本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されない。本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得る。したがって、本発明は以下に示す実施の形態および実施例に限定して解釈されるものではない。
なお、異なる実施の形態で、同じ符号を付している要素は同じ構成要素を示し、繰り返しになる説明は省略している。
(実施の形態1)
本実施の形態では、微小構造体と、微小構造体を制御する電気回路を同じ基板上に同時に作製する方法を説明する。図1は、本実施形態のMEMSの構造を示す図であり、図1(A)はMEMSの断面図であり、図1(B)は微小構造体の上面図である。図1(B)の鎖線O−Pで切った断面図が図1(A)の微小構造体11の断面図に対応する。なお、図1(A)において、左側は微小構造体が形成されている第1の領域の断面図であり、右側が電気回路が形成されている第2の領域の断面図である。この点は、図2〜図3に示す断面図も同様である。また、図1(A)において、第2の領域の電気回路10の断面構成はトランジスタを代表的に示しており、この点は他の実施形態も同様である。
電気回路10と微小構造体11は同一の絶縁表面を有する基板100に設けられている。電気回路10のトランジスタは薄膜トランジスタであり、その構造はボトムゲート型である。トランジスタは、第1導電層101、第1導電層101上の第1絶縁層102、第1絶縁層102上の半導体層103と、半導体層103上の第2導電層104を有する。
第1導電層101はトランジスタのゲート電極またはゲート配線を構成する。第1絶縁層102はゲート絶縁層を構成する。半導体層103には、チャネル形成領域と、ソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域とが少なくとも形成される。第2導電層104は半導体層103の高濃度不純物領域に接続され、ソース電極またはドレイン電極として機能する。
トランジスタを覆って第2絶縁層105が形成されている。第2絶縁層105上には第3導電層106が形成されている。第3導電層106は第2絶縁層105に形成されたコンタクトホールを介して、第2導電層104に接続されている。
電気回路10の電極、配線、端子は、第1導電層101、第2導電層104および第3導電層106を用いて形成される。これら第1導電層101、第2導電層104および第3導電層106で形成された電極、配線によって、微小構造体11と電気回路10が電気的に接続されている。また、電気回路10には、トランジスタ以外の素子も形成される。例えば、半導体層103を用いることで、MIS型容量素子やダイオードを形成することができる。
図1(A)に示すように、微小構造体11は、第2絶縁層105に形成された開口部107に形成される。微小構造体11は、可動電極121(第1構造層)と、基板100に固定された12個の固定電極122(第2構造層)と、固定電極122に接続された配線123とを有する。可動電極121はいわゆるローター(回転子)であり、固定電極122はいわゆるステータ(固定子)である。配線123は電気回路10に接続される。配線123は固定電極122と一体に形成されている。言い換えると、配線123の一部が固定電極122を構成する。よって固定電極122と配線123とを含めて第2構造層とみなすこともできる。
可動電極121の形状は、円盤状であり、4つの開口部121aが形成されており、また基板100から分離されている。
12個の固定電極122は、可動電極121を囲んで円弧状に配置されている。固定電極122は基板100に固定されているが、先端(可動電極121に近接している端部)は基板100から分離されており、基板から離れたところで可動電極121に静電力を作用できるようになっている。
可動電極121、固定電極122および配線123は多層構造であり、下層は絶縁層、上層は導電層でなる。下層の絶縁層はトランジスタの第1絶縁層102と同じ層にあり、第1絶縁層102と同じ絶縁膜から形成されている。上層の導電層はトランジスタの半導体層103と同じ層にあり、半導体層103と同じ半導体膜から形成されている。
配線123により、12個の固定電極122を3個ごとに並列に接続することで、微小構造体11を3相4極のモータとして機能させることができる。3相の固定電極122に順次に電圧を印加することにより、可動電極121と固定電極122間に静電力(静電引力)が生ずる。この静電力により、可動電極121が回転する。可動電極121の回転方向は、固定電極122に印加する電圧で制御できる。
以下、図2〜図5を用いて、図1に示すMEMSの作製方法を説明する。ここでは、第1の領域に微小構造体11を第2の領域に電子回路を10を形成する。まず、基板100として絶縁表面を有する基板を用意する。基板100上に導電膜を形成し、フォトリソグラフィ工程とエッチング工程により所定の形状に加工し、図2(A)に示すように、第1導電層101、131を形成する。つまり、基板100上に形成されたおなじ導電膜をパターニングして第1の導電層101、131を形成している。フォトリソグラフィ工程とエッチング工程により膜を所定の形状に加工するための処理はパターニングとも呼ばれる。第1導電層101、131上に第1絶縁層132を形成する。
絶縁表面を有する基板は、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等の絶縁性基板や、表面に絶縁膜を形成した絶縁性基板を用いることができる。また、表面に絶縁膜を形成したシリコンウエハ、金属、ステンレスなどの導電性基板も用いることができる。
基板表面に形成する絶縁膜は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン(SiOxNy、x>y)、窒化酸化シリコン(SiOxNy、x<y)等から選ばれた材料の単層膜、多層膜で形成することができる。これらの膜はCVD法やスパッタ法で形成することができる。また、シリコンウエハや金属基板の場合、その表面を窒化処理や酸化処理して、窒化物、酸化物を形成することもできる。
第1導電層101、131の材料には、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)等の金属元素、これら金属元素を主成分とする金属化合物(例えば、チタン窒化物、タングステン窒化物)、これら金属を主成分とする合金(例えば、アルミニウムとチタンの合金、クロムとモリブデンの合金)などが選択できる。これらの材料は蒸着法やスパッタリング法で形成でき、これらの材料の単層膜又は多層膜で第1導電層101、131を形成する。
第1導電層131は犠牲層となる層であり、第1導電層131の形状で微小構造体11の構造層(可動電極121、固定電極122、配線123)の形状が規定される。第1導電層131は図4に示すように、円盤状に形成される。電気回路10にはゲート電極(ゲート配線)の他に、第1導電層101により電気回路10を構成する電極、配線、端子などを形成することができる。
第1絶縁層132はトランジスタのゲート絶縁膜を構成するため、ゲート絶縁膜に適した材料が選択される。例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン(SiOxNy、x>y)、窒化酸化シリコン(SiOxNy、x<y)等から選ばれた材料の単層膜、多層膜で形成することができる。
次に、第1絶縁層132上に半導体層133を形成する。半導体層133は、シリコン、ゲルマニウム、シリコンとゲルマニウムの化合物(シリコンゲルマニウム)で形成することができる。また、本実施形態では、半導体層133を結晶性半導体で形成する。CVD法やスパッタ法で非晶質の半導体を成膜し、非晶質半導体膜に光エネルギーや熱エネルギーを与えて結晶化させることで、結晶性半導体膜を形成することができる。また、微結晶や多結晶の半導体をCVD法やスパッタ法で成膜することもできる。後者の場合、成膜した後、光エネルギーや熱エネルギーを与えて結晶化させること(または、結晶性を向上させること)もできる。
