JP5061427B2 - 導電性マイエナイト型化合物の製造方法 - Google Patents
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細野らは、C12A7結晶をカーボン坩堝中で溶解して作製した透明なガラスを、酸素分圧が約10−11Paと極く低い雰囲気中1600℃で1時間または真空中1000℃で30分間の再加熱処理により結晶化させて、導電性マイエナイト型化合物が生成することを見出した(非特許文献5)。しかしながら、再加熱処理に、ガラスが再溶解する高温度かつ極低酸素分圧の雰囲気中、あるいは真空中、での再熱処理を要すため、この方法を用いて工業的に安価に大量に生産するのは困難であった。
− 代表組成が12CaO・7Al2O3である絶縁性マイエナイト型化合物、
− この結晶格子の骨格と骨格により形成されるケージ構造が保持される範囲で、骨格またはケージ中の陽イオンまたは陰イオンの一部またはすべてが置換された同型化合物(以下、代表組成が12CaO・7Al2O3である、絶縁性あるいは導電性のマイエナイト型化合物、その陽イオンまたは陰イオンが置換された同型化合物を、単にC12A7化合物という)、
− 前記C12A7化合物と同等の組成を有するガラス、
などを用いることができる。
− C12A7化合物の骨格の一部またはすべての陽イオンが置換されたストロンチウムアルミネートSr12Al14O33や、CaとSrの混合比が任意に変化された混晶であるカルシウムストロンチウムアルミネートCa12−xSrXAl10O33、
− シリコン置換型マイエナイトであるCa12Al10Si4O33、
− ケージ中のフリー酸素がOH−、F−、S2−、Cl−などの陰イオンによって置換された、たとえばCa12Al14O32:2OH−またはCa12Al14O32:2F−、
− 陽イオンと陰イオンがともに置換された、たとえばワダライトCa12Al10Si4O32:6Cl−、
などのマイエナイト型化合物および同型化合物が例示されるが、これらに限定されない。
Si、GeまたはBを含有させると、前記前駆体の溶融温度が下がって溶融が容易になって、融液を固化させるときにガラス化させて均質化させたり、成形したりできるようになる。そのため、所望の大きさ、形状のバルク体の導電性マイエナイト型化合物が得られるようになる。また、ガラス粉末の作製が容易になって好ましい。Si、GeまたはBは、いずれか1種以上を酸化物換算で合計1.5モル%以上含有させると前述の効果が得られて好ましい。また、SiまたはGeは、生成された導電性マイエナイト型化合物中のAlの位置を置換させ含有させてもよく、この場合、ドーピング効果により該結晶に包接される電子密度を増大させる効果がある。ドーピング効果を得るためには、6モル%以上とされる。Si、GeまたはBの含有量が17モル%超では溶融温度が再び上昇し、また、ドーピング効果が得られなくなる。そのため、Si、GeまたはBの含有量は17モル%以下とされる。
Ca12Al14O33+3C0 →Ca12Al14O32:C2 2−+CO↑
により生じた電子が、カーバイドイオンにより保持されていて、熱処理により結晶化させると、下記の反応式のように、カーバイドイオン1個当たり2個の電子が脱離して、マイエナイト型化合物結晶のケージ中に導入され、導電性が付与される。
C2 2−→C0+2e−(ケージ)
a.前記前駆体を粉砕した粉末と炭素原料とを混合して融点以下の高温に加熱、保持し、前駆体粉末中に炭素を拡散させる方法、
b.前記前駆体を与える組成の融液を、炭素または炭化物と接触させ、界面反応や融解により炭素を含有させる方法、
c.前記前駆体を与える組成の原料と、炭素材料、炭素化合物などの炭素含有原料と、を、調合し、融解させる方法、が例示される。
