JP4997800B2 - 金属酸化物膜の製造方法 - Google Patents

金属酸化物膜の製造方法

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本発明は、透明性、緻密性、密着性等に優れた金属酸化物膜を得ることが可能な金属酸化物膜の製造方法に関するものである。
従来、化合物半導体、特に金属酸化物膜は光電変換素子や表示素子の材料として広く用いられてきた。このような金属酸化物膜の多くはスパッタリング法、蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、印刷法などによって製造されてきたが、これらの手法は高価な装置が必要であったり、別途焼成工程が必要であったりする等の問題点があった。
このような問題に対して、溶液から基材上に直接金属酸化物膜を成膜するソフト溶液プロセスが提唱されている(非特許文献1)。このようなソフト溶液プロセスは、焼成や高真空状態を必要としないことから、上述した装置等の問題を解決することができるという利点を有する。さらに、金属酸化物膜形成用溶液に基材を接触させることから、複雑な構造部を有する基材であっても、上記溶液が構造部内に容易に侵入することができ、均一な金属酸化物膜が得られるという利点もある。
このようなソフト溶液プロセスの具体例としては、例えば、特許文献1に、TiO前駆体を含む溶液に過酸化水素又はアルミニウムアセチルアセトナートを添加して原料溶液を調製し、500℃程度に高温保持された基材に上記原料溶液を間歇噴霧することによりTiO前駆体をTiOに熱分解し、基材上に多孔質のTiO2薄膜を得る方法が開示している。また、例えば、特許文献2は、特許文献1と同様に熱分解スプレー法により多孔質のTiO薄膜を得る方法が開示されている。
このように、ソフト溶液プロセスは、短時間かつ簡略化された工程で金属酸化物膜を得ることができる点において有用であるが、その一方で、成膜された金属酸化物膜には、局所的に膜が形成されていない膜欠陥部が生じやすいことが指摘されている。
このような膜欠陥部は金属酸化物膜形成用溶液が基材に均一に接触しないことに起因すると考えられおり、このような問題点から、例えば、ソフト溶液プロセスにより基材上に金属酸化物膜からなる絶縁膜や耐食膜を成膜した場合には、絶縁性や耐食性に優れた金属酸化物膜を成膜することが困難であるという問題があった。
資源と素材 Vol.116 p.649−655(2000) 特開2002−145615公報 特開2003−176130公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ソフト溶液プロセスにより膜欠陥部の少ない金属酸化物膜を成膜できる金属酸化物膜の製造方法を提供することを主目的とするものである。
上記課題を解決するために本発明は、スプレー装置により、金属源として金属塩または金属錯体が溶解した金属酸化物膜形成用溶液を液滴化した後、上記金属酸化物膜形成用溶液の液滴を金属酸化物膜形成温度以上に加熱した基材に接触させることにより、上記基材上に金属酸化物膜を形成する金属酸化物膜の製造方法であって、上記基材はアースされ、かつ、上記金属酸化物膜よりも導電性が高いものであり、さらに上記液滴を帯電させた状態で上記基材に接触させることを特徴とする金属酸化物膜の製造方法を提供する。
本発明によれば、上記基材がアースされており、かつ、上記金属酸化物膜よりも導電性が高いものであり、さらに上記金属酸化物膜形成用溶液の液滴を帯電させた後に、上記基材に接触させることにより、上記基材と上記液滴とに静電的相互作用を及ぼすことができる。このような静電的相互作用により、上記液滴を上記基材と均一に接触させることができるため、上記基板上に成膜される金属酸化物膜に膜欠陥部が形成されることを防止できる。
本発明においては、上記基材が金属からなるものであることが好ましい。上記基材として導電性に優れた金属からなるものを用いることにより、上記基材と上記液滴との相互作用を増大させることができるため、膜欠陥部が形成されることをより効果的に防止できるからである。
本発明は、ソフト溶液プロセスにより膜欠陥部の少ない金属酸化物膜を形成することができるという効果を奏する。
以下、本発明の金属酸化物膜の製造方法について詳細に説明する。
本発明の金属酸化物膜の製造方法は、スプレー装置により、金属源として金属塩または金属錯体が溶解した金属酸化物膜形成用溶液を液滴化した後、上記金属酸化物膜形成用溶液の液滴を金属酸化物膜形成温度以上に加熱した基材に接触させることにより、上記基材上に金属酸化物膜を形成するものであって、上記基材はアースされ、かつ、上記金属酸化物膜よりも導電性が高いものであり、さらに上記液滴を帯電させた状態で上記基材に接触させることを特徴とするものである。
このような本発明の金属酸化物膜の製造方法について図を参照しながら説明する。図1は本発明の金属酸化物膜の製造方法の一例を説明する概略図である。図1に例示するように本発明の金属酸化物膜の製造方法は、スプレー装置1により液滴化された金属酸化物膜形成用溶液2を、例えば、負電荷を付与する方法等により負に帯電させた後に、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱された基材3とを接触させることにより(図1(a))、基材3上に金属酸化物膜4を得る方法である(図1(b))。
ここで、上記基材3はアースEがなされており、かつ、上記金属酸化物膜4よりも導電性が高いものである。
ソフト溶液プロセスによる金属酸化物膜の製造方法は、短時間かつ簡略化された工程で金属酸化物膜を得ることができる点において有用であるが、その一方で、成膜された金属酸化物膜には、局所的に膜が形成されていない膜欠陥部が生じやすいことが指摘されている。
