JP4992500B2 - 耐端面赤錆性に優れたクロムフリー塗装鋼板 - Google Patents

耐端面赤錆性に優れたクロムフリー塗装鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、屋外や水のかかる環境で使用される可能性のある家電製品、建材、自動車部品などの製造に有用な、クロムフリー塗装鋼板に関する。本発明の塗装鋼板は、従来のクロムフリー塗装鋼板と比較して、端面からの赤錆発生をより効果的に抑制することができる。
塗装鋼板(プレコート鋼板、PCMとも呼ばれる)は、基材鋼板に塗装と焼付けにより塗膜を形成した後、コイル状に巻き取られ、その状態でユーザーに納入される。その後、ユーザーはコイルを巻き戻して、打ち抜き、折り曲げ、絞り加工、またはこれらを組み合わせた加工を行って製品化する。作業環境を悪化させ、廃液処理が面倒な塗装作業をユーザーが行う必要がないことから、塗装鋼板の適用は多くの分野に普及している。
塗装鋼板の製造は、塗装基材となる鋼板(典型的には亜鉛めっきと亜鉛合金めっきとを含む亜鉛含有めっき層を有する亜鉛系めっき鋼板)に、前処理として化成処理を施した後、下塗り塗料(プライマー)の塗布と焼付け、次に上塗り塗料の塗布と焼付けを順に行う2コート2ベーク方式が一般的である。ただし、「おもて面」とは反対側のうら面側については、前処理後にうら面用に開発された塗料(裏面塗料)を用いて1コート1ベーク方式で塗装が行われることもある。
塗装鋼板は、用途によって、耐食性、加工性、塗膜硬度(耐傷つき性)、耐汚染性、耐薬品性、耐候性などの要求性能の順位が異なる。エアコン室外機、建材等といった屋外で使用される製品用の塗装鋼板では、耐食性が非常に重要であり、耐候性も必要である。特にエアコン室外機では、打ち抜き加工によって切断された多くの端面が剥き出しのまま露出する。そのため、一般的な耐食性の評価方法である、平板部の耐食性やカッターナイフで鋼板まで十字に疵をつけたクロスカット部(疵部)の耐食性に加えて、切断端面についても耐食性を調査することが必要となる。これらの耐食性の評価はいずれも典型的には塩水噴霧試験や塩水噴霧サイクルを取り入れたサイクル試験により、一部には湿潤試験により行われてきた。
従来、耐食性は、主に下塗り塗膜(プライマー層又はアンダーコート)に含有させた防錆顔料により改善してきた。上塗り塗膜(トップコート)の方は、特におもて面側の場合、塗膜硬度、外観、耐汚染性、耐候性などの改善のために多くの添加成分を含有するので、多量の防錆顔料を添加する余地がないことも理由の1つである。耐候性は、主に上塗り塗膜の樹脂及び硬化剤の種類により左右されるが、紫外線吸収剤や光安定剤を含有させることにより向上させることが可能である。
端面耐食性に優れた従来の塗装鋼板は、亜鉛系めっき鋼板を塗装基材とし、両面にまず前処理として塗布型クロメート処理を施した後、少なくともおもて面側に対しては、クロム酸ストロンチウムなどのクロム酸塩系防錆顔料を含有する下塗り塗料(プライマー)から下塗り塗膜を形成し、次いで上塗り塗膜を形成したものである。
しかし、クロメート処理とクロム酸ストロンチウムを含む下塗り塗料はいずれも人体に有害な6価クロム化合物を利用した処理であり、環境意識の高まりと共に、6価クロム化合物のみならず、3価も含めて一切のクロム化合物を使用しないクロムフリー塗装鋼板が指向されるようになってきた。特に近年のRoHS指令以降は、塗装鋼板のクロムフリー化が急務となっている。
クロメート処理に関しては、液相シリカ、気相シリカに代表されるシリカベースにし、防錆成分を含有させたクロムフリーの化成処理液が多数提案され、市販品もかなり出回っている。一方、下塗り塗料に含有させるための防錆顔料についても、リン酸塩系、モリブデン酸塩系、ホウ酸系、シリカ系の各種の化合物が提案されている。
下記特許文献1には、トリポリリン酸アルミニウムなどのリン酸塩系防錆顔料とイオン交換シリカの混合物からなる防錆顔料を含有する塗料組成物から形成した塗膜が端面耐食性に優れていることが記載されている。一方、この塗膜をプライマーに適用しても、塩水噴霧試験において端面とクロスカット部のいずれも耐食性が不十分であることが下記の非特許文献1に記載されている。
下記特許文献2には、亜鉛めっき鋼板の表面に粒径10μm以下の酸化マグネシウムもしくは水酸化カルシウムを含有するプライマー層を形成し、その上にトップ層(上塗り塗膜)を形成した塗装鋼板が端面耐食性に優れていることが記載されている。端面耐食性は塩水噴霧試験による白錆発生率により評価している。
特開平9−12931号公報 特開2005−225052号公報 神戸製鋼技報Vol. 54, No. 1, 62-65頁(2004)
