以下、本発明に係るヒートポンプ給湯装置の一実施例を、図面に基づいて説明する。図1〜図3に、ヒートポンプ給湯装置100の系統図を示す。ヒートポンプ給湯装置100は、大別してヒートポンプ冷媒回路90および給水回路91,給湯回路92,風呂湯張り回路93,風呂追焚き加熱回路94,風呂追焚き吸熱回路95,タンク沸き戻し回路96を有している。
次に各回路ごとにその構成を、以下に説明する。
本実施形態におけるヒートポンプ冷媒回路90(図1,図2(a))は、瞬間給湯能力をより高めるために二つの冷媒回路を備えている。給湯装置として適切な出湯量を維持できる熱量が得られるならば一つの冷媒回路でも構わない。ヒートポンプ冷媒回路90の冷媒を二酸化炭素として、高温の湯を供給可能にしている。
第1のヒートポンプ冷媒回路90aは、冷媒を圧縮して高温の冷媒とする圧縮機1a、この圧縮機1aで圧縮され高温となった冷媒と給湯のために供給された水(給水)とが熱交換する水冷媒熱交換器2、この水冷媒熱交換器2を出た冷媒を減圧する膨張弁3a,この膨張弁3aを出た低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器4aを冷媒管路で接続して構成されている。
また、第2のヒートポンプ冷媒回路90bも、第1の冷媒回路90aと同様に、冷媒を圧縮して高温の冷媒とする圧縮機1b、この圧縮機1bで圧縮され高温となった冷媒と給湯のために供給された水(給水)とが熱交換する水冷媒熱交換器2、この水冷媒熱交換器2を出た冷媒を減圧する膨張弁3b,この膨張弁3bを出た低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器4bを冷媒管路で接続して構成されている。
圧縮機1a,1bは、インバータ制御により容量制御が可能になっており、低速(例えば1000rpm)から高速(例えば6000rpm)まで回転速度が可変である。蒸発器4a,4bは空気冷媒熱交換器であり、室外ファン5a,5bにより室外の大量の空気と減圧された冷媒とを熱交換させる。
水冷媒熱交換器2は、冷媒側伝熱管2a,2bと水側伝熱管2c,2dとを有しており、冷媒側伝熱管2a,2bの冷媒の流れと水側伝熱管2c,2dの水の流れとは対向流になっている。そして、高温高圧の冷媒と低温の水とが熱交換する。即ち、水冷媒熱交換器2の入口(図中では水冷媒熱交換器2の下側)で低温であった水が水側伝熱管2c,2dを通過する際に徐々に加熱され、水冷媒熱交換器2の出口(図中では水冷媒熱交換器2の上側)で、後述する制御装置120により設定された所定の温度に昇温される。
給水回路91(図1,図2(b))は、外部から上水を取り込むための給水金具11,取り込んだ上水を適正な水圧に調整する減圧弁12,給水流量を測定する給水流量センサ13,給水がどれだけ水冷媒熱交換器2に流れているかを測定する水冷媒熱交換器流量センサ15,水冷媒熱交換器2側から給水金具11側へ水が逆流するのを防止するための逆止弁14を有する。給水金具11から水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2c,2dまでが水配管で接続されており、これらの部材がこの水配管に設けられている。
給湯回路92(図1,図2(c))は、水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2c,2dから装置外部の給湯配管に接続される給湯金具19までの水管路と各部材とを含む。水冷媒熱交換器2から給湯金具19の間には、水側伝熱管2c,2dで加熱された湯水と貯湯タンク21に貯められた湯水とを混合するのに用いる第1湯水混合弁16と、第1湯水混合弁16を通過した湯水に給水回路91から給水された水を混合するのに用いる第2湯水混合弁17と、第2湯水混合弁17を通過した湯水の流量を調整する流量調整弁18とが配置されている。
なお、貯湯タンク21から給湯回路92の一部を通って給湯金具19に至る回路をタンク給湯回路92Tと称することとする。タンク給湯回路92Tにより給湯するときは、貯湯タンク21から出湯する量と同じ量の水を貯湯タンク21の下部21cから流入させなければならない。
第1湯水混合弁16の一方の流入口は、貯湯タンク21の上部21aに接続されている。また、貯湯タンク21の下部21cは、点AAで給水回路91と接続されている。貯湯タンク21は、タンク沸き戻し回路96(図1,図3(c))の水冷媒熱交換器2が予め加熱した約60〜90℃の高温の湯を貯えるのに使用される。第1湯水混合弁16は、制御装置120の指令により、貯湯タンク21に蓄えられた湯水を、水冷媒熱交換器2から供給された湯水と混合するのに用いられる。具体的には、第1湯水混合弁16からは、水冷媒熱交換器2で加熱された湯水が所望の温度に昇温されるまで、貯湯タンク21に蓄えられた高温の湯を混合することにより、制御装置120で設定された所定の温度の湯水が流出される。このとき給水金具11から給水された水(の全部または一部)は、点AAで分流して貯湯タンク21と水冷媒熱交換器2とに向かう。水冷媒熱交換器2の湯水と貯湯タンク21からの湯は、第1湯水混合弁16でまた合流する。また、第1湯水混合弁16からは、後述するように温度の低くなった貯湯タンク21内の湯水と、水冷媒熱交換器2で加熱された温度の高い湯を混合し、制御装置120で設定された所定の温度の湯水が流出される。
