JP4998773B2 - 全固体反射調光エレクトロクロミック素子、その製造方法およびかかる素子を用いた調光部材および車両用部品 - Google Patents

全固体反射調光エレクトロクロミック素子、その製造方法およびかかる素子を用いた調光部材および車両用部品 Download PDF

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Description

太陽光の透過量を制御できる調光ガラスに用いられる全固体反射調光エレクトロクロミック素子、その製造方法、該素子を用いた調光部材および車両用部品に関する。
一般的に、建物において窓ガラス(開口部)は、大きな熱の出入り場所となっている。例えば、冬の暖房時に熱が窓から流失する割合は48%程度であり、夏の冷房時に窓から熱が入る割合は71%程度にも達する。したがって、窓ガラスにおける光・熱の出入りを制御できれば、エネルギー消費を効果的に低減することができる。光・熱の制御できる調光機能を有する調光ガラスは、このような目的で開発された。
また、自動車においては、建物と比較し、窓ガラスが内部空間に対して大きく、車内の人間に日射を避ける余地が少なく、かつ、運転時には視界の確保の要件から透過率を一定以上確保することが求められるため、光・熱の出入り、特に流入量を制御する要求が非常に強い。周知の如く、炎天下に置かれた車内は非常に高温になる。日本国内に夏期環境の測定例では、駐車の場合、車内の空気の温度が70℃近くに達する。同時に車内の内装材の温度は、インスツルメントパネル上面で100℃近く、天井は70℃近くに上昇する。こうした状況で乗車したときの不快さはいうまでもないが、換気あるいは冷房装置を作動させた後でも内装材の温度は容易に下がらず、乗員は長期に渡って輻射熱を受け続け、快適性を大きく損なっている。この温度の上昇の主原因は、日射の車内への侵入である。自動車において、建物と同様に、調光ガラスの出現が望まれている。
このような調光ガラスとして、電流・電圧の印加により可逆的に透過率の変化する調光材料を用いたエレクトロクロミック素子が知られている。エレクトロクロミック素子およびそれを用いた調光ガラスが好適と考えられるのは、次の理由による。エレクトロクロミック素子は、光・熱の透過状態を電気的に制御できるので、人の意図に沿った状態を設定でき、その一定状態である鏡状を維持するためのエネルギーを必要としない。
酸化タングステンを始めとして、これまで知られている殆どのエレクトロクロミック調光素子は、該素子を構成する調光材料で光を吸収することによって調光を行うことを原理としている。すなわち、調光材料が光を吸収することにより、光の形態をとった熱の室内への進入を抑制できる。しかしながら、光を吸収することにより熱を持った調光材料は、その熱を室内に放出するため、省エネルギー効果が低くなってしまうという欠点を持っている。これをなくすためには、光の吸収により調光を行うのではなく、光の反射によって調光を行う必要がある。つまり、鏡の状態と透明な状態が可逆的に変化する調光材料と、それを用いた全固体のエレクトロクロミック素子が望まれている。
たとえば、特許文献1には、イットリウムやランタンなどの希土類水素化物とマグネシウムとの層と、透明でプロトン伝導性のある材料、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化タンタルなどの酸化物や、フッ化マグネシウム、フッ化鉛などのフッ化物の層よりなる反射調光材料が記載されている。この材料に、さらに無水のプロトン導電性固体電解質、プロトン蓄積層、透明な導電性皮膜(以上は全て固体)を組み合わせてなる素子と、その素子が2枚のあわせガラス板に挟まれたガラスも開示されている。イットリウムやランタンなどの希土類水素化物とマグネシウムの層と、透明でプロトン伝導性のある材料、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化タンタルなどの酸化物や、フッ化マグネシウム、フッ化鉛などのフッ化物の層は、PVD法(真空蒸着法、スパッタリング法)により連続的に形成される。
たとえば特許文献2には、反射調光材料として、MgNix(0.1<x<0.3)で示されるマグネシウム・ニッケルを用いた光スイッチ素子が提案されている。反射調光材料と触媒層、固体電解質層、プロトン蓄積層、透明導電膜層より構成されている。本素子は、透明導電膜層とマグネシウムとニッケル層に外部から通電するための配線接続部を有している。鏡状から透明に変化させる場合、プロトン蓄積層からプロトンを、マグネシウムとニッケル層に接続された外部配線から電子をマグネシウムとニッケル層に供給する。
上記の2つの技術以外に、反射調光素子に用いることができる材料として次のものが知られている。これらの材料を用いて、他の材料を固形のものとした全固体の反射調光素子の作製がありえる。
例えば、非特許文献1には、水素の吸蔵と放出により透明と鏡状の変化が起きるイットリウムやランタンなどの希土類の水素化物が記載されている。この材料も、酸素や水分により酸化や劣化をしやすいので、水や酸素の浸入を抑制し、水素を透過しうる触媒層の被覆が必須である。
さらに、特許文献3には、マグネシウム・ニッケルが記載されている。この材料もやはり、水や酸素の浸入を抑制し、水素を透過しうる触媒層の被覆が必要である。
以上の従来技術の特徴をまとめてみると、以下の通りである。
