上述した部材は、鉄筋コンクリート壁の両側面に設けられた一対の誘発目地と同一鉛直面内に埋設されるものであって、誘発目地に集中発生した収縮ひび割れをさらに埋設箇所に誘導することができるものであり、その意味で、誘導埋込み材と呼ぶことができる。
ここで、フレッシュコンクリートの流動性や水平方向の打設間隔にもよるが、一定長さにわたって同じ高さを維持しながらコンクリートを打ち上げていくことは本来的に難しく、打設途中で高さにばらつきが生じるのはやむを得ない。
そのため、誘導埋込み材に作用するフレッシュコンクリートの側圧が左右でバランスせずにいずれかの方向に偏り、その結果、誘導埋込み材が移動したり変形したりといった事態を招き、ひいては誘発目地に対する位置決め精度を確保できないという問題を生じていた。
加えて、かかる問題を回避しようとすると、誘導埋込み材を鉄筋にしっかりと固定する作業が必要不可欠になるところ、かかる作業はきわめて煩雑であるのみならず、配筋作業や型枠の建込み作業と交錯して鉄筋コンクリート工事の効率が低下するという問題も生じていた。
また、誘導埋込み材を例えば結束線で鉄筋に固定したとしても、コンクリート打設時の振動や打撃によって結束線が緩んでしまうという問題や、誘導埋込み材を鉄筋に固定するという方法自体、鉄筋の配筋誤差を含むものであるため、本来的に高い位置決め精度を期待することができないという問題を生じていた。
また、誘導埋込み材が鉄筋コンクリート壁の耐力や耐震性にいかなる影響を及ぼすのかについては必ずしも明確にされておらず、非特許文献1においても、「事前に裏付け実験で構造性能を確認することが必須である」(219頁)と記載されているにとどまっている。
したがって、耐力壁や耐震壁といった構造壁に誘導埋込み材をただちに用いることができず、結局のところ、壁厚が大きい場合や耐力あるいは耐震性が要求される鉄筋コンクリート壁については、収縮ひび割れを有効に防止する手だてがないという問題を生じていた。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、大きな壁厚を有する鉄筋コンクリート壁や耐力あるいは耐震性が要求される鉄筋コンクリート壁であっても、収縮ひび割れの発生位置を有効に集中させることが可能な誘導埋込み材を提供することを目的とする。
また、本発明は、誘発目地に対する誘導埋込み材の相対的な位置決め精度を向上させることが可能なひび割れ誘導構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る誘導埋込み材は請求項1に記載したように、コンクリート壁の側面に設けられる誘発目地の近傍であって該誘発目地の設置ラインを含む壁断面に沿って埋設される誘導埋込み材において、
長尺板状の埋込み材本体と、該埋込み材本体の短手方向に沿って折曲げ状又は湾曲状断面となるようにかつ長手方向には同一断面形状を有するように前記埋込み材本体の両側に延設された一対の補剛部と、前記埋込み材本体の形成面と平行になるように前記各補剛部の外側にそれぞれ延設された一対の板状誘導部とからなるものである。
また、本発明に係る誘導埋込み材は、前記埋込み材本体の正面側では凹部となり背面側では凸部となるように複数のせん断抵抗部を該埋込み材本体の長手方向に沿って列状に複数形成するとともに、埋設状態において前記凹部内のコンクリートとその背面側の凸部周囲のコンクリートとの間で前記埋込み材本体の長手方向及び短手方向に沿った二方向せん断キーが形成されるように前記せん断抵抗部を構成したものである。
また、本発明に係る誘導埋込み材は、コンクリート壁の側面に設けられる誘発目地の近傍であって該誘発目地の設置ラインを含む壁断面に沿って埋設される誘導埋込み材において、
長尺板状に形成された埋込み材本体と、前記埋込み材本体の形成面と平行になるように前記埋込み材本体の外側にそれぞれ延設された一対の板状誘導部とからなり、前記埋込み材本体の正面側では凹部となり背面側では凸部となるように複数のせん断抵抗部を該埋込み材本体の長手方向に沿って列状に複数形成するとともに、埋設状態において前記凹部内のコンクリートとその背面側の凸部周囲のコンクリートとの間で前記埋込み材本体の長手方向及び短手方向に沿った二方向せん断キーが形成されるように前記せん断抵抗部を構成したものである。
また、本発明に係る誘導埋込み材は、前記せん断抵抗部を矩形平底状に構成し、その短手方向を前記埋込み材本体の短手方向及び長手方向のうちの一方に揃えるとともに、その長手方向を前記埋込み材本体の他方の方向に揃えたものである。
また、本発明に係る誘導埋込み材は、前記複数のせん断抵抗部を配置間隔と形状が同一になるように形成するとともに、段重ねしたときに前記凸部が前記凹部に嵌り込むように構成したものである。
また、本発明に係るひび割れ誘導構造は、請求項1乃至請求項5のいずれか一記載の誘導埋込み材と、型枠同士の間隔を保持するセパレータに一端が取り付けられる取付け用ロッドと、該取付け用ロッドの他端又は中間位置を前記誘導埋込み材に連結自在な連結手段とを備え、前記誘導埋込み材に対する前記取付け用ロッドの連結位置が該取付け用ロッドの材軸方向に沿って調整自在となるように前記連結手段を構成し、前記誘導埋込み材の埋込み材本体に前記連結手段又は前記取付け用ロッドが挿通される挿通孔を形成したものである。
また、本発明に係るひび割れ誘導構造は、請求項1乃至請求項5のいずれか一記載の誘導埋込み材と、型枠同士の間隔を保持するセパレータのうち、前記誘導埋込み材の左右に位置するセパレータに一方の端部がそれぞれ取り付けられる第1の取付け用ロッド及び第2の取付け用ロッドと、前記第1の取付け用ロッド及び前記第2の取付け用ロッドをそれらの他端で相互に連結するとともに該連結箇所で前記誘導埋込み材を連結するための連結手段とからなり、前記誘導埋込み材に対する前記第1の取付け用ロッド又は前記第2の取付け用ロッドの連結位置が該第1の取付け用ロッド又は該第2の取付け用ロッドの材軸方向に沿って調整自在となるように前記連結手段を構成し、前記誘導埋込み材の埋込み材本体に前記第1の取付け用ロッド、前記第2の取付け用ロッド又は前記連結手段が挿通される挿通孔を形成したものである。
また、本発明に係るひび割れ誘導構造は、前記連結手段を、前記第1の取付け用ロッドの他端がねじ込まれる第1の雌ネジが一端に形成され前記第2の取付け用ロッドの他端がねじ込まれる第2の雌ネジが他端に形成され前記誘導埋込み材に当接される狭着部が前記第2の雌ネジの端面に形成されてなる連結用雌ネジ部材と、前記第2の取付け用ロッドの他端に螺合され前記狭着部との間に前記誘導埋込み材を狭着する位置決め用ナットとで構成したものである。