この点、本発明によれば、上記基材がアースされており、かつ、上記金属酸化物膜よりも導電性が高いものであり、さらに上記金属酸化物膜形成用溶液の液滴を帯電させた後に、上記基材に接触させることにより、上記基材と上記液滴とに静電的相互作用を及ぼすことができる。このような静電的相互作用により、上記液滴を上記基材と均一に接触させることができるため、上記基板上に成膜される金属酸化物膜に膜欠陥部が形成されることを防止できる。
ここで、本発明の金属酸化物膜の製造方法により、金属酸化物膜に膜欠陥部が形成されることを防止できる理由について図を参照しながら説明する。図2は本発明の金属酸化物膜の製造方法により、基材上に金属酸化物膜が形成される過程を例示する概略図である。図2(a)に例示するように、本発明の金属酸化物膜の製造方法においては、アースEがなされた基材3に、スプレー装置1により液滴化された金属酸化物膜形成用溶液2を帯電させた状態で接触させることにより、金属酸化物膜を形成する方法である。
ここで、基材3はアースEがなされているため実質的には帯電していないが、帯電された金属酸化物膜形成用溶液の液滴2との関係においては、相対的に反対の電荷を帯びている場合と同様の性質を備えることになる。これにより上記金属酸化物膜形成用溶液の液滴2と基材3とに静電的な相互作用が生じることから、金属酸化物膜形成用溶液の液滴2が基材3上に均一に接触させることができるため、本発明によれば膜欠陥部の少ない金属酸化物膜を成膜することができるのである。
また、図2(b)に例示するように、仮に、金属酸化物膜4を成膜する過程において膜欠陥部Aが形成された場合であっても、本発明に用いられる基材3は、基材3上に形成される金属酸化物膜4よりも導電性が高いものであることから、金属酸化物膜形成用溶液の液滴2との関係における相対的な帯電性としては、金属酸化物膜4よりも膜欠陥部Aが形成された部位のほうが大きくなる。このため、金属酸化物膜形成用溶液の液滴2と膜欠陥部Aが形成された部位との静電的相互作用は、金属酸化物膜形成用溶液の液滴2と金属酸化物膜4との静電的相互作用よりも強くなる。このようなことから、帯電した金属酸化物膜形成溶液の液滴を膜欠陥部Aが形成された部位に集中して接触させることができるため、本発明によれば膜欠陥部の少ない金属酸化物膜を成膜することができるのである。
なお、上記図1および図2においては、上記金属酸化物膜形成用溶液の液滴を負に帯電させる例について説明したが、本発明の金属酸化物膜の製造方法はこのような方法に限定されるものではなく、上記金属酸化物膜形成用溶液の液滴を正に帯電させる態様であっても良い。また、本発明においては上記金属酸化物膜形成用溶液の液滴を正に帯電させる態様であっても上述した理由と同様の理由により、膜欠陥部の少ない金属酸化物膜を形成することができる。
以下、本発明の金属酸化物膜の製造方法について詳細に説明する。
1.金属酸化物膜形成用溶液の液滴と基材との接触方法
本発明の金属酸化物膜の製造方法は、スプレー装置により液滴化された金属酸化物膜形成用溶液を帯電させた状態で、金属酸化物膜形成用温度以上の温度まで加熱された基材に接触させることにより、金属酸化物膜を成膜するものである。以下、このような金属酸化物膜形成用溶液と基材との接触方法について説明する。
本発明における上記接触方法としては、液滴された金属酸化物膜形成用溶液を帯電させた状態で基材に接触させることができる方法であれば特に限定されない。このような方法としては、通常、金属酸化物膜形成用溶液が後述するスプレー装置により液滴化されてから、基材に接触するまでの間に、上記金属酸化物膜形成用溶液の液滴を帯電させる方法が用いられる。このような方法によれば、金属酸化物膜形成用溶液の液滴を均一に帯電させることができるからである。
本発明において上記酸化物膜形成用溶液の液滴を帯電させる電荷は、正の電荷であっても良く、または、負の電荷であっても良い。
本発明において、金属酸化物膜形成用溶液の液滴を帯電させる方法としては、上記液滴を正または負に所望の程度帯電させることができる方法であれば特に限定されない。なかでも本発明においては、上記液滴に直接的に電荷を付与する方法が好ましく用いられる。本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、金属源として金属塩または金属錯体を含むことから導電性が高く帯電しにくいものであるため、所望の帯電量を実現するには直接的に電荷を付与することが望ましいからである。
また、上記液滴に電荷を直接的付与する方法としては、通常、マイナスイオンまたはプラスイオンを上記金属酸化物膜形成用溶液の液滴に接触させる方法が用いられる。このような方法で上記金属酸化物膜形成用溶液を帯電させる場合、その印加電圧としては、本発明に用いる基材、および、成膜される金属酸化物膜の導電性等に応じて適宜調整すれば良い。なかでも本発明においては、1kV〜100kVの範囲内が好ましく、さらには5kV〜70kVの範囲内が好ましく、特に10kV〜60kVの範囲内であることが好ましい。
上記金属酸化物膜形成用溶液の液滴と、金属酸化物膜形成温度以上に加熱された基材とを接触させる方法としては、帯電した金属酸化物膜形成用溶液の液滴を金属酸化物膜形成温度以上に加熱された基材に均一に接触させることができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することより液滴化し、これを帯電させた後に基材と接触させる方法(第1の方法)、帯電された金属酸化物膜形成用溶液の液滴をミスト状にした空間の中に基材を通過させる方法(第2の方法)が挙げられる。
上記第1の方法における金属酸化物膜形成用溶液の液滴の径としては、特に限定されるものではないが小さいほど好ましい。具体的には、0.01μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。液滴の径が上記範囲内にあれば、液滴が基材に接触する際に、基材温度が低下せず、均一な金属酸化物膜を得ることができるからである。