反射調光特性を有する材料としては、イットリウムやランタンなどの希土類金属の水素化物(特許文献1)、希土類金属とマグネシウムの水素化物(特許文献1)、およびマグネシウム・ニッケルの水素化物など(特許文献1と2)が知られている。
これらの材料はいずれもプロトンの取り込み速度が速いわけではないので、プロトンの出入口となる触媒層を設けることが一般的である。触媒層としては、既に述べたように、パラジウム層(非特許文献1、特許文献2,3)、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化タンタルなどの酸化物や、フッ化マグネシウム、フッ化鉛などのフッ化物の層(特許文献1)を挙げることができる。
特開2000−204862 特開2005−274630 J.N.Huiberts,R.Griessen,J.H.Rector,R.J.Wijngaarden,J.P.Dekker,D.G.de Groot,N.J.Koeman,Nature,380,231(1996) US6647166号明細書
本発明者らは、反射調光材料としてマグネシウム・ニッケル系合金を、鏡状と透明とのスイッチング性からみて触媒層としてパラジウムを好適と考え、これらを用いた反射調光素子の全固体化とそれを用いたガラスの検討を行った。
いずれの材料も、真空雰囲気での形成法、真空蒸着法、スパッタリング法またはイオンプレーティング法で形成を行った。透明導電膜層を設けたガラス基板上にプロトン蓄積層として酸化タングステン層を水素存在下で形成し、次に固体電解質層として酸化タンタル層を形成した。その後、触媒層とマグネシウム・ニッケル系合金層を連続的に形成し、全固体反射調光組成を形成した。
該素子は、駆動のために通電する必要がある。通電に必要な外部配線は、透明導電膜層とマグネシウム・ニッケル系合金層に接続した。この素子は、マグネシウム・ニッケル系合金層に接続した電極近傍での鏡状態から透明状態に変化する時間は短いが、電極から離れるにしたがって変化に要する時間が長くなる、という問題点があり、広い面積に適用することが困難であった。そのため、広い面積においても適用できる素子の開発が望まれていた。
前記の現象は、マグネシウム・ニッケル系合金層に供給される電子の移動速度が、プロトンの拡散速度よりも遅いために発生している。本発明者らは、鋭意検討の結果、マグネシウム・ニッケル系合金層の表面であって、触媒層と接していない側が酸化されていることが原因であることを見出した。
マグネシウム・ニッケル系合金層のマグネシウムは、空気中の酸素と容易に反応して酸化物を形成する。得られた酸化物は、反射調光機能を示さない。この酸化物層は、極めて薄い膜であるが、絶縁体であり、マグネシウム・ニッケル系合金層と電極との間の通電の妨げとなる。また、マグネシウム・ニッケル系合金層の内部の電子の移動の妨げにもなっている。これは、広い面積の反射調光素子の応答性を低下させる原因の一つである。さらに、マグネシウム酸化物層は、水分や二酸化炭素を吸収し、マグネシウム・ニッケル系合金層の内部の酸化・劣化の原因となりうる。
この点について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明者らが検討に用いた反射調光エレクトロクロミック素子の一例を示す模式図である。図1Aにおいて、反射調光エレクトロクロミック素子10は、マグネシウム・ニッケル系合金層6、触媒層5、プロトン導電性電解質層4、プロトン蓄積層3、透明導電膜層2および基板1の順に形成される。電源15は、一端は電極7aを介してマグネシウム・ニッケル系合金層6に、他端は電極7bを介して透明導電膜層2にそれぞれ接続されている。ここで、マグネシウム・ニッケル系合金層6の触媒層5に接していない面6Aが酸化されている。特に、電極7aは、酸化マグネシウム層(図1B)を介してマグネシウム・ニッケル系合金層6と接続している。
したがって、電極とマグネシウム・ニッケル系合金層との間の電気伝導性を改良するためには、電極を直接マグネシウム・ニッケル系合金層と接続することが必要である。さらに、マグネシウム・ニッケル系合金層の表面を酸化防止層で形成することにより、該層の表層および表層を含む内部の酸化を防止することが可能である。マグネシウム・ニッケル系合金層は極めて薄層、例えば100nm程度まで、であり、マグネシウム・ニッケル系合金中のマグネシウムの酸化が防止されることにより、該層中の電気伝導性を損なうことがなく、良好な電気伝導性を確保することが可能となる。
したがって、本発明は、広い面積であっても応答性に優れ、かつ、耐久性の改良された反射調光エレクトロクロミック素子、その製造方法およびそれを用いた部材を提供することを目的とする。
本発明は、透明導電膜層、プロトン蓄積層、プロトン導電性電解質層、触媒層およびマグネシウム・ニッケル系合金層の各層がこの順序で積層されてなり、前記マグネシウム・ニッケル系合金層の少なくとも一部に、直接的に形成された素子外から通電するための電極を備えることを特徴とする反射調光エレクトロクロミック素子、に関する。
さらに、本発明は、透明導電膜層、プロトン蓄積層、プロトン導電性電解質層、触媒層、マグネシウム・ニッケル系合金層および電極の各層をこの順序で積層する際に、前記マグネシウム・ニッケル系合金層および電極を、減圧された雰囲気下で形成することを特徴とする反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法、に関する。