多数のクロムフリー塗装鋼板がこれまでに提案されているが、従来のクロメート処理とクロム酸塩系防錆顔料を含有する下塗り塗膜を有する塗装鋼板に比べて、いずれも端面耐食性が低く、特に長雨にさらされた時の端面からの赤錆発生に対する耐食性(耐端面赤錆性)が不十分であることが判明した。端面からの赤錆の発生は、鋼板を腐食するのみならず、製品やその設置場所の外観を非常に悪化させる(汚す)ので、ユーザーからの苦情が多くなり、改善が望まれていた。
本発明は、長雨にさらされても切断端面からの赤錆発生が防止される、優れた耐端面赤錆性を示すと同時に、塗膜膨れがなく、かつ、耐食性、加工性と硬度のバランスについては、従来のクロムフリー塗装鋼板と同等レベルの優れた性能を有し、低コストで製造できる、クロムフリー塗装鋼板を提供することを目的とする。
塗装鋼板における赤錆発生は、基本的には塗装基材である亜鉛系めっき鋼板のめっき層に含まれる亜鉛の犠牲防食能により防止される。すなわち、水と接触した時に鉄より優先的に亜鉛が溶解してイオン化することで、鉄のイオン化(酸化)に起因する赤錆の発生が防止されるのである。
長雨にさらされた時に塗装鋼板の端面において赤錆が発生する原因として、雨量が多くなると雨自身があまり不純物を含まない状態となり雨自身の電気伝導度が低下し、その結果として、端面に雨水が付着した際、亜鉛の犠牲防食機能が働かず鉄が酸化し、赤錆が発生するのではないかと推定される。
クロム酸ストロンチウムで代表されるクロム酸塩系防錆顔料は耐端面赤錆性に優れることが知られているが、その端面赤錆抑制機構としては次の点が考えられる。
(1)クロム酸ストロンチウムは、クロムフリーの塗装鋼板に含まれる代表的な防錆顔料(例、トリポリリン酸アルミニウム、シリカ)と比較して、水に対する溶解度が高く、水に比較的溶け易いため、水と接触した時に塗膜の端面から比較的容易に滲みだし、端面付近の水の電気伝導度を上げることで、亜鉛の犠牲防食能を促進させ、鉄の酸化反応つまり赤錆発生を抑制する。
(2)溶解したクロム酸ストロンチウムは、水溶液の状態では弱アルカリ性であるため、鉄表面に不働態皮膜を形成する。
(3)亜鉛に対しては、クロメート皮膜と同様のCr6+の自己修復作用により、亜鉛の腐食の進行を抑制する。
本発明者らは、上記メカニズムのうち、(1)と(2)はクロム酸塩以外の化合物でも達成可能であることに着目し、(1)と(2)の性質を持つ化合物を防錆顔料として含有させることによって上記課題を解決することを目指した。
上述したように、従来の塗装鋼板では、クロメート系とクロムフリーのいずれの塗装鋼板であっても、防錆顔料は下塗り塗膜(プライマー層)に含有させるのが普通であった。しかし、上記(1)に記載した性質、すなわち、水溶性が比較的高い化合物をプライマーに含有させると、湿潤環境下で溶けだす化合物量が多いため、塗装鋼板の塗膜膨れ(ブリスター)を生じ易く、疵部の耐食性が著しく悪化する。つまり、下塗り塗膜中の防錆顔料が上記(1)に示すように、水に溶けやすい性質を有していると、浸透圧により下塗り塗膜中に水が侵入し、表面自由エネルギーが大きい鋼板表面と下塗り塗膜との界面に水がたまり、塗膜膨れが発生すると考えられる。
しかし、上記特許文献1で使用されているトリポリリン酸アルミニウムやシリカ、特許文献2で使用されている水酸化カルシウムや酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムはいずれも水溶性が非常に小さいものであり、少なくとも上記(1)のメカニズムに必要な水溶性を有していない。そのため、このような水溶性が不十分な防錆顔料では、鋼板表面の耐食性を向上させることはできても、水に溶出しにくいため鋼板端面の水の電気伝導度を上げることにはほとんど寄与せず、端面の赤錆防止効果は不十分である。
また、非特許文献1には、腐食環境下で溶出性の高い顔料を配合すると耐食性が改善される可能性があることに言及しているが、特に下塗り塗膜に配合した場合には、上記のように塗膜膨れの原因となる。また、従来検討されてきた耐食性は、端面耐食性についても、塩水噴霧による白錆発生防止を目的とすることが多く、電気伝導度の低い水の影響で端面から発生する赤錆発生には有効ではなかった。
本発明者らは、上記(1)及び(2)のメカニズムに必要な特性を有する化合物を防錆顔料として上塗り塗膜(トップコート)、すなわち、塗膜の最外層に比較的少量含有させることにより、クロム酸塩系防錆顔料を使用せずに、塗膜の膨れを生ずることなく、電気伝導度の低い水の影響で起こる端面赤錆発生を効果的に防止できることを見出し、本発明に到達した。
