JP4987194B2 - 燃料電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、固体高分子電解質膜を備えた燃料電池に関し、特に、低温起動性に優れた燃料電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池の中には、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟持して、膜・電極構造体を形成し、この膜・電極構造体を一対のセパレータで挟持したものがある。この燃料電池は、アノード電極の発電面に燃料ガス(例えば、水素ガス)を、カソード電極の発電面に酸化剤ガス(例えば、酸素を含む空気)供給して化学反応を行い、この間に生じた電子が外部回路に取り出され、直流の電気エネルギーとして利用される。カソード電極においては酸化剤ガス(例えば、酸素を含む空気)が供給されているため、水素イオン、電子、及び酸素が反応して水が生成される。したがって、環境に与える影響が少ないため車両の駆動源として注目されている。
【0003】
一般に、この種の燃料電池の作動温度は70℃〜80℃程度とされているが、低温時においては発電効率が低下するため低温時における始動性が大きな課題となっている。したがって、燃料電池を車両用として用いた場合に、外気温が低い状態、例えば、氷点下で起動しようとすると始動までに時間がかかるという問題がある。これに対して、例えば、特表2000−512068号公報に記載されているように、燃料電池の外部負荷に電力を供給することで反応を促進し、自己発熱により温度を上昇させて始動性を向上させるものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の自己発熱を用いた技術では、例えば、起動時に燃料電池が氷点下となっているような場合に、熱容量の大きい燃料電池全体を自己発熱だけで加熱するにはある程度長い時間が必要となってしまうという問題がある。また、燃料電池を暖機するために燃料電池を発電させているのであるが、燃料電池の自己発熱だけでは熱量が不足し、暖機中に燃料電池で生じた生成水が凍結する虞もあった。
そこで、この発明は、燃料電池の発電面の一部を加熱手段により局所的に加熱することによって自己発熱を促進し、短時間で燃料電池を温度上昇可能にして低温起動性に優れた燃料電池を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、固体高分子電解質膜(例えば、後述する実施の形態における固体高分子電解質膜4)の両側にアノード電極(例えば、後述する実施の形態におけるアノード電極2)とカソード電極(例えば、後述する実施の形態におけるカソード電極3)が設けられ、さらに前記各電極の外側にそれぞれ反応ガス通路(例えば、後述する実施の形態における燃料ガス通路A1,A2、空気通路C1,C2)が設けられてなるセル(例えば、後述する実施の形態におけるセル5)を備えた燃料電池(例えば、後述する実施の形態における燃料電池1)において、前記セルにおける発電面の一部の領域を加熱する加熱手段(例えば、後述する実施の形態における電気ヒーター33、電気ヒーター53、触媒65、酸化・還元剤72)を備え、前記燃料電池は前記セルを複数積層してなり、隣接する少なくとも1組のセル同士は、前記加熱手段が、発電面を正面から見たときに発電面上において異なる位置にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0006】
このように構成することにより、燃料電池の低温起動時に、加熱手段によって発電面の前記一部の領域を迅速に加熱することができ、この領域における固体高分子電解質膜のイオン通過抵抗を低下させて発電効率を高め、これにより自己発熱を促進して当該領域の温度を速やかに高め、この高温度領域を発電面全体に拡大して燃料電池の温度を高めることが可能となる。また、前記セル間を電流が流れるときにセルの積層方向と垂直な方向に電流が流れるようになり、その電流の通路が電気抵抗を有することからジュール熱が発生し、燃料電池を加熱する。
【0007】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記加熱手段は電気ヒーター(例えば、後述する実施の形態における電気ヒーター33、電気ヒーター53)であることを特徴とする。このように構成することにより、加熱手段を電気エネルギーで作動することが可能になる。
【0008】
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載の発明において、前記セルは冷却液通路(例えば、後述する実施の形態における冷却液通路R)を備え、この冷却液通路に前記電気ヒーター(例えば、後述する実施の形態における電気ヒーター33)が設けられていることを特徴とする。このように構成することにより、電気ヒーターをセルに容易に取り付け可能になる。
【0009】
【0010】
請求項に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記加熱手段は触媒燃焼器(例えば、後述する実施の形態における触媒65)であることを特徴とする。このように構成することにより、触媒燃焼器に酸化ガス(例えば、酸素や空気)と還元ガス(例えば、水素)を供給するだけでこれらガスを迅速に燃焼させ、発電面の一部を迅速に加熱することが可能になる。
【0011】
請求項に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記加熱手段は、酸化・還元剤(例えば、後述する実施の形態における酸化・還元剤72)が酸化するときの発熱を利用するものであることを特徴とする。このように構成することにより、酸化ガス(例えば、酸素や空気)を供給するだけで発電面の一部を迅速に加熱することが可能になる。
【0012】