例えば、非晶質シリコンを形成するには、シラン(SiH4)ガスを水素で希釈した原料ガスを用いてCVD法で成膜すればよい。またシリコンでなるターゲットを用いてスパッタリング法で形成することもできる。非晶質ゲルマニウムを形成するには、ゲルマン(GeH4)ガスを水素で希釈した原料ガスを用いてCVD法で成膜することができるし、ゲルマニウムでなるターゲットを用いてスパッタリング法で成膜することもできる。非晶質シリコンゲルマニウムを形成するには、モノシラン(SiH4)ガスとゲルマン(GeH4)ガスを所定の比で混合し水素で希釈した原料ガスを用いてCVD法で成膜することができるし、また、シリコンとゲルマニウムの2種類のターゲットを用いてスパッタリング法で成膜することもできる。
CVD法による成膜には、原料ガスに、水素ガスの他、ヘリウムガス、フッ素ガス、Ar、Kr、Ne等の希ガスを添加することもできる。また、原料ガスとしてモノシラン(SiH4)ガスの代わりに、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4などを用いることが可能である。また、上記の原料ガスを用いてプラズマCVD法により、微結晶や多結晶半導体を絶縁層132上に直接形成することもできる。また、スパッタ法による成膜では、基板温度などを制御することで微結晶や多結晶半導体を形成することができる。
非晶質半導体膜を結晶化させる方法としては、レーザ光を照射する方法、赤外線等を照射する方法、電気炉による加熱による方法、半導体の結晶化を助長させる金属元素を半導体膜に導入して結晶化させる方法などが挙げられる。
結晶化に用いられるレーザには、連続発振型のレーザ(CWレーザ)やパルス発振型のレーザ(パルスレーザ)双方とも用いることができる。結晶化に好適な気体レーザとしては、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザなどがある。また固体レーザであれば、ドーパント(例えば、Nd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Ta)を含んだYAG、YVO4、YAlO3、GdVO4、フォルステライト(Mg2SiO4)などの結晶を媒質に用いたレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、およびTi:サファイアレーザなどが挙げられる。
半導体を結晶化するには、これらのレーザから発振されるビームの基本波だけでなく、基本波の第2高調波から第4高調波のビームを照射することができる。例えば、Nd:YVO4レーザ(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を用いることができる。レーザのエネルギー密度は0.01MW/cm2以上100MW/cm2以下の範囲が必要であり、好ましくは0.1MW/cm2以上10MW/cm2以下の範囲とする。走査速度を10cm/sec以上200cm/sec以下の範囲とすればよい。
YAGなどの上記結晶を媒質とする固体レーザ、Arイオンレーザ、およびTi:サファイアレーザは、連続発振をさせることが可能であり、Qスイッチ動作やモード同期などを行うことによって10MHz以上の発振周波数でパルス発振をさせることも可能である。10MHz以上の発振周波数でレーザビームを発振させると、半導体膜がレーザビームによって溶融してから固化するまでの間に、次のパルスが半導体膜に照射できる。そのため、レーザビームを走査することにより、レーザビームを照射することで生じた固液界面を連続的に移動させることができるため、半導体膜の結晶粒を走査方向に向かって長く成長させることができる。
また、レーザビームの代わりに、ランプを光源とする赤外光、可視光、または紫外光を照射することにより半導体膜を結晶化することもできる。ランプとして、代表的には、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、または高圧水銀ランプが用いられる。ランプによる光の照射を1回以上10回以内、好ましくは2回以上6回以下繰り返す。1回の照射では、ランプの点灯時間を1秒以上60秒以内、好ましくは30秒以上60秒以下の範囲とし、半導体膜が600℃以上1000℃以内の温度で瞬間的に加熱されるようにする。
加熱処理に電気炉を用いる場合には、半導体が原料ガスにシランを用いた非晶質シリコンである場合は、最初に400℃程度の加熱工程を行い、シリコン中の水素を放出させ、しかる後、非晶質シリコンが結晶化する温度まで上昇させることが好ましい。このような加熱処理により、結晶化の際の膜荒れを低減することができる。
また、結晶性半導体の形成方法には、結晶化を助長させる金属元素を用いて結晶化させる方法もある。この方法は、特に、非晶質シリコン膜を結晶化させるのに好適である。非晶質シリコン膜の結晶化を助長させる金属元素を半導体に導入し、レーザビームの照射または500℃〜600℃で電気炉による加熱処理を行うことで、粒界での結晶粒の連続性が高い結晶性半導体を得ることができる。シリコンの結晶化を助長する金属元素としては鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、銅(Cu)および金(Au)から選ばれた一種または複数種類の金属元素を用いることができる。また、金属元素を用いた結晶化は非晶質シリコンだけでなく、ゲルマニウムを0.01〜4.5atomic%程度に有する非晶質シリコンゲルマニウムの結晶化にも適用できる。
これらの金属元素を半導体に導入する手段は、半導体の表面またはその内部に金属元素を存在させることができる手法であれば、特に制限はない。例えばスパッタ法、CVD法、プラズマ処理法(プラズマCVD法も含む)、吸着法、金属塩の溶液を塗布する方法を使用することができる。このうち、溶液を用いる方法は簡便であり、半導体に導入される金属元素の濃度調整が容易である。溶液を塗布するには、半導体の表面全体に溶液を行き渡らせるため、半導体の表面の濡れ性を改善することが好ましい。濡れ性を改善するには非晶半導体の表面に極薄い、10nm以下の酸化膜を形成することが望ましい。このように極薄い酸化膜を形成するには、酸素雰囲気中でのUV光の照射処理、熱酸化処理、過酸化水素による処理、ヒドロキシラジカルを含むオゾン水による処理等により行うことができる。
金属元素を用いて結晶された結晶性シリコンは、単結晶シリコンと同様、結晶粒界でのシリコンの元素の結合が切れることなく連続している特徴がある。このような結晶構造の特徴により金属元素を用いない結晶化によって作製される多結晶シリコンに比べて靭性が高くなる。これは、結晶粒界が欠陥となって起こる応力集中が起こらず、結果として金属元素を用いずに結晶化された多結晶シリコンに比べて破壊応力が高くなるからである。さらに、結晶粒界で原子の結合が連続していることによって、電子の移動度が大きいため、静電力(静電引力)で制御する微小構造体の構造層の材料として適している。もちろん、電磁力により制御される微小構造体にこのような結晶性シリコンを適用できる。
また、結晶化に用いたニッケル等の金属元素は、シリコンと結合してシリサイドを形成する。ニッケルシリサイドのような金属化合物はシリコンよりも強度が高いことが知られている。そのため、構造層中にシリサイドが形成されるように、金属元素を導入してもよい。
一方で、結晶化に用いた金属元素は電気回路10の素子の特性を劣化させるため、結晶化した後は、少なくとも電気回路10が形成される領域(第2の領域)において、導入した金属元素を半導体層133から除去することが望ましい。その方法を以下に説明する。
まず、オゾン含有水溶液(代表的にはオゾン水)で結晶性シリコンの表面を処理することにより、結晶性半導体膜の表面に酸化膜(ケミカルオキサイドと呼ばれる)からなるバリア層を1nm以上10nm以下の厚さで形成する。バリア層は、後の工程でゲッタリング層のみを選択的に除去する際にエッチングストッパーとして機能する。