本発明は、また、透明導電膜層、プロトン蓄積層、プロトン導電性電解質層、触媒層およびマグネシウム・ニッケル系合金層の各層をこの順序で積層し、前記触媒層と接しない前記マグネシウム・ニッケル系合金層の表面に、素子外から通電するための電極と酸化防止層を直接的に形成する際に、前記マグネシウム・ニッケル系合金層、前記電極および前記酸化防止層を、減圧された雰囲気下で形成することを特徴とする反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法、に関する。
本発明の反射調光エレクトロクロミック素子によると、マグネシウム・ニッケル系合金層中のマグネシウムの酸化が防止されているので、電極との間の電気伝導性に優れ、かつ、該層内部の電子移動性に優れ、鏡状から透明への応答速度が速いという調光性に優れる。さらに、酸化マグネシウムが存在しないので、酸化による該層の劣化が抑制される。
本発明の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法によると、製造工程中にマグネシウム・ニッケル系合金層中のマグネシウムの酸化を防止できる。
(反射調光エレクトロクロミック素子:実施の形態1)
本発明の反射調光エレクトロクロミック素子は、透明導電膜層、プロトン蓄積層、プロトン導電性電解質層、触媒層およびマグネシウム・ニッケル系合金層の各層がこの順序で積層されてなり、さらに前記マグネシウム・ニッケル系合金層の前記触媒層に接していない面に、素子外から通電するための電極が直接的に形成されてなることを特徴とする。
本明細書において、「直接的に形成する」とは、マグネシウムなどの金属の酸化物層を介することなく、形成または積層することをいう。かかる酸化物層が存在すると、両層の間の通電の妨げとなるからである。酸化物の存在は、EDX(エネルギー分散型蛍光X線分析装置)法などの分析法によって確認することができる。
本発明の反射調光エレクトロクロミック素子について、図面に基づいて説明する。
図2は、本発明の反射調光エレクトロクロミック素子の一例を示す模式図である。図2において、反射調光エレクトロクロミック素子10は、電極7a、マグネシウム・ニッケル系合金層6、触媒層5、プロトン導電性電解質層4、プロトン蓄積層3、透明導電膜層2および基板1の順序で積層されている。この場合、電極7aは、透明導電性材料製であって、マグネシウム・ニッケル系合金層6に直接的に形成され、かつ、その全体を被覆している。
その際、必要により、透明導電膜層2のプロトン蓄積層3が形成された面の一部を、シーリング層8bおよび電極7bの設置用に残す。さらに、該素子10の側面は、端部から水や酸素の浸入を防ぐためのシーリング層8で被覆されることが好ましい。
電源15からの外部配線の一端を電極7aに、一方、他端を電極7bに接続する。
本発明の実施の形態1で用いられる電極は、酸化防止層の機能も兼ね備えれば、特に制限はされることはない。電極が酸化防止層を兼ねる場合には、電極は透明導電性材料からなり、具体的には、酸化亜鉛、インジウム錫酸化物、酸化錫、またはフッ素ドープ酸化錫を用いることが好ましい。
この層の厚みは、電極であるとともに、マグネシウム・ニッケル系合金層の酸化を防止することができれば、特に制限されることはないが、通常、20nm〜200nmの範囲にある。電極の可視光線透過率は、通常、40%以上である。この実施の形態1では、電極は透明導電膜層の態様を取りえる。
実施の形態1で用いられるマグネシウム・ニッケル系合金層は、水素を吸蔵することにより透明に、逆に水素を放出することにより鏡状に変化する反射調光機能を備える材料である。この層は、マグネシウムとニッケルの比率(質量)を、マグネシウム1に対し、ニッケルを0.1〜0.3の範囲にすることが望ましい。これは、マグネシウム・ニッケル系合金層が水素を吸蔵して透明になったときに、透過率が高くなる範囲である。前記の範囲を外れる場合には、水素吸蔵時の透過率が低下するために好ましくない。
マグネシウム・ニッケル系合金層の厚みは、通常、20〜200nmの範囲にある。20nm未満であると、鏡状のときの反射率が低く、一方、200nmを超えると、透明時の透過率が低く、ガラス用途としては望ましくないからである。
マグネシウム・ニッケル系合金層は、例えば、スパタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相蒸着法(CVD)、メッキ法を採用できる。具体的には、真空蒸着法、イオンプレーティング法またはスパタリング法が好ましい。
実施の形態1で用いられる触媒層は、プロトンをマグネシウム・ニッケル系合金層6に供給し、マグネシウム・ニッケル系合金層から放出する機能を有する。触媒層の成分としては、通常、パラジウム、パラジウム−金合金が水素の透過能力が高いことから好ましい。触媒層の厚みは、通常、0.5〜10nmの範囲にある。0.5nm未満ではその触媒としての機能を十分に発揮することができず、逆に、10nmを超えても、その機能の向上は見られないからである。
触媒層は、例えば、スパタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相蒸着法(CVD)、メッキ法を採用できる。具体的には、真空蒸着法、イオンプレーティング法またはスパタリング法が好ましい。
実施の形態1で用いられるプロトン導電性電解質層4は、液体、固体などの種々の材料が存在するが、長期に渡って安定して使用できることを考慮すると、固形の物であることが望ましい。固形物としては、有機物、無機物、或いは両者の混合物を採用し得る。また、プロトン電解質としては、無水であることが必要である。水分の存在は、マグネシウム・ニッケル系合金層の酸化・劣化の要因となりうるからである。具体例としては、酸化タンタル、酸化ジルコニウムなどを挙げることができる。その他に、スルホン化ポリエーテルケトンからなるポリマーを用いることもできる。