請求項に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記燃料電池の温度に応じて前記加熱手段の作動を制御することを特徴とする。このように構成することにより、燃料電池の温度が低いときだけ加熱手段を作動してセルの発電面の一部を局所的に加熱し、燃料電池の温度が高いときは加熱手段の作動を停止してセルの局所的な加熱を停止することが可能になる。
【0013】
請求項に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記燃料電池の出力電圧に応じて前記加熱手段の作動を制御することを特徴とする。このように構成することにより、燃料電池の出力電圧が低いときだけ加熱手段を作動してセルの発電面の一部を局所的に加熱し、燃料電池の出力電圧が高いときは加熱手段の作動を停止してセルの局所的な加熱を停止することが可能になる。
【0014】
請求項に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記各セルの温度に応じて前記加熱手段の作動を制御することを特徴とする。このように構成することにより、各セルの温度状態に応じて加熱手段を作動したり停止したりすることが可能になる。
【0015】
請求項に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記各セルの出力電圧に応じて前記加熱手段の作動を制御することを特徴とする。このように構成することにより、各セルの出力電圧の状態に応じて加熱手段を作動したり停止したりすることが可能になる。
【0016】
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係る燃料電池の実施の形態を図14および図15の図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態および参考例における燃料電池は燃料電池自動車に搭載される態様である。
【0018】
参考例1
初めに、この発明に係る燃料電池の前提となる技術の参考例1を図1から図6の図面を参照して説明する。図2は燃料電池1の一部における縦断面図である。燃料電池1は、固体高分子電解質膜4をアノード電極2とカソード電極3とで挟持し、さらにその外側を一対のセパレータ6,7で挟持してなるセル(単位燃料電池)15を水平方向に複数積層して構成されており、図示しないスタッドボルトにより締め付けられて、例えば、車両用の燃料電池スタックが構成される。尚、この参考例1では説明の都合上、単一のセル5を例にして説明する。
【0019】
前記固体高分子電解質膜4は、例えば、パーフルオロスルホン酸ポリマー等を用いている。また、アノード電極2、カソード電極3は白金Ptを主体としたものであって、多孔質カーボンクロス又は多孔質カーボンペーパーからなる拡散層に配設されている。セパレータ6,7は緻密質カーボン製や金属製のもので、これらセパレータ6,7から電力を取り出す。
【0020】
図1はカソード側のセパレータ7を膜・電極構造体5に対向する側から見た正面図である。このカソード側のセパレータ7は上半部と下半部とに区画された反応ガス通路C1,C2を備えている。ここで、緻密質カーボン製のセパレータの場合は反応ガス通路は複数の溝で構成され、金属製のセパレータの場合はプレス成形により形成された複数の溝部やシール材で仕切られて形成された通路で構成されている。また、反応ガス通路C1,C2としては、蛇行した通路や、U字の通路など様々な形状の通路を採用することができる。尚、図示都合上アノード側のセパレータ6の反応ガス通路を鎖線で併記する。
【0021】
カソード側のセパレータ7の上半部の反応ガス通路C1は、該カソード側のセパレータ7の右側辺部の下部に形成された入口側酸化剤ガス連通孔10に端を発し、対角方向に配置された出口側酸化剤ガス連通孔11で終端している。同様にして、カソード側のセパレータ7の下半部にも上半部と同様の構成の反応ガス通路C2、及び入口側酸化剤ガス連通孔10、出口側酸化剤ガス連通孔11が形成されている。ここで、前記各入口側酸化剤ガス連通孔10は、供給配管(供給路)13を介してスーパーチャージャーS/Cに接続され、モータmにより駆動するスーパーチャージャーS/Cから酸化剤ガスである空気が供給されるようになっているが、下半部側の供給配管13には空気の供給を遮断するバルブ14が介装されている。
【0022】
一方、アノード側のセパレータ6も、カソード側のセパレータ7に対応して上半部と下半部とに区画された反応ガス通路A1,A2を備えている。つまり、カソード側の反応ガス通路C1,C2に交叉するように、アノード側のセパレータ6の左側辺部の下部に形成された入口側燃料ガス連通孔20に端を発し、対角方向に配置された出口側燃料ガス連通孔21で終端した反応ガス通路A1,A2が上半部と下半部に各々形成されている。ここで、前記各入口側燃料ガス連通孔20は、供給配管23を介して水素タンクH2に接続されているが、下半部の供給配管23には水素ガスの供給を遮断するバルブ24が介装されている。尚、水素タンクH2に替えて、改質装置を備えたメタノールタンクを使用してもよい。
【0023】
そして、アノード側のセパレータ6、及びカソード側のセパレータ7の下側辺部には一対の入口側冷却液連通孔30,30が、アノード側のセパレータ6、カソード側のセパレータ7の上側辺部には一対の出口側冷却液連通孔31,31が形成されている。そして、アノード側のセパレータ6に、対向する前記各冷却液連通孔30,31同志を結ぶ冷却液通路Rが形成されている。この冷却液通路Rは図示しない冷却系配管に接続されている。
【0024】
