以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る移動方法判定装置10の構成の一例を示すブロック図である。移動方法判定装置10は、自身(歩行者)の位置を衛星航法及び/又は自立航法により測位し、測位して得られた測位データに基づいて自身の位置を推定するとともに、推定位置の推定誤差の範囲を示す誤差範囲を算出する。なお、測位データに基づいて、歩行者の位置を地図上で特定(検出)し、特定した位置を表示させることもできる。移動方法判定装置10は、算出した誤差範囲内で特定した特徴地点(歩行者が存在可能な地図上の特徴的な地点)と、歩行者の歩行挙動及び歩行者により携帯された状態での振動特性等とを関連付けて、歩行者の移動方法(移動手段)を判定する。移動方法判定装置10は、判定した移動方法に対応する地図情報に基づいて、歩行者がどのような移動方法で移動する場合であっても、歩行者にとって違和感なく、連続的かつ高精度に位置検出を継続することができる。なお、詳細は後述する。
移動方法判定装置10は、歩行者(自転車で走行する歩行者も含む)が携帯可能であって、装置全体を制御する制御部11、通信部12、測位部13、地図データベース14、記憶部15、操作部16、位置検出処理部17、表示部18、音声出力部19、移動方法判定部20などを備える。また、測位部13は、GPS131、距離センサ132、方位センサ133、高度センサ134、方位補正部135、センサ較正部136などを備える。また、位置検出処理部17は、位置推定部171、誤差算出部172、歩行挙動判定部173、乗降判定部174、位置特定部175、信頼度算出部176、評価部177、振動検出部178などを備える。
通信部12は、光ビーコン、電波ビーコン、RFID若しくはDSRC等の路上装置との間で通信を行う狭域通信機能、UHF帯若しくはVHF帯などの無線LAN等の中域通信機能、又は携帯電話、PHS、多重FM放送若しくはインターネット通信などの広域通信機能を備える。通信部12は、例えば、地下鉄などの交通手段へのアクセスのための地下入口、交通手段への乗降場所の周辺を範囲とした無線LAN等の中域通信を利用し、路上装置間の路路間通信、路上装置と車両との路車間通信、又は車々間通信で通信された地図情報及び交通機関の路線情報(例えば、鉄道又は路線バスなどの路線図、駅間又は停留所間の所要時間などを含む)、交差点の信号機の信号情報などを取得する。なお、地図情報及び路線情報の詳細は後述する。
また、路上装置の他の例としては、例えば、超音波感知器、画像感知器等の交通情報収集装置、交通情報を文字又は図形で提供する情報板装置、信号制御装置等がある。また、通信部12は、携帯電話等の広域通信を利用することにより、情報処理センタ又は交通管制センタ等のセンタ装置から歩行者の周辺の地図情報及び路線情報を取得することもできる。
通信部12は、基地局との間で通信を行う通信機能を備え、複数の基地局からの電波を受信し、受信結果を測位部13へ出力する。また、通信部12は、路上装置との狭域通信により得られた通信地点の位置情報を測位部13へ出力する。
測位部13は、歩行者の位置を時々刻々(例えば、0.5秒、1秒等の経過の都度、1m、2m等の移動の都度など)測位し(測位位置を求め)、歩行者の移動距離及び移動方位(測位方位)を時刻とともに測位軌跡として記憶部15に記憶する。
GPS131は、複数のGPS衛星から電波を受信し、歩行者の位置を測位する。なお、GPS131に加えて、DGPS(ディファレンシャルGPS)を搭載することもできる。DGPSは、予め位置が分かっている基準局から発信されるFM放送又は中波を受信し、GPS131で求めた測位位置のずれを補正することができ、歩行者の位置の精度を向上させることができる。なお、携帯電話の複数の基地局からの電波により位置を概略的に測位する方式とGPSとを複合した形で測位することも可能である。これにより、屋内でGPS衛星からの電波を受信しにくい場合でも、位置精度が悪いものの一応位置を得ることができる確率が高くなる。
距離センサ132は、非常に短い時間での速度、移動距離を検出することができる加速度センサ、比較的長い移動距離を検出することができる歩数センサなどを備えている。ここで歩数センサとして、例えば加速度センサを用いれば、歩行のピッチに合わせて生ずる急峻なデータが得られ、この数を計数することにより歩数や歩行速度を求めることができる。また、この場合、自転車に乗ってペダルをこいでいる場合、あるいは、歩道橋又は地下横断通路の階段を上下する場合には、急峻なデータの特性、例えば、ピーク値(歩行の強さ)が異なるため、これにより、ある程度歩行場所を特定することも可能である。これにより、自立航法において歩行者の位置を短時間かつ短距離の歩行毎に検出することができる。なお、都市圏以外で周囲にビル等がなくGPS衛星の測位精度が非常に良好な場合には、歩数センサを使用せず、GPSの位置測位の差により、歩行した距離を算出するようにしてもよい。なお本願では、歩行速度は、歩行ピッチ(単位時間当たりの歩数)を含む概念で用いる。
方位センサ133は、角速度センサ又は角加速度センサ(相対方位センサ)、2次元又は3次元の地磁気センサ(絶対方位センサ)などを備えている。これにより、自立航法において歩行者の移動方位を短時間かつ短距離の歩行毎に検出することができる。また、地磁気センサにより、歩行者が鉄筋物で囲まれた建物内に存在すること、あるいは、歩行者が強い電場又は磁場がある踏切付近に存在することを検出することが可能である。
高度センサ134は、気圧計又は加速度センサ等により歩行者の位置での高度及び高度の変化を検出する。なお、GPS131、距離センサ132、方位センサ133、高度センサ134は、すべて備える構成でなくてもよい。
方位補正部135は、地図マッチング法により、歩行者が歩行する道路が特定され、歩行者の推定位置が確定し、かつ測位方位(移動方位)が所定の移動距離(例えば、20m)以上変化がない場合に、測位方位を地図上の道路の方位に補正する。なお、方位補正の詳細は後述する。
センサ較正部136は、相対方位センサの場合、地図マッチング法により、歩行者が歩行する道路又は屋内の通路が特定され、歩行者の推定位置が確定した場合、相対方位センサのスケールファクタを道路又は通路の方位との差に基づいて較正する。また、歩数センサの場合には、地図マッチング法により2地点間の通過が確実であると判定した場合、その間の道路又は通路の距離とその間に計測された歩数とから歩数センサを較正する。なお、2地点間の測位軌跡により歩行距離を補正しても良い。
測位部13は、測位した測位データ、通信部12を経由して得られた基地局からの電波の受信結果、又は路上装置との狭域通信により得られた通信地点の位置情報などに基づいて、測位位置及び測位位置の誤差範囲(推定範囲)を算出する。以下、測位位置及びその誤差範囲(推定範囲)の算出方法について説明する。
図2は測位位置の誤差範囲の例を示す説明図である。直交座標系(x方向及びy方向)において、GPS、基地局又は路上装置との狭域通信により検出された位置の誤差範囲を、一例として、矩形領域(x方向の長さが4a、y方向の長さが4b)として設定する。すなわち、測位位置は、矩形領域の中心位置であり、誤差範囲は、中心位置からx方向に±2aの範囲だけ広がり、y方向に±2bの範囲だけ広がる。例えば、2aを2シグマと設定した場合、x方向の分散はa2 となり、標準偏差はaと設定することができる。また、2bを2シグマと設定した場合、y方向の分散はb2 となり、標準偏差はbと設定することができる。
路上装置との狭域通信による誤差は、GPS又は基地局通信の場合に比べて小さい(例えば、誤差範囲が数m)ため、誤差範囲は、路上装置との狭域通信を利用するか、GPS又は基地局通信を利用するかに応じて異なる。また、例えば、GPSを利用する場合、誤差範囲は、環境条件、より具体的には、GPSの受信レベル、捕捉衛星数、2次元又は3次元測位の別、CEP(Circular Error Probability)により時間的に変化する。また基地局通信の場合には、誤差範囲は、基地局との通信レベル、基地局の通信範囲等で時間的に変化する。誤差範囲を予め大きめに設定した所定の定数、場所又は時間に応じて予め決定した定数等を用いてもよい。また、誤差範囲の形状は、矩形形状に限らず、円形、楕円形等任意の形状でもよい。例えば、GPSのみで測位する場合、環境条件が良好なときには、誤差範囲として10〜20m程度を設定することができる。
以下、歩行者の測位位置の算出方法について説明する。なお、測位位置は、直交座標系における二次元ベクトルで表現するが、3次元では、高度情報を加えるだけであり、容易に拡張可能である。また、以下の説明では、時刻で定式化しているが、実際の処理においては、単位時間の経過の都度の処理の代わりに単位走行距離の都度処理を行ってもよい。また、以下、大文字のアルファベットはベクトル又は行列とする。
時刻tにおける歩行者の位置P(t)を式(1)とすると、時刻t+1(時刻t、t+1の間隔は、所定時間であり、例えば、1秒、0.5秒などである)における歩行者の位置P(t+1)は、式(2)で表すことができる。あるいは、時刻tから歩行者が所定の歩行距離(例えば、1m、2mなど)を歩行した時刻を時刻t+1とすることもできる。なお、ベクトルに付した「T」は転置を意味する。また、式(2)は、歩行者の動特性を示すものである。なお、時刻tにおける歩行者の位置P(t)は、歩行者の真の位置(実際の位置)であり、未知の誤差の存在のため観測不可能な位置である。すなわち、歩行者の測位位置は、真の位置P(t)に対する最適な推定位置を求めるものである。
ここで、D(t)は、式(3)で表され、d(t)は、時刻tから時刻t+1までに歩行者が移動(歩行)した距離、θ(t)は、直交座標系に対する歩行者の移動(歩行)の方位角である。また、E(t)は、式(4)で表され、e(t)は、移動距離d(t)の誤差である。また、誤差E(t)の分散Q(t)は、式(5)で表され、qは、単位距離移動での誤差分散であり、一定値とすることができる。
