上述のように、搬送ベルトと逆転ローラとを用いて硬貨を1枚ずつ分離して繰り出す硬貨一括投入部の構成では、搬送ベルトを用いるため、大型でかつ高価となり、また、回転円盤を用いて硬貨を1枚ずつ分離して繰り出す硬貨一括投入部の構成では、回転円盤により、大型になる問題がある。
また、硬貨を受け入れる搬送ベルトや回転円盤を用いた構成では、硬貨詰まりの発生時に、搬送ベルトや回転円盤の上方域を開放して手動で硬貨詰まりを解消しなければならず、例えば、硬貨詰まりの自動解除を目的として搬送ベルトや回転円盤を下方へ開放させるようにするには構造が複雑になり、硬貨詰まりの自動解除に容易に対応できない。
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、小形でかつ安価な構成で、硬貨を1枚ずつ分離して繰り出すことができ、硬貨詰まりの自動解除にも容易に対応できる硬貨処理装置を提供することを目的とする。
請求項1記載の硬貨処理装置は、硬貨繰出方向に下降傾斜する通路面を有し、この通路面の傾斜によって硬貨を硬貨繰出方向に案内する通路板と、周面に大突起および小突起を有し、前記通路板の通路面上に対向配置されるとともにこの通路板の通路面に対向する側が前記硬貨繰出方向に対して逆方向に移動するように逆転されて硬貨を1枚ずつ通過させる逆転ローラとを具備しているものである。
請求項2記載の硬貨処理装置は、請求項1記載の硬貨処理装置において、前記逆転ローラの大突起と前記通路板の通路面との間隔は、処理対象の硬貨のうちの最も厚みが薄い硬貨の厚みよりも小さく、前記逆転ローラの小突起と前記通路板の通路面との間隔は、処理対象の硬貨のうちの最も厚みが厚い硬貨の厚みよりも大きく、かつ最も薄い硬貨の2枚分の厚みより小さいものである。
請求項3記載の硬貨処理装置は、請求項1または2記載の硬貨処理装置において、前記逆転ローラの大突起は、前記逆転ローラの周面の2箇所以上に突設されているものである。
請求項4記載の硬貨処理装置は、請求項1ないし3いずれか記載の硬貨処理装置において、前記逆転ローラは、金属製であるものである。
請求項5記載の硬貨処理装置は、請求項1ないし4いずれか記載の硬貨処理装置において、前記通路板は、定位置から前記逆転ローラとの間隔が開く方向に移動可能とするとともに定位置に向けて付勢されているものである。
請求項6記載の硬貨処理装置は、請求項1ないし5いずれか記載の硬貨処理装置において、前記逆転ローラの下側を1枚ずつ通過した硬貨を一定の間隔をあけて硬貨繰出方向に繰り出す繰出機構を具備しているものである。
請求項7記載の硬貨処理装置は、請求項6記載の硬貨処理装置において、前記繰出機構は、前記逆転ローラと同軸に設けられたカムローラと、このカムローラの回転に伴って前記通路板の通路面との間を開閉する板ばねとを備えているものである。
請求項8記載の硬貨処理装置は、請求項1ないし7いずれか記載の硬貨処理装置において、前記逆転ローラに到達する硬貨を検知する第1のセンサと、前記逆転ローラを通過して繰り出される硬貨を検知する第2のセンサと、前記通路板を前記逆転ローラから離反する下方へ開放させる開放機構と、前記第1のセンサが硬貨を検知したまま、前記第2のセンサが硬貨を一定時間検知しないと、前記開放機構によって前記通路板を下方へ開放させる制御部とを具備しているものである。
請求項1記載の硬貨処理装置によれば、通路板の通路面の傾斜によって硬貨を硬貨繰出方向に案内し、この通路板の通路面上に対向配置される逆転ローラによって硬貨を1枚ずつ繰り出すことができ、しかも、その逆転ローラの周面に設けた大突起と小突起とによって、逆転ローラと通路面との間にくさび状に入り込もうとする硬貨を崩しながら、硬貨を1枚ずつ通過させることができ、搬送ベルトや回転円盤などを用いる必要がなく、小形で安価に構成できる。また、硬貨の通路の下面を通路板で構成しているため、例えば通路板を下方へ開く構造が簡単に適用可能で、硬貨詰まりの自動解除にも容易に対応できる。
