医療機器、産業用ロボット、マイクロマシン等の分野において、小型、軽量で柔軟性に優れたアクチュエータが要求されており、静電力、圧電性、超音波、形状記憶合金、高分子の伸縮等を利用するアクチュエータが提案されている。
例えば、「人体装着に適したSMA人工筋肉」と題する後記の非特許文献1には、以下の記載がある。
人工筋肉に関しての厳密な定義は存在しないが、「人間の筋肉のように柔らかく伸縮するアクチュエータ」の総称として使われることが多い。人工筋肉と呼称されているアクチュエータの分類としては、高分子材料を用いたアクチュエータ(ポリマクチュエータ)、形状記憶材料を用いたアクチュエータ(形状記憶アクチュエータ)、静電力を利用したアクチュエータ(静電アクチュエータ)、空気圧を用いたアクチュエータ(エアアクチュエータ)等が挙げられ、研究開発が盛んである。
ポリマクチュエータとは、外界刺激により変形を起こす高分子の総称である。その刺激は、化学的刺激(pHの変化や含浸水分量の変化等)や電気的刺激、熱刺激、光刺激、磁気刺激等多岐にわたる。その中でも近年は、電気的刺激によりポリマを制御するアクチュエータに関する研究が盛んである。
電圧印加によりポリマ中のイオンが移動してポリマが変形するICPF(Ionic Conductive Polymer Film)アクチュエータ、電圧印加により電界溶液中のイオンをポリマ電極が吸収して変形する導電性ポリマクチュエータ、ポリマそのものが誘電分極されて逆圧電効果により変形する圧電ポリマクチュエータ、ポリマ間の電極に生じるクーロン力で中間層のポリマが変形する電歪ポリマクチュエータ等が電気的刺激を用いる主な例である。
ポリマクチュエータは、エネルギー効率が高い、低コストで作製できる等魅力的な点が多いが、研究段階の技術が多く、耐久性等の不安点もある。また、発生力が単体では小さいので、アシスト・リハビリテーション等へ応用するには、出力増大のための技術開発が併せて必要になる。以上が非特許文献1の記載内容である。
上記のICPFアクチュエータはIPMC(Ionic Polymer Metal Composite)アクチュエータとも呼ばれ、イオン導電性高分子(高分子電解質ゲル)の両面に電極を接合した接合体の電極間に電圧をかけると、陽イオンが移動し、それに伴い水分子も移動して、片面が膨張、他面が収縮して、この結果屈曲する。柔軟、軽量、無音、小型化が容易等の特徴がある。このアクチュエータは、電極の材料やその構造によって変形量や発生力等の特性が大きく変化する。
また、「圧電アクチュエータ−精密位置決めへの応用」と題する後記の非特許文献2には、アクチュエータ全体が曲げ変形を起こすバイモルフ型圧アクチュエータに関する記載がある。
IPMC又はICPFアクチュエータの動作原理、電極の形成方法に関して、例えば、以下の従来技術が知られている。
「アクチュエータ素子」と題する後記の特許文献1には、以下の記載がある。
アクチュエータ素子は、イオン交換膜と、このイオン交換膜の両面に接合した電極とから成り、前記イオン交換膜の含水状態において、前記イオン交換膜に電位差をかけて前記イオン交換膜に湾曲及び変形を生ぜしめることを特徴とする。以下、アクチュエータ素子を図面にもとづき説明する。
図5は、特許文献1に記載の図1、図2であり、図5(A)はアクチュエータ素子の電圧無印加状態の概要断面図、図5(B)はアクチュエータ素子の電圧印加状態の概要断面図である。
図5(A)に示すとおり、のアクチュエータ素子201はイオン交換膜202と、このイオン交換膜202の両面に接した電極203、203’とから成る。イオン交換膜202としては、陽イオン交換膜、陰イオン交換膜の何れも使用することができ、例えば、陽イオン交換膜としてポリスチレンスルホン酸膜やスルホン基やカルボキシル基を持つフッ素樹脂系イオン交換膜を挙げることができる。
かかるイオン交換膜の両面に接合する電極203、203’には白金、イリジウム、パラジウム、ルテニウム等の貴金属が好ましいが、そのほか導電性高分子や黒鉛等の導電性と耐食性を合わせ持つ物質が利用できる。接合方法には化学メッキ、電気メッキ、真空蒸着、スパッタリング、塗布、圧着、溶着等の電極材料を高分子膜に付着させるための既知の方法が全て利用できる。
そして、電極203、203’をリード線を介して直流電源205に連結するとアクチュエータ素子が得られる。アクチュエータ素子の作動時には、イオン交換膜が含水状態である必要がある。ここで含水状態とは、アクチュエータが水中で、又は高湿度の大気中でも作動することを意味する。水中においては、周囲の水中に含まれるイオンは動作に影響する場合があるが、種々のイオンや溶質を含んだ液中でも作動できる。
アクチュエータ素子の作動機構あるいは原理は明確ではないが、膜の表裏に電位差がかかることで、図5(B)に示すようにイオン交換膜202中の正イオン204が陰極203’側に移動し、このイオンに伴なわれて水分子が膜内で移動するために陽極側と陰極側で水分量に差ができると推定される。従って含水率が高まれば膨潤し、含水率が低下すれば収縮するので、膜の表裏で水分量に差が付けば膜は湾曲すると考えられる。ただし、イオンの分布に差が付いても、その状態でイオンの動きが止まれば、膜の外部からの水の拡散によって次第に水分分布は元の均一状態に近づくと推定される。
即ち、一定電圧をかけていても膜内の電流が減少すれば、一端生じた含水率の分布は徐々に平均化されて行くために、湾曲は元に戻ると考えられる。陽イオン交換膜を純水中で用いた場合、移動するイオンはH+イオンであり、食塩水中で用いた場合はNa+であると考えられるため、電圧をかけるとそれらのイオンは水分子と共に陰極側へ移動する。このように考察すれば、陰極側の高分子膜の含水率が上がり、陽極側の含水率は下がるので、陰極側が伸びて陽極側が縮むため、膜は陽極側へ湾曲することになり、この傾向は実施例の結果と一致する。
特許文献1に記載の発明によれば、下記特長を有するアクチュエータ素子が得られる。
1)単純な構造であり、超小型化できる。
2)超小型化しても水の粘性抵抗や表面の摩擦力に打ち勝つだけの大きな力が発生できる。
3)生体内等の液中で作動する。
4)1V程度の低電圧で作動する。
5)超小型であれば微少な電流でも作動する。
6)比較的応答が速い。
7)電圧によってアクチュエータの動作が制御できる。
8)比較的大きな力を発生する反面、素子自体は柔軟である。
即ち、電極間に0.1〜3Vの直流電圧をかけることにより、1秒以内に素子長の1/10もの変位が得られ、かつ水中で作動する柔軟な素子を作製できる。素子を細長い棒状にすれば、大きく湾曲させることができ、大きな変位を得ることができる。従って、従来のアクチュエータでは不可能であった水中での超小型動力発生機構が可能になるので、特に水中で作動する超小型ロボット用の人工筋肉として利用でき、また生体内で使用される医療用器具の動力にも応用できる。
「アクチュエータ素子の製造方法」と題する後記の特許文献2には、以下の記載がある。
イオン交換樹脂成形品に金属錯体を水溶液中で吸着させたのち、イオン交換樹脂成形品に吸着した金属錯体を、還元剤により還元して、前記イオン交換樹脂成形品表面に金属を析出させて、金属電極を形成する。
このような金属錯体としては、金錯体、白金錯体、パラジウム錯体、ロジウム錯体、ルテニウム錯体等が使用される。このうち、特に金錯体及び白金錯体がアクチュエータ素子の変位量を大きくすることできるので好ましい。
これらの金属錯体のイオン交換樹脂成形品への吸着は、イオン交換樹脂成形品を前記金属錯体を含む水溶液に浸漬することによって行われる。また、このような金属錯体の還元は、還元剤を含む水溶液中に、金属錯体が吸着されたイオン交換樹脂成形品を浸漬することによって行われる。
