JP5095716B2 - スイゼンジノリの養殖方法及び装置 - Google Patents
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Description
福岡県内の養殖の歴史は古く江戸時代まで遡ることができる。昭和54年頃までは久留米市国分でも養殖が行われていたが、現在では朝倉市の二業者が屋永に流れる黄金川で、河川床に流れる湧水と、ポンプアップした地下水を利用して養殖を行っているに過ぎない。
通常の養殖では小型の種を河床にもどし、成長したものを収穫している。
養殖は、基本的にその繰り返しで、ノリ養殖のような種の培養、種付け、網管理等の作業は行われず、ほとんど自然に任せた方法である。
養殖は年間を通して行われているが、春と秋に収穫のピークを迎える。
養殖管理としては、石菖(菖蒲の仲間)、セリの移植・管理、また、漁場の一部では照度調整と鳥類による食害の防止を兼ねた遮光ネットの設置等を行っている。
これらの作業の大部分は、河川内の漁場に繁殖した雑草の駆除や浮泥の除去に、また、収穫時の夾雑物の除去にかなりの手間ひまがかかっている。
近年、多方面からの地下水の利用拡大のため、水位が低下するとともに湧水量自体も減少してきている。
そのため、大学等の研究機関や大手の民間企業が、現在の養殖方法に代わる新たな養殖技術の開発に取り組んだが、室内実験での効果はあるものの、屋外水槽で長期間養殖して製品にまでこぎ付けた例は皆無である。
このような状況下、スイゼンジノリの培養に関する技術として特開2004−81022号公報記載の技術が提案されている。
前記特許文献1記載の技術は、培地上で実験的にスイゼンジノリを培養することができるが、食用として提供できる量を生産することはできない。
本発明は係る従来の問題点を解決するためになされたものであってその目的とするところは、光量、水質、養分等を調製してスイゼンジノリの生育に適した環境を実現し、スイゼンジノリの効率的な養殖を可能としたスイゼンジノリの養殖方法及び装置を提供することにある。
尚、夜間止水する理由として、飼育は24時間流水で養分添加が望ましいが、添加した養分が希釈されないこと、また、藻体は夜間光合成をしないため、日中止水するより夜間に止水した方がより影響が少ないためである。
H3BO3 12.37g
MnCl3 1.40g
ZnCl3 0.11g
CoCl2 4.80mg
CuCl2 0.03mg
H2O 2.0L
請求項1記載のスイゼンジノリの養殖方法では、日中は日光を減光した環境下で、スイゼンジノリの飼育水を貯留した水槽中にスイゼンジノリを入れて、飼育水の注入と排水を行う方法としたので、スイゼンジノリの成長に最適の光量下で、常に新鮮な飼育水が供給される。
夜間はスイゼンジノリの成長を促進する養分を飼育水に含有させて飼育水の注水と排水を停止するので、養分の吸収が確実に行われる。
所定期間ごとにスイゼンジノリの藻体を洗浄するので、藻体に付着するアオミドロ、アミミドロ等の雑藻が除去される。
これらの方法が組み合わされることにより、スイゼンジノリの成長に適した環境が形成されて水槽において大量の養殖が可能となる。
H3BO3 12.37g
MnCl3 1.40g
ZnCl3 0.11g
CoCl2 4.80mg
CuCl2 0.03mg
H2O 2.0L
そして、排水パイプの下部外周からエアレーションを行い、排水孔にエアレーションの気泡を接触させる方法としたので、エアによって排水孔に付着するアオミドロ等の雑藻類が除去される。
日中と夜間の工程を80〜120日繰り返した後に収穫を行う方法としたので、食用として出荷できる量のスイゼンジノリを生産できる。
スイゼンジノリの養殖装置は図1〜3に示すように、円筒形の水槽1と、水槽に水を供給する注水パイプ2と、水槽の水を排水する排水パイプ3と、水槽にエアレーションを行うエアレーション装置4と、水槽に照射する日光を減光する遮光手段を主要な構成としている。
