JP5070057B2 - 新規な蛍光標識化合物 - Google Patents
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Description
放射性同位体による標識は高感度ではあるが、貯蔵、使用、処理に際して危険を伴う欠点がある。また、酵素による標識は、酵素の分子量が大きく、温度などの外的要因による影響を受けやすく不安定であり、再現性に劣るという問題点や、酵素標識剤を被標識物に結合させることにより、酵素および被標識物の活性が低下してしまうという欠点がある。
また、蛍光による標識法としては、有機蛍光色素による標識(例えば、フルオレセイン、ローダミン、ダンシルクロライドなど)が知られているが、励起光の散乱によるバックグラウンドノイズやサンプル中に存在する他の共存物質の蛍光に由来するバックグラウンドノイズにより標識剤からの蛍光検出が大きく阻害され、高感度の測定が困難になるという欠点がある。
このような希土類蛍光錯体として2,2’:6’,2”−テルピリジン誘導体が報告されている(特許文献1参照)。また、このような2,2’:6’,2”−テルピリジン誘導体を放射性金属種と錯体化させて、放射性試薬として使用されることも報告されている(特許文献2参照)。
一方、本発明者らはすでに、アミノ基を持つタンパク質を直接標識できるクロロスルホニル化4座β-ジケトン型の標識剤を開発し、それらを用いた時間分解蛍光測定法への応用を検討してきた(特許文献3及び4参照。)。しかし、上記クロロスルホニル化4座β-ジケトン型の標識剤は一般的に水溶性が乏しいため、小さい生体物質(例えば、アミノ基を持つ分子量の小さい核酸塩基やそのほかの有機化合物)を標識すると、標識された生体物質体の水溶性が低下し、溶液中から沈殿してしまうという欠点があった。また、キレート力が十分でないため、使用できるバッファーの種類に制限があるという欠点もあった。 本発明者らは、さらに多くの希土類蛍光錯体標識剤を開発し、それらを用いた時間分解測定法への応用を検討してきた。これまで、開発した N,N,N’N’−{2,6−ビス(3’−アミノメチル−1’−ピラゾリル)−4−フェニルピリジン}四酢酸(以下、BPTAと略す。)は、テルビウムおよびユウロピウムと錯体を形成し強い蛍光を発するが、励起極大波長が320nmと短かった。また、{2,2’,2’’,2’’’−{4’−{[(4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノ]ビフェニル−4−イル}− 2,2’:6’,2’’−テルピリジン−6,6’’−ジイル}ビス(メチレンニトリロ)}四酢酸}(以下、DTBTAと略す。)は、340nm以上で励起可能だが、ユウロピウムとのみ蛍光性の錯体を形成するだけであった(特許文献5参照)。
また、DNAの分析においては、DNAプローブ法がよく用いられている。この方法は2種あるいはそれ以上の標識剤を用いて標準試料と検体とを標識し、これらを同一プローブDNAに与え、競合的ハイブリダイゼーションの結果によって検体中のDNA量を定量している。このような方法においては、複数の希土類イオンと蛍光を発する錯体を形成することができることが求められている。
さらに、本発明は、被標識物質(例えば、生体由来物質、生理活性物質等)との結合基を有し、複数の希土類イオンと容易に錯体を形成し、更に該錯体が水溶液中で充分に安定であり、バッファーの種類によらず、十分な蛍光強度と長い蛍光寿命を有するという特徴を有する新規な標識試薬と、該標識試薬と希土類金属イオンとからなる錯体、該錯体を含んでなる蛍光標識剤、及び該蛍光標識剤を用いた蛍光測定法等を提供することを目的とする。
で表される化合物である希土類蛍光錯体に関する。さらに詳細には、本発明は、希土類蛍光錯体が、次の一般式(III)
で表される化合物である希土類蛍光錯体に関する。
また、本発明は、前記した本発明の希土類蛍光錯体を含んでなる標識される物質を蛍光標識するための蛍光標識剤、当該蛍光標識剤を用いた蛍光標識をする方法、当該蛍光標識剤で標識された生体由来物質又は生理活性物質、当該蛍光標識剤で蛍光標識された物質の蛍光を測定することからなる蛍光測定法、及び当該蛍光標識剤を含有してなることを特徴とする蛍光測定用キットに関する。
さらに、本発明は、次の一般式(I)
で表される化合物、又はその塩に関する。
また、本発明は、テルビウムと錯体を形成することができ、当該錯体は蛍光を発することができ、かつ当該錯体が340nm以上の波長の光で励起可能となる蛍光錯体を形成するための配位子を有するテルビウム錯体に関する。
本発明をより詳細に説明すれば、本発明は以下のとおり説明される。
(1)次の一般式(I)