請求項2記載の硬貨処理装置によれば、請求項1記載の硬貨処理装置の効果に加えて、逆転ローラの大突起と通路板の通路面との間隔を、処理対象の硬貨のうちの最も厚みが薄い硬貨の厚みよりも小さくし、小突起と通路面との間に詰まりかけた硬貨を硬貨繰出方向の上流側に大きく戻して崩すことができ、また、逆転ローラの小突起と通路板の通路面との間隔を、処理対象の硬貨のうちの最も厚みが厚い硬貨の厚みよりも大きく、かつ最も薄い硬貨の2枚分の厚みより小さくし、硬貨を1枚ずつ通過させることができる。
請求項3記載の硬貨処理装置によれば、請求項1または2記載の硬貨処理装置の効果に加えて、逆転ローラの周面の2箇所以上に大突起を突設したため、1つの大突起のみでは崩れかかった硬貨が再び崩れる前の姿勢に戻ってしまうおそれがあるが、複数の大突起によって硬貨を確実に崩すことができる。
請求項4記載の硬貨処理装置によれば、請求項1ないし3いずれか記載の硬貨処理装置の効果に加えて、逆転ローラは金属製であるため、耐久性を向上でき、しかも、逆転ローラが金属製であっても大突起と小突起とを備えることによって確実に硬貨を1枚ずつ繰り出すことができる。
請求項5記載の硬貨処理装置によれば、請求項1ないし4いずれか記載の硬貨処理装置の効果に加えて、通常は定位置に付勢されて保持されている通路板と逆転ローラとの間に硬貨が噛み込みそうになって通路板に所定以上の負荷が加われば、通路板が付勢に抗して定位置から逆転ローラとの間隔が開く方向に移動するため、硬貨の噛み込みを防止できる。
請求項6記載の硬貨処理装置によれば、請求項1ないし5いずれか記載の硬貨処理装置の効果に加えて、繰出機構により逆転ローラの下側を1枚ずつ通過した硬貨を一定の間隔をあけて硬貨繰出方向に繰り出すため、後処理工程で硬貨を確実に処理できる。
請求項7記載の硬貨処理装置によれば、請求項6記載の硬貨処理装置の効果に加えて、繰出機構では、逆転ローラと同軸に設けられたカムローラの回転に伴って板ばねが通路板の通路面との間を開閉することにより、硬貨を一定の間隔をあけて繰り出すことができ、繰出間隔調整のための特別な電気機器や制御を必要とせず、繰出機構を簡単で安価に構成できる。
請求項8記載の硬貨処理装置によれば、請求項1ないし7いずれか記載の硬貨処理装置の効果に加えて、逆転ローラに到達する硬貨を検知する第1のセンサが硬貨を検知したまま、逆転ローラを通過して繰り出される硬貨を検知する第2のセンサが硬貨を一定時間検知しないと、開放機構によって通路板を下方へ自動的に開放させるため、硬貨詰まりを自動解除でき、硬貨の自動返却にも対応できる。
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
図10に券売機11の正面図を示し、この券売機11は、図示しない券売機本体とこの券売機本体の前面に開閉可能に設けられた扉体12とを備えている。扉体12の前面には、上部域に複数の選択ボタン13が配設され、これら選択ボタン13の下側域に、硬貨処理装置14の硬貨投入口15およびこの硬貨投入口15の下側に配置されて釣銭硬貨や返却硬貨を払い出す返却口16、紙幣処理装置の紙幣投入口17、投入金額を表示する表示部18、釣銭の返却を指示する釣銭ボタン19、返却を指示する返却ボタン20、係員を呼び出す呼出ボタン21、発券した券を取り出す券取出口22などが設置されている。硬貨処理装置14および紙幣処理装置は扉体12の背面に取り付けられている。