上記カソード側のセパレータ7及びアノード側のセパレータ6の上半部に対応するカソード電極3及びアノード電極2の発電面(すなわち、図1において反応ガス通路C1の存在する部分)が、局所発電領域(図3において破線で示す領域)S1として構成されており、この領域S1における両冷却液通路Rには、図2に示すように電気ヒーター(加熱手段)33が設けられている。この電気ヒーター33はいわゆる薄膜ヒーターで構成されており、セパレータ7において反応ガス通路C1,C2が形成されていない側の表面であって前記領域S1の両冷却液通路R,Rに対応する部位に、印刷あるいは蒸着等の適宜手段により形成される。
【0025】
このように構成されたセル5を多数積層してなる燃料電池1においては、一方の最外側のカソード側のセパレータ7と、他方の最外側のアノード側のセパレータ6の端子部材(図示せず)によって、燃料電池1から出力を取り出す閉回路が形成され、燃料電池1の出力電力により走行用モータMや外部負荷F(後述する実施形態の電気ヒーターも含む)を駆動させるようになっている。
【0026】
また、図2に示すように、複数あるセル5のうちの一つのセル5のセパレータ7には、前記領域S1内の所定部位(例えば、領域S1の中央部)に、燃料電池1の代表温度を検出する温度センサ34が設けられている。温度センサ34は例えばサーミスタ等で構成されており、この温度センサ34の出力信号は燃料電池制御用のECU50に入力される。さらに、この燃料電池1においては、各セル5の出力電圧を検出するために、各セル5のセパレータ6,7に電圧センサ36が接続されており、電圧センサ36の出力信号はECU50に入力される。
【0027】
また、ECU50は、前記水素タンクH2、スーパーチャージャーS/Cのモータm、前記水素タンクH2に接続された供給配管のバルブ24、スーパーチャージャーS/Cに接続された供給配管13のバルブ14に接続されている。ECU50は燃料電池1の起動時には図示しないバッテリーに蓄電されている電力により作動される。
【0028】
このように構成された燃料電池1は、全面発電モードにおいて次のように動作する。全面発電モードでは、上下二系列ある反応ガス通路A1,A2および反応ガス通路C1,C2の両方に水素ガスおよび空気を流し、左右二系列ある冷却液通路R,Rの両方に冷却液を流す。すなわち、入口側燃料ガス連通孔20に水素ガスを供給して反応ガス通路A1,A2に水素ガスを流し、出口側燃料ガス連通孔21に排出する。また、スーパーチャージャS/Cを駆動して入口側酸化剤ガス連通孔10に空気を供給し反応ガス通路C1,C2に空気を流し、出口側酸化剤ガス連通孔11に排出する。さらに、入口側冷却液連通孔30に冷却液を供給して冷却液通路R,Rに冷却液を上向きに流し、出口側冷却液連通孔31に排出する。これにより、全セル5の発電面全面で発電が行われる。
【0029】
ところで、固体高分子電解質膜を備えた燃料電池は、温度が低いと発電効率が低下することは前述した通りである。また、外気温が氷点下(例えば−10℃)となるような低温時においては、停止時において除去しきれなかった燃料電池1内の生成水は反応ガス通路C1,C2,A1,A2の溝の一部で凍結している場合が多い。このような条件下で燃料電池1を起動する場合に前記全面発電モードで起動したのでは、燃料電池1の温度上昇に時間が長くかかってしまう。
【0030】
そこで、この燃料電池1では、このような低温起動時には、燃料電池1を迅速に温度上昇させるために局所発電モードで動作するようにし、局所発電モードでの運転により燃料電池1の温度が上昇してから、全面発電モードに移行するようにしている。局所発電モードでは、両冷却液通路R,Rに冷却液を流さず、水素供給系のバルブ24を閉弁することにより水素ガスは上半部側の反応ガス通路A1だけに流して下半部側の反応ガス通路A2には流さず、空気供給系のバルブ14を閉弁することにより空気は上半部側の反応ガス通路C1だけに流して下半部側の反応ガス通路C2には流さず、さらに電気ヒーター33をONにする。このようにすると、各セル5において上半部側の局所発電領域S1だけが発電面となり、各セル5の下半部側は発電に寄与しなくすることができる。
【0031】
そして、電気ヒーター33に電流を流すことにより、電気ヒーター33が発熱し、その熱がセパレータ6,7を介してアノード電極2,カソード電極3,固体高分子電解質膜4に伝熱し、これらを迅速に加熱する。その結果、領域S1において局所的な発電が迅速に行われることとなる。また、迅速に発電が行われることにより反応による自己発熱が促進され、電気ヒーター33による加熱と自己発熱により局所発電領域S1の温度が速やかに高まる。
【0032】
ここで、発電の際の反応熱量と電気ヒーター33による外部アシスト熱量の和が、発電により生じる生成水の凍結防止に必要な熱量と放熱量の和よりも大きくなるように、電気ヒーター33の発熱量を制御することにより、生成水の凍結を阻止することができる。換言すれば、生成水凍結に起因した電圧低下により燃料電池1が運転停止する前に(すなわち、燃料電池1の出力電圧が運転限界電圧まで降下する前に)、各セル5の局所発電領域S1の温度を0゜C以上に昇温することができる。これによって、局所発電領域S1における発電を持続させることができ、他の部分(例えば、セル5の下側半分)が氷点下であっても燃料電池1全体としては発電を持続することができるようになる。
【0033】
また、局所発電領域S1における局所発電による自己発熱と電気ヒーター33の発熱によって生じた熱が、局所発電領域S1の周囲へも伝熱していき、図4に示すように、各セル5の下半部側も徐々に加熱されるようになり、燃料電池1を早期に加熱することができる。
【0034】
さらに、局所発電領域S1の発電を持続することができることにより、燃料電池1の運転に最小限必要なエネルギー(すなわち、スーパーチャージャ等の補機の運転に必要な電力)を燃料電池1の発電によって確保することが可能になる。また、局所発電モードでは、局所発電領域S1だけを発電できる状態に保てばよいので、電気ヒーター33でセル5の全面を加熱するようにした場合に比較して小さなエネルギーで済み、局所発電モードにおける消費電力を抑制することができる。
【0035】