また、上記第1の方法における金属酸化物膜形成用溶液の液滴の吐出量としては、特に限定されるものではないが、具体的には、0.001リットル/min〜1リットル/minの範囲内、なかでも0.001リットル/min〜0.05リットル/minの範囲内、特に0.01リットル/min〜0.05リットル/minの範囲内であることが好ましい。上記範囲を超える場合は、基材温度の低下を引き起こす可能性があり、上記範囲に満たない場合は、金属酸化物膜の成膜に時間がかかり、コスト上好ましくないからである。
上記第1の方法において帯電された金属酸化物膜形成用溶液の液滴と、基材とを接触させる態様としては、所望の金属酸化物膜を形成することができる態様であれば特に限定されるものではないが、例えば、固定された基材と接触させる態様、および、移動する基材と接触させる態様等を挙げることができる。
上記固定された基材と接触させる態様としては、例えば、図3に示すように、スプレー装置1を用いて金属酸化物膜形成用溶液2を噴霧することにより液滴化し、これに電荷を付与した後に、固定された金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱し基材3と接触させる方法等が挙げられる。
また、上記移動する基材と接触させる方法としては、例えば、図4に示すように、基材3を、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱したローラー5〜7を用いて、連続的に移動させながら加熱し、この基材3に、スプレー装置1で噴霧することにより液滴化した後、電荷を付与した金属酸化物膜形成用溶液2を接触させる方法等が挙げられる。この方法は、連続的に金属酸化物膜を形成することができるという利点を有する。
上記第1の方法において用いられる基材の形状としては、スプレー装置による噴霧ができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、板状、筒状の基材を用いることができる。上記筒状の基材を用いた場合、スプレー装置が筒の内部に入り込むことができれば、筒の内面に金属酸化物膜を形成することができる。
一方、上記第2の方法における金属酸化物膜形成用溶液の液滴の径としては、特に限定されるものではないが0.01μm〜300μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。液滴の径が上記範囲内にあれば、基材温度の低下を抑制することができ、均一な金属酸化物膜を得ることができるからである。
上記第2の方法において帯電された金属酸化物膜形成用溶液の液滴と基材とを接触させる方法は、特に限定されるものではないが、例えば、図5に示すように、スプレー装置により液滴化され、帯電された金属酸化物膜形成用溶液2をミスト状にした空間に、基材3を金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱しながら通過させる方法等を挙げることができる。
本発明は、上記金属酸化物膜形成用溶液の液滴と加熱された基材とを接触させるものであるため、金属酸化物膜の成膜に際して、基材は「金属酸化物膜形成温度」以上の温度まで加熱される。このような「金属酸化物膜形成温度」は、後述する金属酸化物膜形成用溶液の組成によって異なるものであるが、金属酸化物膜形成用溶液に酸化剤および/または還元剤を加えない場合、通常400℃〜1000℃の範囲内とすることができ、なかでも、450℃〜700℃の範囲内であることが好ましい。一方、金属酸化物膜形成用溶液に酸化剤および/または還元剤を加える場合、通常150℃〜400℃の範囲内とすることができ、なかでも、200℃〜400℃の範囲内であることが好ましい。
特に、本発明において、基材上にITO膜を形成する場合は、300℃〜500℃の範囲内、なかでも、350℃〜450℃の範囲内であることが好ましい。また、基材上にアルミナを形成する場合は、400℃〜600℃の範囲内、なかでも、450℃〜550℃の範囲内であることが好ましい。また、基材上にガドリニウムドーピングセリアを形成する場合は、300〜600℃の範囲内、なかでも、350〜500℃の範囲内であることが好ましい。
ここで、本発明における「金属酸化物膜形成温度」とは、金属源に含まれる金属元素が酸素と結合し、基材上に金属酸化物膜を形成することが可能な温度をいい、後述する金属酸化物膜形成用溶液の組成によって大きく異なるものである。本発明において、このような「金属酸化物膜形成温度」は、以下の方法により測定することができる。すなわち、実際に所望の金属源を含有する金属酸化物膜形成用溶液を用意し、基材の加熱温度を変化させて接触させることにより、金属酸化物膜を形成することができる最低の基材加熱温度を測定する。この最低の基材加熱温度を本発明における「金属酸化物膜形成温度」とすることができる。この際、金属酸化物膜が形成したか否かは、通常、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)より得られた結果から判断し、結晶性のないアモルファス膜の場合は、光電子分光分析装置(V.G.Scientific社製、ESCALAB 200i−XL)より得られた結果から判断するものとする。
また、本発明において、基材を加熱する手順としては、基材を所望の温度まで加熱することができる手順であれば特に限定されるものではないが、例えば、帯電した金属酸化物膜形成用溶液の液滴と基材とを接触させながら基材を加熱する方法、または帯電した金属酸化物膜形成用溶液の液滴と基材とを接触させる前に、予め基材を加熱する方法等を挙げることができ、なかでも本発明においては前者の方法が好ましい。基材の温度を安定して保持することができるからである。