図9に硬貨処理装置14の斜視図を示し、この硬貨処理装置14は、硬貨投入口15から一括投入された硬貨を1枚ずつ分離するとともに一定の間隔をあけて繰り出す硬貨一括投入部25、この硬貨一括投入部25から1枚ずつ繰り出される硬貨を識別して金種別に振り分ける硬貨識別部26、この硬貨識別部26で金種別に振り分けられた硬貨を図示しない金種別の硬貨収納部に導く硬貨振分通路部27を備えている。
硬貨識別部26は、硬貨一括投入部25から1枚ずつ繰り出される硬貨を識別し、正常に識別できた硬貨を収納し、正常に識別できなかった硬貨を返却口16に返却し、返却ボタン20の操作により投入分の硬貨を返却口16に払い出すように構成されている。また、硬貨一括投入部25から繰り出される硬貨の間隔が例えば0.5秒以上ないと返却口16にリジェクトしてしまう仕様となっている。
図6ないし図9に示すように(図6に硬貨一括投入部25の一部の斜視図、図7に硬貨一括投入部25の一側の側面図、図8に硬貨一括投入部25の他側の側面図を示す)、硬貨一括投入部25は、扉体12に取り付けられるフレーム30を有し、このフレーム30の各部品が取り付けられてユニット化されている。
このフレーム30には、硬貨投入口15を形成する硬貨投入口部31が取り付けられている。この硬貨投入口部31の硬貨投入口15は、例えば45°程度の傾斜角度で上方に向けられ、横向きとした硬貨を複数枚重ねた状態で一括投入可能としている。硬貨投入口15の後面側には、この硬貨投入口15を開閉するシャッタ32が配設されている。このシャッタ32は、フレーム30に設けられた側板33の一側面より突出されていて、側板33の他側面(図8参照)において、軸34で開閉移動可能に取り付けられ、このシャッタ32にアーム35を介してソレノイド36が連結され、このソレノイド36の駆動によって開閉移動する。なお、シャッタ32は、閉じる方向にばねで付勢し、ソレノイド36の駆動によって開くようにしてもよい。そして、このシャッタ32は、電源が切れたときや、出金動作中のときには閉じ、硬貨の投入を阻止する。
フレーム30の側板33の一側面には、硬貨投入口15の後方に連続して例えば45°程度の傾斜角度で硬貨繰出方向に向けて下降傾斜する硬貨通路38が形成され、この硬貨通路38の途中に硬貨を1枚ずつ分離して通過させる逆転ローラ39および1枚ずつ分離された硬貨を一定の間隔をあけて繰り出す繰出機構40がそれぞれ配置されている。
硬貨通路38は、硬貨通路38の下面を構成する通路板42と、硬貨通路38の上面を構成するガイド板43,44と、硬貨通路38の一側面を構成する通路カバーである側板45と、硬貨通路38の他側面を構成するフレーム30の側板33との間に形成されている。ガイド板43は逆転ローラ39より硬貨繰出方向上流側に、ガイド板44は逆転ローラ39より硬貨繰出方向下流側にそれぞれ配設され、また、側板45はフレーム30側に対して着脱可能に取り付けられる。
通路板42と上流側のガイド板43との間の間隔は、硬貨投入口15から投入された複数枚の重ねた硬貨を受け入れ可能に形成され、また、通路板42と下流側のガイド板44との間の間隔は、処理対象の硬貨のうちの最も厚みが厚い硬貨の厚みよりも大きく、かつ最も薄い硬貨の2枚分の厚みより小さく形成され、また、側板33と側板45との間の間隔は、処理対象の硬貨のうちの径が最も大きい硬貨の直径よりも広く、径が最も小さい硬貨の2枚分の直径よりも小さく形成されている。
通路板42は、傾斜によって硬貨を滑らせて案内する通路面47を上面に有し、硬貨繰出方向上流側の端部がフレーム30の側板33に軸48で支持され、その軸48を中心として硬貨繰出方向下流側の端部側が上下方向に揺動可能としている。フレーム30の側板33の他側面(図8参照)において、軸48に連結されて通路板42と一体に揺動可能な揺動レバー49が配置され、この揺動レバー49とフレーム30の側板33との間に通路板42を上方へ付勢する付勢手段としてのスプリング50が張設されている。