また、時刻tにおいて、GPS、基地局通信又は路上装置との通信により検出された位置S(t)は、式(6)で表すことができる。ここで、G(t)は、位置S(t)の誤差であり、誤差G(t)の共分散行列R(t)は、式(7)で表すことができる。式(7)において、a、bそれぞれは、図2で示した誤差範囲である矩形領域のx方向及びy方向の長さの4分の1である。すなわち、共分散行列R(t)は、2a、2bを2シグマとした場合のx方向及びy方向の分散で構成されている。なお、E(t)、G(t)の平均値は0としても一般性は失わない。
時刻tにおける歩行者の位置P(t)の最適な推定位置H(t)は、カルマンフィルタにより式(8)のような漸化式で表される。
ここで、Γ(t)は、推定位置H(t)の推定誤差の分散であり、式(9)のような漸化式で表すことができる。また、行列に付した「−1」は、その行列の逆行列を意味する。また、初期時刻0における推定位置H(0)、その推定誤差の分散Γ(0)は、それぞれ式(10)、式(11)で表すことができる。ここで、Mは、歩行者の最初の位置の先験情報であり、Σは、その誤差分散である。仮に先験情報がない場合、M=0、Σ-1=0となり、初期時刻0における推定位置H(0)、その推定誤差の分散Γ(0)は、それぞれ式(12)、式(13)で表される。
なお、式(6)は、GPS、基地局通信又は路上装置との通信により位置が検出された場合に得られるので、GPS、基地局通信又は路上装置との通信が行われない間は、式(7)における誤差a、bが十分大きな値と考えることにより、式(8)において、R-1(t)=0とすれば、式(8)をそのまま用いて推定位置を繰り返し算出することができる。すなわち、この場合は、自立航法のみで位置を測位することと等価になる。
移動距離d(t)の誤差e(t)は、距離センサの種類により異なる。例えば、複数の種類の距離センサを同時に利用する場合には、各センサの誤差を結合した結合誤差を設定すれば良い。例えば、2種類のセンサで得られた距離をそれぞれd1、d2、誤差の分散をそれぞれq1、q2とすると、その結合距離を、式(14)で設定し、その結合誤差として分散は、式(15)で設定することができる。
上述の定式化では、記述を簡単にするために、方位(方位角)θの誤差がないと仮定したが、方位(方位角)θの誤差f(t)を考慮して、線形近似することにより上述の定式化を容易に拡張することができる。この場合、誤差e(t)、G(t)と同様に、誤差f(t)の誤差分散を定義する。あるいは、方位誤差を考慮して、位置の誤差分散を大きくすることもできる。
例えば、時刻tの方位θの計測値に誤差F(t)が累加した場合、高次の誤差を無視すれば、式(2)は式(16)及び式(17)のように拡張することができる。
この場合、式(5)は、式(18)に置き換えればよい。ここで、uは方位θの誤差の分散である。なお、式(16)〜式(18)に代えて、式(5)のQ(t)を大きめに設定するだけとしてもよい。なお、以上の数式では、2次元の位置検出として定式化したが、高さの次元を加えて3次元で定式化してもよい。
地図データベース14は、広範囲の地図情報、例えば、自動車などの車両の位置検出用の地図情報、歩行者の位置を検出するための歩行者が歩行する領域(屋外であれば、道路など、屋内であれば通路など)の地図情報、及び交通機関の路線情報を記憶してある。なお、歩行者の位置に応じて、その付近の地図情報及び路線情報をセンタ装置又は路上装置などの外部から通信で取得して記憶しておくこともできる。
図3は地上の地図情報の一例を示す模式図である。歩行者の位置を検出する場合には、車両の位置を検出する場合に比較して複雑かつ困難になる。すなわち、車両の場合には、推定した位置と地図上の車道との地図マッチングにより、車両の位置を検出することができるのに対し、歩行者の場合には、歩行者用の歩道以外に歩行者が歩行可能な領域は種々存在する。また、屋外のみならず屋内であっても歩行者の位置検出を行う必要性が高い。
また、歩行者の位置を検出する場合、歩道と車道との分離等、きめ細かな地図マッチングが必要となるため、地図情報としても詳細のデータが必要になる。ただし、広範囲な地図情報を記憶部15に記憶しておく必要はなく、歩行者の位置に合わせて適宜、情報センタ装置又は路上装置等の外部から通信で取得しても良い。
図3に示すように、地図上には、歩行者専用道路(歩道)、車道、横断歩道、ビル、小売店、公園、池など、種々の領域が存在する。そこで、まず、地図上の領域を歩行可能領域と禁止領域とに区分する。禁止領域は、例えば、立入禁止区域、川、池、海、湖、沼、池、崖、鉄道敷地、皇居など、一般には歩行者の進入が禁止されている領域、あるいは進入が不可能な領域である。
次に、歩行可能領域を、例えば、屋内領域、道路領域及びその他領域に区分する。屋内領域は、例えば、ビル、地下道、駅舎、店舗、小売店、家屋、工場、地下街、建造物内部などである。道路領域は、例えば、歩行者専用道路、歩道・車道分離の幹線道路の場合の歩道、横断歩道、歩行者用陸橋(歩道橋)、地下横断道路、踏切、その他私有地の道路等(今後、何れも道路と呼ぶ)である。また、その他領域は、例えば、車道、公園、運動場、その他自由に歩行可能な全ての屋外の領域である。また、屋内領域又はその他領域において、歩行者が通常歩行する領域を通路として設定する。
図3に示すように、歩行者用の位置検出のための道路領域は、歩行者専用道路、幹線道路の歩道、横断歩道、歩行者用陸橋、地下横断道路(地下鉄の駅などへのアクセス通路)であり、屋内領域は、ビル、小売店、家屋であり、小売店には歩行通路が設定されている。また、禁止領域は池であり、その他領域は幹線道路の車道、公園である。図3の情報に基づいて、地図上の道路(道路領域、地図マッチングのための線分)を設定することができる。なお、自動車などの車両用の位置検出のための道路領域は、幹線道路の車道、車両が進入することができる公園、駐車場内の道路、工場敷地内等の私有道路などを地図情報として登録することができる。
図4は地図上の歩行者用の道路又は通路の設定例を示す説明図である。図4に示すように、道路領域、屋内領域、その他領域の道路又は通路に対して、地図マッチングのための1又は複数の線分(標準歩行線、地図上の道路)を定義し、各線分の接続関係の情報を設定する。地図上の道路又は通路は、リンク及びノードにより構成することもでき、あるいは、線分に対する道路幅又は通路幅に相当する幅を設定することもできる。ノードは、地図上の道路又は通路の一部であり、リンクはノードの接続点、すなわち、地図上の道路又は通路の接続性を定義する。
例えば、図3の例に対して、地図上の道路又は通路は、図4のように設定される。地図上の道路又は通路には、道路幅又は通路幅の情報、接続関係の情報を含めることもできる。また、屋内領域、禁止領域には、それぞれの領域の範囲の情報を含めることもできる。その他領域に、領域の範囲の情報を含めてもよく、あるいは、道路領域、屋内領域、禁止領域の何れでもなければその他領域であると判断する場合、その他領域に領域の範囲の情報を含めなくてもよい。なお、図3及び図4には記していないが、領域と領域とを接続する地点又は道路(通路)を地図上に設定してもよい。例えば、道路上に屋内領域の地下街又は地下鉄駅舎に通じるための連絡口(階段、エレベータ、エスカレータ等)がある場合等であり、これにより、道路から屋内領域に移る場合に、歩行者の位置を修正することができる。
図5は駅付近の地下の地図情報の一例を示す模式図である。図5の例は、地下鉄などの駅付近の地図を示し、図5(a)は地上から地下鉄のプラットホームに通じる地下1階の地図であり、図5(b)は地下2階のプラットホームの地図である。図5に示すように、駅が地下等の屋内領域にある場合、地上の道路領域から屋内領域及びプラットホームに移るための階段、エスカレータ、エレベータ等のアクセス部分を両領域の接続地点又はアクセスのための通路として設定することができる。
より具体的には、地上の道路から駅のプラットホームまでは、道路、階段、地下のアクセス通路、曲がり角、改札口、階段(又はエスカレータ、エレベータ)、プラットホームの順で通路を設定することができる。この場合、設定した通路に対して、図5に示すように、地図マッチング用のベクトル線分を設定することができる。また、地図には、券売機なども含まれる。上述の横断歩道、歩道橋、地下横断通路、階段、エレベータ、エスカレータ、券売機、改札口、駅のプラットホームなどの地点において、歩行者の歩行挙動と関連付けて歩行者の位置を特定する(推定位置を補正する)ことができる。
上述の地点は特徴地点に含まれる。特徴地点は、歩行者が存在可能な地図上の特徴的な地点であり、例えば、予め路線が定められている交通機関の乗降場所(駅のプラットホーム、停留所、搭乗エリア、乗降エリア)、乗用車、タクシーなどの車両が走行する車両用道路などである。また、特徴地点として、例えば、踏切、川、池、湖、沼などを含めることもできる。
図6は鉄道の路線図の一例を示す説明図であり、図7は鉄道の駅間の所要時間の例を示す説明図である。図7の所要時間(例えば、上り列車)は、図6の路線図に対応するものである。路線図と所要時間は、路線情報を構成するものである。図6に示すように、鉄道の路線に本線と、これから分岐する支線1、支線2とがあるとする。本線には駅J1〜J12があり、支線1は駅J3から分岐して駅K1〜K6がある。また、支線2は駅J7で分岐し、駅L1〜L3があるとする。交通機関の区分として、例えば、鉄道では、特急、急行、準急、普通に区分けされ、特急が停車する駅はJ1、J7、J12であり、急行が停車する駅はJ1、J3、J7、J10、J12である。また、準急が停車する駅はJ1、J3、J7、J10、J12、K3、K6であり、普通はすべての駅で停車する。
また、図7に示すように、路線情報には、本線、支線1、支線2ごとに各駅の位置、駅間の距離、各列車の区分に応じた駅間の所要時間を含む。なお、上述の区分は一例であって、これに限定されるものではなく、快速、通勤快速、新快速など他の区分を用いてもよく、あるいは、地下鉄のように車両がすべての駅に停車するような場合には、区分を設ける必要はない。また、鉄道間の相互乗り入れがあってもよい。また、図7では、例えば、上り列車の所要時間を例示しているが、下り列車も同様である。
また、図5に示したように、地図マッチングを行うことができるように、各駅の屋内領域又は道路領域とのアクセス通路を二次元空間又は線データの地図情報として地図データベース14に記憶してもよく、あるいは、駅舎全体を駅領域として、その範囲(境界)のみを記憶することもできる。