本発明に用いられる基材の加熱方法としては、基材を上記「金属酸化物膜形成温度」以上に加熱できる方法であれば特に限定されない。このような方法としては、基材を金属酸化物膜が形成される成膜面側から加熱する表面加熱方法、基材を上記成膜面とは反対面側から加熱する裏面加熱方法、および、基材を上記成膜面とその反対面との両面から加熱する両面加熱方法を挙げることができる。本発明においては上記表面加熱方法、裏面加熱方法、および、両面加熱方法のいずれであっても好適に用いることができる。
ここで、上記表面加熱方法は、基材の厚みが大きい場合や、基材の形態が平面ではなく、凹凸形状を有するものであったり、メッシュ状等の形態を有するものである場合であっても、基材の成膜面を容易に金属酸化物膜形成温度以上に加熱できるという利点を有する。
また、上記裏面加熱方法は、実施が容易であるという利点を有する。
さらに、上記両側加熱方法は、基材の両側の熱膨張率の差を低減することができるため、加熱時の基材の変形を防止することができるという利点を有する。
本発明において、上記基材を加熱する加熱方式としては、基材の温度を上記「金属酸化物膜形成温度」以上に到達させることができる方式であれば特に限定されるものではない。このような加熱方式としては、対流加熱方式、伝導加熱方式、および、輻射加熱方式を挙げることができるが、本発明においてはいずれの加熱方式であっても好適に用いることができる。
ここで、上記対流加熱方式とは、空気やガスまたは液体等を媒体とし、これらの媒体を加熱して基材に接触させることにより基材を加熱する方式である。
また、上記伝導加熱方式とは、媒体を介さずに熱源を直接基材に接触させ、上記熱源からの熱伝導により基材を加熱する方式である。
さらに、上記輻射加熱方式とは、分子振動を誘起する電磁波を基材に照射することにより加熱する方式である。
2.基材
次に、本発明の金属酸化物膜の製造方法に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材は、アースされたものであり、かつ、基材上に成膜される金属酸化物膜よりも導電性が高いものである。なお、本発明における導電性は体積抵抗値を基準とするものである。したがって、本発明に用いられる基材が、上記金属酸化物膜よりも「導電性が高い」とは、基材の体積抵抗値が上記金属酸化物膜のそれよりも小さいことを意味するものである。
以下、このような基材について詳細に説明する。
本発明に用いられる基材としては、基材上に成膜される金属酸化物膜よりも導電性が高いものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては基材の体積抵抗値と、上記金属酸化物膜の体積抵抗値との差が、10Ω・cm〜1021Ω・cmの範囲内であることが好ましく、なかでも10Ω・cm〜1021Ω・cmの範囲内であることが好ましく、特に10Ω・cm〜1021Ω・cmの範囲内であることが好ましい。ここで、本発明における上記体積抵抗値は、例えば、抵抗率計により測定することができる。より具体的には、体積抵抗値が、10−6Ω・cm〜10Ω・cmの範囲であれば低抵抗率計ロレスタEP(MCP-T360、株式会社ダイヤインスツルメンツ製)、10Ω・cm〜1015Ω・cmの範囲であれば高抵抗率計ハイレスタUP(MCP-HT450、株式会社ダイヤインスツルメンツ製)でそれぞれ測定することができる。
また、本発明に用いられる基材の体積抵抗値としては、10−6Ω・cm〜1010Ω・cmの範囲内であることが好ましく、なかでも10Ω・cm〜10Ω・cmの範囲内であることが好ましく、特に10Ω・cm〜10−2Ω・cmの範囲内であることが好ましい。
本発明に用いられる基材に用いられる材料としては、基材上に形成される金属酸化物膜の導電性に応じて、上記金属酸化物膜よりも導電性が高いものであれば特に限定されない。このような材料としては、例えばガラス、金属、セラミック、耐熱性プラスチック等を挙げることができる。なかでも本発明に用いられる基材は金属からなるものであることが好ましい。上記基材として導電性に優れた金属からなるものを用いることにより、上記基材と帯電した金属酸化物膜形成用溶液の液滴との相互作用を増大させることができるため、膜欠陥部の発生をより効果的に防止できるからである。
上記金属としては、例えば、金、銀、銅、鉄、クロム、ニッケル、アルミニウム、スズ、チタン、コバルト、カドミウム、カーボン、亜鉛、パラジウムなどの単体や、ステンレス(SUS304、SUS316等)、真鍮などの各種合金等を挙げることができる。
本発明に用いられる基材の具体的な形態としては、本発明の金属酸化物膜の製造方法により製造される金属酸化物膜の種類や用途等に応じて適宜決定すればよい。このような形態としては、例えば、平滑な表面を有するもの、微細構造部を有するもの、穴が開いているもの、溝が刻まれているもの、メッシュ状であるもの、多孔質であるもの、多孔質膜を備えたものであっても良い。なかでも、本発明においては平滑な表面を有するもの、微細構造部を有するもの、溝が刻まれているもの、多孔質であるもの、多孔質膜を備えたものが好適に使用される。
また、本発明に用いられる基材はアースがなされているものであるが、アースの態様としては特に限定されるものではない。このような態様としては、基材が直接アースされている態様と、基材が接触する部位がアースされている態様とを例示することができるが、本発明においてはいずれの態様であっても好適に用いることができる。
3.スプレー装置
次に、本発明に用いられるスプレー装置について説明する。本発明に用いられるスプレー装置としては、後述する金属酸化物膜形成用溶液を所望の大きさの液滴とすることができるスプレー方式を備える装置であれば特に限定されない。このようなスプレー方式としては、例えば、エアースプレー方式、エアーレススプレー方式、回転微粒子化スプレー方式、超音波霧化方式、または、静電霧化方式等を例示することができる。
また、本発明に用いられるスプレー装置のノズル径としては、所望の金属酸化物膜を得ることができれば特に限定されるものではないが、具体的には、10μm〜1000μmの範囲内、なかでも50μm〜500μmの範囲内、特に100μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