通路板42の硬貨繰出方向下流側の先端には略L字形に折曲された係合部51が設けられ、フレーム30側にはスプリング50の付勢で上昇する通路板42の係合部51が係合するストッパ部52が設けられ、このストッパ部52に係合部51が係合した位置を通路板42の定位置としている。したがって、通路板42は、常時は定位置に付勢され、逆転ローラ39との間に硬貨が噛み込んで所定以上の負荷が加わったときには、スプリング50による付勢に抗して下降し、硬貨の噛み込みを防止する構造となっている。
逆転ローラ39と通路板42との間に硬貨を噛み込んだ場合に通路板42を強制的に下方へ開放させる開放機構53が設けられている。この開放機構53では、フレーム30の一側面に開閉駆動部としての開閉用モータ54およびこの開閉用モータ54の回転を減速する減速機構55が配設され、フレーム30の他側面において、減速機構55の出力軸である駆動軸56に回転レバー57が取り付けられ、この回転レバー57と揺動レバー49との間にリンク58が連結されている。リンク58は、両端に長孔59が形成され、各長孔59にスライド可能に係合する止めねじ60が揺動レバー49および回転レバー57にそれぞれ取り付けられている。そして、開閉用モータ54の駆動によって回転レバー57が図8矢印方向に回転し、リンク58および揺動レバー49を介して通路板42が定位置から下方の開放位置へ、この開放位置から定位置へ開閉移動する。なお、リンク58の長孔59により、手動でスプリング50の付勢に抗して通路板42を下方へ開放することができる。
揺動レバー49の先端の揺動域に対応して、通路板42が定位置に位置するときに揺動レバー49の先端で遮光されて通路板42の定位置を検知する投光部と受光部とを有するフォトインタラプタなどの定位置検知センサ61、通路板42が下方の放出位置に開放されたときに揺動レバー49の先端で遮光されて通路板42の開放位置を検知する投光部と受光部とを有するフォトインタラプタなどの開放位置検知センサ62が配設されている。
通路板42の開放域の下方には、通路板42の開放によって下方へ放出される詰まり硬貨や異物などを受け入れて返却口16へ導くリジェクト通路63が形成されている。
また、逆転ローラ39は、通路板42の通路面47の中央に対向して配設されている。すなわち、フレーム30の側板33の他側面に取り付けられた逆転ローラ駆動部としての逆転ローラ用モータ65の回転軸66がフレーム30の側板33の一側面から通路板42の上方域に突出され、この回転軸66に逆転ローラ39が取り付けられている。そして、逆転ローラ用モータ65の駆動により、通路板42に対向する逆転ローラ39の周面が硬貨繰出方向に対して反対となる方向に回転するように逆転する。
逆転ローラ39は、金属製で、通路幅方向の厚み寸法が硬貨の直径寸法よりも小さく、周面には突出寸法の大きい大突起67とこの大突起67よりも突出寸法の小さい複数の小突起68とが所定の間隔で突設されている。これら大突起67および小突起68は、略三角形状で、頂部は平らに形成されており、本例では、大突起67は、2つで、1つの小突起68をおいて比較的近い位置に突設されている。すなわち、2つの大突起67の一方の間に1つの小突起68が位置され、2つの大突起67の他方の間に複数の小突起68が位置されている。なお、逆転ローラ39の2つの大突起67の近いほうの間隔は、逆転ローラ39の回転速度によって最適値が決まり、あまり回転速度が遅いと硬貨の崩し効果が低減してしまうため比較的速い回転速度に設定するのが好ましい。
