JP4973360B2 - 質量分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、顕微質量分析装置、イメージング質量分析装置などと呼ばれる、試料上の二次元領域の質量分析を行うための質量分析装置に関し、さらに詳しくは、そうした質量分析装置で収集されるデータの処理技術に関する。
近年、試料上の二次元領域内を例えば格子状に細かく区分した各微小領域(測定点)に対する質量分析をそれぞれ行い、その結果により試料上に存在する分子のマッピング(イメージング)画像を作成するような質量分析装置が開発されている(特許文献1、2、非特許文献1など参照)。こうした質量分析装置は、顕微質量分析装置、或いはイメージング質量分析装置などと呼ばれており、試料をすり潰したり破砕したりすることなく試料の形態をほぼ維持したまま、顕微観察を行いながら該試料を構成する分子の二次元的な分布を測定することが可能である。こうしたことから、特に、生化学分野、医療・薬学分野などにおいて、例えば生体内細胞に含まれるタンパク質等の分布情報を得るといった応用が期待されている。
上記のような質量分析装置を利用した分析では、複数の試料同士の分子イメージングの比較を行いたいような場合がよくある。例えば、医薬品の開発等を行う際に、マウス等の実験動物の生体組織(例えば脳組織)の切片を試料とし、その生体組織中の特定の部位に発生している病変組織の状態の変化を、薬品投与の有無や投与量の相違等について比較することがよく行われる。こうした場合、異なるマウスから採取した同一生体組織の分子イメージングを比較すれば、光学的な観察だけでは分からない病変組織の変化を把握することが可能となる。
上記のような比較分析を行う場合に、複数の試料は同一種類の生体組織であったとしても個体差があるから、形状や大きさが異なることが避けられない。また、質量分析装置の試料ステージ上での試料の載置位置も全く同一ではない。そのために、比較しようとする部位の位置が分子イメージング画像上で異なり、分析担当者が目視で同一部位を確認しながら上記ような比較処理を行う必要がある。しかしながら、比較すべき試料の数が多い場合や分子イメージング画像の数(つまりは分子イメージング画像を作成する質量電荷比の数)自体が多い場合には、分析担当者の負担は大きく作業効率も悪い。また、分析担当者の見落としや見間違いなどのミスも起こり易くなる。
特開2007−66533号公報 特開2007−157353号公報 小河潔、ほか5名、「顕微質量分析装置の開発」、島津評論、株式会社島津製作所、平成18年3月31日発行、第62巻、第3・4号、p.125−135
本発明はこのような課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、複数の試料に対して得られたイメージング画像の比較や差異抽出などを分析担当者に大きな負担を強いることなく効率的に行うことができる質量分析装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された第1発明は、試料上の所定の二次元範囲内に設定された複数の微小領域毎の質量分析を行って質量スペクトルデータを取得し、それを利用して質量分析イメージングを行う質量分析装置において、
a)試料に対する光学的な顕微観察画像又は該試料に対して取得された質量スペクトルデータに基づく二次元画像を利用して、試料全体又は該試料の中の特定部位の二次元的な形状を把握する形状把握手段と、
b)複数の試料について前記形状把握手段により把握された形状を用いて、その形状が一致するように少なくとも1つの試料に対する前記画像の変形操作を行う変形処理手段と、
c)前記変形処理手段による変形操作に応じて前記微小領域の位置情報を修正した上で、複数の試料に対して取得された質量スペクトルデータに基づいて、それら試料の相違性や類似性に関する比較を行う比較手段と、
を備えることを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された第2発明は、試料上の所定の二次元範囲内に設定された複数の微小領域毎の質量分析を行って質量スペクトルデータを取得し、それを利用して質量分析イメージングを行う質量分析装置において、
a)試料に対する光学的な顕微観察画像又は該試料に対して取得された質量スペクトルデータに基づく二次元画像を利用して、試料の中の特定部位を識別する部位識別手段と、
b)複数の試料について前記部位識別手段により識別された同一であるとみなせる部位毎に、その部位に対応する位置の微小領域について取得された質量スペクトルデータに基づいて、それら試料の相違性や類似性に関する比較を行う比較手段と、