酸化物換算のモル比でCaO:Al2O3:SiO2=60:35:5となるように、炭酸カルシウム、酸化アルミニウムおよび二酸化珪素とを調合、混合し、昇温速度400℃/時間で1650℃まで昇温して溶解させた後、それぞれ、3、5.5、7、10時間保持し、急冷して炭素含有カルシウムアルミネートガラスからなる炭素含有前駆体を作製した。溶解の容器には蓋付きカーボン坩堝を用いたので、溶解雰囲気中は、カーボン坩堝と酸素との反応により酸素分圧10−11Paである。得られたガラスは透明で絶縁体であった。得られたガラス中には、溶解したガラスとカーボン坩堝との反応によりカーボンが取り込まれていて、取り込まれた炭素濃度は、燃焼法と2次イオン質量分析法による測定により、図1に示すように、溶融時間が長くなると0.1質量%から0.37質量%まで(前駆体が含有するCa、Sr、およびAlの合計原子数に対する炭素の原子数比で、0.44%〜1.64%)増加する傾向を示した。また、ラマン分光法により1860cm−1付近にラマンバンドが観察され、カーバイドイオンC2 2−の状態でガラスに溶解していることがわかった。
酸化物換算のモル比でCaO:Al2O3:SiO2=60:35:5となるように、炭酸カルシウム、酸化アルミニウムおよび二酸化珪素とを調合した100質量部に対して、さらに0.8質量部(CaおよびAlの合計原子数に対する炭素原子数の比で、3.52%)のカーボン粉末を混合し、窒素雰囲気炉を用いて、蓋付きアルミナ坩堝中で1550℃まで加熱、融解し、1時間保持したのち、冷却して炭素含有前駆体を作製した。得られたガラスは透明で絶縁体であった。得られたバルク状の炭素含有前駆体はガラス質であるが、一部、カルシウムアルミネート化合物が含まれていた。この炭素含有前駆体中の炭素濃度は、燃焼法と2次イオン質量分析法による測定により、0.68質量%(CaおよびAlの合計原子数に対する炭素原子数の比で、2.99%)であった。また、ラマン分光法により1860cm−1付近にラマンバンドが観察され、カーバイドイオンC2 2−の状態でガラスに溶解していることがわかった。
溶融時間を1時間とした以外は、例1〜4と同様にして炭素含有カルシウムアルミネートガラスを作製した。得られたガラスは透明で絶縁体で、同様に測定したガラス中の炭素濃度は0.027質量%(CaおよびAlの合計原子数に対する炭素原子数の比で、0.12%)であった。このガラスに対して、窒素ガスフロー炉を用いて例1〜4と同様の熱処理をおこなったところ、得られた試料は導電性マイエナイト型化合物とC3AおよびCA結晶との混合物で、導電率はおよそ10−2S/cmであった。
例1〜4と同様にして作製した、0.1〜0.37質量%の炭素を含有する炭素含有カルシウムアルミネートガラス(Ca、Sr、およびAlの合計原子数に対する炭素の原子数比で0.44%〜1.64%)に対して、空気を流したフロー炉中で1300℃での熱処理をおこなった。得られた試料は、X線回折によりマイエナイト型化合物であることが確認されたが、白色を呈しており、絶縁体であった。
酸化物換算のモル比でCaO:Al2O3:SiO2=60:35:5となるように、炭酸カルシウム、酸化アルミニウムおよび二酸化珪素とを調合し、窒素雰囲気炉を用いて、蓋付きアルミナ坩堝中で1550℃まで加熱、融解し、1時間保持したのち、冷却して,炭素を含有しないカルシウムアルミネートガラスからなる前駆体を作製した。得られたガラスを、例5と同様にして酸素濃度が0.6%の窒素ガスを流した酸素分圧が608Paの窒素ガスフロー炉中で熱処理をおこなったところ、マイエナイト型化合物が得られたが、該化合物は白色であり、導電性を示さなかった。
炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、および酸化ケイ素を、酸化物換算でCaO、Al2O3、SiO2がそれぞれ60モル%、35モル%、5モル%となるように調合した混合粉末を、白金坩堝を用いて空気中で1650℃で溶融し、双ローラを用いて冷却してカルシウムアルミネートガラスのガラスフレークを得た。得られたガラスフレークを粉砕して、前記組成のガラス粉末を得た。
例1〜4で作製したそれぞれの炭素含有カルシウムアルミネートガラスを機械的に粉砕し、最大粒径が100μmで中心粒径が約50μmの粉体とした。炭素含有量が異なるそれぞれのガラス粉を前駆体として、窒素ガスフローにより酸素濃度を10Paとした管状炉中で昇温速度400℃/時間で960℃まで昇温させ2時間保持したところ、いずれの前駆体からも導電性マイエナイト型化合物の粉体が得られた。すなわち熱処理後のいずれの粉体も濃緑色を呈しており、光拡散反射スペクトルから求めたキャリア密度はおよそ1019/cm3であった。
