JP5018210B2 - 繊維強化樹脂の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維強化樹脂の製造方法に関する。
繊維強化樹脂、なかでも炭素繊維強化樹脂は、軽量かつ高い機械的特性を有する複合材料として様々な分野への適用が拡大している。これに伴い、例えば自動車をはじめとする輸送機器の外板部材などの意匠部材への適用機会も増加しており、こうした分野では凹凸や欠陥がない高品位な表面の実現や、塗装工程の簡略化などが求められている。また、こうした分野への適用を拡大していくためには、従来に比べてより効率的に繊維強化樹脂を製造することも求められている。
繊維強化樹脂は、例えば、成形型内に設けられたキャビティ内に強化繊維基材を配置して型を閉じ、流動性を有する液状のマトリクス樹脂を注入することで強化繊維基材に含浸させ、マトリクス樹脂を固化させるRTM(Resin Transfer Molding)法などを用いて成形することができる。
RTM法は、繊維強化樹脂、特に炭素繊維強化樹脂の特徴である軽量かつ高い機械的特性を効果的に発現させたり、複雑な形状の繊維強化樹脂を効率よく、かつ高い形状精度で成形するのに最適な成形方法の一つである。またRTM法では、成形型のキャビティ外周の一部に形成された注入口からキャビティを挟んで対向する位置に形成された排出口へ向けて、液状のマトリクス樹脂を加圧注入することで、キャビティ内に配置された強化繊維基材に対して効率よく含浸させることができ、その結果、成形時間を短縮し高い生産性を実現することができるという利点も有する。
一方、より高い機械的特性を発現させるために強化繊維の繊維長を長くした繊維強化樹脂、中でも連続繊維を強化繊維として用いた繊維強化樹脂では、マトリクス樹脂が硬化するときの収縮や、マトリクス樹脂と強化繊維の線膨張の違いによって、表層近くに存在する強化繊維の分布状態が表面の凹凸として現れたり、繊維強化樹脂の表面にピンホールができやすく、高い表面品位を実現することが難しい。
こうした繊維強化樹脂の表面品位に関する課題に対して、様々な提案がなされている。
例えば、成形型内面にゲルコート層を形成し、その上面に断熱用樹脂からなる断熱材層を形成し、それぞれが硬化した後に、強化繊維としてのガラスマットを敷設し、マトリクス樹脂を含浸させることで、樹脂の収縮によってガラスマット目が製品表面に現れることを抑制する方法が提案されている。(特許文献1)
あるいは、雄型と雌型の一対からなる成形用金型内に成形すべき成形品の形状に対応して予備成形した熱可塑性シートを載置し、さらに補強繊維を載置して、型閉めした後、熱硬化性樹脂を注入し、硬化成形させて、成形品表面に熱可塑性シートを一体化させることで、外観に優れた繊維強化プラスチックを成形する方法が提案されている。(特許文献2)
特開2004−202980号公報 特許第3166562号公報
しかしながら、成形型内面にゲルコート層を形成する方法では、成形型にゲルコートを吹き付ける作業に熟練を要すること、またゲルコートが硬化するまでに長い待ち時間が必要なために生産性に劣るという問題や、さらにはゲルコート樹脂が作業場に飛散し作業環境が悪いという問題があった。
一方、成形品表面に熱可塑性シートを一体化させた繊維強化プラスチックは、従来の方法では樹脂を一点から注入するために、短時間で安定して樹脂を含浸させることが困難であり、また端部シール構造が不十分で樹脂を加圧注入した場合に樹脂漏れが生じやすいなどの問題があった。
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解決し、シート状樹脂材料が表面に配置された場合であってもシート状樹脂材料の配置に要する時間が短いながら、液状樹脂を加圧注入することで液状樹脂の含浸時間を短縮するとともに、液状樹脂がシート状樹脂材料と成形型の間や成形型外へ漏れ出すことのない繊維強化樹脂の製造方法を提供することである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次の(1)〜(8)の構成を有するものである。すなわち
(1)成形型のキャビティ内に配置した強化繊維基材に、該キャビティの外周の少なくとも一部と連通する溝状の注入ランナーから、該キャビティを挟んで注入ランナーと対向する位置に形成された排出口へ向かって液状樹脂を注入することで、キャビティ内の強化繊維基材に液状樹脂を含浸させ、次いで液状樹脂を硬化させる繊維強化樹脂の製造方法において、シート状樹脂材料をキャビティ内で強化繊維基材の少なくとも一方の面を覆い、かつ、注入ランナーを横断する方向の少なくとも一部分で注入ランナーの形状に沿うようにキャビティから延在して配置することを特徴とする繊維強化樹脂の製造方法。
(2)シート状樹脂材料が、注入ランナーの全長のうちの50〜100%に於いて注入ランナー形状に沿うように配置されている前記(1)に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