次いで、バリア層上に希ガス元素を含むゲッタリング層をゲッタリングサイトとして形成する。ここでは、CVD法またはスパッタリング法により希ガス元素を含む半導体膜をゲッタリング層として形成する。ゲッタリング層を形成するときには、希ガス元素がゲッタリング層に添加されるようにスパッタリング条件を適宜調節する。希ガス元素としては、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)から選ばれた一種または複数種を用いることができる。なお、ゲッタリングの際、金属元素は酸素濃度の高い領域に移動しやすい傾向があるため、ゲッタリング層に含まれる酸素濃度は、例えば5×1018cm−3以上とすることが望ましい。
次に、結晶性シリコン膜、バリア層およびゲッタリング層に加熱処理(例えば、電気炉による加熱処理や、レーザビームの照射処理)を行うことで、結晶性シリコンから金属元素が除去され、結晶性シリコン膜中での金属元素の濃度を低下させることができる。
次に、図2(C)に示すように、半導体層133および第1絶縁層132に対してフォトリソグラフィ工程とエッチング工程を行い、それぞれを所定の形状に加工する。半導体層133から、トランジスタの半導体層103と、第1構造層の一部となる半導体層134と、第2構造層の一部となる半導体層135が形成される。また、第1絶縁層132は、半導体層103、134、135と同じ形状に加工され、第2の領域にはトランジスタのゲート絶縁膜となる第1絶縁層102、第1の領域には第1構造層の一部となる絶縁層126と、第2構造層の一部となる絶縁層127が形成される。図5は図2(C)の微小構造体11の上面図である。図5の鎖線O−Pに沿った断面が図2(C)に図示されている。
この工程により、微小構造体11の第1、第2構造層の形状が確定する。円形に形成された絶縁層127と半導体層135の積層体が可動電極121を構成し、絶縁層126と半導体層134の積層体が固定電極122および配線123を構成する。なお、可動電極121は基板100に固定されない第1構造層であり、最終的に基板100から分離される。そのため、絶縁層126と半導体層134でなる積層体全体は、犠牲層となる第1導電層131の上面に配置される。また、円形に形成された第1構造層は、図5に示すように、開口部134aを有していてもよい。固定電極122は先端に基板100から分離された部分を有し、かつ基板100に固定された部分を有する第2構造層である。そのような固定電極122を形成するため、絶縁層127と半導体層135でなる積層体の先端は、第1導電層131の上面と側面にかかるように形成され、他の部分は基板100の表面(絶縁表面)に接して形成される。
次に、図2(D)に示すように、n型またはp型の高濃度不純物領域を形成するため、ドーピング法またはイオン注入法により、半導体層103に導電性を付与する不純物を選択的に添加する。n型を付与する不純物元素としてリン(P)または砒素(As)が用いられ、p型を付与する不純物元素としては、ボロン(B)が用いられる。ゲート電極となる第1導電層101上を除く部分に不純物を添加するには、フォトリソグラフィ法を用いて不純物を添加しない領域をレジストマスクで覆い、不純物の添加を行えばよい。この工程により、半導体層103には高濃度不純物領域103bが形成され、第1導電層101上の不純物が添加されなかった領域がチャネル形成領域103aとして確定する。
また、第1の領域において、第1構造層を構成する半導体層134、第2構造層を構成する半導体層135にも同様に不純物を添加することで、導電性を付与し、導電層128、129を形成する。これにより、第1構造層を可動電極121として機能させ、第2構造層を固定電極122および配線123として機能させることができる。
次に、スパッタリング法などにより導電膜を形成し、この導電膜をフォトリソグラフィ工程とエッチング工程により形状を加工し、図2(E)に示すように、第2の領域に第2導電層104を形成し、微小構造体11に第2導電層137を形成する。第2の領域には、高濃度不純物領域103bに接続される電極(配線)の他に、第2導電層104により電気回路10を構成する電極、配線、端子などが形成される。
第2導電層137は、後述する第2絶縁層105に開口部107を形成するときに、エッチングで除去されないように、第1構造層、および第2構造層を保護するために、第1の領域に形成される。また、第2導電層137は最終的に除去されるため、犠牲層(第2犠牲層)でもある。第2導電層137は、構造層(126〜129)の、開口部107が形成される部分を少なくとも覆うような形状とされる。もちろん、構造層(126〜129)のうち第2絶縁層105を残す領域に存在する部分を覆っている部分が、第2導電層137にあってもよい。この場合は、微小構造体11の配線123は、絶縁層127、導電層129、第2導電層137の積層構造を部分的に有することとなる。
また、第2導電層104、137の材料には、第1導電層101、131と同じ材料から選択でき、第2導電層104、137はこれらの材料の単層膜、多層膜で形成される。なお、半導体でなる導電層128、129を覆って第2導電層137が形成されることから、第2導電層137に、シリコンやゲルマニウムと反応して金属化合物を形成できる金属元素を含む材料を用いるとよい。このような金属元素には、タングステン、チタン、モリブデン、タンタルなどの高融点金属や、コバルト、ニッケル等が挙げられる。
この場合、第2導電層137を形成した後加熱処理することにより、第2導電層137を金属元素と反応させて、導電層128、129を金属化合物でなる層とすることができる。導電層128、129がシリコンであれば、シリサイド層とすることができる。導電層128、129をシリサイドのような金属化合物とすることで、導電性と強度を共に向上させることができる。また、導電層128、129の一部を金属化合物とすることもできる。金属化合物を形成するための加熱処理には、電気炉による加熱処理、レーザビームやランプ光の照射処理を用いることができる。
導電層128、129をシリサイドのような金属化合物とすることで、必要な電気伝導度とすることができる場合は、図2(D)の工程において、半導体層134、135にn型またはp型の不純物を添加しなくともよい。
次に、図3(A)に示すように、第2絶縁層105を形成する。第2の領域において、第2の絶縁層105にコンタクトホールを形成した後、第2導電層104上に、導電膜を形成し、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程により、この導電膜を所定の形状に加工し、電気回路10に第3導電層106を形成する。電気回路10には、第3導電層106により、トランジスタに接続される配線以外の、配線なども形成されている。
第2絶縁層105は、第3導電層106と第2導電層104を層間で分離する層間絶縁膜であり、また電気回路10を封止する封止層としても機能させることができる。第2絶縁層105には、酸化シリコン、窒化シリコンまたは酸化窒化シリコン(SiOxNy x>y)、窒化酸化シリコン(SiOxNy x<y)等の無機絶縁膜を用いることができる。また、ポリイミド、アクリルなどの有機樹脂膜、シロキサンを含む膜を用いてもよい。有機樹脂は感光性、非感光性のいずれでもよい。第2絶縁層105は、これらの絶縁材料からなる単層構造の層、または多層構造の層とすることができる。例えば、1層目を窒化シリコンでなる無機絶縁膜とし、2層目をポリイミドなど有機樹脂膜とすることができる。なお、シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される材料であり、置換基として、有機基(例えばアルキル基、アリール基)を含む。また、置換基としてフルオロ基を含んでいてもよい。
第3導電層106は、第1導電層101、131又は第2導電層104、137と同様に形成することができる。ただし、第1導電層131および第2導電層137はエッチングで除去するため、第1導電層131および第2導電層137を除去するエッチング剤では除去できない材料を、第3導電層106に選択する必要がある。
