以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態による光学ドライブ装置1の模式図である。
光学ドライブ装置1は光ディスク11の再生及び記録を行う。光ディスク11としてはCD、DVD、BD等の各種光記録媒体を用いることができるが、本実施の形態では特に、記録面に記録層12とサーボ専用層13とが設けられ、かつ記録層12が多層膜によって多層化されている円盤状の光ディスクを用いる。また、光ディスクには、再生専用型(DVD−ROM、BD−ROMなど。)、追記型(DVD−R、DVD+R、BD−Rなど。)、書換型(DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、BD−REなど。)など、記録方法によって分類されるいくつかの種類があるが、本実施の形態では追記型又は書換型を用いる。
図2(a)は、光ディスク11の記録面の平面図である。図2(b)は、図2(a)のA−A’線における断面図を示している。
図2に示すように、光ディスク11の記録面には複数の記録層12と1つのサーボ専用層13とが設けられる。サーボ専用層13には周期的に溝が設けられており、溝の凸部はランドL、凹部はグルーブGと呼ばれる。ただし、溝の凸部と凹部は相対的なものであり、凸部と凹部のいずれをランドLと呼ぶかについては、光ディスク11の表面・裏面のいずれを下とするかによって変わってくる。なお、図2ではランドLとグルーブGを直線的に描いているが、実際には、半径方向にわずかに蛇行(ウォブル)している。
図2の例ではランドLが情報書込ラインであり、各記録層12では、ランドLに対応する位置に情報を記憶するための符号(ピットまたは記録マーク)Mが設けられる。なお、なお、図2では、符号Mの横幅がランドの幅に比べてかなり小さいように描いているが、これは図面の見易さを優先したためであり、実際の符号Mの横幅はランドの幅より少し小さい程度である。符号Mは、光ビームの照射によって記録又は消去される。各記録層12の未記録領域は、この符号Mが記録されていない領域である。一方、記録領域は、符号Mが記録されている領域である。なお、情報書込ラインは、グルーブGに対応する位置に設けられる場合もあれば、ランドLとグルーブGそれぞれに対応する位置に設けられる場合もある。
図1に戻る。図1に示すように、光学ドライブ装置1は、レーザ光源2−1,2−2、光学系3、光検出器5−1(第1の光検出器)、光検出器5−2(第2の光検出器)、及び処理部6を備えて構成される。これらのうち、レーザ光源2、光学系3、及び光検出器5は光ピックアップを構成する。
光学系3は、コリメータレンズ21、偏光ビームスプリッタ22、ダイクロイックプリズム23、1/4波長板24、コリメータレンズ25、センサレンズ(シリンドリカルレンズ)26、回折格子27、コリメータレンズ28、ビームスプリッタ29、コリメータレンズ30、センサレンズ(シリンドリカルレンズ)31、及び対物レンズ4を有している。光学系3は、レーザ光源2−1,2−2がそれぞれ発した光ビームを光ディスク11に導く往路光学系として機能するとともに、光ディスク11からの戻りビームを光検出器5−1,5−2に導く復路光学系としても機能する。
まず、レーザ光源2−1が発した光ビーム(第1の光ビーム。以下、記録層用光ビームと称する。)の往路光学系では、まずコリメータレンズ21が記録層用光ビームを平行光とし、偏光ビームスプリッタ22に入射させる。偏光ビームスプリッタ22は、入射された平行光を通過させ、ダイクロイックプリズム23に入射させる。ダイクロイックプリズム23は、入射された平行光を反射してその進路を光ディスク11方向に折り曲げ、1/4波長板24に入射させる。1/4波長板24は、入射された平行光を円偏光とし、対物レンズ4に入射させる。
一方、レーザ光源2−2が発した光ビーム(第2の光ビーム。以下、サーボ層用光ビームと称する。)の往路光学系では、まず回折格子27がサーボ層用光ビームを3ビーム(0次回折光及び±1次回折光)に分解し、コリメータレンズ28に入射させる。コリメータレンズ28は、入射されたサーボ層用光ビームを平行光とし、ビームスプリッタ29に入射させる。ビームスプリッタ29は、入射された平行光を通過させ、ダイクロイックプリズム23に入射させる。ダイクロイックプリズム23は、入射された平行光を通過させ、1/4波長板24に入射させる。1/4波長板24は、入射された平行光を円偏光とし、対物レンズ4に入射させる。
光学系3は、対物レンズ4に入射された2種類の光ビーム(平行光状態の光ビーム)の光軸が一致するように構成される。対物レンズ4は、これら同一の光軸を有する2種類の光ビームを光ディスク11上に集光させるとともに、光ディスク11の記録面で反射してきた戻り光ビームを平行光に戻す。
ここで、コリメータレンズ28は、フォーカス方向(記録面と垂直な方向)に駆動可能に構成されている。また、対物レンズ4は、フォーカス方向及び光ディスク11の表面に平行な方向に駆動可能に構成されている。光学ドライブ装置1では、サーボ層用光ビームをサーボ専用層に合焦させ、かつ記録層用光ビームがアクセス対象層に合焦させるために、コリメータレンズ28及び対物レンズ4の位置制御が行われる(フォーカスサーボ)。
サーボ層用光ビームの戻り光ビームはサーボ専用層13のランド・グループで回折されており、0次回折光及び±1次回折光に分解されている。この0次回折光及び±1次回折光は、回折格子27により生ずる0次回折光及び±1次回折光とは異なるもので、紛らわしいので、以下では回折格子27により分解された0次回折光,+1次回折光,−1次回折光をそれぞれメインビームMB,サブビームSB1,サブビームSB2と称し、0次回折光及び±1次回折光という場合にはサーボ専用層13のランド・グループでの回折によって生じた回折光を指すことにする。メインビームMB,サブビームSB1,サブビームSB2は、それぞれ独立して反射光を生ずる。
記録層用光ビームの復路光学系では、対物レンズ4を通過した記録層用光ビームが、1/4波長板24を介してダイクロイックプリズム23に入射され、ダイクロイックプリズム23で折り曲げられて偏光ビームスプリッタ22に入射する。偏光ビームスプリッタ22は、記録層用光ビームをさらに折り曲げ、コリメータレンズ25に入射させる。コリメータレンズ25を通過した記録層用光ビームは、集光しつつセンサレンズ26(シリンドリカルレンズ)に入射する。センサレンズ26は、入射された記録層用光ビームに非点収差を付与する。非点収差を付与された記録層用光ビームは光検出器5−1に入射する。
サーボ層用光ビームの復路光学系では、対物レンズ4を通過したサーボ層用光ビームが、1/4波長板24及びダイクロイックプリズム23を介してビームスプリッタ29に入射する。ビームスプリッタ29は、入射してきた光ビームの進路を折り曲げ、コリメータレンズ30に入射させる。コリメータレンズ30を通過したサーボ層用光ビームは、集光しつつセンサレンズ31(シリンドリカルレンズ)に入射する。センサレンズ31は、センサレンズ26と同様、入射されたサーボ層用光ビームに非点収差を付与する。非点収差を付与されたサーボ層用光ビームは光検出器5−2に入射する。
図3はセンサレンズ26,31によって付与される非点収差の説明図である。同図に示すように、センサレンズは一方方向(同図MY軸方向=子線方向。)にのみレンズ効果を有している。そのため、コリメータレンズとセンサレンズによって構成される光学系の焦点の位置は、MY軸方向と、MY軸方向に垂直な方向であるMX軸方向(母線方向)とで異なっている(図3に示すMY軸焦点とMX軸焦点)。なお、MY軸方向とMX軸方向の光ビームの長さが等しい点を合焦点と称する。