ここに、本発明は、Zn含有めっき層を有するめっき鋼板からなる塗装基材の少なくとも片面に1層以上の塗膜が形成された塗装鋼板であって、前記塗膜の最外層の塗膜が下記(A)〜(C)を満たす非クロム化合物を防錆顔料として0.5〜30質量%含有することを特徴とするクロムフリー塗装鋼板:
(A)イオン交換水に0.1質量%濃度で溶解させた時のpHが7以上、12以下;
(B)イオン交換水に0.1質量%濃度で溶解させた時の電気伝導度が500μS/cm以上、好ましくは700μS/cm以上;並びに
(C)200℃までに熱分解を生じない。
本発明において「クロムフリー塗装鋼板」とは、塗装基材以外の部分、すなわち、塗膜やその下地の化成処理皮膜、がクロムを実質的に含まないことを意味する。塗装基材である鋼板はクロムを含有する鋼板であってもよい。また、塗膜や化成処理皮膜が不純物として微量のクロムを含むことは許容される。塗膜が、うら面側に採用されることのある1層の塗膜からなる場合には、その塗膜が最外層塗膜となる。
前記塗膜が2以上の層からなる塗膜である場合、最外層以外の少なくとも1層の塗膜、好ましくは塗膜が2層である場合の下塗り塗膜(プライマー層)が、クロムを含有しない1種又は2種以上の防錆顔料(2種以上の場合は前記化合物を含んでいてもよい)を10〜60質量%含有することが好ましい。それにより、耐端面赤錆性以外の耐食性、すなわち、平板部や疵部の耐食性、さらには端面の白錆発生に対する耐食性が改善される。そのような防錆顔料としては、従来よりクロムフリー塗装鋼板の下塗り塗膜に添加されてきた各種の防錆顔料が使用できる。この最外層以外の少なくとも1層の塗膜に含有される防錆顔料は、トリポリリン酸アルミニウム及びCa交換シリカから選ばれ、かつこの塗膜が下記(A),(B’),(C)の要件を満たす防錆顔料を実質的に含んでいないことが好ましい:
(A)イオン交換水に0.1質量%濃度で溶解させた時のpHが7以上、12以下;
(B’)イオン交換水に0.1質量%濃度で溶解させた時の電気伝導度が700μS/cm以上;並びに
(C)200℃までに熱分解を生じない。
前記電気伝導度の低い水の影響で起こる端面赤錆発生を効果的に防止できる化合物は好ましくはトリポリリン酸ナトリウムであり、前記最外層の塗膜の厚みは好ましくは3μm以上、30μm以下である。前記最外層の塗膜は塗装鋼板の両面に形成されていてもよく、或いは、製品のおもて面側又はうら面側に向けられる塗装鋼板の片面だけに形成されていてもよい。前記塗装基材と前記塗膜との間にはクロムを含有しない化成処理皮膜を有することが好ましい。
本発明によればまた、鋼板表面に最外層塗膜を形成するためのクロムフリー溶剤系塗料であって、下記(A)〜(C)を満たす非クロム化合物を防錆顔料として塗料中の全固形分に基づいて0.5〜30質量%含有することを特徴とする、端面赤錆発生の防止に有効な塗料も提供される:
(A)イオン交換水に0.1質量%濃度で溶解させた時のpHが7以上、12以下;
(B)イオン交換水に0.1質量%濃度で溶解させた時の電気伝導度が500μS/cm以上、好ましくは700μS/cm以上;並びに
(C)200℃までに熱分解を生じない。
本発明に係る塗装鋼板では、最外層の塗膜(2層塗膜の場合は上塗り塗膜)に水溶性が高く水溶液中で塩基性を示す上記(A)〜(C)の特性を備えた化合物を防錆顔料として比較的少量含有させることにより、長雨にさらされた時にも、塗膜の膨れを生ずることなく、赤錆発生を抑制することができる。また、それによる加工性や塗膜硬度の著しい悪影響もない。さらに、内層の塗膜、例えば、下塗り塗膜にも防錆顔料を比較的多量に含有させると、平板部耐食性、疵部耐食性も含めて、従来のクロム酸塩系防錆顔料を使用したクロメート系塗装鋼板に匹敵する優れた耐食性を持つクロムフリー塗装鋼板を得ることが可能となる。
耐端面赤錆性に優れた本発明に係る塗装鋼板は、打ち抜き加工による剥き出しの端面が多く露出する、屋外で使用される製品、例えば、エアコン室外機に適用するのに特に適しているが、用途はそれに限られるものではない。
以下では、本発明の好ましい実施態様である、少なくとも片面に下塗り塗膜と上塗り塗膜の2層塗膜を有する塗装鋼板を例にとって、本発明に係る塗装鋼板について要素ごとに説明する。
(1)塗装基材
本発明の塗装鋼板では、端面からの赤錆発生に亜鉛の犠牲防食能を利用するので、塗装基材の鋼板は、亜鉛を含有するめっき層を有する亜鉛系めっき鋼板、すなわち、亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板とする。亜鉛系めっき鋼板は、電気めっき、溶融めっき、気相めっきのいずれで作製したものでもよい。亜鉛系めっき鋼板の例としては、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、溶融5%Al−Zn合金めっき鋼板、溶融55%Al−Zn合金めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気Zn−Ni合金めっき鋼板などが挙げられる。めっき付着量も特に限定されず、一般的な範囲内でよい。めっき付着量が少なすぎると耐食性が低下し、多すぎると加工性が劣化する。