第2湯水混合弁17の一方の流入口は水管路に接続されている。この水管路は、給水回路91から分岐している(図2(b)(c)の「C」辺り)。つまり、給水金具11から給水された水の一部が流れることができるようになっている。第2湯水混合弁17では、制御装置120の指令により第1湯水混合弁16で混合された湯水と給水回路91から分岐して供給される水が混合され得る。この第2湯水混合弁17は給湯直前の温度の微調整のための弁であるともいえる。制御装置120は、設定した所定の給湯温度(約35〜60℃程度)の湯を給湯金具19を経て出湯端末へ出湯するために、第1湯水混合弁16と第2湯水混合弁17の開閉を制御する。
風呂湯張り回路93(図1,図3(a))は、給湯回路92の流量調整弁18と給湯金具19を接続する管路19aから分岐している。風呂湯張り回路93は、分岐部19aから浴槽36に湯水を供給するための入出湯金具35までを含んでいる。風呂湯張り回路93の配管中には、注湯電磁弁31およびフロースイッチ32,風呂循環ポンプ33,水位センサ34,入出湯金具35が、順次配置されている。
注湯電磁弁31は、分岐部19aから浴槽36側に湯を導くのに用いられる。フロースイッチ32は、風呂湯張り回路93中の湯の流れを検出する。風呂循環ポンプ33は、風呂追焚き時に浴槽36の湯水を、風呂追焚き熱交換器29に給水するのに用いられる。水位センサ34は、浴槽36に注湯された湯水の水位を検出する。入出湯金具35と浴槽36に取り付けた風呂循環アダプタ36aとは、水管路で接続される。
風呂追焚き加熱回路94(図1,図3(b))は、浴槽36の湯水を再加熱するための回路であり、風呂追焚き熱交換器29を有している。風呂追焚き熱交換器29の2次冷媒側伝熱管29aの出口側に接続された機内循環ポンプ23が、水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2c,2dに水を供給する。水側伝熱管2c,2dでは、水を加熱する。加熱されて温度上昇した水(高温水)は、給湯回路92から分岐した配管中に設けた追焚き電磁弁27と逆止弁28を通過する。ここで、風呂追焚き加熱回路94が動作中は、追焚き電磁弁27は開状態になっている。
逆止弁28を経た高温水は、風呂追焚き熱交換器29の2次冷媒側伝熱管29aに流入する。風呂追焚き熱交換器29では、2次冷媒側伝熱管29a内の高温水の流れと浴槽水側伝熱管29b内の湯水の流れとが対向流を形成している。浴槽水側伝熱管29b内の湯水と熱交換した高温水は温度低下して低温水になり、機内循環ポンプ23に流入する。その後、低温水は、給水回路91の逆止弁14の下流側に接続された水管路から水冷媒熱交換器2に戻される。以後、風呂追焚き運転を継続している間中、この風呂追焚き加熱回路94を水が循環する。
風呂追焚き吸熱回路95(図1,図3(b))は、浴槽36内の湯水を加温する回路であり、浴槽36に設けた風呂循環アダプタ36aから浴槽水を、入出湯金具35を通じて風呂追焚き熱交換器29に導く。浴槽36から取り出された浴槽水は、水位センサ34を経て、風呂循環ポンプ33に導かれる。風呂循環ポンプ33は、浴槽水を加圧してフロースイッチ32を介して風呂追焚き熱交換器29に供給する。このとき、風呂湯張り回路93に設けた注湯電磁弁31を閉状態にして、浴槽水を風呂追焚き熱交換器29に導く。浴槽水は、風呂追焚き熱交換器29の浴槽水側伝熱管29bを流通する際に加熱され、入出湯金具37を介して風呂循環アダプタ36aに戻される。
タンク沸き戻し回路96(図1,図3(c))は、水冷媒熱交換器2で加熱した湯を貯湯タンク21に導く回路である。タンク沸き戻し回路96は、貯湯タンク21とこの貯湯タンクに送湯するための機内循環ポンプ23と、第1湯水混合弁16とを含む。タンク沸き戻し回路96を動作させるときは、風呂追焚き加熱回路94が有する追焚き電磁弁27を閉にする。第1湯水混合弁16では、水冷媒熱交換器2側と貯湯タンク21とを連通させる。第2湯水混合弁17では、第1湯水混合弁16と給水側とを遮断する。この状態で、機内循環ポンプ23を運転して、貯湯タンク21内の水を貯湯タンク21の下部21cから水冷媒熱交換器2に供給する。水冷媒熱交換器2で、貯湯タンク21に貯えられた湯水を約60〜90℃に加熱し、第1湯水混合弁16を経て貯湯タンク21の上部21aに戻す。
すると高温の湯が貯湯タンク21上部に貯まることとなり、下部から高温ではない低温の湯が押し出される。貯湯タンク21内の貯湯状態は層分離状態として知られている通りであり、上部から高温,中温,低温と連続的な温度分布となっている。この中温の湯の一部が熱量は十分に残っているが給湯設定温度より温度が低い中温残湯となる。沸き戻し終了は水冷媒熱交換器水出口温度センサ62が所定温度に達したときである。すると中温湯が貯湯タンク21の下部から押し出され、高温の湯が押し出されて沸き戻し終了となる。低温水が押し出された段階では水冷媒熱交換器2内での温度差が大きく、つまり熱交換の効率が良い状態で沸き戻すことができるが、中温湯,高温湯と押し出されるに従って徐々に効率は低下する。
