JP5026759B2 - ワイヤグリッド偏光板及びその製造方法 - Google Patents
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図1は、本発明の実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板の一部を示す概略断面図である。図1に示すワイヤグリッド偏光板は、基材1と、この基材1上に設けられ、基材1を構成する材料の屈折率よりも大きい屈折率を有する無機誘電体で構成された誘電体層2と、誘電体層2上に、互いに平行で等間隔に立設された複数の金属ワイヤ3を有する金属ワイヤ層と、から主に構成されている。
本発明のワイヤグリッド偏光板は、単位寸法が100cm2以上であることが好ましい。ピッチp(周期)が150nm以下であるにもかかわらず、単位寸法が100cm2以上という大きなワイヤグリッド偏光板を得るのは、以下に示す一連の特徴を有する製造方法を用いて作製した型を用いたことによる。本発明で用いる型を得る方法は、本出願人の特願2006−2100号に記載の方法を用いる。この内容はすべてここに含めておく。
本発明のワイヤグリッド偏光板の製造方法においては、基材上に、前記基材を構成する材料の屈折率よりも大きい屈折率を有する無機誘電体で構成された誘電体層を形成する工程と、前記誘電体層上に金属層を形成する工程と、表面に100nmから100μmピッチの凹凸格子を有する被延伸部材を、前記凹凸格子の長手方向と略直交する方向の前記被延伸部材の幅を自由にした状態で、前記長手方向と略平行な方向に一軸延伸することにより得られた延伸部材の微細凹凸格子を転写してスタンパを作製する工程と、前記スタンパを用いて、前記金属層を、互いに平行で等間隔に立設された複数の金属ワイヤを有する金属ワイヤ層にする工程と、を具備する。
図3に示すように、基材1表面に無機誘電体を被覆して誘電体層2を形成する(3a),(3b)。誘電体層2を基材1上に形成する方法としては、基材1と誘電体層2との間で十分な密着強度が得られるような方法を適宜選択する。具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法を挙げることができる。例えば、酸化アルミニウム、窒化珪素などの無機誘電体をスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティングなどの物理的な蒸着法により厚さ1nm〜200nmで基材1上に被覆する。このような方法の中で、密着強度、生産性の観点からスパッタリング法が好ましい。積層にあたり、それぞれの方法において積層条件を調整することが重要である。
次いで、誘電体層2上に金属層を形成する(3c)。誘電体層2上に金属層を形成する場合には、誘電体層2を構成する材料及び/又は金属ワイヤ3を構成する金属との間の十分な密着強度が得られ、上記した金属ワイヤ3の断面の大きさ、金属バルクの複素屈折率に近い値が得られるように適宜選択する。具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法を挙げることができる。例えば、アルミニウムをスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティングなどの物理的な蒸着法により厚さ120nm〜220nmで誘電体層2上に積層する。このような方法の中で、密着強度、生産性の観点からスパッタリング法が好ましい。積層にあたり、それぞれの方法において積層条件を調整することは誘電体層2の形成の場合と同じように重要である。
次いで、金属層上に熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂(マスク用樹脂)を塗布して塗膜4を形成する(3d)。この場合、例えば、バーコーター法、スプレー法やスピンコート法で均一に塗工する。次いで、マスク用樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合は上記金型Bを用い、マスク用樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いた場合は型Cを用いて、それぞれのマスク用樹脂の表面と型5との間に隙間が生じないように密着させて押し付けながら(3e)、型を通して加熱するか又は紫外線を照射してマスク用樹脂を硬化させた後、型を剥離し、金属層上に150nm以下の格子状凸部を有する樹脂マスクを形成する(3f)。
次いで、前述した金属層上に150nm以下の格子状凸部を有する樹脂マスクをエッチングマスクとして用い、金属層が現れ、金属層上に樹脂マスクの格子パターンが生じるまでエッチング処理Aを行う(3g)。マスク用樹脂のエッチング処理Aとしては、例えば酸素プラズマエッチングなどのRIE(Reactive Ion Etching)やエキシマレーザーを用いたエッチング処理などが挙げられる。これらのドライエッチングによれば、樹脂マスクの厚みの違いを利用した樹脂の分解/灰化の違いにより、樹脂マスクの格子パターンを得ることができる。
(周期的な格子状凸部を有する型Cの作製)
・凹凸格子形状の転写シートの作製