実施の形態1で用いられるプロトン蓄積層3は、マグネシウム・ニッケル系合金層の透明と鏡状との切り替えに必要なプロトンの貯蔵を行う。具体例としては、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化バナジウムなどを挙げることができる。このうち、酸化タングステンが特に好適である。プロトン蓄積層の厚みは、通常、500〜1,000nmの範囲にある。
実施の形態1で用いられる透明導電膜層2は、導電性材料から構成され、電圧を反射調光エレクトロクロミック素子に印加し、反射率を制御するために用いられる。透明導電膜の材料は、公知の材料を用いることができる。たとえば、インジウム−錫酸化物、アンチモン−錫酸化物または酸化亜鉛である。有機系高分子材料の適用も可能である。透明導電膜層の表面抵抗は、エレクトロクロミック素子の応答性に関与し、その値が低いことが望ましく、50Ω/□以下が好適である。また、透明導電膜層を基板に形成したものは、可視光透過率が高いほどよく、できれば70%以上であることが望ましい。
実施の形態1で用いられる基板1は、反射調光エレクトロクロミック素子を構成する部材を形成するための土台としての機能を有するとともに、水や酸素の浸入を抑制する障壁として機能を有することが好ましい。基板1用の材料には、ガラスまたは樹脂フィルムやシートが好ましい。樹脂のフィルムやシートの場合、マグネシウム・ニッケル系合金層の形成を減圧条件下で実施するので、アウトガスの少ないものが減圧を維持する点で好ましい。樹脂フィルムやシートとして特に好適なものとしては、価格や透明性、耐熱性などの観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、アクリルなどを挙げることができる。基板に関しては、更に望ましくは、エレクトロクロミック素子を形成する側にあらかじめ透明導電膜層を付加したものが、作業工程の面から見て簡便にできるので望ましい。
実施の形態1で用いられるシーリング層8は、有機材料の封止材、例えば、エポキシ樹脂が好適である。また、当該部へはディスペンサにて供給する。
本発明の反射調光エレクトロクロミック素子は、マグネシウム・ニッケル系合金層と電極とが直接的に形成されており、さらに、該電極が該マグネシウム・ニッケル系合金層を被覆しているので、電気伝導性に優れ、鏡状から透明への応答速度が速いという効果を奏する。
(実施の形態1の製造方法)
本発明の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法は、透明導電膜層、プロトン蓄積層、プロトン導電性電解質層、触媒層、マグネシウム・ニッケル系合金層および電極の各層をこの順序で積層する際に、前記マグネシウム・ニッケル系合金層および電極を、減圧された雰囲気下で形成することを特徴とする。
ここで、「減圧された雰囲気」とは、上記層を形成する際に、真空蒸着などの公知の方法で形成できる程度に減圧され、マグネシウム・ニッケル系合金層が酸化しない程度の雰囲気であれば特に制限はされない。
たとえば、電極、マグネシウム・ニッケル系合金層、触媒層を形成する場合にはアルゴンガス雰囲気(電極の場合には酸素を含む)で実施し、これらの層を形成する際の減圧度は、たとえば、0.2〜0.5Paの条件で行い、触媒層の形成時は、0.4Pa、マグネシウム・ニッケル系合金層の形成時は、0.2Paが好ましい。
このような方法を採用することにより、形成中にマグネシウムなどの金属の酸化を防止することができる。
さらに、酸化を防止するためには、マグネシウム・ニッケル系合金層が電極で被覆されるまで、空気などの酸素を含むガスを接触しないように、連続的に操作を進める必要がある。
本発明の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法について、図2に基づいて説明する。各層を積層する方法は、この分野で公知の方法を採用できる。
基板1は、インジウム−錫酸化物からなる透明導電膜層2があらかじめ形成されたPET製のものを用いる。
以下、電極7aの形成までの方法は、特に断りがない限り、真空装置を用い減圧状態で行う。基板1を真空装置内にセットする。金属タングステンをターゲットとし、減圧下、アルゴンと酸素との雰囲気中で反応性DCスパッタリングを行って、該透明導電膜層2の上に酸化タングステン膜を形成する。
形成後、減圧雰囲気から基板を取り出し、酸化タングステン層を1規定の硫酸溶液中でプロトン化処理を行ってプロトン蓄積層3とする。
次に、金属タンタルをターゲットとし、減圧下、アルゴン、酸素および水素の雰囲気下で反応性DCスパッタリングし、酸化タンタル薄膜を前記プロトン蓄積層の上に蒸着して固体のプロトン導電性電解質層4を形成する。
次に、パラジウムからなる触媒層5、MgNiからなるマグネシウム・ニッケル系合金層6およびインジウム−錫酸化物からなる透明導電性の電極7aの形成を、この順序で連続的にそれぞれスパッタリングによって行う。
基板上に、透明導電膜層、プロトン蓄積層、プロトン導電性電解質層、触媒層、マグネシウム・ニッケル系合金層、電極の順序(正順序)で行ってもよいし、逆の順序で形成してもよい。ただし、逆の順序で行う場合には、正順序の場合の条件の他に、マグネシウム・ニッケル系合金層と触媒層との間を、空気などの酸素と接触しないように、連続的に行うことが必要である。