を備えることを特徴としている。
なお、第1及び第2発明に係る質量分析装置において、質量分析を行う手段は、試料上の二次元範囲内の各微小領域に対する質量分析を所定の順番で逐次的に行うものでも、複数の微小領域に対する質量分析を同時並行的に行うものでもよい。前者は例えば特許文献1に記載のように、試料上の微小領域にレーザ光を照射して、そのレーザ光の照射により生成されるイオンを質量分析し、例えば試料を二次元的に移動させることでレーザ光の照射位置を移動させることにより微小領域の位置の走査を実行する構成とすることができる。一方、後者は例えば特許文献2に記載のように、複数の微小領域をカバーする広い領域にレーザ光を照射し、異なる微小領域で生成されたイオンがその位置情報を失わないようにしながら質量分析を実行し、二次元的な検出面を持つ検出器で検出する構成とすることができる。
第1発明に係る質量分析装置では、比較手段により複数の試料に対する質量スペクトルデータに基づく分子イメージング等の比較や差異抽出などを行う前に、複数の試料の個体間の形状や大きさの相違、或いは試料の置かれた位置の相違などを包括した比較対象の二次元的な相違を修正する、いわば前処理を実行する。そのために、まず形状把握手段が各試料の試料全体又はその試料の中の特定部位の二次元的な形状を把握し、次いで変形処理手段が、複数の試料についての上記形状が揃うように、例えば移動、回転、拡大・縮小、剪断などの各種の画像の変形操作を行う。
形状把握手段は光学顕微鏡や光学的な顕微撮影装置などで得られた画像を利用してもよいし、或いは、質量スペクトルデータを用いて再現した画像、例えば特定質量(厳密には質量電荷比)における分子イメージング画像を利用してもよい。後者の場合、まず各試料毎に各微小領域毎に得られた質量スペクトルデータを変数入力値とする主成分分析などの多変量解析を行って特徴的な質量を抽出し、その質量が観測される微小領域が或る程度以上、二次元的に集中して存在している場合に、それを1つの部位であるとみなすようにして分子イメージング画像を作成するようにするとよい。
また変形処理手段は、1つの試料について得られた形状に他の試料について得られた形状を一致させるように変形操作を行ってもよいし、或る基準となる試料を別途用意し、その基準試料についての形状に各試料について得られた形状を一致させるように変形操作を行ってもよい。
上述のような変形操作によりその変形操作情報が得られ、それに応じて微小領域の位置情報(例えば座標情報)を修正することにより、複数の試料において同一の位置情報を持つ微小領域は同一部位に含まれることなる。従って、比較手段においては、同一の位置情報を持つ微小領域の質量スペクトルデータ同士を比較することが可能となる。例えばこの比較手段は、変形操作に応じて位置情報が修正された微小領域毎の質量スペクトルデータを変数入力値とする、主成分分析などの多変量解析を行う構成とすることができる。
一方、第2発明に係る質量分析装置では、第1発明のように形状の変形は行わず、まず部位識別手段が各試料の中で同一部位であるとみなせる特定部位を識別する。ここで、部位識別手段も上記形状把握手段と同様に、光学顕微鏡や光学的な顕微撮影装置などで得られた画像を利用してもよいし、或いは、質量スペクトルデータを用いて再現した画像、例えば特定質量における分子イメージング画像を利用してもよいが、一般的には後者のほうが望ましい。そうして、比較すべき同一の特定部位が識別できたならば、比較手段は、各部位毎にその部位に対応する位置の微小領域に対する質量スペクトルデータを集め、これを比較するような処理を行う。この場合には、第1発明とは異なり微小領域の位置情報は修正されていないので、通常、試料毎に異なる位置情報を持つ質量スペクトルデータ同士が比較されることになる。
第1及び第2発明に係る質量分析装置によれば、複数の試料における比較対象部位を分析担当者が目視で確認しながら差異の抽出などの比較処理を行う手間が不要になり、試料の個体差や試料の載置位置の相違などの影響が自動的に補正されて精度の高い比較分析を行うことができる。これにより、分析の作業効率が向上し、多数の試料の比較分析を行う場合でもそのスループットが改善される。また、分析担当者の見落としや見間違いなどのミスが起こりにくく、分析精度の向上が期待できる。
[第1実施例]