水槽1は樹脂またはガラス製の透明素材、または、樹脂製の不透明素材から構成される。
水槽1の大きさは一例として縦1メートル数十cm、直径1m前後、容量1000リットル前後の形状からなり、水槽内には高さ1m前後の飼育水が貯留される構成となっている。尚、水槽1の形状、収容する水量等は藻体の成長程度、注水量等に応じて適宜設定される。
飼育水としては人為的な浄化工程を経た水道水等を使用するのではなく、井戸水、湧き水、地下水等の自然から得られる水を使用し、塩素、その他人体、生物に悪影響を与える有害物質を含まない水を使用する。
水槽1に水を供給する方法は、水槽1の水面に上から水を流下させて供給する方法、あるいは、水槽中に噴射して水流を発生させる方法等による。注水に際してはスイゼンジノリの藻体を損傷しないようにする。
排水口7は、中心に向かって下方に傾斜した水槽の底の中心位置である最下部に形成されている。
排水パイプ3は排水口4に接続されて垂直方向に配置されており、排水パイプ3には全長にわたって所定間隔で多数の小孔8が穿孔されている(図2参照)。そして、この多数の孔8から水槽内の水が排水パイプ3内に流入し、流入した水が槽底の排水口7から排水される構成となっている。
排水パイプ3には多数の孔8が形成されているが、気泡が接触することにより排水パイプ3及び孔8にアオミドロ、アミミドロ等の雑藻が着生しにくくなり、排水孔の詰まりとスイゼンジノリの成長を阻害する雑藻の除去が行われる。
水槽に照射される光量は晴天時の照度の60〜70%程度になるようにする。尚、夏期は遮光率を高く、冬期は遮光率を低くする等、季節、気温に応じて遮光率を変更することも可能である。
1.種の確保
種となる原藻は、どの大きさからも養殖可能であるが、今回実施した最小の大きさは、50メッシュ(約0.5mm角の目合い)上に残った1mm前後の微細な藻体である。
アオミドロや付着珪藻等の夾雑物を除去しながら種専用の水槽に移して流水培養する。
水槽は管理しやすい小型のものを使用し、通気は必ずしも必要ない。
アオミドロや付着珪藻等が付きやすいので、1週間から10日間ごとに藻体を洗浄する。
5mm前後に成長した藻体を元種として第1実施例で説明した水槽に移す。
飼育水を貯留した屋外の水槽で日中は日光を減光した環境下で、スイゼンジノリの飼育水を貯留した水槽中にスイゼンジノリを入れて、飼育水の注入と排水を行う。
夜間は後述するP1 Metalsを飼育水に含有させて飼育水の注水と排水を停止する。飼育水は水1リットルに対しP1 Metals(2ml)を混合した溶液を100分の1に希釈した濃度とする。
種の培養と同様にアオミドロの繁殖や付着珪藻が付きやすいので、1週間から10日間ごとに藻体を洗浄する。
洗浄方法は特に限定されるものではないが、シャワー等を用いて藻体を損傷せずに表面の雑藻を除去する方法による。
洗浄時には藻体を50メッシュの篩に受け、メッシュ上に残った藻体も種として回収する。
前記日中と夜間の工程を繰り返し、藻体は養殖開始から3ヶ月前後すなわち80〜100日で養殖のピークを迎え、20〜50倍に増殖する。
色調が良好なうちにザル等を用いて収穫する。
季節による増減はあるものの周年養殖が可能であり、年4〜6回収穫できる。
注水による水流で藻体が撹拌できれば通気の必要はないが、藻体が大きくなり水槽の底に沈むようになった場合は1日、1〜2回撹拌させる。あまり強い通気は藻体同士がぶつかり小さくなるので避ける。
藻体は水中に浮遊したり水槽の底に沈んだりするため、排水口から流出し易い。そのため、流出防止策を講じる必要があるが、ナイロン網地を使用するとアオミドロ等が付着、繁殖しやすくなり、藻体を回収する時に非常に煩雑となる。これらを防止するために、気泡で常時網地を洗うような方法やナイロン網地を使用しない小孔を穿った塩ビパイプを使用するなどなるべくシンプルな構造にする必要がある。
