JP5072878B2 - ダイクッション装置、ダイクッション装置の制御方法及びプレス機械 - Google Patents
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Description
ところが、空気圧を用いた流体圧シリンダは、圧縮率が高く、クッション力を正確に数値制御することが困難であり、一方、油圧を用いた流体圧シリンダは、大型の装置となり、油漏れも生じるので、メンテナンスが困難である。
また、上記ラックピニオン機構の代わりにボールネジを用いたダイクッション装置が知られている(例えば、特許文献3又は4参照)。
これらのダイクッション装置は、サーボモータが備えられているので、クッション力を数値制御することが可能であり、装置も小型化され、メンテナンスが容易である。
そして、本発明者らは、更に検討を重ね、スライドに加速度aが生じると、C=maに相当する力C(以下「慣性損失」という。)の分だけ、モータートルクが奪われていることを見出した。すなわち、クッションパッドをスライドの動きに追従して運動させるには、ダイクッション力を発生するためのトルクだけでなく、慣性損失を補填するためのトルクも発生させる必要があることを見出した。なお、スライドは上下往復運動を行うため、速度変化に伴う加速度aが発生する。この加速度aはスライド速度に依存するため、スライド速度が高いほど、加速度aも増大し、慣性損失Cも顕著となる傾向がある。また、一般にスライドの加速度aは、ダイクッションが最も押下される、スライド下死点に接近するほど増大する傾向があり、ダイクッションによる成型加工が進行するにつれて、慣性損失Cも増加する傾向がある。
そこで、本発明者は、クッション力を付勢するものとして、エアーシリンダ及び上方付勢装置を設け、あえてエアーシリンダを使って慣性損失による目減りを補填させることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
Mmax<S+C−A
[式中、Mmaxは上方付勢装置による最大のクッション力(kN)を示し、Sはクッション力(kN)を示し、Cは慣性損失(kN)を示し、Aはエアーシリンダによるクッション力(kN)を示す。ただし、Cは正の値である。]
この場合、上記ダイクッション装置が、エアーシリンダ及び上方付勢装置を備えているので、エアーシリンダにクッション力の一部(以下便宜的に「シリンダクッション力」という。)を発揮させ、上方付勢装置に残りのクッション力(以下便宜的に「上方付勢クッション力」という。)を負担させることにより、プレス時の下方へのプレス力に対応させることができる。なお、上方付勢クッション力とシリンダクッション力との和が、ダイクッション装置のクッション力となる。
このため、上記ダイクッション装置においては、当然、上方付勢装置に必要な上方付勢クッション力が小さくなるので、十分な上方付勢クッション力を発揮できる。なお、この場合、上方付勢装置や駆動源の小型化が可能となり、メンテナンスも容易となる。
この場合、プレス時に、下方空間が密閉されているので、ダイクッション装置の直動運動する部位が下方に移動するほど、下方空間の空気が圧迫され、シリンダクッション力が徐々に大きくなる。これにより、慣性損失の増加による上方付勢クッション力の目減りをエアーシリンダが補填するようになる。すなわち、上述した上方付勢クッション力に加え、シリンダクッション力が徐々に大きくなることで、プレス力に加え、慣性損失にも対応できるようになる。なお、本明細書において、「直動運動する部位」は、ダイクッション装置の部位を意味し、スライドやその駆動部は含まれない概念である。
このため、シリンダクッション力及び上方付勢クッション力から実際のプレス時のプレス力を算出することができる。これにより、上記ダイクッション装置においては、正確なフルクローズトループ制御が可能となるので、ダイクッション装置の応答性が向上する。
また、駆動源としてサーボモータを用いる場合、モータ、回転軸、回転−直動変換機構、減速機構等の回転運動する部位が可動部に含まれるので、可動部の直動軸換算質量(m)が大きくなる、このため、駆動源がサーボモータである場合、慣性損失(C)が大きくなるところ、上記ダイクッション装置によれば、上述したように、慣性損失を十分に対応できるので、皺の発生等によるプレス製品の品質低下を抑制できる。
まず、本発明のダイクッション装置の第1実施形態について説明する。
本発明のダイクッション装置は、プレス機械でワークをプレスする際のワークに伝わる下方へのプレス力に対応してワークを上方に付勢するクッション力をワークの周縁に付加するために用いられる。