設定温度が60℃(または90℃)沸き戻しにあたっては、例えば、タンク内の殆どが60℃(または90℃)の湯になれば良いので、水冷媒熱交換器水入口温度センサ61で50℃(または60℃)が検出されたら沸き戻し終了とするということが行われる。
なお、ヒートポンプ冷媒回路90を立ち上げる時などは、ヒートポンプ冷媒回路90の加熱能力が十分でない。そこで、水冷媒熱交換器2が所定の温度で水を加熱できるようになるまで、風呂追焚き加熱回路94を用いて、予熱運転する。具体的には、追焚き電磁弁27を開とし、第1湯水混合弁16の水冷媒熱交換器2側と貯湯タンク21とを遮断する。第2湯水混合弁17の第1湯水混合弁16側と給水側も遮断する。この状態で、機内循環ポンプ23を運転し、水冷媒熱交換器2と風呂追焚き熱交換器29との間を水が循環するようにする。
上記回路を運転する制御装置120の具体的な動作について、以下に説明する。制御装置120は、ヒートポンプ冷媒回路90を運転/停止する。また、圧縮機1a,1bの回転速度や膨張弁3a,3bの開度を制御する。さらに、給湯回路92の湯水混合弁16,17,流量調整弁18等の水関係機器も制御する。
本実施例に示すヒートポンプ給湯装置100は、ヒートポンプ冷媒回路90の圧縮機1a,1bの吐出側に、圧縮機吐出圧力センサ51a,51bを設けている。さらにヒートポンプ給湯装置100は図示しないものも含めて多数の温度センサを有しており、これらは制御装置120に接続されている。
ヒートポンプ冷媒回路90では、圧縮機1a,1bの吐出側に圧縮機吐出温度センサ50a,50bが、蒸発器4a,4bの冷媒入口側には蒸発器冷媒入口温度センサ52a,52bが、冷媒出口側には蒸発器冷媒出口温度センサ53a,53bが、蒸発器4(又はその近傍)には外気温度センサ54a,54bが、それぞれ設けられている。給水回路91では、給水金具11の近傍に給水温度センサ60が、水冷媒熱交換器2の水入口側よりも上流に水冷媒熱交換器水入口温度センサ61がそれぞれ設けられている。給湯回路92では、水冷媒熱交換器2の水出口側よりも下流に水冷媒熱交換器水出口温度センサ62が、第1湯水混合弁16と第2湯水混合弁17との間に混合温度センサ63が、第2湯水混合弁17の下流の給湯ラインに給湯温度センサ64が、貯湯タンク21の側壁には高さ方向に位置を変えて上部から順に複数のタンク温度センサ65a,65b,65cがそれぞれ設けられている。後述するように、タンク温度センサ65aは、沸き戻し運転を行うのに前提となる温度を検出する役目を担う。
このように各種センサを配置したヒートポンプ給湯装置100においては、宅内に配置した図示しないリモコンを使用者が使用して所望の給湯温度Twsを設定すると、制御装置120が所望の温度の湯を給湯設備から給湯できるように各弁等を制御する。つまり、制御装置120は第2湯水混合弁17の下流に設けた給湯温度センサ64の目標温度Twbを、設定給湯温度よりα1だけ高い温度(Tws+α1)に設定する。第1湯水混合弁16と第2湯水混合弁17との間に設けた混合温度センサ63の目標温度Twkをこの温度よりもさらにα2だけ高い(Tws+α1+α2)に設定する。水冷媒熱交換器水出口温度センサ62の目標温度Twhはさらに(α3+α4)だけ高い温度(Tws+α1+α2+α3+α4)に設定される。α4については後述する。
ここで、α1〜α3は、以下の理由で設定されている。本実施例では水管路での放熱を考慮して、給湯回路92の上流になればなるほど、水冷媒熱交換器2に近ければ近いほど目標温度を高く設定している。また、外乱等により、水冷媒熱交換器2の水側伝熱管2c,2dの出口温度や、第1湯水混合弁16から流出した湯水の混合温度が多少変動しても、所望の給湯温度より若干高めに温度設定したので、第2湯水混合弁17に流入する湯に混合する水の量を制御することにより、所望の温度に調整できる。その結果、温度変動の少ない給湯を実現できる。
上記のα4は、貯湯タンク21内の湯水の温度が、混合温度センサ63の目標値より低くなった場合、すなわち、熱量は十分に残っているが温度の低い、利用しにくい貯湯タンク21内の湯を有効に使うため、制御装置120により、以下の条件に基づいて設定される。
図4のフローチャートを用いて説明する。貯湯タンク21上部に設けられたタンク温度センサ65aの温度Twuが、給水温度センサ60の温度Twi+補正値β以下の場合(130Y)、すなわち、貯湯タンク21内に利用できる熱量が残っていないと判断する場合、
α4=0 …(式1)
と設定する(131)。ここで、補正値βは、貯湯タンク21内の熱量の有無判定のための補正値である。
