以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1〜図8は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図又は平面図である。本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、互いに対向する表面(第1の主面)3a及び裏面(第2の主面)3bを有するガラス基板3の表面3a上にフィルム状の感光性接着剤からなる接着層7を設ける工程(図1及び図2)と、裏面3b側から光を照射して接着層7を露光し、現像により接着層7をパターニングする工程(図3〜図5)と、パターニングされた接着層7に半導体チップ5をその回路面がガラス基板3側に向くように直接接着する工程(図6)と、互いに接着されたガラス基板3と半導体チップ5とをダイシングして複数の半導体装置1に切り分ける工程(図7及び図8)と、を備える。
図1に示されるガラス基板3の表面3a上に、フィルム状の感光性接着剤からなる接着層7が設けられる(図2)。予めフィルム状に形成された感光性接着剤を準備し、これをガラス基板3に貼り付ける方法が簡便である。
感光性接着剤は、露光及び現像によってパターニングされた後に被着体に対する接着性を有し、アルカリ現像が可能なネガ型の感光性接着剤である。より詳細には、フィルム状の感光性接着剤を露光及び現像によってパターニングして形成されるレジストパターンが、半導体チップ及びガラス基板等の被着体に対する接着性を有している。例えばレジストパターンに被着体を必要により加熱しながら圧着することにより、レジストパターンと被着体とを接着することが可能である。係る機能を有する感光性接着剤の詳細については後述する。
ガラス基板3の表面3a上に設けられた接着層7に対して、所定の位置に開口が形成されているマスク11をガラス基板3の裏面3b上に配置し、マスク11を介して裏面3b側から活性光線(典型的には紫外線)を照射する(図3)。これにより、活性光線はガラス基板3を透過して接着層7に照射され、接着層7は光硬化が進行して所定のパターンで露光される。
露光後、接着層7は、アルカリ現像液を用いた現像によって、接着層7の露光されなかった部分を除去することによりパターニングされる(図4)。接着層7は略正方形の辺に沿ったパターンを有するように形成されている(図5)。なお、ネガ型に代えてポジ型の感光性接着剤を用いることも可能であり、その場合は、接着層7のうち露光された部分が現像により除去される。
半導体チップ5の回路面上に設けられた複数の有効画素領域15が、略正方形の辺に沿ったパターンに形成された接着層7にそれぞれ囲まれ、半導体チップ5の回路面がガラス基板3側に向くように、半導体チップ5が接着層7に直接接着される(図6)。接着層7は、半導体チップ5を接着すると共に、有効画素領域15を囲む空間を確保するためのスペーサとしても機能している。半導体チップ5の接着は、例えば、接着層7が流動性を発現するような温度にまで加熱しながら熱圧着する方法により行われる。熱圧着後、必要により接着層7を加熱して更に硬化を進行させる。
半導体チップ5を接着した後、破線Dに沿ったダイシングにより(図7)、図8に示される半導体装置1が複数得られる。この場合、半導体チップ5の回路面とは反対側の面にダイシングフィルムを貼り付け、ガラス基板3及び半導体チップ5をダイシングフィルムと共に切断することにより複数の半導体装置1が得られる。このダイシングは、例えば、ダイシングフィルムによって全体をフレームに固定した状態でダイシングブレードを用いて行われる。
半導体装置の製造方法は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
半導体装置1は、CMOSセンサ、CCDセンサ等の電子部品を製造するために好適に用いられる。図9は、本発明に係る半導体装置の製造方法により製造された半導体装置を用いたCMOSセンサを示す端面図である。CMOSセンサ30は、固体撮像素子としての半導体装置1を備える電子部品である。半導体装置1は、複数の導電性バンプ32を介して半導体素子搭載用支持基材34上の接続端子(図示せず)と電気的に接続されている。なお、導電性バンプ32を用いて半導体装置1が接着された構成に代えて、導電性ワイヤを介して半導体装置1が半導体素子搭載用支持基材34上の接続端子に接続された構成を有していてもよい。
CMOSセンサ30は、有効画素領域15の真上に位置するように設けられたレンズ38と、レンズ38と共に半導体装置1を内包するように設けられた側壁40と、レンズ38が嵌め込まれた状態でレンズ38及び側壁40の間に介在する嵌め込み用部材42とが半導体素子搭載用支持基材34上に搭載された構成を有する。
CMOSセンサ30は、上記のように半導体装置1を製造した後、半導体装置1を半導体素子搭載用支持基材34上の接続端子と半導体チップ5を導電性バンプ32介して接続し、半導体装置1を内包するようにレンズ38、側壁40及び嵌め込み用部材42を半導体素子搭載用支持基材34上に形成することにより製造される。
以下、上記実施形態係る半導体装置の製造方法において用いられる感光性接着剤の好適な実施形態に関して説明する。
本実施形態に係る感光性接着剤は、アルカリ可溶性ポリマーと、放射線重合性化合物と、光重合開始剤とを含有する。
アルカリ可溶性ポリマーは、アルカリ現像液に可溶であればよく、テトラメチルアンモニウムハイドライド水溶液に可溶であることが好ましい。例えば、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するポリマーであれば、アルカリ現像液への良好な溶解性を有する場合が多い。