還元剤としては、使用する金属錯体の種類にもよるが、亜硫酸ナトリウム、塩酸ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、水素化ホウ素カリウム等が挙げられる。また、金属錯体を還元する際に、必要に応じて、酸又はアルカリを添加してもよい。
このようにしてイオン交換樹脂成形品に吸着した金属錯体を還元すると、イオン交換樹脂成形品表面に金属が析出して、金属電極が形成される。金属電極を形成する際に、使用するイオン交換樹脂成形品の表面を粗化してもよい。膜表面の粗化処理としては、例えば、サンドブラスト処理、サンドペーパー処理等が挙げれる。表面の粗化の程度は、表面層が削られている程度であればよい。
このような粗化処理を行うことによって、イオン交換樹脂成形品の表面と、後に形成される電極との接触面積が増大し、アクチュエータ素子の変位量を大きくすることができる。
「高分子アクチュエータの製造方法」と題する後記の特許文献3には、以下の記載がある。
高分子アクチュエータの製造方法は、イオン交換樹脂成形品と、該イオン交換樹脂成形品の表面に相互に絶縁状態で形成された金属電極とを備え、イオン交換樹脂成形品の含水状態において、前記金属電極間に電位差をかけてイオン交換樹脂成形品を湾曲及び変形を生じさせることによりアクチュエータとして機能する高分子アクチュエータを製造する方法であって、下記の工程、即ち、(1)イオン交換樹脂成形品に、金属錯体を水溶液中で吸着させる工程(吸着工程)、(2)イオン交換樹脂成形品に吸着した金属錯体を、還元剤により還元して、前記イオン交換樹脂成形品表面に金属を析出させる工程(析出工程)、(3)金属が析出したイオン交換樹脂成形品を洗浄する工程(洗浄工程)を繰り返し実施することによりイオン交換樹脂成形品表面、又はイオン交換樹脂成形品内部まで金属電極を形成することを特徴としている。
このような構成で金属電極を形成することによって、更に、イオン交換樹脂成形品内部に金属の析出が進み、イオン交換樹脂成形品と金属電極との接触面積が更に増大する。これにより、電極活性点が増え、電極へ移動するイオンも増加する。このような高分子アクチュエータでは、イオンに伴われて水分子が電極に移動して、移動側の電極近傍で含水率が増大して、成形品が膨潤することによって伸び、一方、移動側と反対側の電極近傍では含水率が低下して収縮する。このため、電極へ移動するイオンが増加すると、このイオンに伴われて電極に移動する水分子が増えるので、電極間での含水率の差が更に大きくなり、湾曲率、即ち、変位量が大きくなる。また、金属電極の厚みが大きくなるので、電極の表面抵抗が低下して電極の導電性が向上する。
従って、特許文献3の発明の高分子アクチュエータの製造方法で得られた高分子アクチュエータによれば、構造が簡単で、小型化が容易であり、しかも応答が速く、大きな変位量を発生することが可能な高分子アクチュエータを得ることができる。
アクチュエータに被覆を設ける構成に関して、例えば、以下の従来技術が知られている。
「アクチュエータ素子」と題する後記の特許文献4には、以下の記載がある。
図6は特許文献4に記載の図5であり、アクチュエータ素子の構成例を示す縦断面図である。
アクチュエータ素子301Aは、陽イオン交換樹脂層302と、この陽イオン交換樹脂層302を介して対向するように配置された一対(一組)の電極体303、304とで構成されている。
電極体303、304には、以下に述べるような電力供給手段311により電力が供給され、電位差が与えられる。電極体303、304には、それぞれ、リード線(導電体)314、315が接続されている。この場合、電極体303、304と電源316からのリード線(導電体)314、315とが、レーザー溶接法、超音波溶接法、高周波溶接法等により固定されているか、導電性接着剤等の導電性材料312、313を介して接着固定又はろう接法により固定されているのが好ましい。これにより、アクチュエータ素子300に、より再現性ある安定した変形性能を発現させることができる。なお、電源316は、直流電源、交流電源の何れでもよい。
以上のようなアクチュエータ素子300は、両電極体303、304間にリード線を介して電位差(水の電気分解が生じない程度の低電圧であり、例えば1.5V以下)を与えると、電極体303、304のうちの陽極側に突出するように湾曲変形する。そして、前述した陽イオン交換樹脂層2の構成から、前記電位差を与え続けている間、アクチュエータ素子300の変形状態は保持される。また、電極体303、304への電位差を0にすると、アクチュエータ素子300は、即座に元の形状に戻る。
同図に示すアクチュエータ素子300には、水不透過性材料よりなる被覆層310が表面に形成されている。
このような被覆層310を設けることにより、陽イオン交換樹脂層302におけるイオン交換が阻止され、アクチュエータ素子300の使用環境にかかわらず、陽イオン交換樹脂層302中の陽イオンを安定的に維持することができる。このようなことから、アクチュエータ素子300の変形特性や、形状保持性が一定に保たれる。
被覆層310を構成する水不透過性材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリウレタン、フッ素樹脂、シリコーンゴム等が挙げられる。被覆層10の厚さは、特に限定されないが、0.1〜100μm程度とするのが好ましく、1〜10μm程度とするのがより好ましい。
「アクチュエータ素子」と題する後記の特許文献5には、以下の記載がある。
アクチュエータは、イオン交換膜及びこの両面に接合された電極はポリマ材料6により被覆されている。被覆用ポリマ材料としては、薄い被膜を形成できるポリマなら制限なく使用でき、とりわけ水不溶性ポリマが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド等が挙げられる。また、被覆方法も特に限定されるものではないが、薄膜を形成できる方法が好ましい。例えば、被覆ポリマの溶液又は融液に、イオン交換膜と電極から成る素子を浸漬し、引き上げた後乾燥する方法、被覆ポリマの溶液又は融液に、イオン交換膜と電極から成る素子を浸漬し、次いでポリマの貧溶媒に浸漬する方法等が挙げられる。
特開平4−275078号公報(第2頁左欄第45行〜同頁右欄第42行、第3頁右欄第1行〜同頁同欄第22行、図1、図2)
特開平11−206162号公報(段落0020〜0025)
特許第2961125号公報(段落0012〜0014)
特開9−79129号公報(段落0015、段落0034〜0035段落0040〜0042、図5)
特開平6−6991号公報(段落0014〜0016、図2、図4)
松下電工技報、Aug.(2003)、pp.59〜pp.63(2.1「人工筋肉とは」、2.2.1「ポリマクチュエータ」)
精密工学会誌、Vol.72、No.4、p.449〜p.452(2006)(2.「圧電アクチュエータの種類」)
本発明のアクチュエータでは、前記導体としての導電線が、前記接続部位から前記アクチュエータ本体に平行方向に前記高分子層としての高分子フィルムの外部に取り出されている構成とするのがよい。前記接続部位が前記高分子層と前記アクチュエータ本体との間に保持され、保護された状態であり、しかも、コンパクトな単純な形状とすることができる。