(3)前記シート状樹脂材料が、注入ランナー形状に沿うようにあらかじめ形状付与されたものである前記(1)または(2)に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
(4)前記シート状樹脂材料が、真空成形によって形状付与したものである前記(3に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
(5)前記液状樹脂を硬化させることで、前記シート状樹脂材料を繊維強化樹脂と一体化させる前記(1)から(4)のいずれかに記載の繊維強化樹脂の製造方法。
(6)前記液状樹脂を硬化させた後に、前記シート状樹脂材料と繊維強化樹脂を分離する前記(1)から(4)のいずれかに記載の繊維強化樹脂の製造方法。
(7)キャビティ内で強化繊維基材を覆い、かつ、注入ランナーの少なくとも一部分に沿うようにキャビティから延在して配置する前記シート状樹脂材料を両面に配置する前記(1)から(6)のいずれかに記載の繊維強化樹脂の製造方法。
(8)前記成形型のキャビティが、両面型の内部に形成され、該キャビティの外周の少なくとも一部に形成されたフィルムゲートを介して該キャビティと連通する溝状の注入ランナーから液状樹脂を注入する(1)から(7)のいずれかに記載の繊維強化樹脂の製造方法。
本発明の繊維強化樹脂の製造方法によれば、成形型にシート状樹脂材料を配置し、注入ランナーを用いて強化繊維基材に液状樹脂を含浸させる場合であっても、シート状樹脂材料と成形型の間に液状樹脂が流入しないため効率よく短時間で強化繊維基材に液状樹脂を含浸させることができる。それにより、成形型へ離型剤を塗布する作業を省略することにより繊維強化樹脂を効率よく製造したり、繊維強化樹脂の表面にシート状樹脂材料を有する繊維強化樹脂を効率よく製造したりすることができる。
以下に本発明について、望ましい実施の形態と共に詳細を説明する。
本発明の繊維強化樹脂の製造方法は、成形型のキャビティ内に配置した強化繊維基材に液状樹脂を含浸させ、次いで液状樹脂を硬化させる所謂RTM法に用いられる。具体的には、成形型のキャビティ内に配置した強化繊維基材に、該キャビティの外周と連通する溝状の注入ランナーから、該キャビティを挟んで注入ランナーと対向する位置に形成された排出口へ向かって液状樹脂を注入することで、キャビティ内の強化繊維基材に液状樹脂を含浸させ、次いで液状樹脂を硬化させる繊維強化樹脂の製造方法に用いられる。
本発明における成形型は、所望の形状の繊維強化樹脂を得るために形状が加工されたキャビティ部分と、その外周部に前記の配置で液状樹脂を注入するための注入ランナーを有し、余剰な液状樹脂を排出するための排出口が配置されていれば、1つの成形型とバギングフィルムとシール材等の成形副資材とで構成されるいわゆる片面型であってもよいし、複数の型から構成されるいわゆる両面型であってもよい。
キャビティとは成形型において、所望の形状の繊維強化樹脂を成形するために繊維強化樹脂に対応する形状に加工された部分を示すが、本発明においては、それぞれ繊維強化樹脂に対応する形状に加工された両面型を組合せたときに、その内部に形成される閉鎖された空間(狭義のキャビティ)に加え、型上に配置した繊維強化樹脂成形体の形状に対応する形状の強化繊維基材を、バギングフィルムとシール材で密閉し形成した片面型の成形品空間も含むものとする。
片面型を用いる場合は、成形型にシール材を介してバッグフィルムを取付け、成形型とバッグフィルムで囲われる空間内を大気圧に対して減圧された状態にすることで、成形型外部から液状樹脂を吸引し繊維強化樹脂へ含浸させることができる。片面型は成形型を製作するコストが低いという利点があり、例えば繊維強化樹脂の一方の面のみに精度が要求され、成形型に接しない面の精度が要求されない場合などに好ましく用いることができる。
また、両面型を用いると、キャビティが成形型に囲われた空間であるため形状精度の高い繊維強化樹脂を得ることができることから好ましい。繊維強化樹脂を短い時間で効率よく成形するためには、液状樹脂を強化繊維基材に短時間で含浸させることが有効であり、そのためには液状樹脂を加圧注入することが効果的であり、かかる観点から、両面型を用いることが好ましい。また、両面型を用いる場合には、液状樹脂が加圧注入されても、液状樹脂から受ける圧力によって成形型が変形しキャビティ形状が変わることがないように、成形型は十分な剛性を有する材質で製作されていることが好ましい。例えばガラス繊維や炭素繊維などを強化繊維として用いた繊維強化樹脂製のものを用いることでき、鋳鋼、構造用炭素鋼、アルミニウム合金、亜鉛合金、ニッケル電鋳、銅電鋳などの金属製であればより高い剛性を発現できるので好ましい。両面型を形成するそれぞれの型は、キャビティ内に液状樹脂が注入されたときも、液状樹脂の圧力によって互いが引き離されてその位置関係が変わらないように結合されていることが好ましい。この場合の、結合手段としては、例えばボルトなどを用いて機械的に結合させたり、成形型昇降機(プレス装置)を用いて樹脂圧で型が引き離されるよりも大きい力で型同士を押し付けたりすることが望ましい。