アルカリ可溶性ポリマーがカルボキシル基を有している場合、その酸価は好ましくは80〜180mg/KOHである。酸価が80〜180mg/KOHであることにより、アルカリ現像液によるパターン形成性、及び露光後の再接着性が特に良好になる。アルカリ可溶性ポリマーの酸価が80mg/KOH未満であるとアルカリ現像液への溶解性が低下する傾向があり、180mg/KOHを超えると現像中に感光性接着剤が被着体からはく離してしまう可能性が高くなる。同様の観点から、アルカリ可溶性ポリマーの酸価は150mg/KOH以下であることがより好ましい。特に、感光性接着剤が後述する熱硬化性樹脂を含有し、且つ、アルカリ可溶性ポリマーの酸価が80〜180mg/KOHであることが好ましい。
露光後の良好な接着性を確保するために、アルカリ可溶性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、30〜150℃であることが好ましい。アルカリ可溶性ポリマーのTgが30℃未満であると、露光後の熱圧着時にボイドが生成しやすくなる傾向にある。Tgが150℃を超えると、露光前の被着体への貼付け温度及び露光後の圧着温度が高くなり周辺部材にダメージを与えやすくなる傾向にある。なお、上記Tgは粘弾性測定装置(レオメトリック社製)を用いてフィルム状の感光性接着剤の粘弾性の温度変化を測定したときのtanδのピーク温度である。
アルカリ可溶性ポリマーの重量平均分子量は5000〜150000であることが好ましく、20000〜50000がより好ましく、30000〜40000が更に好ましい。アルカリ可溶性ポリマーの重量平均分子量が5000より小さいと感光性接着剤のフィルム形成性が低下する傾向にあり、150000を超えるとアルカリ現像液への溶解性が低下して、現像時間が長くなる傾向にある。アルカリ可溶性ポリマーの重量平均分子量を5000〜150000とすることにより、露光後の再接着のための加熱温度を低くすることができるという効果も得られる。なお、上記の重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィー(例えば、島津製作所製「C−R4A」(商品名))を用いて測定される標準ポリスチレン換算値である。
アルカリ可溶性ポリマーは、エチレン性不飽和基等の放射線重合性官能基を有していてもよい。この場合、アルカリ可溶性ポリマーは放射線重合性化合物としても機能する。放射線重合性化合物として、放射線重合性官能基を有するアルカリ可溶性ポリマーのみを用いてもよいし、係るアルカリ可溶性ポリマーと、これとは別の放射線重合性化合物とを組み合わせて用いてもよい。
アルカリ可溶性ポリマーは、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド酸、ポリベンゾオキサゾール、アクリルポリマー、スチレン−マレイン酸共重合体、ノボラック樹脂及びポリノルボルネン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーを含むことが好ましい。これらの中でも、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール及びアクリルポリマーが好ましい。
アルカリ可溶性ポリマーとして用いられるポリイミドは、主鎖中にイミド骨格を有する1種又は2種以上の重合体から構成される。ポリイミドはカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有することが好ましい。
カルボキシル基を有するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、カルボキシル基及びアミノ基を有するジアミンとの反応により、得ることができる。フェノール性水酸基を有するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、フェノール性水酸基及びアミノ基を有するジアミンとの反応により、得ることができる。これら反応により、ポリイミドにはジアミンに由来するカリボキシル基又はフェノール性水酸基が導入される。ジアミンの種類及びその仕込み比、反応条件等を適宜調整することにより、ポリイミドの酸価を所望の範囲に制御することができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応(縮合反応)は、当業者には理解されるように、公知の方法により行うことができる。例えば、この反応においては、まず、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、等モル又はほぼ等モルの比率で、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。各成分の添加順序は任意である。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が生成する。生成したポリアミド酸を50〜80℃の温度に加熱して解重合させることによって、その分子量を調整することもできる。生成したポリアミド酸を脱水閉環させることにより、ポリイミドが生成する。脱水閉環は、加熱による熱閉環法、又は脱水剤を使用する化学閉環法により行うことができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの仕込み比に関して、より具体的には、テトラカルボン酸二無水物の合計量1.0molに対して、ジアミンの合計量を好ましくは0.5〜2.0mol、より好ましくは0.8〜1.0molの範囲内とする。ジアミンの比率が2.0molを超えると末端がアミノ基であるポリイミドオリゴマーが多く生成し、0.5molを下回ると末端がカルボキシル基であるポリイミドオリゴマーが多く生成する傾向にある。ポリイミドオリゴマーの量が多くなると、ポリイミドの重量平均分子量が低下して、感光性接着剤組成物の耐熱性等の種々の特性の低下が生じ易くなる。上記仕込み比を調整することによって、ポリイミドの重量平均分子量を5000〜150000の範囲内となるように調製することができる。