列車の区分は、予め区分毎の列車の速度、振動特性などを記憶しておき、歩行者が列車に乗車したときの移動速度、振動特性を検出することにより、歩行者が乗車した列車の区分を判定することができる。例えば、移動速度の速い順に特急、急行、準急、普通のように判定することができる。また、振動の強い順に特急、急行、準急、普通のように判定することができる。
また、歩行者が列車に乗車した時点から列車が停車するまでの経過時間と、駅間の所要時間とにより、その列車が停車した駅を求め、その駅に停車する列車の区分から歩行者が乗車した列車の区分を判定することもできる。あるいは、歩行者が列車に乗車した時点からの経過時間と駅間の所要時間により、その列車が停車せずに通過した駅を求め、その駅を通過する列車の区分から歩行者が乗車した列車の区分を判定することもできる。
歩行者が列車に乗車している場合の歩行者の位置は、路線図に沿って特定することができる。例えば、乗車駅から次の停車駅までの所要時間に対する乗車後の経過時間の比で、乗車駅と次の停車駅との距離を比例配分して、乗車駅からの距離を求めることで特定することができる。例えば、図6及び図7の例で、歩行者が特急列車に乗車した場合、駅J1から乗車して経過時間が5分であるとすると、駅J1及びJ7(特急列車が次に停車する駅)間の距離に5/9(9分は駅J1、J7間の所要時間)を乗算した距離だけ駅J1から離れた位置が歩行者の位置である。
なお、歩行者の位置を路線図上で特定する場合において、経過時間は、歩行者が交通手段に乗車した乗車地点からの経過時間だけでなく、いずれかの駅で停車又は通過した場合には、その停車又は通過した駅からの経過時間も含むものとする。これにより、乗車駅を起点とした経過時間と各駅までの所要時間とに基づいて歩行者の位置を特定してもよく、あるいは乗車駅にかかわらず、ある駅を起点とした経過時間とその起点とした駅からの所要時間とに基づいて歩行者の位置を特定することもできる。
上述の例では、地下鉄等の屋内駅舎の場合を説明したが、屋外の電車、列車、汽車、モノレール、市電、路線バス、路面電車、ケーブルカー、ロープウェイ、船舶、航空機等のように、道路上又は道路に接続された乗降場所(例えば、駅のプラットホーム、停留所、搭乗エリア、乗降エリアなど)がある場合でも、上記と同様に、道路領域又は屋内領域に駅のプラットホーム、停留所、搭乗エリア、あるいは、アクセス通路、路線図及び乗降場所間の所要時間を設定することにより、歩行者の位置を同様に特定することができる。なお、交通手段が地下鉄のように地下を走行しない場合には、少なくとも間欠的にGPS衛星からの電波を受信できる可能性があり、GPSによる測位を併用して歩行者の位置を特定することもできる。
記憶部15は、歩行者の歩行挙動と地図上の特徴地点とを関連付けた情報、測位部13で測位した測位データ、位置検出処理部17で処理した処理結果などを記憶する。なお、制御部11、位置検出処理部17などをCPU、RAMなどで構成する場合、制御部11、位置検出処理部17の処理手順を定めたコンピュータプログラムを記憶することもできる。
操作部16は、各種操作ボタンを備え、歩行者と移動方法判定装置10とのユーザインタフェースとして機能する。例えば、操作部16は、歩行者の操作により移動方法判定装置10の動作の開始又は停止の操作を受け付ける。
位置検出処理部17は、専用のハードウエア回路で構成してもよく、又は予め処理手順を定めたコンピュータプログラムを実行する構成であってもよい。
位置推定部171は、前回(例えば、直近でもよく、2回又は3回などの複数回前でもよい)に算出された推定位置又は推定位置を更新した検出位置と、測位部13で算出した測位位置の軌跡(測位軌跡)とに基づいて、地図上の推定位置(推定位置の軌跡)を算出する。より具体的には、前回に算出された推定位置又は検出位置から測位位置までの測位軌跡に沿った軌跡を求めることにより、推定位置の軌跡及び推定位置を算出する。
誤差算出部172は、位置推定部171で推定した推定位置の誤差範囲を算出する。より具体的には、誤差算出部172は、後述するように推定位置を初期登録する場合、あるいは、推定位置を更新する場合、推定位置の誤差範囲を所定値に設定する。例えば、推定位置を初期登録した場合、推定位置の誤差範囲を測位位置の誤差範囲(例えば、20〜200m)とすることができる。また、道路上のカーブ、道路又は通路の特徴地点で推定位置を更新した場合、最小の誤差(例えば、道路幅程度の範囲)とすることができる。
誤差算出部172は、初期登録した推定位置又は更新した推定位置の誤差範囲を所定値に設定した後は、設定した所定値に、初期登録又は更新した推定位置からの歩行者の移動距離又は移動方向に応じた値(例えば、測位誤差の増加分)を加算して誤差範囲を算出する。これにより、一旦歩行者の位置が決定(確定)され、その位置での誤差範囲を所定値に設定した後は、測位軌跡の増加(移動距離又は移動方位)に伴って測位誤差が増加した場合でも、測位軌跡に応じて、推定位置の適切な誤差範囲を求めることができる。なお、誤差範囲を常に適当な所定の一定値(例えば、100m)とすることもできる。
歩行挙動判定部173は、測位部13の距離センサ132、方位センサ133、高度センサ134などで得られたデータに基づいて、歩行者の歩行挙動を判定する。歩行挙動は、歩行者の歩行特性を示すものであり、自転車に乗った場合の走行特性も含む。歩行挙動は、例えば、歩行の開始、歩行速度、歩行速度の変動、歩行の強さ(例えば、歩数センサで加速が大きさで示されるレベル強度)、歩行の強さの変動、単位時間当たりの歩数(自転車の場合には、ペダルをこぐ回数)、歩数の変動、歩行方位、歩行停止などである。
歩行挙動判定部173は、歩行挙動に基づいて歩行の乱れの有無を判定する。歩行の乱れは、例えば、所定の歩行速度又は単位時間当たりの歩数を基準として歩行速度が遅い又は歩数が少ない場合、歩行速度が略一定でなく歩行速度の変動が頻繁にある場合、歩行方位の蛇行又は周回性がある場合、あるいは、歩行の強さが不安定である場合などである。
乗降判定部174は、歩行挙動判定部173で判定した歩行挙動、及び測位部13の距離センサ132、方位センサ133などで得られたデータに基づいて、歩行者の交通手段への乗降を判定する。歩行者の交通手段への乗降の判定は、例えば、歩行停止と所定の速度以上の移動速度とを検出した場合に乗車したと判定することもできる。歩行停止、移動速度などの検出は、加速度センサ又は歩数センサなどを用いることができる。
また、乗降判定部174は、歩行挙動判定部173で判定した歩行挙動、及び振動検出部178で検出した振動特性に基づいて、歩行者の交通手段への乗降を判定する。振動特性は、例えば、加速度センサ、角速度センサ又は角加速度センサなどの振動を検出することができるセンサにより検出し、振動の強さの周波数成分として求めることができる。例えば、歩行者が歩行している場合、振動の周波数特性は、所定の周波数で強さのピークがあるとともに、比較的強さのレベルが大きいのに対し、歩行者が交通手段に乗車した場合は、振動の周波数特性は、広い範囲の周波数で比較的強さのレベルが小さい。例えば、歩行停止と広い範囲の周波数で比較的強さのレベルが小さい振動特性を検出した場合、交通手段に乗車したと判定することができる。また、歩行開始と所定の周波数で比較的強さのレベルが大きい振動特性を検出した場合、降車したと判定することができる。これにより、歩行者が交通手段に乗車したか、あるいは降車したかを精度良く判定することができる。なお、一旦歩行者が交通手段に乗車したと判定した場合に、移動速度又は振動特性から歩行者が乗車しているものと判断できる場合に、仮に歩行者の一時的な歩行を検出したとしても、歩行者が乗車中であると判定すればよい。
位置特定部175は、測位位置に基づいて推定位置の初期登録を行う。また、位置特定部175は、地図マッチング法を利用して、位置推定部171で算出した推定位置に基づいて、誤差範囲内で歩行していると考えられる位置に推定位置を更新し、更新した位置を歩行者の位置として特定(検出)する。この場合、評価部177で算出される評価係数に基づいて、最も確からしい推定位置を歩行者の位置として特定することができる。評価係数の詳細は後述する。なお、評価係数の逆数を相関度と定義し、相関度を用いることもできる。
また、位置特定部175は、誤差算出部172で算出した誤差範囲内に、歩行挙動判定部173で判定した歩行挙動に関連する特徴地点があるか否かを判定し、特徴地点がある場合、その特徴地点を歩行者の位置として特定する。例えば、歩行者の歩行速度又は歩行の強さの変動があった場合に、歩行者の推定位置の誤差範囲内に階段があるときには、推定位置を階段の位置に更新することにより歩行者の位置を特定することができる。これにより、歩行者の位置を精度良く特定することができる。
また、位置特定部175は、乗降判定部174で歩行者が交通手段に乗車したと判定した場合、歩行者が乗車したと判定した時点からの経過時間及び交通機関の駅間の所要時間に基づいて、交通機関の路線に沿って歩行者の位置を特定する。
信頼度算出部176は、測位部13で測位した測位データの信頼度を算出する。より具体的には、信頼度算出部176は、距離センサ132、方位センサ133、高度センサ134などのセンサ単体でのデータの自己矛盾、あるいは、センサ相互のデータの矛盾又は地図情報との不整合などの異常の有無の判定、GPS131の測位データ及び基地局通信の信頼性を示す使用環境指標の算出などを行う。また、センサ等に異常があると判定した場合には、使用可能なセンサを選択するとともに、使用不可のセンサに対しては、そのセンサの誤差分散を無限大にする(又は大きくする)処理を行う。これにより、常にセンサの使用可否を監視する。以下、信頼度算出部176での処理の詳細について説明する。
GPS131の異常の有無の判定は、例えば、GPS131で得られた測位データに基づいて測位した測位位置、歩行者の歩行速度、移動方位などの時間的変化に自己矛盾があるか否かで判定することができる。異常がある場合には、GPS131のデータの誤差分散を無限大にして利用しないようにする。また、このような異常な状況が、所定の時間及び/又は所定の距離の間継続した場合、GPS131の信頼度は低いとする。また、このような異常な状況がなくなった場合、GPS131のデータを利用するとともに、さらに正常な状況が所定の時間又は所定の距離の間継続すれば、GPSの信頼度を正常な値に復帰させる。