両面型方式の成形型の例を、図1および図2に示し、これを用いた本発明の適用対象であるRTM法について説明する。図1および図2において、両面型を形成する上型1と下型2の間に形成されたキャビティ3の端部の一部にキャビティー形状に沿って薄い開口部であるフィルムゲート4が形成されており、さらにフィルムゲートに隣接して注入ランナー5が形成されている。注入ランナー5は、円形、半円形、矩形などの断面形状を有し、フィルムゲート同様、キャビティの外周方向に沿って配置される。
かかる成形型に液状樹脂を注入するとき、液状樹脂は樹脂注入路6を経由して注入ランナーに到達する。液状樹脂はまず流動抵抗が低い注入ランナー部分を満たした後にフィルムゲートを横断してフィルムゲートの全幅から一斉にキャビティに進入し、キャビティ内に配置された強化繊維基材7へ含浸していく。強化繊維基材は流動抵抗が大きいため含浸する液状樹脂の進行速度が低くなるが、フィルムゲートの全幅から含浸させることで流量を大きくでき、一点のみの注入口から強化繊維基材に含浸する場合に比べて、全体へ含浸するのに必要な時間を短くすることができる。このとき、注入ランナーとフィルムゲートの長さに違いがあっても問題ないが、いずれか短いほうが律速となるため、通常注入ランナーとフィルムゲートの長さはほぼ同じにすることが好ましい。また、液状樹脂の流量を大きくして含浸時間を短縮するためには、フィルムゲートのキャビティ外周方向の長さは大きいほうが樹脂流量を大きくでき有利であるが、フィルムゲートが長すぎると、液状樹脂が強化繊維基材全体へ含浸される前に一部の液状樹脂が排出口に到達してしまい、強化繊維基材に未含浸部分が残りやすくなる。そのため、キャビティの形状にもよるが、一般にキャビティの外周全長に対して1/8〜3/4程度とすることが好ましい。1/5〜1/2程度であれば樹脂を短時間で効率よく含浸させながら、未含浸が発生することがないのでより好ましい。
キャビティの注入ランナーと対向する位置には、成形型の外部へと通ずる樹脂排出口8が形成されている。樹脂排出口8は余剰の液状樹脂を成形型外部へ排出する機能を有していれば、その形状はフィルムゲートと注入ランナーおよび樹脂流入路からなる樹脂注入部分と同様であっても良いし、単に成形型の外部へと通じる流路が確保されているのみであっても良い。
注入ランナーとフィルムゲート、あるいは樹脂排出口はキャビティの外周にそれぞれ複数が形成されていても良いが、数が多すぎると液状樹脂の注入作業が煩雑になり作業効率が悪化することがあるので、必要な液状樹脂の流量が確保される限り、通常一組があれば十分であることが多い。
かかる両面型方式の成形型を使用する場合、成形型の上型と下型の合わせ面には、成形型の外部と内部を連通させる樹脂流入路および樹脂排出路以外の部分は、上型と下型を結合することで内部を密封し、空気や液状樹脂の漏れを防ぐために、キャビティ、フィルムゲート、注入ランナーの周囲を取り巻くように、シール材9を配置されていることが好ましい。シール材を適用すれば、高い剛性を有する上型と下型に挟まれるため、液状樹脂を高圧で加圧注入した場合であっても、液状樹脂が成形型の内側から外側に漏れることを防止できるためである。
樹脂流入路には、成形型外部に通じるホースや金属管などの流路を介して樹脂タンクが接続されており、樹脂タンクから成形型に液状樹脂が供給される。2液型の液状樹脂を用いる場合は、樹脂タンクは主剤と硬化剤が混合された液状樹脂が貯蔵されていても良いし、主剤用、硬化剤用のそれぞれのタンクを有し、流路内に設置したミキサーにより随時樹脂を混合しながら供給する方式であっても良い。主剤と硬化剤を混合した後は、樹脂の使用可能時間が限定されるために、後者の方が生産効率が良く好ましい。
樹脂排出路には、成形型外部に通じるホースや金属管などの流路を介して、成形時に排出された余剰の液状樹脂を流入させるための樹脂トラップに接続される。
成形型内へ液状樹脂を注入する方法は特に限定するものではないが、例えば、成形型内部を真空にし、真空圧によって液状樹脂を成形型内部に吸引する方法や、樹脂タンク内を加圧したり、ポンプを用いたりして液状樹脂を成形型内部に加圧して送りこむ方法のいずれか、あるいは、それらを併用する方法を用いることができる。特に、液状樹脂の注入時間を短縮したい場合には、液状樹脂を加圧して注入することが効果的である。安定して製品を成形するためには、液状樹脂を一定圧力、一定量で加圧注入することが好ましい。 本発明において用いられる液状樹脂としては、粘度が低く強化繊維への含浸が容易な熱硬化性樹脂、または、熱可塑性樹脂を形成するRIM(Reaction Injection Molding)用モノマーが好適であり、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられるが、その中でも、成形体の熱収縮を低減させ、クラックの発生を抑えることができるという点から、エポキシ樹脂、または、ゴム成分などを配合した変性エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂やゴム成分などを配合したナイロン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂などが好ましい。
本発明において用いられる強化繊維基材とは、多数本の強化繊維が集合した形態を有する基材を指す。かかる基材に用いられる強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維、あるいは、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維が挙げられる。中でも機械的特性が高い炭素繊維が特に好ましく用いられる。基材の形態は、平織、綾織、朱子織などの織物や、チョップドファイバーやマットなどの不織布、編組、ニット材料等が挙げられ、それらを単独あるいは組合わせて積層したものも用いることができる。高い機械的特性を実現することが求められる場合には、連続繊維を強化繊維基材としても用いることが好ましく、中でも立体形状への変形性が良く取り扱い性に優れる織物が好ましく用いられる。
基材中には、インサート素材あるいは部品が組み込まれていても良く、その用途により、適宜インサート素材あるいは部品が選択される。インサート素材あるいは部品の例として、スチールやアルミニウムなどの金属板や、金属柱、金属ボルト、ナット、ヒンジなどの接合用の金属、アルミハニカムコア、あるいは、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリイミド、塩化ビニル、フェノール、アクリルなどの高分子材料からなるフォーム材や、ゴム質材、木質材等が挙げられる。主として、釘が効くことや、ネジが立てられる等の接合を目的としたインサート部品、中空構造で軽量化を目的としたインサート部品、振動の減衰を目的としたインサート部品などが好ましく用いられる。
成形型内の強化繊維基材に含浸した液状樹脂は、熱硬化性樹脂であれば硬化温度まで加温する、熱可塑性樹脂であれば固化する温度まで冷却するなど、それぞれの液状樹脂の性質に適した方法によって硬化され、繊維強化樹脂を得ることができる。
本発明では、上述の成形型に強化繊維基材7とともに、シート状樹脂材料10をキャビティ3内で強化繊維基材7の少なくとも一方の面を覆い、かつ、注入ランナー5を横断する方向の少なくとも一部分で注入ランナーの形状に沿うようにキャビティ3から延在して配置することが必要である。まず、キャビティ3内でのシート状樹脂材料10の態様について説明する。ここで、覆うとは、強化繊維基材の表面にシート状樹脂材料が配置されていることであるが、シート状樹脂材料により覆われた面内に、部分的に強化繊維基材が露出している部分があっても構わない。また、延在して配置するとは、注入ランナーの少なくとも一部分においては、シート状樹脂材料がキャビティ部分から注入ランナー部分まで連続して配置されていることを言う。シート状樹脂材料を配置する方法としては、成形型にシート状樹脂材料と強化繊維基材を所定の位置に所定の順で載置していく方法や、事前に強化繊維基材の表面にシート状樹脂材料を貼付して形状付与した所謂プリフォームとしたものを成形型に載置する方法などがある。このようにシート状樹脂材料を配置することにより、シート状樹脂材料が成形型と接触しているため、液状樹脂材料の硬化物が成形型に固着することがなくなるため、成形型に離型剤を塗布しなくても脱型が容易にできるようになる。その結果、離型剤の塗布作業自体が不要になり、生産性が向上する。
本発明の繊維強化樹脂の製造方法において、シート状樹脂材料は注入ランナーを横断する方向の少なくとも一部分に沿うようにキャビティから延在して配置することが必要である。シート状樹脂材料が、注入ランナーまで延在した部分において、注入ランナーの形状に沿うように配置されるとは、キャビティの外周の少なくとも一部と連通する溝状の注入ランナー部分において、シート状樹脂材料がキャビティ部分から注入ランナー部分にまで達しており、かつ、シート状樹脂材料が注入ランナーにまで到達している部分において、シート状樹脂材料が円形、半円形、矩形などの断面形状を有する注入ランナーに対して、概ね一致するような形状に変形し、注入ランナーに沿っている状態であることをいう。シート状樹脂材料を注入ランナーの形状に沿わせる方法としては、事前に注入ランナーに沿うように形状付与したシート状樹脂材料を用いる方法や、シート状樹脂材料を注入ランナーに沿うように押し付ける手段を配置する方法などがある。例えば、注入ランナーと同じ形状をし、多数の貫通孔を有する金属や樹脂製の管でシート状樹脂材料を注入ランナー部分に押し付けたり、弾性体を用いてシート状樹脂材料を注入ランナー部分に押し付けたりする方法を用いることができる。こうしたシート状樹脂材料を注入ランナーに押し付ける手段は、それ自体が樹脂の流動を妨げないものであれば連続的に配置してもよいし、樹脂の流動を妨げる可能性がある場合は、不連続に配置してそれらの間を樹脂が流動するようにしてもよい。中でも、シート状樹脂材料を事前に注入ランナーに沿うように形状付与しておく方法は、成形型への位置決めが容易であり、押し付ける手段を配置する手間が不要であることから作業性が良く好ましい。