図1に示すように、本実施形態に係るダイクッション装置100は、クッションパッド11と、該クッションパッド11に連結された支杆12に設けられ、該支杆12を介してクッションパッド11を上方に付勢するエアーシリンダ13及び上方付勢装置であるラックピニオン機構14と、エアーシリンダ13にエアー管8を介してエアーシリンダ13のシリンダとピストンとにより区画される空間に開放されたエアータンク19と、エアー管8に設けられたバルブ9と、ラックピニオン機構14を駆動させるための駆動源であるサーボモータ17と、を備える。
また、「クッション力」とは、プレス機械でワークをプレスする際のワークに伝わる下方へのプレス力に対抗してワークを上方に付勢する力を意味する。
かかる油室16は、下方に開放された中空円筒状の油室用シリンダ15aと、油室用シリンダ15a内を摺動可能となるように支杆12の上端に設けられている油室用ピストン15bと、を備える。
また、油が緩衝材としても機能するので、上方付勢装置の慣性によるプレス時(タッチ時)の衝撃力が緩和され、衝撃力によるクッション力の変動が抑制されるので圧力精度が向上し、ひいては金型や機械の破損が抑制される。
さらに、支杆12の上端の形状が球面座であるので、金型の偏心配置などによりクッションパッド11に傾きが生じた場合でも問題なく支杆12の軸方向にプレス力を伝達することができる。
かかるエアーシリンダ13は、支杆12が軸中心となるように設けられた有底中空円筒状のエアーシリンダ用シリンダ13aと、エアーシリンダ用シリンダ13a内を摺動可能となるように設けられた円盤状のエアーシリンダ用ピストンヘッド13bと、該エアーシリンダ用ピストンヘッド13bが固定された支杆12と、により形成されている。すなわち、エアーシリンダ13においては、支杆12がエアーシリンダ用シリンダ13aに対するピストンの働きを担っている。
かかるエアー管8には、バルブ9が取り付けられており、該バルブ9の開閉により、エアータンク19からエアーシリンダ13の下方空間13cへのエアーの供給が切換できるようになっている。
かかるラックピニオン機構14は、ラック杆14aと、該ラック杆14aに噛合されるピニオン軸14bとからなる。
一方、ピニオン軸14bは、ラック杆14aに噛合されると共に、サーボモータ17に接続されている。すなわち、ラックピニオン機構14は、サーボモータ17により駆動される。
例えば、本実施形態に係るダイクッション装置100においては、油室16の油圧を測定し、その測定値に基づけば、サーボモータ17によりラックピニオン機構14及び/又はエアーシリンダ13のクッション力をコントロールできる。
また、減速比を適切に選択することで、モータ軸トルクを変換することができるので、特殊な高トルクあるいは高回転サーボモータを必要としない。
その時のプレス力がダイクッション装置100に伝わると、ダイクッション装置の直動運動する部位が下方に移動しようとする。
このとき、クッションパッド11と支杆12との間には、油が充填された油室16が設けられているので、上記プレス力は、クッションパッド11から油室16内の油に伝わり、油圧に変換され、次いで、この油圧が支杆12に伝わることになる。なお、かかる油圧を測定することにより、プレス力を求めることが可能である。
図2に示すように、クッション力の実測値bは、理想値aに対し、経時的に低下することになる。すなわち、初期の段階で、理想値どおりのクッション力を発生することができていても、徐々に慣性損失が増大するので、クッション力を発生するために必要なサーボモータトルクが経時的に増加し、ついにはモータの最大トルクを超えてしまう。この場合、さらに増大する慣性損失を補填するトルクが得られないため、クッション力は目減りしていくことになる。
図3の(a)及び(b)に示すグラフは、縦軸がクッション力、横軸が時間の経過を示す。また、Sのラインがクッション力を示し、Cのラインが慣性損失を示す。さらに、Mの領域が上方付勢クッション力を示し、Aの領域がシリンダクッション力を示す。
ところが、サーボモータのトルクが最大値に到達すると、すなわち、上方付勢クッション力が最大の上方付勢クッション力Mmaxに到達すると、これ以上慣性損失が補填されないので、クッション力の目減りLが生じる。なお、サーボモータのトルクが最大値に到達しない場合、慣性損失Cが小さいものとする。
