JP5000578B2 - 薄鋼板の重ねレーザ溶接方法 - Google Patents

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Description

この発明は、板厚0.5〜3.2mmの薄鋼板を複数重ね合わせ、この重ね合わせ方向からレーザ光を照射しつつ、レーザ光を重ね合わせた鋼板の端部に沿って移動させて、これら鋼板を互いに溶接する薄鋼板の重ねレーザ溶接方法に関する。なお、本発明は、主に、自動車、家庭用電化製品の構造物をレーザ溶接するものである。
自動車の車体パネルに用いられる、薄鋼板から形成された、重ね継ぎ手を有する部材の典型的な例を図1に示す。フランジ部2および折り曲げ部3を有する断面が図1aに示すようにハット形状の構造部材1を、互いに対向させてそのフランジ部2を重ね合わせ、その重ね合わせ部をスポット溶接などで接合したフレーム部材や、図1b、cに示すように前記フランジ部2と鋼板4あるいはフランジ部間に鋼板4を介在させてそれらを重ね合わせ、それらを同様に接合したフレーム部材、さらには、図1dに示すように複数枚の構造部材1を同一方向に重ね合わせたフレーム部材が使用されている。特に、近年、地球環境問題のための自動車の燃費向上のために、これらの部材に高張力鋼板を多用して車体の軽量化が図られるようになってきた。
上記重ね合わせ部の接合に、レーザ溶接を採用した場合には、連続溶接により接合強度が高く、ビード幅が狭いために、従来用いられていたスポット溶接やアーク溶接に比べて接合部の設計自由度が大きく、フランジ部の幅を狭くし、構造部材を小型化、軽量化することが可能となるなどの利点がある。
しかしながら、高張力鋼板よりなる構造部材において、フランジ部の幅を狭くして部材を軽量化し、重ね合わせ部端部近傍を、レーザ溶接により下側の鋼板裏面まで溶融するように溶接しようとすると、凝固割れが問題になることが、特許文献1、2等に示されている。
すなわち、図2aに示すように、断面がハット形状の構造部材の両側フランジ部を相互に重ね合わせたフレーム部材のフランジ部に、重ね合せ方向、すなわち、フランジに交差する方向からレーザ光を照射して、下側の鋼板裏面まで溶融するように溶接するとともに、フランジの長手方向端部から溶接を開始する場合には、図2bに示すように、溶接始端部側が外側に広がるように変形し、割れが発生する。
また、図3のように、溶接開始点5をフランジの長手方向端部としないで、該端部から所定距離隔てた点を溶接開始点とした場合でも、溶接後に溶接部6の中央部分が膨出し、割れ7が発生する場合がある。なお、図において、8はレーザ溶接ヘッドである。
これは、重ね合わせた下側の鋼板の裏面まで溶融するようにレーザ光を照射して溶接する場合、レーザ光の照射により形成された溶融部が凝固するまで、溶融部より端部側のフランジ部位は、フランジ本体から切り離された状態になり、このとき、該部位の幅が小さいと、溶接部からの熱伝導により熱膨張して該部位が変形し、凝固途中の溶接ビードを引っ張り、凝固時に割れが発生するためと考えられる。
このようなフランジ重ね合わせ部の端部近傍をレーザ溶接した時に生じる凝固割れの問題に対し、特許文献1では、凝固割れの発生は溶接金属のC成分とP+S成分に依存するとし、図4で示すように、C<0.05質量%、かつ、P+S<0.03質量%になるように、または、0.08質量%<C<0.7質量%、P+S<0.05質量%になるように、溶接部を形成して、凝固割れを防止する発明が記載されている。
また、特許文献2では、上記特許文献1で示された凝固割れが生じない成分範囲以外の場合は、溶接金属鋼板の重ね合せ部分の幅を8mm以内とし、かつ、前記鋼板の端から3.5mm以上離れた位置に溶接部を形成することにより、または、一方の鋼板が他方の鋼板より5mm以上突出するように重ね合わせ、その時の鋼板の重ね合せ部分の幅を8mm以内とし、かつ、前記他方の鋼板の端から1.5mm以上離れた位置に溶接部を形成することにより、凝固割れを防止する発明が記載されている。