(2)塗装前処理
塗装鋼板の製造では、塗膜密着性と耐食性を確保するため、塗装前に基材鋼板を前処理(下地処理)するのが普通である。この前処理は、一般には化成処理により行われ、その前に、Ni等の鉄族金属イオンを含む酸性もしくはアルカリ水溶液による表面調整処理を施すことが多い。また、それ以前に、基材鋼板を清浄化するため、アルカリ脱脂などが行われる。
化成処理は、クロムフリーの塗装鋼板とするために、クロメート処理ではなく、クロムを実質的に含有しない化成処理液を用いて行う。そのような化成処理液の代表例は、液相シリカ、気相シリカおよび/またはケイ酸塩などのケイ素化合物を主皮膜成分とし、場合により樹脂を共存させたシリカ化成処理液である。
化成処理は、シリカ系化成処理に限られるものではない。シリカ系以外にも、塗装下地処理に使用するための各種のクロムフリー化成処理液が提案されており、また今後も提案されることが予想される。そのようなクロムフリー化成処理液を使用することもできる。化成処理により形成される化成処理皮膜の付着量は、使用する化成処理に応じて、適当な付着量を選択すればよい。シリカ系化成処理液の場合、通常の付着量は、Si換算で1〜20mg/m2の範囲内であろう。
(3)下塗り塗膜
下塗り塗膜を構成するベース樹脂は特に限定されず、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂など、これまでも塗装鋼板の下塗りに用いられてきた各種の樹脂から選択できる。ベース樹脂に組み合わせる架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。必要であれば、架橋触媒を配合する。
下塗り塗膜に含有させる防錆顔料は特に制限されないが、本発明ではクロムフリーとするために、クロム酸ストロンチウムで代表されるクロム酸塩系防錆顔料は使用しない。
本発明で下塗り塗膜に使用するのが好ましい防錆顔料は、水溶性が比較的小さいもの、具体的には、イオン交換水に0.1質量%濃度で溶解させた時の電気伝導度が700μS/cm未満、特に500μS/cm以下のものである。そのような防錆顔料の例としては、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸及び亜リン酸のZn、Mg、Al、Ti、Zr、及びCe塩、Caイオン交換シリカ、並びに吸油量100〜1000ml/100g、比表面積200〜1000m2/g、平均粒径2〜30μmの非晶質シリカ粒子が挙げられる。好ましい防錆顔料は、トリポリリン酸アルミニウムを初めとするリン酸塩系防錆顔料、シリカ系防錆顔料、またはその両者の組み合わせである。特に好ましいのは、トリポリリン酸アルミニウム及び/又はCa交換シリカである。下塗り塗膜は、本発明で上塗り塗膜に使用される、上記(A)及び(C)の要件を満たし、かつ(B' )イオン交換水に0.1質量%濃度で溶解させた時の電気伝導度が700μS/cm以上である防錆顔料を実質的な量(1質量%以上)で含んでいないことが好ましい。
下塗り塗膜が上記(A)、(B' )、(C)の要件を満たす防錆顔料を実質的な量で含むと、水と接触した時に防錆顔料が溶けだして、浸透圧の関係で表面から下塗り塗膜に水が浸入する。その侵入した水は、表面自由エネルギーの大きな鋼板界面に溜まることにより、塗膜膨れが生じ、その結果として外観への悪影響に加え、耐食性が著しく悪化する。
一方、上塗り塗膜が上記(A)〜(C)の要件を満たす防錆顔料を実質的な量で含んでいる場合には、水と接触した時に防錆顔料が溶けだすが、この場合、下層に上記(A)、(B' )、(C)の要件を満たす防錆顔料を含まない下塗り塗膜が存在すると、浸透圧の関係で該下塗り塗膜が水のバリア層の役目をするため、水は鋼板と下塗り塗膜界面まで侵入しにくくなるため、大きな塗膜膨れは発生しない。
下塗り塗膜中の防錆顔料の含有量は5〜60質量%とすることが好ましく、より好ましい含有量は10〜30質量%である。防錆顔料の量が少なすぎると、平板部や疵部の耐食性及び端面の耐白錆性の改善効果のみならず、塗膜硬度の改善効果も十分に発揮されない。一方、防錆顔料の量が60%を超えると、塗装鋼板の加工性が低下する。
下塗り塗膜は、樹脂(及び架橋剤)と防錆顔料以外に、着色顔料、レベリング剤、ビーズなどの1種または2種以上をさらに含有しうる。但し、顔料類の含有量が増えると、加工性が低下することがあるので、防錆顔料以外の顔料をさらに含有する場合でも、顔料の合計量は60質量%以下、特に加工性を重視する場合は35質量%以下とすることが好ましい。
