JP4980370B2 - 腹部大動脈瘤を補強するための血管内送達が可能なステント - Google Patents

Description

本発明は一般に、血管を補強するための血管内送達が可能なステントに関し、より詳細には、特に腹部大動脈瘤（ＡＡＡ）に対処するために設計されたステントに関する。

大動脈瘤は、心臓から体の他の部分に血液を運ぶ主要な血管である大動脈の脆弱な部位である。大動脈は心臓から上向きに胸部内を延び、次いでアーチ状に下向きになり、胸部内を通り（胸部大動脈）、腹部（腹部大動脈）へと延びる。腹部大動脈の通常の直径は約１インチ（２．５４ｃｍ）である。

血液が大動脈を通って流れると、この脆弱な部位は風船のように膨らみ、風船が大きくなりすぎると破裂することがある。

最も一般的には、大動脈瘤は腎動脈起始部より下の血管の部分で起きる。動脈瘤は、股関節及び骨盤に延びる供給血管に及ぶこともある。

動脈瘤が直径５ｃｍに達すると、破裂を防ぐ処置が必要であると通常は考えられている。５ｃｍ未満であれば、動脈瘤破裂のリスクは、通常の手術リスクがある患者での従来の手術のリスクより低い。動脈瘤の治療の目的は、その破裂を防ぐことである。ＡＡＡが破裂すると、生存の可能性は低く、動脈瘤が破裂した全患者の８０〜９０パーセントが死亡する。これらの死亡は、動脈瘤を検出して破裂前に治療することによって防ぐことができる。

ほとんどの大動脈瘤は腹部大動脈で起き、主な原因は動脈硬化である。これは、脂肪堆積物が動脈壁に溜まった状態であり、この結果として、弾力性が低く、より脆弱となる。動脈硬化の主な危険因子は、喫煙及び高血圧、並びに遺伝的因子である。

ＡＡＡは、発症したときにその症状から診断することができるが、多くの場合、それでは遅すぎる。ＡＡＡは一般に定期健診や胸部及び腹部Ｘ線で発見される。検査では、医師は腹部に脈動する腫瘤を感じることがある。医師は動脈瘤を疑うと、おそらく超音波スキャンの実施を要求する。コンピュータ断層撮影（ＣＴ）及び磁気共鳴画像法（ＭＲＩ）などの他のスキャンを実施することもある。これらのスキャン技術は、動脈瘤の正確な位置を判断するために非常に有用である。

ＡＡＡを治療するための外科手術では、大動脈の罹患した部分を合成グラフトで置換する必要があり、これは通常、正常で健康な大動脈の特性と非常に類似した特性を有する弾性材料から作製された管を含む。この主要な手術は一般に非常に成功率が高く、死亡率は２〜５パーセントである。ＡＡＡの破裂による死亡のリスクは、手術中であっても約５０％である。

より最近では、動脈瘤の修復を行うために開腹手術を実施する代わりに、血管外科医は、患者の血管に通された細長いカテーテルを使用して動脈瘤の部位へと送り込んで血管内ステント／グラフトを配置する。一般に、外科医は患者の鼠径部に小さい切開を行い、次いで収縮された自己拡張式又はバルーン拡張式のステント／グラフトを含む送達用カテーテルを、動脈瘤を跨ぐ（ｂｒｉｄｇｅ）位置へ挿入し、その位置で送達用カテーテルの遠位端からステント／グラフトを送り出し、ステント／グラフトをその位置の大動脈のほぼ正常な直径へと拡張し、又は拡張させる。もちろん、ステント／グラフトは、その管腔を通じて血液を流し、動脈瘤から圧力を取り除く管状構造物である。時間の経過とともに、ステント／グラフトは内皮細胞で覆われステントの外壁と動脈瘤の間の空間は最終的に凝固した血液で満たされる。このとき、動脈瘤は大動脈の圧力を受けなくなり、したがって成長が停止する。

ＡＡＡを治療する際、腹部大動脈から分岐する腎動脈を通る血流を塞がないように、ステントを正確に配置することが重要である。

Ａｍｐｌａｔｚらの米国特許第６，９３２，８３７号では、選択された血管又は他の管状器官の管腔部位を移植するために設計された収縮可能なステント／グラフトが記載されている。ステント／グラフトは、形状記憶合金の複数のストランドから作製された織物又は編み物を含む。織物は管として形成され、デバイスの各端部は開口して、その中を流体が通ることができるようになっている。デバイスは長手方向に伸長することができ、それにより直径が小さくなり、送達用カテーテルの管腔内部への挿入が可能となる。ステント／グラフトは、送達用カテーテルの遠位端から放出されると、治療しようとする管状の血管の壁面に係合するのに十分な所定の外径へと自己拡張する。