なお、前記高分子層と前記対向電極との間の前記金属層が、金又は白金によって形成された構成とするのがよい。化学的に安定な金や白金等の貴金属によって前記金属層を形成して、前記対向電極の表面抵抗を下げることができ、当該アクチュエータの変位を大きくすることできる。また、前記金属層によって水分の透過率(透湿度)を下げることができ、前記金属層と前記高分子層によって水分透過阻止の性能を向上させることができる。この結果、前記アクチュエータ本体を安定した状態とすることができる。
また、前記アクチュエータ本体がイオン導電性高分子層によって構成されるのが好ましい。前記アクチュエータ本体は、単純な構造をもち小型化が可能であり、駆動を電圧によって制御することができ、小さな電圧による駆動によって大きな変形を生じるので、アクチュエータ本体の自重に比して大きな駆動力を発生させることができる。即ち、軽量な前記アクチュエータ本体によって大きな駆動力を発生させることができる。
なお、前記イオン導電性高分子層に、陽イオン物質が含浸されており、前記陽イオン物質が、水及び金属イオン、水及び有機イオン、イオン液体の何れかとするのが好ましい。水和イオンとして存在する、金属陽イオン、有機陽イオンの電界による前記イオン導電性高分子層内での移動、イオン液体の陽イオンの電界よる前記イオン導電性高分子層内での移動によって、当該アクチュエータは変形を生じる。陽イオンと陰イオンの特殊な組み合わせで常温においても液体で安定したイオン液体(常温溶融塩、イオン性液体とも呼ばれ、難燃性、不揮発性、高極性、高イオン伝導性、高耐熱性等の性質を有している。)を、前記イオン導電性高分子膜に含浸させる構成の場合、揮発する心配なく高温あるいは真空中で使用することができる。
また、前記対向電極がカーボン粉末とイオン導電性樹脂によって形成された構成とするのがよい。前記対向電極をカーボン粉末とイオン導電性樹脂によってカーボン電極層として形成するので、簡便な方法で前記カーボン電極層を安価に安定して所望の厚さで前記高分子フィルム上に形成することができる。
また、前記カーボン粉末の比表面積、前記カーボン粉末と前記イオン導電性樹脂との固形分重量比、前記対向電極の厚さの少なくとも1つによって、当該アクチュエータの変形性能が調整された構成とするのがよい。簡便に調整可能である前記カーボン粉末の比表面積、前記カーボン粉末とイオン導電性樹脂との固形分重量比、前記カーボン電極層の厚さにより、当該アクチュエータの変形性能を調整することができ、前記カーボン電極層を前記カーボン粉末同士がイオン導電性樹脂を介して結合している構造とすることにより、変形性能を再現性よく実現することができる。
また、前記対向電極が前記イオン導電性高分子層に加熱圧着されている構成とするのがよい。加熱圧着によって前記対向電極と前記イオン導電性高分子層とを一体化させ、生産性よく当該アクチュエータを得ることができる。
また、前記高分子層としての高分子フィルムの融点が150℃以下である構成とするのがよい。融点が150℃以下である高分子フィルムを使用することによって、低い温度で加熱圧着し封止して、当該アクチュエータを外部から遮断された安定した状態とすることができ、前記対向電極や前記アクチュエータ本体への外部からの影響が小さくて済む。なお、前記アクチュエータ本体の融点が150℃以下であり、イオン液体を含浸させた構成の場合、前記対向電極と前記アクチュエータ本体の加熱圧着と、上記高分子フィルム(封止膜)同士の融着(ヒートシール、加熱接着、加熱圧着、加熱融着などともいう。)とが同時にできるため、少ない工程でアクチュエータを製造することができる。また、上記高分子フィルムは、当該アクチュエータを保護する膜として作用する。
また、前記高分子層としての高分子フィルムは水分の透過を阻止する構成とするのがよい。この高分子フィルムとして、水蒸気を含めて水分の透過率(透湿度)の小さい膜、吸水性の小さな膜を使用するので、上記高分子フィルムは、当該アクチュエータの内部から外部への水分の逸散、及び、当該アクチュエータが置かれた外部環境から当該アクチュエータの内部への水分の浸入を防止することができる水分透過阻止膜として作用し、前記アクチュエータ本体を安定した状態とすることができる。同時に、上記高分子フィルムは、当該アクチュエータを保護する保護膜として作用する。
また、前記高分子層としての高分子フィルムの内部に、第2の金属層が設けられた構成とするのがよい。前記第2の金属層が上記高分子フィルムの内部に設けられるので、前記金属層によって水分の透過率を下げることができ、前記金属層と上記高分子フィルムによって水分透過阻止の性能を向上させることができる。この結果、前記アクチュエータ本体を安定した状態とすることができる。
また、前記高分子層としての高分子フィルムの外面に第2の金属層が設けられた構成とするのがよい。上記高分子フィルムとその外面に設けられた前記第2の金属層とによって水分透過阻止の性能を向上させることができ、前記アクチュエータ本体を安定した状態とすることができる。
また、前記第2の金属層の外面に前記高分子層としての第2の高分子フィルムが設けられた構成とするのがよい。上記高分子フィルムとその外面に設けられた前記金属層、及び、この金属層上に設けられた前記第2の高分子フィルムによって水分透過阻止の性能を向上させることができ、前記アクチュエータ本体を安定した状態とすることができる。
本発明のアクチュエータの製造方法では、前記電極層上の前記金属層を、
金又は白金によって形成する構成とするのがよい。化学的に安定な金や白金等の貴金属によって前記金属層を形成して、前記電極層の表面抵抗を下げることができ、当該アクチュエータの変位を大きくすることでき、また、前記金属層によって水分の透過率を下げることができ、前記金属層と前記高分子層によって水分透過阻止の性能を向上させることができる。この結果、前記アクチュエータ本体を安定した状態とすることができる。
また、前記第3の工程に先立つ前記第2の工程において前記接続部位を前記アクチュエータ本体と前記電極層との間に保持する、又は、前記第1の工程において前記接続部位を前記金属層と前記電極層との間に保持する前記第2の工程を行う構成とするのがよい。前記接続部位を保護された状態として、当該アクチュエータをコンパクトな単純な形状とすることができ、安定な動作を可能とすることができる。
また、前記第4の工程において、前記電極層に電圧を印加する前記導体としての導電線を前記アクチュエータ本体に平行方向に前記高分子層としての高分子フィルムの外部に取り出す構成とするのがよい。当該アクチュエータをコンパクトな単純な形状とすることができる。
また、前記第3の工程と前記第4の工程を同時に実行する構成とするのがよい。少ない工程でアクチュエータを製造することができる。
また、前記第1の工程において、前記電極層を、カーボン粉末とイオン導電性樹脂の混合物を前記高分子層としての高分子フィルム上に塗布して乾燥させ、カーボン電極層として形成する構成とするのがよい。簡便な方法によって、前記カーボン電極層を安価に安定して所望の厚さで上記高分子フィルム上に形成することができる。
また、前記第1の工程に先立って、前記混合物が塗布される前記高分子層としての高分子フィルムの面に前記金属層を形成し、この金属層の面に前記混合物を塗布する構成とするのがよい。前記電極層上の前記金属層によって、前記電極層の電気抵抗を下げることができ、前記金属層に導体(導電線)を接続することによって、優れた変形性能を信頼性高く得ることができる。また、前記金属層が、前記高分子層と前記電極層との間に設けられるので、前記金属層によって水分の透過率を下げることができ、前記金属層と前記高分子層によって水分透過阻止の性能を向上させることができる。この結果、前記アクチュエータ本体を安定した状態に保持することができる。