で表される化合物、又はその塩。
(2)一般式(I)のR2及びR3が、カルボキシメチル基である前記(1)に記載の化合物、又はその塩。
(3)一般式(I)のR1のアミノ基の置換基が、標識される物質との結合のための基である前記(1)又は(2)に記載の化合物、又はその塩。
(4)少なくとも2種類の希土類金属と錯体を形成することができ、当該錯体は蛍光を発することでき、かつ当該錯体が340nm以上の波長の光で励起可能となる希土類蛍光錯体を形成するための配位子を有する希土類蛍光錯体。
(5)4−ビフェニル−2,2’:6’,2’’−テルピリジン骨格と、2,6−ビス(3’−アミノメチル−1’−ピラゾリル)ピラジン骨格とが結合してなる環状配位子を有する希土類蛍光錯体。
(6)希土類蛍光錯体が、次の一般式(II)
で表される化合物である希土類蛍光錯体。
(7)希土類蛍光錯体が、次の一般式(III)
で表される希土類蛍光錯体。
(8)一般式(I)のR1のアミノ基の置換基が、標識される物質との結合のための基である前記(6)又は(7)のいずれかに記載の希土類蛍光錯体。
(9)希土類蛍光錯体における希土類金属が、ユーロピウム若しくはテルビウムである前記(4)〜(8)のいずれかに記載の希土類蛍光錯体。
(10)テルビウムと錯体を形成することができ、当該錯体は蛍光を発することができ、かつ当該錯体が340nm以上の波長の光で励起可能となる蛍光錯体を形成するための配位子を有するテルビウム錯体。
(11)テルビウム錯体の配位子が、次の一般式(IV)
で表される化合物である前記(10)に記載のテルビウム錯体。
(12)テルビウム錯体の配位子が、次の一般式(I)
で表される化合物である前記(10)又は(11)に記載のテルビウム錯体。
(13)前記(4)〜(12)のいずれかに記載の希土類蛍光錯体を含んでなる標識される物質を蛍光標識するための蛍光標識剤。
(14)標識される物質が、生体由来物質又は生理活性物質である前記(13)に記載の蛍光標識剤。
(15)生体由来物質又は生理活性物質が、酵素、タンパク質、ホルモン、ペプチド、核酸、核酸プローブ、オリゴヌクレオチド、又は薬剤(抗生物質を含む)である前記(14)に記載の蛍光標識剤。
(16)前記(4)〜(12)のいずれかに記載の希土類蛍光錯体を、標識される物質との結合のための基を介して結合させることを特徴とする標識される物質を蛍光標識する方法。
(17)前記(13)に記載の蛍光標識剤で標識された生体由来物質又は生理活性物質。
(18)生体由来物質又は生理活性物質が、酵素、タンパク質、ホルモン、ペプチド、核酸、核酸プローブ、オリゴヌクレオチド、又は薬剤(抗生物質を含む)である前記(17)に記載の標識した生体由来物質又は生理活性物質。
(19)前記(13)に記載の蛍光標識剤を、標識される物質との結合のための基を介して標識される物質に結合させて、当該標識される物質を標識化して、蛍光標識剤の蛍光を測定することからなる蛍光測定法。
(20)蛍光測定法が、時間分解蛍光測定法である前記(19)に記載の蛍光測定法。
(21)時間分解蛍光測定法が、時間分解蛍光イムノアッセイ、時間分解蛍光DNAハイブリダイゼーションアッセイ、時間分解蛍光顕微鏡イメジング、又は時間分解蛍光クロマトグラフイーである前記(20)に記載の蛍光測定法。
(22)前記(13)に記載の蛍光標識剤を含有してなることを特徴とする蛍光測定用キット。
本発明の希土類蛍光錯体における配位子は、次の一般式(V)、
で表される4−ビフェニル−2,2’:6’,2’’−テルピリジン骨格における左右のピリジン環と、次の一般式(VI)、
一般式(III)で表されるテルピリジン骨格における左右のピリジン環と、一般式(IV)で表されるピラジン骨格とを結合させる基としては、希土類金属が配位することができるための適当な距離を確保することができ、かつ両方の骨格を化学的に結合することができ、そして化学物質としての安定性を維持できる基であれば特に制限はない。好ましい環状の化合物としては、次の一般式(IV)、
で表される大環状の化合物が例示される。
L1及びL2における、少なくとも1個の炭素原子が窒素原子に置換されていてもよい炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数1〜6、好ましくは2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、又はこれらのアルキレン基の中の炭素原子の少なくとも1個が窒素原子で置換された基が挙げられる。窒素原子で置換された基としては、一般式、
−R4−N(R5)−R6−