’８３７号特許のデバイスは冠状ステントとしての使用には完全に適しているが、ＡＡＡの血管内治療には十分に適していない。このデバイスは均一な織物であるが、必然的に、動脈瘤が大動脈の血圧に曝されることを制限するには不十分なワイヤ密度となる。また、このステント／グラフトが腎動脈の開口を侵害する場合、必然的に腎臓への血流が不適切に制限されることになる。

したがって、ＡＡＡの治療において、血管内アプローチを使用して配置することができるが腎臓への血流を不適切に塞ぐことのない、ステント／グラフトが必要とされている。本発明はこのようなデバイスを提供する。

本発明は、第１の長さを有する最も内側の管状構造物を含む、ＡＡＡを治療するためのカテーテルで送達可能な血管内ステントを提供する。これは形状記憶合金からなる複数の編み込まれたワイヤストランドを含む。編み目構造のピック及びピッチは、最も内側の管状構造物の壁面を通る血流を大きく妨げないよう十分に大きな開口部を規定するように選択される。所定の直径であり、最も内側の管状構造物の長さより短い、少なくとも１つの他の管状構造物によって、最も内側の管状構造物が囲まれている。この他の管状構造物はまた、最も内側の管状構造物を構成するストランドの数より多い数の、複数の編み込れたワイヤストランドを含む。この他の編み込まれた管状構造のワイヤストランドはまた形状記憶合金を含み、その編み目構造は、血流がそれを通ることを実質的に排除するのに十分に小さな開口を規定するピック及びピッチを有する。同軸に配設された最も内側の管状構造物と他の管状構造物を長手方向に伸長することによって、デバイスの外径が、血管内送達用カテーテルの管腔に搭載できるよう十分に縮小する。ステントを送達用カテーテルから放出することによって、その外径が大動脈の壁面によって制限されるように、もとの所定の直径へと再び拡張することを可能とする。

最も内側の管状構造物の、他の管状構造物の遠位側末端を超えて延びる部分は、他の管状構造物が腹部大動脈瘤に跨がると患者の腎動脈と腹部大動脈の接合部に重なることがあるが、腎臓への血流を阻害することはない。

本発明の上記の特徴、目的及び利点は、特に添付の図面を併せて考慮すると、以下の好ましい実施形態の詳細な説明から、当業者には明らかとなるであろう。

図１を参照すると、本発明に従って作製されたステント／グラフトの好ましい実施形態が、全体的に参照番号１０で示されている。ステント／グラフト１０は、腹部大動脈１２の動脈瘤１４を有する部分に置かれたものが示されている。腹部大動脈１２は、その下端で、左右の総腸骨動脈１６及び１８へと分岐している。また図１には、腎臓（図示せず）へ向かう腎動脈２０及び２２も示されている。

ステント／グラフト１０は、第１の長さ（Ｌ_１）の最も内側の管状構造物２３を含む。最も内側の管状構造物は、好ましくは形状記憶合金によって作製された、第１の複数の編み込まれたワイヤストランド２４を含む。最も内側の管状構造物２３を構成する編み目構造は、この窓（ｆｅｎｅｓｔｒａｔｉｏｎｓ）を有する壁面を通過する血流を大きく妨げないように十分に大きなこの構造を通る開口部を規定する所定のピック及びピッチを有する。ワイヤストランドの直径は０．００２インチ（０．００５０８ｃｍ）から０．０１０インチ（０．０２５４ｃｍ）の範囲とすることができ、管状構造物２３は、ステント／グラフト１０の自己拡張に必要な、適当な外向きの径方向の力を提供するように設計されている。

所定の直径の少なくとも１つの他の管状構造物２６は、最も内側の管状構造物の所定の長さ部分（Ｌ_２）を同軸に包囲する関係に配置されており、他の管状構造物２６の長さは最も内側の管状構造物２３の長さよりも短い。

最も内側の管状構造物を包囲する他の管状構造物は、最も内側の管状構造物を構成する第１の複数の編み込まれたワイヤストランドよりはるかに数が多い第２の複数の編み込まれたワイヤストランド２８で構成される。ストランド２８はまた、形状記憶合金で形成され、血流がその壁面を通ることを実質的に排除するように十分に小さい開口部を規定するピック及びピッチを有するように編み込まれている。