シート状樹脂材料を注入ランナーに沿うように配置することで、樹脂注入路から注入された液状樹脂は、注入ランナーを満たした後にフィルムゲートを経由して強化繊維基材に含浸し、シート状樹脂材料と成形型の間に流入することがない。
これは次の理由による。樹脂注入路から流入した樹脂はまず、流動抵抗の低い注入ランナー内に充満する。このとき注入ランナーに沿うように配置されたシート状樹脂材料は、樹脂圧によってさらに注入ランナーの壁面に押し付けられる。例えば、事前に形状付与されているシート状樹脂材料が十分に注入ランナーに押し付けられていなくとも、注入ランナー内に流入した液状樹脂の圧力によって、シート状樹脂材料は注入ランナーにより強く押し付けられる作用を得られる。シート状樹脂材料は注入ランナーに強く押し付けられるため、液状樹脂はシート状樹脂材料と成形型との間には流入せず、十分な空間を有するフィルムゲートを経由してキャビティへと流出し、強化繊維基材に含浸していく。
シート状樹脂材料10が、図3の部分断面図に示すように注入ランナー5部分まで延在して配置されていない場合や、図4の部分断面図に示すように延在して配置されていても注入ランナー5に沿っていない場合は、液状樹脂がシート状樹脂材料10と上型1や下型2との間に容易に流入し、その結果、繊維強化樹脂とシート状樹脂材料を一体化させる場合には、表面に液状樹脂の硬化物が残存して見栄えが悪くなったり、シート状樹脂材料を繊維強化樹脂から引き剥がす場合には、シート状樹脂材料表面で硬化した液状樹脂の厚みによってシート状樹脂材料を剥がした後の繊維強化樹脂の表面に凹みができるという問題が生じ、さらに、成形型に離型剤を塗布していない場合には、シート状樹脂材料と成形型の間に流入した液状樹脂の硬化物が成形型に密着してしまい、脱型に多大な時間を要したり、あるいは脱型ができずに繊維強化樹脂を破壊してしまうことさえある。
シート状樹脂材料は、注入ランナーを横断する方向において、注入ランナーの少なくとも一部分に沿うように配置されていれば良い。少なくとも一部分とは、円形、半円形、矩形などの断面形状を有する注入ランナー横断面に対して、樹脂注入口から注入ランナー、さらにフィルムゲートへと進む液状樹脂の流入を妨げない範囲で、ほぼ全周を覆っていても良いし、あるいは、全周に対して一部分を覆う場合も含む。実用上は、注入ランナー断面の半周程度でシート状樹脂材料が注入ランナーに沿って配置されていれば、注入された液状樹脂がシート状樹脂材料と成形型の間に流入してしまうことを防ぐのに十分な効果を得ることができる。また、注入ランナー横断面の全周に対して1/6以上の長さでシート状樹脂材料が注入ランナーに沿って配置されていれば、液状樹脂はシート状樹脂材料と成形型の間に流入してしまうことは無い。いずれにしても、樹脂注入口から流入する液状樹脂の圧力によって、シート状樹脂材料が注入ランナーから引き離されないように配置することが重要である。
樹脂排出口部分においては、少なくともシート状樹脂材料は強化繊維基材の必要な部分を覆って配置されていれば良い。また液状樹脂を注入したり排出したりする部分以外の強化繊維基材の端面においても、シート状樹脂材料は少なくとも強化繊維基材の必要な部分を覆って配置されていれば良い。
また、キャビティ内に配置される強化繊維基材の体積含有率を高くすると、キャビティ内のシート状樹脂材料が強化繊維基材によって成形型に押し付けられるため、シート状樹脂材料にシワが入ったり、位置がずれたりすることがおきにくい。そのためには、シート状樹脂材料を除いた繊維強化樹脂部分のVf(強化繊維の体積含有率)が40%以上であることが好ましく、45%以上であればさらに好ましい。
また本発明の繊維強化樹脂の製造方法では、シート状樹脂材料が注入ランナーの全長のうちの50〜100%の部分において、注入ランナー形状に沿うように配置されていることが好ましい。
注入ランナーの全長とは、キャビティ外周方向の長さを言う。シート状樹脂材料が注入ランナーの全長のうちの50〜100%の部分において、注入ランナー形状に沿うように配置されていると、液状樹脂がシート状樹脂材料と成形型の間に流入しにくく、シート状樹脂材料の表面に流入した液状樹脂の硬化物による不良が生じにくくなる。シート状樹脂材料が注入ランナーの全長の75〜100%の部分において注入ランナー形状に沿うように配置されていれば、液状樹脂はさらにシート状樹脂材料と成形型の間に流入しにくくなり、90〜100%であれば流入はほぼゼロになり好ましい。
シート状樹脂材料は、注入ランナー形状に沿って配置されていれば良いが、あらかじめ注入ランナー形状に沿うように形状付与されたものであることが好ましい。このように形状付与されたシート状樹脂材料を用いると、シート状樹脂材料を配置する際に注入ランナーに沿わせるために押し付ける手段を配置したりする作業が省略でき、作業効率を著しく向上させることができ、また、シート状樹脂材料が注入ランナーに沿うように形状付与されていると、成形型に載置する際の位置決めが容易になるため好ましい。