下塗り塗膜の厚さ(乾燥塗膜厚)は1〜20μmであることが望ましい。さらに望ましくは、2〜15μmである。塗膜厚が薄すぎると耐食性が低下し、厚すぎるとコスト高に加え、塗膜の内部応力増大に伴って加工性、密着性が低下することがある。
(4)上塗り塗膜
上塗り塗膜は、耐端面赤錆性を改善するための防錆顔料(以下、耐端面赤錆性防錆顔料ともいう)として、下記(A)〜(C)の全てを満たす化合物を0.5〜30質量%の量で含有する:
(A)イオン交換水に0.1質量%濃度で溶解させた時のpHが7以上、12以下;
(B)イオン交換水に0.1質量%濃度で溶解させた時の電気伝導度が500μS/cm以上、好ましくは700μS/cm以上;並びに
(C)200℃までに熱分解を生じない。
この特性をもつ顔料の市販品の例は、トリポリリン酸ナトリウム(三リン酸五ナトリウム)、リン酸水素カリウム、酢酸マグネシウム四水和物、炭酸ナトリウム一水和物、並びにハイドロカルマイト処理されたリン酸亜鉛(東邦顔料製EXPERT NP-530 N20)及び亜リン酸カルシウム(同社製EXPERT NP-1020C N20)などである。これらの顔料が上記(A)及び(B)を満たすことは後述する表1に示してある。(C)の要件は、塗装後の焼付け中に化合物が分解しないために必要である。これらのうち、現状で特に好ましいのはトリポリリン酸ナトリウムである。
防錆顔料として使用するので、いずれの化合物も粉末状のものを使用し、その平均粒径は0.1〜20μmの範囲内であることが好ましい。なお、同じく表1に示すように、従来の代表的な防錆顔料であるクロム酸ストロンチウムも上記の3要件を満たすが、本発明ではクロムフリーとするためにクロム化合物は使用しない。非クロム化合物を使用するため、上記(B)の電気伝導度は700μS/cm以上となる化合物を使用することが好ましい。
上記(A)〜(C)の要件を満たす化合物は、(B)に規定するように水溶性が比較的高いため、下塗り塗膜に防錆顔料として多量に添加すると、湿潤試験実施後に大量の塗膜膨れを発生する。しかし、この種の化合物を上塗り塗膜に添加する場合には、30質量%以下の量であれば、塗膜膨れの発生は起こりにくく、その他の性能特に外観、加工性に悪影響を与えないこと、そして0.5質量%以上の量で上塗り塗膜に含有させると、塗装鋼板の耐端面赤錆性が著しく改善され、長雨にさらされても端面からの赤錆発生を抑制することができることが判明した。この種の防錆顔料が耐端面赤錆性に有効であることはこれまで知られていなかった。上塗り塗膜の場合、上述したように、この塗膜から防錆顔料が多少溶出しても、塗膜の膨れは起こりにくいので、水溶性が比較的高い耐端面赤錆性防錆顔料を下塗り塗膜に比べてより多くの量で配合することができる。
以上より、本発明では、上記(A)〜(C)を満たす1種または2種以上の化合物からなる耐端面赤錆性防錆顔料を0.5〜30質量%の量で上塗り塗膜中に含有させる。この顔料の含有量が0.5質量%より少ないと耐端面赤錆性の改善が不十分となり、30質量%を超えると塗膜膨れが多発するようになるとともに、塗膜物性が低下する。
上塗り塗膜のベース樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂などから選んだ1種または2種以上を使用することができる。架橋剤は、下塗り塗膜に関して述べたものと同様でよく、必要に応じて架橋触媒を配合する。
上塗り塗膜は、上記の耐端面赤錆性防錆顔料に加えて、さらに着色顔料を含有していてもよい。着色顔料の例としては、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリンなどの無機顔料、銅フタロシアニン、トルイジンレッドなどの有機顔料、さらにはカーボンブラックなどが挙げられる。着色顔料は30質量%以下とするのが好ましく、上記防錆顔料と合わせた顔料の合計量は50質量%以下とすることが好ましい。
上塗り塗膜は、上記成分以外の添加剤を含有しうる。そのような添加剤の例は、耐候性を改善するのに有効な紫外線吸収剤及び光安定剤、加工性(プレス成形性)の改善に有効なワックスなどである。
上塗り塗膜の膜厚は2〜50μmであることが望ましく、さらに望ましくは5〜30μmである。塗膜厚が薄すぎると耐食性および隠蔽性が不十分であり、厚すぎるとコスト高および塗膜内部応力増大に伴う加工性、密着性が低下することがある。