図3(b)に示すように、逆転ローラ39の大突起67と定位置に位置する通路板42の通路面47との間隔L1は、処理対象の硬貨(なお、図には硬貨に符号Cを示すが、必要なところを除いて本文中での符号Cの記載は省略する)のうちの最も厚みが薄い硬貨の厚みよりも小さくなるように設定されている。図3(a)に示すように、逆転ローラ39の小突起68と定位置に位置する通路板42の通路面47との間隔L2は、処理対象の硬貨のうちの最も厚みが厚い硬貨の厚みよりも大きく、かつ最も薄い硬貨の2枚分の厚みより小さくなるように設定されている。そして、図3(c)に示すように、逆転ローラ39の大突起67と定位置に位置する通路板42の通路面47との間に硬貨を強く噛み込んだ場合には、通路板42が軸を支点としてスプリング50の付勢に抗して逆転ローラ39との間隔が開く下方へ揺動するように構成されている。
また、図4ないし図7に示すように、繰出機構40は、逆転ローラ39の両側で回転軸66に同軸に取り付けられた対のカムローラ70,71、およびこれらカムローラ70,71の回転に伴って通路板42の通路面47との間を開閉する対の板ばね72,73を有している。
対のカムローラ70,71は、同一部品が用いられており、取付位置が180°異なるように回転軸66に取り付けられている。
対の板ばね72,73のうち、一方の板ばね(第1の板ばね)72は繰り出す硬貨の次の硬貨を押える押え用板ばねであり、他方の板ばね(第2の板ばね)73は硬貨の繰り出しを一定間隔に規制する規制用板ばねである。
各板ばね72,73は、板ばね材料で長尺に形成され、逆転ローラ39の両側で硬貨通路38の上方域に硬貨繰出方向に沿って配置されており、硬貨繰出方向上流側の基端に設けられた取付部74,75が上流側のガイド板43にねじ76でそれぞれ取り付けられていて、中間部が各カムローラ70,71の下面に常に当接するように上方へ向けて弾性が付与されている。
各板ばね72,73の硬貨繰出方向下流側の先端は、一方の板ばね72よりも他方の板ばね73の方が長く延設され、それら各先端には、押え部77および規制部78がそれぞれ下方に向けて折曲形成されている。これら押え部77および規制部78は、カムローラ70,71の回転によって、下流側のガイド板44に形成された開口部79を通じて硬貨通路38内に進退可能としている。すなわち、押え部77は、通路板42の通路面47に接する進出位置と硬貨の通過を許容する退避位置との間で進退可能とし、また、規制部78は、通路板42の通路面47よりも下側まで進出する進出位置と硬貨の通過を許容する退避位置との間で進退可能とする。通路板42には、規制部78との干渉を避ける切欠部80が形成されている。そして、押え部77および規制部78の各位置つまり間隔は、規制部78で1枚の硬貨を規制している状態で、この規制されている硬貨に当接している次の硬貨の硬貨面に押え部77が接触して押えることができる寸法関係を有している。
また、図2および図7に示すように、硬貨投入口15から投入された硬貨が逆転ローラ39の位置に到達することによりその硬貨で遮光されて硬貨を検知する投光部と受光部とを有するフォトインタラプタなどの第1のセンサ82が配設されている。硬貨識別部26に硬貨を繰り出す硬貨通路38の出口部にその繰り出される硬貨で遮光されて硬貨を検知する投光部と受光部とを有するフォトインタラプタなどの第2のセンサ83が配設されている。