上述したフォーカスサーボでは、アクセス対象層で反射した記録層用光ビーム(信号光)の合掌点がちょうど光検出器5−1上に位置し、かつサーボ層で反射したサーボ層用光ビーム(信号光)の合掌点がちょうど光検出器5−2上に位置するよう、コリメータレンズ28及び対物レンズ4の位置制御が行われる。その他の層で反射した光ビーム(迷光)の合掌点は光検出器5−1,5−2上に位置しないこととなり、迷光が光検出器5−1,5−2上に形成するスポット(迷光スポット)は、信号光が光検出器5−1,5−2上に形成するスポット(信号光スポット)に比べ、MY軸方向とMX軸方向の少なくとも一方に広がった形状を有することとなる。
図1に戻る。光検出器5−1は、光学系3から出射される記録層用光ビームの戻り光ビームの光路に交差する平面上に設置される。一方、光検出器5−2は、光学系3から出射されるサーボ層用光ビームの戻り光ビームの光路に交差する平面上に設置される。光検出器5−1は1つの受光面、光検出器5−2は3つの受光面をそれぞれ備えており、各受光面はそれぞれ複数の受光領域に分割されている。光学ドライブ装置1では、これらの受光領域を適宜組み合わせて用いることで、サーボ層用フォーカス誤差信号FES、記録層用フォーカス誤差信号FER、全加算信号(記録層プルイン信号PIR、サーボ専用層プルイン信号PIS、RF信号RF)、サーボ専用層用トラッキング誤差信号TES、記録層用トラッキング誤差TERなどの各種信号を生成することが可能となっている。その具体的内容については後述する。
処理部6は、一例として多チャンネル分のアナログ信号をデジタルデータに変換するA/D変換機能を備えたDSP(Digital Signal Processor)で構成されており、光検出器5−1,5−2の出力信号を受け付けて、フォーカス誤差信号FER,FES、全加算信号(プルイン信号PIR,PIS、RF信号RF)、トラッキング誤差信号TER,TESを生成する。処理部6の処理の詳細についても後述する。
CPU7はコンピュータやDVDレコーダー等に内臓される処理装置であり、図示しないインターフェイスを介し、処理部6に対して光ディスク11上のアクセス位置を特定するための指示信号を送信する。この指示信号を受信した処理部6は、対物レンズ4を制御し、光ディスク11の表面に平行に移動させる(この移動を「レンズシフト」という。)ことによりオントラック状態を実現する(トラッキングサーボ)。オントラック状態になると、CPU7は処理部6が生成するRF信号をデータ信号として取得する。
ここから、光検出器5の構成の詳細及び処理部6の処理の詳細について説明する。
図4は、本実施の形態による光検出器5−1の上面図である。また、図5は、本実施の形態による光検出器5−2の上面図である。図4及び図5には、信号光が受光面上に形成するスポットの例も示している。図4及び図5に示すX,Y方向はそれぞれ、光ディスク接線方向,光ディスク半径方向に対応している。
光検出器5−1は、図4に示すように、正方形の受光面51を備えている。受光面51は同一面積の4つの正方形(受光領域51A〜51D)に分割され、記録層用光ビームの戻り光ビームを受光できる位置に配置されている。
光検出器5−2は、図5に示すように、いずれも正方形の3つの受光面52〜54を備えている。このうち受光面52は、同一面積の4つの正方形(受光領域52A〜52D)に分割されている。また、受光面53及び54は、上下2つに同一面積で分割されている(受光領域53A,53B及び受光領域54A,54B)。受光面52〜54はそれぞれ、メインビームMB、サブビームSB1、及びサブビームSB2を受光できる位置に配置されている。
光ビームを受光した光検出器5−1,5−2は、受光領域ごとに、光ビームの強度を受光面で面積分して得られる値(受光量)の振幅を有する信号を出力する。以下では、受光領域Xに対応する出力信号をIXと表す。
図6は、処理部6の機能ブロックを示す図である。同図に示すように、処理部6はトラッキング誤差信号生成部61−1(第1のトラッキング誤差信号生成手段),トラッキング誤差信号生成部61−2(第2のトラッキング誤差信号生成手段)、トラッキングサーボ部62(トラッキングサーボ手段)、判定部63(判定手段)、全加算信号生成部64(RF信号生成手段)、フォーカス誤差信号生成部65、及びフォーカスサーボ部66を備えている。
トラッキング誤差信号生成部61−1は、光検出器5−1の出力信号に基づき、DPD法を用いて記録層用トラッキング誤差信号TER(第1のトラッキング誤差信号)を生成する。以下、トラッキング誤差信号TERの生成方法について詳しく説明する。
トラッキング誤差信号TERの生成にあたり、トラッキング誤差信号生成部61−1は、光検出器5−1の出力信号から、2つの位相差信号S1p=P(I51A,I51B)とS2p=P(I51C,I51D)とを取得する。なお、P(X,Y)は信号Xと信号Yの位相差を示す関数である。そして、位相差信号S1p,S2pを加算し、トラッキング誤差信号TERとして出力する。
位相差信号S1p,S2pによって示される位相差は、光ビームが符号Mによって回折される結果として、記録面への入射光の焦点位置がトラックの中心にある状態では0となり、記録面への入射光の焦点位置がトラック中心から遠ざかるに連れて大きくなる。したがって、トラッキング誤差信号TERにより示される位相差の合計がゼロとなるように対物レンズ4を制御することにより、オントラック状態を実現することが可能になる。
ただし、位相差信号S1p,S2pによって示される位相差は、オントラック状態である場合だけでなく、符号Mのない領域(未記録領域)に光ビームが照射される場合にも0となる。そのため、未記録領域では、DPD法によってオントラック状態を実現することはできない。
トラッキング誤差信号生成部61−2は、光検出器5−2の出力信号に基づき、DPP法を用いてサーボ専用層用トラッキング誤差信号TES(第2のトラッキング誤差信号)を生成する。以下では、DPP法を用いてサーボ専用層用トラッキング誤差信号TESを特にトラッキング誤差信号TES−Pと記す場合がある。以下、トラッキング誤差信号TES−Pの生成方法について詳しく説明する。
トラッキング誤差信号TES−Pの生成では、トラッキング誤差信号生成部61−2は、次の式(1)により差動プッシュプル信号DPPを算出する。そして、この差動プッシュプル信号DPPを、トラッキング誤差信号TES−Pとして出力する。ただし、MPP,SPPはそれぞれメインプッシュプル信号,サブプッシュプル信号であり、それぞれ式(2),式(3)で表される。また、kは正の定数であり、メインプッシュプル信号MPPとサブプッシュプル信号SPPそれぞれに生じたレンズシフトオフセット(上述したレンズシフトに伴って生ずるオフセット)を相殺するように決定される。
図5に示すように、各ビームMB,SB1,SB2は、プッシュプル領域P1及びP2を有している。これらは、上述した0次回折光と±1次回折光の干渉している領域であり、図5に示すように、メインビームMBとサブビームSB1,SB2とでは、プッシュプル領域P1とプッシュプル領域P2の位置関係が逆になっている。
プッシュプル領域P1及びP2の相対的な強度は、記録面への入射光の焦点位置の光ディスク半径方向への移動(すなわち、トラックを横切る方向への移動)に伴って変化する。記録面への入射光の焦点位置がトラックの中心にある場合、プッシュプル領域P1及びP2の強度は等しくなる。したがって、メインプッシュプル信号MPPの値は、記録面への入射光の焦点位置がトラックの中心にある状態では0となり、そうでない場合には0以外となる。サブプッシュプル信号SPPについても同様である。ただし、上述したように、メインビームMBとサブビームSB1,SB2とではプッシュプル領域P1とプッシュプル領域P2の位置関係が逆になっていることから、メインプッシュプル信号MPPとサブプッシュプル信号SPPとでは位相が180°異なり、符号が逆になっている。そのため、式(1)で示される差動プッシュプル信号DPPの値も、記録面への入射光の焦点位置がトラックの中心にある状態では0となり、そうでない場合には0以外となることになり、トラッキング誤差信号TES−Pがゼロとなるように対物レンズ4を制御することにより、オントラック状態を実現することが可能になる。