以下、第1発明に係る質量分析装置の一実施例(第1実施例)であるイメージング質量分析装置の構成と動作について図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施例によるイメージング質量分析装置の要部の構成図である。略大気圧雰囲気に維持される気密室1内には試料を大気圧MALDI(又は大気圧LDI)イオン化法によりイオン化するイオン化部、及び試料の顕微観察を行う顕微観察部が配置されている。即ち、上部に試料3を載置する試料ステージ2はステージ駆動部24により少なくともx軸、y軸の二軸方向に移動自在であり、この試料ステージ2が図1中に実線で示す位置にあるときに、レーザ照射部4から出射され、レンズ6により収束されたレーザ光5が試料3の上面に当たるようになっている。このレーザ光5の照射により、試料3においてレーザ光照射位置3a付近から試料由来のイオンが発生する。
気密室1内で試料3から発生したイオンはイオン輸送管7を通して、図示しない真空ポンプにより真空排気される真空チャンバ10内に輸送される。真空チャンバ10内において、イオンはイオンレンズ11により収束されてその後段のイオントラップ12に送り込まれる。イオントラップ12はリング電極と一対のエンドキャップ電極とから成る3次元四重極型の構成であり、それら電極に印加される高周波電圧により形成される電場によりイオンを一時的に蓄積・保持し、所定のタイミングでほぼ一斉にそれらイオンを吐き出して飛行時間型質量分析器(TOF)13に導入する。飛行時間型質量分析器13はリフレクトロン電極14を備え、リフレクトロン電極14により形成される直流電場によりイオンを折返し飛行させる。ほぼ一斉に導入された各種イオンはその質量(厳密には質量電荷比m/z)に応じて異なる飛行時間で以て飛行してイオン検出器15に到達し、イオン検出器15は入射したイオンの量に応じた検出信号を出力する。
なお、イオントラップ12において、各種イオンの中で特定の質量を有するイオンをプリカーサイオンとして選別した上でCID(衝突誘起解離)により開裂を生じさせ、それによって生成されたプロダクトイオンを飛行時間型質量分析器13に導入して質量分析する、つまりMS/MS分析又はn=3以上のMS分析を行うことも可能である。
気密室1内で試料ステージ2はガイド30に沿って図1中に点線で示す位置(観察位置)2Bに移動可能となっており、観察位置2Bの上方で気密室1の外側にはCCDカメラ31が配置され、観察位置2Bの下方には透過照明部33が設置されている。試料ステージ2が観察位置2Bに来るように移動された状態では、透過照明部33から出射した光が試料ステージ2に形成されている開口を通して試料3の下面に当たり、その透過光による試料像をレンズ32を通してCCDカメラ31で撮影できるようになっている。CCDカメラ31で撮影された顕微画像は後述する制御部23を介して表示部26の画面上に表示可能である。もちろん、このような透過観察のほかに反射観察や蛍光観察のための照明系を別途設けてもよい。また、CCDカメラ31で撮像する代わりに、光学顕微鏡を設け、オペレータが直接的に顕微観察画像を観察できるようにしてもよい。
質量分析によりイオン検出器15で得られた検出信号は、A/D変換器20によりデジタル値に変換されてデータ処理部21に入力され、データ処理部21で質量と信号強度との関係を表す質量スペクトルデータが求められ、これがデータ記憶部22に格納される。さらにデータ処理部21は、データ記憶部22に格納された質量スペクトルデータを用いた各種のデータ処理を実行し、例えば所定の分子の分布を表すマッピング画像を作成する。制御部23は試料3に対する質量分析動作を実行するためにステージ駆動部24を始めとする各部を制御する(図1では煩雑になるためにそうした制御信号線の記載は省略している)とともに、顕微観察画像や分析結果などを表示部26に表示する。また、操作部25はキーボードやポインティングデバイスなどであり、分析のための各種のパラメータの入力設定や各種の指示に利用される。
制御部23やデータ処理部21は例えば汎用のパーソナルコンピュータにより構成することができ、該コンピュータにインストールされた専用の制御/処理ソフトウエアを実行することにより、各種の制御やデータ処理の機能を達成することができる。
次に、本実施例のイメージング質量分析装置における特徴的な分析動作、実際にはデータ処理部21を中心として実行されるデータ処理動作について、図2〜図4を参照しつつ説明する。図2はこの分析動作の手順を示すフローチャート、図3、図4は分析動作の中でのデータ処理の内容を説明するための図である。
ここでは、同一種類の異なる2つの生体から採取された同一生体組織(例えば脳)を試料として比較する場合について説明する。一方を試料A、他方を試料Bとし、ここでは試料Aが基準であるとする。