GPS131の使用環境指標としては、例えば、GPS131の受信レベル、捕捉衛星数、2次元又は3次元測位の別、CEP(Circular Error Probability)が所定の標準値以下であれば、異常であるとしてGPS131のデータの誤差分散を無限大にして利用しないようにする。また、このような異常な状況が、所定の時間及び/又は所定の距離の間継続した場合、GPS131の信頼度は低いとする。また、このような異常な状況がなくなった場合、GPS131のデータを利用するとともに、さらに正常な状況が所定の時間又は所定の距離の間継続すれば、GPS131の信頼度を正常な値に復帰させる。
基地局通信の使用環境指標としては、例えば、基地局との通信レベル、基地局の通信範囲等が所定の標準値より低下した場合、異常であるとして基地局通信によるデータの誤差分散を無限大にして利用しないようにする。また、このような異常な状況が、所定の時間及び/又は所定の距離の間継続した場合、基地局通信の信頼度は低いとする。また、このような異常な状況がなくなった場合、基地局通信のデータを利用するとともに、さらに正常な状況が所定の時間及び/又は所定の距離の間継続すれば、基地局通信の信頼度を正常な値に復帰させる。なお上記では、GPSと基地局通信とを区別したが、GPSと基地局通信とを結合した測位方式を利用してもよい。
地磁気センサは、その検出原理から周辺の鉄板又は鉄筋等の存在、踏切等の電場又は磁場の存在により検出データにノイズが加わり、検出精度が低下することが多い。このような場合、仮に誤差がない場合でも、地磁気センサを使用しないようにしてもよい。また、建物内(屋内)又は踏切付近では、地磁気センサの検出データにノイズが加わるため、これを利用して歩行者が屋内又は踏切付近に存在する可能性が高いと判定することができる。
センサ相互のデータの矛盾の有無の判定は、例えば、過去のある時刻で測位した測位方位(推定方位)に、その時刻から現在時刻までの相対方位センサのデータ増分を加えたものが、現在時刻での地磁気センサのデータと大きく乖離すれば、地磁気センサのデータが異常であるとみなして地磁気センサを利用しないようにすることができる。また、このような異常な状況が、所定の時間及び/又は所定の距離の間継続した場合、地磁気センサの信頼度は低いとする。また、このような異常な状況がなくなった場合、地磁気センサのデータを利用するとともに、さらに正常な状況が所定の時間及び/又は所定の距離の間継続すれば、地磁気センサの信頼度を正常な値に復帰させる。
また、方位の誤差を考慮して定式化する場合には、地磁気センサの誤差分散としては、例えば、異常の場合に無限大(又は十分に大きな値)、正常の場合に標準値(例えば、平均的な誤差)とする。相対方位センサの誤差分散は、例えば、較正されたとき最小に設定し、時間又は距離が経過するにつれて誤差分散を増加させる。複数のセンサによる誤差分散は、各々のセンサの分散を結合すれば良い。また、他の相互チェックとしては、過去のある時刻の推定位置に、歩数センサから推定された距離を加えたものが、現在時刻でGPS131により測位した測位位置と大きく乖離すれば、GPS131の測位データが異常であるとみなすことができる。
評価部177は、位置推定部171で算出した推定位置、及び位置特定部175で更新した推定位置(この場合、特定した位置)を評価するための評価係数を算出する。評価係数は、推定位置の確からしさを評価するための係数であり、例えば、評価係数が小さいほど推定位置の確からしさ(確率)が大きいとすることができる。評価係数は、例えば、推定位置と測位位置との位置ずれ、道路又は通路の特徴地点における推定位置と測位位置との位置ずれの差の平均、道路又は通路の特徴地点における推定位置と道路又は通路との位置ずれ(距離ずれ)の平均等である。なお、評価係数の詳細は後述する。
振動検出部178は、距離センサ132、方位センサ133内の加速度センサ、角速度センサ、角加速度センサ等により振動特性を検出する。
図8、図9及び図10は振動特性の一例を示す説明図である。図において、横軸は周波数(Hz)を示し、縦軸は振動の強さを示す。これらの振動特性は、加速度センサで鉛直方向の加速度を検出することにより得ることができる。図8(a)は歩行者が通常に歩行する場合(例えば、緩やかな歩行、速歩など)の振動特性を示す。この場合、1秒間に2歩前後の歩数となるため、2Hz付近の振動の強さ(パワースペクトル)が大きくなる。また、緩やかに歩行する場合もあるため、4Hz、6Hz付近でも振動の強さが大きくなる。
図8(b)は歩行者が階段を上がる場合の振動特性を示す。歩行者が階段を上がる場合には、2Hz付近の次に、3Hz、4Hz、5Hz付近で振動の強さが大きくなる。通常の歩行の場合と近似するものの、振動の強さは、全体として小さい値となる。
図8(c)は歩行者が階段を下りる場合の振動特性を示す。歩行者が階段を下りる場合には、振動特性は、通常の走行、階段上りの場合と近似するものの、振動の強さは全体的に大きく、2Hz、4Hz、6Hz付近で振動の強さが大きくなる。特に、2Hz付近では、通常の走行、階段上りの場合に比べて、振動の強さが最も大きくなる。
図9(a)は歩行者が走っている(ランニングしている)場合の振動特性を示す。歩行者が走っている場合、3Hz付近で振動の強さが非常に大きくなる。また、他の周波数では、振動の強さにピークが認められず、全体としてなだらかな特性を示す。
図9(b)は歩行者が自転車に乗って走行している場合の振動特性を示す。歩行者が自転車に乗って走行している場合、通常歩行又はランニングの場合に比べて、自転車のペダルを踏むタイミングに対応した周波数付近で振動の強さが大きく、かつ多くの周波数で強さのピークが認められる。特に、2Hz〜4Hz、6Hz〜8Hz付近で振動のピークが顕著に現われる。図8、図9に示すように、振動特性により、歩行中の歩行状態も具体的に判定することができる。
図10(a)は歩行者が地下鉄、列車等の鉄道車両、路面電車などの交通手段に乗車した場合の振動特性を示す。歩行者が鉄道車両、路面電車などの交通手段に乗車した場合は、振動の周波数特性は、特定の周波数での強さのピークはなく、広い範囲の周波数で比較的強さのレベルが小さい。
図10(b)は歩行者がバスなどの交通手段に乗車した場合の振動特性を示す。歩行者がバスなどの交通手段に乗車した場合は、全体としては振動の強さは小さいものの、1Hz〜2Hz付近で比較的振動の強さが大きくなる。また、他の周波数でも振動の強さは小さいものの、多くのピークを有する特性となる。
また、振動特性に加えて、加速度センサで水平方向の速度を検出することにより、通常歩行、ランニング、又は自転車による走行の別をさらに精度高く判定することができる。例えば、通常歩行で4km/h程度、通常のランニングで10km/h程度、自転車による走行で5〜10km/h程度である。また、歩行者が交通手段に乗車した場合には、交通手段に応じて移動速度が異なる場合があり、移動速度を検出することにより、歩行者が利用している移動手段(移動方法)を判定することができる。なお、詳細は後述する。
表示部18は、例えば、液晶表示パネルであって、歩行者に自身の位置を地図上に表示する。
音声出力部19は、歩行者の位置を表示部18で表示する際に、歩行者に所要の情報を通知するため、又は注意を促すため音声又は音響を出力する。
移動方法判定部20は、誤差算出部172で算出した誤差範囲内の特徴地点を特定するとともに、特定した特徴地点、歩行挙動判定部173で得られた歩行者の歩行挙動、乗降判定部174での乗降の判定結果、振動検出部178で検出した振動特性などを関連付けて、歩行者が利用している移動手段(移動方法)を判定する。
図11は移動手段の例を示す説明図である。図11に示すように、移動手段(移動方法)は、3つのカテゴリーに分類することができる。なお、分類例は一例であって、これに限定されるものではない。第1移動手段は、予め乗降場所が定められた路線を有する交通機関(第1の交通機関)であり、第2移動手段は、第1の交通機関以外の交通機関(第2の交通機関)であり、第3移動手段は、歩行又は自転車である。
第1移動手段としては、例えば、地下鉄、電車、列車若しくは汽車などの鉄道車両、ボート、遊覧船、フェリー若しくは観光船などの船舶、モノレール、ケーブルカー、ロープウェイ、航空機、路線バス又は路面電車などである。また、第2移動手段としては、例えば、自家用車、バイク、タクシー、トラック、観光バス又は貸切バスなどである。
次に、移動手段の判定方法について説明する。図12は乗降場所が定められた路線を有する交通機関を判定する例を示す説明図である。図12に示すように、乗降場所が定められた路線を有する第1の交通機関(第1移動手段、第1移動方法)は、上述したとおり、鉄道車両、船舶、モノレール、ケーブルカー、ロープウェイ、航空機、路線バス又は路面電車などがあり、これらの交通機関には、それぞれ専用の乗降場所があり、乗降場所は交通手段により異なる地点にある。このため、歩行者の位置を推定した場合に、推定位置の誤差範囲に特徴地点として乗降場所を特定することができれば、歩行者がその乗降場所に応じた交通手段を利用する可能性が高くなる。この場合、歩行者が交通手段に乗車したことを判定することができれば、いずれの交通手段を利用したかが判定でき、歩行者の移動手段(移動方法)を判定することが可能となる。
図12に示すように、例えば、鉄道車両の場合、歩行挙動は歩行停止である。歩行者の推定位置の誤差範囲にある特徴地点は、鉄道車両の乗降場所であり、振動特性は、図10(a)の例のように、歩行とは異なる連続的な弱い振動である。移動速度は、50km/h以上であり、高度の変化はない。このような条件のすべて、または、いくつかの条件が合致した場合には、歩行者の移動手段は、鉄道車両であると判定することができる。
また、船舶の場合、歩行挙動は歩行停止である。歩行者の推定位置の誤差範囲にある特徴地点は、船舶の乗降場所又は川、海、湖、沼などである。移動速度は、1km/h以上であり、高度の変化はない。このような条件のすべて、または、いくつかの条件が合致した場合には、歩行者の移動手段は、船舶であると判定することができる。
モノレールの場合、歩行挙動は歩行停止である。歩行者の推定位置の誤差範囲にある特徴地点は、モノレールの乗降場所であり、移動速度は、10km/h以上であり、高度の変化はない。このような条件のすべて、または、いくつかの条件が合致した場合には、歩行者の移動手段は、モノレールであると判定することができる。
