本発明は、AWGの分光軸に対応する方向のサイズを短く抑えた空間位相変調素子を利用した可変分散補償器ブロック(TODCブロック)を複数組み合わせ、多チャンネルの可変分散補償器を構成する点に特徴を有する。さらに、TODCブロックにおいて使用されるAWGのFSRを、そのTODCブロックによってカバーするWDM通信チャンネル群の全帯域幅と等しく成るように設定する。さらに、FSRを、そのTODCブロックによってカバーするWDM通信チャンネル群の全帯域幅と所定の関係と成るように設定することにより、光透過特性の平坦化も実現できる。
実施例1:図1は、本発明の実施例1に係る可変分散補償器の全体構成を示すブロック図である。本可変分散補償器100は、複数のTODCブロックおよび群分波フィルタから構成されている。例えば、λ1からλ40までの40の波長を持つ光信号群が多重化された光信号は、第1の群分波フィルタ101の入力ポートInに入力される。多重化された光信号は、第1の群分波フィルタ101によってλ1からλ10、λ11からλ20、λ21からλ30ならびにλ31からλ40の4つの波長群(G1、G2、G3、G4)に群分波される。波長群分波フィルタ101のポート1、ポート2、ポート3、ポート4から出力される各波長群の光信号群は、それぞれ、光ファイバなどによってTODCブロック103a、103b、103c、103dに入力される。G1からG4の各波長群の光信号群は、それぞれTODCブロック103a、103b、103c、103dによって分散補償されて、第2の波長群分波フィルタ102の各ポート1からポート4に接続される。分散補償後の4つの波長群(G1、G2、G3、G4)の光信号群は、第2の波長群分波フィルタ102によって合波され、再びλ1からλ40までの中心波長を持つ40の通信チャンネルの光信号に多重化されて、出力ポートoutから出力される。
図1に示したブロック図では、波長群分波フィルタ101、102が2つあるものとして記載されているが、TODCブロックとして反射型の構成のものを利用する場合は、反射板を設けて合波および分波ができる1つの波長群分波フィルタにより同等の機能を実現できる。波長群分波フィルタ101、102は、例えば、誘電多層膜により構成することができる。
本発明の可変分散補償器の各TODCブロック103は、例えば図12の(A)に示した可変分散補償器と同一構成ものを使用できる。したがって、図1における各TODCブロックの入力と出力は、図12の(A)においては光サーキュレータ11の入力ポート38および出力ポート39に対応する。尚、図12の(A)では、反射型の構成の可変波長分散補償器を示しているが、AWG等を2つ配置した透過型の構成によっても実現できることに留意されたい。
個々のTODCブロック103a、103b、103c、103dについては、AWGの構成パラメータを、分光動作の中心波長をそれぞれG1−G4の各帯域の中心波長に対応させ、各帯域内にある所定の通信チャンネル数に適合した線分散値となるようにそれぞれ設定する。各TODCブロックの基本的な構成は、全く同一とすることができる。図12の(A)に示したように、各TODCブロックに含まれるLCOS素子上における、AWGの分光軸方向に配列された複数のピクセルによって、チャンネル毎に独立して位相設定を行なうことができる。図1の構成の場合、1つの波長群帯域の中の10のWDM通信チャンネルに対して、独立に分散補償を行なうことができる。
したがって、図1に示した構成により、各TODCブロックにおいて分散補償を行なう通信チャンネル数を少なく抑えることで、各LCOS素子の分光軸に対応するサイズを短くすることができる。すなわち、LCOS素子の大型化を抑えて、量産性およびコストに優れた多チャンネル可変分散補償器を実現することができる。特に、分散補償が必要なチャンネル数が非常に多い場合は、1辺が大きいサイズの、LCOS素子を1つだけ使用したTODCブロックを1つ使用する場合と比較して、小型のLCOS素子を使用した複数のTODCブロックによって構成するほうが、コストが安くなる。
より好ましくは、本実施例の各TODCブロックにおいては、AWGのFSRが、1つの波長群に含まれる通信チャンネルの全帯域幅と等しくなるように設定することができる。具体的には、AWGのFSRを、WDM通信チャンネルの10チャンネル分に相当する光周波数幅に設定することができる。例えば、1つのWDM通信チャンネル幅を100GHzとすると、FSRを、1000GHzに設定する。
AWGのFSRと1つの波長群に含まれる複数の通信チャンネルの全帯域幅とを、等しい値に設定することによって、TODCブロック103a、103b、103c、103dの構成を全く同一のものとすることができる。すなわち、図1に示した可変分散補償器100を、同一の設計仕様の1種類のTODCブロックのみで構成できる。可変分散補償器100の構成要素の種類を減らすことができるので、可変分散補償器の製造コストを減らすことができる。さらには、可変分散補償器の保守および運用の観点においても、保守作業のより簡易化と、低コスト化を実現できる。可変分散補償器の故障に対応するために、複数種類(例えば4種類)のTODCブロックを備える必要がなく、保守用に1種類のTODCブロックだけ備えておけば良い。保守交換作業も簡単化できることに注目されたい。
