JP4979050B2 - 作業車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば苗載台及び苗植付爪を備えて連続的に苗植作業を行う田植機またはトラクタまたはコンバインまたは土木建機などの作業車に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
従来、ギヤミッションでは高い動力伝達効率となるが、有段変速により操作性を向上し得ない不具合がある。また、油圧式無段変速機構は初速がゼロから発進させるゼロ発進可能な無段変速により優れた操作性を得られるが、動力伝達効率に限界があり、低速での動力損失が大きくなる不具合がある。また、Vベルト及びプーリを用いたベルト式無段変速機構は高効率の無段変速を行えるが、初速がゼロから発進させるゼロ発進を行えない不具合がある。そこで田植機など作業車においては、湿田(泥土路面)での走破性、スムーズな圃場の出入、ショックの少ない変速動作、クラッチが不要な発進動作、作業または田面などの状況に適応した速度調節などが要求され、高い動力伝達効率、及びゼロ発進可能な無段変速、及び簡単な変速操作が望まれるもので、そのため油圧変速機構に遊星ギヤ機構を組合せて油圧変速機構単体使用での動力損失など無くして、油圧を用いた場合の操作性とギヤ(機構)を用いた場合の高い伝達効率と両立させた手段があるが、この場合駆動構造が複雑化したりコスト高となる不都合がある。
【0003】
【課題を解決するための手段】
然るに、本発明は、エンジンからの駆動力を入力する油圧変速機構と前記エンジンからの駆動力及び前記油圧変速機構からの駆動力を合成して出力する遊星ギヤ機構とを有する複合変速機構を備えた作業車であって、前記油圧変速機構の出力軸に前記遊星ギヤ機構のサンギヤを係合軸支させ、前記サンギヤに前記遊星ギヤ機構のキャリヤギヤを遊転軸支させ、前記油圧変速機構の入力軸に係合軸支した駆動用ギヤを前記キャリヤギヤに噛合させて、前記遊星ギヤ機構のリングギヤから合成出力を取り出すように構成し、前記油圧変速機構の出力が逆転から0を介して正転へ変化するに従って前記合成出力の回転速度が増加し、前記油圧変速機構の正転最大出力時に前記合成出力の回転速度が最速となるように前記駆動用ギヤ、前記キャリヤギヤ及び前記遊星ギヤ機構を組成した作業車を提供する。
【0004】
本発明によれば、前記油圧変速機構の入力軸とは別個に、前記遊星ギヤ機構を駆動するための前記駆動ギヤを支持する専用のギヤ軸を別個所に設置する構造の複雑さを解消させ、前記油圧変速機構の入力軸を利用した簡単な構成手段のもので、各駆動部に高い伝達効率の複合変速機構の変速出力を有効に伝達させるものである。
【0005】
また、前記油圧変速機構の前記入力軸と該入力軸と同一軸芯上に設けられ且つ前記油圧変速機構に油圧を供給するポンプを駆動させるための駆動軸とで前記駆動用ギヤを支持させることができ、この場合には、前記入力軸と前記駆動軸を利用して強度且つ安定良好に前記駆動用ギヤを支持可能とさせると共に、ポンプ駆動部をコンパクトに配置することも可能とさせるものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1は全体の側面図、図2は同平面図、図3は車体フレームの側面図、図4は同平面図を示し、図中1は作業者が搭乗する走行車であり、エンジン2を車体フレーム3に搭載させ、ミッションケース4側方にフロントアクスルケース5を介して水田走行用前輪6を支持させると共に、前記ミッションケース4後方のリヤアクスルケース7に水田走行用後輪8を支持させる。そして前記エンジン2等を覆うボンネット9両側に予備苗載台10を取付けると共に、作業者が搭乗する車体カバー11によって前記ミッションケース4等を覆い、前記車体カバー11後側上方にシートフレーム12を介して運転席13を取付け、その運転席13の前方で前記ボンネット9後部に操向ハンドル14を設ける。