養殖は主に地下水で行うが、高い収穫量を目指すのであれば微量金属の添加が必要である。その場合昼夜連続して添加することもできるが、夜間に微量金属成分を飼育水に含有させて止水させる方法であっても大きな増殖効果を得ることができる。なお、藻体は1〜2日間であれば止水状態にしていても枯死しない。
尚、表1の構成成分であるP1 Metalsの組成は表2のとおり、水2リットルに対し、H3BO3を12.37g、MnCl3を1.40g、ZnCl3を0.11g、CoCl2を4.80mg、CuCl2を0.03mg混合した溶液である。
養殖日数28日後には、N(NaNO3)、P(Na2HPO4)濃度0の対照区Cと、N(NaNO3)、P(Na2HPO4)濃度のそれぞれの実験区Dの藻体重量の差異に大差はなく、窒素やリンはスイゼンジノリの増殖を促進する効果は認められなかった。
養殖日数25日後には、1/100濃度のP1 Metalsの添加は、P1 Metals濃度0の対照区Cに対して増殖量を20%前後増加させる効果が認められた。
養殖日数18日後には、SWM−III濃度0の対照区Cと、それぞれの実験区Dの藻体重量の差異に大差はなく、尾形培地の濃度はスイゼンジノリの増殖を促進する効果は認められなかった。
表4ではP1 Metalsの添加量において、表2の組成比率で代表される原液2mlを1リットルの水に混合した溶液を10分の1〜1000分の1(特に100分の1)に希釈した濃度の飼育水を使用した場合にスイゼンジノリの増殖効果が見られた。
尚、P1 Metalsの添加量においては、表2の組成比率で代表される原液2mlを1リットルの水に混合した溶液を50分の1〜200分の1に希釈した濃度の飼育水を使用する方法であれば、前記100分の1の希釈溶液の場合と同様に顕著な増殖効果が見られる。
2 注水パイプ
3 排水パイプ
4 エアレーション装置
4a リング本体
5 側面
6 底面
7 排水口
8 孔
9 孔
10 エアチューブ
11 側面
Claims (5)
- 日中は日光を減光した照度の環境下で、スイゼンジノリの飼育水を貯留した水槽中にスイゼンジノリを入れて、飼育水の注入と排水を行い、
夜間はスイゼンジノリの成長を促進する養分を飼育水に含有させて飼育水の注水と排水を停止し、
前記日中と夜間の工程を繰り返し、所定期間ごとにスイゼンジノリの藻体を洗浄することを特徴とするスイゼンジノリの養殖方法。 - 夜間は、下記の組成比率で代表される原液2mlを1リットルの水に混合した溶液を50分の1〜200分の1に希釈した濃度の飼育水を使用することを特徴とする請求項1記載のスイゼンジノリの養殖方法。
H3BO3 12.37g
MnCl3 1.40g
ZnCl3 0.11g
CoCl2 4.80mg
CuCl2 0.03mg
H2O 2.0L - 水槽内の縦方向に多数の排水孔を備えた排水パイプを挿通し、排水パイプの下部外周からエアレーションを行い、排水孔にエアレーションの気泡を接触させる方法とした請求項1又は2記載のスイゼンジノリの養殖方法。
- 7〜10日ごとにスイゼンジノリの藻体を洗浄し、日中と夜間の工程を80〜100日繰り返した後に収穫を行う方法とした請求項1、2又は3記載のスイゼンジノリの養殖方法。
- スイゼンジノリの飼育水を貯留する水槽と、
飼育水の注水を行う注水手段、飼育水の排水を行う排水手段と、
水槽の垂直方向に配設されて、多数の排水孔を備えた排水パイプと、
排水パイプの下部に配置されたエアレーション装置と、
水槽に当たる日光を減光する遮光手段を備えたことを特徴とするスイゼンジノリの養殖装置。
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