図2は、本発明の可変分散補償器の光透過率特性の一例を示す図である。AWGのFSRを、1つの波長群に含まれる通信チャンネルの全帯域幅と同一の値に設定した場合を示している。横軸は、光周波数を示し、縦軸は分散補償器としての光透過特性を示している。分散補償特性は、AWGの周回性によって、FSR毎に同じ特性が繰り返される。光透過率についても、FSR毎に繰り返す帯域特性を示す。1つのFSRには、1つの波長群(G1、G2、G3、G4)の10の通信チャンネルの波長が対応している。
図1に示した構成の可変分散補償器では、1つの波長群に10のWDM通信チャンネルが含まれている構成を例として説明したが、これに限定されない。同様に、分散補償の対象とするシステムのチャンネル総数を40、波長群の数を4、ならびに対応するTODCブロックの数も4として説明したが、これらの数もなんら限定されない。
以上説明した実施例1の可変波長分散補償器によれば、多重化されたWDM光信号を複数の波長群に分離して、波長群毎に対応するTODCブロックを備えることで、分光軸方向にサイズが短いLCOS素子を使用することができる。大型のLCOS素子を必要とせずに、量産性およびコストに優れた、多チャンネル可変分散補償器を実現することができる。さらに、AWGのFSRと1つの波長群内に含まれる通信チャンネルの全帯域幅とを、等しい値に設定することによって、可変分散補償器の低コスト化ならびに保守の簡易化および低コスト化を実現できる。
実施例2:本実施例においては、完全に同一仕様のTODCブロックを利用可能とし、さらに光透過特性を平坦化させた可変分散補償器を示す。実施例1においては、各TODCブロックの基本的な構成を、同一のものとすることができる。しかしながら、AWGのFSRと1つの波長群内に含まれる通信チャンネルの全帯域幅とを等しい値に設定しない限り、各波長群に対応した専用のTODCブロックを準備する必要がある。すなわち、波長群毎に、AWGの分光動作の中心波長がそれぞれG1−G4の各帯域の中心波長に対応するように、TODCブロック内に含まれるAWGの構成パラメータを設定する必要がある。TODCブロックを構成しているAWGのチップは、TODCブロック毎に異なるものを使用しなければならない。
AWGのFSRと1つの波長群内に含まれる通信チャンネルの全帯域幅とを等しい値に設定した場合は、TODCブロックを1種類とすることができる。しかしながら、図2に示したように、FSRの両端部に対応する通信チャンネルにおいて光透過率が低下することが避けられなかった。AWGのFSRと1つの波長群内に含まれる通信チャンネルの全帯域幅とを等しい値に設定すると、分散補償器の透過率についても、FSR毎に繰り返す特性を示す。図2に示したように、一般に、1つの波長群の両端の通信チャンネルでは、透過率が低下する。例えば、λ1およびλ10に対応する通信チャンネルにおいては、1つの波長群の中央部にある通信チャンネルと比較して、光透過率が低下している。本実施例においては、この問題をさらに改善する。
図3は、実施例2に係る可変分散補償器において使用されるTODCブロックの構成を示す図である。このTODCブロック103は、図5とともに後述する実施例2に係る可変分散補償器の構成要素として使用される。図3に示したTODCブロック103の基本的構成は、図12の(A)で示した従来技術における可変分散補償器の構成と同じである。また、図13に示した位相分布のように、分波軸の距離をパラメータとして、2次以上の関数で規定される。AWGが、スラブ導波路の境界面上で0.5FSR相当離れた位置に接続された2つの入出力導波路を持つ点で、従来技術の構成と相違している。
図3を参照すれば、TODCブロックは、AWG1、シリンドリカルレンズ6、集光レンズ7およびLCOS素子などによる空間位相変調素子8から構成されている。AWG1はスラブ導波路3およびアレイ導波路4を含んでいる。多重化された光信号群は、アレイ導波路4の一端から光信号の波長に応じた出射角度で分波され、AWG基板の端面Aから出射される。LCOS素子8上には、複数のWDM通信チャンネル(例えば10チャンネル)に対応して、AWG1の分光軸(x軸方向)に沿って複数のピクセルが配置されている。本TODCブロック103は反射型構成であり、AWG1から出射した各光信号は、LCOS素子8において所定の位相が付与された後に反射され、再びAWG1へ戻る。
本TODCブロックのAWG1は、異なる複数の波長群の光信号群を入出力することができる2つの入出力導波路16、17を持つ。第1の入出力導波路16は、スラブ導波路3のアレイ導波路4との接続面とは反対側の境界面B上のa点で、スラブ導波路3と接続される。第1の入出力導波路16は、光ファイバなどを経て第1の光サーキュレータ11に接続される。第1の光サーキュレータ11は、ポートAとして機能し、所定の波長群の光信号が入力(Ain)および出力(Aout)される。同様に、第2の入出力導波路17は、スラブ導波路3の境界面B上のb点で、スラブ導波路3と接続される。第2の入出力導波路17は、光ファイバなどを経て第2の光サーキュレータ14に接続される。第2の光サーキュレータ14は、ポートBとして機能し、ポートAとは別の波長群の光信号が入力(Bin)および出力(Bout)される。