ピッチが230nmで、凹凸格子の高さが230nmである凹凸格子を表面に有するニッケルスタンパを準備した。この凹凸格子は、レーザ干渉露光法を用いたパターニングにより作製されたものであり、その断面形状は正弦波状で、上面からの形状は縞状格子形状であった。また、その平面寸法は縦横ともに500mmであった。このニッケルスタンパを用いて、熱プレス法により厚さ0.5mm、縦横がそれぞれ520mmのシクロオレフィンポリマー(以下、COPと略す)板の表面に凹凸格子形状を転写し、凹凸格子形状の転写シートを作製した。このCOPのガラス転移温度(Tg)は105℃であった。
次いで、この凹凸格子形状の転写シートを520mm×460mmの長方形に切り出し、被延伸用部材とした。このとき、520mm×460mmの長手方向(520mm)と縞状格子の長手方向とが互いに略平行になるように切り出した。
得られた、100nmピッチ、120nmピッチ及び140nmピッチの延伸済み部材表面に、それぞれ導電化処理として金をスパッタリングにより30nm被覆した後、それぞれニッケルを電気メッキし、厚さ0.3mm、縦300mm、横180mmの微細凹凸格子を表面に有するニッケル製の金型Aを作製した。続いて、この金型Aの表面に酸化皮膜処理を行った後、再度メッキ処理を施し、金型Aの微細凹凸格子を反転した形状で、かつ表面に100nmピッチ、120nmピッチ及び140nmピッチの微細凹凸格子を有する、縦300mm、横180mmのニッケル製の金型Bを作製した。
次いで、前記凹凸格子形状の転写シートの作製と同様にして、この金型Bを用いて、熱プレス法により厚さ0.5mm、縦320mm、横200mmのCOP板の表面に100nmピッチ、120nmピッチ及び140nmピッチの微細凹凸格子形状を転写し、本実施例用のCOP樹脂製の型Cを得た。FE−SEMにより、その表面と断面観察したところ、微細凹凸格子のピッチと高さがそれぞれ、100nm/95nm(ピッチ/高さ)、120nm/113nm、140nm/133nmであり、その断面形状が正弦波状で、上面からの形状が縞状格子状となっていた。また、比較例2用のCOP樹脂製の型として、ピッチが230nmで、凹凸格子の高さが230nmである凹凸格子を表面に有するニッケルスタンパを用いて作製した凹凸格子形状の転写シートを、一軸延伸によるピッチの縮小をせずに、その表面を導電化処理、メッキ処理、樹脂基材の除去処理を順次施し、ピッチが230nm、凹凸格子の高さが230nmである凹凸格子を表面に有するニッケルスタンパの複製金型を作製した。次いで、この複製金型の表面に酸化皮膜処理を行った後、再度メッキ処理を施し、複製金型の微細凹凸格子を反転した形状の微細凹凸格子を有する比較例2用金型Bを作製した。さらに、実施例用の型Cと同様にして、COP板に、この比較例2用金型Bの形状を熱プレスで転写して比較例2用の型Cを作製した。
・スパッタリング法を用いた誘電体層の形成
縦300mm、横180mmで、厚み0.188mmのCOPフィルム(JSR株式会社製、アートンフィルム)上に、スパッタリング法を用い誘電体層を積層した。本実施例では、誘電体として窒化珪素、酸化アルミニウム、OH−5(キャノンオプトロン株式会社製)を用いた。このとき、層厚み比較用サンプルとして表面が平滑なシリコンウエハを格子状凸部転写フィルムと同時に装置に挿入し、シリコンウエハへの各誘電体層の厚みが80nmとなるように成膜を行った。窒化珪素の場合は、Arガス圧力0.67Pa、DCマグネトロンのスパッタリングパワー4W/cm2、積層速度0.22nm/sにて誘電体層を形成した。
次いで、誘電体層を設けたCOPフィルムの誘電体層上にスパッタリング法を用い金属層を形成した。本実施例では、金属としてアルミニウムを用いた。この場合、Arガス圧力0.67Pa、DCマグネトロンのスパッタリングパワー4W/cm2、積層速度3.3nm/sとした。このとき、層厚み比較用サンプルとして表面が平滑なシリコンウエハを格子状凸部転写フィルムと同時に装置に挿入し、シリコンウエハへのアルミニウム層の厚みが所定の厚みとなるように成膜を行った。
前記金属層上にスピンコーターを用いて、紫外線硬化性樹脂(スリーボンド社製、TB3078D、屈折率1.41)を約0.03mmの厚みで塗布した。次いで、塗布面上に上記100nmピッチ、120nmピッチ、及び140nmピッチの微細凹凸格子を表面に有するCOP樹脂製の型Cを、型Cと紫外線硬化性樹脂との間に空気が入らないようにそれぞれ端部から載せ、型C側から中心波長365nmの紫外線ランプを用いて紫外線を1000mJ/cm2で照射し、型Cの微細凹凸格子を紫外線硬化性樹脂の表面に転写した。次いで、紫外線硬化性樹脂の表面から型Cを剥離した後、さらに窒素雰囲気下で紫外線硬化性樹脂の表面に紫外線を500mJ/cm2で照射し、紫外線硬化性樹脂の未硬化成分を硬化させて、金属層上に、100nmピッチ、120nmピッチ、及び140nmピッチの格子状凸部を有する紫外線硬化性樹脂マスクを作製した。