必要によって、該素子10の側面は、端部から水や酸素の浸入を防ぐためのシーリング層8で被覆されることが好ましい。
次に、電源15との外部配線の一端を電極7aに、他端を電極7bに、銀ペーストなど公知の材料を用いて取り付ける。
上記の方法によって、本発明の反射調光エレクトロクロミック素子が得られる。
(反射調光エレクトロクロミック素子:実施の形態2)
本発明の反射調光エレクトロクロミック素子は、透明導電膜層、プロトン蓄積層、プロトン導電性電解質層、触媒層およびマグネシウム・ニッケル系合金層の各層がこの順序で積層されてなり、前記マグネシウム・ニッケル系合金層の前記触媒層に接していない面に、素子外から通電するための電極と酸化防止層がそれぞれ直接的に形成されてなることを特徴とする。
図3は、本発明の反射調光エレクトロクロミック素子の一例を示す模式図である。
図3において、反射調光エレクトロクロミック素子10は、マグネシウム・ニッケル系合金層6、触媒層5、プロトン導電性電解質層4、プロトン蓄積層3、透明導電膜層2および基板1の順に形成される。なお、マグネシウム・ニッケル系合金層6の上には、電極7aと酸化防止層11がそれぞれ形成されている。
さらに、該素子10の側面は、端部から水や酸素の浸入を防ぐためのシーリング層8で被覆されることが好ましい。
電源15からの外部配線の一端を電極7aに接続し、一方、他端を、あらかじめ確保しておいた透明導電膜層2の右側の一部に電極7bを介して接続する。
実施の形態2では、電極7aは、銅、銀、ニッケル、タングステンなどの金属、酸化亜鉛、インジウム錫酸化物、酸化錫、またはフッ素ドープ酸化錫を用いることが望ましい。金属を用いることにより、より大容量の電力を供給することが可能となる。電極7bは、透明導電性材料からなり、具体的には、酸化亜鉛、インジウム錫酸化物、酸化錫、またはフッ素ドープ酸化錫を用いることが望ましい。
実施の形態2で用いられる酸化防止層は、マグネシウム・ニッケル系合金層の酸化を防止する機能を備えれば、特に制限はされることはない。酸化防止層の材質としては、フッ化マグネシウム、フッ化カリウム、フッ化セリウム、フッ化バリウム、樹脂、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどを挙げることができる。樹脂としては、さらにオレフィン系樹脂が好ましい。一酸化ケイ素、二酸化ケイ素または酸化アルミニウムを用いる場合には、酸化物をそのまま材料として用いることはできないので、金属状態で層を形成した後、空気と接触させることによって表層を酸化物とする。
実施の形態2で用いられる酸化防止層は、例えば、スパタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相蒸着法(CVD)、メッキ法を採用できる。具体的には、真空蒸着法、イオンプレーティング法またはスパタリング法が好ましい。
この層の厚みは、マグネシウム・ニッケル系合金層の酸化を防止することができれば、特に制限されることはないが、通常、20nm〜200nmの範囲にある。酸化防止層の可視光線透過率は、通常、40%以上である。
実施の形態2で用いられる透明導電膜層などのその他の層は、実施の形態1と同じ部材または材料を用いることができる。
(実施の形態2の製造方法)
本発明の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法は、基板の上に、透明導電膜層、プロトン蓄積層、プロトン導電性電解質層、触媒層およびマグネシウム・ニッケル系合金層の各層をこの順序で積層し、前記マグネシウム・ニッケル系合金層の前記触媒層に接していない面に、素子外から通電するための電極と酸化防止層を直接的に形成する際に、前記マグネシウム・ニッケル系合金層、前記酸化防止層および前記電極を、減圧された雰囲気下で形成することを特徴とする。
各層を積層する方法は、この分野で公知の方法を採用できる。形成の際に、雰囲気を減圧にする。特に、マグネシウム・ニッケル系合金層、マグネシウム・ニッケル系合金層と接する電極および酸化防止層を形成する際には、減圧された雰囲気下で形成することが必須である。このような条件下で形成することによって、マグネシウムの酸化を防止することが可能となるからである。さらに、酸化を防止するためには、マグネシウム・ニッケル系合金層が酸化防止層などで被覆されるまで、空気などの酸素を含むガスを接触しないように、連続的に操作を進める必要がある。
本発明の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法について、図3に基づいて説明する。
基板1は、インジウム−錫酸化物からなる透明導電膜層2があらかじめ形成されたPET製のものを用いる。
以下、電極までの方法は、特に断りがない限り、真空装置を用い減圧状態で行う。
プロトン蓄積層3、プロトン導電性電解質層4は、上記実施の形態1の記載と同じ方法で作製することができる。
パラジウムからなる触媒層5を、スパッタリングによってプロトン導電性電解質層4上に形成する。
MgNiからなるマグネシウム・ニッケル系合金層6をスパッタリングによって形成後、連続的に、減圧下でインジウム−錫酸化物からなる電極7aと酸化防止層11を、それぞれ該マグネシウム・ニッケル系合金層6の上に形成する。酸化防止層11と電極7aの形成の際に、それぞれが重ならないようにマスキングを行う。すなわち、酸化防止層11を最初に形成する際には、電極7aの部分を第1のマスキングした後に、酸化防止層11を形成し、その後第1のマスキングを外す。次に、酸化防止層11の上を第2のマスキングした後に、電極7aを形成し、その後第2のマスキングを外す。
