JP5089433B2 - 中空糸膜モジュール - Google Patents
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中空糸膜モジュールは、数百〜数万本の中空糸膜の束を整束し、その中空糸膜束を筒状のハウジングケース内に収納して、その端部をポッティング部にて接着固定した構成を有する。前記接着固定方法としては、特に樹脂の充填率が高くなることから、遠心力を利用して液状の未硬化樹脂を中空糸膜間に浸透させた後に硬化させる遠心法が多く用いられる。中空糸膜モジュールにおけるポッティング材としては、耐溶剤性に優れる点からエポキシ樹脂が用いられている。
ポッティング部に環状弾性体を配置する溝を形成し、該溝に環状弾性体を配置する方法(特許文献1〜3)。
ポッティング部に環状弾性体を配置する溝を形成する、あるいはポッティング部の端部の外周に沿うようにして環状弾性体を配置する方法(特許文献4)。
ポッティング部の端部の外周部分に位置するハウジングケース端面に環状弾性体を配置する方法(特許文献5、6)。
そのため、キャップ内における滞留部の形成を抑え、また、充分に環状弾性体を押しつぶすことができ、かつ溶剤による影響を低減して液密性を向上させた中空糸膜モジュールが望まれている。
また、前記固定部材の前記環状弾性体との接触面の表面粗さRaが1.6a以下であることが好ましい。
また、前記環状弾性体の取り付け前の内径D2と、前記ポッティング端面の外径D1との寸法差(D2−D1)が、0.1〜1.0mmであることが好ましい。
また、前記固定部材の材質が金属又はガラスであることが好ましい。
また、前記固定部材の外周部分にねじ加工が施されていることが好ましい。
また、前記固定部材の内周部分の端部に位置する出隅部にR加工が施されていることが好ましい。
図1は、本発明の中空糸膜モジュールの実施形態の一例を示した断面図である。本実施形態の中空糸膜モジュール1は、複数本の中空糸膜11を束ねた中空糸膜束10と、中空糸膜束10を収納するハウジングケース20と、ハウジングケース20に取り付けられるキャップ25と、ハウジングケース20内部で中空糸膜束10を固定する固定部材40と、ハウジングケース20とキャップ25との間に配置され、キャップ25の取り付けを緊密にする環状弾性体50とを有している。
中空糸膜11は、内部中空の細管であり、無数の孔部が形成された多孔質の管壁を有している。例えば、中空糸膜11の内部に対象液を供給しながら外部を減圧することにより、該対象液の脱気が行える。中空糸膜11は、耐溶剤性に優れる点から、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等のポリオレフィン系中空糸膜を用いることが好ましい。
気体透過能を有する均質膜を構成するポリオレフィン系樹脂には、ポッティング部30の破損や液密性等に悪影響を与えず、モジュール性能(脱気性能等)を低下させすぎない範囲内であれば、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、着色剤、難燃化剤等の添加物を添加してもよい。
前記MFRが0.1g/10分以上であれば、押出成型性が良好になる。また、前記MFRが5g/10分以下であれば、ポリマーの流動性が高くなりすぎないことから、支持層側に均質膜用樹脂が流出することによる均質膜の厚さの不均一化を防ぎ、中空糸膜11を脱気膜として用いる際に気体透過性能を十分に維持できる。
まず、同心円状複合構造ノズル口金の最外層ノズル部及び最内層ノズル部に支持層前駆体(未延伸層)用溶融ポリマー(高密度ポリオレフィン等)を供給し、中間層ノズル部に均質膜用溶融ポリマー(ポリオレフィン系樹脂)を供給する。そして、前記同心円状複合構造ノズル口金から溶融ポリマーを押出してドラフトのかかった状態で冷却固化させ、未延伸中空繊維を得る。次に、この未延伸中空繊維を延伸し、中間層の均質膜を挟む内層と外層を多孔質化する。
これにより、均質膜とこれを支持する支持層(内層及び外層)とを有する三層複合中空糸膜が得られる。
本実施形態の中空糸膜束10は、各中空糸膜11の両方の開口端部12近傍が、ポッティング部30に埋め込まれた状態で保持されている。すなわち、中空糸膜束10の両方の開口端部12がいずれも、中空糸膜モジュール1を使用する際に原液供給側領域に面するようにポッティング部30に支持されており、ポッティング部30に埋め込まれていない部分はハウジングケース20の中央内部に収納されている。
中空糸膜11の充填率が40%以上であれば、ハウジングケース20内で中空糸膜束10が屈曲することを防止しやすい。また、中空糸膜11の充填率が70%以下であれば、中空糸膜束10に扁平が生じることを防止しやすい。