酸化物換算のモル比でCaO:Al2O3:SiO2=60:35:5となるように、炭酸カルシウム、酸化アルミニウムおよび二酸化珪素とを調合し、例1〜4と同様に蓋付きカーボン坩堝を用いて1650℃まで昇温して溶解し、それぞれ3、5.5、7、10時間保持したのち、急冷して炭素含有カルシウムアルミネートガラスを作製した。得られたそれぞれのカーボン含有カルシウムアルミネートガラスを鏡面研磨し、次いで酸素濃度が10Paの窒素ガス雰囲気中で、昇温速度400℃/時間で950℃まで昇温させ2時間保持したところ、該ガラスの表面に、表面結晶化により生成した針状結晶の集合体からなる導電性マイエナイト型化合物からなる薄膜が形成された。該薄膜の厚みは、およそ100μmであった。このとき、ガラス内部は非晶質の状態を保っていた。
例12の、鏡面研磨されたカーボン含有カルシウムアルミネート化合物ガラスに対して、熱処理温度を例14の950℃から800℃へ変えた以外は例12と同様の熱処理をおこなったところ、該ガラス表面に導電性マイエナイト型化合物からなる薄膜は形成されなかった。
酸化物換算のモル比でCaO:Al2O3:SiO2=60:35:5となるように、炭酸カルシウム、酸化アルミニウムおよび二酸化珪素とを調合し、白金坩堝を用いて空気中で1650℃まで昇温して溶解、保持して炭素を含有しないカルシウムアルミネートガラスを作製した。粉砕した該ガラスに0.4質量%(CaおよびAlの合計原子数に対する炭素原子数の比で1.76%)の炭素粉末を添加し混合した後、蓋付きカーボン坩堝に入れ、400℃/時間の昇温速度で1650℃まで昇温し、1時間保持した。坩堝内の酸素分圧はカーボンによる酸素の吸収により10−11Pa以下である。次いで窒素ガス雰囲気のグローブボックス内で融液を流しだして、炭素含有カルシウムアルミネートガラスを得た。得られたガラスは均質で透明であった。このとき、融液を窒素ガス雰囲気中でなく空気中で流し出すと、発泡により均質なガラスが得られなかった。
Claims (4)
- 前駆体を熱処理して導電性マイエナイト型化合物を製造する製造方法において、
溶融してガラスを形成する原料に対して、前記原料が含有するCa、Sr、およびAlの合計原子数に対する、炭素の原子数比が0.2〜11.5%となるように炭素含有原料を調合し、酸素分圧が10Pa以下の雰囲気下で溶融して前記前駆体を作製し、
前記前駆体は、
CaまたはSrと、Alとを含有し、
酸化物換算した、CaOとSrOの合計と、Al2O3とのモル比が12.6:6.
4〜11.7:7.3で、
CaO、SrOおよびAl2O3の合計が50モル%以上であって、
含有するCa、Sr、およびAlの合計原子数に対する原子数比で0.2%〜7.7
%の炭素を含有する炭素含有前駆体であって、
前記前駆体に対して、酸素分圧が1000Pa以下の不活性ガス雰囲気または真空雰囲気
中で、前記前駆体を900〜1415℃まで加熱して保持する熱処理を施して、導電性マ
イエナイト型化合物を生成させることを特徴とする導電性マイエナイト型化合物の製造方
法。 - 前記炭素含有原料が、炭素同素体、アセチリド化合物、共有結合性またはイオン性の金
属炭化物、または炭化水素化合物、からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項
1に記載の導電性マイエナイト型化合物の製造方法。 - 前記前駆体が含有するAlの一部が、同じ原子数のSiまたはGeで置換されている請
求項1または2に記載の導電性マイエナイト型化合物の製造方法。 - 前記炭素含有前駆体が、酸化物換算で、Li2O、Na2O、またはK2Oを0〜5モ
ル%、MgO、またはBaOを0〜10モル%、Fe2O3、またはTiO2を0〜8モ
ル%含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性マイエナイト型化合物の製造方
法。
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