4.金属酸化物膜形成用溶液
次に、本発明の金属酸化物膜の製造方法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液について説明する。本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、少なくとも後述する金属源および溶媒を含有するものであり、金属酸化物膜形成温度以上に加熱された基材と接触させることにより、上記基材よりも導電性の低い金属酸化物膜を形成することが可能なものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、金属酸化物膜形成用溶液が酸化剤および/または還元剤を含有していることが好ましい。酸化剤、還元剤を添加することにより、より低い温度で金属酸化物膜を形成することができ、さらに温度が低いことから、金属酸化物膜形成用溶液の液滴が、基材に到達する前に酸化され金属酸化物微粒子となることを防止することができ、透明性等の高い金属酸化物膜を形成することができるからである。
(1)金属源
上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる金属源について説明する。上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる金属源は基材上に形成される金属酸化物膜を構成するものである。
本発明に用いられる金属源は、金属酸化物膜形成温度以上に加熱された基材と接触させることにより、上記基材よりも導電性の低い金属酸化物膜を形成することが可能であり、かつ、後述する溶媒に溶解するものであれば特に限定されるものではない。このような金属源としては、例えば金属塩であっても良く、金属錯体であっても良い。なお、本発明における「金属錯体」とは、金属イオンに対して無機物または有機物が配位したもの、あるいは、分子中に金属−炭素結合を有する、いわゆる有機金属化合物を含むものである。
上記金属酸化物膜形成用溶液における上記金属源の濃度としては、金属源が金属塩の場合、通常0.001mol/L〜10mol/Lの範囲内であることが好ましく、なかでも0.01mol/L〜1mol/Lの範囲内であることが好ましい。
一方、金属源が金属錯体である場合、通常0.001mol/L〜10mol/Lの範囲内であることが好ましく、なかでも0.01mol/L〜1mol/Lの範囲内であることが好ましい。濃度が上記範囲以下であると、金属酸化物膜成膜に時間がかかり、工業的に好適でない可能性があり、濃度が上記範囲以上であると、均一な膜厚の金属酸化物膜を得ることができない可能性があるからである。
このような金属源を構成する金属元素としては、所望の金属酸化物膜を得ることができれば特に限定されるものではないが、例えば、Mg、Al、Si、Ca、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Ta、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、および、Wからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
ここで、本発明によれば膜欠陥部の少ない金属酸化物膜を成膜することができるため、本発明は絶縁膜や耐食膜を成膜するのに適したものになる。このような観点からすると、上記金属元素としては、Mg、Al、Si、Ti、V、Y、Zr、Ce、La、Hf、Ta、Wを用いることが好ましい。このような金属元素から構成される金属源を用いることにより絶縁性および耐食性に優れた金属酸化物膜を成膜することが可能であるからである。
上記金属塩としては、具体的には、上記金属元素を含む塩化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、リン酸塩、臭素酸塩等を挙げることができる。なかでも、本発明においては、塩化物、硝酸塩、酢酸塩を使用することが好ましい。これらの化合物は汎用品として入手が容易だからである。
また、上記金属錯体としては、具体的には、マグネシウムジエトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、カルシウムジ(メトキシエトキシド)、グルコン酸カルシウム一水和物、クエン酸カルシウム四水和物、サリチル酸カルシウム二水和物、チタンラクテート、チタンアセチルアセトネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタンペロキソクエン酸アンモニウム四水和物、ジシクロペンタジエニル鉄(II)、乳酸鉄(II)三水和物、鉄(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)ジピバロイルメタナート、エチルアセト酢酸銅(II)、亜鉛アセチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、サリチル酸亜鉛三水和物、ステアリン酸亜鉛、ストロンチウムジピバロイルメタナート、イットリウムジピバロイルメタナート、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタイソプロポキシニオブ、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド、ランタンアセチルアセトナート二水和物、トリ(メトキシエトキシ)ランタン、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、タンタル(V)エトキシド、セリウム(III)アセチルアセトナートn水和物、クエン酸鉛(II)三水和物、シクロヘキサン酪酸鉛等を挙げることができる。