上述した下塗り塗膜と上塗り塗膜は、いずれも必要成分を溶媒中に溶解又は分散させた塗料(すなわち、下塗り塗料及び上塗り塗料)の塗布及び焼付け(加熱乾燥)により形成される。各塗料は溶媒が有機溶剤である溶剤系塗料と、溶媒が水又は水と水混和性有機溶剤との混合溶媒である水系塗料のいずれでもよい。ただし、上塗り塗料は、耐端面赤錆性防錆顔料の水溶性が比較的高いため、溶剤系塗料とすることが好ましい。塗装は通常は2コート2ベーク方式であるが、焼付けを上塗り塗料の塗布後だけに行う2コート1ベーク方式とすることも場合によっては可能である。
下塗り塗料および上塗り塗料の塗布方法は特に限定されるものではなく、ロールコーター、カーテンフローコーター、スプレーガン、バーコーター等によって行えばよい。塗布後の焼付けは、塗膜を構成する樹脂及び架橋剤に応じて設定したPMT(鋼板最高到達温度)となるように行う。この温度は一般に100〜280℃の範囲内である。加熱方法は、熱風乾燥でも、炉内乾燥でもよい。
上述した上塗り塗膜は、塗装鋼板の両面に設けてもよく、或いは片面側だけに設けてもよい。片面側の上塗り塗膜だけが上記の耐端面赤錆性防錆顔料を含有する塗装鋼板でも、剥き出しの端面が水に触れ、この防錆顔料が端面を覆う水にすばやく溶出することによって、端面全体に対して赤錆発生を抑制することができるからである。
本発明に従った上塗り塗膜を塗装鋼板の片面だけに形成する場合、その面はおもて面側とうら面側のいずれでもよい。
例えば、おもて面側の塗料が皮膜形成用の樹脂以外に多量の顔料や他の添加剤(ワックス等)を含有するため、防錆顔料を添加する余地があまりない場合には、うら面側の最外層の塗膜に耐端面赤錆性防錆顔料を0.5〜30質量%含有させればよい。うら面側をうら面塗料の1層塗膜とした塗装鋼板では、おもて面側の上塗り塗膜中に耐端面赤錆性防錆顔料を含有させる余地がある場合にはそうしてもよく、或いはうら面側の1層塗膜に耐端面赤錆性防錆顔料を含有させてもよい。1層塗膜の場合には、それが最外層塗膜となるので、その塗膜に水溶性が比較的高い耐端面赤錆性防錆顔料を含有させても、その量が30質量%以下であれば、塗膜膨れは起こりにくい。
耐端面赤錆性防錆顔料を、おもて面かうら面の片面の最外層塗膜だけに含有させる場合、その塗膜中のこの防錆顔料の含有量は好ましくは1〜30質量%であり、より好ましくは2〜20質量%である。耐端面赤錆性防錆顔料を両面の上塗り塗膜に含有させるか、並びに/又は片面若しくは両面の下塗り塗膜にも含有させる場合には、含有量の下限はより低くすることができる。
本発明は塗膜が3層以上である場合にも適用できる。その場合にも最外層の塗膜に上記の耐端面赤錆性防錆顔料を0.5〜30質量%の量で含有させる。その際、最内層以外の内層(例えば中層)にもこの顔料を30質量%以下の量で含有させることができる。ここで中層にも耐端面赤錆性防錆顔料を含有させることができる条件は、中層よりもさらに内層側の塗膜に、該端面赤錆性防錆顔料を含まないことである。この場合、中層にも該端面赤錆性防錆顔料を含有できる理由は以下のように考えられる。
塗膜が下層、中層、上層の3層の場合を例にとって説明すると、前述の上塗り塗膜に上記(A)〜(C)の要件を満たす防錆顔料を実質的な量で含んだ際のブリスター抑制効果と同様、中層に該(A)〜(C)の要件を満たす防錆顔料を実質的な量で含んだ場合で、かつ、下層に上記(A)、(B’),(C)の各要件を満たす防錆顔料を実質的に含まない下塗り塗膜が存在する場合は、該下塗り塗膜が水のバリア層の役目をすることにより、水の溜まり場所である鋼板と下塗り塗膜界面まで水が進行しにくくなるため、大きな塗膜膨れは発生しない。ここで、水が中層とその上下の塗膜界面に溜まらない理由は、塗膜と塗膜の界面には水の溜まり場所がないためと考えられる。
塗装基材の板厚0.8mmの溶融亜鉛めっき鋼板(亜鉛付着量:片面当たり45g/m2、寸法:300×250mm)に、常法に従ってアルカリ脱脂及び水洗を行った後、日本ペイント性のシリカ系クロムフリー化成処理液(サーフコートEC2330)を用いて化成処理を両面に施した。化成処理は、付着量がSi付着量で4〜8mg/m2となるように実施した。
表1に示した各種の防錆顔料から選んだ防錆顔料を、防錆顔料を含有しない市販の下塗り塗料及び上塗り塗料に添加して、両面用の下塗り塗料、おもて面用の上塗り塗料、及びうら面用の上塗り塗料を調製した。表1に示した防錆顔料のうち、リン酸亜鉛ハイドロカルマイト、亜リン酸カルシウムハイドロカルマイト、及び亜リン酸マグネシウムは、いずれも東邦顔料製のそれぞれNP-530 N20、NP-1020C N20、及びNP-1802であった。トリポリリン酸アルミニウムはテイカ製K-WHITE #82、シリカは洞海化学工業製H-31、カルシウムイオン交換シリカは富士シリシア化学製シールデックスであった。それ以外の顔料はいずれも一般試薬であった。