さらに、低温起動前に事前処理(例えば、反応ガス通路C1,C2内のパージや起動前の電気ヒーター33による予備加熱など)を行う場合も、局所発電領域S1だけを起動可能な状態にすればいいので、この事前処理のためのエネルギー消費を低減することができる。
【0036】
次に、燃料電池1の起動制御の一例を図5のフローチャートを参照して説明する。まず、ステップS101において、イグニッションスイッチがONか否か判定する。ステップS101の判定結果が「YES」(イグニッションスイッチON)である場合はステップS102に進み、ステップS101の判定結果が「NO」(イグニッションスイッチOFF)である場合は本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0037】
ステップS102においてシステムチェックを行った後、ステップS103に進み、システムに異常がないか否か判定する。ステップS103の判定結果が「YES」(異常なし)である場合はステップS104に進み、ステップS103の判定結果が「NO」(異常あり)である場合はステップS105に進む。ステップS104においては、温度センサ34で検出した燃料電池1の内部代表温度が0゜Cよりも低いか否か判定する。ステップS104の判定結果が「NO」(0゜C以上)である場合はステップS106に進み、全面発電モードに移行する。ステップS104の判定結果が「YES」(0゜C未満)である場合はステップS107に進み、局所発電モードに移行する。
【0038】
ステップS107における局所発電モードでは、前述したように、両冷却液通路R,Rに冷却液を流さず、全セル5の電気ヒーター33をONにして局所発電領域S1を加熱し、各セル5の上半部側の反応ガス通路A1、反応ガス通路C1にだけ水素ガスおよび空気を供給することにより局所発電領域S1における局所発電を実行する。
【0039】
そして、ステップS108において、燃料電池1の内部代表温度が0゜C以上の設定温度(例えば、2゜C)より低いか否か判定し、判定結果が「YES」(2゜C未満)である場合はステップS107に戻り、判定結果が「NO」(2゜C以上)である場合はステップS106に進む。すなわち、燃料電池1の内部代表温度が前記設定温度(2゜C)未満の間は局所発電モードによる燃料電池1の運転を継続し、燃料電池1の内部代表温度が前記設定温度(2゜C)以上に昇温したならば局所発電モードを終了して全面発電モードに移行することとなる。局所発電モードの終了により、電気ヒーター33をOFFにする。
【0040】
ステップS106の全面発電モードでは、前述したように、両冷却液通路R,Rに冷却液を流し、各セル5の両反応ガス通路A1,A2に水素ガスを流し、両反応ガス通路C1,C2に空気を流して、全セル5の発電面全面を使って発電を実行する。なお、ステップS105に進んだ場合は異常処理モードに移行して、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0041】
なお、前記起動制御では、燃料電池1の内部代表温度に基づいて局所発電モードに進むか否かおよび全面発電モードに移行するか否かを判定しているが、これに代えて、燃料電池1の総出力電圧に基づいて局所発電モードに進むか否かおよび全面発電モードに移行するか否かを判定するようにしてもよい。
【0042】
また、前記起動制御では、局所発電モードに進んだときには全てのセル5の電気ヒーター33をONにし、全セル5の局所発電領域S1を加熱するようにしているが、本発明においては、各セル5毎に該セル5の電気ヒーター33をONするか否かを判定してもよいし、あるいは複数のセル5を1モジュールとして各モジュール毎に該モジュールの電気ヒーター33をONするか否かを判定してもよい。このようにすると、電気ヒーター33による加熱が必要なセル5を絞り込むことができるので、局所発電モードにおいて消費されるエネルギーを低減することができる。
【0043】
各セル5毎に電気ヒーター33をONするか否かを判定する場合には、例えば、各セル5毎に温度センサ34を設けておき、局所発電領域S1の温度が0゜C未満であると判定されたセル5についてだけ該セル5の電気ヒーター33をONにし、該セル5の局所発電領域S1の温度が2゜C以上になったときに該電気ヒーター33をOFFにする。
【0044】
また、各モジュール毎に電気ヒーター33をONするか否かを判定する場合には、例えば、各モジュール毎に温度センサ34を設けておき、局所発電領域S1の温度が0゜C未満であると判定されたモジュールについてだけ該モジュールの全てのセル5の電気ヒーター33をONにし、該モジュールの局所発電領域S1の温度が2゜C以上になったときに該モジュールの電気ヒーター33をOFFにする。
【0045】
さらに、このように各セル5毎あるいは各モジュール毎に温度センサ34を設けた場合には、バッテリー(図示せず)の電力残量に応じて以下のような節電モードで電気ヒーター33のON−OFF制御を行ってもよい。まず、局所発電モードに移行したときに、全ての電気ヒーター33をONしても燃料電池1の運転を維持可能なだけの電力がバッテリー(図示せず)に残っているか否かを判定し、残っている場合には電気ヒーター33を通常の制御方法で制御し、残っていない場合には電気ヒーター33を節電モードで制御する。
【0046】
節電モードでは、例えば各セル5毎に電圧低下率を算出する。そして、各セル5毎に制御する場合には、電圧低下率が正(電圧低下している)のセル5の電気ヒーター33だけをONにし、電圧低下率が負(電圧低下が生じていない)のセル5の電気ヒーター33はOFFにする。また、モジュール毎に制御する場合には、電圧低下率が正(電圧低下している)のセル5を一つでも有するモジュールについては該モジュールの全てのセル5の電気ヒーター33をONにし、モジュールの全てのセル5の電圧低下率が正であるモジュールについては該モジュールの全てのセル5の電気ヒーター33をOFFにする。このようにすると、局所発電モードにおいて消費されるエネルギーをさらに低減することができる。