2つの入出力導波路16、17が接続されるa点およびb点は、AWG1に設定されるFSRの1/2に相当する距離だけずれた位置にあることに注目されたい。したがって、ポートAから入出力される光信号の透過帯域と、ポートBから入出力される光信号の透過帯域とは、光周波数軸上において0.5FSRだけずれることとなる。
図4は、実施例2に係るTODCブロックの光透過率を示した図である。ポートAを使用して入出力された光信号の光透過率は、実線の透過率線21で表示され、ポートBを使用して入出力された光信号の光透過率は、点線の透過率線22で表示されている。いずれの透過率線も、同一のAWGの透過率であるので、FSRを繰り返しの周期とした透過率特性を示す。しかしながら、透過帯域の中心は、2つのポート間で0.5FSRずれている点に注目されたい。
ポートAによる透過率特性において、透過帯域の中央にある平坦部を波長群G1の光信号の使用のために割り当てることができる。波長群G1に隣接する波長群G2の光信号の使用のためには、ポートBによる透過率特性における透過帯域の中央にある平坦部を利用できる。さらに波長群G2に隣接する波長群G3については、再びポートAによる透過率特性において、波長群G1に使用した透過帯域からFSR離れた次の透過帯域の中央にある平坦部を利用できる。同様に、波長群G3に隣接する波長群G4については、再びポートBによる透過率特性において、波長群G2に使用した透過帯域からFSR離れた次の透過帯域の中央にある平坦部を利用できる。
上述のように、図3に示したTODCブロックにおいて使用するポートを、波長群毎に交互に選択することによって、多数のWDM通信チャンネルを含む連続した通信帯域に対して光透過特性が平坦な可変分散補償を実現できる。このとき、TODCブロック内のAWG1に設定されるFSRは、1つの波長群内にあるチャンネルの全帯域幅の2倍となっている。実施例1においては、図2に示したように、AWGのFSRと1つの波長群内にあるチャンネルの全帯域幅と同一に設定されていた。すなわち、実施例1では、TODCブロックのAWGのFSR値を、群分波フィルタ101、102の波長分離間隔に一致するように設定していた。これに対し、実施例2では、TODCブロックのAWGのFSR値を、群分波フィルタの分離間隔の2倍に設定している点に注目されたい。次に、図3に示したTODCブロックを使用した可変波長分散補償器の全体構成についてさらに説明する。
図5は、本発明の実施例2に係る可変分散補償器の全体構成を示すブロック図である。実施例1と同様に、λ1からλ40までの40の波長を持つ光信号が多重化された光信号を、4つの波長群(G1、G2、G3、G4)に群分波をして、4つのTODCブロックを使用して分散補償を行なう。実施例2においては、TODCブロックにおいて2つの群分波フィルタと接続されるポートが、AポートおよびBポートの間で、波長群ごとに順次交互に選択される点で、実施例1と相違する。
λ1からλ40までの40の波長を持つ光信号群が多重化された光信号は、第1の群分波フィルタ201の入力ポートinに入力される。多重化された光信号は、第1の群分波フィルタ201によって、λ1からλ10、λ11からλ20、λ21からλ30ならびにλ31からλ40の4つの波長群(G1、G2、G3、G4)に群分波される。波長群分波フィルタ201のポート1、ポート2、ポート3、ポート4から出力される各波長群の光信号群は、それぞれ、光ファイバなどによってTODCブロック203a、203b、203c、203dに入力される。各波長群の光信号は、それぞれTODCブロック203a、203b、203c、203dによって分散補償されて、第2の波長群分波フィルタ202の各ポートに接続される。分散補償された4つの波長群(G1、G2、G3、G4)の光信号群は、第2の波長群分波フィルタ202によって合波され、再びλ1からλ40までの中心波長を持つ40の通信チャンネルの光信号群を含む光信号に多重化される。
波長群G1の光信号群を分散補償するTODC203aにおいては、ポートAが使用されている。波長群G1に隣接する波長群G2の光信号群を分散補償するTODC203bにおいては、ポートBが使用されている。さらに、波長群G2に隣接する波長群G3の光信号群を分散補償するTODC203cにおいては、再びポートAが使用されている。波長群G3に隣接する波長群G4の光信号群を分散補償するTODC203dにおいては、再びポートBが使用されている。上述のように、G1からG4の各波長群に対して、AポートおよびBポートが順次交互に使用される。この結果、図4に示したように隣接する波長群に対して、順次交互に、ポートAおよびポートBに対応した透過帯域が使用されることが分かる。ここで、波長分散補償器としては、光周波数軸上でFSRに対応する1つの透過帯域の内で、平坦な光透過率を持つ中央領域だけが使用される。このため、FSRの両端に対応し、透過帯域の両端部であって光透過率が低下する領域を使用することなしに、平坦な中央領域のみが使用される。