さらには、クロム(III)アセチルアセトナート、トリフルオロメタンスルホン酸ガリウム(III)、ストロンチウムジピバロイルメタナート、五塩化ニオブ、モリブデニルアセチルアセトナート、パラジウム(II)アセチルアセトナート、塩化アンチモン(III)、テルル酸ナトリウム、塩化バリウム二水和物、塩化タングステン(VI)等を挙げることができる。なかでも、本発明においては、マグネシウムジエトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、チタンラクテート、チタンアセチルアセトネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、乳酸鉄(II)三水和物、鉄(III)アセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、ストロンチウムジピバロイルメタナート、ペンタエトキシニオブ、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、ランタンアセチルアセトナート二水和物、トリ(メトキシエトキシ)ランタン、セリウム(III)アセチルアセトナートn水和物を使用することが好ましい。
また、本発明においては、金属酸化物膜形成用溶液が上記金属元素を2種類以上含有していても良く、複数種の金属元素を使用することにより、例えば、ITO、Gd−CeO、Sm−CeO、Ni−Fe等の複合金属酸化物膜を得ることができる。
(2)酸化剤
上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる酸化剤について説明する。上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる酸化剤は、上述した金属源が溶解してなる金属イオン等の酸化を促進する働きを有するものである。金属イオン等の価数を変化させることにより、金属酸化物の発生しやすい環境とすることができ、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。
上記金属酸化物膜形成用溶液における酸化剤の濃度としては、酸化剤の種類に応じて異なるものではあるが、通常0.001mol/L〜1mol/Lの範囲内であることが好ましく、なかでも0.01mol/L〜0.1mol/Lの範囲内であることが好ましい。濃度が上記範囲以下であると、基材加熱温度を低下させる効果を充分に発揮することができない可能性があり、濃度が上記範囲以上であると、得られる効果に大差が見られず、コスト上好ましくないからである。
このような酸化剤としては、後述する溶媒に溶解し、金属イオン等の酸化を促進することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、酸化銀、二クロム酸、過マンガン酸カリウム等が挙げられ、なかでも過酸化水素、亜硝酸ナトリウムを使用することが好ましい。
(3)還元剤
上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる還元剤について説明する。上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる還元剤は、分解反応により電子を放出し、水の電気分解によって水酸化物イオンを発生させ、金属酸化物膜形成用溶液のpHを上げる働きを有するものである。金属酸化物膜形成用溶液のpHが上昇することで、金属酸化物膜の発生しやすい環境とすることができ、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。
上記金属酸化物膜形成用溶液における還元剤の濃度としては、還元剤の種類に応じて異なるものではあるが、通常0.001〜1mol/Lの範囲内であることが好ましく、なかでも0.01〜0.1mol/Lであることが好ましい。濃度が上記範囲以下であると、基材加熱温度を低下させる効果を充分に発揮することができない可能性があり、濃度が上記範囲以上であると、得られる効果に大差が見られず、コスト上好ましくないからである。
このような還元剤としては、後述する溶媒に溶解し、分解反応により電子を放出することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ボラン−tert−ブチルアミン錯体、ボラン−N,Nジエチルアニリン錯体、ボラン−ジメチルアミン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体等のボラン系錯体、水酸化シアノホウ素ナトリウム、水酸化ホウ素ナトリウムを挙げることができ、なかでもボラン系錯体を使用することが好ましい。
また、本発明においては、還元剤と上述した酸化剤とを組み合わせて使用しても、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。このような還元剤および酸化剤の組合せとしては、基材加熱温度を低下させることができる組合せであれば特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素または亜硝酸ナトリウムと任意の還元剤との組合せ、任意の酸化剤とボラン系錯体との組合せ等が挙げられ、なかでも、過酸化水素とボラン系錯体との組合せが好ましい。
(4)溶媒
上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる溶媒は、上述した還元剤および金属源等を溶解することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、金属源が金属塩の場合は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒等を挙げることができ、金属源が金属錯体の場合は、水、上述した低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒を挙げることができる。また、本発明においては、上記溶媒を組み合わせて使用しても良く、例えば、水への溶解性は低いが有機溶媒への溶解性は高い金属錯体と、有機溶媒への溶解性は低いが水への溶解性が高い還元剤とを使用する場合は、水と有機溶媒とを混合することにより両者を溶解させ、均一な金属酸化物膜形成用溶液とすることができる。
