JP4986007B2 - シングルテール付き縫合方法及び装置 - Google Patents
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Description
本発明は一般に、コードの滑り及び係止ループの形成に関し、特に引き締めて係止できる縫合糸ループの外科的形成及び縫合技術に関する。
縫合は、事実上任意の外科手技において必要な局面である。縫合糸の種々の用途に取り組むために外科医により何年間にもわたって縫合糸を結束する多くの方法が開発された。例えば、組織の結紮又は近置の第2の又は係止スローを達成しているときに縫合糸に生じる滑りの量を最小限に抑えるために、外科医による結びが開発されたが、これは、止め結びが互いの周りの縫合糸端部の2つのラップを有するよう改良されたものであった。外科医が内視鏡環境下における結紮のために縫合糸のループを血管の周りに配置することができるようにローダーノット(Roeder knot)と呼ばれる別の結びが開発された。ローダーノットは、掴んで血管又は他の構造の周りに係止できる基本的に前もって結束されている引結びである。他の多くの結び、例えば米国特許第5,405,352号明細書に記載されたウェストンノット(Weston knot)は、可撓性、フープ応力の発生(縫合糸ループの引き締め)、安定性及び反転性を得るための結びの外科的要件の種々の他の特徴に取り組んでいる。
組織再建の方法を改良する他の試みが行われた。これら試みとしては、ステープラ及び繋留器械の開発が挙げられる。縫合糸を組織内に内視鏡を使って配置する際の上述の問題の幾つかに対応して、製造業者は組織用ステープラを開発した。これら器械は、紙を互いに保持するのに用いられるステープルと非常によく似た構造のステンレス鋼又はチタン製のステープルを利用している。これら種類のステープラの大きな欠点は、ステープラが体内に金属を残すということにある。或る組織に関してはこれは問題ではないが、或る手技では、組織内に残された金属製ステープルは、治癒プロセスにとって大きな障害となる場合がある。
内視鏡は別の手術様式として多くの外科医に疑いもなく好評であったが、有能で熟練の内視鏡医になるのに必要な最新技術及び手術時間は、外科界の大部分にとって難問であることが分かった。大規模患者管理(健康保持機関、即ちHMOの興隆及び成功の続行)により生じたコスト面の圧迫により、外科界は、内視鏡を用いて結束していた手技のうち幾つかの総合費用及び長期にわたる成果に批判的な目を投げるようになった。腹腔鏡による胆嚢摘出術(胆嚢除去)は過去8〜10年間では疑いもなくその価値を証明されていたが、他の多くの手技は、これに類似した費用効果の良さ及び確実な長期にわたる成果を示さなかった。
恐らくは、これら新手技の最も分かりやすい例は、冠動静脈バイパスと弁交換の両方に関する低侵襲心臓手術の出現である。心臓外科医が肋骨相互間に設けた小さな切開部を通して手技を行うことができるようにする心臓血管手術用の技法及びツールが利用され始めたが、従来においては、かかる手技は、大きな切開部及び心臓への接近を可能にするために胸骨の分離を必要とした。
腱及び他の軟質結合組織が関連の骨から断裂し又は剥離することが漸増している共通の問題である。かかる一形式の断裂又は剥離は、「ローテーターカフ(rotator cuff)」断裂であり、この場合、棘上筋の腱が上腕骨から分離し、それにより痛みが生じると共に腕を挙げたり外に回転させることができなくなる。完全な分離は、肩が大きな外傷を受けた場合に生じることがあるが、一般的には、断裂は特に年を取った患者において小さな病変部として始まる。
低侵襲関節鏡下術は、オープン外科的再建の欠点を解決しようとして開発され始めている。外科医の中には、三角筋の分断を最小限に抑える小さなトロカール門部を介して作業することにより、種々の形態の骨用アンカー及び縫合糸を用いてローテーターカフを再び取り付けることができる人があった。ローテーターカフを体内で縫合し、アンカーを再建に適した場所で骨内に打ち込む。縫合糸を、現在の方法を利用して関節鏡で作ることが困難又は不可能な経骨髄トンネルに通すのではなく、アンカー及び縫合糸を用いてカフを骨に押し付けて結束することにより再建を完了させる。低侵襲法の初期の結果は、有望なものであり、患者の回復期間と不快感の両方において相当な軽減が得られた。