ケーブルカーの場合、歩行挙動は歩行停止である。歩行者の推定位置の誤差範囲にある特徴地点は、ケーブルカーの乗降場所であり、移動速度は、10km/h以上であり、高度の変化がある。このような条件のすべて、または、いくつかの条件が合致した場合には、歩行者の移動手段は、ケーブルカーであると判定することができる。
ロープウェイの場合、歩行挙動は歩行停止である。歩行者の推定位置の誤差範囲にある特徴地点は、ロープウェイの乗降場所であり、移動速度は、10km/h以上であり、高度の変化がある。このような条件のすべて、または、いくつかの条件が合致した場合には、歩行者の移動手段は、ロープウェイであると判定することができる。
航空機の場合、歩行挙動は歩行停止である。歩行者の推定位置の誤差範囲にある特徴地点は、航空機の乗降場所であり、移動速度は、300km/h以上であり、高度の変化がある。このような条件のすべて、または、いくつかの条件が合致した場合には、歩行者の移動手段は、航空機であると判定することができる。
路線バスの場合、歩行挙動は歩行停止である。歩行者の推定位置の誤差範囲にある特徴地点は、路線バスの乗降場所であり、振動特性は、図10(b)の例のように、全体としては振動の強さは小さいものの、1Hz〜2Hz付近で比較的振動の強さが大きくなる。また、他の周波数でも振動の強さは小さいものの、多くのピークを有する特性となる。移動速度は、10km/h以上であり、高度の変化はない。このような条件のすべて、または、いくつかの条件が合致した場合には、歩行者の移動手段は、路線バスであると判定することができる。
路面電車の場合、歩行挙動は歩行停止である。歩行者の推定位置の誤差範囲にある特徴地点は、路面電車の乗降場所であり、振動特性は、図10(a)の例のように、歩行とは異なる連続的な弱い振動である。移動速度は、10km/h以上であり、高度の変化はない。このような条件のすべて、または、いくつかの条件が合致した場合には、歩行者の移動手段は、路面電車であると判定することができる。なお、図12の例は一例であって、これに限定されるものではなく、例えば、判定のための条件を他の条件とすることもできる。
一方、第2移動手段(第2移動方法)は、第1移動手段のように、専用の乗降場所がなく、一般道路、駐車場等の任意の地点から乗車できる交通機関(第2の交通機関)である。このため、歩行者の位置を推定した場合に、推定位置の誤差範囲に特徴地点として自動車などの車両が通行できる道路を特定することができれば、歩行者がその交通機関を利用する可能性が高くなる。この場合、歩行者が交通手段に乗車したことを判定することができれば、歩行者の移動手段(移動方法)を判定することが可能となる。歩行者が交通手段に乗車したか否かは、例えば、移動速度が5km/h〜40km/h程度を超える場合に乗車したと判定することができる。
また、第2の交通機関の場合には、交差点の信号機の切り替えタイミングの関係で、交差点付近での減速、加速、あるいは停止することが多く、これらを検出することで、さらに精度良く移動手段を判定することができる。また、第2の交通機関の場合には、第1の交通機関用の乗降場所では停止しないことから、これを検出してもよい。これにより、さらに第2の交通機関での移動の判定精度を高めることができる。
また、例えば、自転車とは異なる周期の歩行リズムを検出したとき、あるいは、移動速度が、例えば、5km/h以下であるとき、移動方法は、歩行であると判定することができる。また、歩行とは異なる周期のリズムを検出し、かつ、移動速度が、例えば、20km/h以下であるときには、歩行者が自転車で移動していると判定することができる。なお、この場合、不定期に移動速度が、例えば、5km/h以上で歩行停止が検出された場合に、歩行者が自転車で移動していると判定してもよい。
次に移動方法判定装置10の地図マッチング法による位置検出処理について説明する。図13は推定位置の新規登録の一例を示す説明図である。推定位置の新規登録(初期登録)は、地図マッチング処理を開始した場合、あるいは、推定位置の候補が1つもなくなってしまった場合に行う処理である。
推定位置の新規登録を行うか否かは、例えば、次の条件(1)、条件(2)により判定する。すなわち、条件(1)及び条件(2)の両方を充足する場合、推定位置の新規登録を実施せず、条件(1)又は条件(2)のいずれかが充足しない場合、推定位置の新規登録を行う。条件(1)は、センサ等の信頼度が所定の閾値以下(信頼性が悪い)場合であり、例えば、GPS131の信頼性が悪い場合、地磁気センサの信頼性が悪い場合などである。また、条件(2)は、所定の範囲(時間及び/又は距離)以上、歩行の乱れがある場合である。
図13に示すように、測位位置Aの誤差範囲内に地図上の道路又は設定した通路があるか否かを判定し、道路(又は通路)がある場合には、測位位置Aに最も近い当該道路上又は通路上の地点を測位位置Aに対応する新規の推定位置として登録する。図13では、誤差範囲内に2つの道路(又は通路)が存在するため、それぞれの道路(又は通路)において測位位置Aから最も近い地点M、Nを推定位置として登録する。この場合、測位位置Aまでの測位軌跡の方位又は測位位置Aでの測位方位とほぼ方位が一致する道路(又は通路)を予め登録しておくこともできる。仮に、測位軌跡の方位又は測位方位と道路(又は通路)の方位とが略一致するような道路(又は通路)がない場合には、誤差範囲内に登録できる道路(又は通路)が存在するまで推定位置の新規登録を行わずに待機する。
推定位置を新規に登録した場合、その推定位置に対応する測位位置の誤差範囲を、新規登録した推定位置の誤差範囲として設定(登録)する。図13の例では、推定位置M、Nの誤差範囲は、推定位置Aの誤差範囲を引き継ぐ。また、新規登録した推定位置M、Nとそれに対応する測位位置Aとの位置ずれに基づいて、推定位置M、Nの評価係数を算出する。
図14は新規登録した推定位置の評価係数の算出の一例を示す説明図である。図14の例は、測位位置Aに対応させて推定位置Mを新規登録した場合を示す。測位位置Aの座標を(X、Y)、新規登録した推定位置Mの座標を(x、y)とすると、推定位置Mの評価係数Cは、C=C1+C2とすることができる。ここで、C1=|x−X|、C2=|y−Y|で表わすことができる。すなわち、推定位置Mの評価係数Cは、推定位置Mと測位位置Aのx座標の差、推定位置Mと測位位置Aのy座標の差とすることができる。この場合、評価係数が小さいほど、推定位置の確からしさ(確率)が高いということができる。評価係数Cは、x座標毎、y座標毎に算出するだけでなく、x座標とy座標の絶対値の和、あるいは、自乗和の平方根等により1つの指標とすることもできる。これにより、推定位置Mが測位位置Aに対して、どの程度確かな位置であるかを把握することができる。
次に、新規登録後の推定位置の軌跡の算出例について説明する。図15は交通機関を利用するまでの地上での推定位置の軌跡の算出例を示す説明図であり、図16は交通機関を利用するまでの地下での推定位置の軌跡の算出例を示す説明図である。図15及び図16の例では、地図マッチングを利用するとともに、道路又は通路の特徴地点に推定位置を更新(補正)する。図15に示すように、推定位置の誤差範囲内に特徴地点である地下横断通路が存在する場合、推定位置を地下横断道路の地点に更新する。なお、特徴地点以外の地点では、推定位置を道路に更新しない。
また、図16に示すように、推定位置の誤差範囲内に特徴地点である曲がり角、券売機、改札口、階段、エスカレータ、エレベータ等が存在する場合、推定位置をこれらの特徴地点に更新する。なお、特徴地点以外の地点では、推定位置を通路に更新しない。
図17は交通機関を利用するまでの地上での推定位置の軌跡算出の他の例を示す説明図であり、図18は交通機関を利用するまでの地下での推定位置の軌跡算出の他の例を示す説明図である。図17及び図18の例では、地図マッチングを利用して、歩行者の歩行方位と道路又は通路の方位とが所定の閾値を超えない限り、推定位置を常時道路又は通路上にマッチングさせる。
また、図17に示すように、推定位置の誤差範囲内に特徴地点である地下横断通路が存在する場合、推定位置を地下横断道路の地点に更新する。また、図18に示すように、推定位置の誤差範囲内に特徴地点である曲がり角、券売機、改札口、階段、エスカレータ、エレベータ等が存在する場合、推定位置をこれらの特徴地点に更新する。
また、別の方法として、例えば、地図マッチングを利用して、推定位置が通路(通路領域)からはみ出した場合に、推定位置を通路に更新することもできる。また、推定位置の誤差範囲内に特徴地点である券売機、改札口、階段、エスカレータ、エレベータ等が存在する場合、推定位置をこれらの特徴地点に更新することもできる。特徴地点以外の地点では、推定位置が通路からはみ出さない限り、推定位置を通路に更新しない。なお、地上の場合も同様である。
また、地図マッチングを利用せずに自立航法のみを利用することもできる。例えば、GPS衛星からの電波を受信できない地下では、自立航法のみを利用して推定位置を求めるとともに、推定位置の誤差範囲内に特徴地点である券売機、改札口、階段、エスカレータ、エレベータ等が存在する場合、推定位置をこれらの特徴地点に更新する。また、GPS衛星からの電波を受信できない地下では、自立航法のみを利用して推定位置を求めるとともに、特徴地点での推定位置の更新を行わないようにすることもできる。かかる方法は、駅舎などの構造により、歩行者が交通手段に乗車又は降車した地点を特定し易いなど推定位置の誤差範囲の大きさがある程度許容できる場合などには、用いることができる。
なお、上述の例では、道路から地下に入り交通手段に乗車するまでの例を説明したが、交通手段から降車して道路に出るまでの推定位置も同様に特定し追跡することができる。従って、例えば、プラットホームから交通手段に乗車するまで、乗車後降車するまで、かつ降車してから道路に出るまでのすべての経路において継続(連続)して歩行者の位置を特定、追跡することが可能となる。
