JP4986031B2 - 低温岩盤貯槽 - Google Patents
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Description
但し、このような凍結式は貯蔵温度が極めて低いと岩盤に温度クラックが発生することが懸念されることから、貯蔵温度は−60℃〜−80°C程度が限界とされ、したがってDME(沸点−25℃)やLPG(沸点−42℃)のような比較的貯蔵温度が高い燃料の場合には好適に採用可能であるが、LNG(沸点−162℃)のような極低温流体には不適であるとされている。
そのため、凍結式の低温岩盤貯槽の施工に際しては、貯槽としての空洞を掘削するに先立ってその上方に大規模な注水トンネルや注水ボーリング孔を先行施工し、そこから空洞掘削領域の周囲岩盤に対して人工的な地下水涵養としての多量の注水を連続的に行うことによって周囲岩盤を常に飽和状態に維持しつつ空洞を掘削する必要があるとされ、そのために多大な手間とコストを要するものであった。
したがって、メンブレン式の低温岩盤貯槽の施工に際しては、通常の土中工事の場合と同様に周囲岩盤から地下水を排水して地下水位を低下させることにより、施工領域をドライとして空洞を掘削し覆工を施工する必要がある。そして、そのためには空洞を掘削するべき領域の下方に集水および排水のための大規模な排水トンネルや排水ボーリング孔を先行施工し、そこから地下水を多量に汲み上げて地下水位を低下させて空洞周囲をドライに維持する必要があり、そのような大規模な排水工法を実施するために多大な手間とコストを要するものである。しかも、そのような工法によっても岩盤状況によっては必ずしも充分にドライにできないことも想定され、その場合には覆工時に地下水圧が作用して施工性が良くないばかりか施工品質に悪影響が及ぶ懸念がある。
そのような凍結防止手法をメンブレン式の低温岩盤貯槽の周囲岩盤に対しても適用すれば凍結膨張による覆工に対する弊害を防止できると考えられるが、それを実現するための具体的かつ有効適切な手法は提案されていない。
その場合においては、排水路網を形成する縦排水路および横排水路を、いずれも横断面形状が扁平な矩形断面の長尺帯板状の板状排水材により形成することが好ましい。
また、躯体コンクリート中に、吹付コンクリートを越えて浸入してくる地下水を集水して排水するための二次排水路網を埋設することも考えられる。
また、周囲岩盤には凍結領域が生じないことから周囲岩盤中の地下水は常に排水路網により集水されて速やかに排水されてしまい、したがって貯槽完成後に覆工に対して過大な地下水圧が外圧として作用することもなく、この点においても覆工の構造力学的な信頼性を向上させることができる。
さらに、施工段階においても排水路網を通して周囲岩盤からの排水を行うことが可能であり、それにより従来一般のメンブレン式の貯槽を施工する場合のように大がかりな排水トンネルや排水ボーリング孔を設けて周囲岩盤全体をドライにするような必要がなく、したがって施工性を十分に改善することができて工期短縮、工費削減に大きく寄与できるものである。
勿論、排水路網の内側にはそれに重なる位置に加温管路網を設けているので、排水路網が効果的に加温されて凍結してしまうことはなく、常に安定な集水と排水を確実に行うことができる。
また、躯体コンクリートにも同様の排水路網を設ければ、吹付コンクリートを越えて浸入してくる地下水をさらに集水して排水することができるので、より万全である。
本実施形態の低温岩盤貯槽は、岩盤に形成された略馬蹄形断面のトンネル状の空洞1の内面に、吹付コンクリート2、調整コンクリート3、躯体コンクリート4、保冷材5、メンブレン材6を順次積層状態で形成してメンブレン式の覆工を形成することにより、LNGやLPG、DME等の低温流体の貯槽(タンク)として機能するものであるが、本実施形態の低温岩盤貯槽が従来一般のものと異なる点は、吹付コンクリート2中に周囲岩盤からの地下水を常に集水して排水するための排水路網7が埋設されているとともに、躯体コンクリート4中には加温媒体を循環させることにより躯体コンクリート4およびその外側の温度を常に凍結温度以上に維持するための加温管路網8が埋設されている点にある。