特開2007−229740号公報 特開2007−229752号公報
しかし、鋼板を重ねレーザ溶接する際、溶接金属の成分Cが、上記特許文献1に記載のように、C<0.05質量%、または、0.08質量%<Cの範囲である場合には、狭いフランジ幅でも溶接が可能であるが、溶接金属の成分Cが0.05≦C≦0.08質量%の場合に凝固割れを回避するためには、特許文献2に記載されているように、フランジの重ね合わせ部の構造や溶接部の形成位置に制約が生じる問題点があった。
ところが、高張力薄鋼板のレーザ溶接において、部材の軽量化のためにフランジ部の幅を短くし、さらに、重ね合わせ部端部近傍を、下側の鋼板裏面まで溶融するように溶接する場合で、溶接金属の成分Cが0.05≦C≦0.08質量%の場合に溶接凝固割れを回避するためには、フランジの重ね合わせ部の構造や溶接部の形成位置に制約を設けない溶接方法は、従来知られていなかった。
そこで、本発明は、上記のごとき状況に鑑み、少なくとも1枚の鋼板は高張力鋼板よりなる複数の鋼板を重ね合わせ、この重ね合わせた下側の鋼板の裏面まで溶融するように重ね合わせ方向からレーザ光を照射しつつ、レーザ光を重ね合わせた鋼板の端部に沿って移動させて、重ね合わせた鋼板を互いに溶接する場合であって、溶接金属の成分Cが0.05≦C≦0.08質量%になるような場合において、フランジの重ね合わせ部の構造や溶接部の形成位置に多くの制約を設けなくても、上記のような凝固割れを生じることなく狭いフランジ幅での溶接を可能にして、部材の軽量化に資することができる薄鋼板の重ねレーザ溶接方法を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明は次のようにしたことを特徴とする。
(1) 板厚0.5〜3.2mmの薄鋼板を複数重ね合わせ、この重ね合わせた下側の鋼板の裏面まで溶融するように重ね合わせ方向からレーザ光を照射しつつ、レーザ光を重ね合わせた鋼板の端部に沿って移動させて溶接部を形成し、重ね合わせた鋼板を互いに溶接する、薄鋼板の重ねレーザ溶接方法において、前記複数の鋼板のうち少なくとも1枚の鋼板は引張強さが440MPa級以上の高張力鋼板であるとともに、前記溶接部の溶接金属が0.05≦C≦0.08質量%、4S+P<0.024質量%の関係を満たす溶接部を形成することを特徴とする、薄鋼板の重ねレーザ溶接方法。
(2) 前記重ね合わせた鋼板の溶接方向端部より離れた位置で、溶接を開始することを特徴とする、上記(1)に記載の薄鋼板の重ねレーザ溶接方法。
(3) 前記複数の鋼板のうちの少なくとも一枚の鋼板が、他の鋼板より、溶接方向に垂直な方向に突出するように重ね合わされており、前記重ね合わせられた鋼板の溶接方向端部より、溶接を開始することを特徴とする、上記(1)に記載の薄鋼板の重ねレーザ溶接方法。
(4) 前記複数の鋼板のうちの少なくとも1枚の鋼板は、溶接方向に平行ないし溶接方向に沿った鋼板端部のうちの少なくとも片側に折り曲げ部およびそれに続くフランジ部を有する構造部材であり、鋼板の重ね合せ部が、前記構造部材のフランジと他の鋼板を重ね合わせたものであることを特徴とする、上記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の薄鋼板の重ねレーザ溶接方法。
(5) 前記少なくとも1枚の鋼板が、溶接方向に平行ないし溶接方向に沿った鋼板端部の両側に折り曲げ部およびフランジ部を有する、断面がハット形状の構造部材であることを特徴とする、上記(4)に記載の薄鋼板の重ねレーザ溶接方法。
(6) 前記フランジ部の幅が8mm以内であることを特徴とする、上記(4)または(5)に記載の薄鋼板の重ねレーザ溶接方法。