トラッキングサーボ部62は、トラッキング誤差信号TER及びTESのうちのいずれか一方に基づいて、光学系3(より具体的には対物レンズ4)を制御する(トラッキングサーボ)。以下、トラッキング誤差信号TERに基づいて光学系3を制御するモードを記録層モード、トラッキング誤差信号TESに基づいて光学系3を制御するモードをサーボ専用層モードと称する。
トラッキングサーボ部62は、CPU7から上述した指示信号が入力されると、まず初めに記録層モードによりトラッキングサーボを開始し、オントラック状態を実現する。そして記録層モードによるトラッキングサーボを行っている間に判定部63から記録層用光ビームの照射位置が未記録領域であるとの判定結果を通知されると、サーボ専用層モードに切り替えてトラッキングサーボを行う。逆に、サーボ専用層モードによるトラッキングサーボを行っている間に判定部63から記録層用光ビームの照射位置が記録領域であるとの判定結果を通知されると、記録層モードに切り替えてトラッキングサーボを行う。これらの切り替え処理については、後に判定部63の説明と併せて、より詳しく説明する。
判定部63は、記録層用光ビームの照射位置(焦点位置)がアクセス対象層内の未記録領域又は記録領域のいずれにあるかを判定する。具体的には、トラッキング誤差信号生成部61−2が生成するトラッキング誤差信号TESを監視し、所定範囲を超えて変化したか否かに応じて、上記判定を行う。以下、詳しく説明する。
図7は、トラック中心付近を維持しながら再生や書き込みを行う際の、トラッキング誤差信号TER及びTES−Pの時間変化を示す図である。トラッキング誤差信号TES−Pの実線は本実施の形態によるモード切り替えを行った場合を示し、点線は本実施の形態によるサーボ専用層モードへの切り替えを行わない場合を示している。なお、ここでは、後述するチルトや光軸ずれなどがなく、光ビームの焦点位置がそれぞれサーボ専用層と記録層のトラック中心にある場合を考えている。
焦点位置が記録領域内にあり、かつ焦点位置がトラック中心にある場合、トラッキング誤差信号TERの値は0になる。一方、焦点位置がトラック中心から少しずれた位置にある場合には、トラッキング誤差信号TERの値は0以外となる。したがって、トラッキングサーボ部62が、トラッキング誤差信号TERの値が0となるように対物レンズ4の制御を行うことにより、適切にオントラック状態が実現される。これにより、図7に示すように、トラッキング誤差信号TES−Pの値も0を維持する。
一方、焦点位置が未記録領域内にある場合、記録層用光ビームの照射位置には符号Mがないので、焦点位置がトラック中心からずれてもトラッキング誤差信号TERの値は0のままである。したがって、トラッキングサーボ部62がトラッキング誤差信号TERに基づく制御を行っていると、記録層用光ビームの照射位置は次第にトラックからずれていく。このずれに伴い、トラッキング誤差信号TES−Pの値は、図7に示すように次第に0から遠ざかっていき、本実施の形態によるモード切り替えを行わなければ、最終的にはトラックジャンプ時と同様の振動を繰り返すようになる。
判定部63は、このようなトラッキング誤差信号TES−Pの値の変化を検出することにより、記録層用光ビームの照射位置がアクセス対象層内の未記録領域又は記録領域のいずれにあるかを判定する。つまり、判定部63は予め所定のしきい値Δ1,Δ2(0≦Δ2<Δ1)を記憶しており、トラッキングサーボ部62がトラッキング誤差信号TERに基づく制御を実行中、トラッキング誤差信号TES−Pの値が−Δ1〜Δ1の範囲を超えた場合に、記録層用光ビームの照射位置がアクセス対象層内の未記録領域に入ったと判定する(判定部63がそのように判定するだけであり、未記録領域に入ったことが100%保証されるわけではない。)。逆に、−Δ2〜Δ2の範囲内に入った場合には、記録層用光ビームの照射位置がアクセス対象層内の記録領域に入ったと判定する(判定部63がそのように判定するだけであり、アクセス対象層内の記録領域に入ったことが100%保証されるわけではない。)。
判定部63は、以上の判定の結果をトラッキングサーボ部62に通知する。トラッキングサーボ部62は、記録層用光ビームの照射位置がアクセス対象層内の未記録領域に入ったとの判定結果を通知されると、記録層モードでのトラッキングサーボを中止し、サーボ専用層モードでのトラッキングサーボに切り替える。一方、記録層用光ビームの照射位置がアクセス対象層内の記録領域に入ったとの判定結果が通知された場合には、サーボ専用層モードでのトラッキングサーボを中止し、記録層モードでのトラッキングサーボに切り替える。
図8は、判定部63の内部回路を具体的に示す図である。同図に示すように、判定部63はコンパレータ70,71及び出力信号生成部72を有している。コンパレータ70,71はそれぞれ2つの入力端子を有し、それぞれにトラッキング誤差信号TES及び基準電位Vrefがそれぞれ入力される。基準電位Vrefは、光ビームの焦点位置がトラック中心にある場合のトラッキング誤差信号TESの電位であり、回路の動作点などを考慮して任意に決められる。即ち、トラッキング誤差信号TES,TERは基準電位Vref込みの値としている。出力信号生成部72は、コンパレータ70,71の各出力信号V1,V2を受け、出力信号VOUTを生成する。
図9は、トラック中心付近を維持しながら再生や書き込みを行う際の信号V1,V2,及びVOUTの時間変化を、トラッキング誤差信号TES−Pの時間変化に並べて記載したものである。なお、図9での時間のスケールは、図7よりも短くしている。図9から理解されるように、コンパレータ70は、トラッキング誤差信号TES−Pの値が−Δ1〜Δ1の範囲内にある場合に信号V1の値をローとし、それ以外の場合に信号V1の値をハイとする。一方、コンパレータ71は、トラッキング誤差信号TES−Pの値が−Δ2〜Δ2の範囲内にある場合に信号V2の値をローとし、それ以外の場合に信号V2の値をハイとする。出力信号生成部72は、信号V1の立ち上がりで信号VOUTをハイとし、信号V2の立ち下がりで信号VOUTをローとする。判定部63は、記憶層用光ビームの照射位置がアクセス対象層内の未記録領域又は記録領域のいずれにあるかの判定結果として、この信号VOUTを、トラッキングサーボ部62に通知する。
トラッキングサーボ部62は、出力信号VOUTに応じてモードの切り替えを行う。即ち、VOUTがローの時は記録層モードとなり、ハイの時はサーボ専用層モードとなる。その結果、トラッキング誤差信号TES−Pは、図9に示すように変化する。
ここで注意しなければならないのは、記録層用光ビームの照射位置が未記録領域にある場合、図9に示すように、出力信号VOUTが激しく振動する信号となる点である。この振動のため、トラッキングサーボ部62が出力信号VOUTに敏感に反応してモードの切り替えを行うこととすると、未記録領域ではモード切り替えが多発し、トラッキングサーボが不安定になってしまうおそれがある。そこで、サーボ専用層モードから記録層モードへの切り替えの際には、ある程度の遅延を持って処理を行うようにすることが好ましい。具体的には、トラッキングサーボ部62において処理を遅延させることとしてもよいし、判定部63が判定結果の出力タイミングを遅らせることとしてもよい。