シート状樹脂材料を形状付与する方法は、特に限定されるものではないが、真空成形法を用いると簡便かつ効率的に形状付与することができる。真空成形により形状付与する場合は、シート状樹脂材料は熱可塑性材料からなるものを用いることが好ましい。シート状樹脂材料は、注入ランナー部分に載置される部分のみを形状付与しておいてもよいが、同時にキャビティ部分も形状付与しておけば、位置決め精度や位置決めの作業性がさらに向上するので好ましい。
本発明に用いるシート状樹脂材料として、液状樹脂との接着性が小さいシート状樹脂材料を用いれば、前記の生産性を高める効果を得ながら液状樹脂が硬化した後に容易にシート状樹脂材料を剥がして繊維強化樹脂成形品を得ることができる。このようにすることにより、繊維強化樹脂の表面を塗装する場合、本発明におけるシート状樹脂材料を用いない従来の方法では、離型剤を用いることが必須であることから、繊維強化樹脂の表面に転写された離型剤が塗料の密着性を悪くするために、塗装前に繊維強化樹脂の表面を溶剤で拭き取ったり、表面を研磨して離型剤が付着した層を削り落としたりする作業が必要であったが、シート状樹脂材料を配置することでそれらの作業が不要になり、生産性を著しく高めることができる。
また、液状樹脂との接着性に優れるシート状樹脂材料を用いれば、前記の生産性を高める効果を得ながら成形品表面にシート状樹脂材料が強固に一体化した成形品を得ることができる。このように、成形品とシート状樹脂材料を一体化させる場合は、平滑な表面を有するシート状樹脂材料を用いて繊維強化樹脂の表面に生じる穴状欠陥や凹凸を低減させたり、着色されたシート状樹脂材料を用いて繊維強化樹脂の表面に塗装効果を得たりすることも可能である。
かかる目的に使用するシート状樹脂材料は、単層の樹脂材料からなるシート、あるいは、複数層が積層されたシートのいずれであっても良い。材質は、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリエステルに代表される熱可塑性樹脂や、それらに各種フィラーが含まれたものなどを好適に用いることができる。また、これらの材質からなるシートに例えばNBR(ニトリルゴム)などからなるエラストマー層が貼り合わされたシート状樹脂材料を、エラストマー層が繊維強化樹脂側の面に位置するようにして用いると、液状樹脂の硬化収縮により生じる内部応力をエラストマー層が緩和し、繊維強化樹脂の表面凹凸を著しく低減することもできる。また、接着層を有するシートを用いることもできる。
シート状樹脂材料の厚さは、10μm〜2mmの範囲内にあることが好ましい。成形型に配置する際の取り扱い性や、シート状樹脂材料と一体化した繊維強化樹脂の重量が大き
くなりすぎないことなどを考慮すると、100μm〜1mmであるとより好ましい。
また本発明の繊維強化樹脂の製造方法では、図5に示すようにシート樹脂材料を、キャビティ内で強化繊維基材の両面を覆い、かつ、注入ランナーの少なくとも一部分に沿うようにキャビティから延在して配置することも可能である。一枚のシート状樹脂材料で両面を覆っても良いし、強化繊維基材の片側の面ともう一方の面をそれぞれ別のシート状樹脂材料で覆っても良い。シート状樹脂材料を両面に配置することで、離型剤の塗布が不要になる効果、さらには、表面品位や意匠性を向上させる効果を繊維強化樹脂の両面で得ることができることから好ましい。
以下、実施例、比較例に基づいて本発明を説明する。
(実施例1)
図1の成形装置を用い、次に示す方法で繊維強化樹脂を成形した。
構造用炭素鋼製の上型および下型から構成され、上型と下型との間に形成されるキャビティの厚さが1.5mm、平面寸法が概ね500mm×500mm、高さ方向に約50mmの変化を持つ緩やかな曲面形状をなした成形型を用いた。この成形型のキャビティの外周部には厚さ0.5mm、キャビティ外周方向の長さ500mm、横断方向の長さ20mmのフィルムゲートを介して、キャビティ外周方向の長さ500mmで断面形状が直径10mmの半円形をなした注入ランナーが上型、下型それぞれに形成されており、成形型を閉じると直径10mmの円形の注入ランナーを形成するようになっている。注入ランナーからは直径12mmの樹脂注入路が成形型外部まで通じている。また、キャビティの注入ランナーと対向する位置には、成形型の外部へ通じる直径12mmの樹脂排出路が形成されている。
下型のキャビティ面、フィルムゲート、注入ランナーに沿う形状に真空成形した厚さ0.5mmのポリカーボネートシート状樹脂材料を下型に載置した。シート状樹脂材料は、注入ランナーのキャビティ外周方向の長さ500mmのうち、480mmが注入ランナーに沿う形状とし、その形状は下型側に形成された半円状の断面形状を持つ注入ランナーに沿い、半円形状の外周に沿ってフィルムゲート側から2/3の長さまで到達する形状とした。シート状樹脂材料のフィルムゲート、注入ランナーに接しない部分は、シート状樹脂材料の上に載置する強化繊維基材と同一の外周形状とした。シート状樹脂材料は注入ランナーやキャビティと接する部分の形状が成形型と一致するため、成形型に対して容易に位置決めすることができた。