ベース塗料として使用したのは、おもて面、うら面共に下塗り塗料が日本ファインコーティングス社製のポリエステル系塗料(IP512プライマーのクリヤータイプ、主樹脂分子量10000以上、架橋剤:メラミン)、おもて面上塗り塗料は白色顔料としてチタニアを含有する日本ファインコーティングス社製の焼付け型ポリエステル樹脂塗料(IPT206-CF585、主樹脂分子量約8000、架橋剤:メラミン)、うら面上塗り塗料は日本ファインコーティングス社製の焼付け型ポリエステル樹脂塗料(IPT236-CF756、主樹脂分子量約3000、架橋剤:メラミン)であった。
使用した防錆顔料の種類は、両面用の下塗り塗料については表2に、おもて面用の上塗り塗料については表3に、うら面用の上塗り塗料については表4にそれぞれ示す。添加した防錆顔料は、塗料重量100gに対して20gのガラスビーズを入れた容器をハイブリッドミキサーで20分間攪拌することにより、塗料中に均一に分散させた。
これらの塗料を用いて、表5に記載のいずれかの塗装順序及び焼付け温度で塗装を行い、表6に示す塗膜構成を有する塗装鋼板のサンプルを得た。塗装はバーコータで行い、塗装厚みは、下塗り塗膜はおもて面側が11μm、うら面側が5μm、上塗り塗膜はおもて面側が16μm、うら面側が10μmに統一した。
こうして得られた塗装鋼板について、耐端面赤錆性、湿潤試験時の塗膜膨れの有無、耐食性を下記の試験により評価した。試験結果も表6に併記する。
(1)端面赤錆試験1
塗装鋼板の各サンプルについて、1cm×4cmの長方形サイズ(端面長さの和は10cm)の試験片をシャーリングにて10個ずつ切り出し(各サンプルにおける合計の端面長さは1m)、10個の試験片を別々にビーカー内のイオン交換水20ml中に浸漬する。ビーカーを40℃の恒温槽に96時間放置した後、試験片を取り出し、各試験片の端面からの赤錆発生状況(端面から発生した赤錆により変色した溶液の色調を観察)を測定する。評価基準は次の通りである:
◎:赤錆発生無(溶液は透明で着色無し)、
○:端面から若干の赤錆発生(溶液は透明、薄く赤色に着色)、
△:赤錆発生あり(溶液中に赤錆の固形分が少しあり、赤茶色に着色)、
×:大量の赤錆発生(溶液中に赤錆の固形分が多量にあり、濃い赤茶色に着色)。
(2)端面赤錆試験2
図1に模式的に示す試験片を作製し、湿潤試験条件(温度:49℃、相対湿度95%以上)に96時間放置した後の、各試験片の端面からの赤錆発生状況(図1記載の端面赤錆評価部位の赤錆発生状況)を目視にて測定する。評価基準は次の通りである:
◎:赤錆発生無(端面から赤錆発生が見られない)、
○:端面から若干の赤錆発生(長さ10mm未満の端面に赤錆発生あり)、
△:赤錆発生あり(長さ10mm以上、30mm未満の端面に赤錆発生あり)、
×:大量の赤錆発生(端面のほぼ全長(30mm以上)に赤錆発生あり)。
なお、図1の試験片は、塗装鋼板から打ち抜きにより作製した3枚の板を、スペーサーを使って支え板に図示のような配置で接着することにより作製した。スペーサーと支え板はいずれもポリ塩化ビニル製であった。図1の点線部の拡大部は、打ち抜いた際のバリを模擬的に示す。打ち抜きでは、このように端部にバリが残り、図1のように配置した隣接する板の接触部では、実際にはバリ間に微小な隙間ができ、水がこの隙間から侵入しうる。エアコン室外機では、後で配管を接合できるように、たたいたらとれるようにバリで接続した加工部分を形成することがある。本試験は、このようなバリ部分からの水の浸入を模擬した試験である。
(3)塗膜膨れ試験
塗装鋼板の各サンプルから70mm×150mmのサイズの試験片をシャーリングにより切り出し、この試験片を上記と同様の湿潤試験条件下に96時間放置した後、平面部における塗膜膨れ(ブリスター)の発生状況(膨れ幅)を測定する。評価基準は次の通りである:
○:塗膜膨れの発生がほとんど無い(最大膨れ幅が2mm未満)、
×:幅2mm以上の塗膜膨れが多数発生。
(4)耐食性試験
塗装鋼板の各サンプルから塗膜膨れ試験と同じサイズに切り出した試験片に、素地鋼板に達する深さのクロスカットを入れた後、これに96時間の塩水噴霧試験を行う。その後、試験片のクロスカット部(疵部)からの塗膜膨れ幅(最大値)を測定する。評価基準は下記の通りである:
○:塗膜膨れ幅が2mm未満、
△:2mm以上、4mm未満、
×:4mm以上。
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表6に示した試験結果からわかるように、上塗り塗膜が従来のクロム酸ストロンチウムを防錆顔料として含有するNo.33の塗装鋼板は、全ての試験項目において○以上の良好な性能を示したが、クロムフリーではない。また、耐端面赤錆性2が同1より結果が低下していて、バリ部分の耐食性が低くなる傾向を示した。