また、前記第4の工程において、前記高分子層としての高分子フィルムを150℃以下の温度で融着させる構成とするのがよい。当該アクチュエータを低い温度で加熱圧着、封止することができ前記対向電極や前記アクチュエータ本体への外部からの影響が小さくて済む。
また、前記高分子層としての高分子フィルムの外面に第2の金属層を設ける第5の工程を有する構成とするのがよい。この高分子フィルムとその外面に設けられた前記第2の金属層とによって水分透過阻止の性能を向上させることができ、前記アクチュエータ本体を安定した状態とすることができる。
また、前記第2の金属層の外面に前記高分子層としての第2の高分子フィルムを設ける第6の工程を有する構成とするのがよい。上記高分子フィルムとその外面に設けられた前記金属層、及び、前記第2の金属層上に設けられた前記第2の高分子層によって水分透過阻止の性能を向上させることができ、前記アクチュエータ本体を安定した状態とすることができる。
以下、イオンを含むアクチュエータの代表例として、電圧の印加によって可動なイオンを含んでいるイオン導電性高分子を用いるIPMC又はICPFアクチュエータと呼ばれるタイプの高分子アクチュエータを例にとって、本発明による実施の形態について詳細に説明する。
高分子アクチュエータは、アクチュエータ本体を構成するイオン導電性高分子層の対向する面にカーボン電極層が設けられ、各カーボン電極層の外側に高分子フィルムが設けられており、2つのカーボン電極層間に電圧を印加することによって、全体が湾曲又は変形する。カーボン電極層はカーボン粉末とイオン導電性樹脂で構成されている。
このカーボン電極層は、カーボン粉末とイオン導電性樹脂によって、予め上記高分子フィルム上に形成される。カーボン電極層が形成された2枚の高分子フィルムのカーボン電極層形成面(カーボン電極層が形成される側の面である。)を内側にしてイオン導電性高分子層の両面に加熱圧着させ貼り合わせる。この高分子フィルム高分子フィルムは、アクチュエータ本体、カーボン電極層の全体を包むように覆う。
この高分子フィルムの融点は150℃以下である。また、高分子フィルムのカーボン電極層形成面に金属層が形成され、この金属層上にカーボン電極層が形成される構成としてもよい。更に、高分子フィルムのカーボン電極層形成面と反対側、又は、高分子フィルムの内部に、Al等からなる金属層が形成されている構成としてもよい。
カーボン電極層の形成に際して、カーボン粉末とイオン導電性樹脂粉末とともに溶媒に分散させた混合物を、イオン導電性高分子層に直接塗布してカーボン電極層を形成する方法は簡便な方法である。しかし、上記溶媒としてイオン導電性高分子層と親和性がよくなじみ易いものを使用するので、溶媒分子がイオン導電性高分子層に入り込み、イオン導電性高分子層が膨潤し易く、混合物の塗布時に、基材(イオン導電性高分子層)自体の寸法が変動し易く、均一な厚いカーボン電極層の形成には、工夫が必要である。
本実施の形態では、上記溶媒に対する耐性を考慮して、高分子フィルムの種類を選定して、上記の混合物を高分子フィルム上に塗布して、カーボン電極層を形成するので、混合物の塗布時に上記溶媒によって生じる高分子フィルムの膨潤による寸法変化が、小さいか無視することができ、均一で厚いカーボン電極層を形成することができる。
この高分子フィルムは、水蒸気を含めて水分の透過率(透湿度)の小さいもの、吸水性の小さなもの、耐溶媒性に優れたものを使用するので、高分子アクチュエータ全体を包み保護する保護フィルムの役割、高分子アクチュエータ全体を包み封止し、封止空間に対する水蒸気を含めて水分の出入り、溶媒の出入りを抑制する作用をもった封止フィルム(水分透過阻止膜、溶媒透過阻止膜)の役割ももっており、高分子アクチュエータの乾燥等を防ぎ、電圧印加の状態で封止された高分子アクチュエータの内部の状態を、常に、略一定に保持することができ、耐久性を向上させ、水中、溶媒中、空気中等の各種雰囲気中も使用することができる。
本実施の形態では、簡便に調整可能であるカーボン粉末の比表面積、カーボン粉末とイオン導電性樹脂との固形分重量比、形成するカーボン電極層の厚さの少なくとも一つによって、高分子アクチュエータの変形性能を調整することができ、カーボン電極層をカーボン粉末同士がイオン導電性樹脂を介して結合している構造とすることにより、変形性能を再現性よく実現することができる。
カーボン電極層をイオン導電性高分子層上に直接形成するのではなく、カーボン粉末とイオン導電性樹脂の混合物を高分子フィルム上に塗布し乾燥させてカーボン電極層を簡便な方法で形成する。次に、イオン導電性高分子層の対向する面のそれぞれに、高分子フィルムを外側としてカーボン電極層を加熱圧着させて、イオン導電性高分子層の対向する面のそれぞれの側の高分子フィルムを融着させて、イオン導電性高分子層及びカーボン電極層を高分子フィルムの内側に封止する。
高分子フィルム上に予めカーボン電極層を形成した後これをイオン導電性高分子層に加熱圧着するので、カーボン電極層の成膜時に基材である高分子フィルムの寸法変化が少なく、均一に厚いカーボン電極層を形成することができ、高分子アクチュエータ設計の自由度が高くなる。
このように、本実施の形態では、簡便な方法でカーボン電極層を安価に安定して高分子フィルム上に形成することができ、高分子フィルムによってイオン導電性高分子層及びカーボン電極層の全体を電気的接続部位を含めて封止するので、イオン導電性高分子層を安定した状態に置くことができ、大きな変形性能を信頼性高く制御することができ、アクチュエータを、水中、溶媒中、空気中等の各種の雰囲気中で長期間にわたって特性を良好に維持しながら安定して動作させることができる。
以下、図面を参照しながら本発明による実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態における、高分子アクチュエータの構造と製造方法を説明する図であり、図1(A)は高分子アクチュエータの構造を説明する断面図、図1(B)は高分子アクチュエータの製造方法を説明する断面図である。
図2は、本発明の実施の形態における、高分子アクチュエータの製造方法の変形を説明する断面図である。
図3は、本発明の実施の形態における、高分子アクチュエータの動作を説明する概略図である。
なお、図1、図2、図3では、高分子アクチュエータの長手方向に平行な面での断面図を示している。
先ず、図1(A)を参照して、本発明の実施の形態に係る高分子アクチュエータについて説明する。
図1(A)に示すように、変形前の高分子アクチュエータ40aは、陽イオン物質が含浸されたイオン導電性高分子層(イオン導電性高分子フィルム)15と、このイオン導電性高分子層15の両面それぞれに設けられるカーボン電極層25a、25bと、このカーボン電極層25a、25bのそれぞれに電気的に接続された導電線42とを備えている。
カーボン電極層25a、25bとイオン導電性高分子層15の間に、これらの両者に挟まれた状態で導電線42が保持され、この保持された導電線42の部分は、カーボン電極層25a、25bと導電線42との電気的接続部位となっている。高分子フィルム30によって、カーボン電極層25a、25b、イオン導電性高分子層15、上記電気的接続部位の全体が包まれている。
1対の導電線42によってカーボン電極層25a、25bの間に電圧が印加され、イオン導電性高分子層15が湾曲又は変形し、後述するように変形前の高分子アクチュエータ40aは変形する。