第3導電層106を形成した後、図3(B)に示すように、エッチングにより第2絶縁層105の微小構造体11が形成される領域に開口部107を形成し、第2導電層137を露出させる。このとき、第2導電層137で微小構造体11は保護されているため、微小構造体11に第2絶縁層105とのエッチング選択比が低い材料を用いて形成された層があってもよい。例えば、第1絶縁層126、127に第2絶縁層105と同じ材料が使用されていてもよい。
また、犠牲層エッチングが行われると、可動電極121である第1構造層は、基板100のどこにも固定されない状態となる。このような状態で犠牲層エッチングを行うと、第1構造層が消失してしまうおそれがある。それを防ぐために、開口部107は第1の領域全体に設けるのではなく、第1の領域の一部に設けることが望ましい。例えば開口部107は、図5に示した第1構造層となる半導体層134に設けられた開口部134aと同じ場所に形成することができる。また開口部107は、開口部134aが形成される場所に、開口部134aよりも若干広く形成することができる。
次に、第2導電層137(第2犠牲層)、第1導電層131(第1犠牲層)をエッチングにより除去する、いわゆる犠牲層エッチングを行う。犠牲層エッチングが完了することにより、図1に示す微小構造体11が完成する。可動電極121に形成した開口部121aは、犠牲層エッチングのときにエッチング剤が第1犠牲層131に行き渡るようにするために設けている。第2導電層137、第1導電層131のエッチング方法は、ウエットエッチング法、ドライエッチング法のいずれも用いることができ、エッチング剤は層を構成する材料によって適したものを選択する。
例えば、第1導電層131、第2導電層137(犠牲層)がタングステン(W)である場合、エッチング剤に28%のアンモニアと31%の過酸化水素水を1:2で混合した溶液を用いることができる。これらの犠牲層がアルミニウムの場合、硝酸と燐酸の混酸をエッチング剤に用いることができる。
また、犠牲層の材料によっては、犠牲層のエッチングは、大気圧など高圧の条件において、F2やXeF2のガスを用いたドライエッチングでも行うことができる。
なお、ウエットエッチング後の乾燥に際して、毛管現象による微小構造体の座屈を防ぐため、粘性の低い有機溶媒(例えばシクロヘキサン)を用いてリンスを行う、または低温低圧の条件で乾燥させる、またはこの双方を組み合わせた処理を行うとよい。
このように、本発明は、絶縁表面を有する基板上に、回転子を有する微小構造体と電気回路を一体に形成することができる。そのため、電気回路と微小構造体との接続部分の機械的な強度が高く、接続不良が起こりにくい。また微小構造体と電気回路を後で集積化する工程がなく、製造コストを低減できる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、微小構造体と、微小構造体を制御する電気回路を同じ基板上に同時に作製する方法を説明する。図6は、本実施形態のMEMSの構造を示す図であり、図6(A)はMEMSの断面図であり、図6(B)は微小構造体の上面図である。なお、図6(A)において、左側は微小構造体が形成されている第1の領域の断面図であり、右側が電気回路が形成されている第2の領域の断面図である。この点は、図7および図8に示す断面図も同様である。
本実施の形態のMEMSも、電気回路20と微小構造体21は同一の基板100に設けられている。電気回路20のトランジスタがボトムゲート型の薄膜トランジスタである点は、実施の形態1と共通であるが、半導体層203の構造が異なる。また、微小構造体21がローター(回転子)とステーター(固定子)を有する点は、実施の形態1と共通であるが、回転軸(第3構造層)を有する点が異なる。図6を用いて、本実施の形態のMEMSの構造を具体的に説明する。
電気回路20と微小構造体21は同一の基板100上(同じ絶縁表面上)に設けられている。電気回路20の薄膜トランジスタは、トランジスタのゲート電極またはゲート配線を構成する第1導電層101、第1導電層101上にあり、ゲート絶縁層を構成する第1絶縁層102、第1絶縁層102上の半導体層203、および半導体層203上の第2導電層104を有する。
半導体層203は2層構造であり、チャネル形成領域が形成される半導体層と、この半導体層上に積層され、ソース領域またはドレイン領域(高濃度不純物領域)として機能するn型又はp型の導電性を示す半導体層(導電層)とを有する。以下、前者を第1半導体層、後者を第2半導体層として説明する。半導体層203の第2半導体層上には、第2導電層104が形成され、第2半導体層に接続され、ソース電極またはドレイン電極として機能する。
電気回路20には、さらに第2導電層104、半導体層203、第1絶縁層102、および第1導電層101を覆って、第2絶縁層105が形成されている。第2絶縁層105上には第3導電層106が形成されている。第3導電層106は第2絶縁層105に形成されたコンタクトホールを介して、第2導電層104に接続されている。
電気回路20の電極、配線、端子は、第1導電層101、第2導電層104および第3導電層106を用いて形成される。また、電気回路20には、トランジスタ以外の素子も形成される。例えば、容量素子は半導体層203のn型半導体層、第1絶縁層102、第1導電層101を用いて構成することができる。
図6(B)に示すように、微小構造体21は、可動電極221(第1構造層)と、基板100に固定された12個の固定電極222(第2構造層)と、固定電極222に接続された配線223と、可動電極221の中心に嵌合された回転軸225(第3構造層)を有する。可動電極221はいわゆるローター(回転子)であり、固定電極222はいわゆるステーター(固定子)である。3相の固定電極222に順次に電圧を印加することにより、可動電極221と固定電極222間に生じた静電引力により、回転軸225の回りを可動電極221が回転する。可動電極221の回転方向は、固定電極222に印加する電圧により制御できる。
固定電極222、配線223の構造は、電極、配線を構成する構造層の積層構造が異なる他は、実施の形態1の固定電極122、配線123と同じであり、固定電極222と配線223は一体に形成されている。固定電極222と配線223とを含めて第2構造層とみなすこともできる。
可動電極221の形状は、円盤の周囲に4つのT字型(先端の幅が広くなっている形状)の層が対称的に設けられた形状である。また、上面からみると、可動電極221は十字型の外観を示し、かつ、可動電極221の外周は円弧をなしている。
可動電極221、固定電極222および配線223は多層構造であり、下層は絶縁層、上層は半導体層でなる。下層の絶縁層はトランジスタの第1絶縁層102と同じ層にあり、第1絶縁層102と同じ絶縁膜から形成されている。上層の半導体層はトランジスタの半導体層203と同じ層にあり、半導体層203と同じ第1半導体層と第2半導体層(導電層)の2層構造であり、半導体層203と同じ半導体膜から形成される。
回転軸225は、可動電極221の中心部に形成された開口部に通って、基板100に固定されている。また、回転軸225の先端は、可動電極221の開口部よりも大きく、可動電極221が抜けないようになっている。なお、回転軸225を設ける位置は可動電極221の中心である必要はない。微小構造体21をローターとして使用したい場合は、回転軸225を設ける位置を中心からはずすこともできる。
以下、図7〜図9を用いて、図6に示すMEMSの作製方法を説明する。なお、実施の形態1と重複する説明は省略し、実施の形態1の説明を援用する。
まず、実施の形態1と同様、基板100として絶縁表面を有する基板を用意する。基板100上に導電膜を形成し、フォトリソグラフィ工程とエッチング工程により所定の形状に加工し、図7(A)に示すように、第1導電層101、131を形成する。第1導電層101、131上に第1絶縁層132を形成する。