図10に、遅延処理の具体的な例を示す。図10は、図9と同様、トラック中心付近を維持しながら再生や書き込みを行う際の信号V1,V2,及びVOUTの時間変化を、トラッキング誤差信号TES−Pの時間変化に並べて記載したものであるが、この例では、判定部63の出力信号生成部72により出力信号VOUTがローとされるタイミングを、信号V2の立ち下がり直後ではなく、信号V2の立ち下がりから所定の遅延時間dの経過後としている。例えば、遅延時間dは、TES−Pがゼロに戻る時間とする。この例によれば、図10に示すように、TES−Pがゼロ付近まで戻ることができるため、出力信号VOUTの振動周期が長くなっている。したがって、サーボ専用層と記録層のトラッキングサーボを切り換える頻度を低減できるので、トラッキングサーボを比較的安定的に行うことが可能になっている。
以上説明したように、本実施の形態による光学ドライブ装置1によれば、サーボ専用層13を設けた光ディスク11を再生する場合に、記録層12の符号を用いるDPD法によりトラッキングサーボを行いながらも、未記録領域でもトラック中心付近を維持できるようになる。
なお、ここまでの説明ではサーボ専用層13がランド・グルーブを有しているという前提の下で説明を行ってきたが、サーボ専用層13が、ランド・グルーブではなくダミー符号を有している場合であっても、同様の処理により、未記録領域でのトラック中心付近を維持することが可能である。以下、詳しく説明する。
サーボ専用層13がダミー符号を有している場合、トラッキング誤差信号生成部61−2は、トラッキング誤差信号生成部61−1と同様の処理によりDPD法を用いてトラッキング誤差信号TES−Dを生成する。判定部63は、このDPD法を用いて作られたトラッキング誤差信号TES−Dを監視し、所定範囲を超えて変化したか否かに応じて、光ビームの照射位置(焦点位置)がアクセス対象層内の未記録領域又は記録領域のいずれにあるかを検出する。この検出処理も、DPP法を用いて作られたトラッキング誤差信号TES−Pを用いる場合と同様の処理により実現することができる。このように、サーボ専用層13がダミー符号を有している場合であっても、ランド・グルーブを有している場合と同様の処理を行うことが可能である。したがって、サーボ専用層13がランド・グルーブではなくダミー符号を有している場合であっても、ランド・グルーブを有している場合と同様、未記録領域でのトラック中心付近を維持することが可能となる。
図6に戻る。全加算信号生成部64は、記録層用光ビームを受光するための受光面51を構成する各受光領域51A〜51Dの受光量に基づいて、RF信号RF及び記録層プルイン信号PIRを生成する。また、サーボ専用層用光ビームを受光するための受光面52を構成する各受光領域52A〜52Dの受光量に基づいて、サーボ専用層プルイン信号PISを生成する。具体的には、次の式(4−1)及び式(4−2)の演算を行ってこれらの信号を生成する。式(4−1)から明らかなように、RF信号RFとプルイン信号PIとは同一の信号である。ただし、記録層プルイン信号PIRは通常、ローパスフィルタを通すことにより帯域制限がなされた状態で出力される。帯域制限をするのは、符号Mの有無に応じた変動やノイズを除去するためである。
記録層プルイン信号PIR及びサーボ専用層プルイン信号PIS(以下、まとめてプルイン信号PIという。)は、フォーカスサーボ部66において層認識のために用いられる信号である。つまり、プルイン信号PIは、光ビームの焦点位置が層間を移動する際、層表面に焦点が合っているときに極大になるという性質を有している。そこで、フォーカスサーボ部66は、プルイン信号PIの値と所定のしきい値とを比較し、このしきい値より高くなっている部分を検出することで、光ビームの焦点位置が記録層やサーボ専用層近辺に合っていることを検出する。
RF信号RFは、データ信号としてCPU7に入力される。CPU7は、RF信号RFに基づいて光ディスク11に書き込まれている情報を取得する。
フォーカス誤差信号生成部65は、記録層用光ビームを受光するための受光面51を構成する各受光領域51A〜51Dの受光量に基づいて記録層用フォーカス誤差信号FE
Rを生成するとともに、サーボ専用層用光ビームのメインビームMBを受光するための受光面52を構成する各受光領域52A〜52Dの受光量に基づいてサーボ層用フォーカス誤差信号FE
Sを生成する。具体的には、次の式(5)及び式(6)の演算を行って、これらのフォーカス誤差信号FE
R,FE
Sを生成する。
フォーカスサーボ部66は、コリメータレンズ28及び対物レンズ4の位置を光ディスク11の記録面と垂直な方向に制御し、上記各フォーカス誤差信号FER,FESの値が0となるようにすることで、記録層用光ビームの焦点を記録層に合わせ、サーボ専用層用光ビームの焦点をサーボ専用層に合わせる(フォーカスサーボ)。
最後に、光ディスク11のチルト(傾き)を考慮した処理について説明する。ここまでの説明では光ディスク11のチルトについては無視してきたが、実際には光ディスク11が傾く場合があり、その場合には記録層用光ビームとサーボ専用層光ビームを同時にトラック中心に照射することが困難になる。
図11は、光ディスク11が傾いている場合の各層への光ビームの当たり方の説明図である。図11(a)は光ディスク11が傾いていない場合を示し、図11(b)は光ディスク11が傾いている場合を示している。光ディスク11が傾いていなければ、図11(a)に示すように、記録層12でオントラック状態となっている場合にはサーボ専用層13でもオントラック状態となる。しかし、図11(b)に示すように、光ディスク11が傾いている場合、記録層12でオントラック状態となっている場合であっても、サーボ専用層13ではトラック中心とならない。
このことは、トラッキング誤差信号TER及びTES−Pの値にも影響を与える。図12は、トラック中心付近を維持しながら再生や書き込みを行う際のトラッキング誤差信号TER及びTES−Pの時間変化を、光ディスク11が傾いている場合について示した図である。なお、同図では、本実施の形態によるモード切り替えを行わないとしている。
図12と図7とを比較すると明らかなように、トラッキング誤差信号TERは図7のトラッキング誤差信号TERと変わりないが、トラッキング誤差信号TES−Pの値は、図7のトラッキング誤差信号TES−Pに比べ、焦点位置が記録領域内にある場合にαだけオフセット(以下、チルトオフセットという。)を有している。このチルトオフセットは、光ディスク11が傾いているために生じているものである。
図13は、光ディスク11のチルトを考慮した判定部63の内部回路を示す図である。同図に示すように、この場合の判定部63では、上述したコンパレータ70,71の入力端子にサンプルホールド回路73が設けられる。サンプルホールド回路73は、トラッキング誤差信号生成部61−2が生成したトラッキング誤差信号TES−Pを標本化し、一定時間保持する回路である。これにより、コンパレータ70,71は、記録層用光ビームの照射位置が記録領域にあるときに保持されたトラッキング誤差信号TES−Pの電位Vref+αを基準にして出力信号V1,V2を生成することになる。つまり、コンパレータ70は、トラッキング誤差信号TES−Pの値がα−Δ1〜α+Δ1の範囲内にある場合に信号V1の値をローとし、それ以外の場合に信号V1の値をハイとする。一方、コンパレータ71は、トラッキング誤差信号TES−Pの値がα−Δ2〜α+Δ2の範囲内にある場合に信号V2の値をローとし、それ以外の場合に信号V2の値をハイとする。
このようにすることで、光ディスク11が傾いていても、記録用光ビームの照射位置が未記録領域に差し掛かったことを適切に判定でき、適切にモード切り替えを行うことが可能になる。
ところで、光ディスク11のチルトを考慮しなければならない場合、サーボ専用層モードから記録層モードに切り替わった後、正常にオントラック状態に戻れるよう、特別な決定方法によりΔ1を決定しておく必要がある。また、サーボ専用層モードでのトラッキングサーボにおける対物レンズ4の制御方向を、ランドとグルーブとで切り替える必要が生ずる。以下、詳しく説明する。