限定はされないが、最も内側の管状構造物２３は、約０．００１６平方インチ（０．０４０×０．０４０インチ平方）の面積の窓（ｆｅｎｅｓｔｒａｔｉｏｎｓ）を有するように織られた、０．００５直径ワイヤの３６のストランドを含むことができる。他の管状構造物２６は、血流がステント／グラフト１０の長さＬ_２の部分を通って流れることを実質的に排除するように十分に小さい、はるかに小さい窓を規定するように編み込まれた、ニチノールなどの形状記憶合金から形成された１４４のワイヤを含むことができる。

本発明によると、最も内側の管状構造物２３を包囲する中間管状構造２６を同軸で包囲する、第２の最も外側の管状の編み込まれた構造３０を含むことによって、さらに小さい窓を長さＬ_２にわたって設けることができる。この第２の最も外側の管状構造３０も長さＬ_２にわたって延びることができ、例えば０．０００１平方インチ（０．０１０×０．０１０インチ平方）の開口部を有するように編み込まれた０．００１直径のニチノールワイヤからなる１４４のストランドなど、他の管状構造物２６と同様の編み目構造とすることができる。

ステント／グラフト１０は、Ｃｕｒｔｉｓ Ａｍｐｌａｔｚの米国特許第６，１２３，７１５号に記載された方法を使用して作製されることが企図されており、その教示を参照によって援用する。最も内側の構造２３は、他の管状構造物２６と同様に管状織物を形成するように編み込むことができる。次いで、外側の編み込まれた１つ又は複数の管を最も内側の管状構造物の上に同心に配設し、その組合せをステント／グラフトの所望の外径の円筒形マンドレルの周りに配置する。次いで、このアセンブリを、所定の温度まで、管状構造をマンドレルの直径に熱硬化するのに十分な長さの時間だけ加熱する。最も内側の管状構造物２３を構成するストランドの両自由端３２、３４は１０度から３０度だけ径方向外向きにフレア状として、大動脈の内壁への付着を向上させることができる。モールドから取り外した後、２つ以上の同軸の編み込まれた管をいくつかのポリエステル縫合糸で互いに保持することができる。

使用の際は、このように形成されたステントを、その近位端で、「ステント及びグラフトの制御されたデリバリーのためのシステム（Ｓｙｓｔｅｍ ｆｏｒ ｔｈｅ Ｃｏｎｔｒｏｌｌｅｄ Ｄｅｌｉｖｅｒｙ ｏｆ Ｓｔｅｎｔｓ ａｎｄ Ｇｒａｆｔｓ）」という名称の２００５年５月４日に出願された係属中のＡｍｐｌａｔｚの特許出願第１１／１２１，３８６号に説明されている方法で、プッシャーカテーテルに脱着可能に固定する。次いで、ステントを血管内送達用カテーテルの管腔内に引き込む。送達用カテーテルを、良く知られているＳｅｌｄｉｎｇｅｒ法を使用して患者の体内に導入し、次いで送達用カテーテルの遠位端が、治療しようとする動脈瘤の付近に来るまで血管系の中を通す。ステントとプッシャーカテーテルを固定保持しながら、送達用カテーテルを近位方向に引き込んで、ステントを送達用カテーテルの遠位端から放出し、次いでステントは自己拡張して、治療対象の動脈瘤に跨る図１の長さＬ_２の部分で大動脈壁に係合する。最も内側の管状構造物の、他の管状構造物の遠位端を超えて延びる部分は、腎動脈２０及び２２の開口部の上に重なることがある。しかし、内側管状構造のその部分が粗い織り構造であることにより、腎動脈を通る血流を大幅に妨げたり、狭窄を形成することはない。最も内側の管状構造物２３が他の層２６、３０の遠位端を超えて延びることによってもたらされるステント／グラフト１０の追加された長さは、腹部大動脈内部でステント／グラフトをより良く安定させるように働き、内皮化が起きる前に位置がずれることを防ぐ。

以上、特許法を遵守し、当業者が新規の原理を適用しそのような特別なコンポーネントを必要に応じて製造及び使用するのに必要な情報を得られるようにするために、本発明を非常に詳細に説明した。しかし、本発明は特に様々な機器及びデバイスによって実行することができ、機器及び操作方法のいずれに対する多様な修正も、本発明の範囲から逸脱せずに達成することができることを理解されたい。