まず、上記イメージング質量分析装置により、試料A、Bそれぞれについて質量分析イメージングのための質量スペクトルデータの取得を行う(ステップS1)。即ち、図3(a)に示したように、試料3をカバーする二次元範囲50をx軸、y軸の二軸方向に格子状に細かく区画した、Δx×Δyの大きさの微小領域51を考え、各微小領域51毎に質量と信号強度との関係を表す質量スペクトルデータを取得する。
そのために、オペレータは試料Aを試料ステージ2上に載せ、操作部25により分析開始を指示する。すると、ステージ駆動部24により試料ステージ2がx軸、y軸方向に所定距離ステップ(Δx、Δy)移動される毎に、試料Aに向けてレーザ光5が照射され、それに伴って試料A上のレーザ照射位置(実際には図3(a)に示したように略円形の範囲)から発生したイオンが質量分析に供される。但し、1回のレーザ光照射だけで十分な量のイオン発生が期待できない場合には、同一の微小領域51に対して短時間のレーザ光照射を複数回繰り返し、各レーザ光照射毎に発生したイオンを前述の如くイオントラップ12に蓄積した上で飛行時間型質量分析器13により質量分析するようにするとよい。このようにして、図3(a)に示したような細かく区画した多数の微小領域51のそれぞれについて、各微小領域51に存在する物質(分子)を反映した質量スペクトルデータが得られ、これがデータ記憶部22に格納される。ここで便宜的に、各微小領域51の座標(x、y)を図3中に記したように(0,0)、…、(n、m)とする。
また試料Bについても試料Aと同様の手順で質量スペクトルデータを取得する。但し、同一生体組織であると言っても個体が相違し、生体からの切除等の試料採取作業も全く同じようには行えないので、試料Bの形状や大きさは試料Aとは若干異なる。また、試料ステージ2上へ試料が置かれる位置が相違すると、x−yの二次元平面内での試料の傾きや位置が同一とならない。いま、ここでは、顕微観察画像上で試料Aが図3(a)、試料Bが図3(b)の状態であるとする。このような状態で各微小領域の質量スペクトルデータが収集された場合、同一の微小領域座標に対する質量スペクトルデータは必ずしも同一部位(組織)に対して得られたものとはならない。
例えば図3の例では、座標(6,2)にある微小領域は、試料Aに対する画像上では組織aに対応した質量スペクトルデータであるのに対し、試料Bに対する画像上ではいずれの組織も存在しない部分の質量スペクトルデータである。従って、同一座標毎に両質量スペクトルデータを比較するのは適切ではない。そこで、本実施例では、データ処理部21は、まず試料Bの画像上の試料像が試料Aの画像上の試料像に一致するように画像の変形処理を行う(ステップS2)。そのために、まず両方の画像において組織a、b、cのそれぞれ又は1つの境界(輪郭)を把握する。そして、把握した組織の境界の位置的な誤差がゼロに近づくように試料Bの画像に対する変形操作を実行する。変形操作としては、x軸、y軸方向への移動、任意の位置を中心点とする回転、拡大・縮小、剪断などがある。このとき、組織の境界が完全に一致しなくても、所定の誤差以下に収まった時点で変形終了とすることにより、処理時間を短くすることができる。
また、オペレータが特定の組織、例えば組織aにのみ着目する場合には、その組織aが一致するようにすれば十分であるから、例えば表示部26の画面上でオペレータが組織aを指示すると、その組織aの境界が一致するようにその組織aの境界で囲まれる範囲のみの変形処理を行うようにしてもよい。
変形操作による形状一致処理が終了すると、次に、その変形操作情報に基づいて試料Bに対して収集された質量スペクトルデータの座標情報、つまりx−y平面内での微小領域の位置情報を変更する(ステップS3)。例えば図4(a)→(b)に示すように、試料Bの画像が変形されたとき、その際に実行された、回転操作情報(回転中心位置、回転方向、回転角度など)、拡大・縮小操作情報(拡大・縮小範囲、倍率など)などの変形情報が得られているから、それに基づいて各微小領域の座標の移動情報を計算する。こうした計算により、例えば図4(a)における座標(7,8)は変形操作により図4(b)では座標(6,2)に移動していることが分かる。各座標について、こうした対応関係が明確化される。なお、拡大・縮小などの変形操作が加わった場合、変形前後の座標の位置関係が必ずしも一対一になるとは限らないが、多対一又は逆に一対多となっても何ら構わないし、或いは、こうした座標変換に伴って、信号強度についての平均化、重み付け計算などのより複雑な計算を行って質量スペクトルデータ自体を微修正するようにしてもよい。