(式中、R4、R6はそれぞれ独立して炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、R5は、希土類イオンの陽電荷を中和するための陰性の基を有してもよい炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。)
で表される基が例示される。当該一般式における、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などの炭素数1〜5、好ましくは1〜3の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が挙げられる。特に好ましい基としてはメチレン基、エチレン基などが挙げられる。
また、一般式(V)又は(IV)におけるR1としては、水素原子であってもよいが、本発明の希土類蛍光錯体を蛍光標識剤として使用する場合に標識される物質に結合させるための官能基となることができる基が好ましい。好ましい官能基としては、ニトロ基やアミノ基のような窒素原子を含有する基が挙げられるがこれに限定されるものではない。
本発明の好ましい希土類蛍光錯体における配位子としては、前記した一般式(IV)又は一般式(I)で表される化合物又はその塩が挙げられる。
前記した一般式(I)又は一般式(IV)における置換基R1は、ビフェニル環上の置換基であることを示しており、ビフェニル環のどちらの環に置換した置換基であってもよい。また、置換する位置が特定されていてもよいし、種々の置換位置に置換した置換基の混合物であってもよい。さらに、置換基R1は、1つであってもよいし、必要によっては2つ以上存在してもよい。このような置換基が2つ以上存在する場合には、それらは同一のものであってもよいし、それぞれ異なる種類の置換基であってもよい。
ここで、ハロゲノアセチルアミノ基、(4,6−ジハロゲノ−1,3,5−トリアゼン−2−イル)アミノ基におけるハロゲノ基としては、−Cl、−Br、−I等が挙げられる。
前記した一般式(I)のR2及びR3におけるカルボキシアルキル基としては、炭素数1〜5、好ましくは1〜3の直鎖状又は分岐状のアルキル基にカルボキシル基が置換した基であり、例えば、カルボキシメチル基、1−カルボキシエチル基、2−カルボキシエチル基などが挙げられる。好ましいカルボキシアルキル基としては、カルボキシメチル基が挙げられる。
本発明の一般式(I)で表される化合物の塩としては、カルボキシル基などの酸性の基についてはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の塩などが例示され、アミノ基などの塩基性の基については塩酸、硫酸などの酸の塩が例示される。
本発明の希土類金属錯体は、少なくとも2種類の希土類金属と錯体を形成することができ、当該錯体は蛍光を発することでき、かつ当該錯体が340nm以上の波長の光で励起可能となる希土類蛍光錯体を形成するための配位子を有することを特徴とするものであるが、テルビウム錯体については、テルビウムと錯体を形成することができ、当該錯体は蛍光を発することができ、かつ当該錯体が340nm以上の波長の光で励起可能となる蛍光錯体を形成するための配位子を有するものであればよい。このようなテルビウム錯体における配位子としては前記してきた一般式(I)又は一般式(IV)で表される化合物などを挙げることができる。
本発明の蛍光標識剤は、本発明の希土類金属錯体を含んでなるものであるが、本発明の蛍光標識剤は、希土類金属錯体として単離されたもの、当該希土類金属錯体を含む溶液、及び希土類金属イオンと本発明の一般式(I)又は一般式(IV)で表される化合物とを含んでなる溶液の何れをも包含する。
本発明における蛍光標識方法は、本発明の前記した蛍光標識剤を用いることを特徴とするものであり、前記した本発明の蛍光標識剤を用いて、種々の被標識物質を蛍光標識することにより行うことができる。例えば、(1)先ず被標識物質と本発明の一般式(I)又は一般式(IV)で表される化合物とを反応させ、その後に適当な希土類金属イオンを作用させて、錯体を形成させることにより蛍光標識する方法、(2)本発明の一般式(I)又は一般式(IV)で表される化合物と希土類金属イオンと被標識物質とを同時に反応させて、錯体形成と蛍光標識とを併行して行う方法とがあるが何れの方法で行うかは任意である。
本発明の一般式(I)〜一般式(IV)で表されるいずれかの化合物と被標識物質とを結合させる方法としては、一般式(I)〜(IV)のR1における置換されていてもよいアミノ基と、被標識物質が有する反応性の官能基、例えば、アミノ基や水酸基などとを、公知の方法により反応させて行うことができる。二価性の試薬(架橋剤)を用いて、本発明の蛍光標識剤又はその配位子のアミノ基と被標識物質とを架橋して標識するか、あるいは当該アミノ基をもう一段階誘導体化させて、標識することができる。このような架橋剤としては、例えば、次のような化合物、