したがって、縫合糸張力を測定して調節し、縫合糸が皮質骨表面の下に完全に位置し、外科医が縫合糸を骨用アンカーに取り付ける結びを作る必要がなく、正確な配置を得るための技術レベルが平均能力を持つ施術者に適している新規なローテーターカフの再建技術が要望されている。
したがって、本発明者は、縫合糸ループを作り、縫合材料を組織に固定する新規なシステム及び方法を開発した。これは、編組縫合糸の構成のユニークな特徴のうち幾つかを利用することにより行われた。通常は絹、綿又はポリエステル繊維で作られたこれら縫合糸は、8〜10プライの中空ダイヤモンド形編組又はブレードの状態に編み上げられる。1又は2本のコア繊維がダイヤモンドブレードの中間の下に延びる状態で設けられる場合が多い。本発明では、これらコア繊維は用いない。コア繊維に代えて、引張ループを用いるが、これについて以下に詳細に説明する。
本発明の内容は、その追加の特徴及び利点と共に、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むと最もよく理解されよう。
今特に図面を参照すると、図1aは、編組構造の張力を加えた縫合糸11を引張状態で示している。縫合糸に加わる張力は好ましくは、直径D及びピッチPのものであるよう縫合糸の特性を設定する。図1bは、圧縮状態の縫合糸13を形成するよう軸方向圧縮力が加えられた引張状態の縫合糸11を示しており、縫合糸ブレードは、そのピッチ及び直径が図示のように因子“n”により縫合糸に加わる軸方向圧縮力により影響を受けるよう設計されている。因子“n”は、直径がDの引張縫合糸11を圧縮状態の縫合糸13の中心に通すことができるような値のものである。因子“n”は又、圧縮縫合糸13の内部が縫合糸の操作に必要な器具の通過を更に可能にするような値のものである。
引張縫合糸11を圧縮縫合糸13中に通し、圧縮縫合糸13を更に操作して引張縫合糸11周りに引っ張ると、図1cに示すように引張縫合糸11と圧縮縫合糸13との間に長さLの結合インタフェース15が生じる。図示のように、結合インタフェース15の性状は、圧縮縫合糸13の張力、長さL(これは、先の圧縮縫合糸13の長さにほぼ等しい)及びインタフェース摩擦係数に直接関連している。結合インタフェース15の性状は更に、図1bに示すように圧縮縫合糸13の長手方向軸線19に対する縫合糸11,13の編組円筒形外壁18を形成する繊維17の向きの角度として定義される角度“Q”の値に直接関連している。具体的に説明すると、結合インタフェースの性状は、角度Qの正弦に関連している。本発明の重要な特徴は、縫合糸11,13相互間の結合インタフェースの程度を定めると共に制御し、それにより組織中の縫合糸を結合して固定する制御可能な手段を提供できるという本発明者の発見にある。図1cでは、結合インタフェース15は、縫合糸の境界部分24に沿って延び、この境界部分は、引張縫合糸11が(先の)圧縮縫合糸部分13の内部の中で延びる長さとほぼ同一の広がりを持っている。
1つの繊維束17(図1b)を考察すると、編組コード内のその束により描かれる幾何学的形状は、編組の上構造及び下構造に対応するよう完全な螺旋からはばらつきを持つが大まかには螺旋であることが分かる。1つの繊維束17に加わる力をモデル化する目的で、束に加わる力がストランド全体にわたり且つ縫合糸の長さに沿って終始一貫していると考え、束の1つの旋回部を考え、束を終始一貫した螺旋の状態に簡略化する。
T--- 中空コード又は縫合糸の張力
Q--- 中空コードの中心線に対して1つの繊維束のなす角度
r--- 中空コードに近似した薄肉筒体の半径
t--- 薄肉筒体の肉厚
L--- 中空コードの長さ
S--- 応力
b--- 中空コード中の繊維束の総数
w--- 1つの繊維束の幅
N--- 1つの繊維束により生じる法線力
p--- 中空コードの張力により生じる圧力
Ff--- 1つの繊維束により生じる力
F t --- 繊維束の全てbにより生じる総合力
今、摩擦係数μが単に材料の性質であり、k(1インチ当たりのピック)、L(長さ)、Q(中心線とピックのなす角度)、b(ピックの総数)は、設計パラメータである。したがって、定数k、L、Q、bを賢明に選択することにより、境界インタフェースを最適化する自動係止システムを開発することができる。