一方、そのようなクロム酸系防錆顔料を全く使用しない、完全にクロムフリーの塗装鋼板であっても、本発明に従っておもて面とうら面の少なくとも一方の上塗り塗膜に耐端面赤錆性防錆顔料を添加したNo.1〜30の塗装鋼板は、評価が○以上の良好な耐端面赤錆性に加え、塗膜膨れと疵部耐食性もNo.33のクロム酸塩系防錆顔料の場合と同等であり、耐端面赤錆性に加えて耐食性も良好であることが確認された。なお、おもて面の上塗り塗膜では記号あ〜うが、うら面の上塗り塗膜では記号A〜C、G及びHが、そのような防錆顔料を含有する塗膜である。また、耐端面赤錆性については、赤錆性1と赤錆性2の試験結果が全例で同じ結果を示し、バリ部で接続する加工を施しても、赤錆発生が効果的に防止されることがわかる。
これに対し、上塗り塗膜と下塗り塗膜のどちらも耐端面赤錆性防錆顔料を含有していないNo.31、32、34、35の比較例では、下塗り塗膜又は下塗り塗膜と上塗り塗膜に含有させた防錆顔料が水溶性の低いトリポリリン酸アルミニウムだけであったため、湿潤試験条件下での塗膜膨れと塩水噴霧試験での疵部耐食性は良好であったが、耐端面赤錆性はよくなかった。一方、本発明では上塗り塗膜に含有させる耐端面赤錆性防錆顔料を下塗り塗膜に含有させた表2のNo.2〜13、15〜29の下塗り塗膜を形成したNo.36〜47、52〜66の比較例では、上塗り塗膜がそのような防錆顔料を含有しないため、湿潤試験条件下で平面部に端面からの塗膜膨れが多数発生することが確認された。この場合、耐端面赤錆性防錆顔料が下塗り塗膜には含有されているにもかかわらず、耐端面赤錆性も大きく低下した。これは、下塗り塗膜から防錆顔料が溶出して塗膜膨れが起こった結果、端面に十分な量の耐端面赤錆性防錆顔料が供給されなくなったためではないかと推測される。
実施例で耐端面赤錆性試験に用いた試験片の形状と配置を示す説明図である。

Claims (7)

  1. Zn含有めっき層を有するめっき鋼板からなる塗装基材の少なくとも片面に層以上の塗膜が形成された塗装鋼板であって、前記塗膜の最外層の塗膜が下記(A)〜(C)を満たす非クロム化合物を防錆顔料として0.5〜30質量%含有することを特徴とするクロムフリー塗装鋼板。
    (A)イオン交換水に0.1質量%濃度で溶解させた時のpHが7以上、12以下;
    (B)イオン交換水に0.1質量%濃度で溶解させた時の電気伝導度が500μS/cm
    以上;並びに
    (C)200℃までに熱分解を生じない。
  2. 前記2層以上の塗膜最外層以外の少なくとも1層の塗膜がクロムを含有しない1種または2種以上の防錆顔料(2種以上の場合は前記非クロム化合物を含んでいてもよい)を10〜60質量%含有する、請求項1に記載の塗装鋼板。
  3. 前記非クロム化合物がトリポリリン酸ナトリウムであり、前記最外層の塗膜が溶剤系塗料から形成された塗膜である、請求項1に記載の塗装鋼板。
  4. 前記最外層の塗膜の厚みが3μm以上、30μm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の塗装鋼板。
  5. 前記塗装基材と前記塗膜の間にクロムを含有しない化成処理皮膜を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の塗装鋼板。
  6. 前記最外層以外の少なくとも1層の塗膜が含有する防錆顔料がトリポリリン酸アルミニウム及びCa交換シリカから選ばれ、かつ、この塗膜が下記の要件を満たす防錆顔料を含でいないことを特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の塗装鋼板。
    (A)イオン交換水に0.1質量%濃度で溶解させた時のpHが7以上、12以下;
    (B’)イオン交換水に0.1質量%濃度で溶解させた時の電気伝導度が700μS/cm以上;並びに
    (C)200℃までに熱分解を生じない。
  7. 塗装基材の少なくとも片面に2層以上の塗膜が形成された塗装鋼板における最外層塗膜を形成するためのクロムフリー溶剤系塗料であって、下記(A)〜(C)を満たす非クロム化合物を防錆顔料として塗料中の全固形分に基づいて0.5〜30質量%含有することを特徴とする塗料。
    (A)イオン交換水に0.1質量%濃度で溶解させた時のpHが7以上、12以下;
    (B)イオン交換水に0.1質量%濃度で溶解させた時の電気伝導度が500μS/cm以上;並びに
    (C)200℃までに熱分解を生じない。
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