(5)添加剤
また、本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液には、セラミックス微粒子、補助イオン源、および界面活性剤等の添加剤を含有していても良い。
上記セラミックス微粒子が上記金属酸化物膜形成用溶液に含有されることにより、上記セラミックス微粒子を取り囲むように金属酸化物膜が形成され、異種セラミックスの混合膜を得ることや金属酸化物膜の体積増加を図ることができる。また、上記セラミックス微粒子の含有量は、使用する部材の特徴に合わせて適宜選択されることが好ましい。
このようなセラミックス微粒子は、上記目的を達成することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えばITO、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、珪素酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、セリウム酸化物、カルシウム酸化物、マンガン酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸バリウム等を挙げることができる。
また、上記補助イオン源は、還元剤の熱分解等により生じる電子と反応し水酸化物イオンを発生するものであり、金属酸化物膜形成用溶液のpHを上昇させ、プールベ線図における金属酸化物領域あるいは金属水酸化物領域へ誘導し、金属酸化物膜の発生しやすい環境となり、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。また、上記補助イオン源の使用量は、使用する金属源や還元剤に合わせて適宜選択して使用することが好ましい。
このような補助イオン源としては、具体的には、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、臭素酸イオン、次臭素酸イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンからなる群から選択されるイオン種を挙げることができる。
また、上記界面活性剤は、上記金属酸化物膜形成用溶液と基材表面との界面に作用するものであり、金属酸化物膜形成用溶液と基材表面との接触面積を向上させることができ、均一な金属酸化物膜を得ることができる。また、上記界面活性剤の使用量は、使用する金属源や還元剤に合わせて適宜選択して使用することが好ましい。
このような界面活性剤は、具体的にはサーフィノール485、サーフィノールSE、サーフィノールSE−F、サーフィノール504、サーフィノールGA、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104PPM、サーフィノール104E、サーフィノール104PA等のサーフィノールシリーズ(以上、全て日信化学工業(株)社製)、NIKKOL AM301、NIKKOL AM313ON(以上、全て日光ケミカル社製)等を挙げることができる。
5.金属酸化物膜
本発明の金属酸化物膜の製造方法により成膜される金属酸化物膜について説明する。本発明により成膜される金属酸化物膜は、上述した基材よりも導電性が低いもの、すなわち体積抵抗値が高いものである。
本発明により成膜される金属酸化物膜は、上述した基材よりも導電性が低いものであれば特に限定されない。なかでも本発明により成膜される金属酸化物の体積抵抗値は、10Ω・cm〜1015Ω・cmの範囲内であることが好ましく、なかでも10Ω・cm〜1015Ω・cmの範囲内であることが好ましく、特に1010Ω・cm〜1015Ω・cmの範囲内であることが好ましい。なお、上記金属酸化物膜の体積抵抗値の測定方法としては、上記「2.基材」の項において説明した方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明により成膜される金属酸化物膜としては、金属酸化物膜の用途等に応じて任意に決定すればよい。このような金属酸化物膜を構成する金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化鉛、酸化ランタン、酸化ハフニウム、酸化スカンジウム、酸化ガドリニウム、酸化タンタル、酸化クロム、酸化ガリウム、酸化ストロンチウム、酸化ニオブ、酸化パラジウム、酸化アンチモン、酸化テルル、酸化バリウム、および、酸化タングステンを挙げることができる。
なかでも、本発明によれば膜欠陥部の少ない金属酸化物膜を成膜することができるため、本発明は絶縁膜や耐食膜を成膜するのに適したものになる。このような観点からすると、上記金属酸化物としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化イットリウムを用いることが好ましい。このような金属酸化物から構成される金属酸化物膜は絶縁性および耐食性に優れるからである。
また、本発明により成膜される金属酸化物膜の厚みは、特に限定されるものではないが、通常、10nm〜10μmの範囲内が好ましく、なかでも50nm〜7μmの範囲内が好ましく、特に100nm〜5μmの範囲内であることが好ましい。
6.その他
また、本発明の金属酸化物膜の製造方法においては、上述した接触方法等により得られた金属酸化物膜の洗浄を行っても良い。上記金属酸化物膜の洗浄は、金属酸化物膜の表面等に存在する不純物を取り除くために行われるものであって、例えば、金属酸化物膜形成用溶液に使用した溶媒を用いて洗浄する方法等を挙げることができる。