また、硬貨処理装置14は、この硬貨処理装置14を制御する図示しない制御部を備えている。この制御部は、第1のセンサ82が硬貨を検知したら逆転ローラ用モータ65を駆動させ、硬貨を検知しなくなってから所定時間経過したら逆転ローラ用モータ65を停止させる機能、第1のセンサ82が硬貨を検知したまま、第2のセンサ83が硬貨を一定時間検知しないと、硬貨通路38や逆転ローラ39の手前で硬貨詰まりや異物の混入があると判断し、開放機構53によって通路板42を下方へ自動開放させ、硬貨や異物を返却口16に返却する機能、第2のセンサ83が硬貨を検知状態のまま所定時間が経過したら、硬貨識別部26側で硬貨詰まりが発生していると判断してエラー報知する機能、通路板42の開放時に、開放位置検知センサ62で通路板42の開放を検知しなければ何かが挟まったものと判断して通路板42を一旦閉じた後に再度開放させるように複数回リトライさせ、それでもだめならエラー報知する機能、通路板42の開放時に、硬貨や異物の落下時間を考慮して通路板42を開放位置で所定時間停止させる機能を有している。
次に、硬貨処理装置14の動作を説明する。
硬貨投入口15に投入された硬貨は、硬貨通路38に送り込まれ、通路板42の通路面47の傾斜によって逆転ローラ39の位置に到達する。この逆転ローラ39の位置に硬貨が到達したことを第1のセンサ82が検知することにより、逆転ローラ用モータ65を駆動し、逆転ローラ39を回転させる。
逆転ローラ39は大突起67および小突起68が通路板42の通路面47に順次対向しながら回転するが、逆転ローラ39の小突起68が通路板42の通路面47に対向する期間中に、逆転ローラ39の下側を硬貨が1枚ずつ通過する。
また、図1(a)に示すように、通路板42側に位置する硬貨C1よりもその硬貨C1上に位置する硬貨C2が下流側に進んでいて、逆転ローラ39と通路板42との間にくさび状に硬貨が入り込むと、逆転ローラ39の小突起68だけでは、逆転ローラ39が回転していても、硬貨を崩すことが難しいが、逆転ローラ39の大突起67の作用によって硬貨を崩して1枚ずつ逆転ローラ39の下側を通過させることができる。すなわち、図1(b)(c)に示すように、逆転ローラ39の大突起67が硬貨C2の位置まで回転してくると、大突起67で硬貨C2をすくい上げて上流側に移動させるため、その間に、硬貨C2よりも硬貨C1が下流側に移動し、通路面側に位置する硬貨C1から順に逆転ローラ39の下側を通過させることができる。また、図1(d)に示すように、大突起67で硬貨C2から外れると、その硬貨C2が再び元の位置に戻ろうとするが、図1(e)(f)に示すように、次の大突起67で硬貨C2をすくい上げて上流側に移動させ、その間に、硬貨C2よりも硬貨C1が下流側に移動し、通路面側に位置する硬貨から順に逆転ローラ39の下側を確実に通過させることができる。
このように、通路板42の通路面47の傾斜によって硬貨を硬貨繰出方向に案内し、この通路板42の通路面47上に対向配置される逆転ローラ39によって硬貨を1枚ずつ分離して通過させることができ、しかも、その逆転ローラ39の周面に設けた大突起67と小突起68とによって、逆転ローラ39と通路面47との間にくさび状に入り込もうとする硬貨を崩しながら、硬貨を1枚ずつ分離して通過させることができ、搬送ベルトや回転円盤などを用いる必要がなく、小形で安価に構成できる。
しかも、逆転ローラ39の周面の2箇所に大突起67を突設したため、1つの大突起67のみでは崩れかかった硬貨が再び崩れる前の姿勢に戻ってしまうおそれがあっても、2つ目の大突起67によって硬貨を確実に崩すことができる。
さらに、逆転ローラ39は金属製であるため、一般的なゴムに用いた場合に比べて、耐久性に優れ、安価にでき、しかも、逆転ローラ39が金属製であっても大突起67と小突起68とを備えることによって確実に硬貨を1枚ずつ分離して繰り出すことができる。