【0047】
また、前記燃料電池1では、両冷却液通路R,Rにおいて反応ガス通路A1と反応ガス通路C1とが重複する部分に対応する領域の全てに電気ヒーター33を設けて局所発電領域S1としたが、前記重複する部分に対応する領域の一部(例えば、中央部)だけに電気ヒーター33を設けて、この一部だけを局所発電領域とすることも可能である。また、電気ヒーター33の設置位置は冷却液通路Rに限定されるものではなく、各通路セパレータ6,7の内部に埋め込んでも構わない。
【0048】
また、前述の参考例1では、局所発電モードのときには、上半部側の反応ガス通路A1,C1にだけ水素ガスと空気を流すようにしているが、局所発電モードのときに上下両方の反応ガス通路A1,A2に水素ガスを流し、上下両方の反応ガス通路C1,C2に空気を流すようにしても構わない。このように、発電面の全体に反応ガスを供給した場合には、まず、電気ヒーター33により温度上昇した上半部側の局所発電領域S1において発電が始まり、この発電による自己発熱および電気ヒーター33の加熱による熱が下半部側の発電面に広がって下半部側も温度上昇するにしたがって、下半部側の発電面においても発電を開始するようになる。
【0049】
さらに、前述の参考例1では、反応ガス通路A1,A2,C1,C2をそれぞれ水平方向に延びる直線通路としているが、これら反応ガス通路A1,A2,C1,C2は直線通路に限るものではなく、例えば、図6に示すように、入口側酸化剤ガス連通孔10を左側辺部上部に、出口側酸化剤ガス連通孔11を右側辺部下部に、入口側燃料ガス連通孔20を右側辺部上部に、出口側燃料ガス連通孔21を左側辺部下部に位置させて、反応ガス通路A1,C1を蛇行させてもよい。この場合には、反応ガスは反応ガス通路A1,C1を蛇行しながら下降するように流れることとなる。
【0050】
そして、この場合、両冷却液通路R,Rにおいて電気ヒーター33を設ける領域、すなわち局所発電領域S1を、例えば図6において二点鎖線で示すように、反応ガス通路A1,C1の最上段の水平部が重複する部位に対応する領域に設定することができる。なお、局所発電領域S1の設定はこれに限るものではなく、もっと広範囲な領域に設定することもできるし、もっと狭小な範囲に設定することもできる。このようにしても、前述と同様の作用・効果を得ることができる。
【0051】
参考例2
次に、この発明に係る燃料電池に関連する技術の参考例2を図7および図8の図面を参照して説明する。参考例2の燃料電池が参考例1のものと相違する点は電気ヒーターの設置場所にある。参考例1では電気ヒーター33を冷却液通路Rの一部に設けたが、この参考例2では、冷却液通路Rには電気ヒーターを設置せず、積層された多数のセルを締め付けるスタッドボルトに電気ヒーターを内蔵させている。
【0052】
詳述すると、図7はカソード側のセパレータ7の正面図であり、参考例1と同一態様部分には同一符号を付してある。この参考例2の燃料電池1においては、上部3カ所と下部3カ所に配置されたスタッドボルト(締め付けボルト)40によって、積層された全てのセルが締め付けられている。この6本のスタッドボルト40のうち上部中央に配置されたスタッドボルト40Aだけに電気ヒーターが内蔵されている。
【0053】
図8はスタッドボルト40Aの断面図であり、スタッドボルト40Aの基材51の外周には絶縁層52が設けられ、この絶縁層52の外周に電気ヒーター(加熱手段)53が設けられ、電気ヒーター53の外周に絶縁層54が設けられている。絶縁層52,54は、電気ヒーター53と基材51および外部(燃料電池1など)との絶縁性を確保するとともに耐久性を持たせるために、ガラス繊維をベースとしたテフロン(登録商標)樹脂等で形成されている。また、外側の絶縁層54には温度センサ55が埋め込まれている。温度センサ55と電気ヒーター53は温度調節器56に接続されており、温度調節器56は、スタッドボルト40Aの表面温度、すなわち絶縁層54の表面温度が常に所定温度範囲(例えば、50〜70゜C)になるように、電気ヒーター53を制御する。
【0054】
この参考例2においては、局所発電モードのときにスタッドボルト40Aの電気ヒーター53をONにしてスタッドボルト40Aを加熱することにより、各セル5におけるスタッドボルト40Aの周囲を加熱し、このスタッドボルト40Aの近傍領域を局所発電領域S2とすることができる。この参考例2の場合には、電気ヒーター53によって局所発電領域S2の発電面の温度が迅速に高まり高温度部位が発生し、この局所発電領域S2から局所発電が始まり、さらに、この高温度部位が熱伝導によって徐々に上半部側の発電面の全体に広がって、上半部側の発電面の全体で局所発電が行われるようになる。したがって、この参考例2の燃料電池1においても、参考例1のものと同様の作用・効果を得ることができる。
【0055】
この参考例2の燃料電池1は、上述した例に限られるものではなく、例えば、スタッドボルト40の総本数や配置によって、電気ヒーター53を内蔵したスタッドボルト40Aの本数を2本以上に設定してもよいし、スタッドボルト40Aの位置を適宜に設定することが可能である。また、この参考例2の燃料電池1においても、反応ガス通路の通路形態は水平直線状以外の通路形態(例えば、図6に示す蛇行通路)とすることが可能である。
【0056】
参考例3
次に、この発明に係る燃料電池の前提となる技術の参考例3を図9および図10の図面を参照して説明する。参考例3の燃料電池が参考例1のものと相違する点は、セル5を局所的に加熱するための手段にある。前述した参考例1の場合には、冷却液通路Rの一部に電気ヒーター33を設け、この電気ヒーター33に電流を流すことによりセル5を局所的に加熱したが、参考例3では、冷却液通路Rに電気ヒーターを設ける代わりに、セル5の所定部位に触媒燃焼器を設け、この触媒燃焼器において水素と空気中の酸素とを触媒燃焼させることにより、セル5における触媒燃焼器近傍を局所的に加熱するようにした。以下、これについて詳述する。