本発明における被標識物質に特に制約はなく、生体由来物質、生理活性物質、その他の化学物質等に広く適用され得る。また、被標識物質の分子サイズ、存在形態(溶液又は固相)、単一か組成物か等には制限されない。本発明の蛍光標識剤により標識される被標識物質の条件としては、該被標識物質の一部に、本発明に係る蛍光標識剤と共有結合し得る反応性の基が少なくとも1つあればよい。或いは、斯かる基を導入することが可能な基を有するものであればよい。
このような、本発明の蛍光標識剤により標識可能な生体由来物質、生理活性物質としては、例えば、酵素、タンパク質、ペプチド(オリゴペプチド、ポリペプチド)、糖、糖タンパク質、ホルモン、リピッド、核酸、核酸誘導体、核酸プローブ、オリゴヌクレオチド、細胞、脂肪類化合物、アミノ酸、薬物(抗生物質を含む)等が挙げられる。
また、タンパク質の具体例としては、抗体及びその誘導体、抗原およびその誘導体、アビジン(ストレプトアビジンを含む)、血清アルブミン、種々のハプテン、ホルモン、プロテインA、プロテインG等が挙げられる。
その他の化学物質としては、例えば、農薬、日常化学品、化学試薬、工業化学品等が挙げられる。
本発明における蛍光測定法は、前記した本発明の一般式(I)で表される化合物と希土類金属イオンとからなる希土類金属錯体を蛍光標識剤として用いて測定を行うか、或いは、前記した本発明の一般式(I)で表される化合物と希土類金属イオンとを用いて、種々の被標識物質を蛍光標識して測定を行うことを特徴とするものである。
蛍光測定法の代表的なものとしては、例えば時間分解蛍光測定法が挙げられる。
時間分解蛍光測定法の応用例としては、例えば、時間分解蛍光免疫測定法やDNAハイブリダイゼーションアッセイ法、クロマトグラフイー法、蛍光顕微鏡法等を挙げることができる。
本発明の蛍光測定法用試薬は、生体由来物質、生理活性物質、その他の化学物質等の測定に使用し得るが、特に、生体由来物質、生理活性物質の測定により効果的である。
生体由来物質、生理活性物質の具体例は、先に記載した通りである。
また、本発明における試薬のキットは、前記した本発明の蛍光測定法に用いられる試薬のキットであり、前記した本発明の一般式(I)で表される化合物と希土類金属イオンとからなる希土類金属錯体を蛍光標識剤として含んでなるか、或いは、前記した本発明の一般式(I)で表される化合物と希土類金属イオンとを含んでなるものである。
本発明の一般式(I)で表される化合物の製造方法を、R1がアミノ基で、R2及びR3が同時にカルボキシメチル基である場合を例にして反応スキームで示すと以下のようになる。
得られた、環状配位子化合物5のエステル基を加水分解することにより、本発明の一般式(I)で表される化合物であるニトロ体6を製造することができる。また、この化合物5又は6のニトロ基を接触還元などの方法により還元することにより、対応するアミノ体を製造することができる。得られたアミノ体におけるアミノ基を適当な置換基で置換することにより、対応する置換基で置換されたアミノ体を製造することができる。
この方法又はこれに準じた方法により本発明の一般式(I)で表される化合物を製造することができる。この化合物は、必要により、適宜塩にすることもできる。
このようにして製造された本発明の一般式(I)で表される化合物のエタノールなどの溶媒に溶解し、この溶液に希土類金属イオンを有する化合物、例えば、塩化希土類金属化合物などを添加して混合することにより、本発明の一般式(II)で表される希土類金属錯体7を製造することができる。さらに、必要により、希土類金属錯体7のニトロ基を接触還元などの方法により還元することにより、対応するアミノ体8を製造することができる。得られたアミノ体におけるアミノ基を適当な置換基で置換することにより、対応する置換基で置換されたアミノ体を製造することができる。
また、本発明の一般式(I)で表される化合物は、共有結合形成により被標識物質(具体的には、アミノ基やメルカプト基等を有する酵素、タンパク質、ペプチド(オリゴペプチド、ポリペプチド)、ホルモン、核酸プローブ、オリゴヌクレオチド、薬物(抗生物質を含む)及びその他の有機化合物等)と非常に安定な標識複合体を形成し、それを希土類イオンと反応させることにより非常に安定な希土類蛍光錯体標識複合体が得られる。その標識複合体も同様に非常に長い蛍光寿命と強い蛍光を有し、時間分解蛍光イムノアッセイやDNAハイブリダイゼーションアッセイ等に直接応用可能である。