また、本発明に係るひび割れ誘導構造は、対向する一対の平板部を有し該一対の平板部の間に前記セパレータが通されるように形成され前記各平板部のそれぞれに挿通孔が形成された断面コの字状の取付け部材を備えるとともに、前記取付け用ロッド、前記第1の取付け用ロッド又は前記第2の取付け用ロッドを前記挿通孔に挿通自在に構成したものである。
また、本発明に係るひび割れ誘導構造は、前記誘導埋込み材を並列に埋設した状態において該誘導埋込み材を相互に繋ぐ繋ぎ手段を備え、該繋ぎ手段を、両端を同一方向に直角に折り曲げてなる2つの折曲げ部を有するロッド状繋ぎ部材で構成するとともに、該折曲げ部が嵌め込まれる嵌入孔を前記誘導埋込み材にそれぞれ形成したものである。
第1の発明に係る誘導埋込み材は、長尺板状をなす埋込み材本体の短手方向に沿って、折曲げ状又は湾曲状断面となるように、かつ長手方向には同一断面形状を有するように、埋込み材本体の両側に一対の補剛部を延設してある。
このようにすると、補剛部は、短手方向を中心軸線とした面外方向の曲げモーメントや強制回転変形に対し、所定の曲げ剛性で抵抗し、誘導埋込み材全体の撓みや曲げ変形を抑制する。
そのため、コンクリート壁の断面内に配置された誘導埋込み材に左右から異なる大きさのコンクリート側圧が作用したとしても、誘導埋込み材は、短手方向を中心軸線とした撓みや回転変形を生じることなく当初の設置位置を保持し、誘発目地に対する板状誘導部の位置がずれてしまうおそれがなくなる。
したがって、誘発目地で発生した収縮ひび割れを誘導埋込み材に確実に導くことが可能となり、その結果、収縮ひび割れは、誘発目地の設置ラインと誘導埋込み材の埋設位置とを含む断面に確実に集中させることが可能となる。
補剛部の断面形状は任意であり、所望の曲げ剛性を確保できるように適宜選定すればよい。例えば、半円状、台形状、半円を反転させて連続させた形状、台形を反転させて連続させた形状などから任意に選択することができる。
第2の発明に係る誘導埋込み材は、上述の構成に加えて、埋込み材本体の正面側では凹部となり背面側では凸部となるように複数のせん断抵抗部を埋込み材本体の長手方向に沿って列状に複数形成してあるとともに、該せん断抵抗部を、埋設状態において凹部内のコンクリートとその背面側の凸部周囲のコンクリートとの間で埋込み材本体の長手方向及び短手方向に沿った二方向せん断キーが形成されるように構成してある。
そのため、せん断抵抗部の凹部に入り込んだコンクリートが突状となり、その背面側の凸部に拡がるコンクリートが凹状となって双方のコンクリートが噛合する状態となり、せん断抵抗部の形状を適宜選定することによって、埋込み材本体の長手方向及び短手方向に沿った二方向せん断キーを形成することが可能となる。
かかる構成によれば、コンクリート壁が面内せん断力を受けたとき、埋込み材本体の長手方向に沿ったせん断キー(面内せん断変形に抵抗するコンクリート同士の噛合)によって面内せん断力の相互伝達が行われるとともに、コンクリート壁が面外せん断力を受けたとき、埋込み材本体の短手方向に沿ったせん断キー(面外せん断変形に抵抗するコンクリート同士の噛合)によって面外せん断力の相互伝達が行われることとなり、かくして耐力や耐震性といったコンクリート壁の構造特性を何ら損なうことなく、収縮ひび割れの計画的な集中化を高めることができる。
第3の発明に係る誘導埋込み材も同様、埋込み材本体の正面側では凹部となり背面側では凸部となるように複数のせん断抵抗部を埋込み材本体の長手方向に沿って列状に複数形成してあるとともに、該せん断抵抗部を、埋設状態において凹部内のコンクリートとその背面側の凸部周囲のコンクリートとの間で埋込み材本体の長手方向及び短手方向に沿った二方向せん断キーが形成されるように構成してある。
そのため、せん断抵抗部の凹部に入り込んだコンクリートが突状となり、その背面側の凸部に拡がるコンクリートが凹状となって双方のコンクリートが噛合する状態となり、せん断抵抗部の形状を適宜選定することによって、埋込み材本体の長手方向及び短手方向に沿った二方向せん断キーを形成することが可能となる。
かかる構成によれば、コンクリート壁が面内せん断力を受けたとき、埋込み材本体の長手方向に沿ったせん断キー(面内せん断変形に抵抗するコンクリート同士の噛合)によって面内せん断力の相互伝達が行われるとともに、コンクリート壁が面外せん断力を受けたとき、埋込み材本体の短手方向に沿ったせん断キー(面外せん断変形に抵抗するコンクリート同士の噛合)によって面外せん断力の相互伝達が行われることとなり、かくして耐力や耐震性といったコンクリート壁の構造特性を何ら損なうことなく、収縮ひび割れの計画的な集中化を高めることができる。
第2及び第3の発明におけるせん断抵抗部は、埋込み材本体の正面側では凹部となり背面側では凸部となるように、かつ埋設状態において凹部内のコンクリートとその背面側の凸部周囲のコンクリートとの間で埋込み材本体の長手方向及び短手方向に沿った二方向せん断キーが形成されるように構成してある限り、その形状や構造は任意であり、例えばプレス加工で形成する場合、正方形、長方形、菱形といった多角形又は円形の雄金型を使用することで、せん断抵抗部の平面形をそれぞれに対応した形状とすることが可能である。
具体的には、せん断抵抗部を矩形平底状に構成し、その短手方向を埋込み材本体の短手方向及び長手方向のうちの一方に揃えるとともに、その長手方向を埋込み材本体の他方の方向に揃えて構成することが可能である。
せん断抵抗部は上述したように、埋込み材本体にその長手方向に沿って列状に複数配置されるが、これらの配置間隔と形状が同一になるように形成するとともに、段重ねしたときに凸部が凹部に嵌り込むように構成したならば、本発明に係る誘導埋込み材は、端部同士を重ねて上方に延長していくことが可能となり、さまざまな高さのコンクリート壁に適用しやすくなる。
加えて、段重ねした箇所では、誘導埋込み材同士の並進方向のずれや法線方向廻りのずれが防止されることとなり、高い精度で効率のよい建込みが可能になるとともに、コンクリート打設後の埋設位置の精度確保にも寄与する。
上述した第1乃至第3の各発明に係る誘導埋込み材と併用される誘発目地は、公知のものから適宜選択することが可能であり、台形、Vカット、ノッチなどその溝形状は任意である。また、コンクリート壁としては、主として鉄筋コンクリート壁が含まれるが、有害な収縮ひび割れを防止する必要があるコンクリート壁にはすべて適用することが可能であり、プレストレストコンクリート構造の壁や繊維補強コンクリート構造の壁も当然、本発明に含まれる。
誘発目地は、コンクリート壁の両側面であって互いに対向する位置に設けられる場合と、コンクリート壁の一方の側面にのみ設けられる場合とに大別されるが、上述した誘発目地の設置ラインを含む壁断面とは、原則として誘発目地が設けられたコンクリート壁の側面と直交する壁断面を指すものとし、コンクリートの両側面に誘発目地が設けられる場合においては、上述した直交壁断面又は各誘発目地を結ぶ壁断面を意味するものとする。