初めに、光ディスク11が傾いていない場合について説明する。図14は、トラッキング誤差信号生成部61−1が生成するトラッキング誤差信号TERと、トラッキング誤差信号生成部61−2が生成するトラッキング誤差信号TES−Pとを描画した図であり、横軸は光ディスク半径方向(トラックジャンプ方向)としている。同図の下部には、参考のために記録面の平面図(記録層の符号Mとサーボ専用層のランドL及びグルーブGとを含む。)を示している。また、同図には記録層のトラック中心を示す線分CRと、サーボ専用層のトラック中心を示す線分CS(ランドLの中心のみ)も描いている。なお、図14では、符号Mの横幅がランドの幅に比べてかなり小さいように描いているが、これは図面の見易さを優先したためであり、実際の符号Mの横幅はランドの幅より少し小さい程度である。後掲する他の図面でも同様である。
また、図14には、赤色レーザで再生可能な光ディスク11(トラックピッチが赤色レーザのスポット径に応じて決められている光ディスク11)を用い、かつ記録層用光ビームとして青色レーザを用いる場合を示している。この場合、同図に示すように、記録層用光ビームの反射光に基づいて生成されるトラッキング誤差信号TERは、記録層用光ビームの照射位置が符号Mの近辺(ランドL内)にある場合に極大値を有し、グルーブG内にある場合には常時0となる。これに対し、後述する図28などに示すように、記録層用光ビームが赤色レーザである場合のトラッキング誤差信号TERは、グルーブGの中心付近に極大値を有する。この違いは赤色レーザと青色レーザのスポットの大きさの違いによるものである。
さて、図14には記録層用光ビームの照射位置が記録領域にある場合の各信号を示している。この場合において、記録層用光ビームの照射位置が仮にトラック中心CRから図中の矢印A1方向にずれたとする。すると、トラッキング誤差信号TERは図中の矢印B1方向に変化するが、記録層モードでのトラッキングサーボにより、すぐに元に戻る。これにより、記録層用光ビームの照射位置もトラック中心CRに戻る。このとき、トラッキング誤差信号TES−Pも図中の矢印C1方向に変化するが、記録層モードでのトラッキングサーボが行われるために通常はしきい値Δ1を超えることはないので、トラッキングサーボ部62のモードがサーボ専用層モードに切り替わることはない。
図15は、記録層用光ビームの照射位置が未記録領域にあるとした他は、図14と同様である。この場合、同図に示すように記録層に符号Mは存在しない。このため、トラッキング誤差信号TERは常に0であり、記録層用光ビームの照射位置がトラック中心CRから図中の矢印A2方向に外れた場合でも記録層モードでのトラッキングサーボが機能せず、図中の矢印C2に示すように、トラッキング誤差信号TES−Pはいずれしきい値Δ1を超える。その後は、サーボ専用層モードでのトラッキングサーボが行われる。
図16は、一旦図15の状態になった後、記録層用光ビームの照射位置が記録領域に戻ってきた場合の例を示している。この場合、記録層用光ビームの照射位置は、まずサーボ専用層モードでのトラッキングサーボにより、図中の矢印A3に沿って移動する。このとき、トラッキング誤差信号TES−Pは図中の矢印C3に沿って変化する。矢印C3の先端におけるトラッキング誤差信号TES−Pの値はΔ2であり、このΔ2を超えた時点で、トラッキングサーボ部62のモードは記録層モードに切り替わる。以降は記録層モードでのトラッキングサーボにより、記録層用光ビームの照射位置はトラック中心CRに戻る(矢印B4,A4)。
次に、光ディスク11が傾いている場合について説明する。図17は、光ディスク11が傾いているとした他は図16と同様である。
光ディスク11が傾いている場合、図17に示すように、光ビームの照射方向から見て、記録層のトラック中心CRとサーボ専用層のトラック中心CSとが一致しない。その結果、記録層用光ビームの照射位置がトラック中心CRにある場合、トラッキング誤差信号TES−Pの値は、上述したチルトオフセットα(≠0)となる。チルトオフセットαの値は上述したサンプルホールド回路73によって保持されるので、トラッキングサーボ部62のモードは、トラッキング誤差信号TES−Pの値がα−Δ1〜α+Δ1の範囲を超えた場合にサーボ専用層モードに切り替わり、トラッキング誤差信号TES−Pの値がα−Δ2〜α+Δ2の範囲に入った場合に記録層モードに切り替わる。
ここで、トラッキングサーボ部62のモードが一旦サーボ専用層モードに切り替わった後、記録層用光ビームの照射位置が記録領域に戻ってきたとすると、記録層用光ビームの照射位置は、まずサーボ専用層モードでのトラッキングサーボにより、図17に示した矢印A5に沿って移動する。このとき、トラッキング誤差信号TES−Pは図中の矢印C5に沿って変化する。矢印C5の先端におけるトラッキング誤差信号TES−Pの値はα+Δ2であり、このα+Δ2を超えた時点で、トラッキングサーボ部62のモードは記録層モードに切り替わる。以降は記録層モードでのトラッキングサーボにより、記録層用光ビームの照射位置はトラック中心CRに戻る(矢印B6,A6)。
図17の例では、サーボ専用層モードから記録層モードに切り替わった後、特に問題なく記録層用光ビームの照射位置をトラック中心CRに戻すことができた。しかし、トラッキング誤差信号TES−Pの値がα−Δ2である場合の記録層光ビームの照射位置によっては、戻すことができなくなる場合がある。以下、そのような場合について説明する。
図18は、3通りの光ディスク11の傾きについて、それぞれの場合のトラッキング誤差信号TES−P(1)〜TES−P(3)を示した図である。光ビームの照射位置が初めトラック中心CRからの距離X(>a。aは、トラッキング誤差信号TERの値が最大となるときの、記録層用光ビームの照射位置のトラック中心CRからの距離。)の位置にあったとし、その時点でのトラッキングサーボ部62のモードはサーボ専用層モードであったとする。サーボ専用層モードでのトラッキングサーボにより、各トラッキング誤差信号TES−P(1)〜TES−P(3)の値はそれぞれ、図中に示した矢印R(1)〜R(3)に沿って変化する。そして、それぞれの値が、それぞれのチルトオフセットα(1)〜α(3)からΔ2を減算した値α(1)−Δ2〜α(3)−Δ2となった時点で、トラッキングサーボ部62のモードが記録層モードに切り替わる。図18には、記録層モードに切り替わる時点でのトラッキング誤差信号TERの位置(以下、切り替え位置という。)を点P(1)〜P(3)で示している。
図18から理解されるように、切り替え位置が点P(1)及びP(2)である場合については、図16や図17で説明したものと同様、記録層モードでのトラッキングサーボにより、記録層用光ビームの照射位置をトラック中心CRに戻すことが可能である。これに対し、切り替え位置が点P(3)である場合、トラッキング誤差信号TERの値が0であることから、記録層モードでのトラッキングサーボが機能せず、記録層用光ビームの照射位置をトラック中心CRに戻すことができない。
このように記録層用光ビームの照射位置をトラック中心CRに戻すことができない場合が生ずることを防止するために、本実施の形態ではΔ1を利用する。つまり、切り替え位置が、記録層モードでのトラッキングサーボが機能する限界の位置(図18の点P(2)。トラック中心CRから距離aだけ離れた位置。)よりもトラック中心CRから遠くなる場合に、上側のしきい値α+Δ1がトラッキング誤差信号TES−Pの最大値を超えないようにする。
図19は、図18に示した3つのトラッキング誤差信号TES−P(1)〜TES−P(3)のうちトラッキング誤差信号TES−P(3)のみを抜き出して記載した図である。同図には、上記のようにして決定した上側のしきい値α(3)+Δ1及び下側のしきい値α(3)−Δ1についても示している。同図に示すように、上側のしきい値α(3)+Δ1がトラッキング誤差信号TES−Pの最大値を超えないようにすると、記録層用光ビームの照射位置がトラック中心CRからずれていったとき、トラック中心CRからの距離Y(<a)の位置に達した時点で、トラッキングサーボ部62のモードがサーボ専用層モードに切り替わる。つまり、図18のようにトラック中心CRからの距離X(>a)の位置まで記録層用光ビームの照射位置が移動してしまうことが、そもそも起こり得なくなる。したがって、記録層用光ビームの照射位置をトラック中心CRに戻すことができない場合が生ずることを防止できる。