ハウジングケース20は、中空糸膜束10を収納するケースであり、例えば、モジュールケース、カートリッジケース等が挙げられる。ハウジングケース20は、ケース本体21に、ハウジングケース20の内部を減圧する真空ポート22が形成されている。また、キャップ25には処理対象液流入出口となる開口部26が形成されている。
ハウジングケース20の肉厚についても制限はなく、中空糸膜モジュール1を使用する際の水圧によって適宜選択すればよい。
ポッティング部30は、中空糸膜束10を、端部が開口した状態、すなわちポッティング端面31に開口端面12を有する状態で保持すると共に、ハウジングケース20の内部側である一次側領域と外部側である二次側領域とを分離するように設けられる。
ポッティング部30を形成するポッティング材としては、耐溶剤性や耐水性(膨潤の低減)等の点から、エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
ポッティング材を硬化させる硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、有機酸無水物系及び変性アミン等を挙げることができる。なかでも、脂肪族ポリアミンを用いることが好ましい。また、ポッティング材の硬化反応の急激な進行を抑えるために反応遅延剤が添加されていても構わない。
遠心ポッティング法によるポッティング部30形成時のポッティング材の粘度は、100〜2000mPa・sであることが好ましい。
樹脂製のハウジングケースを用いた場合にポッティング部で十分な強度を出すためには、通常それらの接着強度が低いことから接着面積を大きくする必要がある。しかし、その方法ではポッティング部を形成するポッティング材の使用量が増加することになり、硬化時の発熱が著しく大きくなって硬化収縮に伴う残留応力が大きくなってしまう。また、ポッティング部との接着強度が高い金属製のハウジングケースを用いれば、少ない量のポッティング材で強度を高くできるが、その中空糸膜モジュールをFPD(Flat Panel Display)や液晶等の精密用途に用いる際には金属溶出による不具合が生じやすい。
本発明の中空糸膜モジュールでは、固定部材40を用いてポッティング部30を固定部材40に接着固定するため、樹脂製のハウジングケース20を使用してもポッティング部30における接着強度を充分に高くできる。
固定部材40は、環状であり、その高い接着力により、ポッティング部30にかかる水圧又は空圧の荷重に対応して、ポッティング部30の破損や剥離を低減する。
固定部材40は、ポッティング部30からの発熱を周囲に放熱する、あるいは熱伝導度に優れている等の機能を有していることが好ましい。これにより、ポッティング部30の硬化形成時における過剰な発熱を抑えることができ、ポッティング材の硬化収縮の抑制とそれによる応力の緩和が容易になる。具体的には、固定部材40の材質は、ステンレス(熱伝導率:16.7W/m・K)、アルミニウム(熱伝導率:236W/m・K)等の金属、又はガラス(熱伝導率:1W/m・K)であることが好ましい。
固定部材40の材質は、接着強度及び耐溶剤性の点からは、金属あるいはガラスが好ましい。
また、固定部材40をハウジングケース20に固定する際は、固定部材40あるいはハウジングケース20のねじ加工部にポッティング材を接着剤として塗布して接着固定するか、または配管用のフッ素系樹脂からなるシールテープを固定部材40に巻きつけたうえで螺着することが好ましい。
また、固定部材40の内周部分の端部に位置する出隅部42、43には、中空糸膜束10を挿入する際の接触により中空糸膜11に損傷が生じることを防ぎやすい点から、R加工が施されていることが好ましい。ただし、R加工とは、図2に示すように、角をなくすように円弧状に加工することである。
環状弾性体50は、ハウジングケース20とキャップ25との間に配置され、キャップ25の取り付けを緊密にする役割を果たす。
環状弾性体50の材質は、押圧に対する反発力で高い液密性を発揮できる点から、シリコンゴム、フッ素ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のゴムないしはエラストマーであることが好ましい。
環状弾性体50の大きさやゴム硬度、その押しつぶし量については任意であるが、押しつぶしに対する反発力が過大であると、ハウジングケース20の隔壁の一部分(ハウジングケース20の固定部材40の取り付け部分等)が大きな押圧力を長期間受けることになる。それにより、クリープ現象による隔壁の変形が生じると、それに伴う液密性の悪化が生じることがある。環状弾性体50の押しつぶし量は、安定して液密性を維持できる点から、その線径に対して10〜20%程度であることが好ましい。
