JP5064875B2 - 電子写真感光体の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層とが積層された電子写真感光体の製造方法であって、前記表面層の形成において、1つ目のスプレーガンで前記感光層を形成する樹脂に対して溶解性を有する溶媒を感光層に塗布する溶媒塗布工程と、前記溶媒を塗布した感光層に前記溶媒が乾燥しない間に2つ目のスプレーガンで溶媒を塗布した感光層に表面層塗工液を塗布する表面層塗工液塗布工程を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
好ましい本発明は、前記1つ目のスプレーガンと前記2つ目のスプレーガンとを、10cm以下の間隔で配置し、前記感光層表面上を移動させながら、前記溶媒、前記表面層塗工液の順に連続して塗布することを特徴とする前記電子写真感光体の製造方法である。
前記1つ目のスプレーガンで塗布される溶媒は、0.02〜0.20ml/sで噴霧されることを特徴とする前記電子写真感光体の製造方法である。
好ましい本発明は、前記感光層に塗布する溶媒と、前記感光層塗工液の溶媒とは、同一の成分を含むことを特徴とする前記電子写真感光体の製造方法である。
好ましい本発明は、前記表面層塗工液塗布工程の後で、表面層塗工液をさらに1回以上塗布する表面層塗工液再塗布工程を含むことを特徴とする前記電子写真感光体の製造方法である。
以下に本発明で用いた、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)と電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)を含有する架橋表面層塗布液の構成材料について説明する。
(ラジカル重合性モノマー(イ))
電荷輸構送造を有しない3官能以上のとしては、例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、かつラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
CH2=CH−X1− ・・・一般式(1)
ただし、前記一般式(1)中、X1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R30)−基(ただし、R30は、水素原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)、又は−S−基を表す。
これらの置換基としては、具体的には、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基、等が挙げられる。
CH2=C(Y)−X2− ・・・一般式(2)
ただし、前記一般式(2)中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR31基(ただし、R31は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、)又は−CONR32R33(ただし、R32及びR33は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表し、互いに同一又は異なっていてもよい。)、また、X2は前記一般式(1)のX1と同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y,X2の少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。
本発明において使用する上記ラジカル重合性モノマー(イ)としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、HPA変性(アルキレン変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性(エチレンオキシ変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性(プロピレンオキシ変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性(エピクロロヒドリン変性)グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは、単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。前記変性を行なった理由はモノマーの粘度を下げ、扱い易くするためである。
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)は、例えばトリアリールアミン構造、ヒドラゾン構造、ピラゾリン構造、カルバゾール構造などの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しており、且つラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、先にラジカル重合性モノマーで示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。また、電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が、効果が高い。
複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等。
(2)アルキル基、好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、更に好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基には更にフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−ORa)であり、Raは(2)で定義したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基またはアリールメルカプト基であり、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等。
B1−Ar5−CH=CH−Ar6−B2 ・・・一般式(6)
Ar5は置換基を持つ又は無置換の芳香族炭化水素骨格からなる一価基または二価基を表す。芳香族炭化水素骨格としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、ビフェニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、ベンジル基、ハロゲン原子が挙げられる。また、上記アルキル基、アルコキシ基は、さらにハロゲン原子、フェニル基を置換基として有していても良い。
R13、R14のアシル基としてはアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
R13、R14の置換もしくは無置換のアルキル基はAr5の置換基で述べたアルキル基と同様である。