電気回路20には、トランジスタのゲート配線の他、他の電極、配線、端子が第1導電層101により形成される。微小構造体21に形成された第1導電層131は犠牲層として機能し、実施の形態1と同様、図4に示すように円盤状に加工される。
次に、第1の領域に可動電極221、固定電極222および配線223を構成する半導体層、ならびに第2の領域にトランジスタの半導体層203を構成する半導体を形成する。まず、図7(B)に示すように、第1半導体層を構成する半導体膜233Aを形成する。半導体膜233Aは、トランジスタのチャネル形成領域を構成するため、真性半導体(i型半導体)となるように、導電性を付与する不純物を意図的に添加しないで形成される。半導体膜233Aは、非晶質半導体、又は微結晶半導体、多結晶半導体のような結晶性半導体のどちらでもよい。半導体膜233Aを形成する方法は、実施の形態1で説明した方法を用いることができる。
次に、図7(C)に示すように第2半導体層を構成する半導体膜233Bを形成する。半導体膜233Bは、トランジスタのソース領域およびドレイン領域を構成するため、n型又はp型の導電性を付与する不純物を含んだ半導体層であり、導電層としても機能する。また、半導体膜233Bも、非晶質半導体、又は微結晶半導体、多結晶半導体のような結晶性半導体のどちらでもよい。半導体膜233B、233Bを形成する方法は、実施の形態1で説明した方法を用いることができる。
本実施の形態では、半導体膜233Aと半導体膜233Bとでなる2層構造の半導体層を構造層として用いるため、構造層を結晶構造の異なる2層の半導体層で形成することができる。結晶構造によって、強度等の性質が異なるため、結晶構造の異なる半導体の多層膜で構造層を形成することで、互いの層の結晶構造の欠点を補うことができる。
例えば、半導体膜233Aを非晶質半導体、半導体膜233Bを多結晶半導体とすることができる。また、半導体膜233Aを微結晶半導体とし、半導体膜233Bを多結晶半導体とすることができる。
もちろん、半導体膜233Aと半導体膜233Bの結晶構造が同じであってもよい。半導体層を多層とすることで、構造層を厚く形成することが容易になる。例えば、非晶質半導体膜の形成と、熱エネルギーや光エネルギーによる加熱処理による結晶化を繰り返すことによって、結晶性半導体膜を積層した積層膜を形成することができる。このように結晶性半導体の積層膜を形成することができ、上層の結晶化工程の加熱処理によって、下層の内部応力を緩和できるため、膜の剥がれや基板の変形を防ぐことができる。
また、半導体膜233A及び半導体膜233Bに結晶性半導体を用いる場合は、半導体膜233Aと半導体膜233Bの結晶成長方向が異なるように積層させることができる。例えば、金属元素を用いて半導体膜を結晶化させる場合、結晶化させたい領域全面に金属元素を添加すると、半導体の結晶成長が基板に対して垂直方向に進む。一方、金属元素を選択的に添加しレーザ照射や加熱処理を行った場合、結晶成長は基板に対して平行方向に進む。
結晶成長方向の異なる層を積層することで、靭性に優れた構造層を形成することができる。結晶成長方向が異なる膜が積層しているため、互いの層の欠点を補うことができる。つまり、一つの層の結晶粒界で亀裂が起きても、結晶成長方向の違う層には亀裂が伝播しにくいので、構造層の破壊を抑制することができる。
また、結晶化させる領域を選んで、半導体膜233A、233B結晶化させることができる。つまり、電気回路20を形成する領域(第2の領域)だけ、または微小構造体21を形成する領域(第1の領域)だけを選んで結晶化することができる。例えば、半導体膜233Aを非晶質半導体で形成し、微小構造体21となる領域だけ結晶化する。半導体膜233Bを微結晶半導体とし、部分的な結晶化を行わない。この場合は、微小構造体21の第1半導体層とトランジスタの第1半導体層は同じ層にあっても結晶構造が異なり、第2半導体層は微小構造体21とトランジスタとで結晶構造が同じになる。
なお、選択的な結晶化は、レーザビームを選択的に半導体に照射することで実現する。また、金属元素を用いて結晶化する場合には、金属元素を添加する領域を部分的にする。
半導体膜233A、233Bを形成した後、フォトリソグラフィ工程とエッチング工程により、図7(D)に示すように、半導体膜233A、233B、第1絶縁層132を所定の形状に加工する。
半導体膜233Aから、第1半導体層234A、228A、229Aが形成される。半導体膜233Bから半導体層234B、228B、229Bが形成される。また、第1絶縁層132は、半導体層234A、234B、228A、228B、229A、229Bと重なる部分以外はエッチング工程により除去され、第2の領域には第1絶縁層102が形成され、第1の領域には第1絶縁層226、227が形成される。
この工程により、微小構造体21の可動電極221、固定電極222および配線223の形状が確定する。図9は図7(D)の微小構造体21の上面図である。図9の鎖線O−Pに沿った断面が図7(D)に図示されている。
第1絶縁層226、第1半導体層228A、第2半導体層228Bでなる積層体は可動電極221を構成する構造層(第1構造層)であり、中心に回転軸225を設けるための開口部230形成される。第1絶縁層227、第1半導体層229A、第2半導体層229Bでなる積層体は固定電極222および配線223を構成する構造層(第2構造層)である。
第2の領域には、ゲート絶縁膜となる第1絶縁層102、半導体層203を構成する半導体層234が形成される。半導体層234は第1半導体層234A、第2半導体層234Bの積層膜でなる。
次に、スパッタリング法などにより導電膜を形成し、この導電膜をフォトリソグラフィ工程とエッチング工程により形状を加工し、図7(E)に示すように、第2の領域に第2導電層104を形成し、微小構造体21に第2導電層237を形成する。第2の領域には、トランジスタの電極(配線)の他に、第2導電層104により電気回路20を構成する電極、配線、端子などを形成する。また、第2導電層104、237を構成する導電膜は、実施の形態1と同様に作製することができる。
第2導電層237は、後述する第2絶縁層105に開口部107を形成するときに構造層がエッチングで除去されないように、保護するために形成される。また、第2導電層237は最終的に除去されるため、犠牲層(第2犠牲層)でもある。第2導電層237は少なくとも開口部107が形成される領域にある、構造層(第1半導体層228A、229A、第2半導体層228B、229Bおよび絶縁層226、227)の表面を覆うような形状とされる。もちろん、第2絶縁層105を残す部分にある構造層(第1半導体層229A、第2半導体層229Bおよび絶縁層227)を覆っている部分があってもよい。この場合は、微小構造体21の配線223の一部は、絶縁層227、第1半導体層229A、第2半導体層229Bおよび第2導電層237の積層構造を部分的に有することとなる。
第2の領域には、第2の導電層104をマスクにしてエッチングにより半導体層234の一部を除去し、半導体層203を形成する。このエッチングにより、第2半導体層234Bは分割され、一対の第2半導体層203Bが形成される。一対の第2半導体層203Bはソース領域、ドレイン領域として機能する。第1半導体層234Aは表層が一部除去され、チャネル形成領域が形成される第1半導体層203Aが形成される。
他方、第1の領域には、シリコンやゲルマニウムと反応して金属化合物を形成できる金属で第2導電層237を形成することで、実施の形態1と同様に、加熱処理により、第1半導体層228A、229A、第2半導体層228B、229Bを第2の導電層237と反応させて、金属化合物(代表的には金属とシリコンの化合物であるシリサイド)を形成することもできる。この場合、加熱処理等による金属化合物の形成は半導体層234のエッチングの後に行う。
この場合、第2半導体層228B、229B全体を金属化合物とすることができる。また、表層を部分的に金属化合物とすることもできる。第2半導体層228B、229Bはn型又はp型の導電性を示す導電層であり、金属化合物化することで、その電気伝導率を向上させることができると共に、強度も向上させることができる。