一方、タンク温度センサ65aの温度Twuが、給水温度センサ60の温度Twi+補正値βより高い場合(130N)、すなわち、貯湯タンク21内に必要な熱量が残っている場合は、以下の条件で、α4が設定される。貯湯タンク21のタンク温度センサ65aの温度Twuが混合温度センサ63の目標値Twkより高い場合(132Y)、すなわち、貯湯タンク21内に十分高い温度の湯水がある場合、
α4=0 …(式2)
と設定する(133)。
他方、タンク温度センサ65aの温度Twuが混合温度センサ63の目標値Twk以下の場合(132N)、すなわち、貯湯タンク21内に温度は十分高くないが、必要な熱量が残っている場合、
α4=(Twk−Twu)×k …(式3)
と設定する(134)。
ここで、係数kは、水冷媒熱交換器2からの湯水と貯湯タンク21からの湯水との混合比率を設定するための係数である。例えば、k=0.25 とすると、水冷媒熱交換器水出口温度センサ62の目標温度Twhを、α4=0の通常の場合に比べて、混合温度センサ63の目標値Twkとタンク温度センサ65aの温度Twuとの温度差の4分の1、高く設定することになる。
このとき、水冷媒熱交換器水出口温度センサ62の温度が目標温度Twhとなっている場合、α3は微小量のため無視すると、図6に示した温度の関係である式(100)〜(300)が成り立つ。先ず、水冷媒熱交換器2からの湯水(温度Twh)と、貯湯タンク21からの湯(温度Twu)とを混合して、混合湯(温度Twk)を得るには式(100)が成り立つ。また、前述したように式(200)が前提となる。これらから式(300)が得られ、水冷媒熱交換器2からの湯水と貯湯タンク21からの湯水の混合比率は、k=0.25のとき、4対1となる。なお、図中xは水冷媒熱交換器2からの流量比率を表している。
このように水冷媒熱交換器2からの湯水の方が、貯湯タンク21からの湯水よりも多くなるように係数kを設定するので、給湯中、タンク温度センサ65aの温度Twuが、給水温度センサ60の温度Twi+補正値β以下になった場合、すなわち、貯湯タンク21内に必要な熱量がなくなり、貯湯タンク21からの湯水の供給がなくなった場合でも、一時的な給湯湯量の低減を最小限に抑えることができる。
図4は水冷媒熱交換器の水出口温度目標値への加算値α4を設定するフローチャートで、図5は第1湯水混合弁の開度Ftを設定するフローチャートである。α4とFtはそれぞれ所定の温度から独立に設定される。
次に、第1湯水混合弁16の開度制御の詳細について説明する。図5のフローチャートを用いて説明する。第1湯水混合弁16の開度Ftは、第1湯水混合弁16の全流量に対する水冷媒熱交換器2側の流量の比率(%)で表す。0%が貯湯タンク21側の開度全開、100%が水冷媒熱交換器2側の開度全開を示す。まず、タンク温度センサ65aの温度Twuが(給水温度センサ60の温度Twi+補正値β)以下になった場合(138Y)、すなわち、貯湯タンク21内に必要な熱量がなくなった場合、第1湯水混合弁16の開度Ftを
Ft=100 …(式4)
と設定し(139)、貯湯タンク21内の湯水の供給をやめる。
タンク温度センサ65aの温度Twuが、給水温度センサ60の温度Twi+補正値βより高い場合(138N)、すなわち、貯湯タンク21内に必要な熱量がある場合について以下に説明する。水冷媒熱交換器2の水出口温度センサ62の温度Twoが貯湯タンク21の上部のタンク温度センサ65aの温度Twu以上の場合(140Y)、以下の条件ごとに第1湯水混合弁16の開度Ftを設定する。
タンク温度センサ65aの温度Twuが混合温度センサ63の目標値Twk以上の場合(141Y)、すなわち、Two≧Twu≧Twkの場合、
Ft=100 …(式5)
と設定する(142)。このとき、水冷媒熱交換器2からの湯水の温度、および、貯湯タンク21内の湯水の温度が混合温度の目標値以上のため、貯湯タンク21内の湯水は使わず、水冷媒熱交換器2からの湯水のみ使用し、この目標値より温度が高い分は、下流の第2湯水混合弁17で水を混合することにより、所望の温度の湯水を給湯口から供給する。つまり、貯湯タンク21内の湯を利用するまでもない場合である。
次に、混合温度センサ63の目標値Twkが水冷媒熱交換器水出口温度センサ62の温度Two以上の場合(143Y)、すなわち、Twk≧Two≧Twuの場合、
Ft=100 …(式6)
と設定する(144)。このとき、水冷媒熱交換器2からの湯水の温度、および、貯湯タンク21内の湯水の温度ともに、混合温度の目標値以下であるが、水冷媒熱交換器2からの湯水の温度が貯湯タンク21内の湯水の温度以上あるため、水冷媒熱交換器2からの湯水のみ使用する。つまり、貯湯タンク21内の湯水は利用できないし、利用してもしょうがない場合である。
次に、混合温度センサ63の目標値Twkが水冷媒熱交換器水出口温度センサ62の温度Two未満の場合(143N)、すなわち、Two>Twk>Twuの場合、
Ft=(Twu−Twk)/(Twu−Two)×100 …(式7)