請求項1の発明によれば、少なくとも1枚の鋼板は高張力鋼板よりなる構造部材の重ねレーザ溶接において、重ね合わせた下側の鋼板裏面まで充分に溶け込みを行い、溶接金属の成分Cが0.05≦C≦0.08質量%になるような場合でも、溶接部に凝固割れを発生させずに重ね合わせた鋼板を互いにレーザ溶接することができるので、重ね合せ部の幅が狭くても強度の高い溶接部を形成することができ、構造部材を小型化、軽量化することが可能となる。
請求項2、3の発明によれば、請求項1の発明のレーザ溶接方法を重ね継ぎ手の形状に応じた形態で実施することができる。
請求項4、5の発明によれば、請求項1〜3の発明のレーザ溶接方法を自動車のパネル部品の製造に適用することができる。
請求項6の発明によれば、構造部材をさらに小型化、軽量化することが可能となる。
以下、本発明の一実施の形態を、さらに図2〜10を用いて詳細に説明する。
本発明が対象とする鋼板の板厚は、0.5〜3.2mmとする。この板厚の下限0.5mmは、本発明が対象とする自動車、家庭用電化製品の構造物に使用される鋼板の板厚は0.5mm以上が殆どであることから規定した。また、板厚の上限3.2mmは、レーザ溶接機の溶接能力から規定した。なお、重ね合わせ部全体の厚みとしては、4.0mm以下が望ましい。
高張力鋼板よりなり、図5で示される断面形状がハット型の構造部材のような端部にフランジを有する板状部材を、同様のフランジや鋼板と重ね、両者の間をレーザ溶接してフレーム部材を製造する際、特許文献2で開示されているように、例えば、8mm以内というようなよりフランジ幅(鋼板が重なっている幅)Aの狭い構造部材を用いて、フレーム部材全体をより軽量化しようとすると、溶接部からフランジ端部までの距離Bは1.5mm以上の範囲のうちのより短い距離にならざるを得ず、このような条件では、図3に示されるように、フランジ長手方向端部から離れた位置で溶接を開始したとしても、前記したように、溶接部からの熱伝導により変形した部位が、凝固途中の溶接ビードを引っ張り、凝固割れが発生する場合があった。
なお、構造部材を軽量化するには、フランジ幅を8mm以内とするのが、より効果的であり好ましい。なお、フランジ幅を3mm未満とすると、フランジ部が溶け落ちて溶接できなくなるため、フランジ幅の下限は、3mm以上とするのが好ましい。さらに、そのようなフランジ幅において、溶接ビードからフランジ端部までの距離を1.5mm以上とするのが好ましい。これは、1.5mm未満では、フランジ端部側が、フランジ端まで溶融して、そのまま溶け落ち易くなるためである。
そこで、本発明者らは、凝固割れの発生原因を調べ、まず溶接金属成分と凝固割れとの関連について検討した。
図6は、薄鋼板の重ねレーザ溶接における凝固過程の温度と溶接部周辺で発生する歪の関係を示す。同図は、質量%で、C量が0.06%、Si量が0.5%、Mn量が1.5%を含有する板厚1.2mmの引張強さ590MPaの高張力鋼板を用い、レーザ加工点出力2kW、溶接速度2m/minの条件で重ねレーザ溶接して得た試料を用いて得られたものである。
図6により、液相温度直下から溶接部には引張方向の力が働き、液相温度から温度が充分に低下すると、逆に溶接部には圧縮の力が働くことが分かる。レーザ光照射位置後方の、凝固過程にある(2)の領域において、引張方向の大きな歪が発生し、これが凝固割れにつながるものといえる。
そして、そのような歪の発生と凝固割れの関係は、図7に示されるような、一般的に知られている凝固温度脆性範囲(BTR)と収縮変位(P)の関係から説明できる。