こうして質量スペクトルデータの座標情報が変更された後には、同一座標を有する微小領域は同一組織に属している筈である。例えば図3(a)と図4(b)とを見れば分かるように、座標(6,2)の微小領域は組織aに含まれている。そこで、試料A、試料Bについて、同一座標を持つ微小領域の質量スペクトルデータ同士を比較し、その類似性や相違性を明確化するような処理を実行することが可能となる。具体的には、例えば、質量スペクトルデータを多変量の入力値として多変量解析の一手法である主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)により分析する(ステップS4)。主成分分析は、多数の変数を少数の指標値でもって表わすようにするもので、詳しくは、例えば、宮下芳勝、佐々木慎一著「ケモメトリックス」、共立出版(1995年)などの文献にその方法が記載されている。また、主成分分析の演算処理をパーソナルコンピュータやワークステーション上で行うためのソフトウェアは種々のものが入手可能である。従って、ここでは主成分分析の詳細な説明は省略する。
主成分分析では、サンプルの関係を示すスコアと、変数つまり質量ピークの相関関係を示すローディングとを求めることができ、主成分を軸とするグラフ上にローディング値をプロットしたローディングプロットにより、試料A、Bとの相違を特徴付ける質量ピークを抽出することができる。従って、例えば、そうして得た質量ピークの質量のマッピング画像(イメージング画像)を作成すると、試料A、Bの相違が視覚的に明確になる。このようにして、オペレータが面倒な作業や判断を行うことなく、試料A、試料Bの質量スペクトルの比較結果を得ることができる。
なお、上記説明では、ステップS2で各試料の形状や特定組織の形状を把握・及び変形操作するために顕微観察画像を利用したが、ステップS1で収集した質量スペクトルデータに基づいて作成される画像を利用したもよい。そうした際に利用できる画像の作成手法として、後述の第2実施例における組織識別処理を行う際に作成される画像を利用することができる。
[第2実施例]
次に第2発明の一実施例(第2実施例)によるイメージング質量分析装置について説明する。この第2実施例ではイメージング質量分析装置の基本的な構成は第1実施例と同じであり、データ処理部21におけるデータ処理の内容、つまりはパーソナルコンピュータ上で実行されるデータ処理用のソフトウエアが相違するだけである。従って、装置の構成についての説明は省略し、図5に従ってデータ処理の手順を説明する。
まず第1実施例のステップS1と同様に、試料A、Bそれぞれについて質量分析イメージングのための質量スペクトルデータの取得を行う(ステップS11)。続いて、試料A、Bにおいて、それぞれ同一部位、例えば組織a、b、cなどを識別する組織識別処理を実行する(ステップS12)。具体的に、組織を識別する方法として、顕微観察画像に対して例えば画像認識処理などを行うことにより、1乃至複数の組織を識別することができる。但し、顕微観察画像から試料全体像は把握し易いが、試料中の各組織を識別することが難しい場合がある。そこで、試料中の組織を識別する他の方法として、質量スペクトルデータを利用する方法を用いることができる。
具体的には、1つの試料について各微小領域で得られた質量スペクトルデータを利用して主成分分析などの手法により特徴的な質量ピーク(つまり質量電荷比)を抽出する。そして、その質量ピークが観察される特定微小領域が二次元的にかたまっているか否かを統計的に、例えば二次元的な座標分散等に基づいて判断し、特定微小領域がかたまって存在していると判断された場合にその特定微小領域が集中した部分を1つの組織とみなすようにするとよい。なお、これについては詳しくは特願2007−191654号に記載されている 。
上記組織識別処理により、例えば試料Aに対しては図6(a)に示すように特定組織aの範囲が識別され、試料Bに対しては図6(b)に示すように同じ特定組織aの範囲が識別されたものとする。また別の組織bなども同様にして識別される。
次に、識別された組織毎に、その組織に含まれる微小領域の質量スペクトルデータを集め分類してリスト化する(ステップS13)。実際には、或る組織、例えば組織aに含まれる微小領域の座標をリスト化すれば、そのリストに基づいて質量スペクトルデータをデータ記憶部22から読み出すことができるから、座標情報をリスト化しさえすればよい。その後に、試料A、Bについての同一組織毎に、上記リスト化された微小領域の質量スペクトルデータを集め、これを比較することで類似性や相違性を比較する(ステップS14)。即ち、組織毎の質量スペクトルデータを変数入力値とする主成分分析を行うことにより、異なる試料間の同一組織についての差異などに関する情報を取得する。