と設定する(145)。このとき、混合温度の目標値より温度の高い水冷媒熱交換器2からの湯水と、混合温度の目標値より温度の低い貯湯タンク21内の湯水とを混合する。つまり、水の代わりに貯湯タンク21の湯でぬるめて調温するという使い方をする。これは、前述した水冷媒熱交換器水出口温度センサ62の目標温度Twhを通常より高く設定する場合(図4のステップ134)と一緒になって、実行される。これにより、熱量は十分に残っているが温度の低い、利用しにくい貯湯タンク21内の湯を有効に使うことができる。
一方、水冷媒熱交換器2の水出口温度センサ62の温度Twoが貯湯タンク21の上部のタンク温度センサ65aの温度Twu未満の場合(140N)、以下の条件ごとに第1湯水混合弁16の開度Ftを設定する。混合温度センサ63の目標値Twkがタンク温度センサ65aの温度Twu以上の場合(146Y)、すなわち、Twk≧Twu>Twoの場合であり、
Ft=10 …(式8)
と設定する。このとき、貯湯タンク21内の湯水の温度が混合温度の目標値以下であるが、水冷媒熱交換器2からの湯水の温度より高いため、貯湯タンク21内の湯水を優先して使う。つまり、貯湯タンク21の湯の温度が低くても、水冷媒熱交換器2が立ち上がるまでは貯湯タンク21の湯で我慢するという使い方である。ここで、水冷媒熱交換器2からの湯水より温度の高い貯湯タンク21側の湯水を全流量流す(Ft=0%)のではなく、水冷媒熱交換器2側の湯水を小流量(10%)流すようにした理由は、ヒートポンプ冷媒回路90に小流量でも常に給湯負荷を与えることにより、ヒートポンプ冷媒回路90の運転の安定化を図るためである。Ft=0%として、水冷媒熱交換器2内の水を止めてしまうと、ヒートポンプ冷媒回路90で発生した熱を除去する負荷がなくなってしまい、水冷媒熱交換器2の冷媒側が想定以上の高温高圧になるという不具合が生じる虞があるからである。従って、小流量とは不具合が生じない量であって、貯湯タンクから出湯する湯の量以下であれば良く、ここではFt≦20%であれば良いものとする。
次に、水冷媒熱交換器水出口温度センサ62の温度Twoが混合温度センサ63の目標値Twk以上の場合(148Y)、すなわち、Twu>Two≧Twkの場合、
Ft=100 …(式9)
と設定する(149)。このとき、前述のステップ141Y,142と同様に、水冷媒熱交換器2からの湯水の温度、および、貯湯タンク21内の湯水の温度が混合温度の目標値以上のため、貯湯タンク21内の湯水は使わず、水冷媒熱交換器2からの湯水のみ使用し、この目標値より温度が高い分は、下流の第2湯水混合弁17で水を混合することにより、所望の温度の湯水を供給する。
最後に、水冷媒熱交換器水出口温度センサ62の温度Twoが混合温度センサ63の目標値Twk未満の場合(148N)、すなわち、Twu>Twk>Twoの場合、
Ft=(Twu−Twk)/(Twu−Two)×100 …(式10)
と設定する(150)。このとき、混合温度の目標値より温度の高い貯湯タンク21湯水と、混合温度の目標値より温度の低い水冷媒熱交換器2からの湯水とを混合する。例えば、ヒートポンプ冷媒回路90の立ち上がり時に、貯湯タンク21内の湯水の温度が十分高く、水冷媒熱交換器2からの湯水が、制御装置120が設定した所定の目標温度Twhに達していない場合に実行される。つまり、水冷媒熱交換器2が立ち上がるまで貯湯タンク21を用いて応答性を改善するという使い方である。また、別の見方をすれば、貯湯タンク21からの出湯を水冷媒熱交換器2からの湯水でぬるめるという使い方である。
ヒートポンプ冷媒回路90を動作させるときは、制御装置120が圧縮機1a,1bを回転速度制御する。水冷媒熱交換器2を含む冷媒循環系の熱容量が大きいので、圧縮機1a,1bの回転速度を変化させても、水冷媒熱交換器2の水出口温度はすぐには変化せず、この水出口温度の応答速度が遅い。そこで、水冷媒熱交換器2の水出口温度と関係する特性であって、応答速度の速い圧縮機1a,1bの吐出圧力を制御目標に定める。瞬間式ヒートポンプ給湯装置ではヒートポンプ冷媒回路90の立ち上がりが遅いと、貯湯タンクからの湯水の供給量が増えるという課題がある。そこで以下のようにして、立ち上がり特性を改善する。
圧縮機1a,1bの吐出圧力は、水冷媒熱交換器2の水出口温度が高いほど、高い。目標吐出圧力Pd0は、水冷媒熱交換器2の水出口温度目標値Twh(=Tws+α1+α2+α3+α4)の関数で(式11)のように表される。
Pd0=f(Twh) …(式11)
目標吐出圧力Pd0と実際の吐出圧力Pdとの偏差ΔEpd(=Pd0−Pd)が0となるように、圧縮機1a,1bの回転速度を制御する。その際、例えば、偏差ΔEpdおよび(偏差ΔEpd−前回偏差ΔEpd)の関数として、圧縮機1a,1bの回転速度を増減する。
ヒートポンプ冷媒回路90を流れる水流量の影響により、実際の吐出圧力Pdが目標吐出圧力Pd0に到達していても、水冷媒熱交換器2の水出口温度が目標値からずれていることも予想されるので、水冷媒熱交換器2の水出口温度が目標値Twhに近づくように、目標吐出圧力Pd0を随時補正する。