本実施例2の構成によれば、多重化されたWDM光信号を複数の波長群に分離し、複数の1種類のTODCブロックを備えることで、分光軸方向にサイズが短いLCOS素子を使用することができる。大型のLCOS素子を必要とせずに、量産性およびコストに優れた、多チャンネル可変分散補償器を実現することができる。TODCブロックのAWGのFSR値を、群分波フィルタの分離間隔の2倍に設定することによって、光透過帯域が平坦な可変分散補償器を実現できる。可変分散補償器の低コスト化ならびに保守の簡易化および低コスト化を実現できる。
尚、上述の実施例2では、2つの入出力導波路のスラブ導波路との接続点は、AWG1に設定されるFSRの1/2に相当する距離だけずれた位置にあった。しかしながら、同じ技術思想を適応すれば、FSRの1/3に相当する距離だけずれた位置でスラブ導波路と接続された3つの入出力導波路を備えた構成とすることもできる。この場合、TODCブロックとしては、ポートA、ポートBおよびポートCの3つのポート備えることになる。連続する複数の波長群を、順次交互に繰り返す3つのグループに分けることで、1つの波長群において、光透過率の平坦部分を使用できることは容易に理解できるだろう。このとき、TODCブロックのAWGのFSR値を、群分波フィルタの分離間隔の3倍に設定することになる。さらに、同様の考え方により、入出力導波路の数およびポート数を3以上に拡張することも可能である。
実施例3:上述の実施例1および実施例2では、LCOS素子としてAWGの分光軸方向にのみピクセルが配列された1次元構成のLCOS素子を使用していた。しかし、LCOS素子上に2次元にピクセルを配列するとともに、TODCブロックに第2の分光素子を導入することによって、さらに可変分散補償器の構成を簡単化し、LCOS素子も小型化することができる。まず、2次元にピクセルが構成されたLCOS素子を含むTODCブロックについて説明する。
図6は、本発明の実施例3に係るTODCブロックの構成を示す図である。実施例1、実施例2と同様に反射型の構成であるが、バルク型回折格子15をさらに含み、光信号をバルク型回折格子によっても分波する構成である点で、相違している。さらに、本実施例においては、光路を通して見た場合にAWGとバルク型回折格子の分波面が直交している点に大きな特徴を持っている。以下、実施例1および実施例2のTODCブロックとの差異に着目して、詳しく説明する。
実施例1および実施例2のTODCブロックと同様に、入力ファイバ10より入力された光信号は、サーキュレータ11および接続ファイバ13を介して、AWG1の入力導波路2に入射する。入力導波路2に入射した光信号は、スラブ導波路3を介してアレイ導波路4へ伝搬する。アレイ導波路4において、異なる波長を持つ光信号群が分波される。すなわち、出射端5から出射される光信号は、x−z面(分波面)内で、その波長に応じた異なる出射角度でz軸方向のバルク型回折格子15へ向かって伝搬する。
出射端5から出射された光信号は、AWG基板の厚さ方向すなわちy方向に対しては、シリンドリカルレンズ6によって平行ビームに変換される。シリンドリカルレンズ6から出射する光信号はy−z面内で平行光とみなすことができる。一方、AWG基板の面内のx方向に対しては、スラブ導波路3のレンズ作用によって十分幅広い平行ビームに変換される。すなわち、出射端5から出射した時点で、AWG1から出射する光信号はx−z面内で平行光とみなすことができる。シリンドリカルレンズ6を通過することで、光信号をx方向、y方向いずれについても平行光とみなすことができる。
実施例3のTODCブロックの構成は、AWG1により分波された光信号をさらに分波するバルク型回折格子を備えている点に特徴がある。シリンドリカルレンズ6から出射した光信号は、その法線がz軸に対してθiだけ傾き、格子ベクトルがyz面内に設定されたバルク型回折格子15により、さらに分波される。バルク型回折格子15により分波された光信号は、集光レンズ7によって空間位相制御素子8上に集光される。ここで、AWG1の分散方向およびバルク型回折格子15の分散方向は、光路に沿ってそれぞれの分波面を見ると、2つの分波面が直交する関係にある。
図6の(A)によれば、AWG1および空間位相制御素子8は、互いに平行な位置関係に配置されているように記載されているが、厳密には平行でなくて良い。図6は、後述する特定のバルク型回折格子を使用する場合であって、入射角θiが46.76°の場合を例示的に示している。この時、光路はバルク型回折格子おいてほぼ90°で屈折する。このため、図面上は、AWGおよび空間位相制御素子が、互いに平行な位置関係に配置されているかのように表現されている。したがって、本実施例において、バルク型回折格子の屈折角θiには何ら限定はない。本実施例のTODCブロックは、光路に沿って見た場合に、AWG1の分波面とバルク型回折格子15の分波面とが相対的に直交する関係であることにより、空間位相制御素子のピクセルを、異方性を持った2次元に構成できる点に特徴がある。
波長(光周波数)と光信号の集光ビームの位置との関係を説明するため、仮想的に波長を連続的に変えた場合に、集光ビームが空間位相制御素子上に描く軌跡を検討してみる。本実施例においては、AWG1の角度分散をバルク型回折格子15の角度分散よりも十分大きく設定することによって、空間位相制御素子8上の集光ビームは光信号の波長に応じてラスタ状スキャンされる。