空洞1を掘進しつつ必要に応じてロックボルトの打設を行い、空洞1の内面にコンクリートを吹き付けて吹付コンクリート2を形成していくが、その際には吹付コンクリート2中に図2〜図3に示すように排水路網7を埋設していく(図2では後段で施工する躯体コンクリート4を鎖線で示し、保冷材5およびメンブレン材6の図示は省略している)。
すなわち、空洞1の底面と周面には、空洞1の軸方向に沿う縦排水路7aおよび周方向に沿う横排水路7bとなる板状排水材がそれぞれ所定間隔で交差させた状態で配置されて、それらの全体で縦横の格子網としての排水路網7が形成されている。その排水路網7は空洞1の底面中央部に設けられた主排水溝9に接続されていて、その内部には有孔ヒューム管等の主排水管10が敷設されている。それら主排水溝9および主排水管10は坑口側に向かって下がり勾配としておいて自然流下による排水を行うと良い。
これにより、周囲岩盤からの地下水はこの排水路網7によって集水されて主排水管10を通して排水され、したがってこのような排水路網7を施工した以降は、後段の躯体コンクリート4や保冷材5、メンブレン材6の施工に際しても、また貯槽完成後にも、それらに大きな地下水圧が作用することはない。
加温管路網8は躯体コンクリート4の全面に対して温水やブライン等の加温媒体を強制循環させることによって躯体コンクリート4を加温し、それにより排水路網7はもとより周囲岩盤の凍結を防止するためのものである。
加温管路網8としては、躯体コンクリート4全体が可及的に均等な温度となって温度むらが生じないように、かつ循環抵抗が過大にならないように、その位置やピッチを適宜設定して設ければ良いが、本実施形態では多数本(図4では32本)の加温管8aを空洞1の軸方向に平行に敷設するとともに、図2に示すようにそれら加温管8aをいずれも上記の排水路網7を形成している縦排水路7aの内側に重なる位置に配置して、調整コンクリート3(調整コンクリート3を省略する場合にはその下地としての吹付コンクリート2)に対してサドル11を介してアンカー12により固定するものとしている。そして、図4〜図5に示すように複数本の加温管8aを1組として隣接している加温管8aの両端部どうしを交互に接続することによって、1系統の加温管路網8を空洞の軸方向に往復するような蛇行状態に形成している(図4では全32本の加温管8aを4本あるいは6本ずつで1系統として、全6系統の加温管路網8を設けた場合の例を示している)。
これにより、目地部4aでの止水性能が万一損なわれることを想定しても、その背面側に設置されている横排水路7bによって排水がなされることから、目地部4aを通して躯体コンクリート4の内側への漏水が生じる事態を未然に防止することができる。
なお、躯体コンクリート4を空洞1の周方向に打ち継ぐような場合には、空洞1の軸方向に沿う目地部を形成することになるので、その場合は縦排水路7aの内側の位置に目地部を設ける(その目地部の形成予定位置に予め縦排水路7aを形成しておく)と良い。
その際には、上述したように周囲の地下水は排水路網7により集水されて排水されてしまうので、覆工の施工段階では大きな地下水圧が作用することはなくその作業を効率的に実施することができる。
具体的には、たとえば加温媒体として温水を使用してその供給温度を15℃、還り温度を5℃に設定して、躯体コンクリート4各部の平均温度が10℃程度となるように維持するように制御する。このような制御を行うことにより、低温流体を貯蔵した後にも凍結線(0℃等温線)は加温管路網8の内側に留まり、その外側に凍結領域が生じることはない。
その解析により、温水による加温制御を行わない場合には、躯体コンクリート4の温度は運用開始後から急速に低下して約50年後(約18000日後)には−50℃にもなるのに対し、上記のような加温制御を行うことにより+5℃程度で安定してそれ以下となることはなく、したがって凍結領域が躯体コンクリート4の外側にまで達することがないことが確認できた。
しかも、施工段階においても排水路網7を通しての周囲岩盤からの排水を行うことが可能であり、それにより従来一般のメンブレン式の貯槽を施工する場合のように大がかりな排水トンネルや排水ボーリング孔を設けて周囲岩盤全体をドライにするような必要がなく、したがって施工性を十分に改善することができて工期短縮、工費削減に大きく寄与できるものである。