ポリイミドの合成に使用されるジアミンとしては、アルカリ現像液への溶解性を特に良好なものとするために、上述の式(I−a)、(I−b)、(II−a)、(II−b)又は(II−c)で表される芳香族ジアミンが好ましい。
ポリイミドのTgを低下させて熱応力を低減するため、ジアミンは、更に、下記一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンを含むことが好ましい。式(III)中、Q1、Q2及びQ3はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示し、n1は1〜80の整数を示す。
式(III)の脂肪族エーテルジアミンとしては、より具体的には、下記化学式(IIIa)、(IIIb)又は(IIIc)で表されるものが挙げられる。これらの中でも、露光前の低温での貼付け性及び露光後の被着体に対する良好な再接着性を確保できる点で、式(IIIa)の脂肪族エーテルジアミンが好ましい。
脂肪族エーテルジアミンの市販品としては、例えば、サン テクノケミカル(株)製のジェファーミン「D−230」、「D−400」、「D−2000」、「D−4000」、「ED−600」、「ED−900」、「ED−2001」、「EDR−148」(以上商品名)、BASF(製)のポリエーテルアミン「D−230」、「D−400」、「D−2000」(以上商品名)が挙げられる。
更に、露光後の再接着性を更に高めるために、下記一般式(IV)で表されるシロキサンジアミンを使用することが好ましい。式(IV)中、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、n2は1〜5の整数を示す。
化学式(IV)で表されるシロキサンジアミンとしては、例えば、式中のn2が1のとき、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサンが挙げられる。n2が2のとき、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサンが挙げられる。
これらのジアミンは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。例えば、式(Ia)、(Ib)、(II−a)、(II−b)又は(II−c)で表される芳香族ジアミンを全ジアミンの10〜50モル%、一般式(IV)で表されるシロキサンジアミンを全ジアミンの1〜20モル%(更に好ましくは5〜10モル%)、一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンを全ジアミンの10〜90モル%とすることが好ましい。式(Ia)又は(Ib)で表される芳香族ジアミンを上記比率で用いることにより、通常、ポリイミドの酸価を80〜180mg/KOH又は80〜150mg/KOHとすることができる。シロキサンジアミンが全ジアミンの1モル%未満であると、露光後の再接着性が低下する傾向にあり、20モル%を超えるとアルカリ現像液への溶解性が低下する傾向にある。また、脂肪族エーテルジアミンが全ジアミンの10モル%未満であると、ポリイミドのTgが高くなって低温加工性(低温での貼付け性)が低下する傾向にあり、90モル%を超えると、露光後の熱圧着時にボイドが発生しやすくなる傾向にある。
ジアミンは、上記以外のジアミンを更に含んでいてもよい。例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンが挙げられる。
ポリイミドを合成する際の原料として用いるテトラカルボン酸二無水物は、接着剤の諸特性の低下を抑えるため、無水酢酸からの再結晶により精製されていることが好ましい。あるいは、テトラカルボン酸二無水物は、その融点よりも10〜20℃低い温度で12時間以上加熱することにより乾燥されていてもよい。テトラカルボン酸二無水物の純度は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される吸熱開始温度と吸熱ピーク温度との差によって評価することができ、再結晶や乾燥等によりこの差が20℃以内、より好ましくは10℃以内となるように精製されたカルボン酸二無水物をポリイミドの合成のために用いることが好ましい。吸熱開始温度及び吸熱ピーク温度は、DSC(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用いて、サンプル量:5mg、昇温速度:5℃/min、測定雰囲気:窒素の条件で測定される。
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、及びテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