Δ1の取り得る最大値は光ディスク11の傾きによって異なる。つまり、光ディスク11の傾きが小さいほど(図18の例では、トラッキング誤差信号TES−Pが右にずれるほど)、Δ1の値を大きくすることが可能になる。Δ1の最大値が最も小さくなるのは、図18に示したトラッキング誤差信号TES−P(2)の場合(厳密には、トラッキング誤差信号TES−P(2)から微小な距離だけ右にずれた場合)である。逆に言えば、Δ1の具体的な値を、トラッキング誤差信号TES−Pが図18に示したトラッキング誤差信号TES−P(2)となる場合のΔ1の最大値以下となるように決定すれば、光ディスク11の傾きが如何なる値であっても、記録層用光ビームの照射位置をトラック中心CRに戻すことができない場合が生ずることを防止できる。そこで、以下では、トラッキング誤差信号TES−Pがトラッキング誤差信号TES−P(2)となる場合のΔ1の最大値の求め方について説明する。
図20は、図18に示した3つのトラッキング誤差信号TES−P(1)〜TES−P(3)のうちトラッキング誤差信号TES−P(2)のみを抜き出して記載した図である。なお、以下の説明では、トラッキング誤差信号TES−Pの傾き(勾配)が、同図に示すようにg1であるとする。
図中に示した長さcは、c=Δ2/g1と表される。したがって、d=a−c=a−Δ2/g1となり、さらに、Δ1=(1/2)×(ag1−Δ2)と表される。このΔ1が、トラッキング誤差信号TES−Pがトラッキング誤差信号TES−P(2)となる場合のΔ1の最大値となる。例えば、TES−P(1)(図18)の場合、α(1)−Δ2とα(1)間のトラック半径方向の距離はaより小さい。よって、サーボ専用層で制御を行うに当たり、記録層においてトラック中心CRからの距離がaより大きくなることがないため、トラッキング制御が切り替わった場合(α(1)−Δ2で切り替わった場合)、記録層での制御が可能となる。一方、トラッキング誤差信号TES−P(3)(図18)の場合、α(3)<α(2)であるので、上記Δ1では傾きの符号が変化する場所まで達することはない。よって、サーボ専用層で制御を行うに当たり、記録層においてトラック中心CRからの距離がaより大きくなることがないため、トラッキング制御が切り替わった場合(α(3)+Δ2で切り替わった場合)、記録層での制御が可能となる。したがって、Δ1≦(1/2)×(ag1−Δ2)とすることで、光ディスク11の傾きが如何なる値であっても、記録層用光ビームの照射位置をトラック中心CRに戻すことができない場合が生ずることを防止できることになる。
ところで、以上のようにしてΔ1を決定する場合、例えば図18に示したトラッキング誤差信号TES−P(1)では上側のしきい値α(1)+Δ1がトラッキング誤差信号TES−Pの最大値より大きくなり、サーボ専用層モードに切り替えるためのしきい値として機能しない。このような場合、サーボ専用層モードでのトラッキングサーボにおける対物レンズ4の制御方向を常に同一方向としていると問題が生ずる。以下、詳しく説明する。
図21は、図18に示した3つのトラッキング誤差信号TES−P(1)〜TES−P(3)のうちトラッキング誤差信号TES−P(1)を、図14〜図17と同様に描画した図である。記録層用光ビームの照射位置がトラック中心CRから図中の矢印A7方向にずれた場合、後に記録層モードに戻った際に記録層用光ビームの照射位置をトラック中心CRに適切に戻すためには、サーボ専用層モードでのトラッキングサーボにおいて、図中の矢印C7に沿ってトラッキング誤差信号TES−Pを変化させる必要がある。一方、記録層用光ビームの照射位置がトラック中心CRから図中の矢印A8方向(A7方向とは逆の方向)にずれた場合、後に記録層モードに戻った際に記録層用光ビームの照射位置をトラック中心CRに適切に戻すためには、サーボ専用層モードでのトラッキングサーボにおいて、図中の矢印C8に沿ってトラッキング誤差信号TES−Pを変化させる必要がある。
矢印C7と矢印C8とでは、対物レンズ4の制御方向が逆である。仮に、対物レンズ4の制御方向を矢印C8方向のみに限ったとすると、記録層用光ビームの照射位置がトラック中心CRから図中の矢印A7方向にずれた場合、サーボ専用層モードでのトラッキングサーボによりトラッキング誤差信号TES−Pは図中の矢印C9の方向に変化することになる。その場合、記録層モードに戻った後には、トラッキングサーボによりトラッキング誤差信号TERが図中の矢印B9に沿って変化することになるので、記録層用光ビームの照射位置が隣のトラックに移動してしまう結果となる。これは望まない結果である。
これを防止するために、本実施の形態によるトラッキングサーボ部62は、サーボ専用層用光ビームの照射位置がランドLにある場合とグルーブGにある場合とで、サーボ専用層モードでのトラッキングサーボにおける対物レンズ4の制御方向を反対にする。これにより、サーボ専用層モードから記録層モードに切り替わった後、正常にオントラック状態に戻れるようになる。
サーボ専用層用光ビームの照射位置がランドLとグルーブGのいずれにあるかの検出は、受光面52を構成する各受光領域52A〜52Dの受光量に基づいて行うことが好適である。具体的には、次の式(7)によりRF信号RFを生成し、その値に基づいて上記検出を行う。
ランドLとグルーブGとでは反射率が異なるため、式(7)に示したRF信号RFの値は、サーボ専用層用光ビームの照射位置がランドLにある場合とグルーブGにある場合とで異なる。トラッキングサーボ部62は、その中間の値をしきい値として記憶しておき、RF信号RFの値がしきい値より高いか低いかに応じて、サーボ専用層用光ビームの照射位置がランドLとグルーブGのいずれにあるかを検出する。
図22は、本発明の第2の実施の形態による光学ドライブ装置1の処理部6の機能ブロックを示す図である。本実施の形態による光学ドライブ装置1は、判定部63の処理が一部異なる点を除き、第1の実施の形態による光学ドライブ装置1と同様である。以下では、判定部63の処理のみに着目して説明する。
図22に示すように、本実施の形態による判定部63には、トラッキング誤差信号TES−Pではなく、RF信号RFが入力される。判定部63は、このRF信号RFに応じて、記録層用光ビームの照射位置がアクセス対象層内の未記録領域又は記録領域のいずれにあるかを検出する。以下、詳しく説明する。
図23は、トラック中心付近を維持しながら再生や書き込みを行う際の、判定部63が利用する各種信号の時間変化を示す図である。
まず初めに、RF信号RFは、図23に示すように、記録領域では短い周期で激しく振動する信号である。この振動は符号Mによる反射率の変化に対応するものであるため、未記録領域ではRF信号RFの振動は生じない。図23には一例を示しているが、RF信号RFの絶対値は、記録層の反射率不均一や共焦点クロストークによって変動する。そこで、判定部63はまず、RF信号RFの下値を揃えるためのボトムクランプ処理を行い、図23に示すクランプ信号RFCを得る。
クランプ信号RFCが得られたら、次に判定部63は、所定のドループレート(概ねRF信号RFの振動周期)でクランプ信号RFCの最大値を包絡してなるトップエンベ信号ENVを取得する。そして、このトップエンベ信号ENVを、予め記憶している所定のスライスレベルSLでスライスすることにより、スライス信号SSを取得する。なお、スライスレベルSLは、クランプ信号RFCの最大値と最小値の中間程度の値とすることが好ましい。