【0057】
図9は参考例3における燃料電池1の一部における縦断面図であり、参考例1における図2に対応する図である。燃料電池1の基本的な構成は、参考例3のものも参考例1と同じであり、図9では同一態様部分に同一符号を付してある。また、図10はアノード側のセパレータ6を冷却液通路Rが形成されている側から見た正面図である。
【0058】
燃料電池1には、参考例1の燃料電池1と同様に、入口側酸化剤ガス連通孔10,出口側酸化剤ガス連通孔11,入口側燃料ガス連通孔20,出口側燃料ガス連通孔21,入口側冷却液連通孔30,出口側冷却液連通孔31が設けられており、セパレータ6の一方の面には冷却液通路R,Rが設けられている。なお、図10には図示していないが、セパレータ6の他方の面に反応ガス通路A1,A2が設けられており、セパレータ7に反応ガス通路C1,C2が設けられている点は、参考例1と同様である。
【0059】
参考例3の燃料電池1においては、さらに、出口側燃料冷却液連通孔31,31の間に2つの連通孔がセル5を貫通して設けられ、入口側冷却液連通孔30,30の間に1つの連通孔がセル5を貫通して設けられている。上部に設けられた前記2つの連通孔のうち一方は水素ガスを供給するための水素ガス連通孔61であり、他方は空気を供給するための空気連通孔62である。また、下部に設けられた前記1つの連通孔は燃焼ガスを排出するための排気連通孔63である。
【0060】
さらに、各セル5におけるセパレータ6には、冷却液通路R,Rが設けられている面と同一面であって冷却液通路R,Rの間に、水素ガス連通孔61と空気連通孔62と排気連通孔63を接続するガス通路64が設けられている。ガス通路64は、水素ガス連通孔61に連なるガス通路と空気連通孔62に連なるガス通路が合流し、合流後のガス通路が排気通路63に連なるように構成されており、合流部(図10においてハッチング部分)の壁面には、水素と空気中の酸素とを反応をさせる触媒(触媒燃焼器、加熱手段)65が付着されている。また、複数あるセパレータ7のうちの一つには、触媒65を付着させた部位近傍に対応する位置に、燃料電池1の代表温度を検出する温度センサ69が設けられている。温度センサ69は例えばサーミスタ等で構成されており、この温度センサ69の出力信号は燃料電池制御用のECU50に入力される。
【0061】
水素ガス連通孔61は制御弁66を介して水素供給装置67に接続され、空気連通孔62は空気供給装置68に接続されており、制御弁66,水素供給装置67,空気供給装置68は燃料電池制御用ECU50によって制御される。前述した参考例1では低温起動時の局所発電モードにおいて電気ヒーター33をONすることによりセル5を局所的に加熱したが、この参考例3の燃料電池1では、低温起動時の局所発電モードにおいて、水素供給装置67から水素ガス連通孔61に水素ガスを供給し、空気供給装置68から空気連通孔62に空気を供給して、各連通孔61,62から各セル5のガス通路64に流入した水素ガスと空気中の酸素を合流部における触媒65によって反応させ、この反応熱で合流部を中心とする近傍を局所的に加熱する。これによって、参考例3においても、各セル5に局所発電領域S3を形成することが可能になり、参考例1と同様の作用・効果を得ることができることとなる。
【0062】
しかも、この参考例3の燃料電池1では、水素ガスと空気中の酸素を触媒燃焼させているので大きな熱エネルギーを得ることができるとともに温度上昇の立ち上がりが早く、その結果、電気ヒーター33よりも迅速な加熱が可能となる。また、水素は燃料電池1の燃料でもあるので、燃料の一元化が可能となり、装置構成が容易になるという利点もある。
【0063】
次に、参考例3における燃料電池1の起動制御の一例を図11のフローチャートを参照して説明する。ステップS201〜ステップS205については、参考例1の起動制御におけるステップS101〜ステップS105と同じであるので説明を省略する。この参考例3において、ステップS204で否定判定してステップS206に進み全面発電モードとなった場合には、水素供給装置67からの水素ガス連通孔61への燃焼用水素の供給を停止するとともに、空気供給装置68からの空気連通孔62への空気の供給を停止する。そして、両冷却液通路R,Rに冷却液を流し、各セル5の反応ガス通路A1,A2に水素ガスを流し、反応ガス通路C1,C2に空気を流して、全セル5の発電面全面を使って発電を実行する。
【0064】
一方、ステップS204で肯定判定してステップS207に進み局所発電モードとなった場合には、冷却液通路R,Rに冷却液を流さず、各セル5の上半部側の反応ガス通路A1,C1にだけ水素ガスおよび空気を供給する。さらに、空気供給装置68から空気連通孔62に燃焼用の空気を供給するとともに、水素供給装置67から水素ガス連通孔61に燃焼用の水素ガスを供給することにより、局所発電領域S3における局所発電を実行する。なお、燃焼用水素の供給量は、予め用意しておいたマップを参照して、燃料電池1の内部代表温度に応じてECU50が決定し、これに基づきECU50は制御弁66による流量制御を実行する。
【0065】
そして、ステップS208において、燃料電池1の内部代表温度が0゜C以上の設定温度(例えば、2゜C)より低いか否か判定し、判定結果が「YES」(2゜C未満)である場合はステップS207に戻って局所発電モードを継続し、判定結果が「NO」(2゜C以上)である場合はステップS206の全面発電モードに進む。
【0066】
なお、前記起動制御では、燃料電池1の内部代表温度に基づいて局所発電モードに進むか否かおよび全面発電モードに移行するか否かを判定しているが、これに代えて、燃料電池1の総出力電圧に基づいて局所発電モードに進むか否かおよび全面発電モードに移行するか否かを判定するようにしてもよい。また、前記起動制御では、燃料電池1の内部代表温度が0゜Cよりも高い場合には全面発電モードに移行するようにしたが、燃料電池1の内部代表温度が0゜C以上であっても、その温度が比較的に低い温度域(例えば、15゜C以下)である場合には、微量の燃焼用水素と燃焼用空気をガス通路64に供給することにより微暖機を実行して、燃料電池1の温度上昇を促進させることも可能である。さらに、前記微暖機の実行条件に、いずれかのセル5に電圧低下があることを加重させてもよい。