この場合、マスキングは、印刷マスクなどの公知の方法を採用する。
基板上に、透明導電膜層、プロトン蓄積層、プロトン導電性電解質層、触媒層、マグネシウム・ニッケル系合金層、酸化防止層又は電極の順序(正順序)で行ってもよいし、逆の順序で形成してもよい。ただし、逆の順序で行う場合には、正順序の場合の条件の他に、マグネシウム・ニッケル系合金層と触媒層との間を、空気などの酸素と接触しないように、連続的に行うことが必要である。もちろん、マグネシウム・ニッケル系合金層と酸化防止層の形成の順序は特に限定されない。
さらに、該素子10の側面は、端部から水や酸素の浸入を防ぐためのシーリング層8で被覆されることが好ましい。
電源15からの外部配線の一端を電極7aに、一方、他端を電極7bに接続する。
上記の方法によって、本発明の反射調光エレクトロクロミック素子が得られる。
(反射調光エレクトロクロミック素子:実施の形態3)
本発明の反射調光エレクトロクロミック素子は、透明導電膜層、プロトン蓄積層、プロトン導電性電解質層および触媒層の各層がこの順序で積層されてなり、前記触媒層の前記プロトン導電性電解質層に接していない面の一部に、絶縁層及び素子外から通電するための電極が積層されてなり、前記触媒層の残部にマグネシウム・ニッケル系合金層が直接的に形成されてなり、さらに前記マグネシウム・ニッケル系合金層の前記触媒層が接していない面および前記電極の前記絶縁層が接していない面の残部の少なくとも一部に、酸化防止層が直接的に形成されてなることを特徴とする。
本発明の反射調光エレクトロクロミック素子について、図面に基づいて説明する。
図4は、本発明の反射調光エレクトロクロミック素子の一例を示す模式図である。図4において、反射調光エレクトロクロミック素子10は、触媒層5、プロトン導電性電解質層4、プロトン蓄積層3、透明導電膜層2および基板1の順序で積層されている。
触媒層5のプロトン導電性電解質層4の形成されていない面の一部に絶縁層9が、該触媒層5の残部にマグネシウム・ニッケル系合金層6が形成されている。
実施の形態3で用いられる絶縁層は、触媒化学気相成長法で形成する窒化シリコン層または、スパッタリング法またはイオンプレーティング法で形成する窒化アルミニウム層が好ましい。
絶縁層9の触媒層5に接していない面に電極7aが形成されている。
電極7aの絶縁層9に接していない面の一部とマグネシウム・ニッケル系合金層6の触媒層5に接していない面に酸化防止層11が形成されている。
該素子10の側面に、端部から水や酸素の浸入を防ぐためのシーリング層8a、8bを設けることが好ましい。
電源15からの外部配線の一端を、電極7aに接続し、一方、他端を、あらかじめ確保しておいた透明導電膜層2の右側の一部に電極7bを介して接続する。
実施の形態3では、電極7aは、透明導電性材料からなり、銅、銀、ニッケル、タングステンなどの金属、酸化亜鉛、インジウム錫酸化物、酸化錫、またはフッ素ドープ酸化錫を用いることが望ましい。金属を用いることにより、より大容量の電力を供給することが可能となる。電極7bは、透明導電性材料からなり、酸化亜鉛、インジウム錫酸化物、酸化錫、またはフッ素ドープ酸化錫を用いることが望ましい。
実施の形態3で用いられる透明導電膜層などの層は、実施の形態2と同じ部材または材料を用いることができる。
また、別の形態として、絶縁層9は、触媒層5ではなくて、プロトン導電性電解質層4の上の一部に積層し、さらに該絶縁層9の上に電極7aを積層し、該プロトン導電性電解質層4の上の残部に触媒層5、マグネシウム・ニッケル系合金層6を、その上に酸化防止層11を積層してもよい。この場合、触媒層5が電極7aと短絡しないように設計する必要がある。
(実施の形態3の製造方法)
本発明の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法は、透明導電膜層、プロトン蓄積層、プロトン導電性電解質層および触媒層の各層をこの順序で積層し、前記触媒層の前記プロトン導電性電解質層に接していない面の一部に、絶縁層及び素子外から通電するための電極を順に積層する。他方、前記触媒層の前記プロトン導電性電解質層に接していない面の残部に、マグネシウム・ニッケル系合金層および酸化防止層を順次積層する際に、前記マグネシウム・ニッケル系合金層、および前記酸化防止層を、減圧された雰囲気下で形成することを特徴とする。
各層を積層する方法は、この分野で公知の方法を採用できる。形成の際に、雰囲気を減圧にすることが好ましい。特に、マグネシウム・ニッケル系合金層から酸化防止層を形成する際には、形成の雰囲気を減圧下で行うことが必須である。このような条件下で形成することによって、マグネシウムの酸化を防止することが可能となるからである。
本発明の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法について、図4に基づいて説明する。
基板1は、インジウム−錫酸化物からなる透明導電膜層2があらかじめ形成されたPET製のものを用いる。
以下、電極までの作製方法は、特に断りがない限り、真空装置を用い減圧状態で行う。
プロトン蓄積層3、プロトン導電性電解質層4、及び触媒層5は、上記実施の形態1の記載と同じ方法で作製することができる。その際、必要により、透明導電膜層2のプロトン蓄積層3が形成された面の右側の一部を、シーリング層8bおよび電極7bの設置用に残す。