図13〜図16は、縫合糸の一方のテールが手技全体を通じて剛性であるのがよい別の実施形態を示している。この実施形態では(なお、図中、先の実施形態の要素と同一又は機能的に等価な要素は、数字3の次に同一の符号を付けて示されている)、縫合糸311は、突刺327の形態をしたフィッドが編組縫合糸31の圧縮部分313の中心を通ることができるようにする編組構造のものである。突刺327を当該技術分野において共通の器具により組織323に通す。剛性コンポーネント331が、圧縮部分313の内部に位置し、突刺が圧縮部分313を通って移動しているときに突刺327の操作を助けるよう働く。突刺327、特にその遠位突刺部分330を図14に示すように剛性コンポーネント331の遠位部分内に配置する。次に、図15に示すように、突刺327を縫合糸311の圧縮部分313の内部ルーメン329に引き込み、剛性コンポーネント331の遠位端部を引っ張ることによりこれをポート335中へ引き込む。次に、突刺327を図16に示すように圧縮縫合糸313から引き出し、任意的に切り取る。次に、圧縮縫合糸313を押して所望のループ幾何学的形状を作る。張力を縫合糸311の圧縮部分313に加えてその境界部分324を作り、結合インタフェース315は、境界部分324が引張状態にあるとき、縫合糸ループ321に境界端部を提供するようブレードの長さ及びピッチが設計されている。
1)“11”で終わる符号(以下、“11”で指示される)によって表される編組引張縫合糸、
2)“13”で終わる符号(以下、“13”で指示される)によって示された圧縮下にある結果として半径方向に拡張した縫合糸11の一部(“27”で終わる符号(以下、“27”で指示される)によって示されたフィッド又はこれに類似したテーパ剛性部分を任意的に用いることにより、縫合糸11の一方のテールがこの縫合糸の一部に通される)、
3)“31”で終わる符号(以下、“31”で指示される)により示されたキャッチ又はループ。
本発明の器械及び方法は、本発明の精神又は必須の要件から逸脱することなく他の具体的な形態で実施できる。上述の実施形態は、あらゆる点において、本発明を限定するものではなく、例示として考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。特許請求の範囲に記載された技術的事項の文言上の意味及び均等例に属する全ての変形例は、本発明の範囲に含まれるものである。
Claims (16)
- 内部ルーメンを構成する外壁から成る管状の幾何学的形状に互いに緩く編み上げられた複数本の可撓性フィラメントから成る構造を有する縫合糸であって、前記縫合糸の第1の部分を圧縮状態下に置くと、前記第1の部分の外壁が半径方向に拡張され、前記第1の部分の内部ルーメンの直径の大きさが、圧縮状態にない前記縫合糸構造の第2の部分を前記第1の部分の内部ルーメン内に収容できるほど十分増大するようになっており、前記縫合糸の第2の部分が第1の部分の内部ルーメン内に配置された状態で、次に前記縫合糸の第1の部分を引張状態下に置くと、第1の部分の内部ルーメンの直径は、前記縫合糸の第2の部分を内部に捕捉し、第1の縫合糸部分と第2の縫合糸部分との間に結合インタフェースを形成するほど十分減少し、それにより前記第2の縫合糸部分を前記第1の縫合糸部分の内部ルーメン内の軸方向位置に係止するようになっており、
一本の前記縫合糸の端部は、前記縫合糸の第1の部分内への前記縫合糸端部の挿入を容易にするようになったツールを有していることを特徴とする縫合糸。 - 前記第1の部分は、一本の前記縫合糸の任意の部分から成ることを特徴とする請求項1記載の縫合糸。
- 前記外壁のウィーブは、前記第2の縫合糸部分を前記内部ルーメンに挿入し、前記壁を形成するフィラメント相互間でこれを通すことができるほど十分緩くされていることを特徴とする請求項2記載の縫合糸。
- 前記ツールは、針から成ることを特徴とする請求項1記載の縫合糸。
- 前記ツールは、フックから成ることを特徴とする請求項1記載の縫合糸。