7.用途
本発明の金属酸化物膜の製造方法は、膜欠陥部の少ない金属酸化物膜を形成できることから、種々の金属酸化物膜を形成する用途に用いることができる。このような用途としては、例えば、金属部材に対する絶縁性膜や耐食膜の付与、ディスプレイ、太陽電池、燃料電池等の部材に対する低抵抗導電金属酸化物膜の付与、バイオ関連部材に対する生体親和性や濡れ性等を付与する金属酸化物膜の付与等を挙げることができる。
また、燃料電池の電解質膜、電子デバイス関連における誘電体膜、水や酸素に対するガスバリア膜の形成にも用いることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
(1)実施例1
本実施例においては、SUS304基材に酸化アルミニウム膜を形成させることにより、絶縁性を付与した。
まず、本実施例においては、SUS304基材(150mm×150mm、厚み0.4mm)を基材として用いた。
アルミニウムアセチルアセトナート(関東化学社製)0.1mol/Lの溶液(エタノール15wt%、トルエン85wt%)1000mLを金属酸化物膜形成用溶液とした。
次に、上記基材をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材に上記金属酸化物膜形成用溶液をエアレススプレー(A7Aエアレスオートガン、クロスカットノズル0038/06、ノズル径114μm、印加圧力4MPa、ノードソン社製)を用いてスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。このとき、静電印加装置(ノードソン社製)により液滴を負に帯電させ、基材をアースとした(相対的に正に帯電)。噴霧は10分間実施し、基材上に金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜付与済み基材に対して、碁盤目状にアルミを蒸着で付与した(10mm角、計70点)。このアルミ面と、付与したアルミナを削ったSUS304基材との間でテスターをあてたところ、計70点中62点がKΩ以上の抵抗を有していた。また、上記金属酸化物膜を、光電子分光分析装置(V.G.Scientific社製、ESCALAB 200i−XL)を用いて測定したところ、酸化アルミニウム膜が形成していることを確認した。なお、断面SEMより、酸化アルミニウム膜の膜厚は0.5μmであった。
(2)実施例2
本実施例においては、実施例1と同様の基材および金属酸化物膜形成用溶液を用いて、噴霧した液滴を正に帯電させて酸化アルミニウム膜を形成させることにより、絶縁性を付与した。
上記金属酸化物膜形成用溶液をシリンジポンプ(Harvard apparatus社製、Model 11 plus社製)を用いて10ml/hでニードルノズル(サンエイテック社製 5115−1.5−B)まで送液した。この際、ニードルノズル側が陽極、基板側が陰極となるように高圧電源(松定プレシジョン社製 HAR−100*0.3)を接続し、電圧を印加して500℃に加熱した基材へ噴霧した(電圧100KV、電流0.3mA)。噴霧は50分間実施し、基材上に金属酸化物膜を得た。上記ニードルノズルを含む機構一式を12用意し、基板上へ均一に成膜した。
上記方法により得られた金属酸化物膜付与済み基材に対して、碁盤目状にアルミを蒸着で付与した(10mm角、計70点)。このアルミ面と、付与したアルミナを削ったSUS304基材との間でテスターをあてたところ、計70点中68点がKΩ以上の抵抗を有していた。また、上記金属酸化物膜を、光電子分光分析装置(V.G.Scientific社製、ESCALAB 200i−XL)を用いて測定したところ、酸化アルミニウム膜が形成していることを確認した。なお、断面SEMより、酸化アルミニウム膜の膜厚は0.5μmであった。
(3)比較例
金属酸化物膜形成用溶液の液滴を負に帯電させず、また、基材をアースしなかったこと以外は上記実施例と同様の方法により金属酸化物膜を形成した。
得られた金属酸化物膜付与済み基材に対して、碁盤目状にアルミを蒸着で付与した(10mm角、計70点)。このアルミ面と、付与したアルミナを削ったSUS304基材との間でテスターをあてたところ、計70点中わずか13点がKΩ以上の抵抗を有しており、のこり57点はΩオーダーの抵抗であった。また、上記金属酸化物膜を、光電子分光分析装置(V.G.Scientific社製、ESCALAB 200i−XL)を用いて測定したところ、酸化アルミニウム膜が形成していることを確認した。なお、断面SEMより、酸化アルミニウム膜の膜厚は0.4μmであった。
本発明の金属酸化物膜の製造方法の一例を示す説明図である。 本発明の金属酸化物膜の製造方法による金属酸化物の成膜過程を例示する概略図である。 本発明の金属酸化物膜の製造方法の他の例を示す説明図である。 本発明の金属酸化物膜の製造方法の他の例を示す説明図である。 本発明の金属酸化物膜の製造方法の他の例を示す説明図である。
符号の説明
1 … スプレー装置
2 … 金属酸化物膜形成用溶液
3 … 基材
4 … 金属酸化物膜
5〜7 … ローラー

Claims (2)

  1. スプレー装置により、金属源として金属塩または金属錯体が溶解した金属酸化物膜形成用溶液を液滴化した後、前記金属酸化物膜形成用溶液の液滴を金属酸化物膜形成温度以上に加熱した基材に接触させることにより、前記基材上に金属酸化物膜を形成する金属酸化物膜の製造方法であって、
    前記基材はアースされ、かつ、前記金属酸化物膜よりも導電性が高いものであり、さらに前記液滴を帯電させた状態で前記基材に接触させることを特徴とする、金属酸化物膜の製造方法。
  2. 前記基材が金属からなるものであることを特徴とする、請求項1に記載の金属酸化物膜の製造方法。
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