ステップS104における屈曲振動によって、防塵フィルタ36bの表面から除去される。
図19に示すステップS105では、除塵動作を終了する。ボディCPU50は、ステップS105において、電圧供給回路131に制御信号を出力し、電圧信号の生成を停止させる。
このように、本実施形態に係る光学装置は、防塵フィルタ36bを屈曲振動させる除塵動作と、防塵フィルタ36bの表面の電界を変化させる除塵動作の両方を行うことができるため、防塵フィルタ36bの表面に付着した塵埃37を効率的に除去することができる。すなわち、屈曲振動による除塵動作によって、質量の比較的大きい塵埃や、振動の節の周辺以外の部分に付着した塵埃を除去することができる。また、進行波電界による除塵動作によって、質量の比較的小さい塵埃や、振動の節の周辺に付着した塵埃や、帯電量の大きい塵埃等を除去することができる。
また、本実施形態に係る光学装置は、電圧信号出力回路128と振動素子駆動回路129の両方に電圧信号を供給し、屈曲振動による除塵動作に用いる電圧信号と、進行波電界による除塵動作に用いる電圧信号の両方を生成する電圧供給回路131を有する。したがって、電圧信号出力回路128と振動素子駆動回路129とがそれぞれ個別に信号生成部を有する場合に比べて、屈曲振動および進行波電界の両方の除塵動作を実現できる光学装置を、より安価に実現することができる。また、スイッチ部133によって電圧供給回路131の後段における電気的な接続を切り替えることによって、屈曲振動による除塵動作と、進行波電界による除塵動作を容易に切り替えることができる。