また、第1半導体層228A、229Aは、第2半導体層228B、229Bの厚さによって、全体を金属化合物にすることもできる。少なくとも、第2導電層237と接している側面のある程度の厚さを金属化合物化することができる。つまり、可動電極221と固定電極222の側面や、後に回転軸225が設けられる開口部230の内部を金属化合物とすることができる。衝撃を受けやすいこのような部分を金属化合物とすることは、微小構造体の強度を向上させることで非常に有効である。
また、トランジスタのチャネル形成領域を形成する都合、第1半導体層229A、229Bは特段に導電性を付与されていないため、金属化合物を形成することで、可動電極221、固定電極222、配線223の抵抗を下げることができる。特に、固定電極222と可動電極221とが対向する面に金属化合物が形成されるため、静電力を発生できる部分の面積を広げることができる。
なお、第1半導体層228A、229Aの電気伝導度を高め、導電層とすることができる。例えば、第2半導体膜233Bを形成する前に(図7(B)参照)、第1半導体膜233Aの第1の領域に存在する部分に選択的にn型又はp型の導電性を付与する不純物を添加し、n型又はp型の不純物領域を形成すればよい。また、このような領域を選択的に、金属化合物(シリサイドや、ゲルマニウムと金属の化合物)とすることで、導電層とすることもできる。また、不純物の添加と、金属化合物の形成の両方を行うこともできる。
次に、図8(A)に示すように、第2絶縁層105を形成する。第2の絶縁層105にコンタクトホールを形成した後、第2導電層104上に、導電膜を形成し、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程により導電膜を所定の形状に加工し、電気回路20に第3導電層106を形成する。第3導電層106を形成した後、図8(B)に示すように、エッチングにより第2絶縁層105の微小構造体21が形成される領域に開口部107を形成し、第2導電層237を露出する。
次に、図8(B)に示すように、回転軸225を形成する部分に、第2導電層237と第1導電層131を貫通する開口部238を形成する。開口部238の形成はドライエッチングを用いることができ、第2導電層237、第1導電層131を異方性エッチングする。
開口部238は可動電極221の開口部230の内部に形成される。回転軸225と可動電極221を分離するために、開口部238は、図7(D)で示した可動電極221に設けられた開口部230よりも小さく形成し、開口部230に第2導電層237が残るようにする。
第2導電層237上に、多結晶半導体や、金属、金属化合物、合金などの膜を形成し、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程により所定の形状に加工し、図8(C)に示すように回転軸225を形成する。回転軸225の材料には、第1導電層131、第2導電層237を除去する犠牲層エッチングに用いるエッチング剤では除去できない材料を用いる。
回転軸225の先端(第2導電層237上にある部分)が開口部230よりも広くなるように、加工され、回転軸の底部は基板100に密着して形成される。
次に、第2導電層237(第2犠牲層)、第1導電層131(第1犠牲層)をエッチングにより除去する、いわゆる犠牲層エッチングを行う。犠牲層エッチングが完了することにより、図6に示す微小構造体21が完成する。
このように、本発明は、絶縁表面を有する基板上に、回転子を有する微小構造体と電気回路を一体に形成することができる。そのため、電気回路と微小構造体との接続部分の機械的な強度が高く、接続不良が起こりにくい。また微小構造体と電気回路を後で集積化する工程がなく、製造コストを低減できる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1のMEMSにおいて、微小構造体を変形した例を説明する。本実の施形態では、微小構造体は、櫛歯型を有して細長い可動層(スライダー)と、その両側に固定層とを有し、基板水平方向に運動する。このような微小構造体は、ある機械的な運動を別の運動に変える、例えば、回転運動を直線運動に変える。具体的には、図14に示すように可動層422(スライダー)の櫛歯と歯車421の歯が噛み合わさって、回転する歯車421が可動層422を動かす。可動層422は、その長軸方向に直線的に運動する。また、固定層425は可動層422の両端にあって、可動層が長軸方向以外に動くのを制限する。
図10は本実施形態のMEMSの構造を示す図であり、図10(A)はMEMSの断面図であり、図10(B)は微小構造体の上面図である。なお、図10(A)において、左側は微小構造体が形成されている第1の領域の断面図であり、右側が電気回路が形成されている第2の領域の断面図である。この点は、図11〜図12に示す断面図も同様である。また。図10(B)の鎖線O−Pで切った断面図が図10(A)の微小構造体31の断面図に対応する。なお、微小構造体31は長軸方向に細長いため、上下を省略し一部分のみを示している。
本実施の形態も、電気回路10および微小構造体31が同じ基板100上(同じ絶縁表面上)に形成される。図10(B)に示すように、微小構造体31は、櫛歯型の可動層321(第1構造層)と、矩形状の一対の第1固定層322(第2構造層)と、第1固定層322に接続された配線323及び第2固定層325とを有する。配線323は第1固定層322と一体に形成され、電気回路10に電気的に接続される。また、可動層321(第1構造層)が基板と垂直方向に動かないために第2固定層325を有しても良い。
可動層321は、櫛歯型の電極であり、基板100分離されて形成される。一対の第1固定層322は矩形状の電極であり、可動層321を挟むように配置されている。第1固定層322は基板100に固定されて形成されるが、可動層321と対向する先端は、基板100から分離されている。第2固定層325は第1固定層322に密着して形成される。また、第2固定層325の先端は第1固定層322から分離され、可動層321に重なっている。
微小構造体31において、一対の第1固定層322は可動層321が移動する方向(ここでは可動層の長軸方向)と異なる方向に移動しないためにその動きを制限する層である。
本実施形態では、電気回路10の構造が実施形態1と同じであるため、可動層321、第1固定層322および配線323の積層構造は、実施形態1の第1構造層(可動電極121)と第2構造層(固定電極122、配線123)と同じである。
以下、図11〜図13を用いて、本実施の形態のMEMSの作製方法を説明する。なお、実施の形態1と重複する説明は省略し、実施の形態1の説明を援用する。
実施の形態1と同様、基板100として絶縁表面を有する基板を用意する。基板100上に導電膜を形成し、フォトリソグラフィ工程とエッチング工程により所定の形状に加工し、図11(A)に示すように、第2の領域に第1導電層101を形成し、第1の領域に第1導電層331を形成する。第1導電層101、331上に第1絶縁層132を形成する。第1導電層331は犠牲層(第1犠牲層)として機能し、図13に示すように矩形状に加工される。なお、図13は図11(C)の微小構造体31の上面図であり、図13の鎖線O−Pに沿った断面が図11(C)に図示されている。
次に、図11(B)に示すように、第1の領域に可動層321および第1固定層322を構成する層を形成し、ならびに第2の領域にトランジスタの半導体層103を構成する半導体層333を形成する。
次に、図11(C)に示すように、半導体層333および第1絶縁層132を、フォトリソグラフィ工程とエッチング工程により所定の形状に加工する。半導体層333から、第2の領域にはトランジスタの半導体層103が形成される。また、第1の領域には、第1構造層の一部となる半導体層334および第2構造層の一部となる半導体層335が形成される。また、第1絶縁層132は、半導体層103、334、335と同じ形状に加工され、第2の領域にはトランジスタのゲート絶縁膜となる第1絶縁層102が形成され、第1の領域には絶縁層326、327が形成される。