R13、R14の置換もしくは無置換のアリール基は、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基に加えて下記一般式(8)で表される基を挙げることができる。
R21のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
R21のアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジベンジルアミノ基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
アリール基は、一般式(7)におけるR13、R14で定義されたアリール基と同様である。アリレン基は、そのアリール基から誘導される二価基である。
B1〜B4は、一般式(6)におけるB1、B2と同様である。uは0〜5の整数、vは0〜4の整数を表す。
本発明で製造される電子写真感光体を図2に基づいて説明する。
導電性支持体(31)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体(31)として用いることができる。
次に感光層について説明する。感光層は積層構造でも単層構造でもよい。積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層のそれぞれについて述べる。
(電荷発生層)
電荷発生層(34)は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
電荷輸送層(35)は電荷輸送機能を有する層であり、電荷輸送機能を有する電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層(34)上に塗布、乾燥することにより形成する。電荷輸送物質としては、前記電荷発生層(34)で記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送層には、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。電荷輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が適当である。
単層構造の感光層(32)は、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層であり、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶媒に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。電荷発生物質の分散方法、それぞれ電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤は前記電荷発生層(34)、電荷輸送層(35)において既に述べたものと同様なものが使用できる。結着樹脂としては、先に電荷輸送層(35)の説明で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層(34)で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。単層構造の感光層中に含有される電荷発生物質は感光層全量に対し1〜30質量%が好ましく、感光層に含有される結着樹脂は全量の20〜80質量%、電荷輸送物質は10〜70質量%が良好に用いられる。また、かかる感光層の膜厚は、5〜30μm程度が適当であり、好ましくは10〜25μm程度が適当である。
本発明の感光体の製造方法においては、導電性支持体(31)と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、表面架橋層、感光層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3'−ビス(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェロール類など。
N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3'−チオジプロピオネートなど。
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
次に図3に基づいて本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置とは、上述の本発明の製造方法で製造した感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経てトナー画像を形成した後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び必要に応じて感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる画像形成方法、並びにこれらの工程を実現する手段を備えた画像形成装置である。場合により、静電潜像を直接転写体に転写し現像する画像形成方法等では、感光体に配した上記プロセスを必ずしも有するものではない。
本発明における電荷輸送性構造を有する化合物は、例えば特許第3164426号公報記載の方法にて合成される。下記に電荷輸送性構造を有する化合物の製造方法の一例を示す。
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式B)の合成
メトキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式A)113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間で滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し反応を終了させた。この反応液にトルエン約1.5Lを加え室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして下記構造式Bの白色結晶88.1g(収率=80.4%、融点:64.0〜66.0℃、元素分析値(%):表13に示す。)を得た。
上記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(構造式B)82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g,水:100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌し反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして例示化合物NO.54の白色結晶80.73g(収率=84.8%、融点:117.5〜119.0℃)を得た。元素分析結果(%)を以下に示す。
(1)2−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルの調製