【0007】
また、図中15は5条植え用の苗載台16並びに複数の苗植付爪17などを具備する植付部であり、前高後低の合成樹脂製の前傾式苗載台16を下部レール18及びガイドレール19を介して植付ケース20に左右往復摺動自在に支持させると共に、一方向に等速回転させるロータリケース21を前記植付ケース20に支持させ、該ケース21の回転軸芯を中心に対称位置に一対の爪ケース22・22を配設し、その爪ケース22・22先端に苗植付爪17・17を取付ける。
【0008】
また、前記植付ケース20前側のヒッチブラケット23をトップリンク24及びロワーリンク25を含む昇降リンク機構26を介し走行車1後側に連結させ、前記リンク機構26を介して植付部15を昇降させる油圧昇降シリンダ27をロワーリンク25に連結させ、前記前後輪6・8を走行駆動して移動すると同時に、左右に往復摺動させる苗載台16から一株分の苗を植付爪17によって取出し、連続的に苗を植える田植作業を行うように構成する。
【0009】
また、図中28は主変速レバー、29は植付部15の昇降・植付クラッチの入切・マーカ操作を行う植付操作レバー、30はブレーキペダル、31は変速ペダル、32はデフロックペダル、33は感度調節レバー、34は植付部15を任意高さ位置に停止させるストップレバー、35はユニットクラッチレバー35であり、操向ハンドル14位置近傍に変速及び昇降レバー28・29やブレーキ及び変速ペダル30・31を配設すると共に、運転席13位置近傍に感度調節及びストップ及びユニットクラッチの各レバー33・34・35やデフロックペダル32を配設している。
【0010】
さらに、図中36は1条分均平用センタフロート、37は2条分均平用サイドフロート、38は肥料ホッパ39内の肥料を送風機40の送風力でフレキシブル形搬送ホース41を介しフロート36・37の側条作溝器42に排出させる5条用側条施肥機である。
【0011】
図3乃至図5に示す如く、前記車体フレーム3は前部フレーム43と中間フレーム44と後部フレーム45とに3分割させ、左右一対の前部フレーム43にエンジン2を、左右一対の中間フレーム44にフロントアクスルケース5を、左右一対の後部フレーム45にリヤアクスルケース7及びエンジン2に燃料を供給する燃料タンク46などを設けるもので、前部フレーム43の前側と中間に前フレーム47とベースフレーム48を連結させて平面視4角枠状に形成し、固定ブラケット49とベースフレーム48に防振ゴムを介しエンジン2を上載させる。
【0012】
また図10にも示す如く、前記後部フレーム45の中間立上り部50間をパイプフレーム51と門形フレーム52とで略平行に連結させると共に、リヤアクスルケース7に左右下端を固設する門形フレーム53の後端を一体連結させ、前記の左右の立上り部50間に燃料タンク46を配設する。
【0013】
さらに、前部フレーム43後端と後部フレーム45前端に左右中間フレーム44の前後端をボルト54を介して取外し自在に固定させると共に、左右中間フレーム44の下面にボルト55を介して左右フロントアクスルケース5を取外し自在に固定させ、前記ミッションケース4に左右フロントアクスルケース5を接続固定させる。
【0014】
図6乃至図9に示す如く、前記ミッションケース4の前面左側にパワーステアリングケース56を設け、かつケース4の右側に無段油圧変速機構57を設け、油圧変速機構57の変速入力用ポンプ軸58を車体前方向に突出させ、エンジン2下側で前後方向の伝達軸59にポンプ軸58を連結させると共に、エンジン2の出力軸60に伝達ベルト61を介して前記伝達軸59を連結させ、エンジン2出力を油圧変速機構57に伝達する。
【0015】