特に、溶剤への良好な溶解性を付与するため、下記化学式(V)又は(VI)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。この場合、これらの式で表されるテトラカルボン酸二無水物の割合を、全テトラカルボン酸二無水物100モル%に対して50モル%以上とすることが好ましい。この割合が50モル%未満であると、溶解性向上効果が低下する傾向にある。
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
放射線重合性化合物は、紫外線や電子ビームなどの放射線の照射により、重合する化合物である。放射線重合性化合物は、アクリート基及びメタクリレート基のようなエチレン性不飽和基を有する化合物であることが好ましい。放射線重合性化合物の具体例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、ペンテニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、下記一般式(10)で表される化合物、ウレタンアクリレート若しくはウレタンメタクリレート、及び尿素アクリレートが挙げられる。式(10)中、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、q及びrはそれぞれ独立に1以上の整数を示す。
ウレタンアクリレート及びウレタンメタクリレートは、例えば、ジオール類、下記一般式(21)で表されるイソシアネート化合物、及び下記一般式(22)で表される化合物の反応により生成する。
式(21)中、sは0又は1を示し、R5は炭素原子数が1〜30の2価又は3価の有機基を示す。式(22)中、R6は水素原子又はメチル基を示し、R7はエチレン基又はプロピレン基を示す。
尿素メタクリレートは、例えば、下記一般式(31)で表されるジアミンと、下記一般式(32)で表される化合物との反応により生成する。
式(31)中、R8は炭素原子数が2〜30の2価の有機基を示す。式(32)中、tは0又は1を示す。
以上のような化合物の他、官能基を含むビニル共重合体に、少なくとも1個のエチレン性不飽和基と、オキシラン環、イソシアネート基、水酸基、及びカルボキシル基等の官能基とを有する化合物を付加反応させて得られる、側鎖にエチレン性不飽和基を有する放射線重合性共重合体等などを使用することができる。
これらの放射線重合性化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも上記一般式(10)で示される放射線重合性化合物は硬化後の耐溶剤性を付与できる点で好ましく、ウレタンアクリレート及びウレタンメタクリレートは硬化後の可とう性を付与できる点で好ましい。
放射線重合性化合物の分子量は2000以下が好ましい。分子量が2000を超えると、感光性接着剤のアルカリ現像液への溶解性が低下する傾向にあり、また、接着フィルムのタック性が低下して、半導体ウェハ等の被着体に低温で貼付けることが困難となる傾向にある。
放射線重合性化合物の含有量は、アルカリ可溶性ポリマー100重量部に対して20〜80重量部であることが好ましく、30〜60重量部であることが更に好ましい。放射線重合性化合物の量が80重量部を超えると、重合した放射線重合性化合物が原因となって熱圧着後の接着性が低下する傾向にある。5重量部未満であると、露光後の耐溶剤性が低くなり、パターンを形成するのが困難となる傾向にある。
光重合開始剤は、パターン形成時の感度を良くするために、300〜400nmにおいて吸収帯を有することが好ましい。光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン及びフェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン及びエチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体及び2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン及び1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド及びビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイドが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
光重合開始剤の量は、特に制限はないが、アルカリ可溶性ポリマー100重量部に対して通常0.01〜30重量部である。
感光性接着剤は、熱硬化性樹脂を更に含有することが好ましい。本明細書において熱硬化性樹脂とは、熱により架橋反応を起こしうる反応性化合物をいう。このような化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された熱硬化性樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂等が挙げられる。中でも、高温において優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びビスマレイミド樹脂が好ましく、取り扱い性及びポリイミドとの相溶性の点からエポキシ樹脂が特に好ましい。これら熱硬化性樹脂は単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物が好ましい。硬化性や硬化物特性の点からは、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が極めて好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、AD、S又はFのグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型又は4官能型のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型又は4官能型のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミンが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