推定位置の誤差範囲は、推定位置の新規登録(初期登録)では、測位誤差(例えば、20〜200mの範囲)とすることができる。また、推定位置の誤差範囲は、道路又は通路の特徴地点で推定位置を更新(補正)した場合には、最小の誤差範囲(例えば、道路幅又は通路幅程度)とすることができる。その後、歩行者が歩行するにつれて、測位誤差が累加されるため、推定位置の誤差範囲を増加させることができる。これにより、一旦歩行者の位置が決定(確定)され、その位置での誤差範囲を所定値に設定した後は、測位軌跡の増加(移動距離又は移動方位)に伴って測位誤差が増加した場合でも、測位軌跡に応じて、推定位置の適切な誤差範囲を求めることができる。なお、推定位置の誤差範囲を常に適当な所定の一定値(例えば、100m)とすることもできる。これにより、位置検出の処理労力を低減することができる。
次に、推定位置の更新方法について説明する。推定位置の更新は、例えば、推定位置の誤差範囲内の道路又は通路の接続特性、道路又は通路と他の領域との接続特性、歩行者の歩行挙動、測位データの信頼度(信頼性)、推定位置の評価係数等に基づいて行う。また、推定位置が妥当でない場合には、推定位置の棄却を行う。
図19は推定位置の更新の一例を示す説明図である。図19に示すように、測位位置Aまでの測位軌跡に対応して、前回(例えば、直近でもよく、2回又は3回などの複数回前でもよい)に更新した推定位置からの推定位置の軌跡により、測位位置Aに対応して2つの推定位置M、Nが存在するとする。推定位置Mの誤差範囲内には、道路又は通路が存在するので、推定位置Mを道路上又は通路上の位置に更新する。また、推定位置Mと更新した推定位置との位置ずれに対応する値を推定位置Mの評価係数に加算して、更新した推定位置の評価係数として引き継ぐようにしてもよい。また、特徴地点において、推定位置Mの位置ずれを補正して推定位置を更新し、評価係数、誤差範囲を更新することもできる。この場合、更新する誤差範囲としては、例えば、最小値(道路幅又は通路幅程度の範囲)を設定することができる。なお、推定位置の方位と道路又は通路の方位との方位差が所定の閾値より小さいか否かを判定し、方位差が閾値より大きい場合、推定位置を道路上又は通路上に更新しないようにすることもできる。
推定位置Nの誤差範囲内では、前回に更新した推定位置が存在していた道路又は通路が誤差範囲外となるため、誤差範囲内に別の道路又は通路があるか否かを判定する。仮に別の道路又は通路が存在する場合、推定位置をその道路又は通路の位置に更新するとともに、推定位置Nの誤差範囲、評価係数を更新した推定位置の誤差範囲、評価係数として引き継ぐ。仮に更新すべき道路又は通路がないと判定した場合、推定位置Nを棄却することができる。
図20は推定位置の更新の他の例を示す説明図である。図20の例は、前回(例えば、直近でもよく、2回又は3回などの複数回前でもよい)に更新した推定位置が存在する道路又は通路が2つの道路又は通路に分岐するような場合である。測位位置Aまでの測位軌跡に対応して、前回に更新した推定位置からの推定位置の軌跡により、測位位置Aに対応して1つの推定位置Mが存在するとする。推定位置Mの誤差範囲内には、分岐した一方の道路又は通路が存在するので、推定位置Mを道路上又は通路上の位置に更新する。また、推定位置Mと更新した推定位置との位置ずれに対応する値を推定位置Mの評価係数に加算して、更新した推定位置の評価係数として引き継ぐようにしてもよい。推定位置Mの誤差範囲外となった他方の道路上又は通路上の推定位置は棄却する。なお、この場合においても、特徴地点において、推定位置Mの位置ずれを補正して推定位置を更新し、評価係数、誤差範囲を更新することもできる。
図21は推定位置の更新の他の例を示す説明図である。図21の例も、前回(例えば、直近でもよく、2回又は3回などの複数回前でもよい)に更新した推定位置が存在する道路又は通路が2つの道路又は通路に分岐するような場合である。測位位置Aまでの測位軌跡に対応して、前回に更新した推定位置からの推定位置の軌跡により、測位位置Aに対応して1つの推定位置Mが存在するとする。推定位置Mの誤差範囲内には、分岐した両方の道路又は通路が存在するので、推定位置Mを各道路上又は通路上の位置に更新する。更新した推定位置を第1候補の推定位置及び第2候補の推定位置とする。また、推定位置Mと第1候補の推定位置及び第2候補の推定位置との位置ずれに対応する値を推定位置Mの評価係数に加算して、第1候補の推定位置及び第2候補の推定位置の評価係数として引き継ぐようにしてもよい。なお、この場合においても、特徴地点において、推定位置Mの位置ずれを補正して推定位置を更新し、評価係数、誤差範囲を更新することもできる。
次に、曲がり角等の特徴地点での推定位置の評価係数の算出方法について説明する。図22は特徴地点での推定位置の評価係数の算出の一例を示す説明図である。図22の例では、曲がり角等の特徴地点B1、B2、B3において、測位位置A1、A2、A3に対応して道路上又は通路上の位置に更新した推定位置M1、M2、M3があるとする。測位位置A1と推定位置M1との位置ずれを(x1、y1)とし、測位位置A2と推定位置M2との位置ずれを(x2、y2)とし、測位位置A3と推定位置M3との位置ずれを(x3、y3)とする。また、前回(例えば、直近でもよく、2回又は3回などの複数回前でもよい)に更新した推定位置と対応する測位位置との位置ずれを(x0、y0)とする。推定位置(例えば、推定位置M3)の評価係数を、推定位置と測位位置との位置ずれの差の平均値として求めることができる。
すなわち、x方向の位置ずれの差の平均値は、{|x1−x0|+|x2−x1|+|x3−x2|}/3となり、y方向の位置ずれの差の平均値は、{|y1−y0|+|y2−y1|+|y3−y2|}/3となる。各特徴地点B1、B2、B3での位置ずれが等しいほど評価係数は小さくなり、推定位置の確からしさ(確率)が大きいといえる。これにより、推定位置が測位位置に対して、どの程度確かな位置であるかを把握することができる。
なお、評価係数として、各特徴地点での位置ずれの差の2乗を合計して平均し、平均した値の平方根を求めることもできる。また、平均値に代えて、中央値、最大値と最小値の和の2分の1の数値など他の統計値を用いることもできる。
図23は特徴地点での推定位置の評価係数の算出の他の例を示す説明図である。図23の例では、曲がり角等の特徴地点B1、B2、B3において、測位位置A1、A2、A3に対応して推定位置M1、M2、M3があるとする。地点B1の位置と推定位置M1との位置ずれ(距離)をd1とし、地点B2の位置と推定位置M2との位置ずれ(距離)をd2とし、地点B3の位置と推定位置M3との位置ずれ(距離)をd3とする。推定位置(例えば、推定位置M3)の評価係数を、道路上又は通路上の特徴地点と推定位置との位置ずれ(距離)の平均値(d1+d2+d3)/3として求めることができる。
すなわち、推定位置と道路又は通路の位置との距離が短いほど、評価係数は小さく、推定位置の確からしさ(確率)が大きいといえる。これにより、推定位置が道路又は通路に対して、どの程度確かな位置であるかを把握することができる。
図24は推定位置の評価係数の他の例を示す説明図である。推定位置の評価係数を求める場合に、図22、図23の例で示すような曲がり角等の特徴地点のように、明らかな方位変更がある地点で評価係数を算出する構成に限定されず、例えば、図24に示すように、推定位置の軌跡又は測位軌跡と地図上の道路形状又は通路形状とのマッチングを評価することもできる。なお、上述したような複数の種類の評価係数のいずれか1つを用いて評価することもでき、あるいは、複数種類の評価係数に適宜重み付けを行って合算し、1つの評価係数として用いることもできる。
次に、推定位置の評価係数を更新(補正)する方法について説明する。道路上の位置に更新した推定位置が横断歩道又はその付近にある場合に、歩行者の歩行速度の増加又は歩行停止を検出したときは、歩行者が横断歩道内又は横断歩道付近にいる確率が高いとして、推定位置の評価係数に所定の1以下の数値(例えば、m1=1/3)を積算することにより評価係数が小さくなるように更新する。なお、上記評価係数に所定の1以下の数値を積算することにより評価係数が小さくなるように更新する場合、実際には、評価係数と数値(デフォルト値は1)とのデータを用意しておき、評価係数の記憶データはそのままにして、積算すべき数値を変更するという形態とし、他の推定位置と比較するとき等に、見かけ上の評価係数として上記積算値を利用することもできる。これにより、以後の評価係数の算出が矛盾なく実施可能となる。
また、道路上の位置に更新した推定位置が横断歩道又はその付近にある場合に、青信号開始時点での歩行挙動又は赤信号開始時点での歩行挙動に応じて評価係数を更新する。例えば、青信号開始時点で歩行停止から歩行開始になった場合、歩行者が横断歩道を歩行している確率が高いとして、算出した評価係数に所定の1以下の数値(例えば、m2=1/5)を積算することにより評価係数が小さくなるように更新する。また、赤信号開始時点で歩行速度の増加があった場合、歩行者が横断歩道を歩行している確率が高いとして、算出した評価係数に所定の1以下の数値(例えば、m3=1/5)を積算することにより評価係数が小さくなるように更新する。
また、道路上の位置に更新した推定位置が歩行者用陸橋にある場合に、階段歩行における歩行速度の変動又は歩行の強さの変動を検出したときは、歩行者が歩行者用陸橋を歩行している確率が高いとして、算出した評価係数に所定の1以下の数値(例えば、m4=1/5)を積算することにより評価係数が小さくなるように更新する。この場合、高度の増加又は減少があるか否かを判定し、高度の増加又は減少がある場合、評価係数を小さくなるように更新することもできる。
また、道路上の位置に更新した推定位置が踏切の付近にある場合に、歩行者の歩行停止を検出したときは、あるいは、地磁気センサの検出レベルにノイズが加わったときは、歩行者が踏切手前で立ち止まっている確率が高いとして、算出した評価係数に所定の1以下の数値(例えば、m5=1/3)を積算することにより評価係数が小さくなるように更新する。
また、通路上の位置に更新した推定位置が道路から地下横断通路(駅へのアクセス通路)に移った場合に、階段歩行における歩行速度の変動又は歩行の強さの変動を検出したときは、歩行者が地下横断通路を歩行している確率が高いとして、算出した評価係数に所定の1以下の数値(例えば、m6=1/5)を積算することにより評価係数が小さくなるように更新する。この場合、GPS131などのセンサの信頼性が低い、地磁気センサの信頼性が低い、歩行速度の変動又は歩行の強さの変動等により所定の数値として、例えば、m5=1/5を用いることができる。また、高度の増加又は減少があるか否かを判定し、高度の増加又は減少がある場合、評価係数を小さくなるように更新することもできる。