前記した製造チャートにおける化合物4で示される化合物([4'−(ニトロ−ビフェニル−4'''−イル)−2,2':6',2''−ターピリジン−6,6''−ジイル]ビス(ブロモメチル))の製造
特許文献5(WO 2003/076938号公報)に記載された方法により以下のようにして製造した。
N−[2−(ピリド−2'−イル)−2−オキソエチル]ピリジニウムアイオダイド(16.3g,50mmol)、(E)−3−(ビフェニル−4''−イル)−1−(ピリド−2'−イル)−2−プロペノン(14.26g,50mmol)、及び酢酸アモニウム(23.1g)を500mlの乾燥メタノールに加え、撹拌下、24時間還流した。反応液を冷却して、沈澱を濾取し、冷メタノールで十分洗浄した後、アセトニトリルから再結晶し、目的の化合物を得た。真空乾燥後の収率は49.3%であった。
元素分析結果(C27H19N3):
計算値(%), C = 84.13, H = 4.97, N = 10.90。
実測値(%), C = 84.01, H = 4.82, N = 10.88。
更に、1H NMRで生成物は目的化合物であることを確認した。
1H NMR(CDCl3): δ
8.80 (s, 2H), 8.75 (d, J=4.6Hz, 2H), 8.69 (d, J= 7.8Hz, 2H),
8.01 (d, J=8.6Hz, 2H), 7.89 (t, J=7.6Hz, 2H),
7.75 (d, J=8.2Hz, 2H), 7.68 (d, J=6.9Hz, 2H),
7.48 (t, J=6.9Hz, 2H), 7.41-7.33 (m, 3H)。
前記(1)で得られた化合物(19.27g,50mmol)を700mlのCH2Cl2に溶かした。これに、50gの3−クロロペルオキシ安息香酸を加え、室温で20時間を撹拌した。反応液を300mlの10% Na2CO3水溶液で3回洗浄し、Na2SO4で有機相を乾燥した後、溶媒を減圧蒸去した。生成物を300mlのメタノールに溶かし、濾過により微量の不溶物を除いた後、減圧蒸留で溶媒を除去した。生成物をアセトニトリルでよく洗い、真空乾燥して目的の化合物を得た。収率は91.4%であった。1H NMRで生成物は目的化合物であることを確認した。
1H NMR(CDCl3): δ
9.29 (s, 2H), 8.38 (d, J=6.6Hz, 2H), 8.25 (d, J=8.2Hz, 2H),
7.94 (d, J=8.6Hz, 2H), 7.72 (d, J=8.6Hz, 2H),
7.66 (d, J=6.9Hz, 2H), 7.50-7.43 (m, 2H), 7.41-7.29 (m, 5H)。
450mlのCH2Cl2に、前記(2)で得られた化合物(15.65g,37.5mmol)と(CH3)3SiCN(37.2g,375mmol)を加え、室温で20分撹拌した後、塩化ベンゾイル150mmolを約20分を要して徐々に滴下した。反応液を室温で24時間撹拌した後、溶媒を減圧下半分まで留去した。残りの溶液に10% K2CO3 水溶液600 mlを加え、室温で1時間攪拌後、沈澱を濾取し、水で充分洗浄し、更に冷CH2Cl2で洗浄した後、真空乾燥して目的の化合物を得た。収率は80.8%であった。1H NMRで生成物は目的化合物であることを確認した。
1H NMR(DMSO−d6): δ
8.99 (d, J=7.6Hz, 2H), 8.75 (s, 2H), 8.31 (t, J=7.9Hz, 2H),
8.20 (d, J=7.6Hz, 2H), 8.10 (d, J=7.6Hz, 2H),
7.92 (d, J=8.2Hz, 2H), 7.78 (d, J=7.6Hz, 2H),
7.54-7.42 (m, 3H)。
H2SO4 90ml/CH3COOH 90ml/H2O 20mlの混合溶媒に、前記(3)で得られたニトリル体8.71g(20mmol)を加え、90−100℃で24時間撹拌した。反応溶液を800gの氷に加え、撹拌後、沈澱を濾取し、水とエタノールで充分洗浄した後、真空乾燥して、9.13gの加水分解物を得た。
氷−水で冷却した600mlの乾燥メタノールにチオニルクロライドSOCl2 24gを加え、15分間撹拌した後、上で得た加水分解物9.13gを加え、撹拌下24時間還流した。溶媒を減圧留去し、生成物を1000mlのクロロホルムCHCl3 に溶解し、15%のNaHCO3水溶液で有機層を充分洗浄した後、Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧留去し、生成物をシリカゲルカラム(展開溶媒:CH2Cl2−CH3OH =99:1w/w)で精製した。これをトルエンから再結晶し、目的の化合物を得た。収率は48.5%であった。