シアネート樹脂としては、例えば、2,2’−ビス(4−シアネートフェニル)イソプロピリデン、1,1’−ビス(4−シアネートフェニル)エタン、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス[4−シアネートフェニル−1−(1−メチルエチリデン)]ベンゼン、シアネーテッドフェノール−ジシクロペンタンジエンアダクト、シアネーテッドノボラック、ビス(4−シアナートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナートフェニル)エーテル、レゾルシノールジシアネート、1,1,1−トリス(4−シアネートフェニル)エタン、2−フェニル−2−(4−シアネートフェニル)イソプロピリデンが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
ビスマレイミド樹脂としては、例えば、o−、m−又はp−ビスマレイミドベンゼン、4−ビス(p−マレイミドクミル)ベンゼン、1,4−ビス(m−マレイミドクミル)ベンゼン、及び下記一般式(40)、(41)、(42)又は(43)で表されるマレイミド化合物が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
式(40)において、R40は−O−、−CH2−、−CF2−、−SO2−、−S−、−CO−、−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−を示し、4つのR41はそれぞれ独立に水素原子、低級アルキル基低級アルコキシ基、フッ素、塩素又は臭素を示し、2つのZ1はそれぞれ独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す。
式(41)において、R42は−O−、−CH2−、−CF2−、−SO2−、−S−、−CO−、−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−を示し、4つのR43はそれぞれ独立に水素、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フッ素、塩素又は臭素を示し、2つのZ2はそれぞれ独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す。
式(42)において、xは0〜4の整数を示し、複数のZ3はそれぞれ独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す。
式(43)において、2つのR44はそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示し、複数のR45はそれぞれ独立に1価の炭化水素基を示し、2つのZ4はそれぞれ独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示し、yは1以上の整数を示す。
式(40)〜(43)におけるZ1、Z2、Z3及びZ4としては、マレイン酸残基、シトラコン酸残基などが挙げられる。
式(41)で表されるビスマレイミド樹脂としては、例えば、4,4−ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4−ビスマレイミドジフェニルメタン、4,4−ビスマレイミド−3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4−ビスマレイミドジフェニルスルホン、4,4−ビスマレイミドジフェニルスルフィド、4,4−ビスマレイミドジフェニルケトン、2’−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパン、4−ビスマレイミドジフェニルフルオロメタン、及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパンが挙げられる。
式(42)で表されるビスマレイミド樹脂としては、例えば、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]フルオロメタン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが挙げられる。
熱硬化性樹脂を用いる場合、これを硬化させるために、硬化剤、硬化促進剤、触媒等の添加剤を感光性接着剤中に適宜加えることができる。触媒を添加する場合は助触媒を必要に応じて使用することができる。
エポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ樹脂の硬化剤又は硬化促進剤を使用することが好ましく、これらを併用することがより好ましい。硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ現像液への溶解性に優れる点から、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物が好ましい。