また、通路上の位置に更新した推定位置がエレベータの付近にある場合に、歩行者の歩行停止、高度又は気圧の変化、GPS131などのセンサの信頼性低下などを検出したときは、歩行者がエレベータにいる確率が高いとして、算出した評価係数に所定の1以下の数値(例えば、m7=1/5)を積算することにより評価係数が小さくなるように更新する。
また、通路上の位置に更新した推定位置がエスカレータの付近にある場合に、歩行者の歩行停止、歩行速度の変動又は歩行の強さの変動、高度又は気圧の変化、GPS131などのセンサの信頼性低下などを検出したときは、歩行者がエスカレータにいる確率が高いとして、算出した評価係数に所定の1以下の数値(例えば、m8=1/5)を積算することにより評価係数が小さくなるように更新する。なお、エスカレータとエレベータとを区別するための別の歩行挙動として、例えば、上下方向の加速度変化がある場合には、歩行者がエレベータにいると判定し、上下方向だけでなく水平方向にも加速度変化がある場合には、歩行者がエスカレータにいると判定してもよい。
また、通路上の位置に更新した推定位置が駅のプラットホーム、停留所、乗降エリア、搭乗エリアなどの付近にある場合に、歩行者の所定時間以上の歩行停止、GPS131などのセンサの信頼性低下などを検出したときは、歩行者が駅のプラットホーム、停留所、乗降エリア、搭乗エリアにいる確率が高いとして、算出した評価係数に所定の1以下の数値(例えば、m9=1/5)を積算することにより評価係数が小さくなるように更新する。
また、通路上の位置に更新した推定位置が券売機の付近にある場合に、歩行者の一時的な歩行停止、GPS131などのセンサの信頼性低下などを検出したときは、歩行者が券売機付近にいる確率が高いとして、算出した評価係数に所定の1以下の数値(例えば、m10=1/3)を積算することにより評価係数が小さくなるように更新する。
また、通路上の位置に更新した推定位置が改札口の付近にある場合に、歩行者の瞬間的な歩行停止又は歩行の乱れなどを検出したときは、歩行者が改札口付近にいる確率が高いとして、算出した評価係数に所定の1以下の数値(例えば、m11=1/3)を積算することにより評価係数が小さくなるように更新する。
上述の道路又は通路の特徴地点と歩行者の歩行挙動との関連付け、あるいは、特徴地点とセンサの信頼性との関連付けは、予め記憶部15に記憶しておけばよい。
上述のように、評価係数を小さくなるように更新して、推定位置の確からしさを大きくすることができ、位置検出の精度を判定することができる。また、推定位置に基づいて自身の位置を検出する場合に、推定位置の候補が複数存在するようなときでも、最も確からしい推定位置に基づいて自身の位置を検出し続けることが可能となる。なお、評価係数の値を小さくする代わりに、他の推定位置を全て棄却してもよい。これは推定位置の初期位置を特定することに相当する。
推定位置の候補が複数ある場合には、推定位置の候補の中で最も評価係数の小さい推定位置を歩行者の位置であるとし、評価係数が所定の閾値より大きい推定位置を候補対象から棄却することができる。また、閾値以上の歩行距離で、その他領域の推定位置と道路又は通路の推定位置とが存在する場合には、その他領域の推定位置は存在確率が低いとして棄却してもよい。さらに、測位位置の誤差範囲外となる推定位置は棄却することができる。また、推定位置が1つだけ存在し、その推定位置が道路上又は通路上にある状況が所定時間及び/又は所定距離の間続いた場合に、その推定位置を歩行者の位置として確定し、確定した推定位置の評価係数を0にする。また、推定位置が1つも存在しない場合、新規の推定位置が得られるまでの間、測位位置又は直近の推定位置からの測位軌跡を累計した位置を、仮の推定位置(暫定位置)とすることができる。
次に測位方位の補正について説明する。地図マッチング法により、道路又は通路の特定とその推定位置が確定し、かつ測位方位が所定の歩行距離(例えば、20m)以上変化がない場合に、測位方位を地図上の道路又は通路の方位に補正することができる。測位方位の補正のタイミングは、例えば、特定された推定位置が唯一である状況が所定の時間(例えば、1分)又は所定の距離(例えば、50m)以上継続した場合、あるいは、特定された全ての推定位置に対応する地図上の道路又は通路方位が、所定閾値(例えば、2度)の範囲内である状況が所定の時間(例えば、1分)及び/又は所定の距離(例えば、50m)以上継続し、かつ測位方位に所定の歩行距離(例えば、20m)以上変化がない場合である。
また、以下のような補正タイミングの条件を付加することもできる。条件(1)として、所定の時間(例えば、1分)又は所定の距離(例えば、50m)の間で推定位置と測位位置との差が所定の閾値(例えば、50m)以内である場合、条件(2)として、所定の時間(例えば、1分)又は所定の距離(例えば、50m)の間で地磁気センサが正常である確率が低い場合、例えば、所定の歩行距離(例えば、20m)以上連続して地磁気センサが正常でない場合、条件(3)として、所定の時間(例えば、1分)及び/又は所定の距離(例えば、50m)の間でGPS131が正常である確率が低い場合、例えば、所定の歩行距離(例えば、50m)以上連続してGPS131が正常でない場合である。なお、この測位方位の補正は、地図上の道路方位又は通路方位が直進である場合に限定してもよい。
次に、歩行者の位置を地図上で表示する表示例について説明する。歩行者の位置を表示部18で表示する場合、推定位置がないときは、測位位置又は暫定位置を表示し、推定位置があるときは、その推定位置(更新した推定位置を含む)を表示する。
図25は歩行者の位置の表示の一例を示す説明図である。道路又は通路上に推定位置が1つの場合、その推定位置(又は更新した推定位置を含む)を地図上に表示した上で、表示した推定位置の誤差範囲も同時に表示する。なお、推定位置が複数ある場合には、評価係数の最も小さい推定位置を1つ表示することもできる。
図26は歩行者の位置の表示の他の例を示す説明図である。推定位置が複数存在する場合、複数の推定位置を包含する領域を推定位置として表示する。この場合、各推定位置の誤差範囲を含むような範囲を表示してもよい。また、推定位置の評価係数の大小に応じて、その推定位置の誤差範囲の大きさを拡大又は縮小した上で、推定位置とその誤差範囲とを同時に表示することもでき、また、推定位置が複数ある場合には、各推定位置の誤差範囲を含む範囲を表示してもよい。また、複数の推定位置の重心位置を表示してもよい。
図27は歩行者の位置の表示の他の例を示す説明図である。推定位置が複数存在する場合、各推定位置を表示した上で、各推定位置の誤差範囲又は確からしさの順位などを同時に表示する。図27では、第1候補の推定位置が最も確率の高い歩行者の位置であり、第2候補の推定位置は、その次に確率が高い歩行者の位置を示す。また、推定位置が複数存在する場合に、所定の閾値より小さい評価係数の推定位置が複数あるときは、評価係数が閾値より小さい位置だけを表示することもできる。これにより、歩行者は、自身の位置を容易に判断することができるとともに、最も確からしい位置のみならず、可能性のある位置も知ることができる。
図28は歩行者の位置の表示の他の例を示す説明図である。図28では、表示部18の表示面が小さく、地図情報を詳細に表示することができないような場合(例えば、地図の縮尺を大きくできない場合)には、道路又は通路を線分で表示した上で、歩行者の位置を1つの点で表示することもできる。
上述のとおり、推定位置を更新することにより特定(検出)した位置を歩行者の位置として表示する場合に、特定した位置が複数あるときには、算出又は補正した評価係数の大小に応じて、最も確からしい特定位置を表示することもでき、あるいは、複数の特定位置をすべて表示してもよく、あるいは、特定した位置の中からいくつかを選択して表示してもよい。また、歩行者の位置を検出している過程のある時点において、一時的に精度よく位置を検出することができず、仮に評価係数が大きくなり、検出した位置を表示した場合には、歩行者に誤った位置を表示する恐れがあるようなときでも、その後の測位の結果、特定位置の確からしさが十分確保できたような場合には、位置の確からしさを確保できた時点以降、その特定位置を表示させることもできる。
次に、歩行者が交通手段に乗車して移動中である場合の歩行者の位置を表示する例について説明する。図29は歩行者が交通手段で移動中の歩行者の位置の表示の一例を示す説明図である。図29に示すように、歩行者が乗車した交通手段の路線図を表示部18で表示し、歩行者の現在位置を路線図に沿って表示させることができる。
この場合、出発地点から目的地まで最適な経路を誘導する場合には、誘導する経路にある乗車駅と降車駅との間の路線図を表示させることができる。また、交通手段に乗車して比較的長い距離を移動する場合には、現在位置付近の路線図を表示させることもできる。
図30は歩行者が交通手段で移動中の歩行者の位置の表示の他の例を示す説明図である。図30に示すように、現在位置付近の路線図に加えて、次の駅までの所要時間、乗り換え案内のための情報などを表示することができる。また、経路誘導を行う場合には、降車する駅までの所要時間を表示してもよい。
上述の例では、鉄道車両で移動中の歩行者の位置の表示例を説明したが、これに限定されるものではなく、路線を有する他の交通手段に乗車している場合も、同様に位置を表示させることができる。また、専用の乗降場所がない交通手段の場合には、車両用の道路に沿って車両で移動中の歩行者の位置を表示することができる。
次に位置検出処理の手順について説明する。図31、図32及び図33は位置検出処理の手順を示すフローチャートである。制御部11は、移動方法判定装置10内の各部と協働して位置検出処理を行う。制御部11は、初期位置の探索が必要であるか否かを判定する(S11)。