かき混ぜ装置、温度計、滴下漏斗をつけた反応容器に、2−ヒドロキシベンジルアルコール(東京化成品製)38.4g、o−キシレン80mlを入れ、窒素気流下、亜リン酸トリエチル(東京化成品製)62.8gを80℃でゆっくり滴下し、さらに同温度で1時間反応を行った。その後、減圧蒸留により、生成したエタノール、溶媒のo−キシレン、未反応の亜リン酸トリエチルを除去し、66gの2−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルを得た(沸点 120.0℃/1.5mmHg)(収率90%)。
かき混ぜ装置、温度計、滴下漏斗をつけた反応容器に、カリウム−tert−ブトキサイド14.8g、テトラヒドロフラン50mlを入れ、窒素気流下、2−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル9.90gと4−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)ベンズアルデヒド5.44gとをテトラヒドロフランに溶解させた溶液を室温でゆっくり滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。その後、水冷下、水を加え、次いで2規定の塩酸水溶液を加えて酸性化したのち、テトラヒドロフランをエバポレーターにより除き、粗生成物をトルエンで抽出した。トルエン相を水、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて脱水した。ろ過後、トルエンを除いてオイル状の粗収物を得、さらにシリカゲルによりカラム精製を行った後、ヘキサン中で晶析させ、5.09gの2−ヒドロキシ−4'−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベンを得た(収率72%、融点136.0〜138.0℃)。
かき混ぜ装置、温度計、滴下漏斗をつけた反応容器に、2−ヒドロキシ−4'−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベン14.9g、テトラヒドロフラン100ml、12%濃度の水酸化ナトリウム水溶液21.5gを入れ、窒素気流下、5℃でアクリル酸クロリド5.17gを30分かけて滴下した。その後、同温度で3時間反応させた。反応液を水にあけ、トルエンで抽出した後、濃縮してシリカゲルによるカラム精製を行った。得られた粗収物をエタノールで再結晶し、黄色針状晶の4'−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベン−2−イルアクリレート(例示化合物NO.109)13.5gを得た。(収率79.8%、融点104.1〜105.2℃)元素分析(%)結果を以下に示す。
実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において使用する「部」は、特に断らない限りすべて質量部を表わす。
(実施例1)
φ30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、3.0μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmの電荷輸送層を形成した。
[下引き層用塗工液]
アルキッド樹脂: 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂: 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン: 40部
メチルエチルケトン: 50部
[電荷発生層用塗工液]
下記構造式(I)のビスアゾ顔料: 2.5部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC製): 0.5部
シクロヘキサノン: 200部
メチルエチルケトン: 80部
ビスフェノールZポリカーボネート: 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
下記構造式(II)の低分子電荷輸送物質: 7部
テトラヒドロフラン: 100部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液: 0.2部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
[架橋表面層用塗工液]
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物: 10部
例示化合物NO.54(分子量:419、官能基数:1官能)
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー: 10部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(日本化薬製、KAYARAD TMPTA、分子量:296、官能基数:3官能)
光重合開始剤: 1部
イルガキュア184(日本化薬製、分子量:204)
溶媒: 120部
テトラヒドロフラン(沸点:66℃、飽和蒸気圧:181.7mmHg/20℃)
本発明では表面層の塗工ではエアスプレー式のスプレーガンを使用し、2つのスプレーガンを取り付けたスプレー塗工装置を用い、一つ目のスプレーにて溶媒を感光層に吹き付け、2つ目のスプレーにて表面層塗工液を塗布した。溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。2つのスプレーガンの間隔は5cmとし、スプレーガンと基体との距離は7cmとした。溶媒の吹き付け量は0.07ml/sとし、ガン先の霧化圧は1.0kg/cm2とした。また、表面層塗工液の吐出量は0.16ml/sとし、ガン先の霧化圧は1.0kg/cm2とした。塗工時の基体の回転数は100rpmとし、スプレーガンの移動速度は4.0mm/sとした。
実施例1において、表面層塗工液の重合開始剤を以下の熱重合開始剤に変更し、塗布後は130℃にて30分の乾燥を行い、表面層を設け、本発明の電子写真感光体を得た。
実施例1において、表面層を特開2004−117766号公報の実施例15の記載に基づいて形成し、表面層膜厚が7.5μmの電子写真感光体を得た。但し、スプレーによる表面層塗工液の塗布方法は本発明の実施例1と同様にして行った。
実施例1において、表面層を特開2004−264788号公報の実施例1の記載に基づいて形成し、表面層膜厚が4μmの電子写真感光体を得た。但し、スプレー方法は本発明の実施例1と同様にして行った。
実施例1において、スプレー塗工時の吹き付け溶媒としてシクロヘキサノンを使用し、紫外線照射後の乾燥を150℃10分とした以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を得た。
実施例1において、スプレー塗工時の吹き付け溶媒としてアセトンとした以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を得た。
実施例1において、表面層の膜厚を5μmとした以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を得た。
実施例1において、溶媒の吹き付け量を0.03ml/sとした以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を得た。