また、前記ミッションケース4とリヤアクスルケース7を車体の前後方向の中心ライン上でパイプ製の連結フレーム62によって一体連結させ、ミッションケース4後方にリヤ出力軸63及びPTO出力軸64を突出させ、リヤアクスルケース7前方に突出させるリヤ入力軸65にリヤ伝達軸66を介し前記リヤ出力軸63を連結させ、走行出力軸63から左右の後輪8に動力を伝える。またリヤアクスルケース7上部の軸受67に設ける中介軸68に自在継手軸69を介して前記PTO出力軸64を連結させ、前記植付ケース20の入力軸に自在継手軸を介して中介軸68を連結させ、PTO出力軸64から植付部15に動力を伝える。
【0016】
さらに、図11乃至図20に示す如く、前記ミッションケース4は、本体胴部70と、前蓋部71と、後蓋部72を備え、前記胴部70の前後に各蓋部72を着脱自在にボルト固定させ、密閉箱形に形成すると共に、前記胴部70の内部を前後に分割する仕切り壁部73を設ける。また、前蓋部71前面に前記油圧変速機構57を取付け、ミッションケース4内に突出させるポンプ軸58に小径の伝達ギヤ74を係合軸支させ、伝達ギヤ74を前蓋部71にベアリング軸受し、後蓋部72後面に固定させるチャージポンプ75に伝達ギヤ74の動力をパイプ軸76を介して伝える。
【0017】
また、前記ミッションケース4内に突出させる油圧変速機構57のモータ軸77にサンギヤ78を係合軸支させ、サンギヤ78を前蓋部71にベアリング軸受すると共に、前記の小径の伝達ギヤ74に大径のキャリヤギヤ79を常に噛合させ、サンギヤ78のボス部にキャリヤギヤ79を遊転軸支させるもので、キャリヤギヤ79に3枚のプラネタリギヤ80を軸81を介して回転自在に設け、サンギヤ78にプラネタリギヤ80を噛合させると共に、プラネタリギヤ80に噛合させるリングギヤ82を設け、各ギヤ78・80・82によって遊星ギヤ機構83を形成する。
【0018】
また、前記サンギヤ78と後蓋部72に合成出力軸84の前後を回転自在に軸支させ、前記リングギヤ82を合成出力軸84に係合軸支させるもので、油圧変速機構57の油圧ポンプ85及び油圧モータ86の無段油圧変速出力である正逆回転出力と、伝達ギヤ74及びキャリヤギヤ79の減速回転出力(一方向の一定回転)とを、遊星ギヤ機構83のデフ作用によって合成し、ゼロ乃至最大速の一方向の回転力として合成出力軸84に伝える。
【0019】
さらに、前記合成出力軸84に前進ギヤ87と後進ギヤ88を遊転軸支させ、合成出力軸84に各ギヤ87・88をスライダ89によって選択的に係合させ、前進または中立または後進の出力に切換えると共に、仕切り壁部73と後蓋部72に前記リヤ出力軸63をベアリング軸受する。また、差動ギヤ90を介して左右の前車軸91に動力を伝えるフロント出力軸92と、PTO変速ギヤ93を係合軸支させるカウンタ軸94を設け、前記のリヤ及びフロント出力軸63・92に出力ギヤ95・96を介して後進ギヤ88の後進動力を伝え、前後輪6・8を後進駆動させると共に、リヤ出力軸63に移動ギヤ97及び植付ギヤ98を遊転軸支させ、副変速スライダ99によって各ギヤ97・98をリヤ出力軸63に選択的に係合させる。
【0020】
また、カウンタ軸94の高速用ギヤ100を介して前進ギヤ87に移動ギヤ97を常に噛合させると共に、カウンタ軸94の低速用のPTO変速ギヤ93に植付ギヤ98を常に噛合させ、各ギヤ100・93・98を介して前進ギヤ87の動力を前記各出力軸63・92に伝え、前後輪6・8を苗の植付け作業速度で前進駆動する。また、移動ギヤ97と植付ギヤ98の両方が遊転状態となり、植付爪17などを作業者が手で回転させて詰った苗の除去などを行えるように、PTO出力軸64の手動回転を可能にすると共に、前進ギヤ87の動力を各ギヤ100・97を介して各出力軸63・92に伝え、圃場間の路上移動などの高速の移動速度で前後輪6・8を前進駆動する。
【0021】