元素分析結果(C31H23N3O4):
計算値(%), C = 74.24, H = 4.62, N = 8.38。
実測値(%), C = 74.15, H = 4.55, N = 8.38。
更に、1H NMRで生成物は目的化合物であることを確認した。
1H NMR(CDCl3): δ
8.88 (s, 2H), 8.86 (d, J=7.9Hz, 2H), 8.20 (d, J=7.6Hz, 2H),
8.06 (d, J=7.9Hz, 2H), 8.00 (d, J=7.2Hz, 2H),
7.78 (d, J=6.6Hz, 2H), 7.70 (d, J=6.9, 2H), 7.52-7.30 (m, 3H),
4.07 (s, 6H)。
400mlの乾燥エタノールに、前記(4)で得られたメトキシカルボニル体(7.02g,14mmol)とNaBH4 3.02gを加え、室温で3時間撹拌した後、1時間環流した。溶媒を減圧留去し、生成物を200mlの飽和NaHCO3 水溶液に加え、撹拌下、沸騰まで加熱した。冷却後、沈澱を濾取し、水で充分洗浄した後、真空乾燥して目的の化合物を得た。収率は92.0%であった。1H NMRで生成物は目的化合物であることを確認した。
1H NMR(DMSO−d6): δ
8.75 (s, 2H), 8.55 (d, J=7.9Hz, 2H), 8.07-8.00 (m, 4H),
7.92 (d, J=8.2Hz, 2H), 7.78 (d, J=7.2Hz, 2H),
7.61 (d, J=7.9Hz, 2H), 7.57-7.50 (m, 2H), 7.46-7.40 (m, 1H),
5.57 (t, J=5.9Hz, 2H), 4.74 (d, J=4.6Hz, 4H)。
前記(5)で得られた化合物(1.78g,4mmol)を30mlの無水酢酸に加え、60℃で15時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、生成物に20mlの無水酢酸を加え、氷−水で外部冷却下、20mlの酢酸―3mlの発煙硝酸溶液を滴下した。氷−水で外部冷却下、2時間撹拌した後、更に室温で24時間撹拌した。反応液を250mlの水に加え、1時間撹拌した後、CHCl3 100mlで3回抽出した。CHCl3溶液を5%のNaHCO3水溶液で洗い、Na2SO4で乾燥した後、溶媒を減圧留去した。生成物に150mlのエタノール、10gのKOHと15mlの水を加え、室温で36時間撹拌した。反応液に300mlの水を加え、沈澱を遠心分離で収集し、5時間真空乾燥した後、水で充分洗浄した。真空乾燥して目的のニトロ体化合物を得た。収率は90.7%であった。1H NMRで生成物は目的化合物と4'−(2''''−ニトロ−ビフェニル−4'''−イル)−2,2':6',2''−ターピリジン−6,6''−ジヒドロキシメチルの混合物であることを確認した。
1H NMR(DMSO−d6): δ
8.81-8.79 (m, 2H), 8.61 (d, J=7.9Hz, 2H),
8.37 (d, J=7.2Hz, 1H), 8.17-8.03 (m, 6H), 7.88-7.80 (m, 1H),
7.75-7.58 (m, 4H), 4.78 (s, 4H)。
前記(6)で得られた化合物(1.78g,3.63mmol)をTHF200ml−DMF80ml混合溶媒に溶解し、PBr3 3.52gを加え、撹拌下6時間環流した。溶媒を減圧留去した後、生成物にCHCl3 300mlを加え、飽和Na2SO4 水溶液4x200mlで有機層を洗浄した後、更に、10%のNaHCO3 水溶液200mlで洗浄した。Na2SO4で有機相を乾燥し、溶媒を減圧留去し、生成物をシリカゲルカラム(展開溶媒:CH2Cl2−CH3OH=99.5:0.5v/v)で精製した。溶媒を減圧留去し、真空乾燥して目的のブロモメチル体化合物を得た。収率は56.3%であった。
元素分析結果(C29H20Br2N4O2):
計算値(%), C = 56.52, H = 3.27, N = 9.09。
実測値(%), C = 56.64, H = 3.32, N = 9.10。
質量分析結果 (FAB−MS):
m/e, 617.3(M+H+), 571.3(M−NO2)
更に、1H NMRで生成物は目的化合物と4'−(2''''−ニトロ−ビフェニル−4'''−イル)−2,2':6',2''−ターピリジン−6,6''−ジブロモメチルの混合物であることを確認した。
1H NMR(CDCl3): δ
8.70 (s, 1H), 8.69 (s, 1H), 8.57 (d, J=7.9Hz, 2H),
8.33 (d, J=8.8Hz, 1H), 8.10-8.00 (m, 6H),