例えば、バルク型回折格子15の回折次数を1に、AWG1のFSRを、分散補償の対象となる通信システムにおける1つの波長群のWDM通信チャンネルの全帯域幅に等しくなるように設定すれば良い。このようなビームのラスタ状スキャンは、第1の分光素子として、設計パラメータの自由度が大きく、簡単に所望のFSRを実現できるAWGを用いることで可能となる。第1の分光素子としてバルク型の回折格子を用いても、簡単に所望の角度分散を設定できない。第1の分光素子の分波特性および第2の分光素子の分波特性に適切な角度分散を配分し組み合わせることによって、本実施例に特有の分散補償の動作が実現される点に注目されたい。空間位相制御素子8おいて反射された光信号は、実施例1、2のTODCブロックと同様に、その光路を反転させて往路とは逆方向へ伝搬し、サーキュレータ11を介して、出力ファイバ12から出射される。
図7の(A)は、実施例3のTODCブロックに好適な空間位相制御(LCOS)素子の構成を示す図である。空間位相制御素子8上の座標系を、u軸−v軸と定義する。上述のようにAWG1のFSRは、分散補償の対象となる通信システムにおける1つの波長群内にあるWDM通信チャンネルの全帯域幅に等しく設定されている。このとき、1つの波長群の全帯域内にある光信号は、AWG1のある回折次数の干渉光に対応する。仮想的に無変調の光信号の波長を連続的に変化させたとすれば、AWG1の分波作用によって、回折次数mの光信号については、集光ビームの位置は線分Lm上の軌跡を描く。
この回折次数mの光信号は、例えばm番目の特定の波長群内にある光信号群に対応する。同様に、回折次数m+1の光信号については、隣接するLm+1上の軌跡を描く。この回折次数m+1の光信号は、m番目の波長群に隣接するm+1番目の波長群にある光信号群に対応する。したがって、1つの波長群の全帯域内にある光信号成分は、空間位相制御素子8上をスキャンされて描かれる1つの軌跡線Lm上に局在するピクセル列に対応する。換言すれば、1つの波長群の全帯域内にある各光信号は、1つの軌跡Lm上に局在するu軸方向に配列された複数のピクセル列によってそれぞれ独立に位相が付与され、分散補償が実現される。
上述のu軸方向に配列されたピクセル列毎に、異なる波長群に対して分散特性(群遅延特性)を設定できる。すなわち、実施例3のTODCブロックは、ピクセル列毎に独立して異なる位相分布を設定することによって、波長群毎に異なる分散特性(群遅延特性)を設定できる特徴を持つ。図6において、バルク型回折格子15の分光面(すなわちyz面)と空間位相制御素子8のピクセル形成面との交線の方向が、空間位相制御素子8上におけるバルク型回折格子15による分散方向となる。この交線で規定される分散軸をz’軸とする。図7の(A)および(B)においては、z’軸は、Lm、Lm+1等の各軌跡線の終了点を結ぶ方向または開始点を結ぶ方向となる。
図7の(A)を用いて、集光ビーム径と、u軸およびv軸面上に形成されるピクセル構造との関係についてさらに検討する。図7の(A)では、簡単のため各ピクセルの形状を正方形のものとして表示している。以下では、u軸およびv軸それぞれにおいて、集光スポットビーム半径とピクセルピッチとの相対関係に着目して、各ピクセルに対する位相の設定方法が説明されることに留意されたい。また、変調を受けていないある光周波数(波長)の光信号に対応する集光ビームの形状は、集光レンズおよびシリンドリカルレンズの特性に応じて、一般に楕円となる。ここで、v軸方向の楕円半径をwvとする。楕円半径は、集光スポットの光強度がピーク値の1/e2となる半径、すなわちピーク光強度の13.5%となる半径を言うものとする。
v軸方向については、軌跡Lmを描く集光スポットラスタは、バルク型回折格子15の角度分散に基づいて、アレイ導波路格子のFSRに対応する光周波数毎にdv移動する。したがって、集光スポットのv軸方向の楕円半径について、次式を満たすようにすることによって、隣接する波長群のビームの重なりを除去することができる。
wv≦dv/2 式(1)
v軸方向の楕円半径wvは集光スポットの光強度がピーク値の1/e2となる半径であるので、式(1)の条件を満たすことによって、光通信で一般に求められる−30dB以下のクロストーク性能を実現することができる。
図7の(A)の構成では、AWG1およびバルク回折格子15の線分散値によって決まる軌跡Lmの方向を、空間位相変調素子8のu軸方向と一致させている。さらに、v軸方向のピクセルピッチをpSLMvとして、pSLMvとdvとを一致させている。上述のピクセル構成によって、1つの波長群の全帯域内にある各光信号を、u軸方向に並んだピクセル列1列に対応させることができる。その結果、最少のピクセル数を持つLCOSを用いて、全波長群内の光信号へ分散付与することが可能となる。ピクセル数を減らすことによって、LCOSに掛かるコストを低く抑えることができる。