さらに、図12のように、PTO変速軸101及びPTO変速機構102を介してPTO変速ギヤ93の動力をPTO出力軸64に伝え、株間変速自在に植付部15を駆動すると共に、ミッションケース4に内設させるチェン103を介してPTO出力軸64に施肥出力軸104を連結させ、植付部15と同調させて施肥機38を駆動する。また、図13のように、ミッションケース4にオイルゲージ105を設けると共に、図14のように、前記各スライダ89・99を同一のシフトフォーク106に係止させ、変速レバー28の5位置切換によって前後進及び副変速(低高速)の切換を行う。また、図16乃至図18のように、油圧ポンプ85の斜板107に制御軸108を介して油圧変速操作アーム109を連結させ、該アーム109にロッド110を介して変速ペダル31を連結させると共に、ペダル31の足踏み解除によってペダル31を自動的に停止(速度ゼロ)位置に復帰動作させるバネ111を前記アーム109に連結させ、また定速作動部材であるオイルダンパ112を前記アーム109に連結させ、踏み込んでいたペダル31から足を離したとき、オイルダンパ112の抵抗とバネ111の復動力によりペダル31が緩やかな略一定速度で戻って除々に低速になる動作を行わせる。なお、オイルダンパ112に代え、ガススプリングなどによって定速作動部材を形成してもよい。
【0022】
さらに、図20のように、前記ペダル31から足を離している状態でバネ111によってペダル31が停止(速度ゼロ)位置に戻っているとき、サンギヤ78は最高回転で時計回りに逆転してプラネタリギヤ80を反時計回りに自転させる動作を行わせると同時に、また伝達ギヤ74によってキャリヤギヤ79を回転させることにより、プラネタリギヤ80を時計方向に公転させて反時計回りに自転させる動作を行わせ、リングギヤ82の回転をゼロにし、合成出力軸84を停止維持する。また、ペダル31をバネ111に抗して中位置(中速域)に足で踏んだとき、サンギヤ78は停止し、伝達ギヤ74によってキャリヤギヤ79を回転させ、プラネタリギヤ80を時計方向に自転させ乍ら時計方向に公転させ、伝達ギヤ74のギヤ動力により合成出力軸84を回転させる。また、ペダル31を最大に踏み込んだとき、サンギヤ78は最高回転で反時計回りに正転し、プラネタリギヤ80を時計方向に自転させ乍ら伝達ギヤ74でキャリヤギヤ79を回転させることによって時計方向に公転させ、サンギヤ78からの油圧変速力と伝達ギヤ74動力を加算して合成出力軸84を回転させるもので、図21のように、エンジン2動力を伝達ギヤ74と油圧変速機構57とに伝えて遊星ギヤ機構83により合成して出力させ、ミッションケース4で前後進切換とPTO変速を行い、後進、低速前進(圃場植付走行)、高速前進(路上移動走行)の各動作を行わせる。
【0023】
そして、例えば、図22のように、油圧変速操作アーム109の角度を−1乃至0乃至1に変化させることにより、モータ軸77が−1000乃至0乃至1000回転になるようにし、図23のように、前記アーム109の角度に関係なくギヤ74側を1000回転させた場合、図24のように、前記アーム109の角度に対して合成出力軸84が0乃至2000回転になるように、ギヤ74・79及び遊星ギヤ機構83を組成する。
【0024】
また、前記アーム109の全制御範囲を−1乃至0乃至1としたとき、図19に示す如く、前記アーム109の低速(ゼロ速度)側及び高速側の制御動作をボルト型低速及び高速ストッパ113・114によって規制し、図25のように、前記各ストッパ113・114によって調節自在な実際のアーム109の操作範囲を−0.8乃至0.6にして、0乃至1.4m/Sの作業速度を得ることにより、油圧変速機構57の組立誤差などによって生じる出力特性のバラツキに対して前記各ストッパ113・114により調整すると共に、例えば前記アーム109の−1乃至0.8の位置を調整域とし、速度をゼロにすることができ、仮りにアーム109が−1でも速度がゼロにならない不具合をなくしている。図26及び図27のように、一般的な作業速度において、油圧変速機構57とギヤ74側の動力分担比が60パーセント以上にし、油圧変速機構57の有効動力に対し、ギヤ74側の有効動力の割合を大きくし、湿田での走破性を向上させ、湿田での作業能率を向上させ、また耕盤の段差に対して余裕の脱出能力を持たせる。