実施例1において、表面層塗工液の溶媒をテトラヒドロフラン80部とアセトン40部の混合溶媒とした以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を得た。
実施例1において、溶媒の吹き付けをなくし、表面層塗工液を塗布した以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、電子写真感光体を得た。
実施例2において、溶媒の吹き付けをなくし、表面層塗工液を塗布した以外は全て実施例2と同様にして表面層を設け、電子写真感光体を得た。
実施例3において、溶媒の吹き付けをなくし、表面層塗工液を塗布した以外は全て実施例3と同様にして表面層を設け、電子写真感光体を得た。
実施例4において、溶媒の吹き付けをなくし、表面層塗工液を塗布した以外は全て実施例4と同様にして表面層を設け、電子写真感光体を得た。
実施例9において、溶媒の吹き付けをなくし、表面層塗工液を塗布した以外は全て実施例9と同様にして表面層を設け、電子写真感光体を得た。
実施例1において、架橋表面層用塗工液の溶媒であるテトラヒドロフランを30質量部に変更し、架橋表面層をリングコートにより塗工した以外は全て実施例1と同様にし、架橋表面層膜厚10μmの電子写真感光体を作製した。
実施例1において、電荷輸送層の膜厚を28μmにし、表面層を設けずに電子写真感光体を得た。
<剥離強度測定>
表面層の剥離強度の評価方法として、サイカス(SAICAS)装置DN−20型(ダイプラ・ウィンテス製)を用い、刃幅0.5mmの切刃を用い、水平切り込み速度:0.1μm/s、垂直切り込み速度:0.01μm/sの切り込み速度一定モードで測定を行った。また試験する切り込み深さは表面層の膜厚よりも大きな値となるように試験時間を決定した。剥離強度としては表面層膜厚に相当する切込み深さの水平荷重を刃幅で割ることで算出した。温度22℃、相対湿度55%の環境条件下で測定を行った。
粒度3.0μmのラッピングフィルム(住友3M社製)を用いて感光体の任意の位置において感光体の軸方向10cm幅の表面層が残り2μm程度になるまで加速摩耗させた。但し、比較例7では表面層を設けていないため、膜厚の減少量が10μmになるよう加速摩耗した。そして感光体の加速摩耗した部分を超深度形状測定顕微鏡VK−8500(キーエンス社製)にて表面観察を行い、剥離の有無を確認した。次にこの感光体を電子写真装置用プロセスカートリッジに装着し、画像露光光源として655nmの半導体レーザーを用い、クリーニングブレードの当接圧力を1.5倍になるように改造したリコー製imagio MF 2200改造機にて架橋表面をラッピングフィルムで加速摩耗させていない部分において暗部電位を−700Vに設定し、未摩耗部分と加速摩耗部分の画像評価および未加速摩耗部分の明部電位測定を行った。その後A4サイズ2.5万枚通紙、さらに5万枚の通紙を行い、各通紙後に画像評価、表面観察を行った。また5万枚通紙後は明部電位測定も行い、初期同様に暗部電位を未加速摩耗部分で−700Vに設定して測定を行った。さらに初期及び5万枚通紙後に膜厚測定を行い、通紙による摩耗量を測定した。なお感光体の膜厚は渦電流式膜厚測定装置(フィッシャーインスツルメント製)を用いて測定した。
(画像評価)
○:良好
A:画像濃度低下が一部発生 AA:画像濃度低下が全面に発生
B:スジ状汚れが一部発生 BB:スジ状汚れが全面に発生
2 除電ランプ(除電手段)
3 帯電チャージャ(帯電手段)
4 イレーサ
5 画像露光部
6 現像ユニット(現像手段)
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写紙(記録媒体、又は転写体)
10 転写チャージャ(転写手段)
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード(クリーニング手段)
16 定着手段
31 導電性支持体
32 感光層
33 表面層(架橋表面層)
34 電荷発生層
35 電荷輸送層
36 表面層(架橋表面層)
101 感光ドラム(感光体、又は電子写真感光体)
102 帯電装置(帯電手段)
103 露光
104 現像装置(現像手段)
105 転写体(記録媒体)
106 転写装置(転写手段)
107 クリーニングブレード(クリーニング手段)
Claims (9)
- 導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層とが積層された電子写真感光体の製造方法であって、
前記表面層の形成において、1つ目のスプレーガンで前記感光層を形成する樹脂に対して溶解性を有する溶媒を前記感光層に塗布する溶媒塗布工程と、
前記溶媒を塗布した感光層に、前記溶媒が乾燥しない間に2つ目のスプレーガンで前記表面層塗工液を塗布する表面層塗工液塗布工程を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。 - 前記1つ目のスプレーガンと前記2つ目のスプレーガンとを、10cm以下の間隔で配置し、前記感光層表面上を移動させながら、前記溶媒、前記表面層塗工液の順に連続して塗布することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記1つ目のスプレーガンで塗布される溶媒は、0.02〜0.20ml/sで噴霧されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記感光層に塗布する溶媒と、前記感光層塗工液の溶媒とは、同一の成分を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記表面層塗工液塗布工程の後で、表面層塗工液をさらに1回以上塗布する表面層塗工液再塗布工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記表面層塗工液は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)と、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)を含む溶液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記ラジカル重合性化合物(ロ)が、トリアリールアミン構造、ヒドラゾン構造、ピラゾリン構造及びカルバゾール構造よりなる群から選ばれたいずれかの構造を有することを特徴とする請求項6記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記ラジカル重合性モノマー(イ)及び/又は前記ラジカル重合性化合物(ロ)が、アクリロイルオキシ基又はメタクリルロイルオキシ基を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記塗布された表面層塗工液が熱又は光エネルギーにより架橋されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。
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