この工程により、微小構造体31の第1、第2構造層の形状が確定する。絶縁層326と半導体層334の積層体が可動層321(第1構造層)を構成し、絶縁層327と半導体層335の積層体が第1固定層322、配線323(第2構造層)を構成する。図13に示すように、半導体層334は櫛歯状の部分を有する矩形状に形成され、一対の半導体層335は、第1固定層322となる矩形の部分と、配線323となる線状の部分とが一体に形成され、半導体層334を挟むように配置されている。
なお、可動層321は最終的に基板100から分離されるため、絶縁層326と半導体層334でなる積層体全体は、第1導電層331の上面に配置される。また、第1固定層322の先端に基板100から分離された部分を形成し、かつ第1固定層322を基板100に固定するため、絶縁層327と半導体層335でなる積層体の先端は、第1導電層331の上面と側面にかかるように形成され、他の部分は基板100の表面(絶縁表面)に接して形成される。
ドーピング法またはイオン注入法により、半導体層103、334、335に導電性を付与するn型またはp型の不純物を選択的に添加する。不純物を、ゲート電極となる第1導電層101上を除く部分に選択的に添加するためには、フォトリソグラフィ法を用いて不純物を添加しない部分上にレジストマスクを形成し、このマスクを用いて不純物の添加を行う。この工程により、図11(D)に示すように、半導体層103には高濃度不純物領域103bが形成され、半導体層103の不純物が添加されなかった領域がチャネル形成領域103aとして確定する。高濃度不純物領域103bはソース領域またはドレイン領域として機能する。また、構造層上にレジストマスクを形成しなかった場合には構造層を構成する半導体層334、335には、不純物の添加により導電性が付与され、導電層328、329が形成される。本実施の形態の場合は、構造層は導電性を有している必要がないため、構造層上にレジストマスクを形成し、構造層に不純物が添加されないようにすることができる。
次に、スパッタリング法などにより導電膜を形成し、この導電膜をフォトリソグラフィ工程とエッチング工程により形状を加工し、図11(E)に示すように、第2の領域に第2導電層104を形成し、第1の領域に第2導電層337(第2犠牲層)を形成する。第2導電層104はソース電極またはドレイン電極として機能する。
第2導電層337は、第2絶縁層105に開口部107を形成するときに第1、第2構造層がエッチングで除去されないように、保護するために形成される。したがって、第2導電層337は構造層(328、329)全てを覆う必要はなく、開口部107が形成される領域に存在する部分を少なくとも覆うような形状とすればよい。また、第2導電層337は、第1固定層322と第2固定層325の間に隙間をつくるための犠牲層としても機能する。
また、構造層が導電性を有する必要がある場合、実施形態1で述べたようにシリコンやゲルマニウムと反応して金属化合物を形成できる金属元素を含む材料で第2導電層337を形成することで、導電層328、329を金属化合物(代表的にはシリサイド)とすることができる。
次に、図12(A)に示すように、第2絶縁層105を形成する。第2の絶縁層105にコンタクトホールを形成した後、第2導電層104上に、導電膜を形成し、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程により導電膜を所定の形状に加工し、第2の領域に第3導電層106を形成する。第3導電層106を形成した後、図12(B)に示すように、第1の領域に、エッチングにより第2絶縁層105に開口部107を形成する。そして、第2導電層337(第2犠牲層)、第1導電層331(第1犠牲層)をエッチングにより除去する、いわゆる犠牲層エッチングを行う。実施の形態1における微小構造体の可動電極と同様、可動層321は犠牲層(337、331)が取り除かれると基板100に固定されなくなる。したがって、実施の形態1と同様、第2の絶縁層105が可動層321上部に残るように開口部107を形成することもできる。また、可動層321上に第2固定層を形成することも可能である。ここでは第2固定層を形成する例を示す。
次に、第1固定層322と第2固定層325とを接続するため、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程により第2導電層337を部分的に除去する(図12(B)参照)。
第2導電層237上に導電層を形成し、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程により所定の形状に加工し、図12(C)に示すように第2固定層325(第3構造層)を形成する。第2固定層325の一部は第1固定層322に密着して形成され、第1固定層322に接続される。また第2固定層325の先端は、第2導電層337の上面および側面にかかるように形成される。この結果、第2固定層325の先端は第1固定層322から分離され、可動層321と重なるように設けられる。
第2固定層325の材料は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)等の金属、これら金属元素を主成分とする金属化合物(例えば、チタン窒化物、タングステン窒化物)、これら金属元素を主成分とする合金(例えば、アルミニウムとチタンの合金、クロムとモリブデンの合金)などが選択できる。またタングステン、チタン、モリブデン、タンタルなどの高融点金属や、コバルト、ニッケル等のシリサイドや、n型またはp型の導電性を有する結晶性シリコンなども用いることもできる。第2固定層325は、これらの導電性材料から選ばれた導電膜の単層膜または多層膜でなる。また、第2固定層325に導電性が必要でない場合は、第2固定層325は絶縁性を有する材料を用いて単層膜または多層膜で形成する。なお、第2固定層325の材料には、第1導電層331、第2導電層337を除去する犠牲層エッチングで使用するエッチング剤では除去されない材料を用いる。
第2導電層337(第2犠牲層)、第1導電層331(第1犠牲層)をエッチングにより除去する、いわゆる犠牲層エッチングを行う。犠牲層エッチングが完了することにより、図10に示す微小構造体31が完成する。
このように、本発明は、絶縁表面を有する基板上に、回転子を有する微小構造体と電気回路を一体に形成することができる。そのため、電気回路と微小構造体との接続部分の機械的な強度が高く、接続不良が起こりにくい。また微小構造体と電気回路を後で集積化する工程がないため、MEMSの構造が簡素化され、製造コストが低減できる。
本実施の形態では、可動層321(第1構造層)を櫛歯型としたが、ローターや歯車として機能する形状、またはスライダーとして機能する形状に加工することもできる。第1構造層は、可動することができるように形状を加工すればよく、本実施の形態の形状に限定されるものではない。
また、本実施の形態では、電気回路の構成を実施の形態1の電気回路10としたが、実施の形態2の電気回路20とすることもできる。この場合、可動層321、第1固定層322(第1、第2構造層)の積層構造は、実施の形態2の第1、第2構造層(可動電極221、固定電極222)と同様になる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、微小構造体の構成例を説明する。図14は本実施の形態の微小構造体の外観斜視図である。図14には、微小構造体のみ図示しているが、絶縁表面を有する基板上に、電気回路と微小構造体が集積化されている。
微小構造体は、歯車形状を有する第1可動層421(第1構造層)、第1可動層421と噛み合う歯を有する第2可動層422(第2構造層)と、第2可動層422に静電力などを作用させるための固定層425(第3構造層)とを有する。固定層425は図示されていない電気回路と電気的に接続されている。