【0025】
図15にも示す如く、前記遊星ギヤ機構83のキャリヤギヤ79に噛合せて該ギヤ79を駆動する伝達ギヤ74の一側を、前記ポンプ軸58のスプライン軸58aに取外し自在に嵌合させると共に、ギヤ74の他側にパイプ軸76を嵌合固定させて、油圧変速機構57と遊星ギヤ機構83との合成出力を形成する複合変速機構115を設けている。そして、油圧変速機構57の入力軸であるポンプ軸58及びパイプ軸76に遊星ギヤ機構83の駆動用ギヤである伝達ギヤ74を設けることによって、油圧変速機構57のポンプ軸58とは別個に遊星ギヤ機構83を駆動するための駆動ギヤ専用のギヤ軸を別個所に設置する構造の複雑さを解消させ、油圧変速機構57のポンプ軸58を利用した簡単な構成手段のもので、各駆動部に高い伝達効率の複合変速機構115の変速出力を有効に伝達させることができる。
【0026】
また、油圧変速機構57のポンプ軸58と、該ポンプ軸58と同一軸芯上に設ける油圧変速機構57など油圧機構に油圧を供給するポンプ75を駆動させるための駆動軸であるパイプ軸76とを利用して、強度且つ安定良好に伝達ギヤ74を支持可能とさせると共に、ポンプ75駆動部をコンパクトに配置することも可能とさせることがきる。
【0027】
また、油圧変速機構57の出力軸であるモータ軸77上に遊星ギヤ機構83を設けるもので、サンギヤ78の一側内面部をモータ軸77のスプライン軸77aに取外し自在に嵌合させると共に、一側外面部をベアリング116を介し前蓋部71に回転自在に支持させ、サンギヤ78の他側を合成出力軸84に軸受部材117を介して遊転支持させるように構成している。そして油圧変速機構57のモータ軸77とポンプ軸58の延長方向に遊星ギヤ機構83とこの駆動用ギヤ74を設けて、油圧変速機構57の形状を軸方向に若干延設させた大きさで複合変速機構115を横巾の狭い小型コンパクトなものに形成可能とさせるもので、油圧変速機構83のモータ軸77に遊星ギヤ機構83を設けることによって、ミッションケース4内に小型コンパクトに遊星ギヤ機構83を組込んで、ミッションケース4の小型軽量化を容易に可能とさせるように構成している。
【0028】
また、前記サンギヤ78の一側をミッションケース4の前蓋部71に、他側を合成出力軸84に支持させると共に、サンギヤ78の外周面に遊転支持させるキャリヤギヤ79と出力軸84にスプライン84a嵌合させるリングギヤ82間にプラネタリギヤ80を配設して、遊星ギヤ機構83の軸方向の距離を短かして複合変速機構115の一層のコンパクト化を図るように構成している。
【0029】
図6に示す如く、前車体カバー11a及び後車体カバー11bに分割形成する車体カバー11の前車体カバー11aの下側に油圧変速機構57を平面視でラップさせ、エンジン2やベルト61などのメンテナンス時に前車体カバー11aを取外すだけで、この変速機構57のメンテナンスも容易に可能とさせると共に、重量物の変速機構57をミッションケース4の前側位置に配置させて、機体の前後バランスを良好とさせるように構成している。
【0030】