金属層上の紫外線硬化性樹脂でできた100nmピッチ、120nmピッチ、及び140nmピッチの格子状凸部をエッチングマスクとして用い、金属層が現れ、金属層上に樹脂の格子パターンが生じるまで、エッチング処理Aとして、酸素を50cc/分流し、出力100WでRIE処理を行った。次いで、誘電体層が現れ、誘電体層上に金属ワイヤの格子パターンが生じるまで、エッチング処理Bとして、アルミニウムの金属層に対して、四塩化炭素ガスを用いて、ガス流量100cc/分、高周波電力密度0.2W/cm2、全圧5PaでRIE処理を行った。このとき、アルミニウムワイヤ上部に樹脂が残ったため、再び、金属層上に樹脂が除去されるまで、再度、酸素を50cc/分流し、出力100WでRIE処理を行い、本発明のワイヤグリッド偏光板として、実施例1〜実施例8を得た。得られたワイヤグリッド偏光板における、各層の屈折率、金属ワイヤの幅/ピッチ、金属ワイヤのピッチ、誘電体層の厚さ、金属ワイヤの高さ・幅、金属ワイヤのアスペクト比については、それぞれ表1に示す通りである。
上記のようにして作製した実施例1から実施例8及び比較例2のワイヤグリッド偏光板について、分光光度計を用い直線偏光に対する平行ニコル、直交ニコル状態での透過光強度を測定した。偏光度及び光線透過率は下記式より算出した。また、測定波長域は400nmから780nmとした。図4には、代表的な実施例及び比較例2の400nmから780nmにわたる偏光度の変化を示す。また、図5には、代表的な実施例及び比較例2の400nmから780nmにわたる光線透過率の変化を示した。さらに、全ての実施例及び比較例の低波長域(400nm)、中波長域(550nm)、高波長域(700nm)における偏光度、光線透過率を、ワイヤグリッド偏光板の構造と併せて表1に示す。
偏光度=[(Imax−Imin)/(Imax+Imin)]×100 %
光線透過率=[(Imax+Imin)/2]×100 %
ここで、Imaxは平行ニコル時の透過光強度であり、Iminは直交ニコル時の透過光強度である。
2 誘電体層
3 金属ワイヤ
5 金型B,型C(スタンパ)
6 被延伸基材
7 被延伸部材
8 樹脂基材
9 金型
Claims (9)
- 透明な樹脂平面基材と、前記樹脂平面基材上に設けられ、前記樹脂平面基材を構成する材料の屈折率よりも大きい屈折率を有する無機誘電体で構成された誘電体層と、前記誘電体層上に、互いに平行で等間隔に立設された複数の金属ワイヤを有する金属ワイヤ層と、を具備し、前記誘電体層が前記樹脂平面基材上全面に設けられ、前記金属ワイヤ層は、高さが120nm〜220nmであり、アスペクト比が2〜5の範囲であることを特徴とするワイヤグリッド偏光板。
- 前記樹脂平面基材が、シクロオレフィンポリマーであることを特徴とする請求項1記載のワイヤグリッド偏光板。
- 前記金属ワイヤ層は、表面に100nmから100μmピッチの凹凸格子を有する被延伸部材を、前記凹凸格子の長手方向と略直交する方向の前記被延伸部材の幅を自由にした状態で、前記長手方向と略平行な方向に一軸延伸することにより得られた延伸部材の微細凹凸格子を転写して作製されたスタンパを用いて、前記誘電体層上に設けられた金属層から作製されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のワイヤグリッド偏光板。
- 前記金属ワイヤのピッチが150nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のワイヤグリッド偏光板。
- 前記無機誘電体は、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、及びそれらの複合物からなる群より選ばれたもので構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のワイヤグリッド偏光板。
- 前記金属ワイヤは、アルミニウム又はその合金で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のワイヤグリッド偏光板。
- 単位寸法が100cm2以上であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のワイヤグリッド偏光板。
- 透明な樹脂平面基材上の全面に、前記樹脂平面基材を構成する材料の屈折率よりも大きい屈折率を有する無機誘電体で構成された誘電体層を形成する工程と、前記誘電体層上に金属層を形成する工程と、表面に100nmから100μmピッチの凹凸格子を有する被延伸部材を、前記凹凸格子の長手方向と略直交する方向の前記被延伸部材の幅を自由にした状態で、前記長手方向と略平行な方向に一軸延伸することにより得られた延伸部材の微細凹凸格子を転写してスタンパを作製する工程と、前記スタンパを用いて、前記金属層を、互いに平行で等間隔に立設され高さが120nm〜220nmであり、アスペクト比が2〜5の範囲である複数の金属ワイヤを有する金属ワイヤ層にする工程と、を具備することを特徴とするワイヤグリッド偏光板の製造方法。
- 前記金属層を金属ワイヤ層にする工程は、前記金属層上に樹脂層を形成する工程と、前記樹脂層に前記スタンパの微細凹凸格子を転写する工程と、前記樹脂層に転写された微細凹凸格子をマスクとして前記金属層をエッチングすることにより前記金属ワイヤ層を形成する工程と、を含むことを特徴とする請求項8記載のワイヤグリッド偏光板の製造方法。
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