7.95 (d, J=8.2Hz, 1H), 7.70-7.55 (m, 4H), 4.84 (s, 4H)。
3−メチルピラゾール(9.85g, 120 mmol)を乾燥THF150mlに溶解し、その後カリウム(4.7g, 120 mmol)を加え60℃で反応させた。カリウムが確認出来なくなった後、室温まで放冷した。次いで、2,6−ジクロロピラジン(4.46g, 30 mmol)を加えて4日間還流した後、放冷した後、水(75 ml)を加えた。減圧蒸留を行い、THFを留去した後、沈殿物を吸引濾取した。水で洗浄し、目的化合物を得た。収率は85.5%だった。1H NMRにより生成を確認した。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ
2.41 (s, 6H), 6.33 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 8.38 (d, J = 2.4 Hz, 2H),
9.08 (s, 2H)
実施例1で製造した化合物1(2.16g, 9mmol)、及びN−ブロモコハク酸イミド(3.2g, 18 mmol)を四塩化炭素(200 ml)に加えた。この混合溶液に過酸化ベンゾイル(50 mg)を加え20時間還流した。反応溶液を室温まで放冷した後、水でさらに冷却した。固体を吸引濾別し、濾液を溶媒が10〜20mLになるまで減圧濃縮した。冷凍庫で冷却(1時間)し、生じた沈殿を吸引ろ過により濾取し、ヘキサンで洗浄した。真空乾燥を1時間行った後、四塩化炭素より再結晶を行い、ヘキサンで洗浄し、減圧乾燥して目的化合物を得た。収率は30.1%だった。1H NMRにより生成を確認した。
1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ
4.57 (s, 4H), 6.62 (d, J = 2.7 Hz, 2H), 8.44 (d, J = 2.7 Hz, 2H),
9.16 (s, 2H)
実施例2で製造した化合物2(0.76g, 2.0 mmol)、及びグリシンエチルエステル塩酸塩(1.4g, 10 mmol)を乾燥アセトニトリル(150 ml)に加えた。その後に炭酸カリウム(2.1g, 15 mmol)を加え、24時間還流攪拌した。生じた沈殿を吸引濾別し、少量のクロロホルムで洗浄し、濾液より溶媒を減圧留去した。クロロホルム200mLに再び溶解し、10%塩化ナトリウム水溶液(200 ml×3)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。薄層クロマトグラフ法(クロロホルム:メタノール=95:5)で精製し目的化合物を得た 。収率は16.2%だった。1H NMRにより生成の確認を行った。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ
1.29 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 2.17 (s, 2H), 3.51 (s, 4H), 3.96 (s, 4H),
4.21 (q, J = 7.2 Hz, 4H) 6.51 (d, J = 2.4 Hz, 2H),
8.43 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 9.14 (s, 2H)
前記した参考例1の方法により製造された6,6”−ジブロモメチル−4’−(ニトロビフェニル−4−イル)−2,2’:6’,2”−テルピリジン[化合物4](186 mg, 0.3 mmol)と、実施例3で製造した化合物3(133 mg, 0.3 mmol)とを乾燥アセトニトリル(150 ml)に加えた。炭酸ナトリウム(315mg,3mmol)を加え、24時間還流攪拌した。沈殿を吸引濾別し、少量のクロロホルムで洗浄し、濾液より溶媒を減圧留去したクロロホルム200mLに再び溶解し、10%塩化ナトリウム水溶液(200 ml×3)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフ法(シリカゲル、クロロホルム‐メタノール=95:5 v/v)で精製して目的化合物を得た。収率は50.2%だった。
実施例4で製造した化合物5(150 mg, 0.15 mmol)、及び水酸化カリウム(400 mg, 6.0 mmol)を少量のエタノールと2mLの水に加え、24時間還流攪拌した。溶媒を減圧留去した後、少量の水に再び溶解させた。この溶液に3M塩酸を少しずつ滴下し、pH1以下に調整した。室温で3時間攪拌した後、遠心分離により沈殿物を得た。1%塩酸で洗浄した後乾燥して目的化合物を得た。収率は79.2%だった。ESI−MSにより生成の確認を行った。