以上のように第2実施例のイメージング質量分析装置でも第1実施例と同様の比較分析結果を得ることができる。
上記第1、第2実施例では、試料をイオン化する際に大気圧MALDI/LDIイオン化法を用いていたが、イオン化法は特に限定されない。また、試料上の二次元範囲内で微小領域を順次走査しながら各微小領域の質量分析を行う代わりに、特許文献2などに記載の手法により、二次元範囲内の質量分析イメージングを行うようにしてもよい。即ち、試料3上の所定の二次元範囲内の分子分布を反映した質量分析イメージングが可能な装置であって、各微小領域の質量スペクトルデータが収集可能な装置であれば、特にその装置の構成は問わない。
また、それ以外の点についても、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜に変更、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
第1発明の一実施例によるイメージング質量分析装置の要部の構成図。 第1実施例のイメージング質量分析装置における特徴的な分析動作(データ処理)の手順を示すフローチャート。 第1実施例のイメージング質量分析装置における特徴的なデータ処理の説明図。 第1実施例のイメージング質量分析装置における特徴的なデータ処理の説明図。 第2発明の一実施例(第2実施例)のイメージング質量分析装置における特徴的な分析動作(データ処理)の手順を示すフローチャート。 第2実施例のイメージング質量分析装置における特徴的なデータ処理の説明図。
符号の説明
1…気密室
2…試料ステージ
3…試料
3a…レーザ光照射位置
4…レーザ照射部
5…レーザ光
6…レンズ
7…イオン輸送管
10…真空チャンバ
11…イオンレンズ
12…イオントラップ
13…飛行時間型質量分析器
14…リフレクトロン電極
15…イオン検出器
20…A/D変換器
21…データ処理部
22…データ記憶部
23…制御部
24…ステージ駆動部
25…操作部
26…表示部
30…ガイド
31…CCDカメラ
32…レンズ
33…透過照明部

Claims (4)

  1. 試料上の所定の二次元範囲内に設定された複数の微小領域毎の質量分析を行って質量スペクトルデータを取得し、それを利用して質量分析イメージングを行う質量分析装置において、
    a)試料に対する光学的な顕微観察画像又は該試料に対して取得された質量スペクトルデータに基づく二次元画像を利用して、試料全体又は該試料の中の特定部位の二次元的な形状を把握する形状把握手段と、
    b)複数の試料について前記形状把握手段により把握された形状を用いて、その形状が一致するように少なくとも1つの試料に対する前記画像の変形操作を行う変形処理手段と、
    c)前記変形処理手段による変形操作に応じて前記微小領域の位置情報を修正した上で、複数の試料に対して取得された質量スペクトルデータに基づいて、それら試料の相違性や類似性に関する比較を行う比較手段と、
    を備えることを特徴とする質量分析装置。
  2. 前記比較手段は、変形操作に応じて位置情報が修正された微小領域毎の質量スペクトルデータを変数入力値とする多変量解析を行うことを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
  3. 試料上の所定の二次元範囲内に設定された複数の微小領域毎の質量分析を行って質量スペクトルデータを取得し、それを利用して質量分析イメージングを行う質量分析装置において、
    a)試料に対する光学的な顕微観察画像又は該試料に対して取得された質量スペクトルデータに基づく二次元画像を利用して、試料の中の特定部位を識別する部位識別手段と、
    b)複数の試料について前記部位識別手段により識別された同一であるとみなせる部位毎に、その部位に対応する位置の微小領域について取得された質量スペクトルデータに基づいて、それら試料の相違性や類似性に関する比較を行う比較手段と、
    を備えることを特徴とする質量分析装置。
  4. 前記比較手段は、同一とみなせる部位に対応する位置の微小領域毎の質量スペクトルデータを変数入力値とする多変量解析を行うことを特徴とする請求項3に記載の質量分析装置。
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