環状弾性体50の固定される前の内径(D2)とポッティング端面31の外径(D1)との寸法差(D2−D1)は、0.1mm〜1.0mmであることが好ましい。寸法差(D2−D1)が0.1mm以上であれば、環状弾性体50の取り付け時に中空糸膜束10に負荷がかかることを防止しやすい。また、寸法差(D2−D1)が1.0mm以下であれば、特に金属製の固定部材40を用いた場合に、環状弾性体50とポッティング部30との間に露出した固定部材40から、処理対象液に金属成分が溶出することを防止しやすい。
以下、本実施形態の中空糸膜モジュール1の製造方法について説明する。
ハウジングケース20及び固定部材40は、アルコール又はトルエンで洗浄して脱脂した後、乾燥しておくことが好ましい。また、ハウジングケース20は、材質に応じて表面処理等を実施する。
ハウジングケース20のねじ加工部23に接着剤を塗布した後に、固定部材40をハウジングケース20内部にねじ込み固定して螺着する。
また、ポッティング部30が真空ポート22に近接しないようにしておくことにより、中空糸膜束10が外周方向に引っ張られてポッティング部30の界面付近で屈曲し、リークが生じることを防止しやすい。
負荷する遠心力としては×10g〜×40gの範囲であることが好ましい。遠心力が×40g以下であれば、中空糸膜11間にポッティング材が浸透する速度よりもポッティング材の注入速度が高くなって、比重の低い中空糸膜11が持ち上がった状態で硬化が進むことにより中空糸膜11が偏在することを防ぎ易い。この結果、ポッティング部近傍での中空糸膜束10の屈曲が起こり難いため、耐圧性が良好になる。また、遠心力が×10g以上であれば、中空糸膜11間にポッティング材が浸透する速度に比べてポッティング材を注入する速度が小さくなりすぎて、毛細管現象が強く表れて中空糸膜束10でのポッティング材の這い上がりが生じて有効膜面積が減ることを防ぎやすい。
また、遠心力を維持しながらポッティング材の注入速度を下げる目的で0.5〜5mmの小さな多孔を有する分配板等の部材を用いてもよい。
ついで、環状弾性体50を、固定部材40に隣接し、かつその径方向の内側にポッティング端部31が位置するように配置し、固定部材40とキャップ25で挟んで押しつぶすようにして環状弾性体50を固定するようにしてキャップ25を取り付ける。
以上の方法により、中空糸膜モジュール1が得られる。
また、本発明の中空糸膜モジュール1では、環状弾性体50を、その径方向の内側にポッティング端面31が位置するように配置することから、環状弾性体50の溶剤等に接触する部分を小さくして膨潤することを抑えることができる。また、固定部材40が膨潤の影響を受け難いために環状弾性体50が膨潤してもその影響が小さい。また、環状弾性体50をこのように配置することで、キャップ25内に滞留部が形成されるような空間が生じることも抑えられる。
[実施例1]
図1に例示した中空糸膜モジュール1の製造方法について以下に説明する。
中間層として軟質ポリプロピレンZelas7023(三菱化学製)、支持層としてポリプロピレンホモポリマー Novatech FY6H(日本ポリプロ製)を用い、2つの支持層の間に中間層を形成する三層複合ノズルにより紡糸して未延伸中空糸を得た。
この未延伸中空糸を140℃でアニール処理をし、ついで、23±2℃下で1.25倍延伸し、引き続き130℃の加熱炉中で3.3倍の延伸を行った後、130℃の加熱炉中で0.3倍の緩和工程を設け、最終的に総延伸倍率(未延伸中空糸からの倍率)が3倍になるように成形して、脱気用多層複合中空糸膜(中空糸膜11)を得た。この中空糸膜11は、均質膜(非多孔質薄膜)が2つの多孔質層で挟まれた三層構造であった。
また、ポリプロピレン(日本ポリプロ製、Wintec WMG03、MFR(210℃):30g/10分)製で、中空糸膜束収納部(21a)の内径がφ74、ねじ加工部23の内径が80φのハウジングケース20を切削により作成した。ねじ加工部23の内側には、ねじ切り時の逃げのためにハウジングケースの長手方向に10mmのねじ逃げ部24を設けた。
ポッティング材として用いる樹脂と同じハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製のエポキシ樹脂Araldite2020を接着剤としてねじ加工部23に塗布し、アルミニウム合金製の固定部材40(φ80−φ74)をハウジングケース20の末端にねじ込んで接着固定した。
ついで、三層構造を有する中空糸膜11をラッセル編みにして中空糸膜束10を作成し、それをハウジングケース20内に挿入した。さらに乾式のインキュベーターで所定長になるように支持層の軟化点以下である100℃で処理を行った。