第1乃至第3の発明に係る誘導埋込み材は、施工時においては、公知の方法でコンクリート断面内に固定することが可能であり、例えば結束線を用いて鉄筋に固定することができる。
しかしながら、コンクリート打設時の振動や打撃によって結束線が緩み、本発明に係る誘導埋込み材の取付け位置がずれてしまうと、上述した作用効果を得ることが困難になる。加えて、結束線等を用いて鉄筋に固定するという取付け方法自体、鉄筋の配筋誤差を含むものであるため、本来的に高い精度を期待できるものではない。
そこで、本出願人は、誘発目地に対する誘導埋込み材の相対的な位置決め精度をいかに高めればよいかに着眼して研究開発を行った結果、以下のようなあらたな知見を得るに至ったものである。
すなわち、第4の発明に係るひび割れ誘導構造は、請求項1乃至請求項5のいずれか一記載の誘導埋込み材と、型枠同士の間隔を保持するセパレータに一端が取り付けられる取付け用ロッドと、該取付け用ロッドの他端又は中間位置を前記誘導埋込み材に連結自在な連結手段とを備え、前記誘導埋込み材に対する前記取付け用ロッドの連結位置が該取付け用ロッドの材軸方向に沿って調整自在となるように前記連結手段を構成し、前記誘導埋込み材の埋込み材本体に前記連結手段又は前記取付け用ロッドが挿通される挿通孔を形成してなる。
また、第5の発明に係るひび割れ誘導構造は、請求項1乃至請求項5のいずれか一記載の誘導埋込み材と、型枠同士の間隔を保持するセパレータのうち、誘導埋込み材の左右に位置するセパレータに一方の端部がそれぞれ取り付けられる第1の取付け用ロッド及び第2の取付け用ロッドと、第1の取付け用ロッド及び第2の取付け用ロッドをそれらの他端で相互に連結するとともに該連結箇所で誘導埋込み材を連結するための連結手段とからなり、誘導埋込み材に対する第1の取付け用ロッド又は第2の取付け用ロッドの連結位置が該第1の取付け用ロッド又は該第2の取付け用ロッドの材軸方向に沿って調整自在となるように連結手段を構成し、誘導埋込み材の埋込み材本体に第1の取付け用ロッド、第2の取付け用ロッド又は連結手段が挿通される挿通孔を形成してなる。
第4及び第5の発明において、第1乃至第3の発明に係る誘導埋込み材は、取付け用ロッドを介してセパレータに取り付けられるため、誘発目地と同様、型枠を基準として位置決めが行われることとなり、かくして誘発目地に対する誘導埋込み材の相対的な取付け精度が大幅に向上する。
そして、その結果、誘発目地である直線溝と誘導埋込み材の板状誘導部とを正確に対向させることが可能となり、かくして、直線溝の背面側と誘導埋込み材の板状誘導部との間にひび割れ誘導面を正確に形成するとともに、該ひび割れ誘導面に収縮ひび割れを集中させることが可能となる。
特に、誘発目地をノッチ状の溝が形成されるタイプとした場合、ノッチ状誘発目地の作用効果とも相俟って、収縮ひび割れの集中効果をさらに高めることができる。
第4の発明に係る連結手段は、取付け用ロッドを誘導埋込み材に連結できるものであるが、その連結箇所が他端であるか中間位置であるかは任意であり、他端に連結する場合には、誘導埋込み材は、その一方の側に位置にするセパレータでのみ固定されることとなる。一方、中間位置に連結する場合であって取付け用ロッドの他端を誘導埋込み材の反対側に位置する別のセパレータに取り付ける場合においては、誘導埋込み材は、その両側に位置するセパレータで固定されることとなる。
この連結手段は、例えば2つのナットで構成することが可能であり、取付けの際には、1つめのナット、第1乃至第3の発明に係る誘導埋込み材及び2つめのナットを順次取付け用ロッドに螺合あるいは挿通し、次いで、誘導埋込み材を誘発目地に位置合わせした状態で該誘導埋込み材を2つのナットで狭着すればよい。
第5の発明に係る連結手段は、例えば第1の取付け用ロッドの他端がねじ込まれる第1の雌ネジが一端に形成され第2の取付け用ロッドの他端がねじ込まれる第2の雌ネジが他端に形成され誘導埋込み材に当接される狭着部が第2の雌ネジの端面に形成されてなる連結用雌ネジ部材と、第2の取付け用ロッドの他端に螺合され上述した狭着部との間に第1乃至第3の発明に係る誘導埋込み材を狭着する位置決め用ナットとで構成することができる。
取付け用ロッドの一端をセパレータに取り付けるにあたっては、公知の手段から任意に採用することができるが、これに代えて、対向する一対の平板部を有し該一対の平板部の間に前記セパレータが通されるように形成され前記各平板部のそれぞれに挿通孔が形成された断面コの字状の取付け部材を備えるとともに、前記取付け用ロッド、前記第1の取付け用ロッド又は前記第2の取付け用ロッドを前記挿通孔に挿通自在に構成することができる。
かかる構成によれば、セパレータへの取付け用ロッドナットの取付け、ひいては誘導埋込み材の位置決めを確実かつ容易に行うことが可能となるとともに、コンクリート打設中に取付け用ロッドがセパレータから外れてしまう事態を未然に防止することが可能となる。
誘導埋込み材は、壁断面が大きい場合には、コンクリート壁の側面に設けられる誘発目地の近傍であって該誘発目地の設置ラインを含む壁断面に沿って並列に埋設するようにしてもよい。
この場合、誘導埋込み材を並列に埋設した状態において該誘導埋込み材を相互に繋ぐ繋ぎ手段を備え、該繋ぎ手段を、両端を同一方向に直角に折り曲げてなる2つの折曲げ部を有するロッド状繋ぎ部材で構成するとともに、該折曲げ部が嵌め込まれる嵌入孔を誘導埋込み材にそれぞれ形成したならば、2つの誘導埋込み材が一体化することによって、固定度や剛性が高くなり、コンクリート側圧に対する強度を、ひいては誘導埋込み材の位置決め精度をさらに高めることが可能となる。
なお、誘導埋込み材に形成された嵌入孔に嵌め込まれた折曲げ部をどのように固定するかは任意であり、嵌込み(差込み)のみの場合のほか、折曲げ部の先端に切られた雄ネジを利用したナットによる固定でもよい。
ここで、誘導埋込み材に所定のピッチで孔を穿孔しておき、これらのうち、セパレータの高さに位置する孔を、取付け用ロッドを挿通するための挿通孔とし、他の孔を、ロッド状繋ぎ部材を取り付けるための嵌入孔として兼用することができる。
以下、本発明に係る誘導埋込み材及びそれを用いたひび割れ誘導構造の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る誘導埋込み材を示した斜視図、図2は、同じく正面図及び断面図である。これらの図でわかるように、本実施形態に係る誘導埋込み材1は、長尺板状の埋込み材本体2と、該埋込み材本体の両側に延設された一対の補剛部3,3と、該各補剛部の外側にそれぞれ延設された一対の板状誘導部4,4とからなる。
補剛部3は、埋込み材本体2の短手方向に沿って折曲げ状断面となるように、かつ長手方向には同一断面形状を有するように形成してあり、板状誘導部4,4は、埋込み材本体2の形成面と平行になるように形成してある。