第1可動層421は歯車であり、他の実施の形態の第1構造層と同様、基板(絶縁表面)および他の構造層から分離されている。第2可動層422はスライダーであり、第1可動層421と噛み合う歯を有する。第2可動層422も、第1構造層と同様、基板および他の構造層から分離されている。このように、第1構造層421と第2構造層422とを噛み合わせることによって、第1構造層421の直線運動を第2構造層422の回転運動に変えることができる。逆に、第2構造層422の回転運動を第1構造層421の直線運動に変えることもできる。
例えば、固定層425を利用して第2構造層422を直線運動させることができる。固定層425と第2構造層422との間に電圧を印加することによって静電力が第2可動層422に作用すると、静電リニアモータのように、第2可動層422が水平運動し、第1可動層421が回転する。なお、静電力ではなく、電磁力により第2可動層422を運動させることもできる。このような微小構造体は、小さな細胞を扱うマニピュレータとして用いることができる。また、上記実施の形態1または実施の形態2で示したように、第1可動層421を回転させ、第1可動層421の回転運動を第2可動層422の水平運動に変換するような微小構造体とすることもできる。
図14に示す微小構造体は、実施の形態3のMEMSの作製方法を援用して形成した例を示している。基板100上に電気回路10と同時に、微小構造体の第1〜第3構造層(421、422、425)が形成される。実施の形態3において、第1〜第3構造層(可動層321、第1固定層322、第2固定層325)の形状、および第1、第2犠牲層(第1導電層331、第2導電層337)の形状を変えることで、本実施の形態の微小構造体を作製することができる。そのため、微小構造体の各構造層の積層構造は微小構造体31と同様であり、絶縁層と半導体層との積層である。
また、電気回路の構造を実施の形態2の電気回路20とすることもできる。この場合、第1〜3構造層(421、422、425)の積層構造は、それぞれ、実施の形態2の第1〜第3構造層(221、222、225)と同様になる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、微小構造体の可動部がスムーズに運動できるようにするための技術について説明する。
実施の形態1の微小構造体11を例に説明する。微小構造体の構成の理解を容易にするため、図1(A)では可動電極121(第1構造層)と基板100の間を離して図示しているが、可動電極121は犠牲層エッチングの後、基板100から浮いているわけではなく、重力によって基板100に接触する状態となる。そのため、可動電極121が回転するときに、基板100の絶縁表面との摩擦が問題となる。本発明のMEMSの微小構造体において、可動部を構成する構造層は、最下層が絶縁層(126等)で形成される。この絶縁層でなる基板表面と接触する層を窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコンで形成することで、絶縁層を設けない構造層よりも摩擦を低減させことができる。
基板100の表面に、可動電極121との摩擦が低減されるような低摩擦層を設けることで、さらに摩擦抑制の効果を向上させることができる。低摩擦層としては、CVD法またはスパッタリング法等を用いて形成された窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコン、炭化シリコン等のシリコンを含む材料、又はダイヤモンドライクカーボン(DLC)を用いることもできる。DLCは緻密であるため、保護機能が高い。
また、低摩擦層は、基板100の表面全面でも、微小構造体11が形成される領域に選択的に形成することもできる。低摩擦層は、絶縁性が十分であれば、基板100の絶縁表面として形成することができる。
また、低摩擦層は、基板の表面だけでなく、静電力やファンデルワールス力によって、構造層同士が近接する部分に設けるとよい。例えば、実施の形態2の微小構造体21で低摩擦層を設ける部分を説明すると、可動電極221では、開口部230の内部、回転軸225と可動電極221との接触部分、などが該当する。また、実施の形態1の微小構造体11では、可動電極121と固定電極122とが接する部分も該当する。
微小構造体を構成する層において、上面からみて角部がある形状であれば、角部が丸みを帯びた形状となるように、フォトリソグラフィ工程とエッチング工程により形状を加工することが好ましい。これは、犠牲層についても同様である。角をとって丸みを帯びた状態に形状を加工することによって、ゴミの発生が抑えられるため、歩留まりを向上させることができる。また、角部の応力の集中が緩和されるため破壊の原因となる亀裂が入りにくくなる。
図15には、図1(B)に対応する上面図であって、実施の形態1の微小構造体11の構造層の角部が丸みを帯びるように形状を加工した例を示す。もちろん実施の形態2〜4の微小構造体も構造層の角部が丸みを帯びるように形状を加工することができる。
(実施の形態6)
微小構造体を有する本発明の微小電気機械式装置は、マイクロマシンの分野に属するものであり、マイクロメートルからミリメートル単位の大きさを有する。また、ある機械装置の部品として組み込まれるために作製される場合は、組み立て時に扱いやすいよう、メートル単位の大きさを有する場合もある。
図16を用いて、本発明の微小構造体を有する微小電気機械式装置の構成例を説明する。図16は、本発明の微小電気機械式装置(半導体装置)の構成例を示すブロック図である。本発明の微小電気機械式装置は、図16の構成例のみに限定されることはない。
本発明の微小電気機械式装置(MEMS)501は、半導体素子を有する電気回路部502、および微小構造体によって構成されている構造体部503が組み合わされた装置である。電気回路部502は、微小構造体を制御する制御回路504や、外部の制御装置500と通信を行うインターフェース506等を有する。また構造体部503は、微小構造体により、センサ505やアクチュエータ507、スイッチ等を有する。アクチュエータとは、信号(主に電気信号)を物理量に変換する構成要素である。構造体部503には、実施の形態1、2で説明したような静電モータを設けることもできる。
また、電気回路部502は、構造体部503が得た情報を処理するための中央演算処理装置等を有することも可能である。
外部の制御装置500は、微小電気機械式装置501を制御する信号を送信する、微小電気機械式装置501が得た情報を受信する、または微小電気機械式装置501に駆動電力を供給する等の動作を行う。
そして本発明はこのような電気回路を構成する半導体素子と、微小構造体とを同一絶縁表面上に一体形成することができる。一体形成することにより、電気回路等と微小構造体との接続不良を低減することができ、そのため歩留まりを向上させることができる。
なお従来、ミリメートル単位以下といった微小なものを扱う場合、微小な対象物の構造を拡大し、人間やコンピュータがその情報を得て情報処理および動作の決定を行い、そして、その動作を縮小して微小な対象物に伝えるというプロセスを必要としていた。しかし、本発明の微小構造体を有する半導体装置は、人間やコンピュータが上位概念的な命令を伝えるだけで、微小なものを扱うことが可能になる。すなわち、人間やコンピュータが目的を決定して命令を伝えると、微小構造体を有する半導体装置はセンサ等を用いて対象物の情報を得て情報処理を行い、行動を取ることができる。
上記の実施の形態1〜5では、対象物が微小なものであると仮定した。これは例えば、対象物自体はメートル単位の大きさを有するが、その対象物から発せられる微弱な信号(例えば、光や圧力の微小な変化)等を含むとしている。
以上、実施の形態1〜6は適宜、組み合わせることが可能である。例えば、実施の形態1で示した可動電極121の形状を実施の形態2で示した可動電極221のように形状を加工することができる。また、逆に、可動電極221の形状を可動電極121のように加工することもできる。