ついで、ポッティング用の治具をハウジングケース20のケース本体21に設置し、ケース本体21内にポッティング材としてエポキシ樹脂Araldite2020(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)を各端面あたり100g充填した後、これを前記治具にて遠心式の膜モジュール製造装置にセットして×30Gで遠心、硬化した。その後、40℃で7hrの条件で最終物性が出るようにキュアリングを行った。固定部材40と中空糸膜束10の開口端部12との距離aは、2.5mm(a/b=0.8)として大型のカッターでハウジングケース20の端部を開いた。
環状弾性体50として、Oリング G75(NOK製、線径3.1mm)を用い、その径方向の内側にポッティング端面31が位置するようにして配置し、キャップ25を取り付けて中空糸膜モジュール1を得た。
固定部材40を用いずに、ハウジングケース20の端面と中空糸膜束10の開口端面12(ポッティング端面31)とが揃うように、大型のカッターでハウジングケース20の端部を開いたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュール2(図3)を作成した。
実施例1および比較例1の中空糸膜モジュールについて繰り返し耐圧試験を実施した。
本試験は、前記各中空糸膜モジュールについて、そのポッティング部の一方の端面側を閉塞し、真空ポートより吸引しながら、原水供給ラインに対象液を供給すると共に断続的に水圧を加えた際のポッティング部の割れ、ポッティング部とハウジングケースとの界面の剥離の発生の有無、及び割れ若しくは剥離によりリークを生じた時の水圧付加回数を測定した。
具体的には、実施例及び比較例で得られた中空糸膜モジュールを25℃の恒温槽内に配置した後、この恒温槽内の温水をポンプアップし、0.4[MPa]でインクジェットプリンター用水系インク溶液を中空糸膜モジュールの一次側に注水・加圧し、ついで0[MPa]まで除圧する。この加圧と除圧を1サイクルとして1サイクル/秒の周期で繰り返した。前記加圧と除圧とは弁体の切替操作により行い、各中空糸膜モジュールは25℃に維持しまま加圧と除圧とを繰り返した。
繰り返し耐圧試験の結果を表1に示す。
一方、比較例1の中空糸膜モジュール2では、繰り返し耐圧試験におけるサイクル20000回の加圧時において、ポッティング端面32よりも中空糸膜束10の長手方向のやや内側の中空糸膜の部分でリークが発生した。
Claims (7)
- 複数本の中空糸膜が束ねられた中空糸膜束と、
前記中空糸膜束がポッティング部にてその端部を開口した状態で接着固定される環状の固定部材と、
前記固定部材が内部に配置されて前記中空糸膜束が収納されるハウジングケースと、
開口部を有し、前記ハウジングケースの、前記中空糸膜束の開口端部側に取り付けられるキャップと、
前記キャップと前記ハウジングケースの間に配置され、前記キャップを前記ハウジングケースに液密に取り付けるための環状弾性体と、を備え、
前記環状の固定部材の内周部分が前記ポッティング部と接着され、かつ前記環状の固定部材は前記中空糸膜束の開口端部よりも該中空糸膜束の長手方向の中央側に位置し、
前記環状弾性体が、前記固定部材に隣接し、かつその径方向の内側に、前記中空糸膜束の開口端部を有するポッティング端面が位置するように、前記固定部材と前記キャップに挟まれて固定されていることを特徴とする中空糸膜モジュール。 - 前記固定部材と前記中空糸膜束の開口端部との中空糸膜束の長手方向に沿った距離aと、前記環状弾性体の中空糸膜束の長手方向に沿った線径bとの比(a/b)が0.5〜1.0である、請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
- 前記固定部材の前記環状弾性体との接触面の表面粗さRaが1.6a以下である、請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュール。
- 前記環状弾性体の固定される前の内径D2と、前記ポッティング端面の外径D1との寸法差(D2−D1)が、0.1〜1.0mmである、請求項1〜3のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
- 前記固定部材の材質が金属又はガラスである、請求項1〜4のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
- 前記固定部材の外周部分にねじ加工が施されている、請求項1〜5のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
- 前記固定部材の内周部分の端部に位置する出隅部にR加工が施されている、請求項1〜6のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
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