図11、図12、図28乃至図30に示す如く、前記ミッションケース4は遊星ギヤ機構83を有する遊星ギヤ室118と、前後進ギヤ87・88やPTO変速機構102など有する変速ギヤ室119と、差動ギヤ90など有する差動ギヤ室120を内設するもので、各機能ごとに区画された3つのギヤ室118・119・120を有し、図29に示す如く平面視で遊星ギヤ室118の後側及び左側に変速ギヤ室119及び差動ギヤ室120を配設させ、遊星ギヤ機構83の左側に差動ギヤ90を近接配置させて、ミッションケース4の前後幅を短縮させて小型化するように構成している。
【0031】
また、前記差動ギヤ室120に接続固定する左フロントアクスルケース5の接続ケース121にサクション口122を設け、前記チャージポンプ75などに油圧ホース123を介しサクション口122を連通接続させて、ミッションケース4内に貯留する作動油をチャージポンプ75を介し油圧変速機構57などに供給するように構成している。
【0032】
そして、前記遊星ギヤ室118に設ける油圧変速機構57の油圧戻り口124などより遠隔した位置にサクション口122を設けて、油の泡立ちなど有効に防止すると共に、遊星ギヤ室118と変速ギヤ室119及び変速ギヤ室119と差動ギヤ室120を仕切る仕切り壁部73・125に油の流通口126・127を適宜開設して、遊星ギヤ室118内に貯留される作動油を流通口126・127を介して変速ギヤ室119及び差動ギヤ室120に順次送り込んでサクション口122より吸出させて、油の泡立ちを一層防止しチャージポンプ75などに対する油圧の良好な供給を行うように構成している。
【0033】
なお、前記接続ケース121のサクション口122とは反対側位置に差動ギヤ90のデフロック機構128を入切操作するデフロックレバー129(前記デフロックペダル32に図示せぬ連動機構を介して連動)を設けると共に、前記ブレーキペダル30にブレーキレバー軸130及びブレーキレバー131を介し連結させる走行用ブレーキ132をフロント出力軸92に設けている。
【0034】
上記からも明らかなように、油圧変速機構75の変速出力をミッションケース4内で遊星ギヤ機構83、変速ギヤ機構である前後進ギヤ87・88、デフ機構である差動ギヤ90を介し車輪である前輪6の駆動を行う作業車において、前記遊星ギヤ機構83、前後進ギヤ87・88、差動ギヤ90をミッションケース4内の区画した区画室118・119・120に設けることによって、各機能別のギヤ87・88、90や機構83の配置を行って、構造のシンプル化や組立ての容易化を図ると共に、剛性を保った状態でミッションケース4の肉厚も薄くしてミッションケース4の軽量化も容易に可能にできる。
【0035】
また、ミッションケース4内に貯留させる作動油を各ギヤ機構室である遊星ギヤ室118、変速ギヤ室119、差動ギヤ室120を介してフロントアクスルケース5の油出口であるサクション口122に流通させて取出すことによって、区画された各ギヤ室118・119・120を順次流通させ、油の戻り口124からサクション口122を遠く離して、油の泡立ちを有効に防止して、油圧ポンプ85による良好な油の吸出などを容易に可能とさせて、油圧変速機構57の性能の安定保持を図ることができる。
【0036】
【発明の効果】
以上実施例から明らかなように本発明は、エンジン2からの駆動力を入力する油圧変速機構57と前記エンジン2からの駆動力及び前記油圧変速機構57からの駆動力を合成して出力する遊星ギヤ機構83とを有する複合変速機構115を備えた作業車輌において、前記油圧変速機構57の出力軸77に前記遊星ギヤ機構83のサンギヤ78を係合軸支させ、前記サンギヤ78に前記遊星ギヤ機構83のキャリヤギヤ79を遊転軸支させ、前記油圧変速機構57の入力軸58に係合軸支した駆動用ギヤ74を前記キャリヤギヤ79に噛合させて、前記遊星ギヤ機構83のリングギヤ82から合成出力を取り出すように構成し、前記油圧変速機構57の出力が逆転から0を介して正転へ変化するに従って前記合成出力の回転速度が増加するように前記駆動用ギヤ74、前記キャリヤギヤ79及び前記遊星ギヤ機構83を組成したものであるから、前記油圧変速機構57の前記入力軸58とは別個に前記遊星ギヤ機構83を駆動するための前記駆動用ギヤ74専用のギヤ軸を別個所に設置する構造の複雑さを解消させ、前記油圧変速機構57の前記入力軸58を利用した簡単な構成手段で、各駆動部に高い伝達効率で回転力を出力する前記複合変速機構57を形成するもので、前記複合変速機構57を部品点数の少い低コストに形成して、機体にコンパクトな組込みを容易に可能とさせることができるものである。