すなわち、溶接部の温度と凝固収縮にともなう部材の変位量との間には、図中斜線で示す凝固割れ感受性の高い脆化域(D)があり、温度の降下にともない凝固収縮変位(P)の値が大きくなり、それが脆化域を通過すると凝固割れが発生すると考えられている。また、液相温度直下では、最低延性値(Dmin)が小さく脆化域は広いが、液相率が高いので、たとえ柱状晶間に凝固割れが発生しても、液相により充填され凝固割れは発生しない。
一般的に、凝固割れに影響を与える因子の一つとして、液相−固相間の凝固温度幅があげられる。Feに対する2元系において、少量の添加でも凝固温度幅を広げる元素としては、例えば図10で示すようにC、P、Sが知られている。
また、C、P、Sは平衡分配係数が小さく、溶質が溶融金属中に排出され柱状晶間に残留するため、見かけの固相温度より最終凝固位置の温度は図7の太字破線のように低下し、BTRを広げやすく凝固割れを起こしやすい元素であると考えられる。
さらに、その成分範囲で凝固過程の粒界強度が低くなるような、成分的に特に割れに敏感な成分範囲があると考えられ、その成分範囲は、C、P、S量の各範囲で決まると考えられる。
そのため、特許文献1、2では、図4で示すような、溶接金属の成分が、C<0.05%、かつ、0.03%≦P+S、または、0.05≦C≦0.08%の範囲では凝固割れが発生するとしている。
しかしながら、溶質濃度と凝固温度幅の関係は、図10で示すように、C、P、Sで異なり、Cに対しS、Pが凝固温度幅を広げやすくなっている。このことから、本発明者らは、凝固割れの発生しやすさをCだけで整理するのは不十分であると考えた。
そして、特許文献1、2で示された凝固割れの発生しやすい溶接金属の成分が0.05≦C≦0.08%の範囲においても、より低P、低Sの領域では凝固割れが生じないP、Sの範囲が存在すると考え、凝固割れの発生しやすい溶接金属の成分C量の範囲、0.05≦C≦0.08%で、P、Sそれぞれの影響についてさらに詳細に調査を行なった。
実験は、板厚0.5〜3.2mmで、引張強さ270MPa級から引張強さ780MPa級の鋼板を、溶接金属の成分が、C量0.05≦C≦0.08%の範囲で、種々のP、S量を含有することとなるように、同一種同士または異種同士を組み合わせて、図5で示されるようなハット型の構造部材を、次の重ね合わせ条件で重ね合わせた。
フランジ幅A:8mm
溶接ビード中心と鋼板の端部までの距離B:3.0mm
フランジ部長手方向端部から溶接開始点までの距離C:5mm
そして、レーザ加工点出力3.5kW、溶接速度2m/minの溶接条件でレーザ溶接を行った。
その結果を割れの発生の有無で整理して図8で示す。図8中の左下の(1)で示す直線(4S+P=0.024)より下の領域が、凝固割れの発生しない領域、(2)が、凝固割れの発生する領域である。
この結果より、少なくとも1枚の鋼板は高張力鋼板よりなる複数の鋼板を重ね合わせ、この重ね合わせた下側の鋼板の裏面まで溶融するように重ね合わせ方向からレーザ光を照射して、前記重ね合わせた鋼板の溶接方向端部より離れた位置から溶接を開始し、レーザ光を重ね合わせた鋼板の端部に沿って移動させて溶接部を形成して、重ね合わせた鋼板を互いに溶接する場合、溶接部に、0.05≦C≦0.08%、4S+P<0.024%である溶接金属を形成するようにすれば、凝固割れを起こさずにレーザ溶接できることがわかった。
以上のように、レーザ溶接部の割れ感受性が、C量及びP、S量によって大きく異なる理由の詳細は必ずしも明らかではないが、本発明者らは、次のような理由によるものと考えている。
図8の(1)で示す低P、S領域(4S+P<0.024%)は固相温度が高く、図6中の領域(1)で示すように引張の力が大きくなる前に凝固が完了する。この場合、引張の力が発生しているが、図7で示すDminの範囲内と考えられるため、凝固割れは発生しない。
また、図8中(2)で示す比較的高P、S域(4S+P≧0.024%)の場合は、固相温度が比較的低く、引張の力が最大になる図6中の(2)の領域で凝固は完了する。この場合の引張の力は、図7で示す脆化域を通過すると考えられるため、凝固割れが発生する。