上記分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンクレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンフェノールノボラック樹脂、キシリレン変性フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、トリスフェノールノボラック樹脂、テトラキスフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂の硬化を促進するものであれば特に制限はなく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。
エポキシ樹脂の硬化剤の量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0〜200重量部が好ましく、硬化促進剤の量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0〜50重量部が好ましい。
熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂を使用する場合、触媒及び必要に応じて助触媒を使用することが好ましい。触媒としては、例えば、コバルト、亜鉛、銅等の金属塩や金属錯体などが挙げられ、助触媒としてはアルキルフェノール、ビスフェノール化合物、フェノールノボラック等のフェノール系化合物などが好ましい。
熱硬化性樹脂としてビスマレイミド樹脂を使用する場合、その硬化剤としてラジカル重合剤を使用することが好ましい。ラジカル重合剤としては、例えば、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。このとき、ラジカル重合剤の使用量は、ビスマレイミド樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部が好ましい。
感光性接着剤は、接着強度を上げる等の目的で、適宜カップリング剤を含有していてもよい。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤等が挙げられるが、中でもシランカップリング剤が高い接着力を付与できる点で好ましい。
カップリング剤を用いる場合、その使用量は、ポリイミド100重量部に対して、0〜50重量部が好ましく、0〜20重量部がより好ましい。50重量部を超えると感光性接着剤の保存安定性が低下する傾向にある。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3―ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N,N’―ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ポリオキシエチレンプロピルトリアルコキシシラン、及びポリエトキシジメチルシロキサンが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
感光性接着剤は、フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉等の金属フィラー、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、ほう酸アルミ、セラミック等の非金属無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラーなどが挙げられる。
上記フィラーは所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、接着フィルムに導電性又はチキソ性を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、接着フィルムに低熱膨張性、低吸湿性を付与する目的で添加され、有機フィラーは接着フィルムに靭性を付与する目的で添加される。これら金属フィラー、非金属無機フィラー及び有機フィラーは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。フィラーを用いた場合の混合、混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
フィラーを用いる場合、その量は、アルカリ可溶性ポリマー100重量部に対し、1000重量部以下が好ましく、500重量部以下がより好ましい。下限は特に制限はないが、一般に1重量部である。フィラーの量が1000重量部を超えると接着性が低下する傾向がある。
感光性接着剤の露光後の100℃における貯蔵弾性率は0.01〜10MPaであることが好ましい。この貯蔵弾性率が0.01MPa未満であるとパターン形成後の熱圧着の際に加えられる熱及び圧力に対する耐性が低下して、パターンが潰れ易くなる傾向にあり、10MPaを超えると露光後の再接着性が低下して、パターン形成後に被着体に熱圧着する際、十分な接着力を得るために要する温度が高くなる傾向がある。
上記貯蔵弾性率の値は、露光された感光性接着剤からなる試験片の動的粘弾性を測定することにより得られる。動的粘弾性は、昇温速度:5℃/分、周波数:1Hz、測定温度:−50℃〜200℃の条件で測定される。測定装置としては、例えば、レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」が用いられる。