絶縁層9の形成において、マスキングを利用する。すなわち、絶縁層9を最初に形成する際にマグネシウム・ニッケル系合金層6を積層する触媒層5の部分を第3のマスキングした後に、絶縁層9及び電極7aを順次積層し、その後、第3のマスキングを外す。次に、絶縁層9及び電極7aの上を第4のマスキングを行い、マグネシウム・ニッケル系合金層6を形成し、その後、第4のマスキングを外す。電極7aの絶縁層に接していない面の一部とマグネシウム・ニッケル系合金層の触媒層5に接していない面に、酸化防止層11を形成する。
この場合、マスキングは、印刷マスクなどの公知の方法を採用する。
製造方法は、上記と逆の順序で形成してもよい。ただし、逆の順序で行う場合には、正順序の場合の条件の他に、マグネシウム・ニッケル系合金層と触媒層との間を、空気などの酸素と接触しないように、連続的に行うことが必要である。
該素子10の両側は、端部から水や酸素の浸入を防ぐためのシーリング層8a、8bで被覆されることが好ましい。
電源15の外部配線の一端を電極7aに、一方、他端を電極7bに接続する。
上記の方法によって、本発明の反射調光エレクトロクロミック素子が得られる。
(調光部材)
本発明は、前記反射調光エレクトロクロミック素子を用いてなる調光部材に関する。かかる部材は、該素子の機能から建物部材や車両用部品などに用いることができる。
建物や自動車用ガラスに好適なエレクトロクロミック素子は、それを構成する材料の全てが酸化タングステンのような固形であることが望ましい。エレクトロクロミック素子は、その構成物の一部を液状とすることもできるが、液状物の漏出を防ぐことが必要である。建物や自動車は長期の使用を前提としており、漏出を長期に渡って防ぐことは可能であるが、コスト的に困難といえる。
(車両用部品)
本発明は、前記部材を用いてなる車両用部品に関する。かかる車両用部品は、車両における太陽光の透過率を制御するための窓ガラスやサンルーフ、外板、内装として用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
図2に記載の反射調光エレクトロクロミック素子を調製した。
基板1には透明導電膜層2であるインジウム−錫酸化物層があらかじめ形成されており、その表面抵抗が10Ω/□のものを用いた。基板1としては、厚さ1mmのガラス板を用い、これを洗浄後、真空装置の中にセットして真空排気を行った。
最初に、金属タングステンをターゲットとし、アルゴンと酸素雰囲気中で反応性DCスパッタリングして酸化タングステン層を形成した。酸化タングステン層は、厚みが1000nmとなる条件で形成した。形成後、減圧雰囲気から試料を取り出し、酸化タングステン層を1規定の硫酸水溶液中でプロトン処理を行ってプロトン蓄積層3とした。
<酸化タングステンの形成条件>
反応性DCスパッタリング法にて形成
ターゲット:タングステン
Ar:50sccm
:5sccm
tot(全圧):0.9Pa
電流制御:100mA(固定)
<酸化タングステンの水素化処理>
1Nの硫酸水溶液に浸漬して着色
印加電圧:±3V up0.05V/2sec down0.05V/5sec
次に、金属タンタルをターゲットとし、アルゴン、酸素、水素雰囲気中で反応性DCスパッタリングして、固体電解質層4である酸化タンタル薄膜の蒸着を行った。酸化タンタル薄膜の厚みは300nmであった。
<酸化タンタルの形成条件>
反応性DCスパッタリング法にて形成
ターゲット:タンタル(金属)
Ar:7sccm
:1sccm
:10sccm
tot(全圧):0.2Pa
パワー:60W
さらに、パラジウムからなる触媒層5、MgNiからなるマグネシウム・ニッケル系合金層6および電極7aの形成を、この順序で連続的にそれぞれスパッタリングを行った。電極7aとして透明導電性のインジウム−錫酸化物を、マグネシウム・ニッケル系合金層6の上に形成して反射調光エレクトロクロミック素子の試料1とした。
<パラジウムの形成条件>
DCスパッタリング法にて形成
ターゲット:パラジウム
tot(全圧):0.4Pa(アルゴンガス圧)
パワー:40W
<マグネシウム・ニッケル系合金層>
DCスパッタリング法にて形成
ターゲット:マグネシウム、ニッケル
tot(全圧):0.2Pa(アルゴンガス圧)
パワー:40W(マグネシウム)、8W(ニッケル)
<インジウム−錫酸化物層(電極)の形成条件>
直流マグネトロンスパッタリング法にて成膜
ターゲット:インジウム−錫酸化物焼結体(酸化錫5質量%)
Ar:50sccm
:5sccm
tot(全圧):0.5Pa
パワー:約2kW
触媒層5、マグネシウム・ニッケル系合金層6および電極7aのそれぞれの厚みは、4,40および150nmであった。
得られた反射調光エレクトロクロミック素子の側面にシーリング層を施し、さらに、電源からの配線を行った。
(実施例2)
実施例1において、電極7aの一部を、絶縁性のフッ化マグネシウムからなる酸化防止層11で置き換えた構成として、図3の構成の反射調光エレクトロクロミック素子の試料2とした。電極7aは、Niペーストを塗布し形成した。厚みは、100nm。
(実施例3)
実施例2において、酸化防止層11としてフッ化マグネシウムに替えて、アルミナが形成されるように金属アルミニウムをマグネシウム・ニッケル系合金層6上にスパッタリングで形成した後、大気開放して酸化させる以外は、同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料3とした。