勿論、排水路網7の内側には加温管路網8を設け、しかも各加温管8aを縦排水路7aの内側に重なる位置に配置しているので、排水路網7が加温管路網8によって効果的に加温されて凍結してしまうことはなく、常に安定な集水と排水を確実に行うことができる。
たとえば、上記実施形態では排水路網7を縦排水路7aと横排水路7bとによる縦横の格子状に形成したが、それに限るものでもなく、空洞1の周囲全体からの集水と排水が可能であれば縦排水路7aのみあるいは横排水路7bのみを設けることでも良いし、逆にほぼ全面的にマット状の排水路網として設けることでも良い。
また、加温管路網8の構成も、躯体コンクリート4およびそのその外側の岩盤を効果的に加温でき、かつ躯体コンクリート4中の排水路網7の凍結を防止するようにその内側に重なるように設ければ良く、その限りにおいては上記実施形態のように加温管8aを軸方向に往復する蛇行状態に設けることに代えて、加温管を周方向に往復するような蛇行状態に設けたり、あるいは周方向に連続する一連の螺旋状態に形成することも考えられる。
すなわち、上記実施形態における排水路網7によって空洞1に流入してくる地下水の大半をこれにより集水し排水することを基本としつつ、図6に示すように躯体コンクリート4にも同様の二次排水路網20を設ければ、吹付コンクリート2および調整コンクリート3を越えて浸入してくる地下水をさらに集水して排水することができる。
その場合、二次排水路網20としては上記の排水路網7と同様に扁平な板状排水材を使用すると良く、それを(a)に示すように加温管8aの間に縦排水路20aとして設けるか、あるいは(b)に示すように縦排水路20aと横排水路20bとを格子状に設ければ良い。なお、横排水路20bを設ける場合には加温管8aと交差することになるので、加温管8aを横排水路20bの厚み相当分だけ調整コンクリート3の表面から浮かせた状態で配置すれば良い。
2 吹付コンクリート
3 調整コンクリート
4 躯体コンクリート
4a 目地部
5 保冷材
6 メンブレン材
7 排水路網
7a 縦排水路
7b 横排水路
8 加温管路網
8a 加温管
9 主排水溝
10 主排水管
11 サドル
12 アンカー
13 熱源装置
14 循環ポンプ
20 二次排水路網
20a 縦排水路
20b 横排水路
Claims (4)
- 岩盤内に掘削された空洞の表面に、吹付コンクリート、躯体コンクリート、保冷材、メンブレン材からなる覆工を形成し、その内部空間を低温流体を貯蔵するための貯槽とするメンブレン式の低温岩盤貯槽であって、
前記吹付コンクリート中に、周囲岩盤から地下水を集水して排水するための排水路網を埋設し、
前記躯体コンクリート中に、温水やブライン等の加温媒体を循環させることにより躯体コンクリート、吹付コンクリートおよび周囲岩盤を凍結温度以上に維持するための加温管路網を埋設するとともに、該加温管路網を前記排水路網の内側に重なる位置に配置してなることを特徴とする低温岩盤貯槽。 - 請求項1記載の低温岩盤貯槽であって、
空洞をトンネル状に掘削し、
吹付コンクリート中に埋設する排水路網を、該空洞の軸方向に沿う縦排水路と周方向に沿う横排水路とを交差させてなる縦横の格子網として形成し、
躯体コンクリート中に埋設する加温管路網を、前記排水路網における縦排水路の内側に重なる位置に配置した加温管の端部どうしを接続することによって空洞の軸方向に往復する蛇行状態に形成し、
かつ、躯体コンクリートをトンネル軸方向に打ち継いで形成するとともに、その打ち継ぎ部に形成する目地部をいずれかの横排水路の内側に重なる位置に形成してなることを特徴とする低温岩盤貯槽。 - 請求項2記載の低温岩盤貯槽であって、
排水路網を形成する縦排水路および横排水路を、いずれも横断面形状が扁平な矩形断面の長尺帯板状の板状排水材により形成してなることを特徴とする低温岩盤貯槽。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の低温岩盤貯槽であって、
躯体コンクリート中に、吹付コンクリートを越えて浸入してくる地下水を集水して排水するための二次排水路網を埋設してなることを特徴とする低温岩盤貯槽。
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