換言すると、上記ダイクッション装置100においては、エアーシリンダによるシリンダクッション力Aが慣性損失Cを補填するため、上方付勢クッション力Mとシリンダクッション力Aとにより、プレス力及び慣性損失Cに対応させることが可能となる。
これにより、皺の発生等によるプレス製品の品質低下が抑制され、ひいては、生産性の著しい低下が抑制される。なお、本発明を用いないで慣性損失を抑制するためにはスライド速度を低下させる必要がある。この場合、必要な成型速度が得られず、品質変化を招いたり、加工速度が下がることによる生産性の著しい低下が生じる。
本実施形態に係るダイクッション装置の制御方法は、上述したダイクッション装置におけるプレス速度に基づいて、慣性損失を算出し、所定の式を満たす場合にバルブを閉じる。これにより、上述した効果が得られ、ワーク毎に必要とされるクッション力が確実に発揮される。
図4は、本実施形態に係るダイクッション装置の制御方法のフローチャートである。
図4に示すように、本実施形態に係るダイクッション装置の制御方法は、コントローラーにより行われる。
C=ma
ここで、mはダイクッション可動部の直動軸換算質量であり、aはスライド速度Vによって決まる加速度である。
このように、慣性損失Cは、可動部の直動軸換算質量mと加速度aとの積で求められる。すなわち、ロット毎に、可動部の直動軸換算質量m又はプレス速度Vが変わる場合、上述した慣性損失の大きさも変わることになる。この場合、上述したバルブで下方空間の空気の量を調整して、慣性損失の補填に対応させる。
Mmax<S+C−A ・・・(1)
式(1)中、Mmaxは上方付勢装置による最大のクッション力(kN)を示し、Sはクッション力(kN)を示し、Cは慣性損失(kN)を示し、Aはエアーシリンダによるクッション力(kN)を示す。但し、Cは正の値である。
図5の(a)に示すように、第1演算手段S2において、式(1)を満たさない場合、ラックピニオン機構による上方付勢クッション力Mを増大させることによって慣性損失が補填される。
したがって、この場合は、バルブを閉めなくてよい。
Mmax+Amax>S+C ・・・(2)
式(2)中、Amaxは最大のシリンダクッション力(kN)を示す。
一方、式(2)を満たす場合、バルブを閉めることにより、図3の(b)に示すように、プレス力及び慣性損失に対応したクッション力を発揮できる。
このような制御によって、ダイクッション装置が運転される。
図6は、本実施形態に係るプレス機械の一例を示す部分断面図である。
図6に示すように、本実施形態に係るプレス機械101は、上述したダイクッション装置100と、該ダイクッション装置100のクッションパッド11の上にクッションピン4を介して設けられたブランクホルダ3と、クッションパッド11の上にライナ26を介して固定されたボルスタ27と、ボルスタ27上に載置された下型22と、該下型22に対応する形状を有する上型21と、上型21が支持されたスライド24とを備える。なお、上述したクッションピン4は、ボルスタ27の内部を貫通している。
このとき、ダイクッション装置100は、ワークWの周縁部にブランクホルダ3が接するように配置される。
次に、本発明のダイクッション装置の第2実施形態について説明する。
図7は、本発明のダイクッション装置の第2実施形態を概略的に示した正面図である。
図7に示すように、本実施形態に係るダイクッション装置200は、クッションパッド11と、クッションパッド11の下面に取り付けられた2つの上方付勢機構10とを備える。なお、2つの上方付勢機構10は、クッションパッド11の中心線に対して、左右対称に同じものが取り付けられている。
また、上記ダイクッション装置200は、上方付勢機構10がクッションパッド11の中心線に対して、左右対称に設けられているので、上述した第1実施形態に係るダイクッション装置100の場合よりも、バランスよく上方に付勢することができ、更には大きなクッション力を発揮することができる。
図8は、本実施形態に係るプレス機械の一例を示す部分断面図である。
図8に示すように、本実施形態に係るプレス機械201は、上述したダイクッション装置200と、該ダイクッション装置100のクッションパッド11の上にクッションピン4を介して設けられたブランクホルダ3と、クッションパッド11上にライナ26を介して固定されたボルスタ27と、ボルスタ27上に載置された下型22と、該下型22に対応する形状を有する上型21と、上型21が支持されたスライド24とを備える。なお、上述したクッションピン4は、ボルスタ27の内部を貫通している。
このとき、ダイクッション装置200は、ワークWの周縁部にブランクホルダ3が接するように配置される。