歩行者の場合と異なり、車両の場合には、位置検出が不能になることは殆どなく、電源が切られた場合でも、検出した位置が保存されるため、初期位置を探索する必要性が殆ど皆無である。しかし、歩行者の場合には、歩行者が携帯装置の電源を切った後、あるいは、地下から道路に出てきた後等、位置検出が不能になる場合があり、初期位置を探索する必要がある。初期位置の探索は、例えば、歩行者が交通手段で移動した場合には、路線図に沿って歩行者の位置を追跡することが可能であり、歩行者が交通手段から降車した駅付近に限定することにより、GPS131による測位、あるいは、通常基地局との通信により行うことができる。
初期位置の探索が必要である場合(S11でYES)、制御部11は、初期位置の探索を行い(S12)、探索位置を暫定的な測位位置とする(S13)。初期位置の探索が必要でない場合(S11でNO)、すなわち、1又は複数の推定位置をすでに保持している場合、制御部11は、ステップS12、ステップS13の処理を行わずに後述のステップS14の処理を行う。
制御部11は、路上装置との通信の有無を判定し(S14)、路上装置との通信がある場合(S14でYES)、測位位置を通信位置に補正し(S15)、保持していた推定位置をすべて棄却する(S16)。路上装置との狭域通信(局所通信)による誤差は、GPS等に比べてかなり小さく、精度が高いため、局所通信により通信位置が得られた場合には、この通信位置を最も信頼性の高い推定位置とすることができる。
制御部11は、補正した測位位置を推定位置として登録し(S17)、推定位置の誤差範囲、評価係数を登録する(S18)。これにより、推定位置の新規登録(初期登録)が完了するとともに、推定位置の誤差範囲、評価係数が設定される。路上装置との通信がない場合(S14でNO)、制御部11は、ステップS17の処理を行い、暫定的な測位位置を推定位置として登録する。
制御部11は、測位データを取得し(S19)、測位データの異常の有無を確認し(S20)、確認結果に応じて、測位データの信頼度を算出する(S21)。制御部11は、測位データに基づいて測位位置を算出し(S22)、測位位置の測位誤差を算出する(S23)。測位位置の算出は、上述したように、距離センサ132、方位センサ133などによる自立航法と、GPS131等による衛星航法との組み合わせにより行うことができる。ただし、周囲にビル等の高い障害物がなく、GPS衛星の測位性能が非常によい場合には、自立航法を用いないで、GPS衛星だけで測位することも可能である。
制御部11は、歩行者の歩行挙動を取得し(S24)、外部装置からの地図情報、路線情報の更新の有無を判定する(S25)。地図情報、路線情報の更新があった場合(S25でYES)、制御部11は、地図情報、路線情報を取得する(S26)。地図情報、路線情報の更新がない場合(S25でNO)、制御部11は、ステップS26の処理を行わずに後述のステップS27の処理を行う。なお、外部装置から歩行者の周辺にある信号機の信号情報を取得するようにしてもよい。
制御部11は、移動方法の判定を行い(S27)、判定した移動方法に基づいて、歩行者の位置を特定(推定位置の更新)する(S28)。すなわち、制御部11は、判定した移動方法に対応する地図情報に基づいて、歩行者がどのような移動方法で移動する場合であっても、歩行者にとって違和感なく、連続的かつ高精度に位置検出を継続することができる。制御部11は、特定した位置(更新した推定位置)の誤差範囲、評価係数を算出し(S29)、歩行者の位置を表示部18に表示する(S30)。
制御部11は、測位方位の補正条件を充足するか否かを判定し(S31)、条件を充足する場合(S31でYES)、測位方位を地図上の道路方位又は通路方位に補正する(S32)。測位方位の補正条件を充足しない場合(S31でNO)、制御部11は、ステップS32の処理を行わずに、後述のステップS33の処理を行う。
制御部11は、センサの較正の要否を判定し(S33)、較正が必要である場合(S33でYES)、センサを較正する(S34)。センサの較正が必要でない場合(S33でNO)、制御部11は、ステップS34の処理を行わずに、後述のステップS35の処理を行う。制御部11は、処理終了の指示の有無を判定し(S35)、指示がない場合(S35でNO)、ステップS11以降の処理を続け、指示がある場合(S35でYES)、処理を終了する。
次に、移動方法の判定処理について説明する。図34、図35及び図36は移動方法の判定処理の手順を示すフローチャートである。制御部11は、歩行者の移動速度を検出し(S101)、振動特性を検出する(S102)。制御部11は、歩行挙動を判定し(S103)、高度を検出する(S104)。
制御部11は、歩行者が歩行又は自転車で移動しているか否かを判定する(S105)。すなわち、制御部11は、歩行者の移動方法が第3の移動方法であるか否かを判定する。歩行者が歩行又は自転車で移動していると判定した場合(S105でYES)、制御部11は、直近に判定した移動方法が歩行又は自転車であるか否かを判定し(S106)、直近に判定した移動方法が歩行又は自転車である場合(S106でYES)、移動方法は、歩行又は自転車のままであると判定し(S107)、処理を終了する。
直近に判定した移動方法が歩行又は自転車でない場合(S106でNO)、制御部11は、移動方法は、歩行又は自転車に変化したと判定し(S108)、処理を終了する。
歩行者が歩行又は自転車で移動していないと判定した場合(S105でNO)、制御部11は、直近に判定した移動方法が歩行又は自転車であるか否かを判定し(S109)する。直近に判定した移動方法が歩行又は自転車である場合(S109でYES)、制御部11は、直近に推定した推定位置(又は特定した位置でもよい)の誤差範囲に特徴地点としての乗降場所があるか否かを判定する(S110)。
誤差範囲に乗降場所がある場合(S110でYES)、すなわち、誤差範囲に乗降場所を特定することができた場合、制御部11は、判定した歩行挙動、検出した振動特性、移動速度、高度変化などが、特定した乗降場所に対応する交通機関のものと一致するか否かを判定する(S111)。
乗降場所に対応する交通機関のものと一致する場合(S111でYES)、制御部11は、歩行者が乗車している交通手段が、予め乗降場所が定められた路線を有する交通機関(第1の交通機関)の交通手段であるとし、移動方法が第1の移動方法に変化したと判定し(S112)、処理を終了する。
誤差範囲に乗降場所がない場合(S110でNO)、あるいは、乗降場所に対応する交通機関のものと一致しない場合(S111でNO)、制御部11は、直近に推定した推定位置(又は特定した位置でもよい)の誤差範囲に特徴地点としての道路があるか否かを判定する(S113)。
誤差範囲に道路がある場合(S113でYES)、制御部11は、予め乗降場所が定められた路線を有しない交通機関(第2の交通機関)であるとし、移動方法が第2の移動方法に変化したと判定し(S114)、処理を終了する。誤差範囲に道路がない場合(S113でNO)、制御部11は、異常通知を行って(S115)、処理を終了する。
直近に判定した移動方法が歩行又は自転車でない場合(S109でNO)、制御部11は、直近に判定した移動方法が第1の移動方法であるか否かを判定する(S116)。直近に判定した移動方法が第1の移動方法である場合(S116でYES)、制御部11は、交差点での加減速又は停止の有無、過去の乗降場所での停止の有無を判定し(S117)、第1の移動方法に該当するか否かを判定する(S118)。
第1の移動方法に該当する場合(S118でYES)、制御部11は、処理を終了する。第1の移動方法に該当しない場合(S118でNO)、制御部11は、移動方法が第2の移動方法であると判定し(S119)、処理を終了する。
直近に判定した移動方法が第1の移動方法でない場合(S116でNO)、制御部11は、交差点での加減速又は停止の有無、過去の乗降場所での停止の有無を判定し(S120)、第2の移動方法に該当するか否かを判定する(S121)。
第2の移動方法に該当する場合(S121でYES)、制御部11は、処理を終了する。第2の移動方法に該当しない場合(S121でNO)、制御部11は、異常通知を行って(S122)、処理を終了する。
以上説明したように、本発明によれば、屋内又は屋外にかかわらず、かつ移動方法(移動手段)にかかわらず、歩行者がどのような移動方法を利用しているかを精度よく判定することができる。また、判定した移動方法に対応する地図情報に基づいて、歩行者がどのような移動方法で移動する場合であっても、歩行者にとって違和感なく、連続的かつ高精度に位置検出を継続することができる。
上記の例では、歩行者が、通常歩行時又は自転車走行時に携帯機器を身に付けている場合について説明しているが、これに限定されるものではなく、歩行者が直接携帯機器を身につけず、かばん、携帯機器を車輪付き旅行ケース、荷車、乳母車、車椅子等に収納、仮設置又は仮置きし、歩行者が持ち歩いたり、車を押したり引いたり、あるいは、手で車輪を回転したりして、歩行者の通行できる領域を通行している場合であってもよい。この場合、歩数センサのデータにより、これらの状況を推定し、歩行者の歩数、又は手で回転させる周期を検知して距離を算出してもよい。
また、上記では、位置検出に必要なデータを全て携帯機器に集約して位置検出する形態を示したが、これに限定されず、路上又はセンタに設置したサーバに携帯機器から必要データを送信し、位置検出処理をサーバで実行させ、その結果を携帯機器に送信する、という形態等にしてもよい。あるいは、処理の実行を分担してもよい。これにより、携帯機器の負担を減らすことが可能となる。
上述の移動方法判定装置は、例えば、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、PHS、ノート型パーソナルコンピュータ、音楽プレーヤ、携帯型ゲーム装置等の情報端末装置又は携帯端末装置などに適用することができる。
上述の実施の形態において、移動方法判定装置に傾斜角センサを備えることもできる。これにより、歩行者の歩行、取り出し、操作等に伴う装置の振動又は姿勢変化で装置が傾いた場合、方位センサ又は距離センサの種類によっては機能が停止し、あるいは、性能が劣化することがある。従って、傾斜角センサにより傾斜角を検出し、方位センサ又は距離センサを補正することもできる。
上述の実施の形態で示した歩行者の位置を推定するための数式は、一例であって、これらに限定されるものではなく、適宜変形した数式を用いることもできる。
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。