誘導埋込み材1は、例えば幅75mm、長さ2,000mm、厚さ1.2mmの亜鉛めっき鋼板をプレス加工して形成することができる。
図3は、誘導埋込み材1の使用状況を示した水平断面図である。同図でわかるように、誘導埋込み材1を用いるにあたっては、型枠31,31に挟まれたコンクリート打設空間30に誘導埋込み材1を建て込んで位置決めし、次いで、公知の固定方法、例えば結束線を用いた固定方法によって誘導埋込み材1を固定した後、コンクリート打設空間30にコンクリートを打設するが、誘導埋込み材1を位置決めするにあたっては、板状誘導部4,4が鉄筋コンクリート壁35の両側面に設けられた一対の誘発目地33,33の背面側とそれぞれ対向するように誘導埋込み材1を位置決めすることで、該誘導埋込み材を誘発目地33,33の間であって該各誘発目地の設置ラインを含む壁断面34に設置する。
以上説明したように、本実施形態に係る誘導埋込み材1によれば、長尺板状をなす埋込み材本体2の短手方向に沿って折曲げ状断面となるように、かつ長手方向には同一断面形状を有するように、埋込み材本体2の両側に一対の補剛部3,3を延設したので、補剛部3,3は、短手方向を中心軸線とした面外方向の曲げモーメントや強制回転変形に対し、所定の曲げ剛性で抵抗し、誘導埋込み材1全体の撓みや曲げ変形を抑制する。
そのため、フレッシュコンクリートをコンクリート打設空間30に打設する際、誘導埋込み材1に左右から異なる大きさのコンクリート側圧が作用したとしても、誘導埋込み材1は、短手方向を中心軸線とした撓みや回転変形を生じることなく当初の設置位置を保持し、誘発目地33,33に対する板状誘導部4,4の位置がずれてしまうおそれがなくなる。
したがって、誘発目地33,33で発生した収縮ひび割れを誘導埋込み材1に確実に導くことが可能となり、その結果、収縮ひび割れは、誘発目地33,33の設置ラインと誘導埋込み材1の埋設位置とを含む壁断面34に確実に集中させることができる。
本実施形態では、鉄筋コンクリート壁35の両側面に一対の誘発目地33,33を設ける場合について説明したが、これに代えて、鉄筋コンクリート壁35の一方の側面にのみ、誘発目地33を設置する場合に適用してもよい。
かかる構成においては、板状誘導部4,4のうち、一方の板状誘導部4が鉄筋コンクリート壁35の一方の側面に設けられた誘発目地33の背面側と対向するように壁断面34に設置すればよい。なお、壁断面34は、鉄筋コンクリート壁35の側面に直交する壁断面でもある。
かかる構成によれば、壁断面34への収縮ひび割れの集中の程度は、一対の誘発目地33,33を設ける場合ほど顕著に優れてはいないが、その点を除き、上述した実施形態とほぼ同様の作用効果を奏する。
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る誘導埋込み材を示した斜視図、図5は、同じく正面図及び断面図である。これらの図でわかるように、本実施形態に係る誘導埋込み材41は、長尺板状の埋込み材本体42と、該埋込み材本体の両側に延設された一対の補剛部43,43と、該各補剛部の外側にそれぞれ延設された一対の板状誘導部44,44とからなる。
補剛部43は、埋込み材本体42の短手方向に沿って折曲げ状断面となるように、かつ長手方向には同一断面形状を有するように形成してあり、板状誘導部44,44は、埋込み材本体42の形成面と平行になるように形成してある。
埋込み材本体42には、該埋込み材本体の正面側では凹部46となり背面側では凸部47となるように、埋込み材本体42の長手方向に沿って複数のせん断抵抗部45を列状に複数形成してある。
せん断抵抗部45は、誘導埋込み材41がコンクリートに埋設された状態において、凹部46内のコンクリートとその背面側の凸部47周囲のコンクリートとの間で、埋込み材本体42の長手方向及び短手方向に沿った二方向せん断キーが形成されるように矩形平底状に構成してあり、その短手方向(本実施形態では正方形状なので短手方向を図5(a)の水平方向とする)を埋込み材本体の短手方向に揃えるとともに、その長手方向を埋込み材本体42の長手方向に揃えてある。
誘導埋込み材41は、例えば幅75mm、長さ2,000mm、厚さ1.2mmの亜鉛めっき鋼板をプレス加工して形成することができる。
図6は、誘導埋込み材41の使用状況を示した水平断面図である。同図でわかるように、誘導埋込み材41を用いるにあたっては、型枠31,31に挟まれたコンクリート打設空間30に誘導埋込み材41を建て込んで位置決めし、次いで、公知の固定方法、例えば結束線を用いた固定方法によって誘導埋込み材41を固定した後、コンクリート打設空間30にコンクリートを打設するが、誘導埋込み材41を位置決めするにあたっては、板状誘導部44,44が鉄筋コンクリート壁35の両側面に設けられる一対の各誘発目地33,33の背面側とそれぞれ対向するように誘導埋込み材41を位置決めすることで、該誘導埋込み材を誘発目地33,33の間であって該各誘発目地の設置ラインを含む壁断面34に設置する。
以上説明したように、本実施形態に係る誘導埋込み材41によれば、長尺板状をなす埋込み材本体42の短手方向に沿って折曲げ状断面となるように、かつ長手方向には同一断面形状を有するように、埋込み材本体42の両側に一対の補剛部43,43を延設したので、補剛部43,43は、短手方向を中心軸線とした面外方向の曲げモーメントや強制回転変形に対し、所定の曲げ剛性で抵抗し、誘導埋込み材1全体の撓みや曲げ変形を抑制する。
そのため、フレッシュコンクリートをコンクリート打設空間30に打設する際、誘導埋込み材41に左右から異なる大きさのコンクリート側圧が作用したとしても、誘導埋込み材41は、短手方向を中心軸線とした撓みや回転変形を生じることなく当初の設置位置を保持し、誘発目地33,33に対する板状誘導部44,44の位置がずれてしまうおそれがなくなる。
したがって、誘発目地33,33で発生した収縮ひび割れを誘導埋込み材41に確実に導くことが可能となり、その結果、収縮ひび割れは、誘発目地33,33の設置ラインと誘導埋込み材41の埋設位置とを含む壁断面34に確実に集中させることができる。
また、本実施形態に係る誘導埋込み材41によれば、埋込み材本体42の正面側では凹部46となり背面側では凸部47となるように複数のせん断抵抗部45を埋込み材本体42の長手方向に沿って列状に複数形成するとともに、該せん断抵抗部を、埋設状態において凹部46内のコンクリートとその背面側の凸部47周囲のコンクリートとの間で埋込み材本体42の長手方向及び短手方向に沿った二方向せん断キーが形成されるように構成してある。