【0067】
また、この参考例3では、局所発電モードのときには、上半部側の反応ガス通路A1,C1にだけ水素ガスと空気を流すようにしているが、局所発電モードのときに上下両方の反応ガス通路A1,A2に水素ガスを流し、上下両方の反応ガス通路C1,C2に空気を流すようにしても構わないのは、参考例1と同様である。また、この参考例3の燃料電池1においても、参考例1の場合と同様に、反応ガス通路の通路形態は水平直線状以外の通路形態(例えば、図6に示す蛇行通路)とすることが可能である。
【0068】
参考例4
次に、この発明に係る燃料電池の前提となる技術の参考例4を図12および図13の図面を参照して説明する。参考例4の燃料電池の構成は、参考例3のものと極めて近似している。参考例3では、セル5の所定部位に触媒燃焼器を設け、この触媒燃焼器において水素と空気中の酸素とを触媒燃焼させてセル5を局所的に加熱するようにしたが、この参考例4は、セル5の所定部位に酸化・還元剤を設け、この酸化・還元剤が酸素によって酸化される時の発熱を利用してセル5を局所的に加熱するようにしている。
【0069】
図12は参考例4における燃料電池1の一部における縦断面図であって、参考例3における図9に対応する図であり、図9と同一態様部分には同一符号を付してある。また、図13は参考例4におけるセパレータ6を冷却液通路Rが形成されている側から見た正面図であって、参考例3における図10に対応する図であり、図10と同一態様部分には同一符号を付してある。
【0070】
参考例4における燃料電池1では、出口側冷却液連通孔31,31の間にセル5を貫通して設けた連通孔は一つであり、この連通孔(以下、ガス連通孔という)70に水素供給装置67と空気供給装置68が接続されている。また、セパレータ6には冷却液通路R,Rの間に、ガス連通孔70と排気連通孔63を接続するガス通路71が設けられており、ガス通路71の上流部分(すなわち、ガス連通孔70に近い部分)の壁面には、図13においてハッチングで示すように酸化・還元剤(加熱手段)72が付着されている。
【0071】
前述した参考例3では低温起動時の局所発電モードにおいて、水素ガスと空気を同時にガス通路64に供給し、合流部における触媒65によって水素ガスと空気中の酸素を反応させ、その反応熱によってセル5を局所的に加熱した。しかしながら、この参考例4では、低温起動時の局所発電モードにおいて、ガス連通孔70には空気供給装置68から空気だけを供給し、水素ガスは供給しない。このようにすると、ガス通路70に供給された空気が各セル5のガス通路71に流入し、ガス通路71の上流部分の酸化・還元剤72が空気中の酸素と反応して酸化する時に発熱し、この反応熱がガス通路71の上流部分を中心とする近傍を局所的に加熱する。これによって、参考例4においても、各セル5に局所発電領域S4を形成することが可能になり、参考例3と同様の作用・効果を得ることができることとなる。
【0072】
そして、この参考例4では、局所発電モードの終了とともにガス連通孔70への空気の供給を停止し、水素供給装置67からガス連通孔70に所定量の水素ガスを供給する。これにより、酸化・還元剤72は水素と反応して還元されて元に戻り、このときに吸熱する。
【0073】
発明の実施の形態〕
次に、この発明に係る燃料電池の実施の形態を図14および図15の図面を参照して説明する。前述した各参考例では、燃料電池1を構成する全てのセル5においてその発電面の正面から見て同じ位置に局所発電領域S1〜S4を設けていた。これに対して、この発明の実施の形態では、図14,図15に示すように、隣接するセル5同士において局所発電領域Sの位置を発電面において異なった位置に設ける。このようにすると、局所発電モードにおいてセル5,5間を電流が流れるときに、セパレータ6,7においては図15において矢印で示すようにセル5の積層方向に対して垂直な方向に電流が流れるようになり、セパレータ6,7の電気抵抗分の損失によりジュール熱が発生し、燃料電池1の暖機をより促進させることができる。
【0074】
なお、この実施の形態において局所発電領域Sの形成方法は特に限定はないが、前述した参考例1の如くセパレータの一部(冷却液通路など)に電気ヒーターを設ける方法が特に好適であり、また、参考例3および参考例4の如くセル5に触媒燃焼器や酸化・還元剤を設ける方法も可能である。また、隣接する全てのセル5同士の局所発電領域Sの位置を異ならせてもよいし、モジュール毎に局所発電領域Sの位置を異ならせるようにしてもよい。
【0075】
【発明の効果】
以上説明するように、請求項1に記載した発明によれば、燃料電池の低温起動時に、加熱手段によって発電面の一部の領域を迅速に加熱することができ、この領域における固体高分子電解質膜のイオン通過抵抗を低下させて発電効率を高め、これにより自己発熱を促進して当該領域の温度を速やかに高め、この高温度領域を発電面全体に拡大して燃料電池の温度を高めることが可能となるので、発電面全体を自己発熱により加熱した場合よりも起動時間を短縮することができ、燃料電池の低温起動性を高めることができるという効果がある。
さらに、請求項1に記載した発明によれば、加熱手段が異なった位置に設けられているセル間を電流が流れるときに、セルの積層方向と垂直な方向に電流が流れるようになり、その電流の通路が電気抵抗を有することからジュール熱が発生し、このジュール熱によっても燃料電池が加熱されるので、燃料電池の温度上昇をさらに早めることが可能になり、燃料電池の低温起動性をさらに高めることができるという効果がある。
【0076】