最後に、判定部63は、スライス信号SSに基づいて未記録領域検出信号NRを生成する。具体的には、スライス信号SSのハイが一定時間D以上継続した場合に未記録領域検出信号NRをハイとし、スライス信号SSがローとなった場合には、直ちに未記録領域検出信号NRをローとすることにより、未記録領域検出信号NRを生成する。このように立ち上がりの遅延処理を行うのは、RF信号RFはノイズに大きく影響される性質を有するところ、ノイズによって誤った未記録領域の検出がなされてしまうことを防ぐためである。
未記録領域検出信号NRは、ローである場合に記録層用光ビームの照射位置がアクセス対象層内の記録領域に入ったことを示し、ハイである場合に記録層用光ビームの照射位置がアクセス対象層内の未記録領域に入ったことを示す信号である。判定部63は、この未記録領域検出信号NRを出力することにより、トラッキングサーボ部62に対して検出結果の通知を行う。トラッキングサーボ部62は、入力された未記録領域検出信号NRに応じて、モードの切り替えを行う。
以上説明したように、本実施の形態による光学ドライブ装置1によっても、記録層モードでのトラッキングサーボを行うことでオントラック状態を維持しながら再生や書き込みを行っている際、光ビームの照射位置が未記録領域に差し掛かった場合に、サーボ専用層モードでのトラッキングサーボに切り替えることが可能になる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
例えば、判定部63は、出力信号VOUTと未記録領域検出信号NRの両方を生成し、記録層用光ビームの照射位置が記録領域に入ったことの検出及び通知は未記録領域検出信号NRに基づいて行い、記録層用光ビームの照射位置が未記録領域に入ったことの検出及び通知は出力信号VOUTに基づいて行うこととしてもよい。上述したように、出力信号VOUTは、光ビームの照射位置が未記録領域にある場合、激しく振動する。そこで、サーボ専用層モードから記録層モードへの切り替えの際には、ある程度の遅延を持って処理を行うようにすることが好ましいと述べたが、この遅延は、出力信号VOUTに未記録領域検出信号NRを組み合わせることによっても実現できる。つまり、上記のように、判定部63は、記録層用光ビームの照射位置が記録領域に入ったことの検出及び通知を未記録領域検出信号NRに基づいて行い、記録層用光ビームの照射位置が未記録領域に入ったことの検出及び通知を出力信号VOUTに基づいて行うこととすればよい。こうすることで、トラッキングサーボ部62は、より適切なタイミングで、モードの切り替えを行えるようになる。すなわち、トラッキングサーボ部62は、未記録領域検出信号NRがローのときに記録層でのトラッキング制御となり、ハイのときにサーボ専用層でのトラッキング制御となる。図23は、RF信号RFを処理することにより未記録領域検出信号NRを生成する一例である。
図24は、判定部63が以上のような処理を行うと仮定し、図9や図10と同様に、トラック中心付近を維持しながら再生や書き込みを行う際の信号V1,NR,及びVOUTの時間変化を、トラッキング誤差信号TES−Pの時間変化に並べて記載したものである。この例によれば、図24に示すように、出力信号VOUTの値は、光ビームの焦点位置が未記録領域に入って一旦ハイとなった後、未記録領域内にある間、ハイの状態で維持される。したがって、記録層とサーボ専用層におけるトラッキング制御の切り替えの頻度を大幅に低減できるので、トラッキングサーボをさらに安定的に行うことが可能になっている。
また、図14〜図21では、赤色レーザで再生可能な光ディスク11(トラックピッチが赤色レーザのスポット径に応じて決められている光ディスク11)を用い、かつ記録層用光ビームとして青色レーザを用いる場合を示したが、光ディスク11の種類と記録層用光ビームの色の組み合わせはこれに限られるものではない。また、サーボ専用層用光ビームについても、赤色レーザ又は青色レーザのいずれも用いることができる。また、上述したように、トラッキング誤差信号TESとしては、DPP法により生成されたトラッキング誤差信号TES−PとDPD法により生成されたトラッキング誤差信号TES−Dのいずれも用いることができる。これらの違いは、いずれもΔ1の値に影響を与える。そこで以下、いくつかの例を挙げ、Δ1の決定方法について説明する。
図25は、サーボ専用層用光ビームを赤色レーザとし、トラッキング誤差信号TESとしてDPD法により生成されたトラッキング誤差信号TES−Dを用いる場合の例を示す図である。その他の条件については、図20の場合と同様である。赤色レーザを用いるので、トラッキング誤差信号TES−Dの極大値は、グルーブGの中心付近に位置する。また、サーボ専用層にも符号M(ダミー符号)が設けられる。ただし、サーボ専用層でDPD法を用いる場合は、ランド・グルーブはなくても良い。
図25に示したトラッキング誤差信号TES−Dは、トラッキング誤差信号TES−Dの値がα−Δ2である場合の記録層光ビームの照射位置が、記録層モードでのトラッキングサーボが機能する限界の位置、すなわちトラック中心CRから距離aだけ離れた位置となる場合を示している。このとき、Δ1の最大値が最も小さくなるので、Δ1の具体的な値を、トラッキング誤差信号TES−Dが図25に示したトラッキング誤差信号TES−Dとなる場合のΔ1の最大値以下となるように決定すれば、光ディスク11の傾きが如何なる値であっても、記録層用光ビームの照射位置をトラック中心CRに戻すことができない場合が生ずることを防止できる。そこで、以下では、トラッキング誤差信号TES−Dが図25に示したトラッキング誤差信号TES−Dとなる場合のΔ1の最大値の求め方について説明する。
以下では、サーボ専用層用光ビームの照射位置がランドの中心CSから離れる方向に移動する際のトラッキング誤差信号TES−Dの変化の勾配をg1とし、グルーブGの中心付近でのトラッキング誤差信号TES−Dの変化の勾配の絶対値をg2とする。図中に示した長さcは、c=Δ2/g2と表される。したがって、d=a−c=a−Δ2/g2となり、さらにd=Δ1/g1+Δ1/g2であることから、Δ1=(ag1g2−Δ2g1)/(g1+g2)と表される。このΔ1が、トラッキング誤差信号TES−Dが図25に示したトラッキング誤差信号TES−Dとなる場合のΔ1の最大値となる。したがって、Δ1≦(ag1g2−Δ2g1)/(g1+g2)とすることで、光ディスク11の傾きが如何なる値であっても、記録層用光ビームの照射位置をトラック中心CRに戻すことができない場合が生ずることを防止できることになる。なお、g2を無限大と近似することも可能である。この場合、Δ1≦ag1となり、Δ1の最大値はΔ2に依存しない値となる。
図26は、トラックピッチが青色レーザのスポット径に応じて決められている光ディスク11(赤色レーザでは再生できない光ディスク11)を用い、記録層用光ビーム及びサーボ専用層用光ビームをともに青色レーザとする場合の例を示す図である。その他の条件については、図20の場合と同様である。
図26に示したトラッキング誤差信号TES−Pは、トラッキング誤差信号TES−Pの値がα−Δ2である場合の記録層光ビームの照射位置が、記録層モードでのトラッキングサーボが機能する限界の位置、すなわちトラック中心CRから距離aだけ離れた位置となる場合を示している。このとき、Δ1の最大値が最も小さくなるので、Δ1の具体的な値を、トラッキング誤差信号TES−Pが図26に示したトラッキング誤差信号TES−Pとなる場合のΔ1の最大値以下となるように決定すれば、光ディスク11の傾きが如何なる値であっても、記録層用光ビームの照射位置をトラック中心CRに戻すことができない場合が生ずることを防止できる。そこで、以下では、トラッキング誤差信号TES−Pが図26に示したトラッキング誤差信号TES−Pとなる場合のΔ1の最大値の求め方について説明する。