そのため、せん断抵抗部45の凹部46に入り込んだコンクリートが突状となり、その背面側の凸部47の周囲に拡がるコンクリートが凹状となって双方のコンクリートが誘導埋込み材41を介して噛合する状態となり、埋込み材本体の長手方向及び短手方向に沿った二方向せん断キーを形成することが可能となる。
すなわち、鉄筋コンクリート壁35が面内せん断力を受けたとき、図7(a)の鉛直断面図に示すように、埋込み材本体42の長手方向に沿ったせん断キー(面内せん断変形に抵抗するコンクリート同士の噛合)によって面内せん断力の相互伝達が行われる。
また、鉄筋コンクリート壁35が面外せん断力を受けたとき、図7(b)の水平断面図に示すように、埋込み材本体42の短手方向に沿ったせん断キー(面外せん断変形に抵抗するコンクリート同士の噛合)によって面外せん断力の相互伝達が行われる。
したがって、耐力や耐震性といった鉄筋コンクリート壁の構造特性を何ら損なうことなく、収縮ひび割れの計画的な集中化を高めることが可能となる。
なお、面内せん断に対しては、第1実施形態のようにせん断抵抗部45を設けなくても、埋込み材本体42とコンクリートとの付着によってある程度のせん断抵抗は期待できるが、それだけでは耐震性が十分でない場合があり、かかる場合においては、せん断抵抗部45によるせん断キーの形成によって、耐震性を大幅に向上させることができる。また、面外せん断に対しては、図7(b)でよくわかるように、補剛部43もせん断キーの形成に寄与している。
本実施形態では特に言及しなかったが、図8に示すように、せん断抵抗部45の配置間隔と形状が同一になるように形成するとともに、段重ねしたときに凸部47が凹部46に嵌り込むように構成したならば、誘導埋込み材41を、端部同士を重ねて上方に延長していくことが可能となり、さまざまな高さの鉄筋コンクリート壁に適用することが可能となる。
また、本実施形態では、埋込み材本体42に対して補剛部43が突出する側を背面、突出していない側を正面と便宜的にとらえて説明したが、どちらの側を正面あるいは背面と考えるかは任意であり、上述した実施形態に代えて、補剛部43が突出する側を正面、突出していない側を背面と考えてもかまわない。この場合、せん断抵抗部の凹凸は、せん断抵抗部45の凹凸と逆になるが、せん断抵抗部が埋込み材本体の正面側で凹部となり、背面側では凸部となることに変わりはない。
また、本実施形態では、複数のせん断抵抗部45を、それらの部材軸線が埋込み材本体42の長手方向軸線と一致するように列状に形成したが、本発明におけるせん断抵抗部は、埋込み材本体の長手方向に沿って全体として列状になるように形成すれば足りるものであって、本実施形態のように必ずしも長手方向軸線とせん断抵抗部45の部材軸線とが一致する必要はない。
例えば、埋込み材本体の長手軸線の左右に千鳥配置する構成が可能であるとともに、段重ねの必要がないのであれば、形状や大きさがそれぞれ異なる複数のせん断抵抗部を長手方向に沿って列状に配置してもかまわない。
また、本実施形態でも第1実施形態と同様、誘導埋込み材41を、鉄筋コンクリート壁35の一方の側面にのみ誘発目地33を設置する場合に適用してもかまわない。
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係る誘導埋込み材を示した斜視図、図10は、同じく正面図及び断面図である。これらの図でわかるように、本実施形態に係る誘導埋込み材91は、長尺板状の埋込み材本体92と、該埋込み材本体の両側にそれぞれ延設された一対の板状誘導部94,94とからなり、板状誘導部94,94は、埋込み材本体92の形成面と平行、すなわち互いに一体化した平板として形成してある。
埋込み材本体92には、該埋込み材本体の正面側では凹部46となり背面側では凸部47となるように、埋込み材本体92の長手方向に沿って複数のせん断抵抗部45を列状に複数形成してある。
せん断抵抗部45は、誘導埋込み材91がコンクリートに埋設された状態において、凹部46内のコンクリートとその背面側の凸部47周囲のコンクリートとの間で、埋込み材本体92の長手方向及び短手方向に沿った二方向せん断キーが形成されるように矩形平底状に構成してあり、その短手方向(本実施形態では正方形状なので短手方向を図10(a)の水平方向とする)を埋込み材本体の短手方向に揃えるとともに、その長手方向を埋込み材本体92の長手方向に揃えてある。
誘導埋込み材91は、例えば幅75mm、長さ2,000mm、厚さ1.2mmの亜鉛めっき鋼板をプレス加工して形成することができる。
図11は、誘導埋込み材91の使用状況を示した水平断面図である。同図でわかるように、誘導埋込み材91を用いるにあたっては、型枠31,31に挟まれたコンクリート打設空間30に誘導埋込み材91を建て込んで位置決めし、次いで、公知の固定方法、例えば結束線を用いた固定方法によって誘導埋込み材91を固定した後、コンクリート打設空間30にコンクリートを打設するが、誘導埋込み材91を位置決めするにあたっては、板状誘導部94,94が鉄筋コンクリート壁35の両側面に設けられる一対の各誘発目地33,33の背面側とそれぞれ対向するように誘導埋込み材91を位置決めすることで、該誘導埋込み材を誘発目地33,33の間であって該各誘発目地の設置ラインを含む壁断面34に設置する。
以上説明したように、本実施形態に係る誘導埋込み材91によれば、埋込み材本体92の正面側では凹部46となり背面側では凸部47となるように複数のせん断抵抗部45を埋込み材本体92の長手方向に沿って列状に複数形成するとともに、該せん断抵抗部を、埋設状態において凹部46内のコンクリートとその背面側の凸部47周囲のコンクリートとの間で埋込み材本体92の長手方向及び短手方向に沿った二方向せん断キーが形成されるように構成してある。
そのため、せん断抵抗部45の凹部46に入り込んだコンクリートが突状となり、その背面側の凸部47の周囲に拡がるコンクリートが凹状となって双方のコンクリートが誘導埋込み材91を介して噛合する状態となり、埋込み材本体92の長手方向及び短手方向に沿った二方向せん断キーを形成することができる。そして、かかる二方向せん断キーにより、耐力や耐震性といった鉄筋コンクリート壁の構造特性を何ら損なうことなく、収縮ひび割れの計画的な集中化を高めることが可能となる。
なお、本実施形態に係る二方向せん断キーについても、図7を参照して説明したと同様であるので、その詳細な説明についてはここでは省略する。
また、図8に示した段重ねについての変形例は本実施形態についても適用可能であり、せん断抵抗部45の配置間隔と形状が同一になるように形成するとともに、段重ねしたときに凸部47が凹部46に嵌り込むように構成したならば、誘導埋込み材91を、端部同士を重ねて上方に延長していくことが可能となり、さまざまな高さの鉄筋コンクリート壁に適用することが可能となる。