以下に、具体的な数値例とともに本実施例のTODCブロックの例を示す。アレイ導波路格子は比屈折率差が1.5%の石英系光導波路を用いて作製した。アレイ導波路の行路長差ΔLを202μm、アレイ導波路の出射端5におけるアレイ導波路ピッチを12μmとした。この構成によれば、アレイ導波路格子の自由スペクトルレンジはおよそ1000GHzになる。
バルク型回折格子15は、例えば、格子周期が940本/mmの体積位相ホログラフィック回折格子(VPHG: Volume phase holographic grating)を用いる。バルク型回折格子15はVPHGタイプに限られず、透過型ブレーズ回折格子、反射型のホログラフィック回折格子または反射型のブレーズ回折格子を用いても、VPHGと同様の機能を実現できる。入射角θiが46.76°のとき格子周期940本/mmのVPHGの角度分散値は、1.37mrad/nmである。シリンドリカルレンズ6の焦点距離は1mm、集光レンズ7の焦点距離は80mmとした。
LCOS型空間位相制御素子8は、u軸方向のピクセル数およびピッチが、それぞれ1280個および8μmであり、v軸方向のピクセル数およびピッチが、それぞれ4個および920μmである。したがって、LCOSのピクセルが形成された領域のサイズは、約10.2mm×3.7mmである。この構成は、あくまで一例であって、u軸方向のピクセルピッチは5μm〜10μmの範囲あってもよい。
上述の光学系の構成によれば、v軸方向のビーム半径wvは、約300μmとなり、式(1)の関係を満たしていることを確認した。LCOS上におけるv軸方向の線分散値は、前述のVPHGの角度分散値と集光レンズの7の焦点距離の積として、0.11mm/nmと求まる。よって、集光スポットの位置は、AWGのFSRである1000GHz(約8.4nm)当り、dv=920μm移動する。アレイ導波路格子のFSRに対応するスポット移動量dvと、v軸方向のピクセルピッチpSLMvとがいずれも920μmに一致していることを確認した。
LCOS素子のu軸方向の線分散値は、1.22mm/nmとなり、128個のピクセルが、100GHzの周波数レンジを持つ光信号の位相変調に寄与することになる。したがって、本実施例の構成のTODCブロックによって、1つの波長群において、100GHz間隔で配置された10のWDM通信チャンネルの各光信号に対して、独立して分散補償することが可能になる。さらに、v軸方向に配列したピクセル列毎に、複数の異なる波長群の光信号群に対しても独立して分散補償することができる。
図7の(A)に示したLCOSの構成例では、pSLMvとdvとをほぼ一致させて、u軸方向に並んだピクセル列1列を1つの波長群に対応させた場合を、例示的に説明した。別の構成例として、図7の(B)に示すように、dvをpSLMvより大きく設定して、v軸方向について複数のピクセルを1つの波長群に割り当てる構成例を説明する。この場合も、式(1)の関係を満たすことによって、隣接する波長群の間のクロストークを低く抑えることができる。図7の(A)のピクセル構成では、軌跡Lmの方向とu軸の方向とを一致させる必要があった。これに対し、図7の(B)のピクセル構成では、v軸方向について、軌跡Lmを中心としてdvの幅に含まれる複数のピクセルを、1つの波長群mの制御のために用いることによって、軌跡Lmとu軸とが平行である必要がなくなる。
図7の(B)のピクセル構成の利点は、光信号に任意の光結合損失を付加できるところにある。v軸方向における複数のピクセルによって、u軸方向に対する位相設定とは独立して、v軸方向に対して傾いた位相を設定することができる。再び図6を参照すれば、LCOSにおいて反射してバルク型回折格子15を通過した光信号は、アレイ導波路格子の出射端5において、y軸方向のAWG導波路固有モードに対して傾いた電界分布を持った状態で、AWG1へ入射する。したがって、TODCブロックの透過特性に波長依存性を持った損失を付加し、光信号強度の波長依存を補償することが可能となる。
図7の(B)の構成を実現するLCOSとして、一般的な正方格子上にピクセルが並んだLCOSを使用した。ピクセルピッチは、u軸方向およびv軸方向共に8μmである。LCOS以外の光学系の構成は、図7の(A)で説明したのと同様のものを用いた。dv=920μmであるので、軌跡Lmを中心にしてv軸方向に115個のピクセルを1つの波長群に割り当てた。任意の波長、すなわち、任意の波長群番号mおよび任意のu軸上の位置において、v軸方向に割り当てられた115のピクセルに与える位相値を、最大で、傾き角0.3度の位相変化に相当するだけv軸方向に線形的に変化させた。この線形的に傾斜させた位相により、その波長の光信号強度を0dB〜−40dBの範囲で制御する事が出来た。
図7の(A)または(B)に示したピクセルが2次元に配列されたLCOS素子で構成されたTODCブロックを利用することによって、図1に示した実施例1に係る可変分散補償器を、より簡単な構成に変形することができる。
以上のLCOSに関わる説明では、ピクセルピッチのみに着目して、ピクセルの幅およびピクセル間のスペースには触れなかったが、用法を問わず、ピクセル間スペースは、光の制御効率を高めるために狭くすることが好ましい。一般には、1μm以下が好ましい。