【0037】
また、前記油圧変速機構57の前記入力軸58と該入力軸58と同一軸芯上に設けられ且つ前記油圧変速機構57に油圧を供給するポンプ75を駆動させるための駆動軸76とで前記駆動用ギヤ74を支持させれば、前記入力軸58と前記駆動軸76を利用して強度且つ安定良好に前記駆動用ギヤ74を支持可能とさせると共に、ポンプ駆動部をコンパクトに配置することも可能とさせることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】田植機の全体側面図。
【図2】田植機の全体平面図。
【図3】走行車体の側面図。
【図4】走行車体の平面図。
【図5】車体フレームの側面図。
【図6】駆動部の側面説明図。
【図7】駆動部の平面説明図。
【図8】サイドクラッチ操作系の側面説明図。
【図9】サイドクラッチ操作系の平面説明図。
【図10】車体の斜視説明図。
【図11】ミッションケースの断面図。
【図12】同拡大図。
【図13】遊星ギヤ機構の説明図。
【図14】ミッションケースの部分図。
【図15】遊星ギヤ機構の断面図。
【図16】変速ペダル部の前方からの斜視図。
【図17】変速ペダル部の後側上方からの斜視図。
【図18】ミッションケースのギヤ配列説明図。
【図19】油圧変速操作アーム部の側面図。
【図20】遊星ギヤ機構の回転説明図。
【図21】エンジンの出力説明図。
【図22】油圧変速機構の出力説明図。
【図23】伝達ギヤ側の出力説明図。
【図24】合成出力軸の出力説明図。
【図25】変速ペダルの変速説明図。
【図26】油圧変速出力とギヤ変速出力の相関図。
【図27】図26の出力と油圧損失及びギヤ損失の相関図。
【図28】ミッションケースの平面説明図。
【図29】ミッションケースの平面断面図。
【図30】ミッションケースの側面断面図。
【符号の説明】
2 エンジン
57 油圧変速機構
58 ポンプ軸(入力軸)
74 伝達ギヤ(駆動用ギヤ)
75 ポンプ
76 パイプ軸(駆動軸)
77 モータ軸(出力軸)
78 サンギヤ
79 キャリアギヤ
82 リングギヤ
83 遊星ギヤ機構
115 複合変速機構
Claims (2)
- エンジンからの駆動力を入力する油圧変速機構と前記エンジンからの駆動力及び前記油圧変速機構からの駆動力を合成して出力する遊星ギヤ機構とを有する複合変速機構を備えた作業車であって、
前記油圧変速機構の出力軸に前記遊星ギヤ機構のサンギヤを係合軸支させ、前記サンギヤに前記遊星ギヤ機構のキャリヤギヤを遊転軸支させ、前記油圧変速機構の入力軸に係合軸支した駆動用ギヤを前記キャリヤギヤに噛合させて、前記遊星ギヤ機構のリングギヤから合成出力を取り出すように構成し、
前記油圧変速機構の出力が逆転から0を介して正転へ変化するに従って前記合成出力の回転速度が増加し、前記油圧変速機構の正転最大出力時に前記合成出力の回転速度が最速となるように前記駆動用ギヤ、前記キャリヤギヤ及び前記遊星ギヤ機構を組成したことを特徴とする作業車。 - 前記油圧変速機構の前記入力軸と該入力軸と同一軸芯上に設けられ且つ前記油圧変速機構に油圧を供給するポンプを駆動させるための駆動軸とで前記駆動用ギヤを支持させたことを特徴とする請求項1記載の作業車。
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