図9の(a)及び(b)は、他の実施形態に係るダイクッション装置のエアータンクの例を示す正面図である。
この場合、バルブ9a,9bを切り換えることにより、エアーシリンダの下方空間の容量を、(1)下方空間のみ、(2)下方空間及びエアータンク20a、(3)下方空間及びエアータンク20b、並びに、(4)下方空間、エアータンク20a及びエアータンク20b、の4段階に切り換えることが可能となる。
この場合、バルブ9cを切り換えることにより、エアーシリンダの下方空間の容量を、(1)下方空間のみ、(2)下方空間及びエアータンク20bの2段階に切り換えることができ、さらにバルブ9dを切り換えることにより、エアーシリンダの下方空間の容量を、(3)下方空間、エアータンク20c及びエアータンク20dとすることができるので、合計3段階に切り換えることが可能となる。
この場合、質量の大きいダイクッション装置の可動部を安全に保持する力を得るのに、一般的なトルクのブレーキを用いることができる。
この場合、よりクッション力が大きくなり、クッション力が発揮されるバランスにも特に優れる。
この場合、必要なクッション力を得ることができるのみならず、ラックピニオン機構14にはバックラッシュは一切発生せず、更に超寿命化が可能となる。また、ダイクッション装置が上昇する過程で電力回生を行うことができる。
4・・・クッションピン
8・・・エアー管
9,9a,9b,9c,9d・・・バルブ
10・・・上方付勢機構
11・・・クッションパッド
12・・・支杆
13・・・エアーシリンダ
13a・・・エアーシリンダ用シリンダ
13b・・・エアーシリンダ用ピストンヘッド
13c・・・下方空間
14・・・ラックピニオン機構
14a・・・ラック杆
14b・・・ピニオン軸
15a・・・油室用シリンダ
15b・・・油室用ピストン
16・・・油室
17・・・サーボモータ
18・・・減速機
19,20a,20b,20c,20d・・・エアータンク
19a・・・エアー圧調整装置
21・・・上型
22・・・下型
24・・・スライド
26・・・ライナ
27・・・ボルスタ
100,200・・・ダイクッション装置
101,201・・・プレス機械
A・・・シリンダクッション力
Amax・・・最大のシリンダクッション力
C・・・慣性損失
H・・・ストローク
L・・・目減り
M・・・上方付勢クッション力
Mmax・・・最大の上方付勢クッション力
S・・・クッション力
S1・・・データ入力手段
S2・・・第1演算手段
S3・・・第2演算手段
V・・・速度
W・・・ワーク
Claims (5)
- プレス機械でワークをプレスする際の前記ワークに伝わる下方へのプレス力に対応して前記ワークを上方に付勢するクッション力を前記ワークの周縁に付加するダイクッション装置の制御方法であって、
該ダイクッション装置が、
クッションパッドと、該クッションパッドに連結された支杆に設けられ、該支杆を介して前記クッションパッドを上方に付勢するエアーシリンダ及び上方付勢装置と、前記エアーシリンダにエアー管を介して前記エアーシリンダのシリンダとピストンとにより区画される空間に開放されたエアータンクと、前記エアー管に設けられたバルブと、前記上方付勢装置を駆動させるための駆動源と、を備え、
前記バルブの開閉により、前記エアータンクから前記エアーシリンダへのエアーの供給が切換可能となっており、
前記ダイクッション装置のプレス速度に基づいて、慣性損失を算出し、下記式を満たす場合に前記バルブを閉じるダイクッション装置の制御方法。
Mmax<S+C−A
[式中、Mmaxは上方付勢装置による最大のクッション力(kN)を示し、Sはクッション力(kN)を示し、Cは慣性損失(kN)を示し、Aはエアーシリンダによるクッション力(kN)を示す。ただし、Cは正の値である。] - 前記エアーシリンダのクッション力の初期設定が、プレス時に直動運動する部位の質量に対応するように設定されている請求項1記載のダイクッション装置の制御方法。
- 前記上方付勢装置が、支杆の下端に接続されたラック杆と、該ラック杆に噛合されるピニオン軸とからなるラックピニオン機構である請求項1又は2に記載のダイクッション装置の制御方法。
- 前記駆動源が、サーボモータである請求項1〜3のいずれか一項に記載のダイクッション装置の制御方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の制御方法によって制御されているダイクッション装置を備えるプレス機械。
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