請求項2に記載した発明によれば、加熱手段を電気エネルギーで作動することができるという効果がある。
請求項3に記載した発明によれば、電気ヒーターをセルに容易に取り付けることができるという効果がある。
【0077】
請求項に記載した発明によれば、触媒燃焼器に酸化ガスと還元ガスを供給するだけでこれらガスを迅速に燃焼させて発電面の一部を迅速に加熱することが可能であるので、加熱手段の構成が簡単になるという効果がある。また、迅速な加熱を実現できるので、燃料電池の温度上昇をさらに早めることが可能になり、燃料電池の低温起動性をより高めることができるという効果がある。
【0078】
請求項に記載した発明によれば、酸化ガスの供給だけで発電面の一部を迅速に加熱することが可能になるので、加熱手段の構成が簡単になるという効果がある。また、迅速な加熱を実現できるので、燃料電池の温度上昇をさらに早めることが可能になり、燃料電池の低温起動性をより高めることができるという効果がある。
【0079】
請求項に記載した発明によれば、燃料電池の温度が低いときだけ加熱手段を作動してセルを局所的に加熱し、燃料電池の温度が高いときは加熱手段の作動を停止してセルの局所加熱を停止することが可能になるので、エネルギー消費を低減することができるという効果がある。
【0080】
請求項に記載した発明によれば、燃料電池の出力電圧が低いときだけ加熱手段を作動してセルを局所的に加熱し、燃料電池の出力電圧が高いときは加熱手段の作動を停止してセルの局所加熱を停止することが可能になるので、エネルギー消費を低減することができるという効果がある。
【0081】
請求項に記載した発明によれば、各セルの温度状態に応じて加熱手段を作動したり停止したりすることが可能になるので、エネルギー消費を低減することができるという効果がある。
請求項に記載した発明によれば、各セルの出力電圧の状態に応じて加熱手段を作動したり停止したりすることが可能になるので、エネルギー消費を低減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る燃料電池の前提となる技術の参考例1におけるセパレータの正面図である。
【図2】前記参考例1の燃料電池の縦断面図である。
【図3】前記参考例1の燃料電池において加熱部分が広がる様子を示す図である。
【図4】前記参考例1の燃料電池において加熱部分が広がる様子を示す図である。
【図5】前記参考例1の燃料電池における起動制御の一例を示すフローチャートである。
【図6】前記参考例1の燃料電池の変形例におけるセパレータの正面図である。
【図7】この発明に係る燃料電池に関連する技術の参考例2におけるセパレータの正面図である。
【図8】前記参考例2の燃料電池におけるスタッドボルトの断面図である。
【図9】この発明に係る燃料電池の前提となる技術の参考例3における縦断面図である。
【図10】前記参考例3の燃料電池におけるセパレータの正面図である。
【図11】前記参考例3の燃料電池における起動制御の一例を示すフローチャートである。
【図12】この発明に係る燃料電池の前提となる技術の参考例4における縦断面図である。
【図13】前記参考例4の燃料電池におけるセパレータの正面図である。
【図14】この発明に係る燃料電池の実施の形態において、隣接するセル間の局所発電領域Sの位置関係を示す正面図ある。
【図15】前記実施の形態において、隣接するセル間を流れる電流の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 燃料電池
2 アノード電極
3 カソード電極
4 固体高分子電解質膜
5 セル
A1,A2,C1,C2 反応ガス通路
R,R 冷却液通路
33 電気ヒーター(加熱手段
3 電気ヒーター(加熱手段)
65 触媒(触媒燃焼器,加熱手段)
72 酸化・還元剤(加熱手段)

Claims (9)

  1. 固体高分子電解質膜の両側にアノード電極とカソード電極が設けられ、さらに前記各電極の外側にそれぞれ反応ガス通路が設けられてなるセルを備えた燃料電池において、
    前記セルにおける発電面の一部の領域を加熱する加熱手段を備え、
    前記燃料電池は前記セルを複数積層してなり、隣接する少なくとも1組のセル同士は、前記加熱手段が、発電面を正面から見たときに発電面上において異なる位置にそれぞれ設けられていることを特徴とする燃料電池。
  2. 前記加熱手段は電気ヒーターであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  3. 前記セルは冷却液通路を備え、この冷却液通路に前記電気ヒーターが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池。
  4. 前記加熱手段は触媒燃焼器であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  5. 前記加熱手段は、酸化・還元剤が酸化するときの発熱を利用するものであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  6. 前記燃料電池の温度に応じて前記加熱手段の作動を制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  7. 前記燃料電池の出力電圧に応じて前記加熱手段の作動を制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  8. 前記各セルの温度に応じて前記加熱手段の作動を制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  9. 前記各セルの出力電圧に応じて前記加熱手段の作動を制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
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