なお、上記のレーザ溶接に当たっては、重ね合わせた鋼板の溶接方向端部より離れた位置から溶接を開始する場合について検討したが、重ね合わせた鋼板の溶接方向端部より溶接を開始する場合は、図2のように、端部が開かないように、端部をクランプ治具で拘束する必要がある。このようにすれば、図3に示されるように途中で膨出することなく溶接できる。
また、図9に示されるように、一方の鋼板4が他方の鋼板1より、溶接方向に垂直な方向に突出するように重ね合わされており、重ね合せ部の、溶接方向に平行ないし溶接方向に沿った端部が揃っていない場合には、一方の鋼板4が他方の鋼板1から突出する距離Dおよび端部から溶接部までの距離Bをある程度大きくすれば、重ね合わせた鋼板の溶接方向端部より溶接を開始しても、上記のように溶接金属を形成することにより、凝固割れを発生することなく溶接することができる。その場合、確実に凝固割れを防止するためには、上記距離Dは5mm以上が好ましく、距離Bは、2mm以上が好ましい。
本発明では、レーザ発振器としては、例えば、YAGレーザ、ファイバーレーザ、DISKレーザなどを用いることができ、溶接条件としては、加工点出力3.5kW、溶接速度2.0m/minを例示できる。
また、図5で示すように、フランジ長手方向端部から距離Cを置いて溶接を開始する場合は、距離Cを、溶接部の溶接ビード中心からフランジ幅方向端部までの距離Bと同じか、それ以上の距離とするのがよい。
さらに、重ね溶接する鋼板の材質としては、複数の鋼板のすべてが高張力鋼板である場合と、鋼板の少なくても1枚が高張力鋼板であり、他の鋼板は高張力鋼板に比べて引張強さが低い鋼などである場合があり、本発明は、そのいずれをも対象とする。
高張力鋼板の強度レベルの範囲としては、引張強さが440MPa以上のものとする。引張強さが440MPa級未満の鋼板同士の重ねレーザ溶接では、本発明が課題とする凝固割れの問題がないからである。鋼板強度レベルの上限は、溶接金属の成分が本発明の範囲を満たすことができる限り、特に限定する必要はないが、一般的な薄鋼板の成分を考慮して、溶接金属の成分範囲を本発明範囲とするためには、引張強さが980MPa級までとするのが好ましい。
また、異なる組合せの鋼板としては、例えば、引張強さが590MPa級の鋼板と270MPa級の鋼板の組合せなどを例示できる。
レーザ溶接では、溶接金属の成分は、フィラー等の溶加材を別途添加しない場合、重ね合わせた各鋼板の母材成分値及びその板厚から計算される平均成分であり、計算されるC、P、Sの値が、上記本発明の規定を満たすように構造部材の材質を選定する。
溶加材を加える場合は、その添加量を考慮して、C、P、Sの値を計算する必要がある。
以下、本発明の実施例を説明するが、実施例で採用した条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するための一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載される事項によってのみ規定されており、上記以外の実施の形態も実施可能である。本発明を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
供試材として、厚さが1.2mmで、引張強さが370〜980MPa級の鋼板よりなる断面ハット形状の構造部材を、平板上の鋼板に、端部が揃うように重ねあわせた。それぞれの重ね合せ部の幅は8mmであった。これら鋼板は、溶接金属のC量が、0.05≦C≦0.08%の範囲で、P、S量が異なる試料を用いた。そして、重ね合せ部を、次の条件でレーザ溶接した。