図8は、実施例3に係る分散補償器の全体構成を示したブロック図である。図8は、分散補償器としての機能に着目したブロックに分けて分散補償器を表現している。以下、図6に示したTODCブロックと、具体的な構成との対比関係を説明する。図6のTODCブロックにおけるLCOS素子8は、図7の(A)および(B)に示したように、2次元(2-Dimension)にピクセルが配列された構成を持つものとし、以下2D−LCOS素子と呼ぶ。
図8の可変分散補償器300においては、例えば、λ1からλ40までの40の波長を持つ光信号群が多重化された光信号が、分光器301の入力ポートInに入力されて分波され、さらに第1の群分波フィルタ302に入力される。多重化された光信号は、第1の群分波フィルタ302によってλ1からλ10、λ11からλ20、λ21からλ30ならびにλ31からλ40の4つの波長群(G1、G2、G3、G4)に群分波される。第1の波長群分波フィルタ302からの各波長群の光信号群は、2D−LCOS素子305上の、各列(第1列、第2列、第3列第4列)のピクセル群306a、306b、306c、306dによって分散補償される。分散補償後の4つの波長群(G1、G2、G3、G4)の光信号群は、第2の波長群分波フィルタ303および分光器304によって合波され、再びλ1からλ40までの中心波長を持つ40の通信チャンネルの光信号に多重化されて、出力ポートoutから出力される。
図8における2つの分光器301、304は、図6のTODCブロックにおけるAWG1に対応する。ここで、図6に示したTODCブロックは反射型の構成を持つために、1つのAWGによって分光器301および分光器304の機能を実現できることに留意されたい。図8における2つの群分波フィルタ302、303は、図6に示したTODCブロックにおけるバルク型回折格子15(第2の分光手段)に対応する。AWG1と同様に、1つのバルク型回折格子15によって、2つの群分波フィルタ302、303の機能を実現できる。
2D−LCOS素子305は、波長群G1に対応する第1列のピクセル群306a、波長群G2に対応する第2列のピクセル群306b、波長群G3に対応する第3列のピクセル群306c、波長群G4に対応する第4列のピクセル群306dによって、それぞれ分散補償される。ここで、2D−LCOS素子は、1つの素子面内にu軸方向に並んだ各列(第1列、第2列、第3列、第4列)のピクセル群が一体となって2次元にピクセルが配置されて構成されることに注目されたい。したがって、光信号が分光器301(AWG1)から空間に出射し、バルク型回折格子および2D−LCOS素子によって光信号処理をされて、再び分光器304(AWG1)に入射するまでの光信号処理は、1式のTODCブロックによって実現される。すなわち、図6に示された1つのTODCブロックによって、図1に示した4つのTODCブロックを必要とする可変分散補償器と同じ機能を実現できる。
尚、2D−LCOS素子305の各ピクセル列は、第1列から第4列まであるものとして説明したが、1つの波長群に対してv軸方向に複数のピクセルを使用して位相設定を行なうこともできることに留意されたい。この場合、1つの波長群に対して、u軸方向に配列されたピクセル列が複数列配置されることになる。
図1に示した実施例1に係る可変分散補償器によれば、4つのTODCブロックのほかに個別の波長群分波フィルタ101、102を必要とした。これに対して、実施例3の可変分散補償器300は、図6に示したTODCブロックを1つだけで構成できるので、可変分散補償器の構成を大幅に簡略化することができる。
実施例4: 実施例1の可変分散補償器と同様に、図5に示した実施例2の可変分散補償器も、図6に示した2D−LCOS素子を利用することによって、より簡単な構成に変形することができる。すなわち、図6に示した2次元にピクセルが構成されたLCOS素子を利用したTODCブロックにおいて、図3と同様にAWGに接続された2つの入出力導波路16、17を備えることによって、多数のWDM通信チャンネルを含む連続した通信帯域(波長群)に対して光透過特性が平坦な可変分散補償を実現できる。
図9は、実施例4の可変分散補償器で使用されるTODCブロックの構成図である。図9に示した構成は、実施例2の可変分散補償器に使用されるTODCブロック(図3)に第2の分波手段(バルク型回折格子)15を追加している点で、図3に示したTODCブロックの構成と相違している。さらに、スラブ導波路3の境界面上で0.5FSR相当離れた位置に接続された2つの入出力導波路16、17を持つ点では、図3のTODCブロックの構成と共通するが、接続されるインターリーブ型群分波フィルタ19を持つ点で相違している。以下、これらの相違点に着目して説明する。尚、図9は、簡単のため第2の分波手段15による光路の折り曲がりは省略し、簡略化して記載している。