イオン導電性高分子層15は、フッ素樹脂、炭化水素系等を骨格としたイオン交換樹脂からなり、表裏2つの主面をもつ形状を呈している。例えば、短冊形状、円盤形状、円柱形状、円筒形状等が挙げられる。また、イオン交換樹脂としては、陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂、両イオン交換樹脂何れでもよいが、このうち陽イオン交換樹脂が好適である。
陽イオン交換樹脂としては、ポリエチレン、ポリスチレン、フッ素樹脂等にスルホン酸基、カルボキシル基等の官能基が導入されたものが挙げられ、特にフッ素樹脂にスルホン酸基、カルボキシル基等の官能基が導入された陽イオン交換樹脂が好ましい。
カーボン電極層25a、25bは、カーボン粉末とイオン導電性樹脂とからなり、カーボン粉末同士がイオン導電性樹脂を介して結合している。カーボン粉末は、導電性をもつカーボンブラックの微細粉末であり、比表面積が大きなものほどカーボン電極層25a、25bとしてイオン導電性高分子層15と接する表面積が大きくなり、より大きな変形量を得ることができる。例えば、高電導性カーボンブラックであるケッチェンブラック(KB)の使用が好ましい。また、イオン導電性樹脂は、イオン導電性高分子層15を構成する材料と同じものでよい。
後述するように、カーボン電極層25a、25bは、イオン導電性樹脂成分又はイオン交換樹脂とカーボン粉末を含む塗料が高分子フィルム(電気絶縁性の熱可塑性樹脂からなる。)30上に塗布され形成される。そして、カーボン電極層25a、25bは、イオン導電性高分子層15に加熱圧着されている。カーボン電極層25a、25bは、簡便に短時間で形成することができる。
なお、少なくともイオン導電性高分子層15に陽イオン物質が含浸されているが、この陽イオン物質とは、水及び金属イオン、水及び有機イオン、イオン液体の何れかであることが好ましい。ここで、金属イオンとは、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン等が挙げられる。
また、有機イオンとは、例えば、アルキルアンモニウムイオン等が挙げられる。これらのイオンはイオン導電性高分子層15中において水和物として存在している。イオン導電性高分子層15が水及び金属イオン、又は水及び有機イオンを含み、含水状態となっている場合には、高分子アクチュエータは中からこの水が揮発しないように、カーボン電極層25a、25b、及び、イオン導電性高分子層15は、高分子フィルム30によって内部に封止されている。
また、イオン液体とは、常温溶融塩とも言われる不燃性、不揮発性のイオンのみからなる溶媒であり、例えば、イミダゾリウム環系化合物、ピリジニウム環系化合物、脂肪族系化合物のものを使用することができる。イオン導電性高分子層15にイオン液体を含浸させている場合には、揮発する心配なく高温あるいは真空中で高分子アクチュエータを使用することができる。
ここで、図3を参照して、高分子アクチュエータの動作原理を説明する。なお、図3では、高分子アクチュエータを簡略化して図示し、厚さ方向に垂直な断面を外形のみについて示している。ここでは、イオン導電性高分子層15中にナトリウムイオンが含浸されているものとして説明する。
図3(A)では、SWがオフとされた変形前の高分子アクチュエータ40aが示されている。同図に示すように、電源からの電圧印加はなく、2つのカーボン電極層25a、25bに電位差がないことから、イオン導電性高分子層15の2つのカーボン電極層25a、25b近傍領域の間に体積差はなく、イオン導電性高分子層15は湾曲変形することなく真っ直ぐな状態である。なお、図3(B)、図3(C)では、変形前の高分子アクチュエータ40aへ点線で示されている。
SWがオンとされ電源より導電線42を通じて、図3(B)中の上側の高分子アクチュエータのカーボン電極層25aにプラスの電位、同図中の下側のカーボン電極層25bにマイナスの電位を印加している。この電位差により、高分子アクチュエータのイオン導電性高分子層15中では、マイナスの電位が印加された側(同図中の下側)のカーボン電極層25bにナトリウムイオン水和物が引き寄せられて移動しこのカーボン電極層25bの近傍に集中しこの領域は体積膨張する。一方、プラスの電位が印加された側(同図中の上側)のカーボン電極層25aの近傍におけるナトリウム水和物濃度は減少し、この領域は体積収縮する。その結果、イオン導電性高分子層15の2つのカーボン電極層25a、25b近傍領域の間に体積差が生じることとなり、変形後の高分子アクチュエータ40bでは、イオン導電性高分子層15は同図中の上側に凹状に湾曲する。
図3(C)では、電源より導電線42を通じて、同図中の上側の高分子アクチュエータのカーボン電極層25aにマイナスの電位、同図中の下側のカーボン電極層25bにプラスの電位を印加しており、電圧印加方法が図3(B)の場合とは逆である。この電位差により、高分子アクチュエータのイオン導電性高分子層15中では、マイナスの電位が印加された側(同図中の上側)のカーボン電極層25aの近傍領域は体積膨張して、プラスの電位が印加された側(同図中の下側)のカーボン電極層25b近傍領域は体積収縮する。その結果、変形後の高分子アクチュエータ40bでは、イオン導電性高分子層15は同図中の下側に凹状に湾曲する。
この高分子アクチュエータの変形性能(変形量及び/又は変形速度)は、カーボン粉末の比表面積、カーボン粉末とイオン導電性樹脂との固形分重量比、カーボン電極層25a、25bの厚さの少なくとも何れか一を調整することにより、制御することができる。また、カーボン電極層25a、25bの厚さとイオン導電性高分子層15の厚さとの比を調整することによっても、高分子アクチュエータの変形性能(変形量及び/又は変形速度)を制御することができる。
図1(B)に示すように、高分子アクチュエータは次の手順で作製することができる。
図1(B1)に示すように、高分子フィルム30上にカーボン電極層25a、25bを形成する。まず、イオン導電性高分子層15を用意する。有機溶媒にイオン導電性樹脂を溶解したものに所定の比表面積のカーボン粉末を、カーボン粉末とイオン導電性樹脂との固形分重量比が目標値となるように混合し、分散させて塗料を得る。
上記の塗料中に高分子フィルム30の片面をディッピング塗布し、或いは、上記の塗料を高分子フィルム30に印刷法によって塗布し、形成された塗膜を大気中で乾燥させる。この塗膜形成及び乾燥を繰り返して、所望の厚さのカーボン電極層25a、25bを形成する。
次に、イオン導電性高分子層15に陽イオン物質を含浸させる処理を行う。具体的には、イオン導電性高分子層15にカーボン電極層25a、25bを形成した積層体を金属イオン、有機イオン何れかを含む塩化物溶液又は水酸化物溶液、あるいはイオン液体に浸漬することにより、これらの金属イオン、有機イオン、イオン液体をイオン導電性高分子層15及びカーボン電極層25a、25b中に含浸させる。陽イオン物質を含浸させた積層体を所望の形状に切断する。
次に、図1(B2)に示すように、上記の積層体のカーボン電極層25a、25bに導電線42を配置して、導電性接着剤43を用いて固定する。この固定は他の方法によって行ってもよい。導電線42は、電気絶縁性の熱可塑性樹脂からなる高分子被膜49によって被覆されている。高分子被膜49は、高分子フィルム30と同じ材質であってもよい。