すなわち、制御装置120は、圧縮機1a,1bを回転速度制御するときは、使用者の蛇口等の開度で決定される流量に基づいて、水冷媒熱交換器2の水出口温度が、目標値Twhになるように制御する。なお、目標値Twhは、リモコンで設定される給湯温度Twsに基づいて設定される。また、第1のヒートポンプ冷媒回路90aの冷凍サイクルが過熱度制御されるように、膨張弁3aの開度を制御する。具体的には、蒸発器4aの冷媒出口温度と冷媒入口温度の温度差である過熱度が、所定値となるように膨張弁3aの開度を制御する。第2のヒートポンプ冷媒回路90bの冷凍サイクルについても同様である。
ヒートポンプ冷媒回路90a,90bの過熱度を変更することにより、冷凍サイクルの状態を変更することができる。したがって、所定の過熱度になるように膨張弁の開度を制御することにより、エネルギー効率の高い冷凍サイクル状態を維持することができる。
以下、ヒートポンプ給湯装置100の動作について、典型的な3つの例について説明する。
1番目の例は、例えば、タンク沸き戻し運転後、比較的早い段階(高温湯がたっぷりある段階)での給湯に関するものであり、立ち上がり時と立ち上がり後ともに、貯湯タンク21内に十分に温度の高い湯水がある場合である。
2番目の例は、例えば、タンク沸き戻し運転後、給湯を数回行い、貯湯タンク21内の高温の湯が少なくなってきた場合に発生するものであり、立ち上がり時、貯湯タンク21内に温度の高い湯水があったが、立ち上がり後、貯湯タンク21内に熱量は十分残っているが給湯設定温度よりも温度の低い湯水(中温残湯)になってしまった場合である。
3番目の例は、例えば、タンク沸き戻し運転後、時間の経過により放熱し、貯湯タンク21内の湯の温度が低くなったとき、つまり中温残湯になってしまった場合に発生するものであり、立ち上がり時、貯湯タンク21内に高温湯が無く中温残湯がある場合である。
先ず、1番目の例である、立ち上がり時と立ち上がり後ともに、貯湯タンク21内に十分に温度の高い湯水がある場合について前出の図1〜図5を用いて説明する。
図示しないリモコンで使用者の所望の給湯温度Twsが設定され、給湯金具19に接続された図示しない蛇口が開栓されると、水道圧により給水金具11から流入した上水が、減圧弁12および給水流量センサ13,逆止弁14,水冷媒熱交換器流量センサ15,水冷媒熱交換器2,第1湯水混合弁16,第2湯水混合弁17,流量調整弁18,給湯金具19を順次経て、蛇口から流出する。この回路を瞬間回路と称する。その際、制御装置120は、瞬間回路に設けた給水流量センサ13で水流を検出し、ヒートポンプ冷媒回路90の圧縮機1a,1bを起動する。
このとき、水冷媒熱交換器2の水出口温度目標値Twhを設定するためのα4は、α4=0と設定する。つまり、図4のフローチャートにおいて、貯湯タンク21内に十分高い温度の湯水がある場合、すなわち、貯湯タンク21のタンク温度センサ65aの温度Twuが混合温度センサ63の目標値Twkより高い場合であるので(132Y)、α4=0(131)に設定され、水冷媒熱交換器2の水出口温度目標値Twhは、給湯設定温度Twsに各配管での放熱量等を考慮した温度上昇量α1〜α3のみが加算される。
圧縮機1a,1bの起動後、ヒートポンプ冷媒回路90が立ち上がるまでは、水冷媒熱交換器2からの湯水の温度Twoは、制御装置120が設定した目標値Twhに達していない。そこで、図5のフローチャートにおいて、(タンク温度センサ65aの温度Twu>混合温度センサ63の目標値Twk>水出口温度センサ62の温度Two)の場合であるので(148N)、制御装置120は、混合温度センサ63の温度が目標温度Twk(=Tws+α1+α2)になるように第1湯水混合弁16の開度Ftを(式10)(ステップ150)に設定,調整する。さらに、下流の給湯温度センサ64の温度が目標温度Twb(=Tws+α1)になるように、第2湯水混合弁17で混合させる水量を、制御装置120が制御する。これにより、蛇口には適温の湯が供給される。
圧縮機1a,1b起動後、時間が経過するにつれてヒートポンプ冷媒回路90の加熱能力が徐々に増加し、水冷媒熱交換器2の水出口温度センサ62の温度Twoが上昇する。このとき、制御装置120は、第1湯水混合弁16の開度Ftを(式10)に基づいて設定するので、開度Ftは増加する。何故なら、貯湯タンク21内に十分に温度の高い湯水があるため、Twuは一定と考えることができ、目標温度Twkも一定と考えることができるからであって、分子は一定であり、Twoが増えれば、(式10)の分母が小さくなるからである。
その結果、第1湯水混合弁16では水冷媒熱交換器2側の流量が徐々に増加し、貯湯タンク21側の流量が徐々に減少する。水冷媒熱交換器2の水出口温度センサ62の温度Twoが目標値Twhに達すると、混合温度センサ63の検出値がTwkになったと考えることができ(図5の148Y)、第1湯水混合弁16の開度Ftを100%とし(149)、貯湯タンク21側からの湯水の供給を止める。このとき、貯湯タンク21内には十分に温度の高い湯水が残っていて、ヒートポンプ冷媒回路90側からだけ連続給湯する。