- 内部ルーメンを構成する外壁から成る管状の幾何学的形状に互いに緩く編み上げられた複数本の可撓性フィラメントから成る構造を有する縫合糸であって、前記縫合糸の第1の部分を圧縮状態下に置くと、前記第1の部分の外壁が半径方向に拡張され、前記第1の部分の内部ルーメンの直径の大きさが、圧縮状態にない前記縫合糸構造の第2の部分を前記第1の部分の内部ルーメン内に収容できるほど十分増大するようになっており、前記縫合糸の第2の部分が第1の部分の内部ルーメン内に配置された状態で、次に前記縫合糸の第1の部分を引張状態下に置くと、第1の部分の内部ルーメンの直径は、前記縫合糸の第2の部分を内部に捕捉し、第1の縫合糸部分と第2の縫合糸部分との間に結合インタフェースを形成するほど十分減少し、それにより前記第2の縫合糸部分を前記第1の縫合糸部分の内部ルーメン内の軸方向位置に係止するようになっており、
縫合糸の内側部分は、外壁及び前記縫合糸の第1の部分の内部ルーメンを通る前記縫合糸の端部の挿入及びナビゲーションを助けるコンポーネントを含むことを特徴とする縫合糸。 - 前記コンポーネントは、前記縫合糸端部を受け入れ、それにより前記外壁のウィーブへの前記縫合糸端部の挿入を容易にするようになっていることを特徴とする請求項6記載の縫合糸。
- 前記縫合糸端部は、前記外壁のウィーブを通る前記端部の挿入を助けるツールを有し、前記ツールは、前記コンポーネントに係合するようになっていることを特徴とする請求項7記載の縫合糸。
- 前記コンポーネントは、前記ツールに係合するよう前記外壁のウィーブを貫通して延びる付属物から成ることを特徴とする請求項8記載の縫合糸。
- 前記付属物は、前記ツールの一部を掴むフックから成ることを特徴とする請求項9記載の縫合糸。
- 複数の身体部分を互いに固定するシングルテール付き縫合糸であって、遠位部分及び近位部分を有し、内部ルーメンを構成する編組外壁を有する1本の編組縫合材料から成り、前記編組縫合材料は、前記身体部分のうちの1つを貫通して延び、前記編組縫合材料の遠位端部は、前記縫合糸の遠位部分の所定長さが前記縫合糸の近位部分の所定の長さのルーメン内に配置されるよう前記近位部分の外壁を貫通して延びており、前記縫合糸の近位部分の前記所定長さは、前記縫合糸の遠位部分の所定長さと前記縫合糸の近位部分の所定長さとの間に結合インタフェースを形成して縫合糸ループを形成するよう引張状態にあり、
前記縫合糸の遠位端部は、前記縫合糸の近位部分のルーメン内への前記縫合糸の遠位端部の導入を助けるフィッドを有していることを特徴とするシングルテール付き縫合糸。 - 複数の身体部分を互いに固定するシングルテール付き縫合糸であって、遠位部分及び近位部分を有し、内部ルーメンを構成する編組外壁を有する1本の編組縫合材料から成り、前記編組縫合材料は、前記身体部分のうちの1つを貫通して延び、前記編組縫合材料の遠位端部は、前記縫合糸の遠位部分の所定長さが前記縫合糸の近位部分の所定の長さのルーメン内に配置されるよう前記近位部分の外壁を貫通して延びており、前記縫合糸の近位部分の前記所定長さは、前記縫合糸の遠位部分の所定長さと前記縫合糸の近位部分の所定長さとの間に結合インタフェースを形成して縫合糸ループを形成するよう引張状態にあり、
当該シングルテール付き縫合糸は、前記縫合糸の近位部分を通る前記縫合糸の遠位端部の挿入及びナビゲーションを助けるために前記縫合糸の近位部分から拡張可能な構造を更に有していることを特徴とするシングルテール付き縫合糸。 - 前記構造は、前記縫合糸の遠位端部に設けられたフィッドに係合するようになった付属物から成ることを特徴とする請求項12記載のシングルテール付き縫合糸。
- 前記縫合糸ループのサイズは、張力を前記縫合糸の近位部分に加える前に、前記縫合糸の近位部分の前記所定長さの場所を調節することにより調節可能であることを特徴とする請求項11又は12記載のシングルテール付き縫合糸。
- 前記編組縫合材料は、縫合材料が前記内部ルーメン内に配置されていない状態で引張状態下に置かれた場合、直径Dを有し、前記縫合材料が圧縮状態下に置かれた場合、直径D×nを有し、nは、1.5〜15の値を取ることを特徴とする請求項11又は12記載のシングルテール付き縫合糸。
- nは、2〜4の値を取ることを特徴とする請求項15記載のシングルテール付き縫合糸。
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