図1(B2)に示す例では、先端部の露出する導電線42を折り合わせた2本部分と、この2本部分の一部を略直角に曲げた1本部分を形成して、2本部分をカーボン電極層25a、25bの側壁部に、1本部分をカーボン電極層25a、25bの表面部に接触させて、2本部分とカーボン電極層25a、25bの側壁部と高分子フィルム30の面とを、導電性接着剤43を用いて連結し、高分子フィルム30の面に固定された構造とする。このようにして、導電線42の1本部分及び2本部分によって、電気的接続部が形成される。
また、先端部の露出する導電線42と高分子被膜49とが重なるように折り合わせた2本部分と、この2本部分の導電線42の一部を略直角に曲げた1本部分を形成して、2本部分をカーボン電極層25a、25bの側壁部に接触させ、1本部分をカーボン電極層25a、25bの表面部に接触させて、(1)2本部分とカーボン電極層25a、25bの側壁部と高分子フィルム30の面とを、導電性接着剤43を用いて連結し、高分子フィルム30の面に固定された構造とする、又は、(2)2本部分の高分子被膜49と高分子フィルム30とを融着し、2本部分とカーボン電極層25a、25bの側壁部と高分子フィルム30の面とを、導電性接着剤43を用いて連結し、高分子フィルム30の面に固定された構造とすることもできる。このようにして、カーボン電極層25a、25bの側壁部及び表面部に接続する導電線42の1本部分によって、電気的接続部が形成される。
以上のように、高分子フィルム30と電気的接続部を連結しておくことによって、電気的接続部を保護することができ、導電線42とカーボン電極層25a、25bとが電気的に接続され、電気的接続部が保護された状態とすることができる。
なお、図1(B1)において、高分子フィルム30上へのカーボン電極層25a、25bの形成に先立って、高分子フィルム30と高分子被膜49とを熱接着(融着)して連結した後に、先端部の露出する導電線42を覆うように、カーボン電極層25a、25bを形成して、導電線42とカーボン電極層25a、25bとを電気的に接続してもよい。この場合、電気的接続部が保護された状態で、カーボン電極層25a、25bの形成を行うことができる。
次に、図1(B3)に示すように、イオン導電性高分子層15を挟んで、図1(B2)に示す積層体のカーボン電極層25a、25bをイオン導電性高分子層15に対向させて配置する。
次に、図1(B4)では図示していないが、高分子フィルム30を外側として、イオン導電性高分子層15の対向する面に、積層体のカーボン電極層25a、25bを加熱圧着する。その後、加熱圧着体を40℃、90%の雰囲気中に1時間放置し、加湿する。
次に、図1(B5)では図示していないが、1対の積層体の高分子フィルム30同士を加熱圧着して封止を行う。この時、1対の導電線42は高分子フィルム30の外部に取り出される。
カーボン電極層25a、25bに接続された導体線42の高分子被覆49を高分子フィルム30の間に挟みこんで、高分子フィルム30同士を高分子被覆49とともに加熱圧着して、1対の導電線42を電気的に独立に高分子フィルム30の外部に取り出すことができる。高分子被覆49を、高分子フィルム30と同じ材質の高分子物質であり熱可塑性物質とすれば、高分子フィルム30同士の融着、及び、高分子フィルム30と高分子被覆49との融着とが同時にできるため、外部に導電線42を高分子被覆49を有した状態で取り出すことができるので、少ない工程で当該アクチュエータを製造することができる。
このようにして、図1(A)に示す高分子アクチュエータが完成し、導電線42は高分子アクチュエータの長手方向に平行に取り出されている。導電線42は、カーボン電極層25a、25bの側壁部と導電性接着剤43によって電気的に接続され、また、導電線42は、カーボン電極層25a、25bの表面部とイオン導電性高分子層15との間に圧接されて、カーボン電極層25a、25b電気的に接続されている。
なお、イオン導電性高分子層にイオン液体を含浸させた構成の場合、イオン導電性高分子層15の面とカーボン電極層25a、25bとの加熱圧着、高分子フィルム30同士の加熱圧着、及び、高分子フィルム30と高分子被膜49との加熱圧着を同時に行うこともでき、短時間に作業を完了することができる。
以下、本発明の実施の形態のより具体例について説明する。
イオン導電性高分子層15としては、例えば、パーフルオロスルフォン酸樹脂(商品名Nafion(型番N−117)、DuPont社製)を使用することができる。イオン導電性高分子層15の厚さは183μmとした。
カーボン電極層25a、25bを形成するために、カーボン粉末としてケッチェンブラック(BET=800m2/g)等を使用することができる。このケッチェンブラックを、例えば、Nafion溶液(5wt%)に固形分重量比が1:2となるように混合し、分散させてカーボン塗料を作製する。
図1(B1)に示すように、作製されたカーボン塗料を、ポリエチレンフィルム(例えば、厚さ50μm。融点は130℃である。)上にスクリーン印刷等で塗布し、乾燥させる。カーボン塗料の1回の塗布で所望の厚み(例えば、60μm)の電極層が得られない場合には、カーボン塗料の塗布と塗布層の乾燥を、所望の厚みに達するまで繰り返す。その後、0.1N水酸化ナトリウム水溶液に2時間浸漬処理し、次に、純水洗浄する。
図1(B)に示すように、カーボン電極層25a、25bが形成された高分子(ポリエチレン)フィルム30の2枚を、カーボン電極層25a、25bが内側になるようにしてイオン導電性高分子層15を挟み、150℃で加熱圧着する。その後、加熱圧着体を40℃、90%の雰囲気中に1時間放置し、加湿した後、アクチュエータ周囲の高分子フィルムを融着する。このとき、必要な数のリード線42の絶縁被覆49を一緒に加熱圧着する。最後に所望の形状に切り出す。即ち、電極層の圧着工程とアクチュエータ周囲の封止工程とに分け、これら工程の間に加湿工程を設け、カーボン電極層25a、25bをイオン導電性高分子層15に加熱圧着する際に、アクチュエータの周囲又は一部を融着しないようにし、その状態で、例えば、40℃、90%(湿度)の雰囲気中に1時間放置して、アクチュエータを加湿し、その後、アクチュエータの周囲の高分子フィルムを融着する。
このようにして作製された高分子アクチュエータは、図1(A)に示すように、イオン導電性高分子層15の対向面の両面に、カーボン粉末とイオン導電性樹脂で構成されたカーボン電極層25a、25bが設けられ、更に、カーボン電極層25a、25bの外側に高分子フィルム30が設けられこれによって、イオン導電性高分子層15及びカーボン電極層25a、25bの全体が包まれ被覆され、封止された構造を有しており、導電線42が、イオン導電性高分子層15の厚さ方向の略中心部からこの層に略平行に、封止された内部から外部に取り出され、コンパクトな単純な形状をもっている。
イオン導電性高分子層15とその両側のカーボン電極層25a、25bには、水酸化ナトリウムで浸漬処理されておりNa+イオンが存在している。カーボン電極層25a、25bには導電線42が接続されており、この導電線42を介してカーボン電極層導電線25a、25bの間に電圧を印加すると、イオン導電性高分子層15及びカーボン電極層25a、25bに存在するNa+イオン水和物が、マイナスの電位を持つカーボン電極層のカーボン粒子に引き寄せられ、膨張する。
この時、プラス側のカーボン電極層では、Na+イオン水和物が反対側に移動してしまうため体積が減少する。このNa+イオン水和物の存在量の差による膨張収縮によって、2つのカーボン電極層の間で体積の差が生じ、それにより図3に示すように湾曲する。この時、カーボン電極層25a、25bの外側が高分子フィルム30で覆われているために、カーボン電極層25a、25b及びイオン導電性高分子層15中の水分が揮発するのが抑制され、高分子アクチュエータが乾燥せず長期間動作させることができる。また、この高分子フィルム30は融点が150℃以下であるため、低い温度で加熱圧着、封止することができ、カーボン電極層25a、25bやイオン導電性高分子層15への影響が小さくて済む。