強化繊維基材として、東レ(株)製炭素繊維織物BT70−30(織組織:平織り、織物目付け:316g/m、強化繊維:T700SC−12K)および、東レ(株)製炭素繊維織物BT70−20(織組織:平織り、織物目付け:213g/m、強化繊維:T700SC−12K)それぞれを、キャビティ内にちょうど収まる形状に裁断し、各2枚ずつをシート状樹脂材料の上に載置した。ついで、上型のみに離型剤を適量塗布し、成形型を閉じて油圧シリンダで上型を下型に300kNの力で押し付けた。成形型の樹脂注入口には樹脂チューブを介して樹脂注入機を接続し、樹脂排出口には樹脂チューブを介して樹脂トラップを接続し、樹脂トラップはさらに真空ポンプに接続した。成形型は温調機を用いて90℃に加温した。
液状樹脂として、jER(登録商標)”828(ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)100wt%に、“キュアゾール(登録商標)”2E4MZ(品番、四国化成工業(株)製、2−エチル−4−メチルイミダゾール)3wt%を配合した、液状のエポキシ樹脂組成物を0.5MPaに加圧して樹脂注入機から樹脂注入口を介して成形型内へ注入した。成形型キャビティ内部が液状樹脂で充填され、樹脂排出口から液状樹脂が排出されたのを確認して、樹脂注入口および樹脂排出口それぞれに接続された樹脂チューブをバイスクランプで挟み込んで流路を閉鎖し、この状態で30分放置し液状樹脂を硬化させた。
上型を取り外し、キャビティから繊維強化樹脂を取り外した。下型に接するシート状樹脂材料は下型に離型剤を塗布していなくとも、下型に密着することなく容易に取り外すことができた。また、離型剤の効果によって上型からも容易に取り外すことができた。脱型した繊維強化樹脂には、シート状樹脂材料が密着し一体化されていた。またシート状樹脂材料表面には液状樹脂の硬化物は残存するなどの液状樹脂が流入した形跡は見られなかった。シート状樹脂材料表面はシワ等が全く生じておらず、ピンホールや、強化繊維基材の表出などもなく、きれいであった。
(実施例2)シート状樹脂材料の材質をポリエチレンに変更した以外は、実施例1と同様の方法で繊維強化樹脂を成形した。繊維強化樹脂は、上型、下型のいずれにも固着することはなく、容易に脱型することができた。シート状樹脂材料表面にはシワ等が全く生じておらず、流入した液状樹脂が硬化した形跡も見られなかった。繊維強化樹脂からシート状樹脂材料を引き剥がして、シート状樹脂材料を引き剥がした面に研磨や脱脂処理をすることなく塗装を施した。塗料ははじかれることなく繊維強化樹脂に密着し、きれいな塗装面を得ることができた。
(実施例3)シート状樹脂材料として厚さ0.25mmのポリカーボネート樹脂シートを2枚準備し、下型側のキャビティ、フィルムゲート、注入ランナーに沿う形状、および上型側のキャビティ、フィルムゲート、樹脂注入ランナーに沿う形状にそれぞれ真空成形した。
下型に接するシート状樹脂材料は実施例1のシート状樹脂材料と同様の形状とし、上型に接するシート状樹脂材料は、上型に形成された注入ランナーのキャビティ外周方向の長さ500mmのうち、480mmが注入ランナーに沿う形状とし、その形状は上型に形成された半円状の断面形状を持つ注入ランナーに沿い、半円形状の外周に沿ってフィルムゲート側から2/3の長さまで到達する形状とした。
下型の上に、下型の形状に真空成形したシート状樹脂材料、実施例1と同様の強化繊維基材、上型の形状に真空成形したシート状樹脂材料を載置した。いずれのシート状樹脂材料も注入ランナー部分やキャビティ部分の形状が成形型と一致するため、成形型に対して容易に位置決めすることができた。次いで、上型にも離型剤を塗布しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で実施例1と同じ液状樹脂を注入し、硬化させた。
上型を取り外し、キャビティから繊維強化樹脂を取り外した。繊維強化樹脂は、上型、下型のいずれにも固着することはなく、容易に脱型することができた。脱型した繊維強化樹脂の両面には、シート状樹脂材料が密着し一体化されていた。またシート状樹脂材料表面には両面ともに液状樹脂が流入した形跡は見られなかった。シート状樹脂材料表面はシワ等が全く生じておらず、ピンホールや、強化繊維基材の表出などもなく、きれいであった。
(比較例1)シート状樹脂材料の形状を次のように変更し、下型表面にも離型剤を塗布した以外は、実施例1と同じ方法で成形を行った。シート状樹脂材料には、厚さ0.5mmのポリカーボネート樹脂を下型のキャビティに沿う形状に真空成形し、その外周形状は全周にわたってシート状樹脂材料の上に載置する強化繊維基材と同一となるよう裁断したものを使用した。
上型を取り外し、キャビティから繊維強化樹脂を取り出した。繊維強化樹脂の表面にはシート状樹脂材料が密着し一体化されていた。しかしシート状樹脂材料の表面には、樹脂注入部分から広い範囲にわたって、液状樹脂の硬化物が固着しており、表面の平滑性や見栄えは全く満足できるものではなかった。