また、本実施形態でも第1実施形態と同様、誘導埋込み材91を、鉄筋コンクリート壁35の一方の側面にのみ誘発目地33を設置する場合に適用してもかまわない。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。なお、同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
図12は、本実施形態に係るひび割れ誘導構造に用いる誘導埋込み材を示した斜視図、図13は同じく正面図及び断面図である。これらの図でわかるように、本実施形態で用いる誘導埋込み材131は、長尺板状の埋込み材本体2と、該埋込み材本体の両側に延設された一対の補剛部3,3と、該各補剛部の外側にそれぞれ延設された一対の板状誘導部4,4とからなる。
図14は、本実施形態に係るひび割れ誘導構造141を示した水平断面図である。同図でわかるように、本実施形態に係るひび割れ誘導構造141は、上述した誘導埋込み材131と、型枠31,31同士の間隔を保持するセパレータのうち、同図で言えば誘導埋込み材131の右側に位置するセパレータ32aに一方の端部が取り付けられる第1の取付け用ロッドとしての取付け用ロッド133aと、左側に位置するセパレータ32bに一方の端部が取り付けられる第2の取付け用ロッドとしての取付け用ロッド133bと、取付け用ロッド133a及び取付け用ロッド133bをそれらの他端で相互に連結するとともに該連結箇所で誘導埋込み材131を連結する連結手段としての連結用雌ネジ部材134及び位置決め用ナット137とから構成してある。
連結用雌ネジ部材134及び位置決め用ナット137は、誘導埋込み材131に対する取付け用ロッド133a,133bの連結位置を該取付け用ロッドの材軸方向に沿って調整できるようになっている。
連結用雌ネジ部材134は図14(b)でよくわかるように、その一端には取付け用ロッド133aの他端がねじ込まれる第1の雌ネジとしての雌ネジ135aを形成してあるとともに、他端には取付け用ロッド133bの他端がねじ込まれる第2の雌ネジとしての雌ネジ135bを形成してあり、雌ネジ135bの端面には誘導埋込み材131に当接される狭着部としての鍔136が形成されてなる。
取付け用ロッド133bは、その他端に位置決め用ナット137を所望位置までねじ込むとともに、その先端を誘導埋込み材131の埋込み材本体2に形成された挿通孔132に挿通し、次いで連結用雌ネジ部材134の雌ネジ135bにねじ込むことにより、位置決め用ナット137と鍔136との間に誘導埋込み材131を狭着できるようになっている。
取付け用ロッド133a,133bの一方の端部は図15でよくわかるように、取付け部材139及びナット138でセパレータ32a,32bにそれぞれ取り付けることができるようになっている。
取付け部材139は、図15に示すように断面コの字状に形成してあり、対向する一対の平板部151,152を有し、該一対の平板部の間にセパレータ32a,32bが通されるように形成してあり、各平板部151,152には、取付け用ロッド133a,133bを挿通する挿通孔153,154が形成してある。また、平板部151の先端を内方に湾曲形成してなるストッパー156を設けてあり、コンクリート打設に伴う跳ね上がりに起因してセパレータ32a,32bから取付け用ロッド133a,133bが外れるのを防止する役目を果たす。
本実施形態に係るひび割れ誘導構造141を構築するには、まず、セパレータ32a,32bの設置高さに対応する誘導埋込み材131の挿通孔132に取付け用ロッド133bをそれぞれ挿通し、次いで、各取付け用ロッド133bを連結用雌ネジ部材134及び位置決め用ナット137で誘導埋込み材131に連結する。
例えば、誘導埋込み材131の建込み予定位置にセパレータ32a,32bが、上段、中段、下段と三段に配置されていて、これら三組のセパレータ32a,32bを利用して誘導埋込み材131を連結するのであれば、3本の取付け用ロッド133bを誘導埋込み材131に連結する。
これら連結作業は、型枠31,31内で行う必要はなく、地組すればよい。
なお、位置決め用ナット137を用いた位置決めを行うタイミングは任意であり、この段階で位置決めを行ってもよいし、最終段階で行うようにしてもよい。
次に、図16(a)に示すように、3本の取付け用ロッド133bが連結された誘導埋込み材131を型枠31,31内に吊り込む。このとき、建込み予定位置に直接吊り降ろそうとしても、取付け用ロッド133bのセパレータ側端部がセパレータ32bと干渉するので、水平方向(同図では右側)に逃がした状態で吊り降ろし、所定の高さまで吊り降ろした後、元の位置に戻せばよい。
次に、図16(b)に示すように取付け部材139の挿通孔153,154に3本の取付け用ロッド133bの各セパレータ側端部をそれぞれ挿通してからナット138を緩く螺合し、かかる状態で、取付け部材139の一対の平板部151,152の間にセパレータ32bが嵌り込むように、3本の取付け用ロッド133bをセパレータ32bに落とし込む。
次に、取付け用ロッド133aを連結用雌ネジ部材134の雌ネジ135aにそれぞれねじ込むことで、3本の取付け用ロッド133aを誘導埋込み材131の右側に連結するとともに、取付け部材139及びナット138を用いてそれらのセパレータ側端部をセパレータ32aに取り付ける。
次に、位置決め用ナット137を用いた誘導埋込み材131の位置決めを必要に応じて再度行い、しかる後、両側のナット138,138を締めて誘導埋込み材131を固定する。
誘導埋込み材131を位置決めするにあたっては、板状誘導部4,4が鉄筋コンクリート壁35の両側面に設けられた一対の誘発目地33,33の背面側とそれぞれ対向するように、誘導埋込み材131を位置決めすることで、該誘導埋込み材を誘発目地33,33の間であって該各誘発目地の設置ラインを含む壁断面34に設置する(図14(a))。
最後に、コンクリート打設空間30にコンクリートを打設する。
以上説明したように、本実施形態に係るひび割れ誘導構造141によれば、誘導埋込み材131を取付け用ロッド133a,133bを介してセパレータ32a,32bに取り付けるため、誘発目地33,33と同様、型枠31,31を基準として位置決めが行われることとなり、かくして誘発目地33,33に対する誘導埋込み材131の相対的な取付け精度が大幅に向上する。
そして、その結果、誘発目地33,33である直線溝と誘導埋込み材131の板状誘導部4,4とを正確に対向させることが可能となり、かくして、直線溝の背面側と誘導埋込み材131の板状誘導部4,4との間にひび割れ誘導面である断面34を正確に形成するとともに、該ひび割れ誘導面に収縮ひび割れを集中させることが可能となる。