更に、カーボン電極層25a、25bをイオン導電性高分子層15上に直接形成するのではなく、高分子フィルム30上に形成した後、カーボン電極層25a、25bとイオン導電性高分子層15とを加熱圧着するので、カーボン電極層25a、25bの成膜時の基材(高分子)フィルム30の寸法変化が少なく、均一に厚い膜(カーボン電極層)を形成することができ、高分子アクチュエータの設計の自由度が高くなる。なお、イオン導電性高分子層にイオン液体を含浸させた構成の場合、カーボン電極層25a、25bとイオン導電性高分子層15との加熱圧着と、高分子フィルム(封止膜)30同士のヒートシールとが同時にできるため、少ない工程で、高分子アクチュエータを製造することができる。
なお、イオン導電性高分子フィルム15及びイオン導電性樹脂としては、Nafionのようなフッ素樹脂骨格のもの以外にも、炭化水素系やそれ以外のものでも使用可能である。カーボン電極層を形成するためのカーボン塗料の塗布方法は、スクリーン印刷以外にも従来公知の塗布方式や印刷方式が使用可能である。
イオン導電性高分子層15とカーボン電極層25a、25bに注入するイオンとしては、ナトリウム以外にも、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム等の金属イオン、アルキルアンモニウムイオン等の有機イオンが使用可能であり、それらの塩化物溶液又は水酸化物溶液に浸漬する処理することによって、イオンを注入する。また、このようなイオン注入処理の代わりに、イオン導電性高分子層15とカーボン電極層25a、25bに、イオン液体を含浸させてもよい。
後述するように、カーボン電極層25a、25bを形成する高分子フィルム30の表面には、金や白金等の化学的に安定な金属層を成膜して、カーボン電極層25a、25bの表面抵抗を下げてもよい。この金属層の成膜にはメッキや蒸着、スパッタ等の従来公知の成膜手法が使用可能である。
また、後述するように、この高分子フィルムの、カーボン電極層が形成される面と反対側の面に、AlやCu等の金属層(膜)を成膜する構成としてもよい。この金属膜の形成によって、高分子フィルム30よりも更に透湿度を低下させて、更に、高分子アクチュエータを乾燥しにくくすることもできる。この金属膜に高分子層を設け、金属層が、高分子フィルムと高分子層で挟まれていている構成としてもよい。
更に、高分子フィルム30としては、ポリエチレン以外にも、電気絶縁性の熱可塑性フィルムであり150℃以下の融点をもちヒートシールが可能あり、フレキシブルで柔軟性があり、吸水性が小さく、透湿度が低い(即ち、水分の透過性が小さい。)条件を満たすフィルムであれば使用することができる。これらの条件を満たせば高分子フィルムの材質、厚さは、特に限定されないが、高分子アクチュエータの変形を阻害しない材質、厚さであればよい。熱融着層としてポリエチレン層をもつフィルムを使用することもできる。
例えば、アルミニウムがラミネートされたポリエチレンフィルムを使用するならば、膜厚さは数100nm程度であれば、水分透過度が小さくフレキシビリティに優れた高分子アクチュエータの製造を可能とすることができる。
図1(B)に示した高分子アクチュエータの製造工程に対して、以下、図2に示すように、種々の変形が可能である。
図2(A)に示すように、一面側の金属層44が形成された高分子フィルム30の部分にカーボン電極層25を形成してもよい。この金属層44は、金又は白金によって形成される。金属層44が形成された高分子フィルム30は、片面全体に金属層が形成された片面金属層付き高分子フィルムを用いて、所望の領域に金属層が残るよう不要部分をエッチングによって除去して作製することもできる。
また、図2(B)に示すように、二面側に金属層が形成された高分子フィルム30を使用して一面側の金属層44上にカーボン電極層25を形成してもよい。即ち、図2(A)に示す高分子フィルム30の金属層44が形成されていない側の面に金属層46を形成してもよい。Al、Cu等によって金属層46は形成される。片面及び他面全体に金属層が形成された両面金属層付き高分子フィルムを用いて、片面の所望の領域に金属層が残るよう不要部分をエッチングによって除去して、片面に金属層44、他面の金属層46が形成された高分子フィルム30として作製することもできる。
また、図2(C)に示すように、一方の面に金属層44、及び、対向する他面に金属層46及び高分子層48が形成された高分子フィルム30を使用して、一方の面の金属層44上にカーボン電極層25を形成してもよい。即ち、図2(B)に示す金属層46の高分子フィルム30と反対側の面に高分子層48を形成してもよい。上記の片面金属層付き高分子フィルムの2枚を加熱圧着して貼り合わせ、露出する側の金属層の面に、上記と同様にして、金属層44を形成することができる。
図2(A)から図2(C)に示す金属層44上にカーボン電極層25が形成され、積層体が形成される。
更に、図2(D)に示すように、図2(B)に示す構成において、金属層44を形成しない構成とすることもできる。
同様に、図2(E)に示すように、図2(C)に示す構成において、金属層44を形成しない構成とすることもできる。
図2(D)、図2(E)に示す構成では、図1に示す構成と同様に、高分子フィルム30上に直接カーボン電極層25が形成され、積層体が形成される。
図2(F)に示すように、図2(A)から図2(E)に示す各積層体は、図1(B)と同様にして、イオン導電性高分子層15の対向する面に積層体のカーボン電極層25が配置され、高分子フィルム30同士の加熱圧着がなされ、高分子アクチュエータが完成する。
図2(F)に示す例では、図2(A)から図2(C)に示す構成において、高分子フィルム30面に形成された金属層44の面積は、カーボン電極層25と同面積とするか、カーボン電極層25の側方と同面積程度の大きな面積として、金属層44の面に導電線42が電気的に接続されている。
図2(F)に示す例では、導電線42とカーボン電極層25a、25bとの電気的接続は、次のようにして行う。金属層44上へのカーボン電極層25a、25bの形成に先立って、先端部の露出する導電線42と金属層44とを、導電性接着剤43、半田当を用いて電気的に接続した後に、先端部の露出する導電線42を覆うように、カーボン電極層25a、25bを形成して、導電線42とカーボン電極層25a、25bとを電気的に接続する。次に、先端部の露出する導電線42を略直角に曲げて、カーボン電極層25a、25bの側壁部に接触させて、導電線42とカーボン電極層25a、25bの側壁部と金属層44の面とを、導電性接着剤43を用いて連結し、金属層44の面に固定された構造とする。
この結果、カーボン電極層25a、25bの側壁部、及び、カーボン電極層25a、25bの直下と側壁部の外側の金属層44において、電気的接続部が形成される。側壁部における導電線42は導電性接着剤43によって金属層44の面に固定されているので、電気的接続部は、保護された状態となっている。
以下に説明するように、図1(B)に示す例と同様にして、金属層44上にカーボン電極層25a、25bを形成した後に、導電線42を接続することもできる。