(比較例2)キャビティの厚さが1.0mmであること以外は実施例1と同様の成形型を用い、シート状樹脂材料を使用せずに、実施例1と同じ強化繊維基材のみを成形型に載置した。強化繊維基材を載置する前に、成形型の上型、下型それぞれに離型剤を適量塗布した。成形型を閉じ、実施例1と同じ方法で同じ液状樹脂を注入し、硬化させた。
上型を取り外し、キャビティから繊維強化樹脂を取り出した。離型剤の効果によって繊維強化樹脂は、上型、下型のいずれにも固着することはなく、容易に脱型することができたが、繊維強化樹脂の表面には、炭素繊維織物の織目部分にピンホールが散見された。
この繊維強化樹脂の表面に研磨や脱脂処理をすることなく塗装を施したところ、ピンホール部分の塗料がはじかれ大きな穴が生じた。また、成形型から繊維強化樹脂の表面に転写した離型剤のために、塗料は繊維強化樹脂に十分に密着せず繊維強化樹脂表面から容易に剥がれ、きれいな塗装面を得ることができなかった。
(比較例3)キャビティの厚さが1.0mmであること以外は実施例1と同様の成形型を用い、シート状樹脂材料を使用せずに、実施例1と同じ強化繊維基材のみを成形型に載置した。成形型の上型、下型のいずれにも離型剤は塗布しなかった。成形型を閉じ、実施例1と同じ方法で同じ液状樹脂を注入し、硬化させた。
上型を取り外そうとしたが、硬化した樹脂によって上型と下型が強固に固着しており取り外しが非常に困難であった。また、上型を取り外した後も下型から繊維強化樹脂を容易に取り出すことができなかった。繊維強化樹脂の端部と成形型の間にクサビを打ち込み強い力で引き剥がすことで、繊維強化樹脂を成形型から取り外すことができたが、繊維強化樹脂の一部が破壊されており、繊維強化樹脂としての使用に耐えうるものではなかった。
本発明の繊維強化樹脂の製造方法を用いることにより、表面品位に優れる繊維強化樹脂を効率よく製造することができる。こうして製造された繊維強化樹脂は、自動車、航空機、船舶、家電機器、OA機器、建築材料等の分野に幅広く適用することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の繊維強化樹脂の製造方法の一態様を示す概略断面図である。 本発明の繊維強化樹脂の製造方法に用いる成形型の一態様を示す概略斜視図である。 本発明と異なる繊維強化樹脂の製造方法を示す部分断面図である。 本発明と異なる繊維強化樹脂の製造方法を示す部分断面図である。 本発明の繊維強化樹脂の製造方法の別の態様を示す部分断面図である。
符号の説明
1 上型
2 下型
3 キャビティ
4 フィルムゲート
5 注入ランナー
6 樹脂注入路
7 強化繊維基材
8 樹脂排出口
9 シール材
10 シート状樹脂材料

Claims (8)

  1. 成形型のキャビティ内に配置した強化繊維基材に、該キャビティの外周の少なくとも一部と連通する溝状の注入ランナーから、該キャビティを挟んで注入ランナーと対向する位置に形成された排出口へ向かって液状樹脂を注入することで、キャビティ内の強化繊維基材に液状樹脂を含浸させ、次いで液状樹脂を硬化させる繊維強化樹脂の製造方法において、シート状樹脂材料をキャビティ内で強化繊維基材の少なくとも一方の面を覆い、かつ、注入ランナーを横断する方向の少なくとも一部分で注入ランナーの形状に沿うようにキャビティから延在して配置することを特徴とする繊維強化樹脂の製造方法。
  2. シート状樹脂材料が、注入ランナーの全長のうちの50〜100%に於いて注入ランナー形状に沿うように配置されている請求項1に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
  3. 前記シート状樹脂材料が、注入ランナー形状に沿うようにあらかじめ形状付与されたものである請求項1または2に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
  4. 前記シート状樹脂材料が、真空成形によって形状付与したものである請求項3に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
  5. 前記液状樹脂を硬化させることで、前記シート状樹脂材料を繊維強化樹脂と一体化させる請求項1から4のいずれかに記載の繊維強化樹脂の製造方法。
  6. 前記液状樹脂を硬化させた後に、前記シート状樹脂材料と繊維強化樹脂を分離する請求項1から4のいずれかに記載の繊維強化樹脂の製造方法。
  7. キャビティ内で強化繊維基材を覆い、かつ、注入ランナーの少なくとも一部分に沿うようにキャビティから延在して配置する前記シート状樹脂材料を両面に配置する請求項1から6のいずれかに記載の繊維強化樹脂の製造方法。
  8. 前記成形型のキャビティが、両面型の内部に形成され、該キャビティの外周の少なくとも一部に形成されたフィルムゲートを介して該キャビティと連通する溝状の注入ランナーから液状樹脂を注入する請求項1から7のいずれかに記載の繊維強化樹脂の製造方法。
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