また、本実施形態に係るひび割れ誘導構造141によれば、誘導埋込み材131に対する取付け用ロッド133a,133bの連結位置を取付け用ロッドの材軸方向に沿って調整できるように連結用雌ネジ部材134及び位置決め用ナット137を構成したので、誘導埋込み材131の位置決め精度をさらに向上させることが可能となる。
また、本実施形態に係るひび割れ誘導構造141によれば、取付け部材139及びナット138を用いて取付け用ロッド133a,133bのセパレータ側端部をセパレータ32a,32bに取り付けるようにしたので、セパレータ32a,32bへの取付け用ロッドナット133a,133bの取付け、ひいては誘導埋込み材131の位置決めを確実かつ容易に行うことが可能となる。
本実施形態では、取付け用ロッド133a,133bの一方の端部を取付け部材139の挿通孔153,154に挿通した上、ナット138をねじ込むようにしたが、ナット138を省略するとともに挿通孔153,154の内周面に雌ネジを切っておき、該雌ネジに取付け用ロッド133a,133bの一方の端部を螺着するようにしてもかまわない。
また、本実施形態では、誘導埋込み材131を取付け用ロッド133a,133bを介してその両側に配置されたセパレータ32a,32bから固定するようにしたが、必ずしも両側から固定しなければならないものではなく、一方のセパレータのみで誘導埋込み材131を固定するようにしてもかまわない。
図17(a)は、連結用雌ネジ部材134と位置決め用ナット137との間に狭着された誘導埋込み材131を取付け用ロッド133bを介してセパレータ32bのみから固定するようにした例であり、図17(b)は、ナット171,171との間に狭着された誘導埋込み材131を取付け用ロッド133bを介してセパレータ32bのみから固定するようにした例である。
両変形例は、片側のセパレータ32bのみから誘導埋込み材131を固定するため、両側のセパレータ32a,32bで固定する場合ほど安定性は高くないが、いずれも型枠31,31を基準とした位置決めであるため、従来に比べて誘発目地33,33に対する誘導埋込み材131の位置決め精度を高めることができることに何ら変わりはない。また、位置決め用ナット137やナット171,171の位置を変えることでロッド軸線方向の位置調整を行うことができるので、誘導埋込み材131の位置決めを容易に行うことができる。なお、同図(b)における変形例においては、ナット171,171が連結手段となる。
一方、上述した実施形態のように、誘導埋込み材131をその両側に位置する2つのセパレータ32a,32bから連結固定する場合において、2本の取付け用ロッド133a,133bに代えて、1本の取付け用ロッドでセパレータ32a,32bに固定するようにしてもかまわない。
かかる変形例の具体的構成としては、1本の取付け用ロッドを全ネジボルトで構成するとともに、その中間位置、例えば中央付近にナット171,171を螺合し該ナットで誘導埋込み材131を狭着するとともに、全ネジボルトの一端をセパレータ32aに、他端をセパレータ32bに取り付けるようにすればよい。
また、本実施形態では、雌ネジ135bの端面に誘導埋込み材131に当接される狭着部としての鍔136を形成したが、雌ネジ135bの端面が狭着部として機能するのであれば、鍔136を省略することができる。
また、本実施形態では、セパレータ32a,32bを先に施工し、その後で誘導埋込み材13を建て込んで該セパレータに固定するようにしたが、これに代えて、誘導埋込み材13を先行建込みして仮保持しておき、次いでセパレータ32a,32bを施工した後、誘導埋込み材31の位置決め及びセパレータ32a,32bへの固定を行うようにしてもかまわない。
また、本実施形態では、ひび割れ誘導構造に用いる誘導埋込み材として、誘導埋込み材131を用いた例を説明したが、これに代えて、図18及び図19に示した誘導埋込み材を用いることができる。すなわち、同図に示す誘導埋込み材181は、挿通孔132を設けた点が誘導埋込み材41とは異なり、長尺板状の埋込み材本体42と、該埋込み材本体の両側に延設された一対の補剛部43,43と、該各補剛部の外側にそれぞれ延設された一対の板状誘導部44,44とからなり、埋込み材本体41には挿通孔132を設けてある。
図20は、本実施形態に係るひび割れ誘導構造201を示した水平断面図である。同図でわかるように、本実施形態に係るひび割れ誘導構造201は、上述した誘導埋込み材181と、型枠31,31同士の間隔を保持するセパレータのうち、同図で言えば誘導埋込み材181の右側に位置するセパレータ32aに一方の端部が取り付けられる取付け用ロッド133aと、左側に位置するセパレータ32bに一方の端部が取り付けられる取付け用ロッド133bと、取付け用ロッド133a及び取付け用ロッド133bをそれらの他端で相互に連結するとともに該連結箇所で誘導埋込み材181を連結する連結用雌ネジ部材134及び位置決め用ナット137とから構成してある。
また、本実施形態では、ひび割れ誘導構造に用いる誘導埋込み材として、誘導埋込み材181を用いた例を説明したが、これに代えて、図21及び図22に示した誘導埋込み材を用いることができる。すなわち、同図に示す誘導埋込み材211は、挿通孔132を設けた点が誘導埋込み材91とは異なり、長尺板状の埋込み材本体92と、該埋込み材本体の両側にそれぞれ延設された一対の板状誘導部94,94とからなり、埋込み材本体92には挿通孔132を設けてある。
図23は、本実施形態に係るひび割れ誘導構造231を示した水平断面図である。同図でわかるように、本実施形態に係るひび割れ誘導構造231は、上述した誘導埋込み材211と、型枠31,31同士の間隔を保持するセパレータのうち、同図で言えば誘導埋込み材211の右側に位置するセパレータ32aに一方の端部が取り付けられる取付け用ロッドと133aと、左側に位置するセパレータ32bに一方の端部が取り付けられる取付け用ロッド133bと、取付け用ロッド133a及び取付け用ロッド133bをそれらの他端で相互に連結するとともに該連結箇所で誘導埋込み材211を連結する連結用雌ネジ部材134及び位置決め用ナット137とから構成してある。
これら図18〜図23に示した2つの変形例についても、上述したと同様の作用効果を奏する。すなわち、上記変形例によれば、誘導埋込み材181や誘導埋込み材211を取付け用ロッド133a,133bを介してセパレータ32a,32bに取り付けるため、誘発目地33,33と同じ型枠31,31を基準として位置決めが行われることとなり、かくして誘発目地33,33に対する誘導埋込み材181、誘導埋込み材211の相対的な取付け精度が大幅に向上する。