図9に示したTODCブロックは反射型構成をしている。λ1からλ40までの40の波長を持つ光信号群が多重化された光信号が、光サーキュレータ11を経由して、TODCブロックに入力される。TODCブロックにおいて分散補償された後で、再び光サーキュレータ11から出力される。光サーキュレータ11への多重化された入力光信号は、インターリーブ型群分波フィルタ19に入力される。インターリーブ型群分波フィルタ19は、複数の波長群を含む多重化された光信号群を、奇数番目の波長群と偶数番目の波長群とに群分波をする。すなわち、インターリーブ型群分波フィルタ19のポートA側の出力には、λ1からλ10、λ21からλ30の2つの波長群(G1、G3)が群分波される。インターリーブ型群分波フィルタ19のポートB側の出力には、λ11からλ20、λ31からλ40の2つの波長群(G2、G4)が群分波される。AポートおよびBポートからの光信号群は、それぞれスラブ導波路3の境界面上で0.5FSR相当離れた位置に接続された2つの入出力導波路16、17に入力される。実施例2のTODCと同様に、AWG1のFSR値を、インターリーブ型群分波フィルタ19の波長群分離間隔の2倍に設定している。
図9のTODCブロックにおけるLCOS素子8は、第3の実施例と同様に、図7に示した2次元(2-Dimension)にピクセルが配列された2D−LCOS素子である。
図10は、実施例4に係る分散補償器の全体構成を示すブロック図である。図10は、分散補償器としての機能に着目したブロックに分けて分散補償器を表現している。以下、図9に示したTODCブロックの具体的な構成と対比して説明する。
図10の可変分散補償器400においては、例えば、λ1からλ40までの40の波長を持つ光信号群が多重化された光信号が、インターリーブ型群分波フィルタ401によって、奇数番目の波長群と偶数番目の波長群とにインターリーブ群分波される。インターリーブ群分波された、Aの波長群(G1、G3)およびBの波長群(G2、G4)は、それぞれ分光器402のAポートおよびBポートに入力される。ここで分光器402は、図9におけるAWG1に対応する。さらに、実施例3と同様に、第1の波長群分波フィルタ403が図9の第2の分波手段15に対応する。第1の波長群分波フィルタ403からの各波長群の光信号群は、2D−LCOS素子407上の、各列(第1列、第2列、第3列、第4列)のピクセル群408a、408b、408c、408dによって分散補償される。分散補償後の4つの波長群(G1、G2、G3、G4)の光信号群は、第2の波長群分波フィルタ404および分光器405によって合波される。さらに、インターリーブ型群分波フィルタ406によって、奇数番目の波長群および偶数番目の波長群はインターリーブ群合波され、再びλ1からλ40までの中心波長を持つ40の通信チャンネルの光信号に多重化されて、出力ポートOutから出力される。
実施例3と同様に、図9の反射型の構成のTODCブロックによって、分光器402、405および群分波フィルタ403、404は、それぞれ1つのAWG1および1つの第2の分波手段15によって実現できるのは言うまでもない。
2D−LCOS素子407は、波長群G1に対応する第1列のピクセル群408a、波長群G2に対応する第2列のピクセル群408b、波長群G3に対応する第3列のピクセル群408c、波長群G4に対応する第4列のピクセル群408dによって、それぞれ分散補償される。ここで、2D−LCOS素子407は、1つの素子面内に各列のピクセル群が一体となって2次元にピクセルが配置構成されることに注目されたい。したがって、光信号が分光器402(AWG1)から空間に出射し、バルク型回折格子15および2D−LCOS素子によって光信号処理をされて、再び分光器405(AWG1)に入射するまでの光信号処理は、1式のTODCブロックによって実現される。すなわち、図9によって示された1つのTODCブロックは、図5に示した可変分散補償器と同じ機能を実現できることに注意されたい。
図5に示した実施例2に係る可変分散補償器では、4つのTODCブロックのほかに個別の波長群分波フィルタ201、202を必要とした。これに対して、実施例4の可変分散補償器400は、図9に示したTODCブロックを1つだけで構成できるので、可変分散補償器の構成を大幅に簡単にすることができる。
実施例2と同様に、多重化されたWDM光信号を複数の波長群に分離し、ただ1つのTODCブロックを備えることで、分光軸方向にサイズが短いLCOS素子を使用することができる。大型のLCOS素子を必要とせずに、量産性およびコストに優れた、多チャンネル可変分散補償器を実現することができる。TODCブロックのAWGのFSR値を、インターリーブ型群分波フィルタの波長群分離間隔の2倍に設定することによって、光透過帯域が平坦な可変分散補償器を実現できる。可変分散補償器の低コスト化ならびに保守の簡易化および低コスト化を実現できる。
実施例3および実施例4で詳細に説明したように、2D−LCOS素子を使用してピクセルを2次元に構成することで、AWGの分光軸に対応する方向のサイズを短く抑えたLCOS素子を利用するのと同じ効果が得られることに注目されたい。実施例1または実施例2の構成の可変分散補償器よりもさらにTODCブロックの数を減らして、多チャンネルの可変分散補償器を構成することができる。さらに、TODCブロックにおいて使用されるAWGのFSRを、そのTODCブロックによってカバーするWDM通信チャンネル群の全帯域幅と等しく成るように設定する。さらに、FSRを、そのTODCブロックによってカバーするWDM通信チャンネル群の全帯域幅と所定の関係に成るように設定することにより、光透過特性の平坦化を実現することもできる。