図1(B2)に示す例と同様にして、先端部の露出する導電線42を折り合わせた2本部分と、この2本部分の一部を略直角に曲げた1本部分を形成して、2本部分をカーボン電極層25a、25bの側壁部に、1本部分をカーボン電極層25a、25bの表面部に接触させて、2本部分とカーボン電極層25a、25bの側壁部及びこの側壁部側に露出する金属層44の面とを、導電性接着剤43を用いて連結し、金属層44の面に固定された構造とする。このようにして、導電線42の1本部分及び2本部分によって、カーボン電極層25a、25bの側壁部、及び、カーボン電極層25a、25bの側壁部の外側の金属層44における電気的接続部が形成される。側壁部における導電線42は導電性接着剤43によって金属層44の面に固定されているので、電気的接続部は、保護された状態となっている。
また、先端部の露出する導電線42と高分子被膜49とが重なるように折り合わせた2本部分と、この2本部分の導電線42の一部を略直角に曲げた1本部分を形成して、2本部分をカーボン電極層25a、25bの側壁部及び側壁部の外側の金属44の面に接触させ、1本部分をカーボン電極層25a、25bの表面部に接触させて、(1)2本部分とカーボン電極層25a、25bの側壁部と側壁部の外側の金属44の面とを、導電性接着剤43を用いて連結し、側壁部の外側の金属44の面に固定された構造とする、又は、(2)2本部分の高分子被膜49と側壁部の外側の金属44の面とを融着し、2本部分とカーボン電極層25a、25bの側壁部と側壁部の外側の金属44の面とを、導電性接着剤43を用いて連結し、側壁部の外側の金属44の面に固定された構造とすることもできる。このようにして、カーボン電極層25a、25bの側壁部及び表面部、側壁部の外側の金属44の面に接続する導電線42によって、電気的接続部が形成される。
以上のように、側壁部の外側の金属44の面と電気的接続部を連結しておくことによって、電気的接続部を保護することができ、導電線42とカーボン電極層25a、25bとが電気的に接続され、電気的接続部が保護された状態とすることができる。
導電線42は、カーボン電極層25a、25bの側壁部及び側壁部の外側の金属44の面と導電性接着剤43によって電気的に接続され、また、導電線42は、カーボン電極層25a、25bの表面部とイオン導電性高分子層15との間に圧接されて、カーボン電極層25a、25b電気的に接続されている。
図2(F)に示す高分子アクチュエータも、図1(A)に示す高分子アクチュエータと同様に、イオン導電性高分子層15及びカーボン電極層25a、25bの全体が包まれ被覆され、封止された構造を有しており、導電線42が、イオン導電性高分子層15の厚さ方向の略中心部からこの層に略平行に、封止された内部から外部に取り出され、コンパクトな単純な形状をもっている。
図1及び図2において説明した、カーボン電極層25a、25bの表面部とイオン導電性高分子層15との間に圧接されて配置されている導電線42の形状は、任意の形状でよい。例えば、高分子アクチュエータの長手方向に略平行又は略直角に直線状に配置されてもよいし、渦巻状等の任意の曲線状の形状で配置されてもよい。
なお、本実施の形態において、金属層44の厚さには特に制限はないが、導電線42による電位がカーボン電極層25a、25bに均等に印加されるように連続した膜となる程度の厚さであることが好ましい。金属層44、46は、湿式メッキ法、蒸着法、スパッタ法等の従来公知の成膜手法により形成することができる。
また、以上説明した構成では、高分子被覆49を有する導電線42を使用しているが、高分子被覆49を有しない導電線42を使用することもできる。導電線42をカーボン電極層25a、25bに接続した後、1対の導電線42の間、及び、1対の導電線42とイオン導電性高分子層15との間に電気絶縁性の熱可塑性フィルムを挟み込んで、高分子フィルム30同士を加熱圧着して、1対の導電線42を電気的に独立に高分子フィルム30の外部に取り出すことができる。
以上説明した構成によって、高分子アクチュエータは安定に動作することができ、優れた変形性能を信頼性高く得ることができる。
以上説明では、イオン導電性高分子層15として厚さ183μmのNafion(型番N−117)を、高分子フィルム30として厚さ50μmのポリエチレンフィルムを、それぞれ使用して、カーボン電極層25a、25bの厚さを60μmとする構成例について説明したが、イオン導電性高分子層15及びカーボン電極層25a、25bの面積は10mm×50mmである。なお、材質、組成、大きさ、厚さ等は、目的に応じて任意に変更可能であることはいうまでもない。
図4は、本発明の実施の形態における、高分子アクチュエータの形状例を説明する断面図である。
図1から図3では、図4(A)に示すように、イオン導電性高分子層15が平板(短冊)状をなし、高分子アクチュエータの長手方向に垂直な断面が薄型の矩形(短冊)である高分子アクチュエータを示したが、図4(B)に示すように、イオン導電性高分子層15が角柱型をなし、高分子アクチュエータの長手方向に垂直な断面が矩形又は正方形である高分子アクチュエータも製造可能であり、イオン導電性高分子層15の対向する側面に、カーボン電極層25a、25b、及び、カーボン電極層25c、25dがそれぞれ形成されている。これらの電極層は、カーボン電極層に限定されるものではなく、公知の手法によって形成してもよい。
また、図4(C)に示すように、イオン導電性高分子層15が円柱型をなし、高分子アクチュエータの長手方向に垂直な断面が円形である高分子アクチュエータも製造可能であり、イオン導電性高分子層15の対向する側面に、カーボン電極層25a、25b、及び、カーボン電極層25c、25dがそれぞれ形成されている。
図4(A)に示す高分子アクチュエータは1方向に変形し駆動力を発生させることができるが、図4(B)、図4(C)に示す高分子アクチュエータは、直交する2方向の各方向に、変形し駆動力を発生させることができる。この各方向における駆動力を同時に発生させることも、各方向における駆動力をそれぞれ、異なるタイミングで発生させることもできる。従って、2方向での駆動を、同時に、或いは、異なるタイミングで実行することができる。更に、この2方向の駆動系に、この2方向に垂直な方向における駆動系を組み合わせることによって、3次元方向の駆動を可能とすることもできる。
高分子アクチュエータの変形性能、例えば、変形量は、カーボン粉末のBET比表面積を、例えば、10m2/g〜800m2/gと変化させ、カーボン粉末とイオン導電性樹脂との固形分重量比(C/B比)を、例えば、0.2〜2と変化させ、カーボン電極層の厚さを、例えば、10μm〜200μmと変化させることによって、種々の値とすることができる。
以上の実施の形態の説明では、アクチュエータ本体として、電圧印加によりイオンが移動して変形するイオン導電性高分子を例にとって説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)のような高分子フィルム、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等の圧電セラミックスも使用可能であり、バイモルフ型圧電アクチュエータを使用することもでき、曲げ変形を生じるアクチュエータを構成することができる。
以上、本発明を実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、高分子アクチュエータを構成する各部の材質、厚さ、大きさ寸法等は、高分子アクチュエータの使用用途に合致するように、その性能を満たすように必要に応じて任意に適切に設定することができる。