また、逆転ローラ39の下側を硬貨が通過するときに、逆転ローラ39の大突起67が硬貨の硬貨面に接触すると、一般的には噛み込み状態となって逆転ローラ用モータ65の過負荷や逆転ローラ39の破損が生じることになるが、図3(c)に示すように、逆転ローラ39の大突起67と通路板42との間に硬貨を挟み込んで通路板42に所定以上の負荷が加われば、通路板42がスプリング50による付勢に抗して定位置から逆転ローラ39との間隔が開く方向に移動するため、硬貨の噛み込みを防止できる。
また、逆転ローラ39の下側を通過した硬貨は、繰出機構40によって1枚ずつ一定の間隔をあけて繰り出す。すなわち、図5(a)に示すように、カムローラ70により、第1の板ばね72の押え部77が通路板42に当接する状態に移動し、この押え部77に逆転ローラ39の下側を通過した硬貨C11が当接して止まる。カムローラ71により、第2の板ばね73の規制部78が硬貨通路38を閉じる状態に移動する。
図5(b)に示すように、カムローラ70,71が回転していくと、第1の板ばね72の押え部77が通路板42から離反移動し、押え部77で押えられていた硬貨C11が硬貨繰出方向に移動し、硬貨通路38を閉じる状態にある第2の板ばね73の規制部78に当接して止まり、この硬貨C11に後続の硬貨C12が当接する。
図5(c)に示すように、カムローラ70の回転により、第1の板ばね72の押え部77が通路板42に向けて移動し、この押え部77が第2の板ばね73の規制部78に当接して止まっている1枚目の硬貨C11に続く2枚目の硬貨C12の硬貨面に当接し、この硬貨C12を通路板42との間に挟み込んで保持する。
図5(d)に示すように、第2の板ばね73が通路板42から離反移動し、1枚目の硬貨C11のみが硬貨繰出方向に移動し、2枚目の硬貨C12は保持された状態を維持する。
その後、図5(a)に示すように、第2の板ばね73の規制部78が硬貨通路38を閉じる状態に移動する。
このように、繰出機構40の第1の板ばね72と第2の板ばね73とが交互に硬貨通路38を開閉し、逆転ローラ39の下側を1枚ずつ通過した硬貨を一定の間隔をあけて硬貨繰出方向に繰り出すことができ、そのため、後処理工程である硬貨識別部26で硬貨を確実に処理できる。
この繰出機構40では、逆転ローラ39と同軸に設けられたカムローラ70,71の回転に伴って板ばね72,73が通路板42の通路面47との間を開閉することにより、硬貨を一定の間隔をあけて繰り出すことができ、繰出間隔調整のための特別な電気機器や制御を必要とせず、繰出機構40を簡単で安価に構成できる。
また、第1のセンサ82および第2のセンサ83とも硬貨を検知しなくなってから所定時間経過したら逆転ローラ用モータ65を停止させる。
また、図2(a)に示すように、第1のセンサ82が硬貨を検知したまま、第2のセンサ83が硬貨を一定時間検知しないと、図2(b)に示すように、硬貨通路38や逆転ローラ39の手前で硬貨詰まりや異物の混入があると判断し、開放機構53によって通路板42を下方へ自動開放させ、リジェクト通路63を通じて硬貨や異物を返却口16に自動返却する。通路板42の開放時には、硬貨や異物の落下時間を考慮して通路板42を開放位置で所定時間停止させる。硬貨や異物の返却後は通路板42を元の定位置に戻す。
この通路板42の開放時に、開放位置検知センサ62で通路板42の開放を検知しなければ何かが挟まったものと判断して通路板42を一旦閉じた後に再度開放させるように複数回リトライさせ、それでもだめならエラー報知する。
また、第2のセンサ83が硬貨を検知状態のまま所定時間が経過したら、硬貨識別部26側で硬貨詰まりが発生していると判断してエラー報知する。
なお、逆転ローラ39の大突起67は、1つでもよいが、上述したように2つであればより確実に硬貨を崩すことができ、さらに、逆転ローラ39の回転速度や径などの関係によっては2つよりも多く設けてもよい。