給湯端末が閉じられたことを給水流量センサ13が検出した場合、貯湯タンク21の温度センサ65aの温度から、貯湯タンク21内には十分に温度の高い湯水が残っていると判断して、タンク沸き戻し運転を行わず、圧縮機1a,1bを停止する。
次に、2番目の例である、立ち上がり時、貯湯タンク21内に温度の高い湯水があったが、立ち上がり後、貯湯タンク21内に熱量は十分残っているが温度の低い湯水になってしまった場合について説明する。この場合、前述の立ち上がり時と立ち上がり後ともに、貯湯タンク21内に十分に温度の高い湯水がある1番目の例の場合と、立ち上がり時の動作は同じであるので、立ち上がり時の動作についての説明は省略する。
ヒートポンプ冷媒回路90が立ち上がり、加熱能力が徐々に増加し、水冷媒熱交換器2の水出口温度センサ62の検出値が目標値Twhに達すると、混合温度センサ63の検出値がTwkになったと考えることができ、貯湯タンク21側からの湯水の供給を一旦止める。このとき、制御装置120は、貯湯タンク21の上部のタンク温度センサ65aの温度Twuが、混合温度センサ63の目標値Twk以下になった場合(図4の132N)、水冷媒熱交換器2の水出口温度目標値Twhを設定するためのα4を(式3)に基づいて設定する(134)。これにより、水出口温度目標値Twhは、(式3)で表される値α4だけ高く設定され、これに伴い、(式11)で表される圧縮機1a,1bの目標吐出圧力Pd0も高くされるため、実際の吐出圧力Pdが目標吐出圧力Pd0となるように、圧縮機1a,1bの回転速度が増速され、水冷媒熱交換器2の水出口温度Twoも上昇する。
このとき、(水冷媒熱交換器2の水出口温度センサ62の温度Two>混合温度センサ63の目標値Twk>タンク温度センサ65aの温度Twu)であるので、第1湯水混合弁16の開度Ftを、(式7)に設定する(図5の145)。これにより、混合温度の目標値Twkより温度の高い水冷媒熱交換器2からの湯水と、混合温度の目標値Twkより温度の低い貯湯タンク21内の湯水とを混合して、水冷媒熱交換器2から来る高温の湯をぬるめて適温を得ることができる。これにより、熱量は十分に残っているが温度の低い、利用しにくい貯湯タンク21内の湯水を有効に使うことができる。
時間の経過とともに、貯湯タンク21内の残湯量が減少し、タンク温度センサ65aの温度Twuも低下するが、その都度、α4は(式3)、Ftは(式7)に基づいて設定され、温度の低い貯湯タンク21内の湯水と温度目標値を高く設定した水冷媒熱交換器2からの湯水とが、第1湯水混合弁において、適切に混合される。
貯湯タンク21内に利用できる熱量が無くなると(図4の130Y,図5の138Y)、α4を0に戻すとともに(131)、Ftを100%とし(139)、貯湯タンク21側からの湯水の供給を止める。この貯湯タンク21側からの湯水の供給停止直後での、第1湯水混合弁16での混合温度の目標値より高い分は、下流の第2湯水混合弁17で水を混合することにより、所望の温度の湯水を供給する。α4が0になることにより、(式11)で表される圧縮機1a,1bの目標吐出圧力Pd0も低くなるため、実際の吐出圧力Pdが目標吐出圧力Pd0となるように、圧縮機1a,1bの回転速度が減速され、水冷媒熱交換器2の水出口温度Twoも下降し、新たに設定された目標値Twhに近づきながら、ヒートポンプ冷媒回路90側からだけ連続給湯する。
給湯端末が閉じられたことを給水流量センサ13が検出した場合、貯湯タンク21の温度センサ65aの温度から、貯湯タンク21内に必要な熱量が無いと判断して、タンク沸き戻し運転を行う。タンク沸き戻し運転開始の条件である温度センサ65aの温度は、給湯設定温度よりも低い所定値とする。給湯設定温度が42℃であれば、例えば35℃とする。貯湯タンク21内の湯が予め定められた所定位置に達したら、圧縮機1a,1bを停止する。上記のように、水の代わりに貯湯タンク21内の湯で水冷媒熱交換器2から来る高温の湯をぬるめるため、タンク内の給湯設定温度より温度の低い中温残湯を有効に利用し、貯湯タンク21内の中温残湯量を低減することができる。従って、ヒートポンプ給湯装置のタンク沸き戻し時の高いエネルギー効率を維持できる。
次に、3番目の例である、立ち上がり時、貯湯タンク21内に熱量は十分残っているが温度の低い湯水がある場合について説明する。ヒートポンプ冷媒回路90の立ち上がり時の、水冷媒熱交換器2の水出口温度目標値Twhを設定するためのα4の設定は、以下のように行われる。制御装置120は、貯湯タンク21の上部のタンク温度センサ65aの温度Twuが、混合温度センサ63の目標値Twk以下であるため(図4の132N)、α4を(式3)に基づいて設定する(134)。これにより、水出口温度目標値Twhは、(式3)で表されるα4高い値に設定され、水冷媒熱交換器2からの湯水の温度Twoが、この目標値Twhになるように、ヒートポンプ冷媒回路90の圧縮機1a,1bが回転速度制御される。