ステント／グラフトが見え難くならないように腹部大動脈を断面図で示す、患者の腹部大動脈に動脈瘤を跨ぐように配置された、本発明のステント／グラフトの側面図である。

Claims (12)

1. 腹部大動脈瘤を治療するための、カテーテルによる送達が可能なステントであって、
   （ａ）第１の長さを持ち、第１の形状記憶合金からなる第１の複数の編み込まれたワイヤストランドで形成される第１の編み目構造（ｂｒａｉｄ）を有する最も内側にある第１の管状構造物であって、該第１の編み目構造が、それを通る血流を大きく（ｍａｔｅｒｉａｌｌｙ）妨げないよう十分に大きな開口部を規定する所定のピック及びピッチ（ｐｉｃｋ ａｎｄ ｐｉｔｃｈ）を該第１の長さにわたって有する、第１の管状構造物と、
   （ｂ）該第１の管状構造物を包囲しほぼ同軸に位置する関係で配置され、該第１の管状構造物より短い第２の長さを有する、少なくとも１つの第２の管状構造物であって、第２の形状記憶合金からなり該第１のワイヤストランドより数が多い第２の複数の編み込まれたワイヤストランドで形成される第２の編み目構造を有し、該第２の編み目構造が、血流がそれを通ることを実質的に排除するように十分に小さな開口部を規定する所定のピック及びピッチを該第２の長さにわたって有する、第２の管状構造物とを含み、
   （ｃ）該最内の第１の管状構造物と、該第２の管状構造物とが、所定の直径へと自己拡張可能な複合管状構造体を形成し、
   該複合管状構造体を長手方向に伸長することによって、該複合管状構造体の外径が、血管内送達用カテーテルの管腔に搭載できるよう十分に縮小し、該カテーテルから該ステントを放出することによって、該複合管状構造体の外径が該所定の直径へと再び拡張する、カテーテルによる送達が可能なステント。
2. 前記第１の管状構造物における、前記第２の管状構造物の末端を超えて延びる部分が、該第２の管状構造物が腹部大動脈瘤に跨がる（ｂｒｉｄｇｅ）際、患者の腎動脈の患者の腹部大動脈への接合部に重なる（ｏｖｅｒｌａｙ）ように適合されている、請求項１に記載のカテーテル送達が可能なステント。
3. 前記第１の管状構造物の編み目構造（ｂｒａｉｄ）が、約０．００１６平方インチの開口部を有し、前記第２の構造物の編み目構造が、約０．０００１平方インチの開口部を有する、請求項１又は２に記載のステント。
4. 前記第１の管状構造物の編み目構造は、３６のストランドからなり、前記第２の管状構造物の編み目構造は、１４４のストランドからなる、請求項３に記載のカテーテル送達が可能なステント。
5. 前記第１の管状構造物の編み目構造は、直径０．００２インチから０．０１０インチのワイヤストランドからなる、請求項１〜４の何れか１項に記載のカテーテル送達が可能なステント。
6. 前記第２の管状構造物の編み目構造は、直径０．００１インチのワイヤストランドからなる、請求項４に記載のカテーテル送達が可能なステント。
7. 前記第１の形状記憶合金が前記第２の形状記憶合金と同じである、請求項１〜６に記載のカテーテル送達が可能なステント。
8. 前記第１の形状記憶合金又は前記第２の形状記憶合金がニチノール（登録商標）を含む、請求項１〜７の何れか１項に記載のカテーテル送達が可能なステント。
9. 前記第１の管状構造物を構成するストランドの両端が、径方向外向きに１０度から３０度フレア状になっている、請求項１〜８の何れか１項に記載のカテーテル送達が可能なステント。
10. 更に、形状記憶合金からなる第３の管状構造物が、前記第２の管状構造物を、所定の長さでほぼ同軸で囲むように配置されている、請求項１〜９の何れか１項に記載のカテーテル送達が可能なステント。
11. 前記第３の管状構造物が、血流がそれを通ることを実質的に排除するように十分に小さな開口部を規定する所定のピック及びピッチをその第３の長さにわたって有する編み目構造を具備する、請求項１０に記載のカテーテル送達が可能なステント。
12. 前記第３の管状構造物が、直径０．００１インチの１４４の編み込まれたワイヤストランドを含む、請求項１１に記載のカテーテル送達が可能なステント。

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