ESI−Mass: m/e 841.5 (M+H+)+
実施例5で製造した化合物6(84 mg 0.1 mmol)と塩化ユーロピウム六水和物(75.4mg 0.5mmol)をメタノール30mLに加え、24時間還流攪拌した。その後に、溶媒を減圧留去した。少量のメタノールに溶解させ、ジエチルエーテルを用いて再沈殿を行い、一晩冷蔵庫で静置させた。沈殿物を遠心分離により収集し、乾燥して目的化合物を得た。収率は50.7%だった。ESI−MSにより生成の確認を行った。
ESI−Mass: m/e 991.3 (M−Cl−)+
実施例6で製造した化合物7−Eu(45 mg 0.05 mmol)、及び10%Pd/Cを乾燥メタノール(20ml)に加えた。この溶液を凍結−脱気−融解を繰り返し、溶存酸素を除去した。水素雰囲気下、室温で6時間攪拌し、触媒を濾別し、溶液を減圧乾固し、目的化合物を得た。ESI−MSにより生成の確認を行った。
ESI−Mass: m/e 961.3 (M−Cl−)+
実施例5で製造した化合物6(168 mg 0.2 mmol)と塩化テルビウム六水和物(150 mg 0.5mmol)をメタノール80 mlに加え、24時間還流攪拌した。その後に、溶媒を減圧留去した。少量のメタノールに溶解させ、ジエチルエーテルを用いて再沈殿を行い、一晩冷蔵庫で静置させた。沈殿物を遠心分離により収集し、乾燥して目的化合物を得た。ESI−MSにより生成の確認を行った。
ESI−Mass: m/e 997.3 (M−Cl−)+
実施例8で製造した化合物7−Tb(45 mg 0.05 mmol),10% Pd/Cを乾燥メタノール(20ml)に加えた。この溶液を凍結?脱気?融解を繰り返し、溶存酸素を除去した。水素雰囲気下、室温で6時間攪拌し、触媒を濾別し、溶液を減圧乾固し、目的化合物を得た。ESI−MSにより生成の確認を行った。
ESI−Mass: m/e 967.3 (M−Cl−)+
この結果、本発明の希土類金属錯体は極めて優れた吸光特性、蛍光特性を有していることがわかった。
したがって、本発明は、蛍光イムノアッセイやDNAハイブリダイゼーションアッセイ等の蛍光イムノアッセイ、特に時間分解蛍光イムノアッセイにおいて有用な蛍光標識剤、その材料を提供するものであり、産業上の利用可能性を有している。
Claims (19)
- 一般式(I)のR2及びR3が、カルボキシメチル基である請求項1に記載の化合物、又はその塩。
- 一般式(I)のR1のアミノ基の置換基が、標識される物質との結合のための基である請求項1又は2に記載の化合物、又はその塩。
- 一般式(I)のR1のアミノ基の置換基が、標識される物質との結合のための基である請求項4又は5に記載の希土類蛍光錯体。
- 希土類蛍光錯体における希土類金属が、ユーロピウム若しくはテルビウムである請求項4〜6のいずれかに記載の希土類蛍光錯体。
- 請求項4〜9のいずれかに記載の希土類蛍光錯体を含んでなる標識される物質を蛍光標識するための蛍光標識剤。
- 標識される物質が、生体由来物質又は生理活性物質である請求項10に記載の蛍光標識剤。
- 生体由来物質又は生理活性物質が、酵素、タンパク質、ホルモン、ペプチド、核酸、核酸プローブ、オリゴヌクレオチド、又は薬剤(抗生物質を含む)である請求項11に記載の蛍光標識剤。
- 請求項4〜9のいずれかに記載の希土類蛍光錯体を、標識される物質との結合のための基を介して結合させることを特徴とする標識される物質を蛍光標識する方法。
- 請求項10に記載の蛍光標識剤で標識された生体由来物質又は生理活性物質。
- 生体由来物質又は生理活性物質が、酵素、タンパク質、ホルモン、ペプチド、核酸、核酸プローブ、オリゴヌクレオチド、又は薬剤(抗生物質を含む)である請求項14に記載の標識した生体由来物質又は生理活性物質。
- 請求項10に記載の蛍光標識剤を、標識される物質との結合のための基を介して標識される物質に結合させて、当該標識される物質を標識化して、蛍光標識剤の蛍光を測定することからなる蛍光測定法。
- 蛍光測定法が、時間分解蛍光測定法である請求項16に記載の蛍光測定法。
- 時間分解蛍光測定法が、時間分解蛍光イムノアッセイ、時間分解蛍光DNAハイブリダイゼーションアッセイ、時間分解蛍光顕微鏡イメジング、又は時間分解蛍光クロマトグラフイーである請求項17に記載の蛍光測定法。
- 請求項10に記載の蛍光標識剤を含有してなることを特徴とする蛍光測定用キット。
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