圧縮機1a,1bの起動後、ヒートポンプ冷媒回路90が立ち上がるまでは、水冷媒熱交換器2からの湯水の温度Twoは、制御装置120が設定した目標値Twhに達していない。例えば、圧縮機1a,1bの起動後の短時間、(混合温度センサ63の目標値Twk≧タンク温度センサ65aの温度Twu>水冷媒熱交換器水出口温度センサ62の温度Two)の場合(図5の146Y)、第1湯水混合弁16の開度Ftを10%に設定し(147)、貯湯タンク21内の湯水を優先して使う。つまり、水冷媒熱交換器2が立ち上がるまでは、貯湯タンク21内の湯の温度が低くても、その湯を我慢して使うという考えである。
ヒートポンプ冷媒回路90の加熱能力が次第に増加し、水冷媒熱交換器2からの湯水の温度Twoが、貯湯タンク21内の湯水の温度Twu以上になると(143Y)、第1湯水混合弁16の開度Ftを100%に設定し(144)、水冷媒熱交換器2からの湯水のみ使用する。このとき、第1湯水混合弁16の開度Ftを10%から100%に急激に変化させると、水冷媒熱交換器2側の水流量が急増大し、圧縮機1a,1bの回転速度増加によるヒートポンプ冷媒回路90の加熱能力の増加が間に合わず、水冷媒熱交換器2からの湯水の温度Twoが低下する恐れがあるので、低下しないように(或いは所定割合以上低下しないように)Ftをゆっくり変化させる。
さらに、時間の経過とともに、水冷媒熱交換器2からの湯水の温度Twoが、混合温度の目標値より高くなると(143N)、第1湯水混合弁16の開度Ftを(式7)に設定する(145)。つまり、水の代わりにタンク湯でぬるめる。これにより、混合温度の目標値より温度の高い水冷媒熱交換器2からの湯水と、混合温度の目標値より温度の低い貯湯タンク21内の湯水とを混合することができる。これにより、熱量は十分に残っているが温度の低い、利用しにくい貯湯タンク21内の湯水を有効に使うことができる。
時間の経過とともに、貯湯タンク21内の残湯量が減少し、タンク温度センサ65aの温度Twuも低下するが、その都度、α4は(式3)、Ftは(式7)に基づいて設定され、温度の低い貯湯タンク21内の湯水と温度目標値を高く設定した水冷媒熱交換器2からの湯水とが、第1湯水混合弁において、適切に混合される。
貯湯タンク21内に必要な熱量が無くなると(図4の130Y,図5の138Y)、α4を0に戻すとともに(131)、Ftを100%とし(139)、貯湯タンク21側からの湯水の供給を止める。この貯湯タンク21側からの湯水の供給停止直後での、第1湯水混合弁16での混合温度の目標値より高い分は、下流の第2湯水混合弁17で水を混合することにより、所望の温度の湯水を給湯口に供給する。α4が0になることにより、(式11)で表される圧縮機1a,1bの目標吐出圧力Pd0も低くされるため、実際の吐出圧力Pdが目標吐出圧力Pd0となるように、圧縮機1a,1bの回転速度が減速され、水冷媒熱交換器2の水出口温度Twoも下降し、新たに設定された目標値Twhに近づきながら、ヒートポンプ冷媒回路90側からだけ連続給湯する。
給湯端末が閉じられたことを給水流量センサ13が検出した場合、貯湯タンク21の温度センサ65aの温度から、貯湯タンク21内に必要な熱量が無いと判断して、タンク沸き戻し運転を行う。貯湯タンク21内の湯が予め定められた所定位置に達したら、圧縮機1a,1bを停止する。上記のように水の代わりに貯湯タンク21内の湯でぬるめたり、タンク湯が低くても水冷媒熱交換器2が立ち上がるまでタンク湯で我慢することで、タンク内の給湯設定温度より温度の低い中温残湯を有効に利用し、貯湯タンク21内の中温残湯量を低減することができる。従って、ヒートポンプ給湯装置のタンク沸き戻し時の高いエネルギー効率を維持できる。
以上の実施例では、瞬間式ヒートポンプ給湯機を例として説明を行った。瞬間式ヒートポンプ給湯機は、通常、ヒートポンプ冷媒回路の加熱能力が安定すると、ヒートポンプ冷媒回路で発生した湯のみを給湯端末に供給するものである。一方、貯湯式ヒートポンプ給湯機は、貯湯タンクに貯えた湯に水を混合して給湯端末に供給するものである。また、瞬間式ヒートポンプ給湯機のヒートポンプ冷媒回路の加熱能力を小さくするとともに、貯湯タンクを大きくして、給湯時、常にヒートポンプ冷媒回路で発生した湯と貯湯タンクに貯えた湯を混合して給湯端末に供給するものがあり、これをセミ瞬間式またはセミ貯湯式ヒートポンプ給湯機を呼ぶ(以後、ここではセミ瞬間式を呼ぶ)。本発明は、セミ瞬間式ヒートポンプ給湯機にも適用可能である。すなわち、セミ瞬間式ヒートポンプ給湯機で、給湯設定温度より温度の低くなった貯湯タンク内の湯水と、制御装置で温度目標値を高く設定したヒートポンプ冷媒回路からの湯水を混合することにより、給湯端末へ適温の湯が供給される。従って、タンク内の給湯設定温度より温度の低い中温残湯を有効に利用し、貯湯タンク21内の中温残湯量を低減したので、ヒートポンプ給湯機のタンク沸き戻し時の高いエネルギー効率を維持できる。最低限必要なことは、中温残湯を、給湯のために貯湯タンクから出湯することである。本実施例では、貯湯タンク上部から中温残湯を出湯している。
以上、本実施例によれば、中温残湯を有効に利用することで、沸き戻し対象の中温残湯量を低減することができ、更に、タンク沸き戻し時のエネルギー効率を改良することができる。