以下では、トラッキング誤差信号TES−Pの変化の勾配をg1とする。図中に示した長さcは、c=Δ2/g1と表される。したがって、d=a−c=a−Δ2/g1となり、さらにd=2Δ1/g1であることから、Δ1=(1/2)×(ag1−Δ2)と表される。この結果は、図20の例と同じである。このΔ1が、トラッキング誤差信号TES−Pが図26に示したトラッキング誤差信号TES−Pとなる場合のΔ1の最大値となるので、Δ1≦(1/2)×(ag1−Δ2)とすることで、光ディスク11の傾きが如何なる値であっても、記録層用光ビームの照射位置をトラック中心CRに戻すことができない場合が生ずることを防止できることになる。
図27は、トラッキング誤差信号TESとしてDPD法により生成されたトラッキング誤差信号TES−Dを用いる場合の例を示す図である。その他の条件については、図26の場合と同様である。
図27に示したトラッキング誤差信号TES−Dは、トラッキング誤差信号TES−Dの値がα−Δ2である場合の記録層光ビームの照射位置が、記録層モードでのトラッキングサーボが機能する限界の位置、すなわちトラック中心CRから距離aだけ離れた位置となる場合を示している。このとき、Δ1の最大値が最も小さくなるので、Δ1の具体的な値を、トラッキング誤差信号TES−Dが図27に示したトラッキング誤差信号TES−Dとなる場合のΔ1の最大値以下となるように決定すれば、光ディスク11の傾きが如何なる値であっても、記録層用光ビームの照射位置をトラック中心CRに戻すことができない場合が生ずることを防止できる。そこで、以下では、トラッキング誤差信号TES−Dが図27に示したトラッキング誤差信号TES−Dとなる場合のΔ1の最大値の求め方について説明する。
以下では、サーボ専用層用光ビームの照射位置がランドの中心CRから離れる方向に移動する際のトラッキング誤差信号TES−Dの変化の勾配をg1とし、グルーブGの中心付近でのトラッキング誤差信号TES−Dの変化の勾配の絶対値をg2とする。図中に示した長さcは、c=Δ2/g2と表される。したがって、d=a−c=a−Δ2/g2となり、さらにd=Δ1/g1+Δ1/g2であることから、Δ1=(ag1g2−Δ2g1)/(g1+g2)と表される。この結果は、図25の例と同じである。このΔ1が、トラッキング誤差信号TES−Dが図27に示したトラッキング誤差信号TES−Dとなる場合のΔ1の最大値となる。したがって、Δ1≦(ag1g2−Δ2g1)/(g1+g2)とすることで、光ディスク11の傾きが如何なる値であっても、記録層用光ビームの照射位置をトラック中心CRに戻すことができない場合が生ずることを防止できることになる。なお、g2を無限大と近似することも可能である。この場合、Δ1≦ag1となり、Δ1の最大値はΔ2に依存しない値となる。
図28は、トラックピッチが赤色レーザのスポット径に応じて決められている光ディスク11(赤色レーザでは再生可能な光ディスク11)を用い、記録層用光ビームを赤色レーザとする場合の例を示す図である。その他の条件については、図20の場合と同様である。繰り返しになるので詳しい説明は省略するが、この場合のΔ1は、図20の場合と同様の計算により、Δ1≦(1/2)×(ag1−Δ2)となる。
図29は、トラッキング誤差信号TESとしてDPD法により生成されたトラッキング誤差信号TES−Dを用いる場合の例を示す図である。その他の条件については、図28の場合と同様である。繰り返しになるので詳しい説明は省略するが、この場合のΔ1は、図25の場合と同様の計算により、Δ1≦(ag1g2−Δ2g1)/(g1+g2)となる。
図30及び図31は、トラックピッチが赤色レーザのスポット径に応じて決められている光ディスク11(赤色レーザでは再生可能な光ディスク11)を用い、記録層用光ビームを赤色レーザ、サーボ専用層用光ビームを青色レーザとする場合の例を示す図である。図30はトラッキング誤差信号TES−P、図31はトラッキング誤差信号TES−Dをそれぞれ示している。この場合、トラッキング誤差信号TES−P,TES−Dが常に0となり、サーボ専用層モードでのトラッキングモードができない領域が生ずる(図示した区間Zに対応する領域)。したがって、Δ1の決定方法以前の問題として、このような使い方はしないことが好ましい。
また、ここまでの説明では、記録層内の符号は、サーボ専用層内のランド・グルーブのどちらか一方のみに対応して設けられていることを前提として説明したが、両方に対応して設けられることとしてもよい。この場合、サーボ専用層モードでのトラッキングサーボはDPD法により行うことが好ましい。以下、詳しく説明する。
図32は、サーボ専用層モードでのトラッキングサーボはDPD法により行う例を示している。同図は、トラッキング誤差信号生成部61−1が生成するトラッキング誤差信号TERと、トラッキング誤差信号生成部61−2が生成するトラッキング誤差信号TES−Dとを描画した図であり、横軸は光ディスク半径方向(トラックジャンプ方向)としている。同図の下部には、記録層及びサーボ専用層の平面図を示している。また、同図では、トラックピッチが赤色レーザのスポット径に応じて決められている光ディスク11(赤色レーザで再生可能な光ディスク11)を用い、サーボ専用層用光ビームを赤色レーザ、記録層用光ビームを青色レーザとし、光ディスク11は傾いていないとしている。
図32に破線で示した信号TES−D(L)は、トラッキング誤差信号TES−Dのうち、ランドL内のダミー符号Mによって生ずる成分を示している。同様に、信号TES−D(G)は、トラッキング誤差信号TES−Dのうち、ランドG内のダミー符号Mによって生ずる成分を示している。トラッキング誤差信号TES−Dの波形は、これら信号TES−D(L)及び信号TES−D(G)を足し合わせたものとなる。トラッキング誤差信号TES−Dの波形がこのようにして形成されることから、トラッキング誤差信号TES−Dは、図32に示すように、ランドLとグループGの境界を挟んで比較的ゆるやかな一定の傾きを有し、さらにその値は境界近傍でゼロとなる。
図32に示すように、トラッキング誤差信号TES−DのランドLとグループGの境界付近での傾きは、常に同一方向である。したがって、サーボ専用層モードでのトラッキングサーボにおける対物レンズ4の制御方向は、常に同一方向でよいことになる。つまり、トラッキングサーボの極性を、ダミー符号M一列おきに変える必要はない。
これに対し、仮にサーボ専用層モードでのトラッキングサーボはDPP法により行うこととした場合、DPP法により生成されるトラッキング誤差信号TES−Pの波形は例えば図21に示したようなものとなるので、トラッキングサーボの極性を、ダミー符号M一列おきに変える必要が生ずる。したがって、記録層内の符号がサーボ専用層内のランド・グルーブの両方に対応して設けられる場合、サーボ専用層モードでのトラッキングサーボは、トラッキングサーボの極性を変える必要のないDPD法により行うことが好ましい。
なお、サーボ専用層モードでのトラッキングサーボにDPD法を用いる場合とDPP法を用いる場合とでは、記録層の記録密度は変わらないが、記録層の符号Mの位置が異なる。すなわち、DPD法を用いる場合、図32に示すように、記録層の符号Mは、サーボ専用層のランドLとグループGの境界に対応する位置(ダミー符号列の間の位置)に設けられる。一方、DPP法を用いる場合の記録層の符号Mは、サーボ専用層のランドLとグループGそれぞれの中心に対応する位置に設けられる。
また、図32の例におけるΔ1、すなわちサーボ専用層モードでのトラッキングサーボにDPD法を用いる場合のΔ1は、図25の場合などと同様の計算を行うことで求められ、Δ1≦(ag1g2−Δ2g1)/(g1+g2)となる。一方、サーボ専用層モードでのトラッキングサーボにDPP法を用いる場合のΔ1は、図20の場合などと同様の計算を行うことで求められ、Δ1≦(1/2)×(ag1−Δ2)となる。