そして、その結果、誘発目地33,33である直線溝と、誘導埋込み材181の板状誘導部44,44あるいは誘導埋込み材211の板状誘導部94,94とを正確に対向させることが可能となり、かくして、直線溝の背面側と誘導埋込み材181の板状誘導部44,44との間、あるいは誘導埋込み材211の板状誘導部94,94との間にひび割れ誘導面である断面34を正確に形成するとともに、該ひび割れ誘導面に収縮ひび割れを集中させることが可能となる。
また、上記変形例によれば、誘導埋込み材181や誘導埋込み材211に対する取付け用ロッド133a,133bの連結位置を取付け用ロッドの材軸方向に沿って調整できるように連結用雌ネジ部材134及び位置決め用ナット137を構成したので、誘導埋込み材131や誘導埋込み材211の位置決め精度をさらに向上させることが可能となる。
また、上記変形例によれば、取付け部材139及びナット138を用いて取付け用ロッド133a,133bのセパレータ側端部をセパレータ32a,32bに取り付けるようにしたので、セパレータ32a,32bへの取付け用ロッドナット133a,133bの取付け、ひいては誘導埋込み材181や誘導埋込み材211の位置決めを確実かつ容易に行うことが可能となる。
また、本実施形態では特に言及しなかったが、図24に示すように、せん断抵抗部45の配置間隔と形状が同一になるように形成するとともに、段重ねしたときに凸部47が凹部46に嵌り込むように構成したならば、誘導埋込み材181を、端部同士を重ねて上方に延長していくことが可能となり、さまざまな高さの鉄筋コンクリート壁に適用することが可能となる。ここで、取付け用ロッド133bは、段重ねされた2枚の誘導埋込み材181の挿通孔132,132に挿通した上、上述したと同様、2枚の誘導埋込み材181を一緒に固定すればよい。すなわち、誘導埋込み材181を上方に延ばしていく場合において、その重なり箇所では、連結用雌ネジ部材134及び位置決め用ナット137は、2枚の誘導埋込み材181,181を上述したように誘発目地33,33に位置決めする役目を果たすほか、重なり部分で2枚の誘導埋込み材181,181を一体化する役目も果たす。誘導埋込み材211についても同様な段重ね構成が可能であるが、詳細な説明については省略する。
また、本実施形態では、鉄筋コンクリート壁35の両側面に一対の誘発目地33,33を設ける場合について説明したが、これに代えて、鉄筋コンクリート壁35の一方の側面にのみ、誘発目地33を設置する場合に適用してもかまわない。詳細な説明については、第1実施形態と同様であるので、ここでは省略する。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。なお、同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
図25は、本実施形態に係るひび割れ誘導構造を示した斜視図、図26は水平断面図である。同図でわかるように、本実施形態に係るひび割れ誘導構造250は、誘発目地33,33の間であって該各誘発目地の設置ラインを含む壁断面34に並列に配置された誘導埋込み材131,131と、型枠31,31同士の間隔を保持するセパレータのうち、同図で言えば誘導埋込み材131の右側に位置するセパレータ32aに一方の端部が取り付けられる2本の取付け用ロッド133a,133aと、左側に位置するセパレータ32bに一方の端部が取り付けられる2本の取付け用ロッド133b,133bと、取付け用ロッド133a及び取付け用ロッド133bをそれらの他端で相互に連結するとともに該連結箇所で誘導埋込み材131,131を連結する二組の連結用雌ネジ部材134及び位置決め用ナット137とを備えるとともに、並列配置された2枚の誘導埋込み材131,131を水平方向に繋ぐ繋ぎ手段としてのロッド状繋ぎ部材251を備える。
ロッド状繋ぎ部材251は、両端を同一方向に直角に折り曲げてなる2つの折曲げ部252,252を有しており、該折曲げ部を、誘導埋込み材131,131にそれぞれ形成された嵌入孔としての挿通孔132,132に嵌め込むことにより、該誘導埋込み材を一体化することができるようになっている。
本実施形態に係るひび割れ誘導構造250は、1枚の誘導埋込み材131が2枚の誘導埋込み材131,131になったことに伴い、取付け用ロッド133a,133b、連結用雌ネジ部材134、位置決め用ナット137、取付け部材139,139及びナット138,138が二組必要になった点を除いて、第4実施形態で述べたひび割れ誘導構造141とほぼ同様であり、その組立手順も図16を用いた手順とほぼ同様であるので、ここではその詳細な説明を省略するが、ロッド状繋ぎ部材251を取り付けるにあたっては、例えば2本の取付け用ロッド133bを所望段数だけそれぞれ取り付ける工程と相前後して、誘導埋込み材131,131に取り付け、しかる後、取付け用ロッド133b及びロッド状繋ぎ部材251とともに、誘導埋込み材131,131を型枠31,31内のコンクリート打設空間に吊り込むことが考えられる。
なお、ロッド状繋ぎ部材251の折曲げ部252,252を嵌め込む嵌入孔は、誘導埋込み材131に形成された挿通孔132のうち、取付け用ロッド133bを挿通するのに用いた挿通孔132を除く他の挿通孔132を用いればよい。
以上説明したように、本実施形態に係るひび割れ誘導構造250によれば、ひび割れ誘導構造141で奏する作用効果に加え、ロッド状繋ぎ部材251によって2つの誘導埋込み材131,131が一体化することによって、固定度や剛性が高くなり、かくしてコンクリート側圧に対する強度ひいては誘導埋込み材の位置決め精度をさらに高めることが可能となる。
本実施形態では、ロッド状繋ぎ部材251で誘導埋込み材131,131を相互に繋いだ例を説明したが、図27に示すように、誘導埋込み材181,181を繋ぐ際に用いてもよいし、図28に示すように誘導埋込み材211,211を繋ぐ際に用いてもよい。
かかる構成においても、第4実施形態で述べたそれぞれの作用効果に加えて、ロッド状繋ぎ部材251によって2つの誘導埋込み材181,181あるいは誘導埋込み材211,211がそれぞれ一体化し、固定度や剛性が高くなってコンクリート側圧に対する強度ひいては誘導埋込み材の位置決め精度をさらに高めることができるという顕著な作用効果を奏する。
また、本実施形態では、ロッド状繋ぎ部材251を水平に配置したが、必ずしも水平に配置する必要はなく、下から上に沿って交互に斜め配置するようにしてもよい。かかる変形例においては、ロッド状繋ぎ部材は、ブレースとして作用することとなり、並設された誘導埋込み材は、設置された面内において強固に連結される。
また、本実施形態では、鉄筋コンクリート壁35の両側面に一対の誘発目地33,33を設ける場合について説明したが、これに代えて、鉄筋コンクリート壁35の一方の側面にのみ、誘発目地33を設置する場合に適用してもかまわない。詳細な説明については、第1実施形態と同様であるので、ここでは省略する。