動的粘弾性測定のための試験片は、典型的には以下のようにして準備される。まず、PETフィルム及びこれの一面上に形成された厚さ約40μmの接着フィルムを有する接着シートを35mm×10mmの大きさに切り出し、高精度平行露光機(オーク製作所)を用いて露光量:1000mJ/cm2の条件でPETフィルム側から紫外線を照射する。露光後、PETフィルムをはく離して上記試験片が得られる。
感光性接着剤の、露光後、更に加熱硬化された後の260℃における貯蔵弾性率は1MPa以上であることが好ましい。この貯蔵弾性率が1MPa未満であると、感光性接着剤を用いて得た半導体装置を基板に半田付けで実装する際、高温の加熱によるはく離又は破壊を抑制することが困難になる傾向にある。
上記貯蔵弾性率の値は、露光後、更に加熱硬化された後の感光性接着剤からなる試験片の動的粘弾性を測定することにより得られる。動的粘弾性は、昇温速度:5℃/分、周波数:1Hz、測定温度:−50℃〜300℃の条件で測定される。測定装置としては、例えば、レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」が用いられる。
上記動的粘弾性測定のための試験片は、典型的には、露光後の動的粘弾性測定のための試験片の作製の説明において上述した条件と同様の条件で露光された接着フィルムを、さらに160℃のオーブン中で3時間の加熱により硬化させて得られる。
露光後、更に加熱硬化された後の熱重量分析おける感光性接着剤の質量減少率が5%となる温度(以下「5%質量減少温度」という。)は、260℃以上であることが好ましい。5%質量減少温度が260℃を下回ると、感光性接着剤を用いて得た半導体装置を基板に半田付けで実装する際、高温の加熱によるはく離又は破壊を抑制することが困難になる傾向にある。また、加熱時に発生する揮発成分による周辺材料、又は部材を汚染する可能性が高くなる。
5%質量減少温度は、昇温速度:10℃/分、空気流量:80mL/分、測定温度:40℃〜400℃の条件で行われる熱重量分析において、初期の質量に対する質量減少率が5%となる温度である。熱重量分析のための試料は、露光後、更に加熱硬化された後の貯蔵弾性率についての説明において上述の条件と同様の条件で露光及び加熱された接着フィルムを、乳鉢を用いて細かく砕いて準備される。測定装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー株式会社製示差熱熱重量同時測定装置「EXSTAR 6300」が用いられる。
以上の諸特性は、ポリイミド、放射線重合性化合物及び光重合開始剤、さらに必要に応じて熱硬化性樹脂及びフィラーを用いて感光性接着剤を調製し、これらの種類、及び配合比を調整することで達成できる。
フィルム状の感光性接着剤(接着フィルム)は、例えば、アルカリ可溶性ポリマー、放射線重合性化合物、光重合開始剤、及び必要に応じて他の成分を有機溶媒中で混合し、混合液を混練してワニスを調製し、基材上にこのワニスの層を形成させ、加熱によりワニス層を乾燥した後に基材を必要により除去する方法で得ることができる。
上記の混合及び混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。熱硬化性樹脂を用いる場合には、乾燥中に熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度で、かつ、溶媒が充分に揮散する条件で乾燥する。具体的には、通常60〜180℃で、0.1〜90分間加熱することによりワニス層を乾燥する。
熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度とは、具体的には、DSC(例えば、パーキンエルマー社製「DSC−7型」(商品名))を用いて、サンプル量10mg、昇温速度5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件で測定したときの反応熱のピーク温度以下の温度である。
ワニスの調製に用いる有機溶媒、すなわちワニス溶剤は、材料を均一に溶解又は分散できるものであれば、特に制限はない。例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。
ワニス層の厚みは好ましくは1〜100μmである。この厚みが1μm未満であると被着体を固定する機能が低下する傾向にあり、100μmを超えると得られる接着フィルム1中の残存揮発分が多くなる傾向にある。
接着フィルムの残存揮発分は好ましくは10質量%以下である。この残存揮発分が10%を超えると組立のための加熱の際に溶媒の揮発による発泡に起因して接着フィルム内部にボイドが残存し易くなり、耐湿信頼性が低下し易くなる傾向にある。また、加熱の際に発生する揮発成分による周辺材料又は部材を汚染する可能性も高くなる。この残存揮発成分は、50mm×50mmサイズに切断した接着フィルムの初期の質量をM1とし、この接着フィルムを160℃のオーブン中で3時間加熱した後の質量をM2としたときに、残存揮発分(質量%)={(M2−M1)/M1}×100により算出される。
接着フィルムを形成するために用いられる基材は、上記の乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルムを基材として用いることができる。基材としてのフィルムは2種以上組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。