レーザ溶接は、YAGレーザを用い、レーザ加工点出力を3.5kW、溶接速度を2.0m/minとした。また、レーザビームは、鋼板上に集光し、集光スポットは直径0.6mmとした。レーザ照射位置は、フランジ端部から2.5〜4.0mmで、フランジ長手方向端部から5.0mm離れた点を開始位置とした。
得られた結果を、表1に示す。表1より、本発明の条件を満たす場合は、割れを生じることなく溶接できることがわかる。
Figure 0005000578
薄鋼板から形成された、重ね継ぎ手を有する部材の例を斜視図で模式的に示す図である。 薄鋼板のレーザ溶接重ね継ぎ手で観察される凝固割れの1例を斜視図で模式的に示す図である。 薄鋼板のレーザ溶接重ね継ぎ手で観察される凝固割れの他の例を斜視図で模式的に示す図である。 薄鋼板のレーザ溶接重ね継ぎ手で観察される凝固割れの発生と溶接金属成分の関係(CとP+Sの関係)を示す図である。 薄鋼板のレーザ溶接重ね継ぎ手のフランジ幅と溶接部位置とを斜視図で模式的に説明する図である。 溶接後の凝固過程の温度と歪の関係を示す図である。 凝固脆性範囲と収縮変位の関係を示す図である。 薄鋼板のレーザ溶接重ね継ぎ手で観察される凝固割れの発生と溶接金属の成分の関係(PとSの関係)を示す図である。 薄鋼板のレーザ溶接重ね継ぎ手の溶接の際の、フランジ端部から溶接を開始する場合の継ぎ手の例を、斜視図で模式的に説明する図である。 Fe−2元系合金状態図の溶質濃度と凝固温度幅の関係を説明する図である。
符号の説明
1 断面ハット形状の構造部材
2 構造部材のフランジ部
3 構造部材の折り曲げ部
4 鋼板
5 溶接開始点
6 溶接部(溶接ビード)
7 凝固割れ部
8 レーザ溶接加工ヘッド
A フランジ幅
B 溶接部からフランジ端部までの距離
C フランジ長手方向端部から溶接開始点までの距離
D 一方の鋼板が他方の鋼板から突出する距離

Claims (6)

  1. 板厚0.5〜3.2mmの薄鋼板を複数重ね合わせ、この重ね合わせた下側の鋼板の裏面まで溶融するように重ね合わせ方向からレーザ光を照射しつつ、レーザ光を重ね合わせた鋼板の端部に沿って移動させて溶接部を形成し、重ね合わせた鋼板を互いに溶接する、薄鋼板の重ねレーザ溶接方法において、
    前記複数の鋼板のうち少なくとも1枚の鋼板は引張強さが440MPa級以上の高張力鋼板であるとともに、前記溶接部の溶接金属が0.05≦C≦0.08質量%、4S+P<0.024質量%の関係を満たす溶接部を形成することを特徴とする、薄鋼板の重ねレーザ溶接方法。
  2. 前記重ね合わせた鋼板の溶接方向端部より離れた位置で、溶接を開始することを特徴とする、請求項1に記載の薄鋼板の重ねレーザ溶接方法。
  3. 前記複数の鋼板のうちの少なくとも一枚の鋼板が、他の鋼板より、溶接方向に垂直な方向に突出するように重ね合わされており、前記重ね合わせられた鋼板の溶接方向端部より、溶接を開始することを特徴とする、請求項1に記載の薄鋼板の重ねレーザ溶接方法。
  4. 前記複数の鋼板のうちの少なくとも1枚の鋼板は、溶接方向に平行ないし溶接方向に沿った鋼板端部のうちの少なくとも片側に折り曲げ部およびそれに続くフランジ部を有する構造部材であり、鋼板の重ね合せ部が、前記構造部材のフランジと他の鋼板を重ね合わせたものであることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の薄鋼板の重ねレーザ溶接方法。
  5. 前記少なくとも1枚の鋼板が、溶接方向に平行ないし溶接方向に沿った鋼板端部の両側に折り曲げ部およびフランジ部を有する、断面がハット形状の構造部材であることを特徴とする、請求項4に記載の薄鋼板の重ねレーザ溶接方法。
  6. 前記フランジ部の幅が8mm以内であることを特徴とする、請求項4または5に記載の薄鋼板の重ねレーザ溶接方法。
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