(実施例4)
実施例2において、酸化防止層11としてフッ化マグネシウムに替えて、ポリプロピレンをマグネシウム・ニッケル系合金層の上に蒸着して形成する以外は、同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料4を得た。
(実施例5)
図4に記載の反射調光エレクトロクロミック素子を調製した。
実施例1において、固体電解質層4を形成後、触媒層5とAl・Nからなる絶縁層9とニッケルからなる電極7aを設けた後に、MgNiからなるマグネシウム・ニッケル系合金層6と透明酸化防止層11を設け、反射調光エレクトロクロミック素子の試料5を得た。
<絶縁層の成膜条件>
スパッタリング法
圧:4Pa(N+Arガス)
ターゲット:AL(アルミニウム)
(比較例1)
実施例1において、インジウム−錫酸化物層からなる電極を設けない以外は、同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料Aとした。
(鏡状から透明への変化速度の評価)
試料1〜5、およびAに配線し、電圧7.5Vで駆動させ、鏡状から透明への変化する速度を調べた。
光透過率の変化は、波長670nmの半導体レーザーとシリコンフォトダイオードを組み合わせた測定システムを用いた。半導体レーザーとシリコンフォトダイオードとの間に、試料の基板面をシリコンフォトダイオード側に、酸化防止層を半導体レーザー側として試料を設置した(図5参照)。波長670nmの透過率と反射率を10秒ごとに計測して経時変化を調べた。反射率はマグネシウム・ニッケル系合金層に近い側から測定した。
透過率が1%から50%になるまでの時間を調べた。その結果を表1に示す。
Figure 0004998773
表1から試料1〜5は、試料Aに対し、性能が大幅に向上したことが確認できた。
さらに、試料1と試料Aのマグネシウム・ニッケル系合金層について、EDXで分析を行った。その結果、試料1では、層全体が金属状態であることが、試料Aでは、酸化物の存在が確認された。
従来の反射調光エレクトロクロミック素子の一例を示す模式図である。 図1Aの○部の拡大図である。 本発明の反射調光エレクトロクロミック素子の一例を示す模式図である。 本発明の反射調光エレクトロクロミック素子の別の例を示す模式図である。 本発明の反射調光エレクトロクロミック素子のその他の例を示す模式図である。 鏡状から透明への変化速度の評価を測定するための装置と試料との配置を示す図面である。
符号の説明
1 基板、
2 透明導電膜、
3 プロトン蓄積層、
4 固体電解質層、
5 触媒層、
6 マグネシウム・ニッケル系合金層、
7 電極、
8 シーリング層、
9 絶縁層、
10 全固体反射調光素子、
11 透明酸化防止層、
12 外部配線、
15 電源、
6A マグネシウム・ニッケル系合金層の界面。

Claims (9)

  1. 透明導電膜層、プロトン蓄積層、プロトン導電性電解質層、触媒層およびマグネシウム・ニッケル系合金層の各層がこの順序で積層されてなり、
    前記マグネシウム・ニッケル系合金層の少なくとも一部に、直接的に形成された素子外から通電するための電極を備え
    前記電極が形成されてない前記マグネシウム・ニッケル系合金層の表面部分に、直接的に形成された酸化防止層を備えることを特徴とする反射調光エレクトロクロミック素子。
  2. 前記電極が形成された前記マグネシウム・ニッケル系合金層の一部は、前記触媒層に接していない面であることを特徴とする請求項1に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  3. 前記酸化防止層は、酸化亜鉛、インジウム錫酸化物、酸化錫、フッ素ドープ酸化錫、フッ化マグネシウム、フッ化カリウム、フッ化セリウム、フッ化バリウム、樹脂、一酸化ケイ素、ニ酸化ケイ素および酸化アルミニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  4. 前記電極は、透明導電性材料および金属よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  5. 前記透明導電性材料は、酸化亜鉛、インジウム錫酸化物および酸化錫フッ素ドープ酸化錫よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  6. 透明導電膜層、プロトン蓄積層、プロトン導電性電解質層、触媒層およびマグネシウム・ニッケル系合金層の各層をこの順序で積層し、前記触媒層と接しない前記マグネシウム・ニッケル系合金層の表面に、電極と酸化防止層を直接的に形成する際に、
    前記マグネシウム・ニッケル系合金層、前記電極および前記酸化防止層を、減圧された雰囲気下で形成することを特徴とする反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
  7. 前記形成は、真空蒸着、イオンプレーティングまたはスパッタリングのいずれかの方法によって行われる請求項に記載の製造方法。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の前記反射調光エレクトロクロミック素子を含むことを特徴とする調光部材。
  9. 請求項に記載の調光部材を用いてなる車両用部品。
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